JP2002080501A - 組織再生マトリックス用グリコサミノグリカン−ポリカチオン複合体とその製造方法 - Google Patents
組織再生マトリックス用グリコサミノグリカン−ポリカチオン複合体とその製造方法Info
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Abstract
軟骨、肝臓、血管、神経等、さまざまな組織再生マトリ
ックスとして使用できる、各組織に極めて類似した物性
を示し、生物学的機能も優れている組織再生材料の開発
を目的とする。 【構成】 グリコサミノグリカンとポリカチオンを縮合
反応により架橋した組織再生マトリックス用グリコサミ
ノグリカン−ポリカチオン複合体。グリコサミノグリカ
ンとポリカチオンをポリイオンコンプレックスを形成し
ない塩濃度で縮合剤として水溶性カルボジイミドを用い
た縮合反応により架橋することによって製造する。
Description
マトリックス用グリコサミノグリカン(GAG)−ポリ
カチオン複合体とその製造方法に関する。
が、加齢やスポーツ障害による変形性関節症等の関節疾
患の対策として軟骨再生材料の開発が切望されている。
軟骨組織の主成分は、II型コラーゲン、ヒアルロン
酸、コンドロイチン硫酸鎖が豊富なプロテオグリカンで
ある。これまで、ハイドロキシアパタイト−II型コラ
ーゲン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸自己組織化
体が、invivoにおいてある程度軟骨再生を促進する結果
が得られている。
(ジアミン、ジエポキシ、エピクロロヒドリン)により
架橋したもの、縮合剤(水溶性カルボジイミド)により
架橋したもの、ヒアルロン酸のカルボキシル基の部分に
疎水基を導入したもの等が報告されている。
コラーゲン複合体の調製は、コラーゲン溶液を凍結乾燥
したコラーゲンマトリックスへのGAGの固定化(J.S.
Pieper et al.,「Biomaterials」, 2000,21:581-593)
やGAG−コラーゲンコンプレックスを化学架橋する手
法が取られていた(特表平6−505642号公報、特
開平7−196704号公報)。
とコラーゲンとの複合体に関しては、コラーゲンスポン
ジに縮合剤を用いてグリコサミノグリカンを固定化する
手法と、グリコサミノグリカンとコラーゲンのポリイオ
ンコンプレックスを縮合剤を用いて架橋する手法が報告
されているが、これらの手法を用いると成型が困難であ
るという問題がある。
系において、軟骨、肝臓、血管、神経等、さまざまな組
織再生マトリックスとして使用できる、各組織に極めて
類似した物性を示し、生物学的機能も優れている組織再
生材料の開発を目的とする。
ミノグリカンと呼ばれる多糖類の一つであり、II型コ
ラーゲンはポリカチオンの一つである。ヒアルロン酸水
溶液とII型コラーゲン塩酸溶液は混合するとポリイオ
ンコンプレックス(PIC)を形成することが知られて
いる。これは、ヒアルロン酸の分子鎖がカルボキシル基
の解離により負に帯電(ポリアニオン)しており、一
方、II型コラーゲンは高分子鎖全体として正に帯電
(ポリカチオン)しているため(等電点8以上)であ
る。
(WSC:1−エチル−3−(3−(ジメチルアミノプ
ロピル)カルボジイミド)は、pH4から8の条件下で
安定にカルボキシル基を活性化し、その活性中間体はア
ミノ基および水酸基と反応し、アミドおよびエステルを
形成することが知られている。
カチオン複合体(ハイブリッド)ゲルの調製について検
討を行った結果、特定の塩濃度を用いてグリコサミノグ
リカンとポリカチオンとがポリイオンコンプレックスを
形成するのを抑制しつつ縮合剤を用いて架橋させること
により、WSCを用いた縮合反応によりグリコサミノグ
リカン−ポリカチオン複合体ゲルを得ることができ、軟
骨、肝臓、血管、神経等、さまざまな組織の優れた再生
材料を得ることができることを見出した。
ンとポリカチオンを縮合反応により架橋した組織再生マ
トリックス用グリコサミノグリカン−ポリカチオン複合
体である。
ポリカチオンをポリイオンコンプレックスを形成しない
条件で縮合剤として水溶性カルボジイミドを用いた縮合
反応により架橋することを特徴とする上記のグリコサミ
ノグリカン−ポリカチオン複合体の製造方法である。
ポリカチオンをポリイオンコンプレックスを形成しない
条件で縮合剤として水溶性カルボジイミドと2−ヒドロ
キシスクシンイミドを用いた縮合反応により架橋するこ
とを特徴とする上記のグリコサミノグリカン−ポリカチ
オン複合体の製造方法である。
ポリカチオンがポリイオンコンプレックスを形成しない
塩濃度において縮合反応により架橋することを特徴とす
る上記のグリコサミノグリカン−ポリカチオン複合体の
製造方法である。
リコサミノグリカン−ポリカチオンゲルからなる複合マ
トリックスを水で洗浄し、マトリックス中の塩のイオ
ン、水溶性カルボジイミド、および副生成物を除去する
ことを特徴とする上記のグリコサミノグリカン−ポリカ
チオン複合体の製造方法である。
ヒアルロン酸であり、ポリカチオンがII型コラーゲン
であり、0.4±0.05Mの水溶性の塩濃度において
縮合反応により架橋することを特徴とする上記のグリコ
サミノグリカン−ポリカチオン複合体の製造方法であ
る。
ン酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、ケラタン硫酸、
ヘパラン硫酸等の多糖類をいずれも用いることができ
る。ポリカチオンとしては、コラーゲン、キトサンを用
いることができる。コラーゲンには10数種のタイプが
あるが、種類は特に限定されない。キトサンは、カニ、
エビ等の甲殻類の殻の有機成分(キチン)を脱アセチル
化したものである。これらの中で、グリコサミノグリカ
ンの代表的なものとしてヒアルロン酸(略号Hyal
A)を用い、ポリカチオンとしてII型コラーゲンを用
いた場合について、以下に本発明を詳しく説明する。
は、(1)PICを形成しない塩濃度、すなわち、静電
的相互作用によりPICを形成しないような塩濃度で架
橋を行うことと、(2)WSCの安定性の高いpH4以
上で架橋を行うことである。
アルロン酸はカルボキシル基により分子として負に帯電
しており(ポリアニオン)、一方、コラーゲンは分子全
体で正に帯電している。塩を含まないヒアルロン酸水溶
液と塩を含まないコラーゲン水溶液を混合するとヒアル
ロン酸の負電荷とコラーゲンの正電荷によってポリイオ
ンコンプレックスとして沈殿が生じる。
する際に適量の塩が存在すると、塩の溶解によって生じ
たイオンがヒアルロン酸とコラーゲンの電荷を打ち消す
ためにポリイオンコンプレックスは形成されなくなる。
このような原理であるために用いる塩の種類は、水に溶
解する塩、例えば、NaCl、CaCl2、Na2SO 2
等、であればどのような塩でも使用できる。ただ、塩の
種類により最適塩濃度が若干変わることがある。水溶性
カルボジイミドで架橋を行うのは、このポリイオンコン
プレックスを形成しない塩濃度のときである。
状態でまだ存在している。この塩を除くには、大過剰の
水で洗浄する。ゲル中に含まれるイオンを除かないと、
ポリイオンコンプレックスによる架橋形成を行うことが
できない。すなわち、共有結合+静電的相互作用による
結合が形成されない。
成後、縮合剤を洗浄で除くことが可能であるため、架橋
剤の毒性を問題にしなくてよいこと、(2)生分解性ハ
イドロゲルが得られること、(3)縮合剤の濃度をコン
トロールすることにより架橋度のコントロール(ポアサ
イズのコントロール)が可能であること、(4)ハイド
ロゲルに組織の修復を早める作用のあるタンパク質であ
るTGF−β(Transforming Growth Factor beta) 、繊
維芽細胞の増殖を早める繊維芽細胞増殖因子FGF(Fib
roblast Growth Factor)、血管内皮細胞の増殖を早める
血管内皮細胞増殖因子VEGF(Vascular Endothelial
Growth Factor)等のサイトカイン類を内包させ、徐放す
ることも可能であること等である。
複合体は、含水率が90〜99重量%、ヒアルロン酸
(ポリアニオン)/コラーゲン(ポリカチオン)比(重
量)が50/50〜5/95、空孔率が90〜99容積
%である。架橋密度は、含水率に対応している。
ノグリカン−ポリカチオンゲルを形成直後の複合マトリ
ックスの模式図である。複合マトリックスを形成した直
後には、複合マトリックスに塩(図1の場合はNaC
l)が入っているので、NaイオンとClイオンがマト
リックス中に存在するために共有結合のみでマトリック
スが架橋されている。次に、複合マトリックスを大過剰
の水に入れ、マトリックス内部のNaイオン、Clイオ
ンを除く。
のゲルの水中での膨潤時の構造(共有結合+静電的相互
作用)を示す模式図である。この模式図は、大過剰の水
でマトリックスを洗浄し、マトリックス中のNaイオ
ン、Clイオン、水溶性カルボジイミドおよびウレア等
の副生成物を除去した後の構造を示す。この場合、水溶
性カルボジイミドによって形成した共有結合(アミドと
エステル結合)の他にも結合が形成されると考えられ
る。この結合は、COO−とNH 3+との静電的な相互作
用によるものである。これは、NaイオンとClイオン
がマトリックス内部から除かれるために未反応のカルボ
キシル基とアミノ基がコンプレックスを作り、見掛け上
の架橋点になるということである。
の混合比を1:1とした場合のヒアルロン酸溶液の種々
のpHにおけるPIC形成を500nmの光の透過率
(%)を調べることにより評価したグラフである。この
図は、ヒアルロン酸とコラーゲン水溶液(それぞれ1.
25%の濃度)を重量比1:1で混合したときに、どの
ようなpHの時にポリイオンコンプレックスを形成しな
くなるかを調べたものである。横軸にヒアルロン酸水溶
液のpHを取り、縦軸に500nmの光の透過率(分光
光度計[UV/Vis spectrometer] を使用)を取っている。
いうことであるから、ポリイオンコンプレックスが形成
していることを示す。100%に近づくほどポリイオン
コンプレックスが形成されないことを示している。ヒア
ルロン酸水溶液のpHが6から1.5の間では、透過率
がほとんど0%なので、ポリイオンコンプレックスが形
成している。PHが1になると透過率が約70%まで上
昇しているので、ポリイオンコンプレックスが形成され
なくなることが分かる。
NaCl)濃度におけるPIC形成を500nmの光の
透過率(%)を調べることにより評価したグラフであ
る。この図は、ヒアルロン酸とコラーゲン水溶液(それ
ぞれ1.25%の濃度)を重量比1:1で混合したとき
に、どのような塩濃度の時にポリイオンコンプレックス
を形成しなくなるかを調べたものである。横軸にヒアル
ロン酸とコラーゲンの混合液中に含まれるNaCl濃度
を取り、縦軸に500nmの光の透過率を取っている。
いうことであるから、ポリイオンコンプレックスが形成
していることを示す。100%に近づくほどポリイオン
コンプレックスが形成されないことを示す。NaCl濃
度が0.4M近くで透過率が急上昇し、0.4Mで透過
率が最大値を示していることから、0.4Mおよびその
近傍、数値で表現すれば0.4±0.05M程度でポリ
イオンコンプレックスが形成されなくなることが分か
る。
NaCl濃度の時に光の透過率(%)が最大となり、P
ICの形成が大幅に抑制されることが明らかとなった。
この理由は、低pHになるとヒアルロン酸およびII型
コラーゲンのカルボキシル基の解離が抑制される(pK
a以下)ため、II型コラーゲンのプロトン化したアミ
ノ基とコンプレックスを形成できな<なるためであると
考えられる。
過率が最大値を取る理由としては、以下のことが考えら
れる。すなわち、塩濃度が0.4Mまでは塩添加がPI
Cの形成を抑制する方向に働き、塩濃度が0.4Mを超
えると塩析効果によりコラーゲンが析出してくるためで
あると考えられる。
ラーゲンがPICを形成しない最適の条件は、pH1ま
たは塩濃度0.4Mのときであることが明らかとなっ
た。縮合剤のWSCが安定にカルボキシル基を活性化す
るpHは、4〜8であり、pH1の条件下では極めて不
安定である。そこで、塩濃度0.4Mの条件下で種々の
濃度のWSC(0〜1000mM)を添加し、架橋を行
った。
し、ゲルのマトリックスから縮合剤およびNaイオン、
Clイオンを除去し、これを凍結乾燥したマトリックス
の膨潤度[Swelling Ratio;乾燥したゲルが自重の何
倍、水を吸収するかという値=(湿潤ゲルの重量−乾燥
ゲルの重量)/乾燥ゲルの重量]とWSC濃度(mM)
の関係を示すグラフである。
合比が1:1の場合に、水溶性カルボジイミド(WS
C)の濃度を変化させたときに得られた複合体の膨潤度
がどのように変化するかを調べたものである。この図か
ら言えることは、縮合剤の濃度をコントロールすること
によって複合体中に含まれる水の含量をコントロールで
きるということである。膨潤度が小さくなるということ
は、複合体中に含まれる水の含量が少なくなることを意
味するので、複合体は硬くなる。
の混合比を変えた場合の、マトリックスの転化率とWS
C濃度(mM)の関係を示すグラフである。この図は、
水溶性カルボジイミド(WSC)の濃度が転化率に及ぼ
す影響を調べた結果を示すものである。対象の複合体
は、ヒアルロン酸とコラーゲンの比率が1:1から1:
8までのものである。水溶性カルボジイミドの濃度を増
加させていくと、およそ20〜30mMで100%近く
に達していることから、ほぼ仕込通りのヒアルロン酸−
II型コラーゲン複合体が得られることを示している。
カルボジイミドを添加しないと定量的に複合体が得られ
ないということを示している。WSC濃度が100mM
以上のときには転化率はさらに大きくなる。ヒアルロン
酸の分子量、あるいは、ヒアルロン酸とコラーゲンの濃
度を上げると水溶性カルボジイミド濃度は20mMより
低い値でも架橋は可能である。
WSC濃度(mM)の関係を示すグラフである。この図
は、ヒアルロン酸とコラーゲンの比率を1:1から1:
8まで変えた場合についても水溶性カルボジイミドの濃
度をコントロールすることによって膨潤度の制御が可能
であることを示している。
イミドを用いてグリコサミノグリカンとポリカチオンの
架橋を行う際に、ポリイオンコンプレックスを形成しな
い条件で架橋を行うものであり、ポリイオンコンプレッ
クスを形成させない条件は2つある。一つは、グリコサ
ミノグリカン(例えば、ヒアルロン酸)のカルボキシル
基を解離させないpH、もう一つは、ポリイオンコンプ
レックスを形成しない最適な塩濃度である。ポリイオン
コンプレックスを形成しないこの最適の条件は、ヒアル
ロン酸とII型コラーゲンの組み合わせの場合は、pH
が1の時と、NaCl濃度が0.4±0.05M(pH
は、pH調整をしない状態でおよそ5)の時である。こ
の値は、グリコサミノグリカンとポリカチオンの他の組
み合わせ(例えば、コンドロイチン硫酸とコラーゲン)
では、多少変動するので、それぞれの組み合わせによっ
て最適値を定める。
橋を行う場合には、水溶性カルボジイミドの安定性を考
える必要がある。水溶性カルボジイミドが安定に反応す
るpHは、4〜8であるから、塩を添加した場合には、
水溶性カルボジイミドが安定に存在するpH4〜8の範
囲内にあるために架橋が可能となる。
Hが4〜8の範囲のときに安定にカルボキシル基を活性
化し、アミノ基または水酸基と反応する試薬である。つ
まり、水溶性カルボジイミドが安定に存在してポリイオ
ンコンプレックスを形成しない条件というのは、NaC
l濃度が0.4±0.05M(このときのpHは、およ
そ5)の時ということになる。水溶性カルボジイミドの
濃度は、グリコサミノグリカンの分子量、あるいはグリ
コサミノグリカンとポリカチオンの濃度を上げると低い
濃度でも架橋が可能である。
クシンイミドを組み合わせて用いてもよい。2−ヒドロ
キシスクシンイミドは、水溶性カルボジイミドの反応効
率を上げるために使用するもので、その濃度は、水溶性
カルボジイミドが1に対して1〜0.1が好ましい。
合比は任意に変えることができ、混合比を変えることに
よって、物性や生物学的機能が変わってくる。ヒアルロ
ン酸等グリコサミノグリカンの分子量は、この系では、
数万〜数100万までどのような分子量のものについて
も適用できる。
って複合体中に含まれる水の含量をコントロールでき
る。複合体中に含まれる水の含量が少なくなる、つまり
膨潤度が小さくなると複合体は硬くなる。硬いのがいい
のかどうかは、複合体を使ってどのような組織を作るか
による。例えば、複合体を生体内で早く分解させたい時
には、水溶性カルボジイミドの濃度を下げて、膨潤度を
上げてやることが必要であり、硬いものが必要な場合に
は、水溶性カルボジイミドの濃度を上げることが必要と
なる。ただし、水溶性カルボジイミドは、生体に対して
いいものではないので、濃度が少なく、細胞の増殖能が
高いものがより好ましい。
オン(NaClの場合はNaイオンとClイオン)の状
態で存在しているので、ゲルを大過剰の水で洗浄して塩
のイオンを除去する。洗浄方法としては、例えば、ゲル
の体積で100倍量以上の脱イオン水に生成したゲルを
浸漬する。洗浄によって、ゲルの中に含まれるイオンの
他に、未反応の水溶性カルボジイミドおよびウレア等の
副生成物が除去される。ゲル中に含まれるイオンを除く
ことによって共有結合+静電的相互作用による結合が形
成される。
前のゾル状の水溶液を適当な鋳型に流し込み、反応を行
うことによって、さまざまな形の耳や鼻、軟骨欠損部位
等複雑な形状のものまで容易に形成することが可能であ
る。使用法については、スポンジ状、ゲル状のものを使
用し、そのマトリックスの中に軟骨を作る場合は、軟骨
細胞を、血管を作る場合は、血管内皮細胞を入れて培養
する。マトリックス自身として使用可能の他、細胞の増
殖、分化を促すための足場としてもマトリックスを使用
できる。また、細胞等の実験に用いるには、水中で洗浄
した後、生体中の浸透圧とほぼ等しい濃度の塩濃度を持
つリン酸緩衝液中に入れ、複合体中の水をリン酸緩衝液
に置換した後に使用する。
製)1.25w/v%水溶液およびII型コラーゲン
(新田ゼラチン製)1.25w/v%0.01N−HC
lの混合溶液に0.4MのNaClを添加し、pHがお
よそ5の状態で、縮合剤である水溶性カルボジイミド水
溶液を滴下し、十分攪拌、脱泡した後、30℃で2時間
放置した。その後、得られたゲルを大過剰の水で2日間
洗浄し、ゲルのマトリックスから縮合剤、副生成物、お
よびNaイオン、Clイオンを除去した。これを1日間
凍結乾燥した。
コラーゲンの比および添加した水溶性カルボジイミドの
量(mM)を下記のとおりとした。実施例1=1:8−
100、実施例2=1:1−100、実施例3=1:8
−20、実施例4=1:4−20、実施例5=1:2−
20、実施例6=1:1−20。例えば、1:8−10
0の実施例1では、ヒアルロン酸とコラーゲンの比率が
1:8で、水溶性カルボジイミドの濃度が100mMを
示している。なお、コントロールとしてTCPS(Tiss
ue Culture PolyStylene;普段用いられている細胞培養
用のシャーレ)とコラーゲン(20mMの水溶性カルボ
ジイミドで架橋)を用いた。
ゲンの比および添加した水溶性カルボジイミドの量が
1:1−200mMのもの、ヒアルロン酸、コラーゲン
について、それぞれFT−IRによりエステル形成の同
定を行った結果を示す。実施例6について、化学反応に
よって共有結合が形成していることが確認できる。
とII型コラーゲンマトリックスを37℃で7日軟骨細
胞培養し、細胞数をカウントした結果を示し、各実施例
のそれぞれのヒアルロン酸対コラーゲン比−(WSC濃
度)と相対成長率を棒グラフで示している。
m、直径15mmのディスク状の複合体を用いた。その
上に、子牛の関節から取り出し増殖させた軟骨細胞を1
×10 5 個播種した。このときの培養液の組成は、DM
EM培地に10%ウシ血清(FBS)が入ったものを使
用した。複合体上に細胞を播種した後、4日後に培養液
を交換し、その後3日後(Total の培養日数7日)に細
胞数をCell Counting Kit (同仁化学薬品(株) 製)を
用いて計数した。
相対的な細胞数を示してある。この結果から、まず言え
ることは、本発明による複合体は、どのような比率でも
有意(4〜7倍)に軟骨細胞の増殖を促進するというこ
とである。これが、コラーゲンのみであると全くといっ
ていいほど細胞数が増えていないが、ヒアルロン酸と複
合化することによって優れた細胞増殖能があることが分
かる。
の違いというものは、この場合には、認められない。水
溶性カルボジイミドの濃度の違いも有意な差とは言えな
い。細胞の形態には差があり、TCPSとコラーゲン上
では、軟骨細胞が繊維状の形態をしており、実施例の複
合体上では、軟骨細胞特有の丸い形態をしていることか
ら細胞に対する適合性が高いと言える。
は実施例3の条件である。図7では、ヒアルロン酸とコ
ラーゲンとの比が1:4または1:8で水溶性カルボジ
イミドが20mMの時に膨潤度が極小値を取っている。
これは、複合体中に含まれる水が他のものに比べて少な
く、硬いことを示す。すなわち、取り扱いやすいという
ことである。また、図9で、実施例3と実施例4を比較
すると細胞数にそれ程差はないとは言え、実施例3の方
が、より生物学的に活性が高いと言える。実施例6は最
も細胞数が多いが強度が弱く最適とは言えない。
チオン複合ゲル、例えばヒアルロン酸−II型コラーゲ
ン複合ゲルは、耳、鼻、軟骨欠損部等の複雑な形状を容
易に形成することが可能であり、架橋剤の毒性を考慮す
る必要がなく、生体内の酵素(ヒアルロニダーゼ、コラ
ゲナーゼ)により分解することが予想され、組織再生マ
トリックスとしての有用性が極めて大きいものである。
ル形成時の構造(共有結合)を示す模式図である。
ルの水中での膨潤時の構造(共有結合+静電的相互作
用)を示す模式図である。
るPICの形成を500nmの光の透過率(%)を調べ
ることにより評価したグラフである。
l)濃度におけるPICの形成を500nmの光の透過
率(%)を調べることにより評価したグラフである。
リックスの膨潤度とWSC濃度(mM)の関係を示すグ
ラフである。
合比を変えた場合の、ヒアルロン酸とII型コラーゲン
マトリックスの転化率とWSC濃度(mM)の関係を示
すグラフである。
合比を変えた場合の、ヒアルロン酸とII型コラーゲン
マトリックスの膨潤度とWSC濃度(mM)の関係を示
すグラフである。
ゲンマトリックスについてのFT−IRによるエステル
形成の同定を示すグラフである。
酸とII型コラーゲンマトリックスを用いて軟骨細胞培
養したヒアルロン酸対コラーゲン比−(WSC濃度)と
相対成長率を示すグラフである。
Claims (6)
- 【請求項1】 グリコサミノグリカンとポリカチオンを
縮合反応により架橋した組織再生マトリックス用グリコ
サミノグリカン−ポリカチオン複合体。 - 【請求項2】 グリコサミノグリカンとポリカチオンを
ポリイオンコンプレックスを形成しない条件で縮合剤と
して水溶性カルボジイミドを用いた縮合反応により架橋
することを特徴とする請求項1記載のグリコサミノグリ
カン−ポリカチオン複合体の製造方法。 - 【請求項3】 グリコサミノグリカンとポリカチオンを
ポリイオンコンプレックスを形成しない条件で縮合剤と
して水溶性と2−ヒドロキシスクシンイミドを用いた縮
合反応により架橋することを特徴とする請求項1記載の
グリコサミノグリカン−ポリカチオン複合体の製造方
法。 - 【請求項4】 グリコサミノグリカンとポリカチオンが
ポリイオンコンプレックスを形成しない塩濃度において
縮合反応により架橋することを特徴とする請求項2また
は3記載のグリコサミノグリカン−ポリカチオン複合体
の製造方法。 - 【請求項5】 架橋によって形成したグリコサミノグリ
カン−ポリカチオンゲルからなる複合マトリックスを水
で洗浄し、マトリックス中の塩のイオン、水溶性カルボ
ジイミド、および副生成物を除去することを特徴とする
請求項4記載のグリコサミノグリカン−ポリカチオン複
合体の製造方法。 - 【請求項6】 グリコサミノグリカンがヒアルロン酸で
あり、ポリカチオンがII型コラーゲンであり、0.4
±0.05Mの水溶性の塩濃度において縮合反応により
架橋することを特徴とする請求項4または5記載のグリ
コサミノグリカン−ポリカチオン複合体の製造方法。
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Cited By (39)
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