JP2002042742A - 密閉型電池の製造方法 - Google Patents

密閉型電池の製造方法

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JP2002042742A
JP2002042742A JP2000230327A JP2000230327A JP2002042742A JP 2002042742 A JP2002042742 A JP 2002042742A JP 2000230327 A JP2000230327 A JP 2000230327A JP 2000230327 A JP2000230327 A JP 2000230327A JP 2002042742 A JP2002042742 A JP 2002042742A
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Goro Watanabe
吾朗 渡辺
Akira Nakano
昭 中野
Junji Sugie
順次 杉江
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Toyota Central R&D Labs Inc
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Toyota Motor Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 密閉型電池の電池ケースを構成する外装缶と
蓋板とのレーザ溶接において、溶接終止部における凝固
割れを防止することで、接合強度および密閉性に優れた
電池ケースを備えてなる密閉型電池を簡便に製造する方
法を提供する。 【解決手段】 筒状をなす金属製の外装缶21と外装缶
21の開口端部に接合される金属製の蓋板22を備え内
部に電極体を密閉する電池ケースを有する密閉型電池の
製造方法であって、外装缶21と蓋板22とが接する両
者の境界となる溶接線WLに沿ってレーザスポットを移
動させつつ溶接ビードを形成して外装缶21と蓋板22
を連続全周レーザ溶接する工程において、前記レーザス
ポットが溶接開始点SPに再到達後、前記溶接ビードに
オーバーラップOLさせ、かつ、該レーザスポットによ
って生じる溶融池がWL溶接線にかからない位置まで該
レーザスポットを移動させてレーザ溶接を終了させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、密閉型電池の製造
方法、特に、電極体を密閉するための電池ケースの接合
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】Ni−Cd電池、ニッケル水素電池、リ
チウム二次電池等の密閉型の電池は、正極および負極を
始めとする起電要素で構成された電極体を電池ケースに
密閉して形成される。電池ケースは、一般に、円筒形、
角筒形等の外装缶と、この外装缶の開口端部に接合され
る蓋板とから構成され、それら外装缶と蓋板との接合に
は、密閉性が良好でありまた接合強度が高いというメリ
ットから、好んで溶接が用いられている。電池ケースを
構成する外装缶および蓋板は、比較的薄い肉厚の金属材
料から形成されていることを考えれば、溶接の中でもレ
ーザ溶接が好適とされている。
【0003】外装缶と蓋板とをレーザ溶接にて接合する
場合、外装缶の開口端に蓋板を嵌挿させる等した後、両
者の接する境界部のある箇所にレーザを照射し、その照
射点を境界部に沿って1周させて行う。つまり、両者の
接する境界は、電池ケースの外周を1周する溶接線とな
り、この溶接線のある箇所からその箇所まで連続して1
周する溶接ビードが形成され、溶接が完了する。溶接
は、一般に、突合溶接あるいはそれに近い継手形状の溶
接になり、また、電池ケースの外部側からの片側溶接と
なる。
【0004】一方、密閉型電池の電池ケースは、その機
能から強度および密閉性に留意しなければならず、外装
缶と蓋板とを溶接する際に、溶接欠陥が発生しないよう
充分管理しなければならい。特に、ケース内部と外部が
通ずるような割れ欠陥については致命的な欠陥となるた
め、最重点に管理しなければならない。
【0005】上記レーザ溶接のプロセスにおいて、割れ
欠陥は、溶融池を形成する溶融金属が凝固する際の応力
による凝固割れがその殆どを占める。特に、アルミニウ
ム合金等の熱伝導性の高い材料からなる外装缶と蓋板と
の溶接においては、溶融池の凝固速度が極めて速いた
め、特に、顕著である。上述したように、片側からの突
合せ溶接の場合、接触面(いわゆるルート面)のすべて
を溶融することが難しく、一部接合されずに残存する部
分が残る。この残存するルートは、あたかもクラックと
して作用するため、その部分に凝固時の応力が集中し、
その部分を起点とする凝固割れが発生し易くなる。そし
て、この残存ルートを起点とする凝固割れは、電池ケー
スの内外を導通する亀裂となってしまう。
【0006】パルスレーザ溶接のような工法における場
合であっても、溶融凝固を連続して繰り返す溶接の途中
では、一端発生した凝固割れが再溶融するため、割れ欠
陥として残存することは少ない。ところが、溶接終了
時、つまり溶接ビード終端部のクレータの部分において
は、溶融池の凝固収縮がそのまま影響するため、凝固割
れは発生し易い。現実に、凝固割れは、溶接における最
終部分に集中している。
【0007】これまでに、密閉型電池の製造方法におい
て、溶接ビード終端部つまりレーザ溶接終了時の凝固割
れを防止する技術として、以下のようなもの等が示され
ている。その一つは、特開平8−77983号公報に示
すもので、溶接終止部近傍の接合する部材の肉を落とす
ことで、熱伝導を抑制し、割れの発生を減少させるもの
である。また、この公報には、外装缶と蓋板との境界線
から若干離れた位置に溶接線を設定してレーザ溶接を行
い、冷却時の引張り応力を軽減させる手段も開示されて
いる。さらに、別の一つの技術としては、特開平9−7
560号公報に示すように、全周連続溶接を行ってレー
ザスポットが溶接開始点に戻った後、オーバーラップ溶
接を行う際に、投入するレーザエネルギを漸減させ、再
加熱による熱衝撃の影響を緩和するという技術である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記特開平
8−77983号公報に示す技術における部材の肉落し
は、溶融池の凝固速度を遅くし、熱応力の軽減には効果
があるものの、接合する部材に特別な加工を施さなけれ
ばならないばかりか、特殊な形状の電池ケースにしか適
用できない技術である。また、外装缶と蓋板との境界線
から若干離れた位置をビード中心として溶接する技術で
は、溶接終了時においても残存するルートに達する溶融
池を形成するものであり、その部分を起点とする凝固割
れを抑制することはできず、溶接終止部における電池ケ
ースを貫通する凝固割れを防止する技術とはなり得な
い。さらに、境界線を中心とした溶接でないため、レー
ザスポット中心が位置しない側の部材の溶け込み量が小
さくなり、外装缶と蓋板との接合強度が低下するという
欠点を抱える。
【0009】別の技術である上記特開平9−7560号
公報に示す技術においても、ビード終端部において電池
ケースを貫通する凝固割れを効果的にに防止することは
できない。例えば、アルミニウム合金のパルスレーザ溶
接においては、1パルスの間に溶融した金属は、次の1
パルスの前に凝固し、その時点で既に割れが発生する。
つまり、凝固割れは、極めて短時間に発生する。したが
って、レーザエネルギを漸減させる場合、その溶融池は
小さくなることから、一旦発生した凝固割れのすべてを
再溶融することができず、いくらかの凝固割れが残存さ
せてしまうからである。そして、この残存する割れは、
最終の溶融池の凝固の際、クラックとして作用してしま
うからである。
【0010】本発明は、特に、密閉型電池の電池ケース
を構成する外装缶と蓋板とのレーザ溶接において抱える
上記問題、つまり、溶接終止部における凝固割れを防止
するためになされたものであり、接合強度および密閉性
に優れた電池ケースを備えてなる密閉型電池を簡便に製
造する方法を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の密閉型電池の製
造方法は、筒状をなす金属製の外装缶と該外装缶の開口
端部に接合される金属製の蓋板を備え内部に電極体を密
閉する電池ケースを有する密閉型電池の製造方法であっ
て、前記外装缶と前記蓋板とが接する両者の境界となる
溶接線に沿ってレーザスポットを移動させつつ溶接ビー
ドを形成して該外装缶と該蓋板を連続全周レーザ溶接す
る工程において、前記レーザスポットが溶接開始点に再
到達後、前記溶接ビードにオーバーラップさせ、かつ、
該レーザスポットによって生じる溶融池が前記溶接線に
かからない位置まで該レーザスポットを移動させてレー
ザ溶接を終了させることを特徴とする。
【0012】つまり、本発明の密閉型電池の製造方法
は、電池ケースを構成する外装缶と蓋板とをレーザ溶接
によって接合する工法に関するものであり、溶接終了時
にレーザスポットを両部材の境界から離隔させ、その位
置で溶接を終了させるものである。
【0013】外装缶と蓋板との境界は、電池ケースの外
周に沿ったあるいはその近傍に存在する連続したサーク
ルを形成する。本レーザ溶接においては、電池ケース外
部側から、この境界に沿ってレーザスポットを移動照射
させる。つまり、電池ケース外部における両部材の境界
線が溶接線となる。本レーザ溶接を、順を追って説明す
れば、以下のようになる。まず、任意の開始点からレー
ザ溶接を開始し、適切な条件で溶接線に沿って1周する
連続溶接を行う。溶接開始点に到達した後、適切な量の
オーバーラップ溶接を行い、さらに、レーザスポットを
上記溶接線から離すように移動させて、その位置で溶接
を終了する。
【0014】本レーザ溶接では、溶接線に沿って1周す
る連続溶接の過程においては、両部材の境界をねらって
溶接するため、その部分の接合強度は充分に確保するこ
とができる。また、両部材の境界面の溶融されなかった
部分、つまり残存ルートが存在する場合であっても、連
続してレーザエネルギが投入されているため、適切な溶
融凝固を繰り返して溶接が進行することから、そのルー
トがクラックとして作用する凝固割れは発生しない。
【0015】オーバーラップ溶接後あるいはオーバーラ
ップ溶接を行いつつレーザスポットを溶接線から離隔さ
せるプロセスの最終時、つまり、溶接終端では、つづく
レーザエネルギの投入がないため、溶融池の凝固速度は
極めて速い。しかし、本レーザ溶接では、溶接終端にお
いて、溶接線とレーザスポットとの距離が離れているた
め、上述する残存ルートに到達するような溶融池は形成
されず、その残存ルート面が起点となる凝固割れは発生
しない。したがって、これまで問題となっていた、溶接
ビードの終端部、つまりクレータの位置に生じる凝固割
れが、効果的に防止されることになる。また、仮に、ク
レータ部に割れが発生するような場合であっても、その
割れがルートに達することがなく、電池ケースの外部と
内部とが導通するような割れ欠陥は発生せず、極めて密
閉性の良好な電池ケースが実現できることになる。
【0016】本レーザ溶接においては、レーザ溶接終了
時におけるレーザスポットの中心点と溶接線との距離
は、そのレーザスポット径をDとする場合におけるD/
2以上であることが望ましい。このパラメータは、実際
の溶接作業において管理可能な一つの目安であり、この
程度の離隔量を担保すれば、溶接終端における溶融池が
残存するルート面に達することがなく、上記凝固割れの
ない健全な溶接が可能となる。
【0017】また、前述したように、接合させる両部材
がアルミニウム等の金属からなる場合、その材料の熱伝
導が極めて良好であるため、溶融池の凝固速度が速く、
凝固割れの発生の可能性が増大する。したがって、本レ
ーザ溶接によれば、電池ケースを構成する外装缶および
蓋板がアルミニウムまたはアルミニウム合金製である場
合であっても、極めて効果的に溶接終端における凝固割
れを防止することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明の密閉型電池の製造
方法の実施形態について、適用可能な電池の構成、レー
ザ溶接の条件、溶接のプロセスの項目に分けて、詳しく
説明する。
【0019】〈適用可能な密閉型電池の構成〉図1に、
本発明の密閉型電池の製造方法が適用できる電池の一例
として、円筒型のリチウム二次電池の断面を示す。本リ
チウム二次電池1は、電極体10と、電極体10を非水
電解液とともに密封する電池ケース20と、電池容器2
0に付設され電極体10に導通する正極端子30および
負極端子40とから構成されている。
【0020】電極体10は、シート状の正極11とシー
ト状の負極12とをセパレータ13を挟装し捲回芯14
を中心に捲回したロール状のものとなっている。ちなみ
に、正極11は、アルミニウム箔集電体の両面に活物質
としてリチウム遷移金属複合酸化物を含む正極合材層を
形成してなり、負極12は、銅箔集電体の両面に活物質
として炭素物質を含む負極合材層を形成してなり、そし
て、セパレータ13は、多孔質ポリエチレン製シートか
らなる。捲回芯14は、正極端子側に位置するアルミニ
ウム合金製のアルミ捲回芯部14aと、アルミ捲回芯部
14aに同軸的に螺合連結され負極端子側に位置する樹
脂製の樹脂捲回芯部14bとからなる。電池容器20
は、アルミニウム合金製の円筒状の外装缶21と、外装
缶21の両開口端にそれぞれ接合されるアルミニウム合
金製の円盤状の正極側蓋板22および負極側蓋板23と
からなる。正極側蓋板22および負極側蓋板23にはそ
れぞれ電池ケース20の内部圧力が所定圧を超える場合
に開弁する安全弁24が付設されており(正極側は図示
していない)、また、負極側蓋板23には、さらに電解
液注入口25が設けられ、電解液注入口25を封口する
注入孔栓26が螺合して取付けられている。
【0021】正極端子30は、アルミニウム合金製で、
集電部30aと、ボルト状の外部端子部30bとからな
り、集電部30aは、捲回芯14のアルミ捲回芯部14
aに螺合連結され、また、外部端子部30bは、先端を
電池外部に突出する状態で電池ケース20の正極側蓋板
22に設けられた正極端子取付穴22aに、ガスケット
31を介し、ワッシャ32、ナット33によって付設さ
れており、電池容器20とは絶縁されている。集電部3
0aには正極11より延出する帯状の正極リード11a
がその周囲に接合され、正極端子30と電極体10の正
極11との電気的導通が確保されている。
【0022】負極端子40は、銅合金製で、集電部40
aと、ボルト状の外部端子部40bとからなり、集電部
40aは、捲回芯14の樹脂捲回芯部14bに螺合連結
され、また、外部端子部40bは、先端を電池外部に突
出する状態で電池ケース20の負極側蓋板23に設けら
れた負極端子取付穴23aに、ガスケット41を介し、
ワッシャ42、ナット43によって付設されており、電
池容器20とは絶縁されている。集電部40aには負極
12より延出する帯状の負極リード12aがその周囲に
接合され、負極端子40と電極体10の負極12との電
気的導通が確保されている。
【0023】本リチウム二次電池1において、レーザ溶
接がされる箇所は、図1に示すAの箇所で、外装缶21
と正極側蓋板22との境界部および外装缶21と負極側
蓋板23との境界部である。正極側蓋板22および負極
側蓋板23のいずれも、その外径が外装缶21の内径に
略等しく、外装缶21のそれぞれの開口端に嵌挿されて
いる。また、外装缶21の一方の端面と正極側蓋板22
の電池外部に位置する面とが同一の平面となるように、
外装缶10の一方の開口端に正極側蓋板22は嵌挿され
ており、同様に、外装缶21の他方の端面と負極側蓋板
23の電池外部に位置する面とが同一の平面となるよう
に、外装缶10の他方の開口端に負極側蓋板23は嵌挿
されている。したがって、本形態の電池では、電池ケー
ス20の外部側から上述のAの箇所を溶接する場合、い
わゆる突合溶接という接合態様の溶接となる。
【0024】上記図1に示す密閉型電池はリチウム二次
電池であるが、本発明の製造方法が適用できる電池は、
このリチウム二次電池に限定されるものではない。例え
ば、Ni−Cd電池、ニッケル水素電池等の二次電池、
各種一次電池等、電極体を密閉し金属製の外装缶とそれ
に接合する金属製蓋板とを有する電池であれば、本製造
方法、つまり本レーザ溶接が適用可能である。また、活
性炭等を正極および負極に用い非水電解液とともに電池
ケースに密閉してなる電気二重層キャパシタについても
適用できることから、本明細書において「電池」とは、
広義に解釈し、この電気二重層キャパシタを含むものと
する。
【0025】また、上記図1に示す電池の電池ケースを
構成する外装缶および蓋板はアルミニウム合金製である
が、本製造方法は、アルミニウム合金製のものに限定さ
れるわけではない。例えば、純アルミ、ステンレス鋼、
Niメッキ鋼等、レーザ溶接可能な金属製のものであれ
ば、いずれにも適用可能である。
【0026】さらに、上記図1に示す電池は、円筒形状
を成すものであるが、電池の形状、つまり電池ケースの
形状は円筒形状に限定するものではない。電池ケース断
面、すなわち外装缶の断面が、楕円形、偏平楕円(トラ
ック形)、四角形等の多角形等、種々の形状を持つ電池
ケースの電池に適用できる。
【0027】さらにまた、上記図1に示す電池における
外装缶と蓋板との接合態様は、図2(a)に示すよう
に、電池ケース端部側からの突合溶接が可能なように、
蓋板22(以下、正極側、負極側を重視しない場合に
は、単に蓋板22と表す)が外装缶21に嵌挿される接
合態様である。本レーザ溶接では、このような接合態様
に限定されず、図2(b)に示すように、蓋板22の外
周部にリップを設けて外装缶21に嵌挿する態様も可能
である。また、図2(c)に示すように、電池ケースの
側面で溶接可能なように、蓋板22の外周を外装缶21
の端部と同じ大きさの形状とし、外装缶21の端面を覆
うように被せる態様も可能である。さらに、図2(d)
に示すように、蓋板22を有底の筒状とし、その開口端
と外装缶21の開口端とを接合させる態様も可能であ
る。さらにまた、突合溶接に限らず、図2(e)および
図2(f)に示すように、隅肉溶接が可能なように、外
装缶21と蓋板22とを位置させる態様も可能である。
【0028】〈レーザ溶接の条件〉本発明の製造方法に
おいて、電池ケースの外装缶と蓋板との接合は、レーザ
溶接にて行う。レーザの種類として、炭酸ガスレーザ、
YAGレーザ、エキシマレーザ等があり、これら種々の
レーザを接合する部材の材質、板厚等に応じ適切なもの
を選択すればよい。また、その出力も同様にそれらに応
じた適切なものとすればよい。
【0029】一般の密閉型の電池については、電池ケー
スはアルミニウム系あるいはステンレス系の材料からな
る部材から形成され、それぞれの部材の板厚は0.3〜
3mm程度であると考えられる。このような電池ケース
の外装缶と蓋板との溶接では、レーザスポット径、出力
を適正な範囲に制御することが容易なことから、YAG
レーザにて溶接を行うことが望ましい。また、YAGレ
ーザは、炭酸ガスレーザと違って、比較的小さなレーザ
ガンとすることができ、溶接ロボットに把持させること
が容易であるため、溶接プロセスにおける自由度が高ま
るというメリットもある。
【0030】レーザ溶接は、連続するレーザビームで行
ってもよく、また、パルスビームで行ってもよい。外装
缶および蓋板がアルミニウムまたはアルミニウム合金製
である場合、その熱伝導率が高いため、大きな出力のビ
ームを溶接箇所に照射しなければならない。その場合
は、パルスビームで溶接を行うのが望ましい。パルスビ
ームで溶接を行う場合、パルス幅、パルスサイクル等の
条件は、材料の種類、溶け込み深さ等を考慮して、適切
なものとすればよい。
【0031】その他の溶接条件、例えば、レーザスポッ
ト径、溶接速度、シールドガスの種類等についても、接
合する両部材の材質、溶接ビード幅、ビード深さ等の溶
接設計に応じて適切なものとすればよい。
【0032】〈溶接のプロセス〉上述した図1のリチウ
ム二次電池を例にして、溶接のプロセスについて説明す
る。図3に、溶接の進行について、電池ケースの蓋板側
から見た図を示し、図4に、溶接部の断面を示す。な
お、図3、図4については、模式図であり、縮尺は正確
ではなく、また、電極体、外部端子、安全弁等の部品を
省略してある。
【0033】図3(a)は、溶接開始直後の状態を示
し、図3(b)は全周溶接完了直前の状態を示してい
る。溶接線WLは、外装缶21と蓋板22との境界線で
あり、溶接は、この溶接線WLをレーザスポットの中心
が順次移動して進行する。レーザスポットが移動した後
方には、溶接線WL上に溶接ビードが形成される。な
お、溶接開始点SPは、溶接線WL上の任意の位置とす
ることができる。
【0034】図4(a)は、溶接線WLにレーザスポッ
ト中心が位置するようにレーザビームLBが照射された
状態の溶接部断面である。溶接継手の形状は突合せ継手
となっており、外装缶21の内側面と蓋板22の外周面
は、いわゆるルート面となる。レーザビームBが照射さ
れている部分、つまりレーザスポットの存在する部分に
は外装缶21および蓋板22を形成する金属が溶融する
溶融池Mが存在する。溶接の進行に伴い、溶融池Mは凝
固し、その凝固金属が連続した溶接ビードを形成する。
溶融池Mは、ルート面のすべてを溶融するのではなく、
溶融金属の電池ケース内への融け落ち等を考慮して、レ
ーザビームBが照射されている表面側の一部のみを溶融
するものとなっている。したがって、ルートRは、溶接
進行後にその一部が残存する。この残存するルートR
は、溶融池Mが凝固する際、あたかもクラックとして作
用し、この部分に凝固収縮による引張応力が集中して、
凝固割れが発生する原因となる。
【0035】連続ビームによる溶接では、溶接進行途中
は、連続的に一定のエネルギが投入されているため、溶
融池は緩やかに移動し、溶融池後方部分の凝固速度は極
めて遅く、凝固割れは発生し難い。また、パルスレーザ
による溶接の場合であっても、極めて短い一定の間隔で
エネルギが投入されており、凝固して発生した割れであ
っても、次のエネルギ投入により再溶融することで割れ
は消失する。したがって、連続ビームによる溶接の場合
と同様、溶接進行途中における凝固割れの発生は極めて
希である。ところが、この状態で溶接を終了した場合、
後のエネルギ投入がないため、その部分の溶融池の凝固
速度は極めて速く、凝固時に上述した残存ルートがクラ
ックとして作用する凝固割れが発生し、それが残存する
こととなる。この凝固割れは、溶接ビートを貫通する割
れであることから、電池ケースの内部から外部に向かっ
て貫通する割れとなり、重大な溶接欠陥となる。
【0036】全周溶接が完了し、図3(c)に示すよう
な適切長さのオーバーラップ溶接OLを終えた後、本レ
ーザ溶接では、図3(d)に示すように、レーザスポッ
ト中心が溶接線WLを離れて移動し、その位置で溶接を
終了させている。溶接終了時およびその直前のレーザス
ポットの移動の様子を、図5に拡大して示す。図5から
判るように、本レーザ溶接では、溶接終了時のレーザス
ポットの中心SCの溶接線WLからの変位はレーザスポ
ットLSの半径より大きくなっている。
【0037】溶接終了時点での溶接部断面を示す図4
(b)を参照して判るように、その時点での溶融池M
は、先の溶接による残存ルートRとは相当の距離を置い
て存在する。レーザースポットの径と溶融池の幅とは略
等しいとすることができるため、この状態では溶融池が
溶接線WLにかからない位置に存在する。したがって、
この状態で溶接を終了させ溶融池Mが速い凝固速度で凝
固する場合であっても、凝固収縮による引張応力の集中
部分が存在しないため、溶接終端部において凝固割れが
発生する可能性は極めて低いものとなる。
【0038】なお、本溶接プロセスでは、溶接終端部を
溶接線の外側、つまり外装缶側に位置させている。この
態様と異なり、溶接線の内側つまり蓋板側に溶接終端部
を変位させて溶接を終了させる態様を採用することがで
きる。上記態様の場合、外装缶の外周部近傍で溶接を終
了させていることで、溶接終了時の熱伝導をある程度制
限することが可能であり、最終溶融池の凝固速度が遅く
なることで凝固割れの発生をより抑制するものとなる。
このように、溶接終了箇所を熱伝導が制限される箇所に
することにより、凝固割れの抑制、防止をより一層効果
的に達成できる溶接プロセスとなる。
【0039】〈その他〉以上、本発明の密閉型電池の製
造方法のうち、その特徴部をなす電池ケースの外装缶と
蓋板とのレーザ溶接についての実施形態を説明した。上
記実施形態は一例として掲げたものであり、本レーザ溶
接は、決してその形態に限定されるものではなく、上記
実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の
変更、改良を施した種々の形態で実施することができ
る。また、電極体の形成、電池ケースを構成する外装缶
および蓋体の成形、電極体の電池ケースへの挿設等、本
レーザ溶接の工程を除く製造工程については、適用され
る電池の種類に応じた既に公知の種々の方法を採用する
ことができる。
【0040】
【実施例】上記実施形態に基づき実際に外装缶と蓋板と
の溶接を行い、本レーザ溶接の凝固割れに対する優秀性
を確認した。以下に、その実験について説明する。
【0041】〈実施例の溶接プロセス〉本溶接プロセス
が適用される電池は、上述した図1に示すリチウム二次
電池である。外装缶および蓋板はアルミニウム合金(A
3003)製であり、外装缶の形状は、外径35mm
φ、板厚1mmとし、蓋板の形状は、外径33mmφ、
板厚2mmとした。
【0042】レーザ溶接は、YAGレーザによるパルス
溶接を採用した。パルスレーザの平均出力は350W
で、パルス幅を2ms、パルスサイクルを50Hzに設
定した。溶接はジャストフォーカスで行い、フォーカス
スポットの直径を0.9mmφとした。溶接速度は0.
6m/minとし、シールドガスにはArガスを採用
し、これを50L/minの流量でフローさせた。なお
レーザーガンは固定であり、ワークとなる電池ケースを
NC制御のX−Yテーブルにセットし、電池ケース側を
移動させることにより、相対的に、レーザスポットを移
動させる方式を採用した。
【0043】上述した図3に示すように、溶接開始点S
Pから溶接を開始し、溶接線WLに沿ってレーザスポッ
トを1周させて再び溶接開始点SPに戻った後、所定量
のオーバーラップ溶接を行い、その後、レーザスポット
を外装缶側に変位させて溶接を完了した。溶接終了時に
おけるレーザスポット中心SCの溶接線WLからの変位
量は、0.5mmとした。なお、この値は、レーザスポ
ット径である0.9mmの1/2を超える値となってい
る。
【0044】〈比較例の溶接プロセス〉本溶接プロセス
では、上記実施例の溶接プロセスと比較すべく、溶接線
からレーザスポットを変位させずに溶接を完了させた。
つまり、溶接線WLに沿ってレーザスポットを1周させ
て再び溶接開始点SPに戻った後、所定量のオーバーラ
ップ溶接を行った後に直ちに溶接を完了させるものであ
る。なお、溶接終了時の溶接線からのレーザスポットの
変位移動を除き、電池自体の構成、レーザ溶接の条件等
については、実施例のプロセスと同様のものとした。
【0045】〈評価〉実施例のプロセスおよび比較例の
プロセスは、それぞれ80回ずつ行った。溶接欠陥を、
溶接終端部(最終クレータの位置)に発生した割れ(以
下、クレータ割れという)、および、溶接終端部以外の
位置(最終クレータを除く溶接ビードの部分)に発生し
た割れ(以下、ビード割れという)という2つの欠陥に
分類し、それぞれの欠陥の有無を確認し、欠陥のあるも
のを溶接不良と認定した。両プロセスごとに、それぞれ
の欠陥の有無を集計し、それぞれの不良率を求めた。下
記表1に、その集計結果を示す。
【0046】
【表1】
【0047】上記表1から明らかなように、両プロセス
においてビード割れは存在しなかった。これにより、溶
接線に沿ってレーザスポットが移動する連続溶接進行途
中、つまり、終端部を除く中間のビードにおいては、凝
固割れが発生することは極めて希であることが確認でき
た。
【0048】これに対し、クレータ割れに関する不良率
は、実施例のプロセスが0%であるのに対して、比較例
のプロセスでは46.3%という高い値を示している。
これにより、溶接線上で溶接を完了させた場合、高確率
で割れが発生することが判る。実施例のプロセスでは、
溶接終了時のレーザスポット中心の溶接線からの変位量
がレーザスポット径を超えているため、前述のとおり、
最終の溶融池が残存するルートに達するものとなってい
ない。すなわち、最終溶融池の凝固時における応力集中
箇所が存在しないことに起因して、実施例のプロセスで
は、最終クレータにおける凝固割れが発生しなかったの
である。したがって、溶接終端部における溶融池が溶接
線から離隔する本レーザ溶接は、溶接終端部における凝
固割れを効果的に防止できる技術であることが確認でき
る。
【0049】
【発明の効果】本発明は、密閉型電池の製造方法、特
に、電池ケースを構成する外装缶と蓋板とをレーザ溶接
によって接合する工法に関するものであり、その溶接工
法を、レーザスポットが両部材の境界から離隔した位置
で溶接を終了させるように構成するものである。このよ
うな構成を有するレーザ溶接工法を含むことで、本発明
の密閉型電池の製造方法は、先に詳しく述べた作用に基
づき、溶接ビードの終端部に生じる凝固割れが効果的に
防止され、極めて密閉性に優れた電池が製造できる方法
となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の密閉型電池の製造方法が適用できる
電池の一例である円筒型のリチウム二次電池の断面を示
す。
【図2】 本発明の密閉型電池の製造方法の溶接プロセ
スが適用できる外装缶と蓋板との種々の接合態様を示
す。
【図3】 本発明の密閉型電池の製造方法の溶接プロセ
スにおいて、電池ケースの蓋板側から見た溶接の進行状
態を模式的に示す。
【図4】 本発明の密閉型電池の製造方法の溶接プロセ
スにおいて、溶接部の断面を模式的に示す。
【図5】 本発明の密閉型電池の製造方法の溶接プロセ
スにおいて、溶接終了時およびその直前のレーザスポッ
トの移動の様子を示す。
【符号の説明】
1:円筒型リチウム二次電池(密閉型電池) 10:電極体 20:電池ケース 21:外装缶 22:正極側蓋板(蓋板) 23:負極側蓋板 30:正極端子 40:負極端子 A:レーザ溶接箇所 B:レーザビーム WL:溶接線 SP:溶接開始点 OL:オーバーラップ溶接 M:溶融池 R:ルート LS:レーザスポット SC:レーザスポット中心
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中野 昭 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 杉江 順次 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 Fターム(参考) 5H011 AA01 CC06 DD13 DD26 KK01

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 筒状をなす金属製の外装缶と該外装缶の
    開口端部に接合される金属製の蓋板を備え内部に電極体
    を密閉する電池ケースを有する密閉型電池の製造方法で
    あって、 前記外装缶と前記蓋板とが接する両者の境界となる溶接
    線に沿ってレーザスポットを移動させつつ溶接ビードを
    形成して該外装缶と該蓋板を連続全周レーザ溶接する工
    程において、 前記レーザスポットが溶接開始点に再到達後、前記溶接
    ビードにオーバーラップさせ、かつ、該レーザスポット
    によって生じる溶融池が前記溶接線にかからない位置ま
    で該レーザスポットを移動させてレーザ溶接を終了させ
    ることを特徴とする密閉型電池の製造方法。
  2. 【請求項2】 レーザ溶接終了時における前記レーザス
    ポットの中心点と前記溶接線との距離が、該レーザスポ
    ット径をDする場合におけるD/2以上である請求項1
    に記載の密閉型電池の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記電池ケースの前記外装缶および前記
    蓋板がアルミニウムまたはアルミニウム合金製である請
    求項1または請求項2に記載の密閉型電池の製造方法。
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