JP4586402B2 - 有機エレクトロルミネッセンス素子の製造に用いる転写体及び該素子の製造方法 - Google Patents
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これらの有機発光媒体層の材料は、いずれも低分子の化合物であり、また各層は10〜100nm程度の厚みからなり、抵抗加熱方式等の真空蒸着法等によって積層されるのが一般的である。このため、複数の蒸着釜を連結した真空蒸着装置が必要であり、低分子材料を用いる有機薄膜EL素子は、生産性が低く製造コストが高いという問題があった。
これらの高分子材料は、溶液に可溶とすることでスピンコート、グラビア印刷等の湿式法で成膜することができる。高分子材料を用いる有機薄膜EL素子は、前述の低分子材料を用いたものと比較して、大気圧下での成膜が可能であり、設備コストが安いという利点を有している。
当然ながら、このような従来の転写法で有機EL素子を製造する場合は、最上層が有機発光媒体層となる。従って、電子輸送層等を必要とする有機EL素子を作製する際には、有機発光媒体層を転写した後に電子輸送層等を形成し、次いで陰極を形成していた。
請求項1にかかる発明は、陽極と陰極との間に、有機発光媒体層と該有機発光媒体層上に設けられた機能性剥離層とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法に用いられる転写体であって、支持体と、この支持体上に順次設けられた前記機能性剥離層と前記有機発光媒体層とを有しており、前記機能性剥離層は、電子輸送性材料又はホールブロック性材料と、シリコーン系、フッソ系、長鎖アルキル系ポリマー等の前記支持体との密着性の弱い剥離性の材料との混合物または共重合体のように同じ分子内に含まれる材料を用いており、前記支持体から熱や光を用いることなく剥離できる機能を有することを特徴とする転写体である。
また、製造された有機EL素子は、有機発光媒体層上に機能性剥離層を設けることにより、この機能性剥離層が電子輸送機能やホールブロック機能を備えているため、電子が効率良く有機発光媒体層へ伝達され、発光効率や素子耐久性に優れた有機EL素子が得られる。
図1に、本発明の第1の実施形態に係る有機EL素子の断面図を示す。本実施形態の有機EL素子は、被転写体7と、この上に設けられた有機発光媒体層3と、有機発光媒体層3上に設けられた機能性剥離層2と、陰極9とから概略構成されている。そして、この被転写体7は、透光性基板6と、この上に形成された陽極である透明導電層4と正孔輸送層5とから構成されている。
また、この透光性基板6の透明導電層4を成膜しない側が、画像等を視認する側に相当する場合には、透光性であると共に耐キズ性、耐反射性、耐酸化性を有する必要がある点から、セラミック蒸着フィルムやポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物等のガスバリア性フィルムを積層してもよい。
このITOは、透光性基板6上に蒸着又はスパッタリング法により製膜することができる。また、オクチル酸インジウムやアセトンインジウムの酸化物は、これらの前駆体を透光性基板6上に塗布後、熱分解により酸化物を形成する塗布熱分解法等により形成することができる。
この透明導電層4には、必要に応じてエッチングによりパターニングを行ったり、UV処理、プラズマ処理等により表面の活性化を行ってもよい。また、エッチングの代わりにニトロセルロース、ポリアミド、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等を絶縁層として印刷してもよい。
このような透明導電層4が積層された透光性基板6は、本発明のために特別に製造する必要はなく、導電層の抵抗率や光線透過率に合わせて市販の基材を用いることができる。
この正孔輸送層5に用いられる正孔輸送材料としては、例えば、ポリアニリン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との混合物等の高分子材料が挙げられる。正孔輸送層5には必要に応じて、界面活性剤、酸化防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤等を添加してもよい。また、この正孔輸送層5の膜厚は、10〜200nmであるのが好ましい。
この正孔輸送層5は、これらの正孔輸送材料をトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、水等の単独又は混合溶媒に溶解、分散させ、スピンコート、カーテンコート、バーコート、ワイヤーコート、スリットコート等のコーティング法により、透光性基板6上に塗布して形成することができる。また、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等の印刷方法等と組み合わせて、必要に応じてパターニングを行ってもよい。
この発光体層は、高分子発光材料を含むものであるのが好ましい。このような高分子発光材料としては、例えば、クマリン系、ペリレン系、ピラン系、アンスロン系、ポルフィレン系、キナクリドン系、N,N’−ジアルキル置換キナクリドン系、ナフタルイミド系、N,N’−ジアリール置換ピロロピロール系、イリジウム錯体系等の発光性色素をポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルカルバゾール等の高分子中に溶解させたものや、ポリアリーレン系、ポリアリーレンビニレン系、ポリフルオレン系、PPV系、PAF系等の高分子発光体を用いることができる。そのなかでも、熱的安定性、高量子効率、高キャリア移動度を有する点から、PPV系材料が好ましく、ポリ[2−メトキシ−5−(2’−エチルヘキシロキシ)−1,4−フェニレンビニレン](以下、「MEH−PPV」という。)が最も好ましい。
また、有機発光媒体層には必要に応じて、界面活性剤、酸化防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤等を添加してもよい。有機発光媒体層3の膜厚は単層又は多層構造のいずれの場合にも、1000nm以下であり、好ましくは50〜150nmである。
機能性剥離層2に含まれる具体的な材料は、電子輸送性を有するものとしては、ポリピリジン誘導体、ポリキノリン誘導体、ポリキノサリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、カルボジイミド誘導体、フタロシアニン誘導体等の金属錯体、ポリシロール、含ボロンポリマー等が挙げられ、ホールブロック性を有するものとしては、フェナントロリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体等が挙げられ、導電性を有するものとしては、ポリパラフェニレン(PPP)系、PPV系、PVK系、テトラチオフルバレン電荷移動錯体(tetrathiofulvalene TTF電化移動錯体)、銅フタロ系、カーボン系、金属系が挙げられ、特にドーピングによって積極的に導電性を高めた材料が好ましい。これら/又は複数の材料と、シリコーン系、フッソ系、長鎖アルキル系ポリマー等支持体との密着性が弱い剥離性の材料との混合物、もしくは共重合体のように同じ分子内に含まれるような材料を用いることができる。混合する場合には、剥離性に優れ、かつ素子の効率を向上させる点から、PPV系ポリマーとアルキル系ポリマーの混合物等が好ましい。
この機能性剥離層2の膜厚は、5〜200nmであり、20〜100nmが好ましく、30〜80nmがより好ましい。機能性剥離層の膜厚が薄すぎると、電子輸送性およびホールブロック性等の機能を発揮できないからであり、厚すぎると抵抗が高くなり通電しなくなるからである。
この陰極9の膜厚は特に限定されないが、1nm以上500nm以下が好ましい。
この陰極9は、通常の抵抗加熱、EB過熱等の真空蒸着やスパッタ法等で、機能性剥離層2上に設けることができる。また、必要に応じてパターニングを行ってもよく、その際には、金属膜、セラミック膜の蒸着マスクを用いることができる。
本発明の有機EL素子の製造に用いられる転写体10とは、図2(a)に示したように支持体1上に、機能性剥離層2と有機発光媒体層3とを順次設けた構造からなる。支持体1の形状は特に限定するものではなく、シート状でもフィルム状であってもよい。印刷用のブランケットとして用いる場合は、円筒状のロール(胴)に巻きつけて用いることになる。この支持体1の表面は、この上に形成する有機発光媒体層3の膜均一性を得るという観点から、平坦であることが好ましく、十点平均粗さでRz≦0.1μmがより好ましい。
また、この支持体1の表面に、フッ素樹脂処理、シリコーン処理等を施してもよい。
本発明の有機EL素子の製造方法は、支持体上1に機能性剥離層2と有機発光媒体層3とを順次設けた転写体10を形成する工程と、この転写体10から、有機発光媒体層3と機能性剥離層2を被転写体7に転写する工程とから構成される。図2に、第1の実施形態に係る有機EL素子の製造方法を第3の実施形態として示す。図2(a)に示すように、まず転写体10を形成する。本実施形態の転写体10は、上述した第2の実施形態に係る転写体10と同様に塗布等により支持体1上に塗布機能性剥離層2を設け、次いでその上に有機発光媒体層3を設けることで形成することができる。
図3に、有機EL素子の第4の実施形態に係る製造方法を示す。本実施形態では、図3(a)に示すように転写体10の有機発光媒体層3の上に正孔輸送層5を形成し、図3(b)に示すように被転写体7に正孔輸送層5又は正孔注入層30を形成した以外は第3の実施形態と同様であるため、その説明は省略する。本実施形態によれば、四層以上の多層構造の有機EL素子を形成することができる。また、転写体10の有機発光媒体層3の上に、正孔輸送層5として、被転写体7表面と親和性のある材料を含み、正孔輸送機能に加え、転写時の密着性も向上した正孔輸送層5を設けてもよく、逆に被転写体7上の正孔輸送層5あるいは正孔注入層30にそのような密着性向上材料を含ませてもよい。
図4に、有機EL素子の第5の実施形態に係る製造方法を示す。本実施形態では、図4(a)に示すように転写体10の支持体として、ロールに巻きつけたブランケット20を用いた以外は、第3の実施形態と同様であるため、その説明は省略する。この場合は、加圧部材8を用いることなく、図4(c)に示すように機能性剥離層2と有機発光媒体層3を備えたブランケット20で被転写体7上を押圧して転写させることができる。
第3の実施形態に示すように、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを支持体1とし、この上にアルキル系ポリマーとPPP系ポリマーの混合物をグラビア印刷法によりパターン状に印刷し、50nmの機能性剥離層2を形成した。
次いで、MEH−PPVをグラビア印刷法によりパターン状に印刷し、100nmの有機発光媒体層3を製膜し、転写体10を形成した。
次いで、機能性剥離層2上にとしてフッ化リチウム及びアルミニウムを真空蒸着によりそれぞれ0.5nm、200nm蒸着して陰極9を形成し、有機EL素子を得た。
この有機EL素子は、8Vで100cd/m2のパターン化された発光を示した。
厚さ0.5mmのメチルシリコーンゴムを支持体1とし、この上にポリメタクリル酸メチル(PMMA)とオキサジアゾール誘導体の混合物をグラビア印刷法によりパターン状に印刷し、50nmの機能性剥離層2を形成した。
次いで、MEH−PPVをグラビア印刷法によりパターン状に印刷し、100nmの有機発光媒体層3を製膜し、転写体10を形成した。
この有機EL素子は、8.2Vで100cd/m2のパターン化された発光を示した。
転写体10に機能性剥離層2を設けない以外は、実施例1と同様にして、有機EL素子を作製した。
この有機EL素子は、11.5Vで100cd/m2のパターン化された発光を示したが、幾つかの箇所では有機発光媒体層3に抜けがあり、ITO4と陰極9が接触したために電圧を印加するとショートする箇所があった。
2 機能性剥離層
3 有機発光媒体層
7 被転写体
9 陰極
10 転写体
Claims (2)
- 陽極と陰極との間に、有機発光媒体層と該有機発光媒体層上に設けられた機能性剥離層とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法に用いられる転写体であって、支持体と、この支持体上に順次設けられた前記機能性剥離層と前記有機発光媒体層とを有しており、
前記機能性剥離層は、電子輸送性材料又はホールブロック性材料と、シリコーン系、フッソ系、長鎖アルキル系ポリマー等の前記支持体との密着性の弱い剥離性の材料との混合物または共重合体のように同じ分子内に含まれる材料を用いており、前記支持体から熱や光を用いることなく剥離できる機能を有する
ことを特徴とする転写体。 - 陽極と陰極との間に、有機発光媒体層と該有機発光媒体層上に設けられた機能性剥離層とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記機能性剥離層は、電子輸送性材料又はホールブロック性材料と、シリコーン系、フッソ系、長鎖アルキル系ポリマー等の支持体との密着性の弱い剥離性の材料との混合物または共重合体のように同じ分子内に含まれる材料を用いており、前記支持体から熱や光を用いることなく剥離できる機能を有しており、
支持体上に前記機能性剥離層と前記有機発光媒体層とを順次設けた転写体を形成する工程と、
この転写体から前記有機発光媒体層と前記機能性剥離層を被転写体に転写する工程とを有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
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