JP2002050476A - El素子及びその製造方法 - Google Patents

El素子及びその製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】大面積のパターニングを可能にし、且つ、生産
性の高い製造方法とすることで、より安価なEL素子を
提供する。 【解決手段】透明または半透明導電層を設けた透明基材
1の前記導電層2上に少なくとも発光層3、陰極層5が
順次積層されてなるEL素子において、前記透明または
半透明導電層を設けた透明基材1の前記導電層2上に、
少なくとも発光層3及び剥離層4がパターン状に設けら
れ、かつ、前記発光層3上に陰極層5を有することを特
徴とするEL素子。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エレクトロルミネ
センス(以下単にELという)現象を利用したEL素
子、特に発光層が有機高分子蛍光体の薄膜からなるEL
素子及びその製造方法に関するものであり、さらに詳し
くは、EL素子の陰極のパターニング方法に関わる。
【0002】
【従来の技術】EL素子は、一般に透明または半透明導
電層である陽極、発光層、陰極層とが積層されてなる。
また、有機薄膜を用いる場合の発光層(以下、有機発光
層という)は、正孔注入層、正孔輸送層、蛍光体層、電
子注入層などが積層された多層構造とすることもでき
る。この陽極、陰極間に電流を流すことにより有機蛍光
体層で発光が生じ、一方の電極を透明にすることで外部
に光を取り出すことができる。
【0003】有機発光層の典型的な例としては、正孔注
入層に銅フタロシアニン、正孔輸送層にN,N’−ジ
(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−
ビフェニル−4,4’−ジアミン、蛍光体層にトリス
(8−キノリノール)アルミニウムをそれぞれ用いたも
のが挙げられる。これらの有機発光層はいずれも低分子
の化合物であり、各層は0.01〜0.1μm程度の厚
みで抵抗加熱方式などの真空蒸着法などによって積層さ
れる。このため、低分子材料を用いる有機薄膜EL素子
の製造のためには、複数の蒸着釜を連結した真空蒸着装
置を必要とし、蒸着時の加熱による材料劣化のために生
じる発光特性の低下や生産性が低い、製造コストが高い
などの問題点があった。
【0004】さらに有機発光層は低分子の蒸着物である
ため膜の強度が弱く、そのため陰極となるアルミニウ
ム、マグネシウム、銀などの金属材料も真空蒸着または
スパッタリングなどの真空製膜装置を必要とし、装置面
から生産性、コスト面で実用化の障害となっていた。ま
た、真空製膜では陰極層にピンホールなどの欠陥が発生
しやすく、このピンホールから水分や酸素などが侵入し
素子の劣化が生じるなど、素子の寿命低下の一因となっ
ていた。
【0005】これに対し、近年、有機層として高分子を
用いた高分子EL素子(以下、単にEL素子ともいう)
が提案されてきている。発光層として高分子を用いるも
ので、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリ
ビニルカルバゾールなどの高分子中に低分子の蛍光色素
を溶解させたものや、ポリフェニレンビニレン誘導体
(PPV)、ポリアルキルフルオレン誘導体(PAF)
などの高分子蛍光体が用いられる。これら高分子発光体
は、溶液に可溶とすることでスピンコート、フレキソ印
刷などの湿式法で製膜することができる。
【0006】しかしながら、高分子EL素子を複数の所
定のパターンで発光させるためには、透明導電層および
陰極層をパターニングする必要があるが、前者について
は従来のエッチング法によりパターニングすることがで
きるのに対し、後者について簡便に行う方法がなかっ
た。すなわち、陰極をパターニングする方法の一つは、
陰極蒸着時に蒸着マスクを用いる方法であるが、蒸着基
材をマスクパターンと合わせて間歇に送る必要があるた
め生産性に劣り、基材側のパターンとの位置合わせが困
難である、マスクのサイズを大きくするとマスク強度が
不足してマスクがたるんでしまい、パターンがぼけるな
どの欠点を有していた。
【0007】また、基板上にあらかじめ隔壁を設けて、
陰極蒸着時にこの隔壁の段差や蒸着影によって陰極を分
離する方法が知られているが、高分子EL素子のように
コーティングによって発光層を形成すると、前記の隔壁
が埋まってしまうなどにより、隔壁としての働きが不十
分となるなどの問題点があった。また、連続的なフィル
ム基板を用いる場合には、実質的に隔壁を形成できない
という問題があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の通
り、従来のEL素子のパターニング方法において困難で
あった大面積のパターニングを可能にし、且つ、生産性
の高い製造方法とすることで、より安価なEL素子を提
供することを目的としてなされたものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の課題に
鑑みてなされたものであって、請求項1は、透明または
半透明導電層を設けた透明基材の前記導電層上に少なく
とも発光層、陰極層が順次積層されてなるEL素子にお
いて、前記透明または半透明導電層を設けた透明基材の
前記導電層上に、少なくとも発光層及び剥離層がパター
ン状に設けられ、かつ、前記発光層上に陰極層を有する
ことを特徴とするEL素子である。請求項2は、透明ま
たは半透明導電層を設けた透明基材の前記導電層上に少
なくとも発光層、陰極層が順次積層されてなるEL素子
の製造方法において、前記透明または半透明導電層を設
けた透明基材の前記導電層上に、発光層を印刷法により
設け、次いで剥離層を印刷法によりパターン状に設け、
次いで陰極層を真空蒸着法またはスパッタ法により設け
た後に、前記陰極層を粘着材料により、前記剥離層上の
陰極層をパターン状に剥離して、陰極層をパターニング
することを特徴とするEL素子の製造方法である。請求
項3は、透明または半透明導電層を設けた透明基材の前
記導電層上に少なくとも発光層、陰極層が順次積層され
てなるEL素子の製造方法において、前記透明または半
透明導電層を設けた透明基材の前記導電層上に、剥離層
を印刷法によりパターン状に設け、次いで発光層を印刷
法により設け、次いで陰極層を真空蒸着法またはスパッ
タ法により設けた後に、前記陰極層を粘着材料により、
前記剥離層上の陰極層をパターン状に剥離して、陰極層
をパターニングしてなることを特徴とするEL素子の製
造方法である。
【0010】本発明における基材としては、ガラス基板
やプラスチック製のフィルムまたはシートを用いること
ができる。プラスチック製のフィルムを用いれば、巻き
取りにより高分子EL素子の製造が可能となり、より安
価に素子を提供することができる。プラスチックフィル
ムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレ
ンナフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポ
リマー、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリメ
チルメタクリレート、ポリカーボネートなどを用いるこ
とができる。また、導電層を製膜しない側にセラミック
蒸着フィルムやポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、
エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物などの他のガスバ
リア性フィルムを積層したり、カラーフィルター層を印
刷により設けたりしても良い。
【0011】透明導電層としては、インジウムと錫の複
合酸化物(以下ITOという)などを用いることがで
き、前記基板上に蒸着またはスパッタリング法により製
膜することができる。また、オクチル酸インジウムやア
セトンインジウムなどの前駆体を基材上に塗布後、熱分
解により酸化物を形成する塗布熱分解法などにより形成
することもできる。また、透明導電層としてインジウム
と亜鉛との複合酸化物、亜鉛アルミニウム複合酸化物な
どを用いることができる。あるいは、アルミニウム、
金、銀などの金属が半透明状に蒸着されたものを用いる
ことができる。
【0012】上記、透明または半透明導電層が積層され
たガラスまたはプラスチック基材は、本発明のために特
別に製造する必要はなく、導電層の抵抗率や光線透過率
に合わせて市販の基材を用いることができる。
【0013】透明または半透明の導電層は、必要に応じ
てエッチングによりパターニングを行ったり、UV処
理、プラズマ処理などにより表面の活性化を行ってもよ
い。また、エッチングの代わりにニトロセルロース、ポ
リアミド、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン
−酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、ウレタン樹脂な
どを絶縁層として印刷してもよい。
【0014】本発明に用いることのできる発光層は、高
分子蛍光体の単層であっても、正孔輸送層、高分子蛍光
体層などからなる多層構造であってもよい。正孔輸送層
を設ける場合は、銅フタロシアニンやその誘導体、1,
1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロ
ヘキサン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3
−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’
−ジアミン、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’
−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジア
ミン等の芳香族アミン系などの低分子も用いることがで
きるが、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリビニルカ
ルバゾール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェ
ン)とポリスチレンスルホン酸との混合物などが、湿式
法による製膜が可能であり、より好ましい。
【0015】高分子蛍光体層としては、クマリン系、ペ
リレン系、ピラン系、アンスロン系、ポルフィレン系、
キナクリドン系、N,N’−ジアルキル置換キナクリド
ン系、ナフタルイミド系、N,N’−ジアリール置換ピ
ロロピロール系などの蛍光性色素をポリスチレン、ポリ
メチルメタクリレート、ポリビニルカルバゾールなどの
高分子中に溶解させたものや、ポリアリールビニレン系
やポリフルオレン系などの高分子蛍光体を用いることが
できる。
【0016】これらの高分子蛍光体層は、トルエン、キ
シレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブ
チルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノー
ル、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチ
ル、水などの単独または混合溶媒に高分子蛍光体材料を
溶解させ、スピンコート、スプレーコート、フレキソ、
グラビア、マイクログラビア、凹版オフセットなどのコ
ーティング、印刷方法を用いて全面またはパターン状に
製膜することができる。
【0017】剥離層としては、ポリエチレンワックス、
ポリプロピレンワックスなどを主体とする合成ワックス
やカルナバロウなどの天然ワックスなど、密着力、凝集
力の小さい材料を用いて、剥離層とすることができる。
また、シリコーン系、フッ素系の剥離剤など、発光層や
後工程で製膜される陰極層との密着性が低いものを用い
ることができる。なかでもシリコーン系の離型剤を剥離
層として用いるのが、剥離層として安定であり、好適で
ある。シリコーン系の材料を用いる場合は、溶剤型、エ
マルジョン型、UV硬化型など、いずれも用いることが
できるが、溶剤型が簡便でよい。
【0018】剥離層は、グラビア印刷、グラビアオフセ
ット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷などの方法に
より、パターン状に印刷することができる。連続的なプ
ラスチックフィルムまたはシートを基材とする場合は、
グラビア印刷が好適であり、枚葉のガラス基板を用いる
場合は、スクリーン印刷を好適に用いることができる。
また、通常の印刷と同様に、発光層のパターンと剥離層
のパターンとの見当を合わせることが容易に可能であ
る。
【0019】剥離層を設ける工程は、発光層を設ける工
程の前または後で、陰極層を設ける前ならばよい。発光
層が多層構成となる場合は、それらの中間層として設け
ることも可能であるが、発光層の発光特性を低下させる
ため、好ましくない。
【0020】陰極層は、高分子発光材料または発光層の
発光特性に合わせて、リチウム、マグネシウム、カルシ
ウム、イッテルビウム、アルミニウムなどの金属単体や
これらと金、銀などの安定な金属との合金または多層と
することができる。また、インジウム、亜鉛、錫などの
導電性酸化物を用いることもできる。また、フッ化リチ
ウムなどの薄膜を設けても良い。これらの材料は、通常
の抵抗加熱、EB加熱などの真空蒸着やスパッタ法など
で設けることができ、膜厚は特に限定されないが、10
nm以上500nm以下が好ましい。また、陰極の製膜
に際しては、蒸着マスクなどを使用する必要がなく、基
材全面に製膜すればよく、蒸着源の製膜能力に応じて生
産性を上げることができる。
【0021】本発明に用いることのできる粘着材料は特
に、限定されるものではなく、ゴム系、アクリル系、シ
リコーン系などの粘着剤を紙またはフィルム上に塗布し
た粘着フィルムなどを使用することができる。粘着強度
は、基板、透明または半透明導電層、高分子発光層、陰
極層および剥離層との密着強度に合わせて選定すればよ
く、パターン状の剥離層上の陰極を剥離し、剥離層パタ
ーン部以外の陰極層を剥離しないような強度とすればよ
い。
【0022】粘着材料による陰極層の剥離は、透明また
は半透明導電層上に、高分子発光層、剥離層、陰極層を
設けた基材の陰極層とロール状または枚葉状の粘着基材
の粘着面とをゴム製のラミネートロール間に挟むなどし
て密着し、その後、両者を剥離することで行うことがで
きる。高分子発光層は、低分子系材料よりなる発光層よ
りも機械的強度、耐熱性が高いので、ラミネート時の圧
力は5kg/cm2 以下であればよく、好ましくは、2
kg/cm2 である。また、必要に応じ、ラミネートロ
ールを加熱するなどを行っても良い。剥離層は、多くの
場合、高分子EL素子側に残存するが、剥離時に粘着フ
ィルム側に転移しても、本発明を妨げるものではない。
また、剥離層としてワックスなどの凝集力の低い材料を
用いる場合には、素子側および粘着フィルム側の両者に
剥離層が分離する。また、粘着材料との接着、剥離に際
しては、何ら見当合わせの必要はなく、急激な剥離によ
る発光層や剥離層のパターン部以外の陰極層の損傷がな
ければ、加工速度は速くしてもかまわない。
【0023】以下、実施例により本発明を具体的に述べ
るが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0024】
【実施例】(実施例1)以下、図1を用いて説明する。
透明導電材料であるITO付きPETシートからなる透
明基材(1)上のITOを所定のパターンにエッチング
を行い、導電層(2)を形成した後、高分子系の発光層
(3)としてBaytronP(バイエル社製)および
MEH−PPV(化1)をグラビア印刷法により、それ
ぞれ0.01μm、0.1μmの厚みで印刷した。
【0025】
【化1】
【0026】ついで、剥離層(4)として溶剤付加型シ
リコーン系樹脂をグラビア印刷法により、厚み2μmで
パターン状に印刷した。前記基板を乾燥後、陰極層
(5)として真空蒸着により、フッ化リチウム、アルミ
ニウムをそれぞれ0.5nm、200nm蒸着した。つ
いで、前記陰極層に粘着フィルム(6)を接着後、剥離
したところ、剥離層上の陰極層のみが粘着フィルムに転
移し、陰極のパターニングが行えた。この高分子EL素
子に8Vの電圧を印加したところ、50cd/m2のパ
ターン化された発光が得られた。
【0027】(実施例2)実施例1において、発光層と
剥離層との工程順序を入れ替えた他は同様にして、EL
素子を作成したところ、同様の発光を得ることができ
た。
【0028】
【発明の効果】本発明における剥離層を用いた陰極層の
パターニングにより、容易に、かつ、生産性良くよりE
L素子を製造することが可能となり、また、大面積のE
L素子の作成が可能となった。
【0029】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のEL素子の一実施例を示す説明図であ
る。
【符号の説明】 1・・・透明基材 2・・・導電層 3・・・発光層 4・・・剥離層 5・・・陰極層 6・・・粘着フィルム 7・・・粘着剤層

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】透明または半透明導電層を設けた透明基材
    の前記導電層上に少なくとも発光層、陰極層が順次積層
    されてなるEL素子において、 前記透明または半透明導電層を設けた透明基材の前記導
    電層上に、少なくとも発光層及び剥離層がパターン状に
    設けられ、かつ、前記発光層上に陰極層を有することを
    特徴とするEL素子。
  2. 【請求項2】透明または半透明導電層を設けた透明基材
    の前記導電層上に少なくとも発光層、陰極層が順次積層
    されてなるEL素子の製造方法において、 前記透明または半透明導電層を設けた透明基材の前記導
    電層上に、発光層を印刷法により設け、次いで剥離層を
    印刷法によりパターン状に設け、次いで陰極層を真空蒸
    着法またはスパッタ法により設けた後に、前記陰極層を
    粘着材料により、前記剥離層上の陰極層をパターン状に
    剥離して、陰極層をパターニングすることを特徴とする
    EL素子の製造方法。
  3. 【請求項3】透明または半透明導電層を設けた透明基材
    の前記導電層上に少なくとも発光層、陰極層が順次積層
    されてなるEL素子の製造方法において、 前記透明または半透明導電層を設けた透明基材の前記導
    電層上に、剥離層を印刷法によりパターン状に設け、次
    いで発光層を印刷法により設け、次いで陰極層を真空蒸
    着法またはスパッタ法により設けた後に、前記陰極層を
    粘着材料により、前記剥離層上の陰極層をパターン状に
    剥離して、陰極層をパターニングしてなることを特徴と
    するEL素子の製造方法。
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