JP2002070844A - 軸受機構 - Google Patents

軸受機構

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JP2002070844A
JP2002070844A JP2000259750A JP2000259750A JP2002070844A JP 2002070844 A JP2002070844 A JP 2002070844A JP 2000259750 A JP2000259750 A JP 2000259750A JP 2000259750 A JP2000259750 A JP 2000259750A JP 2002070844 A JP2002070844 A JP 2002070844A
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Japan
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bearing
peripheral surface
dynamic pressure
outer peripheral
base material
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Application number
JP2000259750A
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English (en)
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Jun Yatazawa
純 谷田沢
Makio Kato
万規男 加藤
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Daido Steel Co Ltd
Original Assignee
Daido Steel Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 比較的低速の領域においても高精度の潤滑効
果を維持して、軸受部における軸体と軸受体との接触等
による損耗を少なくし、一方高速回転領域においても十
分な耐摩耗性を維持して、長寿命化を図れる軸受機構。 【解決手段】 固定軸(第一部材)2の外周面2a’と
これに対向するスリーブ(第二部材)3の挿通孔3a’
内周面との少なくとも一方の周面に、気相成膜法によっ
てDLC被膜2b,3bを形成する。このようにして形
成された耐摩耗性固体潤滑被膜は基材から剥れにくく、
低速から高速にわたって十分な耐摩耗性とともに高精度
の潤滑効果を有しており、動圧軸受部として長寿命化を
図ることができる。また、外周面2a’とこれに対向す
る挿通孔3a’内周面との少なくとも一方の周面に対し
て、散点状の微小な凹凸Qを分散形成して面荒らしを施
すことで、比較的低速の領域においても固定軸とスリー
ブとの接触等による損耗を少なくできる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は軸受機構に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、軸受用材料として、滑り軸受
用にはCu−Pb系合金、鉛青銅合金等が多く用いら
れ、転がり軸受用には高炭素クロム軸受鋼が一般に使用
されてきた。ところで近年パーソナルコンピュータやO
A機器の発達はめざましく、記憶装置のハードディスク
駆動機構や、コピー機あるいはレーザープリンタ装置等
のポリゴンミラー駆動機構等に用いられる駆動モータ等
の軸受機構においては、例えば毎分1万回転以上の高速
運転を要求される。そして、このような高速運転でも振
れ回りの少ない回転を実現するために、動圧軸受が採用
されることがある。
【0003】このような動圧軸受としては、例えば特開
平5−215128号公報に開示されているように、円
筒状の軸受体の内側に回転軸が挿通されるとともに、そ
の回転軸の外周面に、例えばヘリングボーン状の動圧発
生溝を周方向に形成したものが知られている。該構造に
おいては、回転軸を軸受体内部で高速回転させると、動
圧発生溝への作動流体のポンピング作用によって、回転
軸と軸受体との隙間にラジアル動圧が発生し、例えば振
動その他の外乱により回転軸線にラジアル方向の力が作
用した場合は、該動圧が復元力として作用するので、振
れ回りの少ない安定した回転を実現することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の動圧軸受において採用されたヘリングボーン状の動
圧発生溝を使用する機構では、通常毎分1万〜2万回転
もの高速回転を行わないと十分なラジアル動圧が発生せ
ず、このためかかる高速運転を常時維持する必要があ
る。このとき、軸受用材料の硬度が十分でないと、動圧
軸受部(回転軸、軸受体等)の耐摩耗性が十分に確保さ
れなくなるおそれがあり、軸受機構の寿命に影響を及ぼ
す。一方、回転機構の起動あるいは停止時等の低速回転
状態では、必然的に発生する回転トルクの増大と動圧不
足のため、回転軸と軸受体とが接触し、損耗を起こしや
すくなる。また、作動流体が潤滑油等の液体の場合に
は、高速回転領域でのいわゆる油切れによっても回転軸
と軸受体との接触等の問題が発生しやすくなる。なお、
潤滑油等を使用せず空気圧の形でラジアル動圧を発生さ
せるようにした動圧軸受も提案されているが、空気圧利
用の場合、本発明者らの検討によれば、十分なラジアル
動圧を発生させるにはさらに高速の毎分4〜5万回転以
上が必要となり、上記の問題がさらに助長される形とな
る。
【0005】本発明の課題は、比較的低速の領域におい
ても高精度の潤滑効果を維持して、軸受部における軸体
と軸受体との接触等による損耗を少なくし、一方高速回
転領域においても十分な耐摩耗性を維持して、長寿命化
を図れる軸受機構を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段及び作用・効果】上記の課
題を解決するために、本発明の軸受機構の第一の構成
は、軸状の第一部材と、その第一部材が挿通される挿通
孔を有し、該挿通孔における前記第一部材の軸線周りの
相対回転を許容した状態にて、前記挿通孔内面と前記第
一部材の外周面との間に、作動流体にて満たされた所定
量の軸受隙間を形成する第二部材とを備え、前記第一部
材の外周面とこれに対向する前記第二部材の内周面との
少なくとも一方は、ダイス鋼にて構成される基材と、そ
の基材の表面に気相成膜法によって形成される耐摩耗性
固体潤滑被膜とを含み、前記第一部材と前記第二部材と
を相対回転させることにより、前記軸受隙間においてラ
ジアル動圧を発生させるようにしたことを特徴とする。
【0007】また、本発明の軸受機構の第二の構成は、
軸状の第一部材と、その第一部材が挿通される挿通孔を
有し、該挿通孔における前記第一部材の軸線周りの相対
回転を許容した状態にて、前記挿通孔内面と前記第一部
材の外周面との間に、作動流体にて満たされた所定量の
軸受隙間を形成する第二部材とを備え、前記第一部材と
前記第二部材との少なくとも一方(以下、被選択部材と
いう)の基材がダイス鋼にて構成され、前記第一部材の
外周面とこれに対向する前記第二部材の内周面とのうち
前記被選択部材の周面に対して、散点状の微小な凹凸を
分散形成するとともに、気相成膜法による耐摩耗性固体
潤滑被膜が形成され、前記第一部材と前記第二部材とを
相対回転させることにより、前記軸受隙間においてラジ
アル動圧を発生させるようにしたことを特徴とする。
【0008】このように、本発明は、第一部材と第二部
材との少なくとも一方の基材がダイス鋼にて構成され、
その表面(具体的には、第一部材の外周面とこれに対向
する第二部材の内周面との少なくとも一方の周面)に、
気相成膜法によって耐摩耗性固体潤滑被膜を形成するこ
とを主要構成要素の一つとしている。この気相成膜法に
よれば、気相原料から硬質高純度の耐摩耗性固体潤滑素
材を高密度で安定的にかつ燒結助剤等を要することなく
厚さを調整して被膜形成される。したがって、第一部材
と第二部材との少なくとも一方(以下、被選択部材とい
う)の基材の硬度が例えばロックウェル硬さ50HRC
以上であり、その基材表面に、耐摩耗性固体潤滑被膜を
厚さ2μm以下で容易に形成できる。しかもこのように
して形成された耐摩耗性固体潤滑被膜は基材から剥れに
くく、低速から高速に至る全回転領域にわたって十分な
耐摩耗性とともに高精度の潤滑効果を有しており、動圧
軸受部として長寿命化を図ることができる。なお、ロッ
クウェル硬さHRCは、JIS Z2245−1998に規
定された方法により測定されたものを意味する。
【0009】ここで、気相成膜法による耐摩耗性固体潤
滑被膜の形成は、既知の方法、例えば以下のようなコー
ティング法を例示できる; (1)物理的手法(以下、PVDという) ・真空蒸着法 ・スパッタリング法 ・イオンプレーティング法 (2)化学的手法(以下、CVDという) ・熱分解CVD ・不均等化反応CVD ・水素還元CVD (3)ハイブリッドCVD ・プラズマCVD ・レーザCVD
【0010】このうち、鋼材の表面に耐摩耗性の薄膜
(例えば厚さ10μm以下)をコーティングするような
場合、厚さが均一で基材との密着度が高い被膜が得やす
いので、イオンプレーティング法が用いられることが多
い。この方法は、真空アーク放電を利用し、陰極に取り
付けた被膜材料を蒸気化又はイオン化することによって
基材上に被膜を形成するものである。
【0011】本発明における耐摩耗性固体潤滑被膜とし
ては、例えば非晶質ダイヤモンド状炭素(Diamond Like
Carbon;以下、DLCという)被膜、窒化クロム被膜、
窒化チタン被膜等が好適に用いられる。これらの被膜
は、軸受用材料の表面被覆材として用いられたとき、十
分な硬度を有し、鋼材との密着性もよい。耐摩耗性固体
潤滑被膜は、これらの被膜のうちのいずれか1種のみか
ら形成されていても、また2種以上の被膜を複数積層し
て形成されていてもよい。
【0012】そして、上記被選択部材の基材がダイス鋼
にて構成され、この基材の表面硬度はロックウェル硬さ
で50〜64HRCの範囲が望ましい。基材の表面硬度
がこの範囲にあれば基材表面に固体潤滑被膜がしっかり
と密着固定される。なお、基材の表面硬度が50HRC
未満では、固体潤滑被膜との硬度差が大きすぎて固体潤
滑被膜が剥離するおそれがある。一方、基材の表面硬度
が64HRC超では、基材として硬すぎて割れ等を生じ
やすくなる。
【0013】ところで、耐摩耗性固体潤滑被膜として、
例えばDLC被膜、窒化クロム被膜、窒化チタン被膜の
うちのいずれかを選定し、被選択部材の基材として例え
ばダイス鋼を選定するに当たっては、次のような条件を
満足する必要がある。 (a)被選択部材の基材とその表面にコーティングされ
る耐摩耗性固体潤滑被膜であること (b)基材が焼入れ・焼戻しされた後、耐摩耗性固体潤
滑被膜がコーティングされること (c)基材の焼戻し温度が、耐摩耗性固体潤滑被膜のコ
ーティング処理温度以上であること (d)(c)の焼戻し後の基材表面硬度が焼戻し前の硬
度と同等以上であること
【0014】軸受用材料のように表面硬度を要する材料
として鋼材を用いる場合、焼戻しによって焼き入れ後よ
りも硬度を増す性質(焼戻し硬化)を利用することがあ
る。例えば、炭素工具鋼(SK材)を用いる場合に焼戻
し温度はおよそ150〜200℃であり、表面硬度はロ
ックウェル硬さで50HRC以上が得られる。さらに表
面硬度を増すために基材表面に耐摩耗性固体潤滑被膜を
コーティングしようとすると、次のような問題が発生す
る。すなわち、耐摩耗性固体潤滑被膜のコーティング処
理温度が上記焼戻し温度を上回る場合、焼戻し時に基材
に存在した残留オーステナイトが被膜コーティング処理
の際の加熱によってマルテンサイトに変態し、この変態
に伴って基材に寸法変化(体積膨張)が発生する。
【0015】このように、被膜コーティング処理の際に
寸法変化が発生する原因は、焼戻し時の残留オーステナ
イトの存在と、被膜コーティング処理温度より低い焼戻
し温度とに帰結する。なお、イオンプレーティング法に
よる被膜コーティング処理温度は、例えばDLC被膜で
約300℃、窒化クロム被膜で約400℃、窒化チタン
被膜で約500℃である。そこで例えば、被選択部材の
基材としてダイス鋼(一例として、DC53,SKD1
1等)を用い、焼入れ温度を1000〜1100℃と
し、焼戻し温度を500〜550℃とすれば、上記2つ
の原因を解消でき、この結果、基材表面硬度50〜64
HRCの被選択部材を得ることができる。なお、耐久性
を増すために焼戻しを2回以上行う場合がある。
【0016】次に、本発明は、第一部材の外周面とこれ
に対向する第二部材の内周面との少なくとも一方(以
下、荒らし面という)の周面に対して、散点状の微小な
凹凸を分散形成して面荒らしを施すことを主要構成要素
の一つとしている。散点状の微小な凹凸を分散形成して
面荒らしすることで、従来の動圧発生溝を使用する従来
の軸受機構と比べて小さい回転速度で十分なラジアル動
圧を発生させることができるので、回転機構の起動ある
いは停止時等の低速回転状態において動圧不足状態とな
る時間が短くなり、ラジアル動圧軸受部における部材損
耗を起こしにくくすることができる。そして、この荒ら
し面に前述の耐摩耗性固体潤滑被膜を形成することによ
り、荒らし面での高精度かつ高硬度の潤滑効果が得られ
るので、第一部材と第二部材との接触等による部材の損
耗を極力抑えることができる。
【0017】ところで、荒らし面に形成する散点状の微
小な凹凸は、例えば平均粒子径が5〜100μmの範囲
にて調整された打撃粒子を、凹凸の形成面部(上記の荒
らし面の形成部である)に対し50〜300m/秒の速
度にて投射することにより形成することができる。該方
法によれば、散点状の微小な凹凸を分散形成する面荒ら
しする加工を簡単に行うことができ、例えばフォトエッ
チング等による溝加工等と比較して加工コストを削減す
ることができる。
【0018】打撃粒子としては、形成面部を構成する材
質よりも硬質の粒子を使用することにより、凹凸形成を
効率よく行うことができる。例えば、形成面部の材質が
Fe系材料である場合、硬質粒子の材質としては、炭化
珪素、アルミナ、ジルコニア、窒化珪素等のセラミック
粒子、ガラス粒子、あるいは高速度工具鋼、ステンレス
鋼(例えば高炭素ステンレス鋼)等の金属粒子を使用す
ることができる。なお、形成面部よりも硬質でない打撃
粒子を用いた場合でも、凹凸形成を行うことができる場
合がある。例えば、形成面部硬さの50%以上の硬度を
有していれば、形成面部よりも硬質でない打撃粒子(例
えば、高速度工具鋼やステンレス鋼の粒子)を用いて
も、凹凸形成を行える場合が多い。
【0019】なお、打撃粒子の形状としては、球状の粒
子を使用することが、微小な凹凸を均一に分散形成する
上で特に望ましい。この場合、なるべく大きさの揃った
球状粒子を使用すれば、打撃力を一様化できるのでさら
に有利である。なお、具体的には、使用する打撃粒子の
平均粒径をdmとし、粒径dの標準偏差をσdとしたとき
に、σd/dmが0.05未満であるのがよい。なお、均
一なラジアル動圧を発生させるためには、個々の凹凸形
状や寸法のばらつきを抑制することが望ましいといえる
が、この場合、例えば、形成面部に対し打撃粒子の投射
を複数回繰り返すことにより凹凸形成することが効果的
である。
【0020】なお、散点状の微小な凹凸の分散形成(面
荒らし)は、耐摩耗性固体潤滑被膜の形成に先立って行
うことが望ましい。潤滑性能を高めるために被膜の硬度
は基材よりも高くなるように調整されるので、被膜の形
成後に面荒らしを行う場合には、打撃粒子の硬度や投射
速度を高レベルに保持する必要があり、実用的ではな
い。
【0021】本発明において、動圧発生溝を利用する従
来の軸受機構と比べて低速にて動圧発生できる理由とし
ては、第一部材の外周面とこれに対向する第二部材の内
周面との少なくとも一方に上記した微小な凹凸を分散形
成することで、第一部材の外周面と第二部材の内周面の
軸受隙間に存在する作動流体が、凸部によって狭まった
隙間へ誘い込まれたときに発生するくさび膜効果の寄与
が考えられる。くさび膜効果は、第一部材と第二部材と
が相対的に偏心したときの隙間の局所的な狭小化によ
る、いわばマクロ的な要因によっても生ずるが、これに
凹凸形成によるミクロ的なくさび膜効果が相乗的に作用
して、動圧発生効果がさらに高められるものと考えられ
る。また、この凹凸は、従来の動圧発生溝と比較しては
るかに細かく分散して形成されているので、一層均一で
高レベルなくさび膜効果が期待できる。
【0022】また、例えば円筒状の軸受体の内側に挿通
される回転軸にアンバランスが存在していたり、ラジア
ル方向に外力や振動等の外乱が発生して、回転軸に周期
的、および非周期的な振れ回りが生じる。全ての振れ回
りのうち、周期的な振れ回りであれば、振れ回りによっ
てずれる位置が定形的に把握でき、回転軸に対しての補
正は可能である。しかしながら、非周期的に発生する振
れ回りについては、時期並びに位置がランダムとなるの
で、補正は不可能となる。しかしながら、上記のごとき
本発明の軸受機構においては、挿通孔における第一部材
の軸線回りの非周期振れの偏心率を、20%以下の小さ
な範囲に収めることが可能となる。例えば、軸受隙間が
3μmであれば非周期振れは0.6μm以下とすること
ができる。
【0023】第一部材と第二部材とのうち固体潤滑被膜
が形成された周面の表面粗さが、最大高さRyで0.5
〜2.5μmの範囲にて調整されている。このように第
一部材の外周面と第二部材の内周面との少なくとも一方
に形成される荒らし面形成部の表面粗さを最大高さRy
で0.5〜2.5μmの範囲にて調整してあると、軸受
隙間に満たされた作動流体が、第一部材と第二部材との
相対回転によって乱流状態にて流動できる場合がある。
ただし、最大高さRyが上記範囲外になると乱流状態が
維持できないおそれがある。なお、最大高さRyは、J
IS B0601−1994に規定された方法により測定さ
れたものを意味する。そして、このときの基準長さと評
価長さとは、当該JISにおける標準値を採用する。
【0024】次に、上記表面粗さを有する荒らし面は、
例えば軸状の第一部材の外周面に対しては、硬質粒子投
射等による加工を適用しやすいので、極めて容易に形成
できる。この場合、第二部材の内周面は、少なくとも最
大高さRyを2.5μm以下に調整することが、摩擦増
大による部材損耗を回避する観点において望ましいとい
える。そして、ラジアル動圧発生による回転軸線の振れ
回り防止効果をさらに高めるためには、第二部材の内周
面も同様の荒らし面とすることが一層望ましい。
【0025】ここで、平行な2平板間に流体が満たされ
て、一方の板が固定され、他方の板が移動するとき、移
動する流体には慣性力と粘性力が作用している。この2
つの力の比をとったものがレイノルズ数Reとして知ら
れている。流体の密度をρ、粘性係数をμ、流動速度を
V、板間距離をLとしたとき、 Re=慣性力/粘性力=(ρV)/(μVL)=(VL)/ν (1) と表わされる。ただし、ν=μ/ρは動粘性係数であ
る。式(1)において、Re=2320のとき臨界レイノ
ルズ数と呼び、Re<2320で層流、Re>2320
で乱流となることもよく知られている。
【0026】ところで、動圧軸受部の負荷容量を増加さ
せるには、 (a)動圧軸受部の軸受内径(軸受体の内径)又は軸受
長(軸受体の長さ)を大きくとることにより軸受面積を
増大させる (b)動粘性係数νの大きい流体を使用する (c)回転側部材の回転数を増加させる (d)軸受隙間を減少させる 等の方法がある。しかし、軸受機構の構造上の制約(小
型化の要請等)等から、これらの方法の実現には困難を
伴う。そこで、式(1)において、 Re=(V/ν)・L (1)’ と表わしたとき、板間距離Lが一定で、流動速度Vが大
になると動粘性係数νが見掛け上大きくなる。すなわ
ち、上記(b)項と同様の効果が得られ、これによって
動圧軸受部の負荷容量を増加させることが可能となる。
【0027】そのために、軸受隙間を挟んで対向する第
一部材外周面と第二部材内周面との少なくとも一方に、
散点状の微小な凹凸を分散形成して面荒らしし、その表
面粗さを最大高さRyで0.5〜2.5μmの範囲に調
整することで、従来よりも低速回転の領域においても作
動流体の流動速度Vが大になり、乱流となって流動する
ことができる。
【0028】そして、ラジアル動圧軸受部において部材
損耗が起こりにくい十分なラジアル動圧を発生させるた
め、また、軸受隙間に満たされた作動流体を乱流状態に
て流動させるため、第一部材の外周面と第二部材の内周
面との相対回転数は、10000rpm以上に調整する
ことが望ましい。該回転数が10000rpm未満にな
ると、発生する動圧が不足し、接触摩擦増大による部材
損耗を招きやすくなり、かつ、作動流体の流動が層流状
態となって、動圧軸受部の負荷容量が減少する。また本
発明の軸受機構においては、前述の通り、従来の軸受機
構よりも低速回転領域(例えば2000〜20000r
pm程度、あるいはさらに低速の2000〜15000
rpm程度)においても、十分な動圧発生が可能であ
り、軸受隙間に満たされた作動流体が乱流状態にて流動
することができる。ただし、該回転数範囲に限定される
ものではなく、例えば上記以上の速度で高速回転する軸
受部に対し適用することも十分に可能であり、このよう
な場合には、動圧による摩擦低減効果により部材の寿命
が延びる効果も期待できる。
【0029】また、第一部材の外周面とこれに対向する
第二部材の内周面との少なくとも一方に、前記した散点
状の微小な凹凸とともに、ラジアル動圧発生に寄与する
溝部を形成することもできる。このような溝部を付加す
ることにより、ラジアル動圧発生による振れ回り防止効
果を一層高めることができる。
【0030】次に、本発明においては、ラジアル動圧発
生効果を十分に高める上で、第一部材の外径を2r1、
第二部材の内径を2r2としたときに、r2−r1の値を
0.2〜20μmの範囲にて調整することが望ましい。
r2−r1は、いわば軸受隙間の大きさを反映したパラメ
ータであって、これが0.2μm未満になると、第一部
材外周面と第二部材内周面とが接触しやすくなり、摩擦
増大による部材損耗を招きやすくなる場合がある。他
方、r2−r1が20μmを超えると、隙間のシール性が
損なわれ、発生する動圧が不足する場合がある。r2−
r1の値は、より望ましくは1〜10μmとするのがよ
い。なお、r1及びr2は、上記外周面あるいは内周面に
対して測定位置を変えながら外径2r1あるいは内径2
r2を測定したときに、2r1の測定最大値を2r1maxと
し、2r2の測定最小値を2r2minとして、それぞれ2
r1max/2及び2r2min/2にて算出されたものを意味
するものとする。
【0031】次に、第一部材の外径を2r1、第二部材
の内径を2r2、各面の円筒度をCとしたときに、C≦
(r2−r1)/2を満足していることが望ましい。Cが
(r2−r1)/2を超えると、第一部材外周面と第二部
材内周面とが接触しやすくなり、摩擦増大による部材損
耗を招きやすくなる場合がある。なお、本発明において
円筒度は、JIS B0621の5.4に定義されたも
のを採用する。
【0032】なお、作動流体がオイル等の液体であって
も本発明の効果は十分発揮されるが、気体、とりわけ圧
縮性流体である空気において、ラジアル動圧軸受部の負
荷容量を増加させる効果が顕著であり、液体の場合に必
要な密封シールが不要であることとあいまって、用途の
拡大に寄与するところが大きい。
【0033】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につ
き、図面に示す実施例を参照して説明する。 (実施例1)図1は、本発明の軸受機構を使用したハー
ドディスク駆動機構の一例を示すものである。該ハード
ディスク駆動機構100は、モータベース部8に対し、
その片面から立ち上がる形態でボルト9により取り付け
られた第一部材としての固定軸2(固定側部材)と、そ
の外側に回転可能に配置された第二部材としてのスリー
ブ3(回転側部材)とを備え、それら固定軸2とスリー
ブ3とは軸受機構1のラジアル動圧軸受部20を構成し
ている。
【0034】固定軸2の外周面2aは円筒状面とされ、
固定軸2の上方の端面には断面円形状の凹部2cが軸線
方向に所定深さで形成されている。また、前記したスリ
ーブ3は、軸線方向の挿通孔3aを有する筒状に形成さ
れ、該挿通孔3aに対し固定軸2が挿通されるととも
に、スリーブ3の外周面は後述するスラストベース部1
5の内周面に固定されている。そして、挿通孔3aの内
周面と、固定軸2の外周面2aとの間には、ラジアル動
圧軸受部20の軸受隙間Gが形成され、この軸受隙間G
は、空気(すなわち気体)で満たされた状態となってい
る。
【0035】内周面にスリーブ3の外周面が固定される
スカート部15aと、固定軸2の一方の端面(上端面)
と対向する平坦な天頂部15bを有し、全体としてキャ
ップ状に形成されたスラストベース部15が、固定軸2
と軸線をほぼ一致させて、ラジアル動圧軸受部20の外
側を覆っている。そして、スカート部15aの先端が水
平状のモータベース部8に対して上方側から内側に入り
込み、スラストベース部15はモータベース部8に対し
て蓋を伏せたように被せられている。
【0036】スラストベース部15はハブとしての機能
も有しており、これと固定軸2との間に、メタル軸受で
構成された摩擦スラスト軸受部30を設けてある。この
摩擦スラスト軸受部30は、第一部材側接触体としての
固定側接触体31と、スラストベース部側接触体として
の回転側接触体32とを有し、固定軸2とスリーブ3と
の相対回転に伴い発生するスラスト力を両接触体31,
32間で支持している。円盤状の固定側接触体31は、
固定軸2の端面に形成した凹部2cの内側に挿入され、
その全体が固定軸2の端面よりも内側(下方)に位置す
るように、接着剤等により固定されている。また、スラ
ストベース部15の天頂部15bの軸中心部には断面円
形状の貫通孔15cが設けられ、この貫通孔15cの内
側にその軸中心部が固定側接触体31に向けて円柱状に
突出する、回転側接触体32の円盤状本体部が挿入され
て、接着剤等により固定されている。このように、固定
側接触体31を固定軸2の端面よりも内側に位置させ、
回転側接触体32の軸中心部を固定側接触体31に向け
て突出させると、軸線方向の寸法(高さ)が短くなり、
全体としてコンパクトになる。
【0037】回転側接触体32は、全体が硬度50〜6
0HRCのダイカスト用金型用鋼材で構成され、その軸
中心部が固定側接触体31に向けて円柱状に突出し、そ
の先端の固定側接触体31との接触面32aが外向きに
凸の曲面状(ここでは球面状)に形成されている。回転
側接触体32の曲面状接触面32aにより、中立状態へ
の復元力が発生し、振れ回りが少なくなる。また、固定
側接触体31は、全体が硬度70〜80HRBの青銅又
は硬度50〜70HRBの焼結含油金属で構成され、そ
の接触面31aは平面状に形成されている。このよう
に、硬度の大きい回転側接触体32の接触面32aを固
定側接触体31に向けて突出する曲面状に形成すると、
回転側接触体32の接触面32aによる固定側接触体3
1の接触面31aの損傷を防止できる。ところで、回転
側接触体32の円柱状突出部の軸径Dが2〜10mm
(例えば3mm)の場合、球面状接触面32aの半径R
1は1〜20mmに調整される。
【0038】なお、15dは、スラストベース部15の
天頂部15bに傾斜して貫通形成された孔径0.5〜3
mm(例えば1mm)の注油孔である。注油孔15d
は、周方向の複数箇所(実施例では2箇所)に設けら
れ、接触面31a,32aの摩擦を軽減するための潤滑
油等を外部から補給するために用いられる。そして、固
定軸2の端面に形成される凹部2cの空間は、このとき
の潤滑油溜めとして利用される。
【0039】次に、リング状のステータコア11aと、
そのコア11aに対し周方向に所定間隔で巻き付けられ
た複数のコイル11bとからなるコイルユニット11
(ステータ部)が、モータベース部8に固定的に嵌め込
まれている。このコイルユニット11は、モータベース
部8の上面側に形成された円環状の空間部8aに突き出
して位置しており、ラジアル動圧軸受部20を挟んで摩
擦スラスト軸受部30とは軸線方向反対側において、軸
受隙間Gよりも下方位置で配置されている。
【0040】また、スラストベース部15のスカート部
15aは、固定軸2の軸線方向においてコイルユニット
11を覆い、その先端が空間部8a内に達する位置まで
スカート状に延びている。スカート部15aの外周面に
はスペーサ6aを介して複数のデータ記録用ハードディ
スク6が取り付けられる。また、その内周面側にはコイ
ルユニット11に対向する位置で空間部8a内に、複数
の永久磁石12(ロータ部)が周方向に所定の間隔で取
り付けられている。そして、これら永久磁石12はコイ
ルユニット11とともに駆動モータ40(駆動部)を構
成し、永久磁石12は、スラストベース部15とこれに
取り付けられたスリーブ3、ハードディスク6及び回転
側接触体32とを固定軸2の周りに一体的に回転駆動す
る役割を果たす。
【0041】一方、モータベース部8を介して固定軸2
(及び固定側接触体31)とコイルユニット11とが一
体化されている。このとき、コイルユニット11と永久
磁石12とをラジアル動圧軸受部20(軸受隙間G)よ
りも下方位置に配置して、スリーブ3の内径2r2を大
きくし、ラジアル動圧軸受部20の負荷容量を増加させ
ている。また、ラジアル動圧軸受部20の径方向外側に
形成される空間に、ハードディスク6が取り付けられて
いる。
【0042】次に、軸受機構1のラジアル動圧軸受部2
0の製造工程は、概略以下の通りである(図2参照)。 (1)固定軸2及びスリーブ3の機械加工工程(図2の
P1) (2)熱処理工程(同P2) (3)研磨工程(同P3) (4)面荒らし工程(同P4) (5)被膜コーティング工程(同P5)
【0043】(1)固定軸2及びスリーブ3の機械加工
工程 固定軸2となるべき基材(以下、固定軸基材という)の
外周面を旋削加工するとともに、スリーブ3となるべき
基材(以下、スリーブ基材という)を中ぐり加工し挿通
孔を形成する。このとき、軸受内径すなわち2r2の寸
法は6〜25mm(例えば17mm)であり、軸受長す
なわち挿通孔の軸方向長さMは5〜15mm(例えば1
1.8mm)である。なお、固定軸基材及びスリーブ基
材の材質は、ダイス鋼(例えばDC53,SKD11
等)を用いる。
【0044】(2)熱処理工程 固定軸基材及びスリーブ基材を1030〜1050℃で
焼入れし、その後520〜530℃で焼戻しする。これ
によって、残留オーステナイトのほとんど全部をマルテ
ンサイトに変態させることができ、また、固定軸基材及
びスリーブ基材の表面硬度をロックウェル硬さで50〜
64HRCの範囲(例えば60HRC)になるように調
整することができる。なお、残留オーステナイトの消失
をより確実にするために、520〜530℃での焼戻し
を複数回(例えば2回)繰り返す場合がある。
【0045】(3)研磨工程 固定軸基材の外周面とスリーブ基材の挿通孔内周面を機
械研磨して、軸受隙間Gすなわちr2−r1が0.2μm
〜20μm(例えば8μm)となるように調整する。
【0046】(4)面荒らし工程 次に、前述のスリーブ基材3’の挿通孔3a’の内周面
と、前述の固定軸基材2’の外周面2a’(例えば、そ
の挿通孔3a’の内周面に対向する部分)とは、その少
なくとも一方に、図3(a)に模式的に示すように散点
状の微小な凹凸Qが分散形成され、面荒らしされてい
る。
【0047】(5)被膜コーティング工程 既知のイオンプレーティング法によって、スリーブ基材
3’の挿通孔3a’の内周面に耐摩耗性固体潤滑被膜
(たとえばDLC被膜)3bをコーティングして、スリ
ーブ3の挿通孔3aを形成する。同様に、固定軸基材
2’の外周面2a’に耐摩耗性固体潤滑被膜(たとえば
DLC被膜)2bをコーティングして、固定軸2の外周
面2aを形成する(図4参照)。そして、固体潤滑被膜
2b,3bの厚さの最大値tが0.1〜2μmの範囲
(例えば1μm)となるように調整されている。また、
挿通孔3aの内周面及び固定軸2の外周面2aの表面粗
さが、最大高さRyで0.5〜2.5μmの範囲(例え
ば1.4μm)となるように調整されている。したがっ
て、図4からも明らかなように、t≦Ryを満足し、荒
らし面が作動流体に作用して、ラジアル動圧を発生す
る。ただし、最大高さRyを測定するときの基準長さと
評価長さとは、JIS B0601−1994における標準
値を採用する。
【0048】ここで、面荒らし及び被膜コーティングを
施す場合、図3(d)・図4(c)に示すように、挿通
孔3a’の内周面と、固定軸基材2’の外周面2a’と
の双方を、0.5μm≦Ry≦2.5μmとなるように
面荒らし及び被膜コーティングしてもよいし、図3
(b)・図4(a)あるいは図3(c)・図4(b)の
ように、一方のみを面荒らしした後、双方を被膜コーテ
ィングする形としてもよい。ただし、他方の面の最大高
さRyは2.5μm以下とすることが望ましい。
【0049】次に、挿通孔3aの内径(第二部材内径)
を2r2、固定軸2の挿通孔3a内に挿通される部分の
外径(第一部材外径)を2r1として、軸受隙間Gの大
きさに相当するr2−r1は、0.2μm〜20μm(望
ましくは1〜10μm)に調整されている。また、挿通
孔3aの内周面及び固定軸2の外周面2aの各円筒度を
Cとしたときに、C≦(r2−r1)/2となるように調
整されている。ただし、円筒度はJIS B0621の
5.4に定義されたものを採用する。
【0050】上記のように構成されたハードディスク駆
動機構100において、コイルユニット11のコイル1
1bに電流を流して駆動モータ40を作動させることに
より、例えばスリーブ3を4000〜20000rpm
の回転速度で回転させる。軸受隙間Gを挟んで対向する
各面2a,3aに、図3・図4に模式的に示すような微
小な凹凸を分散形成して、その最大高さRyを前記範囲
に調整してあることから、軸受隙間Gには固定軸2の半
径方向すなわちラジアル方向の動圧が生じる。そして、
スリーブ3に対し振動等により半径方向の振れ力が作用
しても、上記のラジアル動圧が復元力となって振れ回り
が生じにくくなる。本実施例の構成では、十分なラジア
ル動圧を発生するための回転速度が上記のように比較的
小さいので、固定軸2やスリーブ3に損耗が生じにく
い。
【0051】(実験例1)上記実施例1に基づいて、固
定軸及びスリーブの基材がともにダイス鋼(材質:DC
53)で構成された軸受機構を作成した。そして、固定
軸の外周面及びスリーブの内周面に対するDLC被膜の
有無と微小凹凸の有無とを組み合わせた計3種の軸受機
構をそれぞれ駆動モータに搭載し、起動−停止の繰り返
し試験を実施した。この試験は、停止状態の駆動モータ
を起動させ、10000rpmに達した後に、スイッチ
を切って停止させる操作を繰り返し行い、振れ回りが発
生するまでの繰り返し回数をカウントした。実験結果を
表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】表1から、まずDLC被膜を固定軸の外周
面及びスリーブの内周面に形成することによって軸受機
構の寿命が延び、加えて微小凹凸を固定軸の外周面及び
スリーブの内周面に形成することにより、さらに長寿命
となることがわかる。なお、軸受機構No.1の場合は、
繰り返し回数25000回で試験を打ち切った。
【0054】(実験例2)再び上記実施例1に基づい
て、固定軸及びスリーブの基材がともにダイス鋼(材
質:DC53)で構成され、固定軸の外周面及びスリー
ブの内周面にDLC被膜が形成された軸受機構を作成し
た。そして、基材ダイス鋼の硬度を種々変化させた軸受
機構をそれぞれ駆動モータに搭載し、実験例1と同様に
起動−停止の繰り返し操作を10000回ずつ行った。
その後軸受機構を分解して、DLC被膜の剥離と基材ダ
イス鋼の割れとが発生していないかを調べた。基材ダイ
ス鋼の硬度範囲でみたDLC被膜の剥離発生率と基材ダ
イス鋼の割れ発生率とを表2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】表2において、基材ダイス鋼の硬度が50
HRCを下回るとDLC被膜の剥離が発生し始め、基材
ダイス鋼の硬度が64HRCを上回ると基材ダイス鋼の
割れが発生し始める。
【0057】(実施例2)図5は、本発明の軸受機構を
使用したポリゴンミラー駆動機構の一例を示すものであ
る。このポリゴンミラー駆動機構200の軸受機構1
は、実施例1(図1)と同様の構造、すなわちラジアル
動圧軸受部20,スラストベース部15及び摩擦スラス
ト軸受部30を有している。さらにポリゴンミラー駆動
機構200に使用される駆動モータ40(駆動部)も実
施例1と同様の構造を有している。したがって、実施例
1との共通部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0058】ポリゴンミラー53は、回転軸線の周囲を
取り囲む形態で複数の反射面53cが多面体状に形成さ
れており、スラストベース部15のスカート部15aの
外周面に取り付けられている。また、スカート部15a
の外周面にはドーナツ状のマグネットプレート59も取
り付けられている。マグネットプレート59の、ポリゴ
ンミラー53の反対側の端面に対向する板面には、固定
軸2を取り囲む形態で複数の永久磁石57が取り付けら
れている。この磁石57は、その磁力吸引による浮力を
ポリゴンミラー53に与え、ポリゴンミラー53が自重
で撓むのを防止している。
【0059】上記のように構成されたポリゴンミラー駆
動機構200において、コイルユニット11のコイル1
1bに電流を流して駆動モータ40を作動させることに
より、例えばスリーブ3を10000〜40000rp
mの回転速度で回転させる。軸受隙間Gを挟んで対向す
る各面2a,3aに、図3・図4に模式的に示すような
微小な凹凸を分散形成し、その最大高さRyを前記範囲
に調整してあることから、軸受隙間Gには固定軸2の半
径方向すなわちラジアル方向の動圧が生じる。このラジ
アル動圧がポリゴンミラー53の振れ回り防止に寄与す
る。
【0060】(実施例3)本発明の軸受機構において
は、第一部材の外周面とこれに対向する前記第二部材の
内周面との少なくとも一方に、前記散点状の微小な凹凸
とともに、ラジアル動圧発生に寄与する溝部を形成する
ことができる。図6にその一例を示している。この軸受
機構71においては、第一部材としての固定軸72(固
定側部材)の外周面72aと、その外側に配置される第
二部材としてのスリーブ73(回転側部材)の挿通孔7
3aの内周面との間に軸受隙間Gが形成されている。図
6(b)に示すように、この固定軸72の外周面には、
軸線方向の複数箇所(この実施例では2ケ所)に動圧発
生用の溝部72cの列が形成されている。各溝部列は、
固定軸72の周方向の基準線BL上に、各溝部72cの
山型(あるいはブーメラン型)のパターンの先端が位置
するように、所定の間隔で全周にわたって形成したもの
である(いわゆるヘリングボーン形態)。なお、各列毎
に、溝部72cの一方の端部側をつなぐ周方向の補助溝
部72dが形成されていてもよい。また、このような溝
パターンの形成工程は、微小凹凸の形成工程の前後いず
れでも実施できる。さらに、この溝部は図6(c)のよ
うに傾斜溝72c’でもよい。
【0061】したがって、この実施例における軸受機構
1のラジアル動圧軸受部20の製造工程は、以下の通り
に変更される(図7参照)。なお、既述の如く(4)と
(5)の工程は入れ替えて実施することができる。 (1)固定軸2及びスリーブ3の機械加工工程(図7の
P1) (2)熱処理工程(同P2) (3)研磨工程(同P3) (4)面荒らし工程(同P4) (5)溝部形成工程(同P4A) (6)被膜コーティング工程(同P5)
【0062】以上で説明した実施例では、軸受隙間Gを
満たす作動流体として空気を用いたが、本発明はその他
の気体やオイル等の液体にも適用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の軸受機構を採用したハードディスク駆
動機構の一例を示す縦断面図。
【図2】図1の軸受機構のラジアル動圧軸受部の製造工
程図。
【図3】ラジアル動圧軸受部の荒らし面の状況を模式的
に示す説明図。
【図4】図3の拡大図。
【図5】本発明の軸受機構を採用したポリゴンミラー駆
動機構の一例を示す縦断面図。
【図6】ラジアル動圧軸受部の荒らし面に微小な凹凸と
ともに溝部を形成する一例を示す説明図。
【図7】図2の変更例を示す製造工程図。
【符号の説明】
1 軸受機構 2 固定軸(第一部材;固定側部材) 2a 外周面 2b DLC被膜(耐摩耗性固体潤滑被膜) 2c 凹部 2’ 固定軸基材 2a’ 固定軸基材の外周面 3 スリーブ(第二部材;回転側部材) 3a 挿通孔 3b DLC被膜(耐摩耗性固体潤滑被膜) 3’ スリーブ基材 3a’ スリーブ基材の挿通孔 6 ハードディスク 8 モータベース部 11 コイルユニット(ステータ部) 12 永久磁石(ロータ部) 15 スラストベース部 20 ラジアル動圧軸受部 30 摩擦スラスト軸受部 31 固定側接触体(第一部材側接触体) 31a 接触面 32 回転側接触体(スラストベース部側接触体) 32a 接触面 40 駆動モータ(駆動部) 53 ポリゴンミラー 71 軸受機構 72 固定軸(第一部材;固定側部材) 72a 外周面 72c 溝部 72c’溝部 73 スリーブ(第二部材;回転側部材) 73a 挿通孔 100 ハードディスク駆動機構 200 ポリゴンミラー駆動機構 G 軸受隙間 Q 微小凹凸 2r1 固定軸外径(第一部材外径) 2r2 挿通孔内径(第二部材内径) C 円筒度 Ry 最大高さ(表面粗さ)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // G11B 19/20 G11B 19/20 E Fターム(参考) 3J011 AA07 BA02 CA03 CA05 CA10 DA02 JA02 KA02 KA03 MA02 PA02 RA03 SE04 5D109 BB01 BB17 BB21 BB22 BB31 5H605 BB05 BB09 BB10 BB14 BB19 CC04 EB03 EB06 EB17 GG09 GG21 5H607 AA12 BB01 BB07 BB09 BB14 BB17 BB25 CC01 DD16 GG01 GG03 GG09 GG12 GG14 GG15

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 軸状の第一部材と、 その第一部材が挿通される挿通孔を有し、該挿通孔にお
    ける前記第一部材の軸線周りの相対回転を許容した状態
    にて、前記挿通孔内面と前記第一部材の外周面との間
    に、作動流体にて満たされた所定量の軸受隙間を形成す
    る第二部材とを備え、 前記第一部材の外周面とこれに対向する前記第二部材の
    内周面との少なくとも一方は、ダイス鋼にて構成される
    基材と、その基材の表面に気相成膜法によって形成され
    る耐摩耗性固体潤滑被膜とを含み、前記第一部材と前記
    第二部材とを相対回転させることにより、前記軸受隙間
    においてラジアル動圧を発生させるようにしたことを特
    徴とする軸受機構。
  2. 【請求項2】 軸状の第一部材と、 その第一部材が挿通される挿通孔を有し、該挿通孔にお
    ける前記第一部材の軸線周りの相対回転を許容した状態
    にて、前記挿通孔内面と前記第一部材の外周面との間
    に、作動流体にて満たされた所定量の軸受隙間を形成す
    る第二部材とを備え、 前記第一部材と前記第二部材との少なくとも一方(以
    下、被選択部材という)の基材がダイス鋼にて構成さ
    れ、 前記第一部材の外周面とこれに対向する前記第二部材の
    内周面とのうち前記被選択部材の周面に対して、散点状
    の微小な凹凸を分散形成するとともに、気相成膜法によ
    る耐摩耗性固体潤滑被膜が形成され、 前記第一部材と前記第二部材とを相対回転させることに
    より、前記軸受隙間においてラジアル動圧を発生させる
    ようにしたことを特徴とする軸受機構。
  3. 【請求項3】 前記固体潤滑被膜が非晶質ダイヤモンド
    状炭素被膜、窒化クロム被膜及び窒化チタン被膜のうち
    少なくともいずれか1種からなる請求項1又は2記載の
    軸受機構。
  4. 【請求項4】 前記第一部材の基材と前記第二部材の基
    材とがともにダイス鋼にて構成され、該基材の表面硬度
    がロックウェル硬さで50〜64HRCの範囲にて調整
    されている請求項1ないし3のいずれかに記載の軸受機
    構。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004239652A (ja) * 2003-02-04 2004-08-26 Honda Motor Co Ltd 磁歪式トルクセンサ
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JP2008224678A (ja) * 2008-04-21 2008-09-25 Honda Motor Co Ltd 磁歪式トルクセンサの異方性付与方法

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