JP2002087295A - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 駆動歯車及び従動歯車の耐久摩耗、環境温度
及び湿度の変化等によるバックラッシュ量の増減を少な
くすることができるようにする。 【解決手段】 操舵補助用のモータ６の出力軸６０の軸
心Ｏ２と該出力軸６０に繋がる駆動歯車７１の軸心Ｏ１
とを互いにオフセットさせ、前記出力軸６０及び駆動歯
車７１を連結して該駆動歯車７１を従動歯車７２に向け
て付勢する弾性継手９を備え、該弾性継手９がバックラ
ッシュ量の増減を少なくするようにした。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は操舵補助力の発生源
としてモータを用いてなる電動パワーステアリング装置
に関する。

【０００２】

【従来の技術】自動車の舵取りは、車室の内部に配され
た操舵輪の回転操作を、舵取用の車輪（一般的には前
輪）の操向のために車室の外部に配された舵取機構に伝
えて行われる。

【０００３】図５は従来における電動パワーステアリン
グ装置の断面図、図６は減速機構部分の断面図である。
自動車用の電動パワーステアリング装置としては、図
５、図６に示すように例えば上端が舵取りのための操舵
輪１００に繋がり、下端に筒部を有する第１の操舵軸１
０１と、前記筒部内に挿入されてその上端が前記操舵軸
１０１の下端に同軸的に連結され、前記操舵輪１００に
加わる操舵トルクの作用によって捩れるトーションバー
１０２と、下端が前記トーションバー１０２の下端に同
軸的に連結される第２の操舵軸１０３と、前記トーショ
ンバー１０２の捩れに応じた第１及び第２の操舵軸１０
１，１０３の相対回転変位量によって前記操舵輪１００
に加わる操舵トルクを検出するトルクセンサ１０４と、
該トルクセンサ１０４が検出したトルクに基づいて駆動
される操舵補助用のモータ１０５と、該モータ１０５の
回転に連動し、該回転を減速して第２の操舵軸１０３に
伝達するウォーム１０６及びウォームホイール１０７を
有する減速機構とを備え、操舵輪１００の回転に応じた
舵取機構の動作を前記モータ１０５の回転により補助
し、舵取りのための運転者の労力負担を軽減するように
構成されている。

【０００４】減速機構を構成するウォーム１０６は、前
記第２操舵軸１０３の軸芯と交叉するように配置され、
一対の転がり軸受１０８，１０８を介してハウジング１
０９の嵌合孔に支持され、ウォームホイール１０７が設
けられている第２の操舵軸１０３は一対の転がり軸受１
１０，１１０を介してハウジング１０９の嵌合孔に支持
され、ラジアル方向及びアキシアル方向への移動が阻止
されている。

【０００５】このように減速機構が用いられる場合、ウ
ォーム１０６及びウォームホイール１０７の噛合部のバ
ックラッシュ量を少なくし、転舵時のバックラッシュに
よる歯打ち音をなくするため、ウォーム１０６及びウォ
ームホイール１０７の回転中心間距離と、前記転がり軸
受１０８，１１０が嵌合される嵌合孔の中心間距離とが
許容範囲内で一致するように加工されたウォーム１０
６、ウォームホイール１０７、転がり軸受１０８，１１
０、第２の操舵軸１０３、ハウジング１０９が選択され
組み立てられている。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】ところが、ウォーム１
０６との噛合による騒音を小さくするべく合成樹脂製の
ウォームホイール１０７が用いられた場合、自動車に組
み込まれた後の耐久摩耗、環境温度及び湿度の変化等に
よってバックラッシュ量が増加したり、減少したりする
ことになる。

【０００７】即ち、ウォーム１０６及びウォームホイー
ル１０７の歯の摩耗が増大したり、減速機構周りの温度
が比較的低温に低下してウォームホイール１０７が収縮
したりすることによって噛合部のバックラッシュ量が増
加した場合、転舵時の歯打ち音が増大することになる。
また、減速機構周りの温度が比較的高温に上昇してウォ
ームホイール１０７が膨張したり、減速機構周りの湿度
が上昇してウォームホイール１０７が膨潤したりするこ
とによって噛合部のバックラッシュ量が減少した場合、
噛合部に加わる回転トルクが上昇し、モータが操舵補助
した後の操舵輪の戻り性が低下することになる。

【０００８】本発明は上記問題点を解決することができ
る電動パワーステアリング装置を提供することを目的と
する。

【０００９】

【課題を解決するための手段及び発明の効果】第１発明
に係る電動パワーステアリング装置は、操舵補助用のモ
ータの出力軸に繋がる駆動歯車及び該駆動歯車に噛合
し、舵取機構に繋がる従動歯車を備え、前記モータの回
転によって操舵補助するようにした電動パワーステアリ
ング装置において、前記出力軸及び駆動歯車の軸心は互
いにオフセットされており、前記出力軸及び駆動歯車を
連結して該駆動歯車を従動歯車に向けて付勢する弾性継
手を備えていることを特徴とする。

【００１０】第１発明にあっては、モータの出力軸及び
駆動歯車の軸心は予めオフセットされており、しかも、
出力軸及び駆動歯車を弾性継手が連結しているため、上
述の如く選択して組み立てることなく、弾性継手によっ
て噛合部のバックラッシュ量を良好になくすることがで
き、さらに、モータの出力軸に対してオフセットした駆
動歯車を従動歯車に向けて弾性継手が付勢しているた
め、駆動歯車及び従動歯車の耐久摩耗、環境温度及び湿
度の変化等によるバックラッシュ量の増減を弾性継手に
よって少なくすることができる。

【００１１】即ち、駆動歯車及び従動歯車の歯の摩耗が
増大したり、減速機構周りの温度が比較的低温に低下し
て従動歯車が収縮したりした場合、弾性継手の弾性復元
力によって駆動歯車が従動歯車に向けて動くことにな
り、バックラッシュ量の増加をなくすることができ、転
舵時の歯打ち音をなくし得る。また、減速機構周りの温
度が比較的高温に上昇して従動歯車が膨張したり、減速
機構周りの湿度が上昇して従動歯車が膨潤したりした場
合、弾性継手の弾性復元力に打ち勝って駆動歯車が従動
歯車に対して離間するように動くことになり、バックラ
ッシュ量が減少し過ぎることを防止でき、操舵輪の戻り
性を良好にできる。

【００１２】第２発明に係る電動パワーステアリング装
置は、前記弾性継手はその弾性復元力によって前記駆動
歯車を前記モータと反対側へ付勢していることを特徴と
する。

【００１３】第２発明にあっては、弾性継手の弾性復元
力の一部がスラスト荷重として駆動歯車に加わるため、
駆動歯車の軸長方向へのガタつきを防止でき、しかも、
弾性的にスラスト荷重を加えるため、駆動歯車の回転ト
ルクを小さくでき、摩擦抵抗を少なくすることができ
る。

【００１４】

【発明の実施の形態】以下本発明をその実施の形態を示
す図面に基づいて詳述する。 実施の形態１ 図１は本発明に係る電動パワーステアリング装置の断面
図、図２は減速機構部分の拡大断面図である。電動パワ
ーステアリング装置は、上端が舵取りのための操舵輪１
に繋がり、下端に筒部を有する第１の操舵軸２と、前記
筒部内に挿入されてその上端が前記操舵軸２の下端に同
軸的に連結され、前記操舵輪１に加わる操舵トルクの作
用によって捩れるトーションバー３と、下端が前記トー
ションバー３の下端に同軸的に連結される第２の操舵軸
４と、前記トーションバー３の捩れに応じた第１及び第
２の操舵軸２，４の相対回転変位量によって前記操舵輪
１に加わる操舵トルクを検出するトルクセンサ５と、該
トルクセンサ５が検出したトルクに基づいて駆動される
操舵補助用のモータ６と、該モータ６の回転に連動し、
該回転を減速して第２の操舵軸４に伝達する駆動歯車
（以下ウォームと云う）７１及び従動歯車（以下ウォー
ムホイールと云う）７２を有する減速機構７と、前記ト
ルクセンサ５及び前記減速機構７が収容されるハウジン
グ８とを備え、このハウジング８に前記モータ６が取付
けられている。

【００１５】ハウジング８は、前記トルクセンサ５を収
容する第１の収容部８ａと、該収容部８ａに連続し、前
記ウォームホイール７２を収容する第２の収容部８ｂ
と、該収容部８ｂに連続し、前記ウォーム７１を収容す
る第３の収容部８ｃとを備えている。

【００１６】収容部８ｃは第２の操舵軸４の軸芯と交叉
するように配置されたウォーム７１の軸長方向に長くな
っており、その長手方向両端に軸受孔８１，８２が設け
られている。該軸受孔８１，８２の中心と前記モータ６
の出力軸６０の軸心とは前記ウォーム７１がウォームホ
イール７２に対して接離する方向へオフセットされてい
る。また、一方の軸受孔８１は該軸受孔８１に遊嵌され
る転がり軸受７３を前記オフセットの方向へ移動させ得
るように長孔にしてある。

【００１７】また、ハウジング８には前記第３の収容部
８ｃに連通するケースを有する前記モータ６が取付けら
れている。

【００１８】減速機構７は、前記モータ６の出力軸６０
に弾性継手９を介して連結された軸部７１ａを有するウ
ォーム７１と、前記第２の操舵軸４の中間に嵌合固定さ
れた合成樹脂製のウォームホイール７２とを備え、これ
らウォーム７１及びウォームホイール７２の噛合により
前記出力軸６０の回転を減速して第２の操舵軸４に伝達
し、該第２の操舵軸４からユニバーサルジョイントを経
て例えばラックピニオン式の舵取機構（図示せず）へ伝
達するようにしている。

【００１９】ウォーム７１は一端の軸部７１ａが第１の
転がり軸受７３を介して前記軸受孔８１に回転可能に支
持されており、他端の軸部７１ｂが第２の転がり軸受７
４を介して前記軸受孔８２に回転可能に支持されてい
る。

【００２０】この転がり軸受７３，７４を介して軸受孔
８１，８２に支持されたウォーム７１の軸心Ｏ１及び前
記出力軸６０の軸心Ｏ２はウォーム７１がウォームホイ
ール７２に対して接離する方向へ互いにオフセットされ
ており、さらに、一端の軸部７１ａに嵌合された転がり
軸受７３が長孔である軸受孔８１の長手方向へ移動可能
になっている。即ち、転がり軸受７３は軸受孔８１の長
手面に接触し、該軸受孔８１が転がり軸受７３の動き方
向を、ウォーム７１がウォームホイール７２に対して接
離する方向に可能としている。

【００２１】ウォーム７１の非オフセット位置（出力軸
６０の軸心Ｏ２）に対する一方側（ウォームホイール
側）への移動可能量は、前記ウォームホイール７２が最
大限収縮したときの収縮量とほぼ等しくしてあり、ま
た、ウォーム７１の非オフセット位置に対する他方側
（ウォームホイールと反対側）への移動可能量は、前記
ウォームホイール７２が最大限膨張したときの膨張量と
ほぼ等しくしてある。

【００２２】ウォームホイール７２は、前記ウォーム７
１に噛合する複数の歯を外側に有する合成樹脂製の環状
歯体７２ａと、該環状歯体７２ａを保持した金属製の保
持体７２ｂとを備え、該保持体７２ｂの中心部に穿設さ
れた貫通孔が前記第２の操舵軸４に嵌合されている。

【００２３】図３は弾性継手の拡大断面図である。弾性
継手９は合成ゴム、熱可塑性合成樹脂等の撓み性を有す
る弾性材料によって円柱形に形成されており、その両端
には軸心を等しくした嵌合孔９１，９２が設けてある。

【００２４】この嵌合孔９１，９２は内側にスプライン
が設けられた金属製の筒体９１ａ，９２ａを有してい
る。一方の嵌合孔９１には前記出力軸６０がスプライン
嵌合され、他方の嵌合孔９２にはウォーム７１の軸部７
１ａが嵌合されている。この場合、ウォーム７１の軸心
Ｏ１及び出力軸６０の軸心Ｏ２は互いにオフセットされ
ているため、弾性継手９は嵌合孔９１，９２間の中央部
が撓み、嵌合孔９１，９２が互いにオフセットし、この
オフセットによる弾性継手９の弾性復元力によりウォー
ム７１をウォームホイール７２に向けて付勢するととも
に、弾性復元力の一部がスラスト荷重としてウォーム７
１に加わり、該ウォーム７１を前記モータ６と反対側へ
付勢している。

【００２５】実施の形態１においては、ウォーム７１及
び出力軸６０の軸心Ｏ１，Ｏ２が互いにオフセットされ
ており、さらに、弾性継手９によってウォーム７１がウ
ォームホイール７２に向けて付勢されているため、上述
の如く選択して組み立てることなく、弾性継手９によっ
て噛合部のバックラッシュ量を良好になくすることがで
き、選択して組み立てる場合に比べて組立て時間を短縮
でき、コストの低減を図ることができる。

【００２６】しかも、出力軸６０に対してオフセットし
たウォーム７１をウォームホイール７２に向けて弾性継
手９が付勢しているため、ウォーム７１及びウォームホ
イール７２の歯の摩耗が増大したり、減速機構７周りの
温度が比較的低温に低下してウォームホイール７２の環
状歯体７２ａが収縮したりした場合、弾性継手９の弾性
復元力によってウォーム７１がウォームホイール７２に
向けて動くことになり、バックラッシュ量の増加をなく
することができ、転舵時の歯打ち音をなくし得る。ま
た、減速機構７周りの温度が比較的高温に上昇してウォ
ームホイール７２の環状歯体７２ａが膨張したり、減速
機構７周りの湿度が上昇してウォームホイール７２の環
状歯体７２ａが膨潤したりした場合、弾性継手９の弾性
復元力に打ち勝ってウォーム７１がウォームホイール７
２に対して離間するように動くことになり、バックラッ
シュ量が減少し過ぎることを防止でき、操舵輪の戻り性
を良好にできる。

【００２７】また、軸受孔８１が転がり軸受７３の動き
方向を、ウォーム７１がウォームホイール７２に対して
接離する方向に可能としているため、ウォーム７１はウ
ォームホイール７２に対して適正な噛合伝達を保持する
ことができる。

【００２８】また、弾性継手９がウォーム７１にスラス
ト荷重を加えているため、ウォーム７１の軸長方向への
ガタつきを防止でき、しかも、弾性的にスラスト荷重を
加えるため、ウォーム７１の回転トルクを小さくでき、
摩擦抵抗を少なくすることができる。

【００２９】尚、弾性継手は円柱形状である他、筒形で
あってもく、また、嵌合孔を有する非弾性の筒体が両端
に結合された構成であってもよく、その構成は特に制限
されない。

【００３０】実施の形態２ 図４は実施の形態２における減速機構部分の拡大断面図
である。この実施の形態２の電動パワーステアリング装
置は、コイルバネ製の弾性継手１０を用い、該弾性継手
１０が前記出力軸６０及びウォーム７１の軸部７１ａを
連結したものである。

【００３１】弾性継手１０の両端には内面にスプライン
を有する筒体１１，１２が結合されており、一方の筒体
１１が前記出力軸６０にスプライン嵌合され、他方の筒
体１２が前記ウォーム７１の軸部７１ａにスプライン嵌
合されている。

【００３２】実施の形態２においては、ウォーム７１の
軸心Ｏ１及び出力軸６０の軸心Ｏ２は互いにオフセット
されているため、弾性継手１０は筒体１１，１２間の中
央部が撓み、該弾性継手１０の弾性復元力によりウォー
ム７１をウォームホイール７２に向けて付勢するととも
に、弾性復元力の一部がスラスト荷重としてウォーム７
１に加わり、該ウォーム７１を前記モータ６と反対側へ
付勢している。

【００３３】その他の構成及び作用は実施の形態１と同
様であるため、同様の部品については同じ符号を付し、
その詳細な説明及び作用の説明を省略する。

【００３４】尚、以上説明した実施の形態では、ウォー
ム７１の出力軸６０に連結する側の軸部７１ａを支持す
る転がり軸受７３を、弾性継手９，１０がウォーム７１
を付勢する方向へ移動可能としたが、その他、ウォーム
７１の出力軸６０と反対側の軸部７１ｂを支持する転が
り軸受７４を、ウォーム７１がウォームホイール７２に
対して接離する方向へ移動可能としてもよい。この場
合、ウォーム７１の軸心Ｏ１は出力軸６０の軸心Ｏ２に
対して実施の形態１，２と反対側、即ち、ウォームホイ
ール７２の軸心との間の距離が小さくなる側へオフセッ
トさせ、ウォーム７１を、弾性継手９，１０の弾性復元
力によって転がり軸受７３による支持部を中心として揺
動可能とする。

【００３５】また、以上説明した実施の形態では、ウォ
ーム７１を支持する軸受として転がり軸受７３，７４を
用いたが、その他、転がり軸受に代えてすべり軸受を用
いてもよい。

【００３６】また、以上説明した実施の形態の減速機構
７は、ウォームである駆動歯車７１及びウォームホイー
ルである従動歯車７２を備えたウォーム歯車である他、
ハイポイドピニオンである駆動歯車及びハイポイドホイ
ールである従動歯車を備えたハイポイド歯車であっても
よい。さらに、減速機構はベベルギヤであってもよい。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る電動パワーステアリング装置の断
面図である。

【図２】本発明に係る電動パワーステアリング装置の実
施の形態１における減速機構部分の拡大断面図である。

【図３】本発明に係る電動パワーステアリング装置の弾
性継手の拡大断面図である。

【図４】本発明に係る電動パワーステアリング装置の実
施の形態２における減速機構部分の拡大断面図である。

【図５】従来における電動パワーステアリング装置の断
面図である。

【図６】従来における電動パワーステアリング装置の減
速機構部分の断面図である。

【符号の説明】

６ モータ ６０ 出力軸 ７１ 駆動歯車（ウォーム） ７２ 従動歯車（ウォームホイール） Ｏ１ 駆動歯車の軸心 Ｏ２ 出力軸の軸心 ９，１０ 弾性継手

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.⁷ 識別記号 ＦＩ テーマコート゛(参考） // Ｈ０２Ｋ 7/10 Ｈ０２Ｋ 7/10 Ｚ Ｂ６２Ｄ 119:00 Ｂ６２Ｄ 119:00

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 操舵補助用のモータの出力軸に繋がる駆
   動歯車及び該駆動歯車に噛合し、舵取機構に繋がる従動
   歯車を備え、前記モータの回転によって操舵補助するよ
   うにした電動パワーステアリング装置において、前記出
   力軸及び駆動歯車の軸心は互いにオフセットされてお
   り、前記出力軸及び駆動歯車を連結して該駆動歯車を従
   動歯車に向けて付勢する弾性継手を備えていることを特
   徴とする電動パワーステアリング装置。
2. 【請求項２】 前記弾性継手はその弾性復元力によって
   前記駆動歯車を前記モータと反対側へ付勢している請求
   項１記載の電動パワーステアリング装置。