JP2002066315A - 有害物質の吸着素材及び有害物質の脱着方法並びに内分泌攪乱物質の定量方法 - Google Patents

有害物質の吸着素材及び有害物質の脱着方法並びに内分泌攪乱物質の定量方法

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JP2002066315A JP2000261197A JP2000261197A JP2002066315A JP 2002066315 A JP2002066315 A JP 2002066315A JP 2000261197 A JP2000261197 A JP 2000261197A JP 2000261197 A JP2000261197 A JP 2000261197A JP 2002066315 A JP2002066315 A JP 2002066315A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 経済的な方法で製造でき、しかも効率的
に有害物質を吸着できる吸着素材及び有害物質の脱着方
法並びに内分泌攪乱物質の定量方法の提供。 【解決手段】 ホルムアルデヒド及びメチルメルカプタ
ン等、並びにビスフェノール及びノニルフェノール等か
ら選ばれた少なくとも一種の有害物質を吸着することが
できる有機高分子からなり、該有機高分子が絹蛋白質、
羊毛ケラチン、セルロース、及びポリアミドから選ばれ
た少なくとも一種である。該有機高分子は、金属を含有
していてもよいアクリル酸エステルやメタクリル酸エス
テル、又はグリセロールポリグリシジルエーテルを主成
分とするエポキシ化合物によりグラフト加工又は化学加
工されたものがよい。この吸着素材を用いて、有害物質
の吸着・脱着及び内分泌攪乱物質の吸着・定量ができ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、有害物質の吸着素
材及び有害物質の脱着方法並びに内分泌攪乱物質の定量
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、日常生活の場での悪臭を吸着・消
臭して、快適で健康的な生活環境を維持しようとする動
きが活発化し、有害物質を吸着するための素材として種
々の吸着素材が製造され、利用されている。
【0003】悪臭成分としては、例えば、メチルメルカ
プタン、硫化水素若しくは硫化メチル等の硫黄化合物、
アンモニア、メチルアミン、エチルアミン若しくはイン
ドール等の窒素化合物、プロピオン酸、酪酸若しくは酢
酸等の脂肪酸、ホルムアルデヒド、又はアセトアルデヒ
ド等がある。有害物質には特有の臭い成分を含むものが
多く、「悪臭防止法」では、生活環境を損なうおそれの
ある22種類の物質を特定悪臭物質として指定し、規制の
対象としている。大気環境を劣悪化する汚染源には、そ
の他に、浮遊粉塵、イオウ酸化物、一酸化炭素、窒素酸
化物、アルデヒド等の自動車の排気ガスがあり、これら
についても、規制の対象とされている。このような有害
物質を吸着・分解するための各種素材が提案されてい
る。
【0004】有害ガス吸着用の素材として、例えば、特
開平7-241462号公報には、有害ガスのうち、特に酸性ガ
スを除去するためポリアリルアミンを添着した繊維状活
性炭からなる吸着素材が開示され、特開平9-24239号公
報には、自動車用排気ガスによる大気汚染を浄化するた
めに、無害性のタングステン酸ソーダやモリブデン酸塩
を水や有機溶媒液に溶解し、これに尿素アルデヒドを添
加し、水で洗浄することにより大気中の排気ガスからNo
x、Soxを除去する方法が開示され、特開平9-239223号公
報には、アンモニア、硫酸Sox、酸化窒素Nox、塩化水素
などの有害ガスを吸着・除去するのに繊維状活性炭フェ
ルトを用いる方法が開示され、特開平10-5545号公報に
は、空気中の低濃度の有害ガスをフッ素樹脂繊維で除去
する方法が開示され、また、特開平11-319441号公報に
は、熱可塑性合成繊維からなるシート基材にリン酸カル
シウム系化合物を固着したもので人体に有害なガスや、
悪臭ガスを吸着するための材料の製造方法が開示されて
いる。これらの従来技術における有害ガスの吸着素材
は、有機高分子又は無機素材を原材料とし、所定の化学
反応を施した後、所定の形状に成形することによって得
られている。
【0005】また、上記悪臭成分以外に、環境汚染物質
として近年問題になっている内分泌攪乱物質(いわゆる
環境ホルモンのこと)等のように、人体に有害な生物学
的作用を及ぼす化合物、例えば、プラスチックの可塑剤
として用いられるビスフェノールAやp-n-ノニルフェノ
ールや、フタル酸ビス2-エチルヘキシルがプラスチック
容器から流出することに起因する健康上の問題が指摘さ
れている。従来から、これらの内分泌攪乱物質について
も、地球環境から無くそうという種々の試みが行われて
いる。このような内分泌攪乱物質の存在を確認するため
に、マススペクトル分析を標準的な手法として用いて、
その定量を行っているのが現状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】悪臭ガスや内分泌攪乱
物質等の有害物質を従来技術に従って吸着除去するため
には、複雑な化学反応操作を行って先ず吸着素材を製造
する必要があるので、有害物質を吸着除去するための実
用化には、経済的、効率的な点からみて、技術的に改善
の余地が多いという問題がある。例えば、悪臭ガスを吸
着するための上記公報記載の技術によれば、ポリアリル
アミン、繊維状活性炭フェルト、リン酸カルシウムで固
着した熱可塑性合成繊維のような吸着素材を用い、これ
を特定の形状に成型しなければならず、また、製造コス
トもかかるという問題がある。そのため、簡便な方法
で、ガス状及び液体状の悪臭物質や内分泌攪乱物質を吸
着除去できる吸着素材を経済的、効率的に製造でき、こ
の吸着素材を用いて有害物質を吸着除去する技術の開発
が強く望まれていた。さらにまた、環境保全や環境浄化
の立場からも、例えば、ビスフェノールAやp-n-ノニル
フェノールを地球環境から無くし、又は回収するための
技術の開発も強く望まれていた。
【0007】しかし、上記したように、所期の目的を達
成し得るような吸着素材であって、悪臭ガスや環境ホル
モン等の有害物質を、効率的かつ経済的に吸着できる吸
着素材はいままでに知られていなかった。すなわち、有
害物質を吸着するための吸着素材として、従来から種々
の素材が製造され用いられているが、経済的かつ効率的
な視点に立脚した素材の開発は極めて遅れており、繁雑
な調製作業と熟練とが必要であり、いまだ満足すべきも
のは開発されていないのが現状である。上記のような問
題があるため、収率、効率、経済面で優れ、かつ取り扱
いが容易な調製作業により、簡単に調製でき、かつ、吸
着効率に優れた吸着素材を提供するための技術開発が強
く望まれていた。
【0008】また、同一の素材で有害ガス及び環境ホル
モン等の有害物質を効率よく吸着し、又は一旦吸着した
有害物質を必要に応じて脱着することが可能な素材の出
現が強く望まれていた。
【0009】さらにまた、内分泌攪乱物質を定量するた
めに用いられている標準的手法であるマススペクトル分
析では、複雑な化学操作が必要とされる。すなわち、こ
うした従来の分析には、被測定試料を前処理したり、後
処理したりという熟練を要する複雑な分析操作が必要で
あり、分析に慣れない未熟練者が内分泌攪乱物質を定量
することは非常に困難であるという問題がある。
【0010】従って、本発明の課題は、上記従来技術の
問題点を解決することであり、経済的な方法で製造で
き、しかも効率的に有害物質を吸着できる吸着素材及び
有害物質の脱着方法並びに内分泌攪乱物質の定量方法を
提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、簡易な方
法で上記有害物質を吸着除去するための吸着素材を製造
すると共に、内分泌攪乱物質を定量するための従来のマ
ススペクトル分析方法を改善しようとの考えから、大気
汚染とつながりのあるガス状態のホルムアルデヒド、イ
ソ吉草酸、メチルメルカプタン、アンモニア、及び硫化
水素等の低分子悪臭物質、並びに内分泌攪乱物質(フェ
ノール性内分泌攪乱物質として、ビスフェノールAのよ
うなビスフェノール、p-n-ノニルフェノールのようなノ
ニルフェノール、又はテトラメチルブチルフェノール、
あるいはまたフタル酸ビス2-エチルヘキサン等)のよう
に人体に有害な生物的作用を及ぼす有害物質を効率的に
吸着する吸着素材、これらの吸着された有害物質を脱着
する方法、また、内分泌攪乱物質を簡便に定量する方法
について鋭意開発を行ってきた。その結果、特定の吸着
素材を用いることで、悪臭ガス又は内分泌攪乱物質等の
有害物質を効率的に吸着できること、また、内分泌攪乱
物質を定量できることを見出し、本発明を完成させるに
至った。
【0012】本発明による有害物質の吸着素材は、ホル
ムアルデヒド、イソ吉草酸、メチルメルカプタン、トリ
メチルアミン、アンモニア、酸化窒素、硫化水素、ビス
フェノールAのようなビスフェノール、p-n-ノニルフェ
ノールのようなノニルフェノール、テトラメチルブチル
フェノール、及びフタル酸ビス2−エチルヘキサンから
選ばれた少なくとも一種の有害物質を吸着することがで
きる有機高分子からなる吸着素材であって、該有機高分
子が昆虫由来の絹蛋白質、羊毛ケラチン、セルロース、
及びポリアミドから選ばれた少なくとも一種であること
からなる。この吸着素材の形状は、特に限定はされない
が、例えば、粉末、繊維、繊維集合体、又は膜であって
もよい。
【0013】また、本発明による有害物質の吸着素材
は、金属を含有していてもよいメタクリル酸ベンジル(B
zMA)、スチレン(St)、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル
(HEMA)、メタクリルアミド(MAA)、アクリル酸4-ヒドロ
キシブチル(4HBA)、メタクリル酸4-ヒドロキシブチル(4
HBMA)、アクリル酸メチル(Methyl A)、アクリル酸エチ
ル(Ethyl A)、若しくはメタクリル酸メチル(MMA)のいず
れかによりグラフト共重合されたものであるか、又はエ
ポキシ化合物(例えば、グリセロールポリグリシジルエ
ーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、又
はソルビトールポリグリシジルエーテルを主成分とする
エポキシ化合物)により共有結合されたものであること
が好ましい。
【0014】本発明による有害物質の脱着方法は、ホル
ムアルデヒド、イソ吉草酸、メチルメルカプタン、トリ
メチルアミン、アンモニア、酸化窒素、硫化水素、ビス
フェノールAのようなビスフェノール、p-n-ノニルフェ
ノールのようなノニルフェノール、テトラメチルブチル
フェノール、及びフタル酸ビス2-エチルヘキサンから選
ばれた少なくとも一種の有害物質を含む有機溶媒中に、
昆虫由来の絹蛋白質、羊毛ケラチン、セルロース、及び
ポリアミドから選ばれた少なくとも一種の吸着素材を浸
漬して該有害物質を吸着させた後、有害物質の吸着され
た吸着素材を取り出して乾燥させ(室温が好ましい)、
次いで、有機溶媒/水系の混合溶媒中に所定の時間浸漬
し、吸着された有害物質を脱着させることからなる。こ
の場合、該混合溶媒への浸漬中に該混合溶媒を加熱する
ことにより吸着された有害物質の脱着が促進される。
【0015】また、本発明による内分泌攪乱物質の定量
方法は、ビスフェノールAのようなビスフェノール、p-
n-ノニルフェノールのようなノニルフェノール、テトラ
メチルブチルフェノール、又はフタル酸ビス2-エチルヘ
キサンのいずれかである内分泌攪乱物質を有機溶媒/水
系の混合溶媒に溶解し、この溶液について紫外波長領域
における吸光スペクトルを測定し、その最大吸収強度に
基づいて検量線を作成し、この検量線を用いて周囲環境
中に存在する該内分泌攪乱物質の濃度を定量することか
らなる。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明による有害物質の吸着素材
としては、例えば、有機高分子として、カイコ由来の絹
蛋白質繊維、動物蛋白質の羊毛繊維(すなわち、羊毛ケ
ラチンからなる繊維状物質を意味し、以下、羊毛ケラチ
ン繊維ともいう。)、木綿、アセテートやレーヨンなど
の半合成繊維、ポリアミドやポリエステル等のような有
機合成繊維であれば利用できる。また、これら有機高分
子に対して、特定のモノマーを用いてグラフト共重合し
たり(以下、「グラフト加工(処理)」とも称す)、又
は共有結合せしめたり(以下、「化学加工(処理)」と
も称す)することによって、有害物質の吸着性を増強で
きる。
【0017】本発明によるカイコ由来の絹蛋白質として
は、家蚕由来のものも野蚕由来のものも使用でき、例え
ば、家蚕由来の絹繊維(家蚕生糸(繭糸))、又はその
近縁種のクワコ由来の絹繊維、野蚕由来の天蚕、柞蚕、
ひま蚕、エリ蚕、ムガ蚕等の絹繊維(野蚕生糸)、ま
た、生糸を精練して得られる絹フィブロイン繊維を使用
できる。家蚕幼虫や野蚕幼虫が成熟し、吐糸したものが
繭糸からなる繭であり、この繭を切り開き手で展開する
と層状に剥がれる。これを繭層といい、本発明で使用で
きる。繭層を構成する繭糸表面は、にかわ質のセリシン
で覆われており、この繭層から連続的に取り出したもの
が繭糸であり、複数の繭糸を繰糸工程で繰糸したものが
生糸である。また、絹フィブロイン繊維を得るには、絹
セリシンを精練処理により除去すればよい。家蚕繭糸の
場合、例えば炭酸ナトリウム等のアルカリ溶液で煮沸処
理すると絹セリシンは除去され、野蚕繭糸の場合、例え
ばメタケイ酸ナトリウム及び炭酸ナトリウム、エチレン
ジアミン四酢酸のような混合溶液で加熱処理すると絹セ
リシンは除去され、絹フィブロイン繊維となる。
【0018】また、紙を梳く要領で細く切った絹フィブ
ロイン繊維をランダム状に集合体化させた不織布や、縦
糸、横糸で織った絹布や、絹編布や、この絹フィブロイ
ン繊維の繊維集合体や、絹フィブロイン繊維にその他の
合成繊維を複合化したものも本発明で使用できる。絹フ
ィブロイン繊維と合成繊維とは、繊維状で物理的に容易
に混ぜ合わせることができる。例えば、2種類の繊維を
何本か引き揃えた物を素材にして機織して布にしてもよ
いし、2種類の繊維を用いて不織布を製造してもよい。
あるいはまた、絹フィブロイン繊維だけを短く切断して
おき、又は絹フィブロイン繊維とその他の合成繊維とを
乾燥状態で機械的に短く切断しておき、これを水溶液に
分散させたものを、楮繊維から紙を梳く要領で梳くこと
により、1種類、又は2種類の繊維集合体を形成するこ
とができ、これらも本発明で使用できる。
【0019】さらに、家蚕の類縁種であるクワコの繭層
や、絹セリシンだけからなる繭糸を吐糸するセリシン蚕
(形質名、裸蛹b;遺伝子記号 Nds)の繭層も本発明で
は使用できる。
【0020】本発明で用いる絹フィブロイン粉末は、例
えば、次ぎのようにして調製できる。まず、家蚕繭糸を
0.5%(重量(w)/体積(v)%)炭酸ナトリウム水溶液で精
練し、絹フィブロイン繊維を調整する。2.5gの家蚕絹フ
ィブロイン繊維を55℃の8.5M臭化リチウム水溶液20mL中
で完全に溶解させた後、この水溶液をセルロース製透析
膜に入れて、5℃で5日間蒸留水で置換して、不純物を除
去し、純粋な絹フィブロイン水溶液を調製する。このよ
うにして調製された絹フィブロイン水溶液に蒸留水を加
え、絶乾濃度が4%となるように絹フィブロイン水溶液の
原液を調製し、この絹フィブロイン水溶液原液に水を加
えて2%の絹フィブロイン水溶液とする。絹フィブロイン
水溶液を一旦−30℃で凍結させた後、減圧下で凍結乾燥
することで微粉末状の絹フィブロインを製造する。
【0021】本発明で用いる絹セリシン粉末は、例え
ば、家蚕繭糸を0.5(重量(w)/体積(v))%炭酸ナトリウ
ム水溶液で精練し、繭層糸から取り出されるセリシン水
溶液を凍結乾燥することで製造できる。
【0022】本発明では、その他の蛋白質繊維として、
羊毛ケラチン等の繊維状又は粉末状の天然有機高分子も
使用できる。また、羊毛繊維を構成する羊毛ケラチンを
カルボキシメチル化して調製したカルボキシメチルケラ
チンも天然有機高分子と同様に用いることもできる。
【0023】本発明で用いる羊毛ケラチン繊維(すなわ
ち、羊毛繊維)は、例えば、次のようにして調製でき
る。メリノ種羊毛(64'S)に含まれる色素、脂肪分を、
ベンゼン−エタノール50/50/容積%の混合溶液を用い
て、ソックスレー抽出器で2.5時間処理することにより
取り除き、吸着用の羊毛ケラチン繊維を調製する。
【0024】本発明で用いる羊毛ケラチン粉末は、例え
ば、次のようにして調製できる。三つ口フラスコの一つ
の口に三方コックを介して乾燥窒素ボンベからのゴム管
を接続し、別の口に反応系のpH調節のためpH電極を常時
挿入し、もう一方の口を必要な薬剤投入用として利用す
る。繊維長が約1cmとなるように細断した8.18gの羊毛繊
維を三つ口フラスコに投入し、これに450mLの8M尿素水
溶液を加える。窒素ガスをパージさせ、アスピレーター
で15分間三つ口フラスコ内を45mmHg程度に減圧させ、次
いで急激に大気圧に戻す操作を3〜4回繰り返す。このよ
うにすると、三つ口フラスコ内のケラチン繊維間に含ま
れる空気が完全に除去でき、尿素水溶液とケラチン分子
との反応が効率的となる。窒素置換が完了した後、三つ
口フラスコ内に還元剤として4.8mLのメルカプトエタノ
ールを加えて、8M尿素水溶液中で2〜3時間放置する。さ
らに、約100mLの5N KOH溶液を微量ずつ加えて、三つ口
フラスコの混合溶液のpHを10.5に調節し、室温で3時間
かけて羊毛繊維が完全に溶解するのを待つ。繊維状の羊
毛繊維を溶解したものが羊毛ケラチン水溶液である。セ
ルロース製透析膜を用いて、ケラチン水溶液を純水で2
日間透析する。送風乾燥させながら、又は純水を加える
ことにより、濃度の異なる3種類のケラチン水溶液を調
製する。このようにして調製した異なる濃度(0.07%,
0.1%, 0.7%)のケラチン水溶液を凍結乾燥して羊毛ケラ
チン粉末を調製する。
【0025】本発明ではまた、セルロース系素材とし
て、木綿等の天然セルロース系繊維、又はアセテートや
レイヨン等の半セルロース繊維を使用することもでき
る。合成有機高分子としては、ナイロンのようなポリア
ミド系の有機高分子、又はテトロンのようなポリエステ
ル系の有機高分子を使用できる。
【0026】本発明で用いられる蛋白質、セルロース
系、アミド系有機高分子材料の形状は、特に制限される
わけではなく、例えば、繊維状、織物、編物、不織布、
繊維複合体、又は粉末等であってもよい。
【0027】本発明におけるグラフト加工又は化学加工
等の改質加工は、以下説明するような従来公知の方法で
行うことができる。
【0028】使用可能なグラフト加工用モノマーとして
は、前記したように、アクリ酸エステル又はメタアクリ
ル酸エステル化合物がある。例えば、メタクリル酸ベン
ジル(BzMA)、スチレン(St)、メタクリル酸2-ヒドロキシ
ルエチル(HEMA)、メタクリルアミド(MAA)、アクリル酸4
-ヒドロキシブチル(4HBA)、メタクリル酸4-ヒドロキシ
ブチル(4HBMA)、アクリル酸メチル(Methyl A)、アクリ
ル酸エチル(Ethyl A)、又はメタクリル酸メチル(MMA)等
がある。
【0029】本発明による有害物質の吸着素材(以下、
代表として、天然蛋白質について説明する)へのグラフ
ト加工は、通常、次のようにして行われる。グラフト加
工用モノマーを界面活性剤により分散させて得た水分散
液(グラフト系)中に、天然蛋白質を入れ、所望により
重合開始剤を添加してグラフト重合を行わせる。重合開
始剤としては、蛋白質にグラフト反応の拠点となるラジ
カルを発生するラジカル触媒であれば、任意のものを適
宜用いることができるが、繊維特性を低下させないよう
にするためには過硫酸アンモニウムが好ましい。蛋白質
に導入できるモノマーの量、すなわちグラフト加工率
は、グラフト用モノマーの使用量、処理温度、処理時
間、処理される蛋白質の種類等に応じて、適宜変更させ
ることができる。
【0030】さらに具体的には、このグラフト加工は、
次のようにして行うことができる。所定量の上記グラフ
ト加工用モノマー、グラフト重合開始剤(例えば、過硫
酸ナトリウム2.5owf%)、蟻酸(例えば、85%蟻酸2mL/
L)を含み、さらにモノマー重量に対して所定量(例え
ば、12wt%)の乳化剤を加えて混合溶液を得、その溶液
中に蛋白質繊維を浸漬し(例えば、浴比1:20)、グラフ
ト加工処理する。恒温装置又はオーバーマイヤー型染色
試験器(密閉型)等を用い、グラフト加工用溶液を、例
えば、常温から80℃まで20分間で昇温した後、40分間、
同温度を保持して反応を進める。反応終了後、水洗し、
さらに、ハイドロサルファイトナトリウム水溶液(1g/L)
にノイゲン(1mL/L)を添加した混合溶液中で、70℃、20
分間還元洗浄を行う。水洗後、風乾し、次いで、標準状
態(20℃、65%RH)で調湿させてグラフト加工された繊維
試料を作製する。このようにしてグラフト加工された繊
維試料について、20℃、65%RHの標準状態で試料湿度が
平衡状態に達した際の試料重量、及び105℃、2時間の乾
燥で減量した重量差から吸湿率を求める。
【0031】本発明において、化学加工とは、有機溶媒
中に化学修飾用の試薬を溶解し、この中に蛋白質素材を
入れて一定の温度で所定時間処理することにより、化学
修飾用試薬と素材の化学反応性に富む部分とを化学反応
させて、両者を共有結合で結びつけることを意味する。
化学加工用モノマーとして最も優れているのはエポキシ
化合物である。例えば、デナコールEx-313及びEx-314
(ナガセ化成工業株式会社製、商品名)があり、これら
は共に、主要な成分がグリセロールポリグリシジルエー
テルである。その他に、主要な成分がエチレングリコー
ルジグリシジルエーテルであるデナコール Ex-810(ナ
ガセ化成工業株式会社製、商品名)、また主要な成分が
ソルビトールポリグリシジルエーテルであるデナコール
Ex-611, 612, 614, 622, 651, 651A(ナガセ化成工業
株式会社製、商品名)等がある。
【0032】この化学加工において、一般には、DMSO、
DMF等の有機溶媒に上記モノマーを溶かし、この有機溶
媒中で蛋白質素材を処理することにより、該モノマーが
蛋白質素材と化学結合する。すなわち、蛋白質素材を構
成するアミノ酸配列のうち化学反応性に富む塩基性アミ
ノ酸が該モノマーと反応し、共有結合により結合する。
所定濃度の化学加工用モノマーをDMFに溶かし、これに
蛋白質素材を入れたものを、逆流冷却器付きナス型フラ
スコに入れ、ウォーターバスを用いて、例えば75〜80℃
で時間を変えて反応させることにより、蛋白質素材への
化学修飾加工を行う。反応終了後は、素材を取り出し、
DMF等で洗浄し、続いて熱アセトン(例えば、55℃)で
洗浄することにより未反応モノマーを除去する。最後に
水で洗浄し、乾燥後重量を測定する。
【0033】グラフト加工及び化学加工に適用できる素
材として、上記したような、家蚕絹糸、柞蚕絹糸等の野
蚕絹糸、羊毛ケラチン等の動物蛋白質繊維、木綿、麻等
の天然セルロース繊維、6−ナイロン繊維、6,6−ナ
イロン繊維等のポリアミド繊維等を挙げることができ
る。これら素材の形態は、特に制限されず、綿、糸、織
物、編物、不織布等の布帛、又はこれらの糸、布帛等か
らなる繊維製品のいずれであってもよい。
【0034】本発明において処理対象とするガス状の有
害物質としては、生活環境を損なう恐れのある物質のう
ち、例えば、吸着実験の対象となり易い、ホルムアルデ
ヒド、イソ吉草酸、メチルメルカプタン、トリメチルア
ミン、アンモニア、酸化窒素、硫化水素、アセトアルデ
ヒド等を挙げることができる。これらのうち、ホルムア
ルデヒドは私たちの身近な有害物質であり、健康の面か
ら規制の対象になっている。ホルムアルデヒドは、アル
コールを酸化させて得られる刺激臭が強く、揮発性の高
い気体で、消毒剤や防腐剤に用いられ、また、フェノー
ル系樹脂や尿素系樹脂の合成用原料でもある。アンモニ
アは、強い刺激臭をもち、水に良く溶ける(容積比で10
00倍程度溶解する)。
【0035】また、本発明において処理対象とする内分
泌攪乱物質としては、例えば、環境汚染物質として危険
視されているビスフェノールA、ノニルフェノール、フ
ェノールエステル、若しくはテトラメチルブチルフェノ
ールなどのフェノール系化合物、又はフタル酸ビス2−
エチルヘキサン等の化合物を挙げることができる。これ
らの内分泌攪乱物質はいずれも水不溶性のものであるた
め、内分泌攪乱物質を有機高分子に吸着させるには、有
機高分子中への内分泌攪乱物質の浸透性をよくするため
エタノール等のアルコールに必要最大限の水を加えると
よい。必要最大量とは、内分泌攪乱物質がアルコール中
で沈殿を起こさない範囲の最大量の水を意味する。アル
コール濃度は、内分泌攪乱物質の種類により異なり、エ
タノールの場合、ビスフェノールAでは10v/v%程度、p-n
-ノニルフェノールでは40v/v%程度が最適であり、p-1-1
-3-3-テトラメチルブチルフェノールでは30v/v%程度、
フタル酸ビス2−エチルヘキサンでは100v/v%程度が最適
である。
【0036】本発明によれば、吸着素材に一旦吸着させ
た有害物質を脱着するには、有害物質を吸着させる際に
用いた有機溶媒に有害物質が吸着した吸着素材を浸漬す
るだけでよい。すなわち、一定時間浸漬して有害物質を
吸着せしめた素材を該溶媒から取り出し、十分に水洗
し、素材表面に付着している有害物質を除去した後、室
温で軽く乾燥した素材を脱着用の試料として用いる。次
いで、有害物質の標準溶液を調製する際に用いた有機溶
媒(エタノール、メタノール、アセトン、DMF、DMSO等
の溶媒、特にエタノールやメタノールが好ましい)中
に、上記脱着用の試料を浸漬し、一定時間静置する。こ
のような簡単な方法により、素材内部に入り込んでいた
有害物質は徐々に脱着する。有害物質の溶解度によって
も異なるが、浸漬時間は、通常、数分〜数百分、好まし
くは1時〜2時間に設定すれば十分である。溶出用有機溶
媒への素材の浸漬時間が長い程、有機溶媒の温度が高い
程、又は有機溶媒と素材との接触状態がよい程、脱着で
きる有害物質量は増加する。脱着量を求めるには、脱着
用の試料を入れた有機溶媒の上澄を紫外線吸収分析して
有害物質の量を定量すればよい。例えば、ビスフェノー
ルAを羊毛繊維に吸着させ、その後、脱着させる場合、
溶出用の浸漬時間が3時間で脱着率は40%程度である。
【0037】脱着用の有機溶媒と素材との比、すなわち
浴比が大きい程脱着率は向上する。また、用いる容器の
形状(底面積が狭いとか、広いとか)によっても異なる
が、十分に底面積が広い容器であれば、高い脱着率を得
るためには、浴比は5〜100でよく、10〜70が特に好まし
い。
【0038】脱着の場合も、吸着の場合と同様に、有機
溶媒は水を全く含まなくてもよいが、適当量の水が含ま
れていれば好ましい。有害物質脱着用の溶媒と水分の割
合は有害物質の種類によっても異なるが、ビスフェノー
ルAならば、水にエタノール、メタノールが3〜10%含ま
れていると好都合であり、p-n-ノニルフェノールなら
ば、水にエタノール、メタノールが20-40%含まれている
と好都合である。脱着用の有機溶媒に含まれる水量がこ
の数値範囲の上限を超えると、有害物質の吸着された素
材から溶出する有害物質の量が減少し、吸着素材から脱
着する有害物質量が低下するので好ましくない。また、
水量がこの数値範囲の下限より低いと、水による膨潤力
が低下し、有害物質の溶出量が低下するので好ましくな
い。
【0039】また、内分泌攪乱物質を定量するに当たっ
て、特に紫外線吸光分析法で定量するためには、まず、
内分泌攪乱物質を溶解する有機溶媒を探す必要がある。
そのような有機溶媒として、例えば、エタノール、メタ
ノール、アセトン、DMF、DMSO等の有機溶媒がある。実
際には、少量にして十分量の100%の有機溶媒に内分泌攪
乱物質を完全に溶解した後、貧溶媒であるが、吸着体に
内分泌攪乱物質をよく浸透させる拡散作用をもつ水を加
えた系で定量を行うことが好ましい。このように有機溶
媒/水系を用いる際に、有機溶媒に添加する水量は、内
分泌攪乱物質が沈殿を起こさない限界付近までの量とす
る。
【0040】紫外線吸光分析における測定波数は190〜3
00nmである。内分泌攪乱物質の最大吸収波長を求め、物
質濃度と吸光度とをプロットし検量線を作成しておく
と、吸光度の測定により内分泌攪乱物質の濃度が求めら
れる。
【0041】本発明によれば、内分泌攪乱物質は紫外線
吸光度法によって簡便な方法で求めることができる。一
般的な内分泌攪乱物質はメタノール、エタノール等のア
ルコール系有機溶媒には良く溶解する。有機溶媒として
最も一般的なものはエタノールであるので、以下エタノ
ールを例にとり内分泌攪乱物質の定量方法を説明する。
【0042】まず、一定量の内分泌攪乱物質を含むエタ
ノール−水系の混合水溶液を調製する(以下、内分泌攪
乱物質の標準水溶液と呼ぶ)。次いで、溶解した内分泌
攪乱物質について紫外線領域で分光分析する。標準水溶
液の紫外線吸光度測定を210-240nmの範囲で行う。現れ
るピークの最大吸収波数と吸光度を調べる。この際の最
大吸光度の値は、溶解条件から求められる内分泌攪乱物
質の濃度に対応することになる。次に、この標準水溶液
に一定量の水を順次加えることで次々に標準水溶液を希
釈し、この希釈液について、その吸光度測定を行う。希
釈変化にともなう濃度と吸光度との関係をプロットし、
この関係が原点を通ることを確認する。こうして得られ
る直線が内分泌攪乱物質の検量線となり、この検量線を
用いることで、内分泌攪乱物質を定量することができ、
又は標準水溶液に有機高分子からなる吸着体を一定時間
浸漬したのちの標準溶液の濃度変化を調べることで、吸
着素材に吸着した内分泌攪乱物質量を測定することがで
きる。
【0043】
【実施例】以下、実施例及び製造例を挙げて本発明を詳
細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるもの
ではない。なお、初めに、有害ガスの吸着性、使用する
内分泌攪乱物質(環境ホルモン)、試験方法等について
説明する。 <ガス吸着性>20L容量のテドラパック(Du Pont社製の
フッ素系樹脂の袋)に所定濃度の被検有害ガスを入れ
た。そのテドラパックから、600mLの被検有害ガスを取
り出し、容積が5Lの別のテドラパックに入れ、初期被検
有害ガス濃度を検知管で測定した。次に、この容器に各
種吸着用試料を入れ、室温で3時間放置した後、テドラ
パック中の残留有害ガスを検知管で測定した。ガス吸着
性を次式によって算出する。なお、試料重量は1g、測
定回数は2回とし、ガス吸着性の値は2回の平均値とし
て算出した。被検有害ガスのガス吸着性の算出方法は次
式のとおりである。
【0044】 吸着率(%)={(A − B)/A] × 100 (式1) 式1中、A及びBは、それぞれ、吸着試験前のガス濃度及
び吸着試験後のガス濃度であり、いずれもppm単位で表
示したものである。 <実施例で用いた環境ホルモン> (1) p-n-ノニルフェノール標準品(p-n-Nonylphenol St
andard, 和光純薬工業株式会社製) (2)フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)標準品(Bis(2-
ethylhexyl)Phthalate Standard, 和光純薬工業株式会
社製) (3) ビスフェノールA(2,2-Bis(4-hydroxyphenyl)-prop
ane, 和光純薬工業株式会社製) (4) p-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(p-
(1,1,3,3-Tetramethylbutyl)-phenol, 和光純薬工業株
式会社製) <分光分析法によるビスフェノールA の定量>ビスフェ
ノールAの紫外線吸光度を次のようにして測定した。溶
解条件から試算した濃度既知のビスフェノールAのメタ
ノール/水の混合溶液を用い、最大吸収波長225nmにお
ける吸光度を、島津製作所製自記分光光度計(UV-3100
S)を用いて測定した。測定条件は次の通りであった。
【0045】scale 1.0 nm/div, speed slow, slit 2.0
nm, 210-240nm, absorbance 0.0〜0.7. <GC/MS、MSによるビスフェノールAの分析>ビスフェノ
ールAをエチル誘導体化法により定量した。ビスフェノ
ールAの水溶液を固相カートリッジに通水捕集後、酢酸
メチルで溶出し、濃縮し、ヘキサンに転溶し、無水硫酸
ナトリウムで脱水し、乾固した。次いで、KOHの存在
下、ジエチル硫酸でエチル化を行い、内標準含有のヘキ
サン溶液で抽出し、脱水後GC/MS-SIMで定量した。
【0046】本法では、極性の大きなフェノール類を物
理化学的に安定で、極性の小さいフェネトール体に誘導
化した後、ケン化処理を行った。
【0047】GC/MS測定条件は下記のとおりであった。
【0048】・カラム:溶融シリカキャピラリーカラム
(25m×0.32mmI.D., dr=0.52μm) ・液相:5%フェニルメチルシリコン ・カラム温度:60℃(1分); 15℃/分; 280℃(5分) ・注入口温度:250℃ ・注入法:スプリットレス法(1.5分後パージ)、1μL
注入 ・キャリアガス:He カラムヘッド圧 7.5psi ・インレット温度:250℃ MSの測定条件は下記のとおりである。
【0049】・イオン化法:EI ・イオン化電圧:70eV ・イオン源温度:250℃ ・イオン化電流:300μA ・検出モード:SIM <脱着率の測定> 吸着試験:100ppmのビスフェノールAを溶解した10%エタ
ノール(浴比1:10)水溶液(以降、単に標準水溶液と略
記することもある)を用い、紫外線吸収スペクトル分析
法にしたがって吸光度を測定した。ビスフェノールAに
基づくピークが現れる吸収波数(228nm)における吸光
度(Abs 0)を求めたところ、Abs 0 = 0.46であった。グ
ラフト加工又は化学加工した羊毛ケラチン繊維(以下、
単に、羊毛繊維とも称す。)試料0.203gを標準水溶液に
浸漬し、2日間静置して、ビスフェノールAを試料に吸
着させた。試料への吸着量は、標準水溶液中のビスフェ
ノールAの減少量と符合することになる。静置2日後の
上澄の紫外線吸収スペクトルを測定し、228nmにおける
吸光度(Abs 1)を求めたところ、Abs 1 = 0.24であっ
た。
【0050】脱着試験:上記のようにして一旦ビスフェ
ノールAを吸着せしめた、0.203gのグラフト加工又は化
学加工羊毛繊維試料を浸漬用の標準水溶液から取り出
し、10分間流水で洗浄して試料表面に付着しているビス
フェノールAを除去し、さらに蒸留水で洗浄した後、室
温で風乾させた。これをビスフェノールAの吸着羊毛繊
維と略記する。吸着羊毛繊維からビスフェノールAを脱
着させるため、この吸着羊毛繊維を上記標準水溶液に一
定時間浸漬した。脱着量は、次のようにして求めた。吸
着羊毛繊維0.203gを10mLの標準水溶液に5分間軽く浸漬
し、静置した。浸漬5分後、上澄の紫外線吸収スペクト
ルを測定し、228nmにおける吸光度(Abs 2)を求めたとこ
ろ、Abs 2 = 0.95であった。
【0051】上記吸着試験においては、上記ビスフェノ
ールA溶液を同一濃度のエタノール溶液で11倍に希釈し
たので、羊毛繊維に吸着したビスフェノールA 量は、(A
bs 0− Abs 1) × 11 = 2.42であった。また、脱着試験
での浴比は、10/0.203 = 49.3であった。100/49.3 = 2.
03であるため、脱着用に用いたビスフェノールAの水溶
液濃度は標準水溶液に比べて2.03倍濃度が濃いことにな
る。検量線から物質濃度を試算するには、同一濃度にお
ける吸光度で比較する必要がある。Abs 2は0.95である
ため、Abst 2 / 2.03 = 0.468となる。任意の静置時間
(t分)の吸光度をAbs tとすると、脱着率は、(Abs t /
2.03) / 2.42と表示できる。 製造例1:絹不織布の調製 家蚕繭層をナイフで1/3に切断した。この切断した家蚕
繭層50gを、バッチ式煮繭機(千葉産商製)を用いて、
0.2%の炭酸ナトリウム水溶液で繭層を40分間煮沸した。
このときのpHは10〜11であった。その後、得られた絹繊
維を1.4%の水酸化ナトリウム水溶液中に室温〜40℃で1
夜〜1日間浸漬し、膨潤処理した。浸漬処理中、膨潤し
た繭層をよく攪拌して、綿状に解すとともに、糸に処理
ムラが生じないようにした。薬剤を水で洗い落とした
後、NaOH処理した試料を紙を漉く要領で抄紙した。すな
わち、1.4%のNaOH水溶液で浸漬処理して得られた絹フィ
ブロイン繊維をビーターにより叩解した。切断叩解した
絹(繊維長6mmカット)35gに水25リットルを加えて分散
液を調製した。これをナイヤガラ・ビーター試験機(東
洋精機(株)製、TAPPIスタンダードB型)と家庭用ミキ
サーとを用いて紙漉用の均質な繊維分散原液とし、次い
で、標準角形シートマシン(東洋精機(株)製、網は10
0メッシュ)を用いて秤量50-100g/m2の絹フィブロイン
繊維の不織布を製造し、実施例1で用いた。 実施例1:絹不織布への有害ガスの吸着 製造例1で得られた絹不織布に対する各種有害ガスの吸
着率を上記方法に従って求めた。測定用試料の重量は1g
であった。得られた結果を表1に示す。 (表1)
【0052】表1の結果から、絹フィブロイン繊維から
なる不織布は、ホルムアルデヒド、イソ吉草酸、トリメ
チルアミン、アンモニア、酸化窒素ガスを効率的に吸着
することがわかる。 製造例2:MMA, St, HEMA, MAAでグラフト加工した羊毛
繊維の調製 MMA、St、HEMA、又はMAAをグラフト用モノマーとして用
い、以下のようにして羊毛繊維に対してグラフト加工を
行った。2.5% (owf)の過硫酸ナトリウム、85%蟻酸(2mL/
L)、40% (owf)のグラフト用モノマーを含む系に、モノ
マー重量に対して12%の乳化剤を加えて調製した混合溶
液中に羊毛繊維を浸漬した(浴比1:20)。オーバーマイ
ヤー型染色試験器(密閉型)を用い、常温から80℃まで
20分間で昇温した後、40分間、同温度を保持して反応を
進めた。反応終了後、水洗し、さらにハイドロサルファ
イトナトリウム水溶液(1g/L)にノイゲン(1mL/L)を添加
した混合溶液中で、70℃、20分間還元洗浄を行った。水
洗い後、風乾してから標準状態(20℃、65%RH)で調湿さ
せて、グラフト加工した羊毛繊維素材を作製した。20
℃、65%RHの標準状態で素材湿度が平衡状態に達した際
の試料重量、及び105℃、2時間の乾燥で減量した重量差
からグラフト加工羊毛繊維の加工率を求めた。 製造例3:絹フィブロイン粉末の調製 絹フィブロイン粉末を次の方法で調製した。2.5gの家蚕
絹糸(家蚕絹フィブロイン繊維)を55℃の8.5M臭化リチ
ウム水溶液20mL中で完全に溶解させた後、この水溶液を
セルロース製透析膜に入れて、5℃で5日間蒸留水で置換
して、不純物を除去し、純粋な絹フィブロイン水溶液を
調製した。かくして調製された絹フィブロイン水溶液に
蒸留水を加え、絶乾濃度が4%となるように絹フィブロイ
ン水溶液の原液を調製した。この絹フィブロイン水溶液
原液に水を加えて2%の絹フィブロイン水溶液を調製し、
この絹フィブロイン水溶液を−30℃で凍結させた後、減
圧下で凍結乾燥することにより絹フィブロイン粉末を調
製した。 製造例4:絹セリシン粉末の調製 家蚕繭を、0.5(重量/体積)(w/v)%炭酸ナトリウム水
溶液を用いて、常法に従って精練した。精練による得ら
れた絹セリシン水溶液を凍結乾燥して絹フィブロイン粉
末を調製した。 製造例5:羊毛ケラチン粉末の調製 メリノ種羊毛(64'S)に含まれる色素、脂肪分を、ベン
ゼン−エタノール50/50/容積%の混合溶媒を用い、ソッ
クスレー抽出器で2.5時間処理して除去し、これを原料
として、ケラチン粉末を以下のようにして調製した。
【0053】三つ口フラスコの一つの口には三方コック
を介して乾燥窒素ボンベからのゴム管を接続し、別の口
に反応系のpH調節のためpH電極を常時挿入し、また、も
う一つの口を必要な薬剤投入用として利用した。まず、
繊維長が約1cmとなるように細断した8.18gの羊毛繊維を
三つ口フラスコ内に投入し、これに450mLの8M尿素溶液
を加えた。窒素ガスをパージさせ、アスピレーターで15
分間三つ口フラスコ内を45mmHg程度に減圧させ、次いで
急激に大気圧に戻す操作を3〜4回繰り返した。このよう
にすると、三つ口フラスコ内のケラチン繊維間に含まれ
る空気が完全に除去でき、尿素水溶液とケラチン分子と
の反応が効率的となる。窒素置換が完了した後、三つ口
フラスコ内に還元剤として4.8mLのメルカプトエタノー
ルを加えて、8M尿素水溶液中に2〜3時間放置した。その
後、約100mLの5N KOH溶液を微量ずつ加えて三つ口フラ
スコ内の混合溶液のpHを10.5に調節した。室温で3時間
かけて羊毛繊維が完全に溶解するのを待った。繊維状の
羊毛繊維が溶解したものがケラチン水溶液である。セル
ロース製透析膜を用いてケラチン水溶液を純水で2日間
透析した。送風乾燥させながら、又は純水を加えること
により、濃度の異なる3種類のケラチ水溶液を調製し
た。
【0054】このようにして調製した異なる濃度(0.07
%, 0.1%, 0.7%)のケラチン水溶液を常法に従って凍結
乾燥することにより羊毛ケラチン粉末を調製した。 製造例6:金属を含有する羊毛繊維の製造 メタクリル酸メチルの銀(Ag)塩又は銅(Cu)塩(Ag-MMA, C
u-MMA )を用い羊毛繊維をグラフト加工した。すなわ
ち、羊毛繊維へのグラフト加工は、2.5% (owf)の過硫酸
ナトリウム、85%蟻酸(2mL/L)、及び40% (owf)のAg-MMA
又はCu-MMAを含み、さらにモノマー重量に対して12%の
乳化剤を加えて調製した混合溶液中に羊毛繊維を浸漬し
(浴比1:20)、加熱処理することにより行った。常温か
ら80℃まで20分間で昇温した後、40分間、同温度を保持
して反応を進めた。反応終了後、水洗いし、ノイゲン(1
mL/L)を添加した混合溶液中で、70℃、20分間還元洗浄
を行った。水洗いし、風乾した後、標準状態(20℃、65%
RH)で調湿させて金属含有加工羊毛繊維を作製した。 実施例2:各種蛋白質素材への有害ガスの吸着 <ガス吸着性>の項に記載した方法で、上記製造例1〜
6で得られた下記試料(A〜G)に対して各種有害ガスを吸
着させ、その吸着率(%)を求めた。得られた結果を表2
に示す。 (表2)
【0055】表2中、A: グラフト加工羊毛繊維(0.87
g)、B: 羊毛ケラチン粉末(0.25g)、C:絹フィブロイン粉
末(0.30g)、D: セリシン粉末(1g)、E: Agグラフト羊毛
繊維(0.26g)、F: Cuグラフト羊毛繊維(0.44g)、G: 絹フ
ィブロイン繊維不織布(0.8g)であり、試料A〜Gにおける
( )内は有害ガス吸着測定に使用した試料重量である。
【0056】表2から明らかなように、羊毛繊維及びセ
リシン粉末へのホルムアルデヒドの吸着率は100%であっ
た。絹フィブロイン繊維不織布への硫化水素の吸着は零
であったが、メタクリル酸メチルの銀塩又は銅塩を用い
るグラフト加工により銀又は銅の導入された羊毛繊維の
場合には、硫化水素が効率的に吸着するという格別の効
果が得られている。 実施例3:ビスフェノールAの定量(紫外線吸光度法) 紫外領域における分光分析によりビスフェノールAを次
のようにして定量した。100mLのエタノールに0.1gのビ
スフェノールAを溶解した後、水を加えて全量を1000 mL
にした。このようにして濃度既知のビスフェノールAを
調製した。ビスフェノールAのアルコール水溶液の濃度
は計算によれば66.7ppm、ガスマススペクトル測定によ
れば71ppmであった。このビスフェノールの標準水溶液
を紫外線吸光度測定したところ、225nmに単一の吸着ピ
ークがあらわれ、その吸光度は0.55であった。ビスフェ
ノールAの標準水溶液(原液)に一定量の水を加えて次
々に希釈し、それぞれの紫外線吸光度を測定したとこ
ろ、横軸に濃度、縦軸に吸光度の値をプロットすると
直線となること、かつ、この直線の外挿値は原点を通
ることが明らかとなった。そのため、このようにして得
られたビスフェノールA濃度を示す検量線を濃度検定の
ために利用できるといえるので、本発明ではビスフェノ
ールAの定量が可能である。
【0057】上記原液に適宜の量の水を加え、希釈倍率
の異なるビスフェノールAの水溶液を得、この水溶液を
石英製セルに入れ、近紫外領域における分光分析を行っ
て、検量線を作成した。ビスフェノールA原液濃度は上
記の調製条件から66.7ppmと計算で求められる。MSによ
り分析したビスフェノールは70ppmであり計算値と一致
しており、近紫外領域の分光分析により精度よくビスフ
ェノールが定量できることが明らかである。 実施例4:内分泌攪乱物質吸着用のエタノール最適濃度 実施例3と同様の方法で、各種内分泌攪乱物質の一定量
をエタノールに溶解し、吸着用標準溶液を調製する際の
最適条件を検討した。その結果、p-n-ノニルフェノール
をエタノール水溶液に溶解する最適濃度は40%であっ
た。ビスフェノールAでは10v/v%エタノール水溶液、p-
1, 1, 3, 3-テトラメチルブチルフェノールでは30v/v%
エタノール水溶液、フタル酸ビス2−エチルヘキサンで
は100v/v%エタノール水溶液が最適であった。 実施例5:ビスフェノールAの吸着(紫外線吸光度法と
ガスクロマトグラフィーによる吸着率の精度比較) 野蚕絹糸(生糸)のエリサン絹糸、サクサン絹糸及びア
ナフェサン絹糸、家蚕絹糸(生糸)、並びに上記製造例
1に従って得られた絹不織布へのビスフェノールAの吸
着試験を行った。0.1gのビスフェノールAをエタノール
と水とが10%:90%からなる混合溶媒1500mLに溶解して、
ビスフェノールAの原液を調製した。ビスフェノールAの
最大吸収波長225mmにおける紫外線吸光度を、ビスフェ
ノールA原液、これを7倍、8倍、及び11倍に希釈したも
のにつき測定し、検量線を作成した。
【0058】上記5種類の絹糸集合体2gをビスフェノー
ルA原液200mLに浸漬し、25℃で4日間静置した。放置4
日目に、ビスフェノールA水溶液の上清を採取し、紫外
線吸光度測定用の石英セルに入れ、紫外線吸光度測定を
行った。ビスフェノールAの吸着率として、ビスフェノ
ールAの溶液濃度66.7g×10-6 g/mLに対しての吸着率を%
で表示し、5種類の絹糸へのビスフェノールA吸着量と吸
着率を算出した結果を表3に示す。但し、吸着率は、次
式により求めた。
【0059】吸着率(%) = (A - B) / A × 100 上式中Aは225nmにおけるビフェノールAの吸光度、Bは同
波数における被検試料の吸光度を意味する。
【0060】また、ガスクロマトグラフィーに基づく吸
着率を表3に併せて示す。 (表3)
【0061】表3の結果から、ビスフェノールAは絹蛋
白質繊維に効率的に吸着すること、最も高い吸着率を示
したのはエリサン絹糸であることが確かめられた。野蚕
絹糸の場合で35%程度のビスフェノールA吸着率が、家蚕
絹糸の場合で44%程度のビスフェノールA吸着率が認めら
れた。セリシンを除去した絹不織布への吸着率は9%程度
と最低であった。 実施例6:ビスフェノール吸着(ガスマススペクトルに
よる検証) ビスフェノールAを精度よく定量する標準分析法として
ガスマススペクトル法がある。本発明で用いるビスフェ
ノールAの標準水溶液をガスマススペクトル法で測定し
たところ、71ppmであった。標準水溶液のビスフェノー
ルA濃度は溶解条件を基にして計算すると66.7ppmであ
り、ガスマススペクトル法の測定値と一致しており、本
発明の定量方法(吸光度法)も、ガスマススペクトル法
の測定値も同様に精度の高い値であることが確認でき
た。そこで、ガスマススペクトル法を用いて実施例5を
繰り返した。
【0062】70ppmのビスフェノールAのエタノール/水
の混合水溶液に下記の各種絹蛋白質繊維を浸漬し、25℃
で4日間静置した。浸漬前後におけるビスフェノールA混
合水溶液をガスマススペクトル法で測定し、ビスフェノ
ールAの濃度変化から各種繊維へのビスフェノールAの吸
着率(%)を求めた。得られた結果を表4に示す。 (表4)
【0063】表3及び4中、エリサン絹糸とは、野蚕の
幼虫であるエリサン幼虫が吐糸して作成した繭糸繊維を
精練してセリシンを除去したものを意味し、生糸、フィ
ブロイン繊維とは、家蚕幼虫由来のものであって、繭糸
構成の繊維を繰糸したものが生糸(セリシン付き)であ
り、これをアルカリ水溶液で煮沸処理してセリシンを除
去したものが生糸本体の絹フィブロイン繊維としてのフ
ィブロイン繊維である。
【0064】表4から明らかなように、本発明の分光分
析法(吸光度法)により、簡便に環境ホルモンが定量で
き、さらにその結果、各種素材への吸着率が評価できる
ことが分かる。 実施例7:ビスフェノールAの吸着(紫外線吸光度法) 実施例5と同様の方法で下記の試料へのビスフェノール
Aの吸着試験を行った。まず、0.2gのビスフェノールAを
エタノールと水とが10%:90%とからなる混合溶媒1000mL
に溶解してビスフェノールの原液を調製した。次いで、
各試料をビスフェノールA原液に浸漬し、25℃の室温で4
日間静置した。放置4日目に、ビスフェノールA水溶液
の上清を採取し、これを紫外線吸光度測定用の石英セル
に入れ、紫外線吸光度測定を行った。浴比は1:100とし
た。得られた結果を表5に示す。
【0065】用いた試料は、羊毛繊維、BzMAグラフト加
工された羊毛繊維、HEMAグラフト加工された羊毛繊維、
Stグラフト加工された羊毛繊維、MAAグラフト加工され
た羊毛繊維、絹フィブロイン多孔質体、クワコ絹糸(繭
層)、家蚕毛羽(繭毛羽)、セリシン蚕絹層(蚕繭層)
である。 (表5)
【0066】表5中、BzMA, St, HEMA, MAA羊毛繊維
は、上記したように、BzMA, St, HEMA,MAAで、それぞれ
グラフト加工された羊毛繊維を意味し、絹フィブロイン
多孔質体とは、絹フィブロイン繊維を8.5M臭化リチウム
水溶液中に溶解したのち、セルロース製透析膜に入れて
純水で置換し、送風乾燥法で水分を蒸発させ、得られる
3%の絹フィブロイン水溶液をポリエチレン膜上に広げ、
凍結乾燥することにより得られるスポンジ状の多孔質体
を意味する。また、クワコ繭層とは、家蚕の近縁種のク
ワコ幼虫がつくる繭を層状に剥離したものを意味し、繭
毛羽とは、家蚕幼虫が作る繭の外層の毛羽状繊維を意味
し、セリシン蚕繭層とは、セリシンが通常の20%以上多
く含む繭糸を意味する。
【0067】表5の結果から、ビスフェノールAは羊毛
繊維に効率よく吸着することがわかる。家蚕絹糸への吸
着は実施例5によれば43%程度であったが、羊毛繊維の
場合は73%程度と高い。また、BzMA, HEMA, MAAでグラフ
ト加工することにより羊毛繊維へのビスフェノールAの
吸着能力は増強したことが分かる。
【0068】絹フィブロイン多孔質体へのビスフェノー
ルAの吸着量も対照区の家蚕絹糸に比べて著しく増加し
た。吸着体1gあたりのビスフェノールAの吸着量が最も
優れたものはBzMAでグラフト加工された羊毛繊維であ
り、約17.4mgであった。ただし、吸着率は、ビスフェノ
ールAの溶液濃度(195.3 ×10-6) g/mLを用いて評価した
ものである。
【0069】表3と表5とを比較すると、絹不織布の吸
着量は0.4×10-6g/g吸着体であり、羊毛繊維の吸着量は
142.8×10-4g/g吸着体であることから、羊毛繊維へのビ
スフェノールAの吸着量は家蚕絹フィブロイン繊維への
吸着量に比べて35,000倍であった。 実施例8:p-n-ノニルフェノールの吸着実験(紫外線吸
光度測定法) 絹蛋白質への内分泌攪乱物質、p-n-ノニルフェノールの
吸着試験を次のようにして行った。p-n-ノニルフェノー
ルは水溶性でないため、次のように溶媒を工夫して水溶
液を調製した。0.05gのp-n-ノニルフェノールを200mLの
エタノールに完全に溶解させた後、蒸留水を静かに加え
ながら全量を500mLにした。このようにして調製した濃
度100ppmのp-n-ノニルフェノール水溶液の原液に各試料
を浸漬し、原液を時々静かに攪拌しながら室温(25℃)で
4日間静置した。静置後4日目の上清を実施例5と同様
に紫外線吸光分析を行い、各試料への吸着率を求めた。
すなわち、p-n-ノニルフェノールの紫外線吸光度を島津
製作所製自記分光光度計(UV- 3100S)で測定したとこ
ろ、UV曲線には主要なピークが222.5nmに、副次的な肩
状ピークが278nmに現れた。最大吸収波長222.5nmにおけ
る吸光度は、0.5100であった。278nmにおける吸光度は
0.108であった。p-n-ノニルフェノール標準水溶液に各
種絹蛋白質を浸漬し、浸漬前と浸漬後の濃度変化から吸
着率を求めた。得られたp-n-ノニルフェノールの吸着率
を表6に示す。なお、吸着率は、実施例5と同様の方法
で求めた。 (表6)
【0070】実施例9:各種繊維へのp-n-ノニルフェノ
ールの吸着(最大吸収波長278nm) 実施例8と同様にして各種繊維試料へのp-n-ノニルフェ
ノールの吸着率を求めた。ただし、p-n-ノニルフェノー
ルの原液濃度は100ppmとし、p-n-ノニルフェノールの最
大吸収波長は278nmとした。得られた結果を表7に示
す。 (表7)
【0071】表7から明らかなように、p-n-ノニルフェ
ノールはナイロンのような合成高分子のポリアミド繊維
にも、またアセテートのようなセルロース系の半合成繊
維にも効率的に吸着した。 実施例10:環境ホルモンの脱着 エポキシ化合物(Ex-313, Ex-314)により化学加工した羊
毛繊維、及びグラフトモノマー(4HBA, Methyl A)でグラ
フト加工した羊毛繊維を用いてビスフェノールAの脱着
試験を行った。
【0072】エポキシ化合物(Ex-313, Ex-314)又はアク
リル酸エステル(4HBA, Methyl A)で加工した羊毛繊維
(加工率20.5%)0.203gを濃度100ppmのビスフェノールA水
溶液(標準液と呼ぶ)に2日間浸漬した。浸漬2日目に上
澄を採取し、紫外線吸光度を測定した。ビスフェノール
Aにより現れる最大吸収波数の228nmにおける吸光度を求
めたところ、0.24であった。なお、標準液の吸光度は、
0.46であった。
【0073】次に、加工羊毛繊維をビスフェノールAの
標準液から取り出し、充分に水洗いをしてから室温(22
℃)で乾燥した。この乾燥した加工試料を10mLの10%エタ
ノール水溶液に5分間軽く浸漬し静置した。浸漬5分後、
上澄の紫外線吸収スペクトルを測定した。228nmにおけ
る吸光度は0.95であった。
【0074】一旦試料に吸着したビスフェノールAがど
の程度、脱離するかを調べるため、試料を10%エタノー
ル水溶液中に浸漬し、溶出してくるビスフェノールAの
脱着量から脱着率を求め、その結果を表8に示す。 (表8)加工羊毛繊維からのビスフェノールAの脱着率
(%)
【0075】表8の結果から明らかなように、グラフト
加工又は化学加工した羊毛繊維に一旦吸着したビスフェ
ノールAは、再度の浸漬により10%エタノール水溶液中に
溶出してくる。これは、ビスフェノールAの脱着の可能
性を示す。
【0076】上記脱着試験の結果から、4HBA、Methyl A
でグラフト加工した羊毛繊維からのビスフェノールA脱
着率は7-8%程度であり、吸着したビスフェノールAは加
工羊毛内に保持されたまま脱着し難い。これに反して、
EX 314で化学加工した羊毛繊維からの脱着率は3時間で3
7%以上に達し、EX313で化学加工した羊毛繊維からの脱
着率は30分で45%以上にも達している。これらのデータ
から、短時間の浸漬でビスフェノールAを多量に脱着す
るためには、羊毛繊維をエポキシ化合物で加工すること
が有効であることが分かる。 実施例11 66.7ppmのビスフェノールAを含む10%エタノール水溶液
に化学加工又はグラフト加工した羊毛繊維を浸漬し、2
日後に、加工羊毛繊維がどの程度ビスフェノールAを吸
着したかを上澄の紫外線吸光度を測定することにより検
討した。得られた結果を表9に示す。 (表9)
【0077】表9から明らかなように、エポキシ化合
物、BzMA, HEMA, MAA, St, 4HBA, Methyl A, Ethyl Aに
より、10%前後以上の加工率を有するように化学加工さ
れ又はグラフト加工された羊毛繊維は、優れたビスフェ
ノールA吸着性を示す。
【0078】
【発明の効果】本発明の有害物質吸着素材によれば、ホ
ルマリン、アンモニア等のガス状物質、又はビスフェノ
ールA、p-n-ノニルフェノール、テトラメチルブチルフ
ェノール、フタル酸ビス2−エチルヘキサン等の内分泌
攪乱物質のような有害物質を効率よく吸着することがで
きる。
【0079】また、有害物質を吸着する天然蛋白質は、
絹フィブロイン、絹セリシン、動物ケラチン等の広範な
動物性タンパク質からなり、化学反応性に富むアミノ酸
を含むため、この化学的に活性な反応拠点に化学加工又
はグラフト加工を施すことにより有害物質の吸着性能及
び脱着性能を向上させることができる。
【0080】本発明の吸着素材は、ガス状の有害物質を
効率的、経済的に吸着する素材であるため、半導体製造
工場のクリーンルーム内を循環する循環ガスや、クリー
ンルーム内に導入するフレッシュエアー中に微量に含ま
れるアンモニア、酸化硫黄Sox、酸化窒素Nox、塩化水素
などの有害ガスを除去するのに有用である。
【0081】本発明の吸着素材は、天然高分子繊維であ
るため、該繊維の優れた加工性を利用して、不織布、織
物、編物、紙、又は基材への植毛など様々な形態に加工
できるので、脱臭・消臭が求められる様々な用途分野に
広く用いられ得る。例えば、排水処理フィルター等の水
浄化エレメントや、エアコンディショナー用フィルタ
ー、空気清浄機用フィルター、クリーンルーム用エアー
フィルター、除湿機用フィルター、及び業務用ガス処理
フィルター等の空調機器用エレメントの他、下着及び靴
下等の衣料品全般、並びに布団、枕、シーツ、毛布、及
びクッション等の寝装寝具、並びにカーテン、カーペッ
ト、マット、壁紙、ぬいぐるみ、造花、及び造木等のイ
ンテリア用品、並びにマスク、失禁ショーツ、及び濡れ
ティッシュ等の衛生材料、並びに車のシート、及び内装
等の車内用品、並びにトイレカバー、トイレマット、及
びペット用トイレ等のトイレ用品、並びに冷蔵庫、及び
ごみ箱の内張り等の台所用品、並びに靴の中敷き、スリ
ッパ、手袋、タオル、雑巾、ゴム手袋の内張り、長靴の
内張り、貼付材、生ゴミ処理装置等で有効に用いること
ができる。
【0082】本発明の吸着素材は、グラフトモノマーが
素材内でグラフト重合しており、また、エポキシ化合物
で化学修飾加工したものであるため、悪臭物質や内分泌
攪乱物質などの有害物質を吸着する能力が低下しないと
いう耐久性に優れたアルデヒド吸着能力を有し、さら
に、上記のアルデヒド吸着能力を有する消臭繊維を簡単
に繊維の種類形態を問わず製造することが可能である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G01N 1/10 G01N 1/10 C 1/22 1/22 L 21/33 21/33 33/00 33/00 D Fターム(参考) 2G059 AA01 BB04 DD03 DD04 EE01 EE12 HH03 HH06 MM12 4C080 AA05 BB02 CC04 CC05 CC08 CC09 JJ04 JJ05 MM22 MM24 MM28 MM32 4G066 AC02B AC03B AC26B AC35B AC37B CA24 CA25 CA27 CA28 CA29 CA52 DA02 DA03 GA11 GA37

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ホルムアルデヒド、イソ吉草酸、メチル
    メルカプタン、トリメチルアミン、アンモニア、酸化窒
    素、硫化水素、ビスフェノール、ノニルフェノール、テ
    トラメチルブチルフェノール、及びフタル酸ビス2−エ
    チルヘキサンから選ばれた少なくとも一種の有害物質を
    吸着することができる有機高分子からなる吸着素材であ
    って、該有機高分子が昆虫由来の絹蛋白質、羊毛ケラチ
    ン、セルロース、及びポリアミドから選ばれた少なくと
    も一種であることを特徴とする有害物質の吸着素材。
  2. 【請求項2】 前記有機高分子が、金属を含有していて
    もよいメタクリル酸ベンジル、スチレン、メタクリル酸
    2-ヒドロキシエチル、メタクリルアミド、アクリル酸4-
    ヒドロキシブチル、メタクリル酸4-ヒドロキシブチル、
    アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、若しくはメタク
    リル酸メチルのいずれかによりグラフト共重合されたも
    のであるか、又はエポキシ化合物により共有結合された
    ものである請求項1記載の有害物質吸着素材。
  3. 【請求項3】 前記エポキシ化合物がグリセロールポリ
    グリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジル
    エーテル、又はソルビトールポリグリシジルエーテルを
    主成分とするものである請求項2記載の有害物質吸着素
    材。
  4. 【請求項4】 ホルムアルデヒド、イソ吉草酸、メチル
    メルカプタン、トリメチルアミン、アンモニア、酸化窒
    素、硫化水素、ビスフェノール、ノニルフェノール、テ
    トラメチルブチルフェノール、及びフタル酸ビス2-エチ
    ルヘキサンから選ばれた少なくとも一種の有害物質を含
    む有機溶媒中に、昆虫由来の絹蛋白質、羊毛ケラチン、
    セルロース、及びポリアミドから選ばれた少なくとも一
    種の吸着素材を浸漬して該有害物質を吸着させた後、有
    害物質の吸着された吸着素材を取り出して乾燥させた、
    次いで、有機溶媒/水系の混合溶媒中に所定の時間浸漬
    し、吸着された有害物質を脱着させることを特徴とする
    有害物質の脱着方法。
  5. 【請求項5】 ビスフェノール、ノニルフェノール、テ
    トラメチルブチルフェノール、又はフタル酸ビス2-エチ
    ルヘキサンのいずれかである内分泌攪乱物質を有機溶媒
    /水系の混合溶媒に溶解し、この溶液について紫外波長
    領域における吸光スペクトルを測定し、その最大吸収強
    度に基づいて検量線を作成し、この検量線を用いて該内
    分泌攪乱物質の濃度を測定することを特徴とする内分泌
    攪乱物質の定量方法。
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