JP2002054442A - 筒内噴射式火花点火内燃機関 - Google Patents

筒内噴射式火花点火内燃機関

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 吸気温度を十分に高めることができる筒内噴
射式火花点火内燃機関を提供することである。 【解決手段】 シリンダヘッドの気筒内面における吸気
弁側と、吸気弁傘部の気筒内面側とに、断熱層9が設け
られている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、筒内噴射式火花点
火内燃機関に関する。
【0002】
【従来の技術】気筒内へ直接的に燃料を噴射する筒内噴
射式火花点火内燃機関が公知である。このような筒内噴
射式火花点火内燃機関は、吸気ポート噴射式内燃機関の
ように噴射された燃料の一部が吸気ポートの壁面に付着
して気筒内へ供給されないようなことはなく、噴射され
た燃料全てが確実に気筒内へ供給されるために、燃料噴
射量を機関運転状態に応じた必要最小限とすることがで
き、燃費消費率の低減を実現することができる。
【0003】筒内噴射式火花点火内燃機関では、一般的
に、吸気行程燃料噴射による均質燃焼と、圧縮行程燃料
噴射による成層燃焼とを切り換えて実施するようになっ
ている。いずれの燃焼においても、気筒内の吸気温度を
高めることは、噴射燃料の気化を促進するのに有利であ
る。
【0004】特開平11−270404号公報は、シリ
ンダヘッドの気筒内面全体に遮熱板を設けた内燃機関を
開示している。この内燃機関によれば、気筒内の吸気
は、高温の排気弁から受熱すると共に、比較的低温のシ
リンダヘッド吸気弁側による冷却が遮熱板によって防止
されるために、通常に比較して吸気温度を高めることが
できる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これで
は十分ではなく、さらに吸気温度を高めることが望まれ
ている。従って、本発明の目的は、吸気温度を十分に高
めることができる筒内噴射式火花点火内燃機関を提供す
ることである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明による請求項1に
記載の筒内噴射式火花点火内燃機関は、シリンダヘッド
の気筒内面における吸気弁側と、吸気弁傘部の気筒内面
側とに、断熱層が設けられていることを特徴とする。
【0007】また、本発明による請求項2に記載の筒内
噴射式火花点火内燃機関は、請求項1に記載の筒内噴射
式火花点火内燃機関において、ピストン頂面には吸気弁
側に偏在してキャビティが形成され、前記筒内噴射式火
花点火内燃機関は、圧縮行程で前記キャビティ内へ燃料
を噴射することにより成層燃焼を実施するものであり、
前記断熱層の表面における前記キャビティに対向する部
分には、蓄熱層が設けられていることを特徴とする。
【0008】また、本発明による請求項3に記載の筒内
噴射式火花点火内燃機関は、請求項1に記載の筒内噴射
式火花点火内燃機関において、ピストン頂面には吸気弁
側に偏在してキャビティが形成され、前記筒内噴射式火
花点火内燃機関は、圧縮行程で前記キャビティ内へ燃料
を噴射することにより成層燃焼を実施するものであり、
前記断熱層の表面における前記キャビティに対向する部
分には、近傍雰囲気がリーン空燃比の時にNOx を吸収
し、理論空燃比又はリッチ空燃比の時にNOxを放出し
て還元浄化するNOx 吸蔵還元触媒が設けられているこ
とを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】図1は、本発明による筒内噴射式
火花点火内燃機関の実施形態を示す概略縦断面図であ
り、図2は図1の筒内噴射式火花点火内燃機関における
ピストンの平面図である。これらの図において、1は吸
気ポート、2は排気ポートであり、吸気ポート1は吸気
弁3を介して、排気ポート2は排気弁4を介してそれぞ
れ気筒内へ通じている。5はピストンであり、その頂面
には凹状のキャビティ8が吸気弁側に偏在して形成され
ている。6は気筒上部略中心に配置された点火プラグで
ある。7は、気筒内へ直接的に燃料を噴射するために、
気筒上部周囲の吸気弁側に配置された燃料噴射弁であ
る。燃料噴射弁7は、スリット状噴孔を有し、燃料を比
較的厚さの薄い略扇形状噴霧として噴射するものであ
る。
【0010】本筒内噴射式火花点火内燃機関は、燃料噴
射量が多量となる機関高負荷時には、均質燃焼を実施す
るために、燃料噴射弁7により吸気行程において燃料を
噴射し、点火時点において気筒内に均質混合気を形成す
ることが意図されている。略扇形状噴霧は、飛行中にお
いて気筒内の吸気と十分に接触して良好に微粒化され、
円錐形状噴霧等に比較して気化し易い。しかしながら、
噴射燃料を完全に気化させて良好な均質混合気を形成す
るには、吸気温度を十分に高めることが好ましい。
【0011】一方、燃料噴射量が多量となる機関高負荷
時を除いては、成層燃焼を実施するために、燃料噴射弁
7により圧縮行程後半において燃料を噴射するようにな
っている。こうして噴射された略扇形状噴霧は、図1に
示すように、キャビティ8内へ侵入する。
【0012】ピストン5頂面に形成されたキャビティ8
は、底壁8aと燃料噴射弁7に対向する対向側壁8bと
を有している。斜線で示す噴射直後の燃料は液状である
が、キャビティ8の底壁8aに衝突した後に底壁8aに
沿って進行して幅方向に拡がる際に底壁8aの広範囲部
分から熱吸収するために気化し易い。こうして気化しつ
つある燃料は、対向側壁8bによって上方向に偏向され
る。
【0013】図2に示すように、対向側壁8bは平面視
において円弧形状を有しており、平面視において、燃料
噴射弁7の噴孔から対向側壁8bまでの距離は、対向側
壁8bの円弧形状の半径より大きくされている。それに
より、キャビティ8の底壁8a上を進行して幅方向に拡
がった燃料において、幅方向における燃料中央部分は、
対向側壁8bの中央部に沿って上方向の速度成分だけが
付与されるが、幅方向における燃料両側部分は、対向側
壁8bに対してそれぞれ鋭角度に衝突することとなり、
中央方向の速度成分も付与される。
【0014】こうして、キャビティ8の底壁8a上を進
行して気化しつつある燃料各部分は、対向側壁8b上を
進行する際にさらに熱吸収してほぼ完全に気化し、点火
時点において、点火プラグ6近傍に集合してドットで示
す一塊の可燃混合気となる。成層燃焼は、点火プラグ6
近傍だけに可燃混合気を形成することにより、気筒内全
体としてはリーンな混合気を燃焼可能であるために、燃
費効率が高いものである。本実施形態のように、燃料噴
射弁7として燃料を比較的厚さの薄い略扇状に噴射する
ものを使用することで、噴射された燃料は前述したよう
にキャビティ8内で気化し易くなるが、特に、燃費効率
の高い成層燃焼領域を高負荷側に拡大しようとして比較
的多くの燃料を点火までの時間が短い圧縮行程後半に噴
射する場合等には、噴射燃料の気化を良好にするため
に、吸気温度を十分に高めることが好ましい。
【0015】このように、均質燃焼及び成層燃焼のいず
れにおいても、燃料の気化促進のために吸気温度を十分
に高めることが望まれている。本実施形態では、シリン
ダヘッドの気筒内面における吸気弁側と、吸気弁傘部の
気筒内面側とには、断熱層9が設けられている。この断
熱層9は、シリンダヘッド気筒内面の底面図である図3
において、斜線で示されている。断熱層9は、シリンダ
ヘッドの材質である鋳鉄又はアルミ等に比較して低い熱
伝導率を有する材料、例えば、セラミック、ステンレ
ス、又はチタン等から形成され、これらの材料を板状に
して、シリンダヘッドの鋳造の際に鋳込んでも良く、ま
た、シリンダヘッドの成形後に溶射しても良い。
【0016】こうすることにより、気筒内の吸気は、排
気の通過によって高温となる排気弁に加えて、排気が通
過する排気ポート回りで比較的高温となるシリンダヘッ
ド排気弁側から良好に受熱すると共に、吸気が通過する
吸気ポート回りで比較的低温となるシリンダヘッド吸気
弁側による冷却に加えて、吸気の通過によって低温とな
る吸気弁による冷却が、いずれも断熱層9によって防止
されるために、吸気温度を十分に高めることができ、均
質燃焼時の均質混合気及び成層燃焼時の可燃混合気にお
いて燃料を十分に気化させて良好な燃焼を実現すること
ができる。
【0017】本実施形態では、このような断熱層9の表
面におけるキャビティ8に対向する部分には、さらに蓄
熱層10が設けられている。この蓄熱層10は、シリン
ダヘッド気筒内面の底面図である図3において、断熱層
9を示す斜線と交差する別の斜線で示されている。蓄熱
層10は、銀メッキ又は銀ペースト等の被覆によって形
成されている。このような蓄熱層10は、気筒内の燃焼
ガスから受熱して高温度に維持され、吸気温度をさらに
高めることを可能とする。
【0018】成層燃焼において、前述したように、吸気
温度が十分に高められていれば、燃料噴射弁7から噴射
された燃料は、厚さの薄い略扇状の噴霧形状も相まっ
て、キャビティ8の対向側壁8b上を進行した後にはほ
ぼ完全に気化している。しかしながら、燃料噴射量が比
較的多い時において、噴射末期の燃料は、キャビティ壁
面がこれまでの噴射燃料を気化させるのにかなりの熱を
奪われているために、十分に気化せずにシリンダヘッド
に付着することがある。また、噴射燃料の一部が、キャ
ビティ8の底壁8aに衝突する際に飛散して液状のまま
シリンダヘッドに付着する可能性もある。
【0019】本実施形態において、このような液状燃料
は、シリンダヘッドにおけるキャビティ8の対向部分、
すなわち、蓄熱層10に付着することとなり、高温度の
蓄熱層10によって、瞬間的に蒸発させられる。このよ
うに、蓄熱層10は、液状付着燃料を蒸発させるように
も機能し、成層燃焼時において、噴射された全ての燃料
は点火までに確実に気化させ、未燃燃料の排出量を低減
することが可能となる。
【0020】ところで、成層燃焼は空気過剰での燃焼方
式であるために、比較的多量のNO x が発生してしま
う。このNOx を還元浄化するために、一般的に、機関
排気系にはNOx 吸蔵還元触媒装置が配置される。NO
x 吸蔵還元触媒装置に使用されるNOx 吸蔵還元触媒
は、NOx 吸収剤と白金Ptのような貴金属触媒とから
構成される。NOx 吸収剤は、例えば、カリウムK、ナ
トリウムNa、リチウムLi、セシウムCs、ルビジウ
ムRbのようなアルカリ金属、バリウムBa、カルシウ
ムCa、ストロンチウムSrのようなアルカリ土類、ラ
ンタンLa、イットリウムYのような希土類、および遷
移金属から選ばれた少くとも一つである。このNOx
収剤は、近傍雰囲気中の空燃比がリーンのときにはNO
x を吸収し、空燃比が理論空燃比又はリッチになると吸
収したNOx を放出するNOx の吸放出作用を行う。こ
の吸放出作用を、NOx 吸収材としてバリウムBaを、
貴金属触媒として白金Ptを使用した場合を例に以下に
説明する。
【0021】まず、既燃ガスの空燃比がリーンで酸素濃
度が高い時には、酸素が、O2 - の形で白金Ptの表面
に付着し、次いで、既燃ガス中のNOが白金Ptの表面
上でO2 - と反応してNO2 となる。こうして生成され
たNO2 の一部は、白金Pt上で酸化されつつ吸収材内
へ吸収されて酸化バリウムBaOと結合しながら硝酸イ
オンNO3 - の形で吸収材内に吸収される。
【0022】既燃ガス中の酸素濃度が高い限り白金Pt
の表面でNO2 が生成され、吸収材のNOx 吸収能力が
飽和しない限りNO2 が吸収材内に吸収される。しかし
ながら、既燃ガスがリッチ状態となって酸素濃度が低下
することによってNO2 の生成量が低下すると、逆に硝
酸イオンNO3 - がNO2 の形で吸収材から放出され
る。このNO2 は、リッチ状態の既燃ガス中に含まれる
未燃HC及びCOと反応して還元浄化される。
【0023】このように、機関排気系にNOx 吸蔵還元
触媒装置を配置すれば、NOx を良好に吸蔵するが、定
期的に燃焼空燃比をリッチにする等してNOx 吸収材の
吸収能力が飽和するまでにNOx を放出させて還元浄化
することが必要である。このような空燃比制御は比較的
複雑である。
【0024】本筒内噴射式火花点火内燃機関において、
シリンダヘッドに形成した蓄熱層10の表面には、又
は、蓄熱層なしに断熱層の表面におけるキャビティ8の
対向部分には、NOx 吸蔵還元触媒を担持させるように
して、機関排気系のNOx 吸蔵還元触媒装置を省略する
ようにしても良い。こうすることにより、成層燃焼時に
生成されたNOx を気筒内においてNOx 吸蔵還元触媒
が吸蔵する。次回の成層燃焼時には、シリンダヘッドの
キャビティ8の対向部分は、点火直前において、着火性
の良好な可燃混合気が接触し、すなわち、近傍雰囲気が
リッチ状態となるために、NOx 吸蔵還元触媒装置に吸
蔵されているNOx が放出されると共に還元浄化させら
れる。
【0025】このようにシリンダヘッドにNOx 吸蔵還
元触媒を担持させれば、特別な空燃比制御を実施するこ
となく、通常の成層燃焼毎に、点火直前には吸蔵したN
xを放出して還元浄化させ、燃焼後には発生したNO
x を良好に吸蔵することができる。NOx 吸蔵還元触媒
又は蓄熱層10は、必ずしもシリンダヘッドのキャビテ
ィ8の対向部分の全体に設ける必要はなく、対向部分の
少なくとも一部に設けることによっても、ある程度のN
x の吸蔵還元作用又は液状付着燃料の蒸発作用をもた
らすことができる。
【0026】
【発明の効果】このように、本発明による筒内噴射式火
花点火内燃機関によれば、シリンダヘッドの気筒内面に
おける吸気弁側と、吸気弁傘部の気筒内面側とに、断熱
層が設けられているために、気筒内の吸気は、排気の通
過によって高温となる排気弁に加えて、排気が通過する
排気ポート回りで比較的高温となるシリンダヘッドの気
筒内面における排気弁側から良好に受熱すると共に、吸
気が通過する吸気ポート回りで比較的低温となるシリン
ダヘッドの気筒内面における吸気弁側による冷却に加え
て、吸気の通過によって低温となる吸気弁による冷却
が、いずれも断熱層によって防止されるために、吸気温
度を十分に高めることができ、噴射燃料の気化が促進さ
れ、良好な燃焼を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による筒内噴射式火花点火内燃機関の実
施形態を示す概略縦断面図である。
【図2】図1のピストンの平面図である。
【図3】図1のシリンダヘッドの底面図である。
【符号の説明】
1…吸気ポート 2…排気ポート 3…吸気弁 4…排気弁 5…ピストン 6…点火プラグ 7…燃料噴射弁 9…断熱層 10…蓄熱層

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 シリンダヘッドの気筒内面における吸気
    弁側と、吸気弁傘部の気筒内面側とに、断熱層が設けら
    れていることを特徴とする筒内噴射式火花点火内燃機
    関。
  2. 【請求項2】 ピストン頂面には吸気弁側に偏在してキ
    ャビティが形成され、前記筒内噴射式火花点火内燃機関
    は、圧縮行程で前記キャビティ内へ燃料を噴射すること
    により成層燃焼を実施するものであり、前記断熱層の表
    面における前記キャビティに対向する少なくとも一部の
    部分には、蓄熱層が設けられていることを特徴とする請
    求項1に記載の筒内噴射式火花点火内燃機関。
  3. 【請求項3】 ピストン頂面には吸気弁側に偏在してキ
    ャビティが形成され、前記筒内噴射式火花点火内燃機関
    は、圧縮行程で前記キャビティ内へ燃料を噴射すること
    により成層燃焼を実施するものであり、前記断熱層の表
    面における前記キャビティに対向する少なくとも一部の
    部分には、近傍雰囲気がリーン空燃比の時にNOx を吸
    収し、理論空燃比又はリッチ空燃比の時にNOx を放出
    して還元浄化するNOx 吸蔵還元触媒が設けられている
    ことを特徴とする請求項1に記載の筒内噴射式火花点火
    内燃機関。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2011169232A (ja) * 2010-02-18 2011-09-01 Toyota Motor Corp 内燃機関
JP2013024143A (ja) * 2011-07-21 2013-02-04 Toyota Motor Corp 内燃機関
DE102016122322A1 (de) 2016-01-21 2017-07-27 Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha Herstellverfahren für einen Zylinderkopf

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