JP2002069583A - 靭性および延性に優れた高強度パーライト系レールおよびその製造方法 - Google Patents

靭性および延性に優れた高強度パーライト系レールおよびその製造方法

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JP2002069583A JP2000255377A JP2000255377A JP2002069583A JP 2002069583 A JP2002069583 A JP 2002069583A JP 2000255377 A JP2000255377 A JP 2000255377A JP 2000255377 A JP2000255377 A JP 2000255377A JP 2002069583 A JP2002069583 A JP 2002069583A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 寒冷地での高靭性及び高延性の高強度パーラ
イト系レールを提供する。 【解決手段】 質量%で、C:0.60〜0.72%を
含有し、さらにSi:0.10〜1.20%、Mn:
0.10〜1.50%、Cr:0.1〜1.0%の1種
または2種以上、さらに必要に応じて、Mo:0.01
〜0.50%、Nb:0.001〜0.05%、Ni:
0.1〜4.0%、Cu:0.1〜4.0%、Mg:
0.0004〜0.02%、V:0.005〜1.00
%、B:0.0001〜0.0050%、Ti:0.0
01〜0.05%の1種または2種以上を含有し、少な
くともレール頭部が実質パーライト組織であり、レール
頭部上面の表面下5mmでの硬度がビッカース硬度番号で
330以上である靭性および延性に優れた高強度パーラ
イト系レール。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、レール鋼の靭性お
よび延性の向上を図った高強度レールおよびその製造方
法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】鉄道輸送は輸送効率向上のための重積載
化、輸送迅速化のための高速化が進められており、レー
ルの特性に対する要求が厳しくなっている。重積載化は
急曲線区間におけるレール頭部の磨耗を促進し、レール
ゲージコーナー内部の応力集中部からの疲労損傷を増加
させることから、レール寿命が短くなってきている。こ
の重荷重鉄道でのレール短寿命化を改善するために、耐
磨耗性、耐内部疲労損傷性の優れた高強度レール鋼の技
術開発が活発に行われてきた。その結果、重荷重鉄道に
おける曲線区間ではこの高強度レールが普及しつつあ
る。
【0003】一方、寒冷地の鉄道では冬季にレールクラ
ック発生によるレール取替が集中しており、レール材の
靭性改善がレール寿命の延伸に必要な課題になってい
る。また頭部の内部疲労損傷性の改善には、レール材の
靭性および延性を向上させることが重要である。
【0004】高強度レールの靭性および延性改善の方策
としては以下のような方法がある。 (1)普通圧延後、一旦室温まで冷却したレールを低温
度で再加熱した後、加速冷却する方法。 (2)制御圧延によりオーステナイト粒を微細化した
後、レール頭部を加速冷却する方法。 (3)制御圧延した後、パーライト変態前で低温度に再
加熱し、その後加速冷却する方法。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記方法の(1)で
は、例えば特開昭55−125231号公報に記載され
ているように、通常の加熱温度よりも低い850℃以下
の低温度に再加熱し、オーステナイト粒を細粒化するこ
とによって大幅に靭性および延性を改善しようとするも
のである。しかし、低温度で加熱し、かつレール頭部内
部まで加熱を深めようとすると、投入熱量を下げて長時
間加熱する必要があり、この熱処理のため生産性を阻害
し製造コストを高める難点がある。
【0006】また(2)の方法は、例えば特開昭52−
138427号公報および特開昭52−138428号
公報に記載されているように、制御圧延によるオーステ
ナイト粒の細粒化で靭性・延性の向上を図ろうとするも
のである。しかし、大きな圧下力等が必要という圧延機
の能力あるいはレールの断面形状や長手方向の寸法精度
が容易に得られないという形状制御性の観点からも問題
を含んでいる。
【0007】さらに(3)の方法は、例えば特公平4−
4371号公報に記載されているように、800℃以下
で5%以上の圧延を実施した後、再度750〜900℃
に加熱することによりオーステナイト粒を微細にし、靭
性および延性を改善しようとするものである。しかし、
この方法は圧延後に低温再加熱のための加熱炉を必要と
するため作業性、生産性、製造コスト等の問題がある。
【0008】またレール鋼の靭性を改善する方法として
は、例えば特開平8−104946号公報、特開平8−
104947号公報および特開平8−109438号公
報に記載されているように、脱酸元素としてMgを添加
し、0.1〜10μmのMnSの個数が1mm2 あたり6
00〜12000個存在する靭性・延性が優れた高強度
パーライト系レールがあり、この方法により靭性および
延性に優れたレールの製造が可能となった。しかし、重
荷重鉄道ではなお一層の重積載化および高速化が検討さ
れており、さらに靭性および延性の特性を改善すること
が要求されてきている。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は以下の構成を要旨とする。 (1)質量%で、C:0.60〜0.72%を含有し、
少なくともレール頭部が実質パーライト組織であり、レ
ール頭部上面の表面下5mmでの硬度がビッカース硬度番
号で330以上であることを特徴とする靭性および延性
に優れた高強度パーライト系レール。
【0010】(2)質量%で、さらに、Si:0.10
〜1.20%、 Mn:0.10〜1.50%、C
r:0.1〜1.0%の1種または2種以上を含有する
ことを特徴とする前記(1)記載の靭性および延性に優
れた高強度パーライト系レール。
【0011】(3)質量%で、さらに、Ni:0.1〜
4.0%、 Cu:0.1〜4.0%、の1種ま
たは2種を含有することを特徴とする前記(1)または
(2)記載の靭性および延性に優れた高強度パーライト
系レール。
【0012】(4)質量%で、さらに、Mo:0.01
〜0.50%、 Nb:0.001〜0.05%、M
g:0.0004〜0.02%、B :0.0001〜
0.005%の1種または2種以上を含有することを特
徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の靭性お
よび延性に優れた高強度パーライト系レール。
【0013】(5)質量%で、さらに、V :0.00
5〜1.00%、 Ti:0.001〜0.05%の1
種または2種を含有することを特徴とする前記(1)〜
(4)のいずれかに記載の靭性および延性に優れた高強
度パーライト系レール。
【0014】(6)質量%で、さらに、N :0.00
05〜0.03%を含有することを特徴とする前記
(5)記載の靭性および延性に優れた高強度パーライト
系レール。
【0015】(7)前記(1)〜(6)のいずれかに記
載の成分からなる鋼片を、熱間圧延でレールに形成した
後、熱延まま、あるいは熱延後の加熱によってオーステ
ナイト域温度とし、前記レールの少なくとも頭部を、7
00〜500℃間を1〜5℃/secで加速冷却することを
特徴とする靭性および延性に優れた高強度パーライト系
レールの製造方法。
【0016】
【発明の実施の形態】以下本発明について詳細に説明す
る。レール鋼は一般にパーライト組織を有しており、こ
のパーライト組織はフェライト相とセメンタイト相が層
状に積層したラメラ構造になっている。フェライトとセ
メンタイトの配向方向と結晶方位がいずれもそろったパ
ーライトコロニーが集合し、フェライトとセメンタイト
の結晶方位がそろっているパーライトブロックと呼ばれ
る結晶粒を形成している。
【0017】パーライト鋼の硬度は、C量が高いほど
硬度の高いセメンタイトの分率が増加し硬くなる。既存
の高強度レールは質量%で0.72%を超えるC量を含
んでいる。また、フェライトとセメンタイトの層間
隔、すなわちラメラ間隔が狭いほど硬くなる。高強度レ
ールはラメラ間隔を狭めた微細パーライト組織を有して
いる。ラメラ間隔を細かくするには、オーステナイト温
度域から加速冷却を行い、変態開始を遅らせ、低温で変
態させることが必要になる。また、フェライト中に固
溶している合金元素量が増えると、固溶強化により硬度
が増す。ただし、固溶強化による硬度増加はC量、ラメ
ラ間隔の影響に比較して小さい。
【0018】本発明者らは、まずC量と硬度が衝撃値に
与える影響を詳細に検討した。その結果、C量は衝撃値
と硬度に密接に関連しており、図1に示す通り、C量の
低下および硬度の上昇に伴い衝撃値が向上すること、さ
らにC量の小さい範囲で硬度上昇による衝撃値向上効果
が顕著であるを見出した。
【0019】Cの低下による衝撃値の向上には二つの要
因があるものと本発明者らは考えている。第1は、Cの
低下は硬いセメンタイト相の厚みを薄くし、脆性破壊の
起点になるセメンタイト層の割れ長さを短くする。その
結果、き裂先端の応力拡大係数が小さくなり、脆性破壊
の開始が遅れる。この脆性破壊の遅れにより、その間の
塑性変形量が増加し、吸収エネルギーを増加する。第2
は、硬いセメンタイトの分率が低下して、材料の変形抵
抗が下がり、塑性変形量が増えて、衝撃吸収エネルギー
を増大させる。Cの低下による衝撃値の向上は、質量%
で0.72%以下で顕著となる。ただし、Cが0.60
%未満では内部疲労破壊の起点になる初析フェライト
や、耐磨耗性に有害なベイナイト組織が生じやすくなる
ため好ましくない。このため、C量は0.60〜0.7
2%に限定した。
【0020】また硬度の増加による衝撃値の向上にも、
二つの要因があるものと本発明者らは考えている。ある
材料を硬くするためには、より低温でパーライト変態を
起こさせ、セメンタイトとフェライトの層間隔すなわち
ラメラ間隔を狭める必要がある。変態温度の低下は平衡
変態温度からの過冷度を高め、変態核の生成速度Nを増
大させる。一方、Cの拡散速度は低下して変態界面の移
動速度、すなわち変態速度Gは低下する。変態核生成速
度Nと成長速度Gの比率N/Gが増加すると結晶粒は微
細になる。鋼材の衝撃値は結晶粒が細かくなるに従って
増加するため、変態温度の低下、すなわち硬度の上昇は
靭性の向上をもたらす。また、セメンタイト層が薄くな
るため、初期き裂となるセメンタイト層の割れが短くな
り、脆性破壊の開始が遅れて吸収エネルギーを増加す
る。
【0021】さらに本発明者らは、C量と硬さの関係
と、変態温度と細粒化の関係は、衝撃値を改善する上で
相乗効果を持つことに着目した。Cが低い材料で硬度を
高めるには、よりラメラ間隔を狭める必要がある。その
ため硬度が同じ場合、Cが低い材料はCが高い材料に比
べ、より低温で変態させる必要があり、結晶粒が細かく
なることを見出した。ただし高強度レールにおいては、
レール頭部上面から5mm下における硬度がビッカース硬
度番号で330未満では急曲線部での摩耗量が大きくな
るため好ましくない。また衝撃値も、ビッカース硬度番
号で330未満では向上代が小さい。
【0022】次に、C以外の元素について上記範囲に成
分を限定した理由について述べる。成分の含有量はいず
れも質量%である。本発明においては、Si,Mn,C
rの1種または2種以上を強化元素として使用する。こ
れらの化学成分を限定した理由を以下に説明する。
【0023】Si:Siはパーライト組織中のフェライ
ト相への固溶強化による高強度化への寄与する。また若
干の靭性および延性改善効果がある。0.10%未満で
はその効果は少なく、1.20%を超えると脆化をもた
らし溶接接合性も低下するので、0.10〜1.20%
に限定した。
【0024】Mn:Mnはパーライト変態温度を低下さ
せ、焼入れ性を高めることによって高強度化に寄与する
元素である。しかし、0.10%未満ではその効果が小
さく、1.50%を超えると偏析部にマルテンサイト組
織を生成させ易くするため、0.10〜1.50%に限
定した。
【0025】Cr:Crはパーライト変態温度を低下さ
せることによって高強度化に寄与する。加えて、パーラ
イト組織中のセメンタイト相を強化する作用を有するこ
とから、溶接継ぎ手部軟化防止の観点で0.1%以上の
含有が有効である。一方、1.0%を超えて含有する
と、強制冷却時に元素偏析部のみでなく、過冷却傾向の
強いレールの肩部にベイナイトやマルテンサイトが生成
し靭性の低下をもたらす。従って強度確保に一定の寄与
が期待され、かつ靭性および延性を損なわない範囲とし
て、0.1〜1.0%に限定した。
【0026】本発明においては、さらに必要に応じてN
i,Cu,Mo,Nb,Mg,V,B,Tiのうち1種
または2種以上を添加できる。このうちNi,Cuはフ
ェライト地の靭性改善に効果があり、またMo,Nb,
Mg,V,B,Tiは単体もしくは化合物として、レー
ル圧延のための加熱時におけるオーステナイト粒の微細
化、あるいは制御圧延時におけるオーステナイト粒の細
粒化によって高靭性を得ることができる。これらの化学
成分を限定した理由を以下に説明する。
【0027】Ni:Niはフェライト中に固溶し、フェ
ライトの靭性を向上させるのに有効な元素であり、0.
1%未満の場合にはその効果が極めて少なく、また4.
0%を超えて含有してもその効果は飽和する。従って靭
性向上の観点から、0.1〜4.0%の範囲に限定し
た。
【0028】Cu:CuはNiと同様にフェライト中に
固溶し、フェライトの靭性を向上させるのに有効な元素
であり、0.1%未満の場合にはその効果が極めて少な
く、また4.0%を超えて含有してもその効果は飽和す
る。従って靭性向上の観点から、0.1〜4.0%の範
囲に限定した。
【0029】Mo:Moはパーライトの変態速度を抑制
し、パーライト組織を微細化することから靭性向上に有
効な元素である。さらにMoは加速冷却時にレール内部
において、表面層のパーライト変態にともなう発熱に連
動した高温での変態誘起を防止し、レール内部の高強度
化に寄与して強度を高める。しかし、0.01%未満で
は上記の効果は少なく、また、0.50%を超える含有
量ではパーライト変態速度が低下し、パーライト組織中
にベイナイトやマルテンサイトを生成させ靭性低下をも
たらす。従って、0.01〜0.50%の範囲に限定し
た。
【0030】Nb:Nbは熱間圧延時に低温加熱するこ
とによって、Nbの炭窒化物がオーステナイト粒成長を
抑制し細粒化に寄与する。また、高温加熱・低温仕上げ
圧延によって熱間圧延後のオーステナイト粒を細粒化
し、加速冷却後に得られるパーライト組織を微細にす
る。この効果を得るためには、0.001%以上必要で
あり、0.05%を超えると粗大なNb炭化物、Nb窒
化物、Nb炭窒化物の生成によって靭性が低下する。従
って、0.001〜0.05%の範囲に限定した。
【0031】Mg:MgはMg系介在物およびこれを核
にして析出したMnSがピン止め効果によりオーステナ
イト粒の粒成長を抑制する効果があり、変態後のパーラ
イト組織を微細化する。またこの効果に加えて、これら
の微細介在物を核としてパーライトが生成し、さらにパ
ーライト組織を微細にする機能を有する。しかし、0.
0004%未満ではこれらの効果がほとんど無く、0.
02%を超えると粗大な介在物が生成し、靭性が著しく
低下するため、0.0004〜0.02%の範囲に限定
した。
【0032】B:Bは微量添加においてもオーステナイ
ト粒界に偏析し、変態を遅らせることにより焼入れ性を
著しく改善する元素である。この効果を得るためには、
0.0001%以上必要であり、0.0050%を超え
るとBの炭窒化物が生成し、靭性が著しく低下する。従
って、0.0001〜0.0050%の範囲に限定し
た。
【0033】V:VはV窒化物として冷却中にMnS上
に析出し、オーステナイト粒内からのパーライト変態核
となり、変態後の結晶粒を微細化する。0.005%未
満ではこの効果は弱く、1%を超えると粗大なV窒化物
を生成し靭性が低下する。従って、0.005〜1.0
%の範囲に限定した。
【0034】Ti:TiはTi窒化物としてオーステナ
イト中に析出し、オーステナイト粒の粒成長を抑制し、
またパーライト変態時の変態核となる。0.001%未
満ではこの効果は弱く、0.05%を超えると粗大なT
i窒化化物を生成し靭性が低下する。従って、0.00
1〜0.05%の範囲に限定した。
【0035】N:Nは、パーライトの変態核として作用
するV窒化物、Ti窒化物をMnS上に析出するために
必要な元素であり、そのためには0.0005%以上が
必要である。一方Nが0.03%を越えると粗大な窒化
物が生成し、靭性が低下する。従って、Nは0.000
5〜0.03%の範囲に限定した。
【0036】この他、不可避的元素であるPは、レール
鋼の靭性を下げるためできるだけ低減させるため、0.
03%以下にすることが望ましい。
【0037】不可避的元素であるSは、SはMnと結合
してMnSを析出し、オーステナイト粒の粒成長を抑制
する効果があり、またパーライト変態時の変態核となる
機能を持つ。しかしながら多量に含有すると、粗大なM
nSを生成してレール鋼の靭性を下げるので、0.03
%以下にすることが望ましい。
【0038】また、Alは製鋼時の脱酸剤や炉材から混
入して残存するものであるが、0.05%を超えるとA
l酸化物が粗大化し、靭性の低下をもたらすことから、
0.05%以下であることが望ましい。
【0039】前記のような成分組成で構成されるレール
鋼は、転炉、電気炉などの通常使用される溶解炉で溶製
を行い、この溶鋼を造塊あるいは連続鋳造法により凝固
させ、さらに熱間圧延法を経て製造する。さらに圧延終
了に引き続き、あるいは熱処理する目的でオーステナイ
ト域温度まで再加熱してから、700〜500℃間を1
〜5℃/secで加速冷却を行う。加速冷却すると低温でパ
ーライト変態を生じるため、レール鋼はパーライトの変
態核の生成速度が向上し、パーライト粒が微細になり、
強度増加に加えて、レール鋼の靭性向上を達成すること
ができる。この加速冷却時の冷却速度が1℃/sec未満の
ときは必要強度を得ることができず、5℃/secを超える
場合はマルテンサイトが生成し、延性、靭性が低下す
る。従って冷却速度は1〜5℃/secに限定した。この際
冷却媒体は空気、あるいはミストなどの気液混合物を用
いることが望ましい。
【0040】
【実施例】次に、本発明により製造した高靭性を有する
高強度レールの製造実施例について述べる。表1に示す
成分からなる溶鋼からレールを製造した。本発明例は硬
度を上げるために、圧延後のオーステナイト域からの加
速冷却処理により、700℃〜500℃間の冷却速度を
1〜5℃/secの範囲で冷却した。なお比較例dは本発明
例Cと同一鋼材であるが、圧延後に放冷したものであ
る。レール頭頂面下5mmにおけるビッカース硬度の測定
結果を表中に示す。
【0041】表2は、これらのレール鋼の引張試験強
度、伸び、および2mmUノッチシャルピー試験における
+20℃での衝撃値、ミクロ組織の観察結果を示す。引
張試験はレール頭部ゲージコーナー内部10mm深さから
採取した平行部径6mm、平行部長さ30mmの試験片で行
った。ミクロ組織の観察はレール上面の表面下5mmで行
った。
【0042】この結果、本発明例は比較例に比べて十分
に延性の改善が認められた。衝撃試験片はレール頭部1
mm下より採取した。この試験条件はロシアのΓoct 規格
に基づくものであり、同規格では高強度熱処理レールの
+20℃での衝撃値は25J/cm2 以上が必要とされて
おり、本発明例はいずれもΓoct 規格に定められたシャ
ルピー衝撃値を十分に満たしている。
【0043】比較例aは衝撃値はΓoct 規格を満足して
いるが、Cが低すぎるために初析フェライトが粒界に生
じており好ましくない。比較例b,cはCが高いため衝
撃値が低い。比較例dは圧延後に放冷しているため硬度
が低く、結晶粒が粗大であり衝撃値が低い。比較例eは
Si,Mn,Crなどの強化元素が入っていないため硬
度が上がらず、衝撃値も低い。比較例fは強化元素M
n,Crが過剰な例であり、マルテンサイトが生じて衝
撃値が低くなった。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【発明の効果】以上のようにC含有量を適正な範囲とす
ることによって、セメンタイト層の厚みの低下、塑
性変形能の向上、が得られること、および、C含有量低
下に伴う強度低下を、加速冷却による低温変態を用いて
補うことで、結晶粒が微細化し、安定して25J/cm2
の衝撃値を得ることができる。すなわち、本発明により
靭性および延性に優れた高強度パーライト系レールまた
はその製造方法を提供できる。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成12年9月21日(2000.9.2
1)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図面の簡単な説明
【補正方法】追加
【補正内容】
【図面の簡単な説明】
【図1】鋼の硬度に対するC含有量と衝撃値との関係を
示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4K042 AA04 BA02 CA02 CA05 CA06 CA08 CA09 CA10 CA12 CA13 DA01 DA06 DC02 DE02 DE05 DE06

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%で、 C :0.60〜0.72% を含有し、少なくともレール頭部が実質パーライト組織
    であり、レール頭部上面の表面下5mmでの硬度がビッカ
    ース硬度番号で330以上であることを特徴とする靭性
    および延性に優れた高強度パーライト系レール。
  2. 【請求項2】 質量%で、さらに、 Si:0.10〜1.20%、 Mn:0.10〜1.50%、 Cr:0.1〜1.0% の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求
    項1記載の靭性および延性に優れた高強度パーライト系
    レール。
  3. 【請求項3】 質量%で、さらに、 Ni:0.1〜4.0%、 Cu:0.1〜4.0% の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1
    もしくは2記載の靭性および延性に優れた高強度パーラ
    イト系レール。
  4. 【請求項4】 質量%で、さらに、 Mo:0.01〜0.50%、 Nb:0.001〜0.05%、 Mg:0.0004〜0.02% B :0.0001〜0.005% の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求
    項1ないし3のいずれかに記載の靭性および延性に優れ
    た高強度パーライト系レール。
  5. 【請求項5】 質量%で、さらに、 V :0.005〜1.00%、 Ti:0.001〜0.05% の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1
    ないし4のいずれかに記載の靭性および延性に優れた高
    強度パーライト系レール。
  6. 【請求項6】 質量%で、さらに、 N :0.0005〜0.03% を含有することを特徴とする請求項5記載の靭性および
    延性に優れた高強度パーライト系レール。
  7. 【請求項7】 請求項1ないし6のいずれかに記載の成
    分からなる鋼片を、熱間圧延でレールに形成した後、熱
    延まま、あるいは熱延後の加熱によってオーステナイト
    域温度とし、前記レールの少なくとも頭部を、700〜
    500℃間を1〜5℃/secで加速冷却することを特徴と
    する靭性および延性に優れた高強度パーライト系レール
    の製造方法。
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