JP2002038231A - 耐食性が優れたアルミニウム合金製部材及びそれを使用したろう付け方法 - Google Patents

耐食性が優れたアルミニウム合金製部材及びそれを使用したろう付け方法

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JP2002038231A JP2000221547A JP2000221547A JP2002038231A JP 2002038231 A JP2002038231 A JP 2002038231A JP 2000221547 A JP2000221547 A JP 2000221547A JP 2000221547 A JP2000221547 A JP 2000221547A JP 2002038231 A JP2002038231 A JP 2002038231A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 腐食性媒体が作用するろう付接合面上におい
て、ろう材の残存による耐食性の低下を抑制し耐食性が
優れると共に、薄肉化できる耐食性が優れたアルミニウ
ム合金製部材及びそれを使用したろう付け方法を提供す
る。 【解決手段】 アルミニウム合金製部材は、アルミニウ
ム又はアルミニウム合金からなる心材と、この心材の片
面に形成されたアルミニウム又はアルミニウム合金材か
らなる犠牲材とを有し、犠牲材の腐食性媒体が作用する
接合面上に、ろう付後に共晶又は初晶Si層がろう付接
合面の端部より2.0mmを超える領域で存在せず、腐
食性媒体が作用する面は心材に対して30mV以上卑で
ある。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エバポレー夕、ラ
ジエー夕、ヒータコア、オイルクーラ及びコンデンサ等
の装置のうち、主として、自動車用熱交換器部材に使用
される耐食性が優れたアルミニウム合金製部材及びそれ
を使用したろう付け方法に関し、特にフィンとチューブ
部とのろう付接合面及びタンクとタンク部等とのろう付
接合面等に、腐食性媒体が作用し、アルミニウム又はア
ルミニウム合金を腐食させる環境下にろう付面が曝され
る場合に、腐食環境側に犠牲層を使用し、ろうの残存
(Siの侵入)による耐食性の低下を抑制でき部材を薄
肉化した耐食性が優れたアルミニウム合金製部材及びそ
れを使用したろう付け方法に関する。なお、腐食性媒体
とは、例えば、水分等の熱交換器部材の腐食環境にある
もののことである。
【0002】
【従来の技術】従来、一般的に、熱交換器等は、心材の
両面にろう材が形成された3層構造のアルミニウム合金
製部材を使用し、これをろう付することにより製造され
ている。また、これ以外にも、熱交換器には、心材の両
面にろう材が形成され、心材とろう材との間に犠牲層又
は中間層等と呼ばれる犠牲防食層が設けられた4層材が
使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、3層構
造のアルミニウム合金製部材では、ろう材が接合面以外
の不要な部位にも残存するため、この箇所において、ろ
う付中にSiが心材中に侵入し、耐食性の低下を招くと
いう問題点がある。
【0004】また、犠牲防食層が設けられた4層材の場
合には、ろう材のSiが犠牲層領域に侵入するため、犠
牲層の厚さはSiの侵入深さに一定厚みを加えた厚さが
必要である。このため、薄肉化することができないとい
う問題点がある。また、3層構造材に比べコストが嵩む
という問題点もある。
【0005】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
のであって、腐食性媒体が作用するろう付接合面上にお
いて、ろう材の残存による耐食性の低下を抑制し耐食性
が優れると共に、薄肉化できる耐食性が優れたアルミニ
ウム合金製部材及びそれを使用したろう付け方法を提供
することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明に係るアルミニウ
ム合金製部材は、アルミニウム又はアルミニウム合金か
らなる心材と、前記心材の片面に形成されたアルミニウ
ム又はアルミニウム合金材からなる犠牲材とを有し、前
記犠牲材の腐食性媒体が作用する接合面上に、ろう付後
に共晶又は初晶Si層がろう付接合面の端部より2.0
mmを超える領域で存在せず、前記腐食性媒体が作用す
る面は前記心材に対して30mV以上卑であることを特
徴とする。
【0007】この場合、前記犠牲材はZn:5.0質量
%以下及びMg:3.0質量%以下からなる群から選択
された少なくとも1種を含有するアルミニウム合金から
なり、前記心材はMn:0.5乃至1.5質量%及びC
u:1.0質量%以下を含有するアルミニウム合金から
なるものとすることができる。
【0008】また、前記犠牲材は1000系アルミニウ
ム合金からなり、前記心材はMn:0.5乃至1.5質
量%及びCu:1.0質量%以下を含有するアルミニウ
ム合金からなるものとすることができる。
【0009】本発明に係る耐食性が優れたアルミニウム
合金製部材のろう付方法は、請求項1乃至3のいずれか
1項に記載のアルミニウム合金製部材の接合面にSiを
含有する粉末ろう材を供給してろう付(以下、粉末ろう
付という)することを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明について添付の図面
を参照して詳細に説明する。図4(a)は本実施例に係
るアルミニウム合金製部材を示す断面図である。本実施
例のアルミニウム合金製部材は、アルミニウム又はアル
ミニウム合金材からなる心材1と、この心材1の上面に
形成されたアルミニウム又はアルミニウム合金材からな
る犠牲材2と、心材1の下面に形成されたろう材3とを
有しており、犠牲材2は心材1に対して30mV以上卑
である。また、このアルミニウム合金製部材は、ろう付
後の犠牲材2の接合面上に、共晶又は初晶Si層がろう
付接合面の端部より2.0mmを超える領域で存在しな
い。
【0011】本実施例のアルミニウム合金製部材におい
て、犠牲材2は、例えばZn:5.0質量%以下及びM
g:3.0質量%以下からなる群から選択された少なく
とも1種を含有するアルミニウム合金からなり、心材1
は、例えばMn:0.5乃至1.5質量%及びCu:
1.0質量%以下を含有するアルミニウム合金からな
る。また、犠牲材2は1000系アルミニウム合金から
なるものとすることができ、心材1はMn:0.5乃至
1.5質量%及びCu:1.0質量%以下を含有するア
ルミニウム合金からなるものとすることができる。
【0012】このようなアルミニウム合金製部材は、そ
の接合面にSiを含有する粉末ろう材を供給することに
よりろう付けすることができる。
【0013】本願発明者等が鋭意実験研究の結果、腐食
性媒体が作用するろう付接合面を心材より30mV以上
卑である犠牲材とし、ろう付後において、ろう付接合面
(フィレット)端部から2.0mmを越える領域に共晶
及び初晶のSi層が残存しないように、例えば、フィン
及びチューブ部並びにタンク及びタンク部等のろう付接
合面にのみ、Al−Si系等の粉末ろう材を必要最低量
供給することにより、ろう付後のろう材の残存による耐
食性の低下を抑制できることを見出した。これにより、
従来、構造的に両面にろう材層が形成された4層構造の
材料を必要としたが、犠牲材が形成された3層構造の材
料を利用することができる。
【0014】本発明に係るアルミニウム合金製部材にお
いては、アルミニウム合金を腐食させる環境下にろう付
面が曝される場合に、上述の粉末ろう付技術を適用する
ことにより、腐食環境側に犠牲材を使用できる。ろう付
接合面以外ではSiの侵入がないので、ろう材の残存に
よる腐食の危険性が小さく、部材の耐食性が向上する。
このため、犠牲層の厚さも薄くできるので薄肉化でき
る。また、犠牲層等を有する3層構造を適用することも
できるので、部材を薄肉化することができる。
【0015】また、本発明に係るアルミニウム合金製部
材は、エバポレー夕、ラジエー夕、ヒータコア、オイル
クーラ及びコンデンサ等に適用することができる。この
うち、主として、自動車用熱交換器部材の製造に使用さ
れる。
【0016】以下、本発明のアルミニウム合金製材の数
値限定理由について説明する。
【0017】ろう付後に共晶又は初晶Si層:ろう付接
合面の端部より2.0mmを超える領域で存在せず 図1はSiの犠牲材への侵入形態を示す断面図、図2は
Siの侵入距離が2.0mm以下である場合の防食形態
を示す断面図、図3はSiの侵入距離が2.0mmを超
える場合の防食形態を示す断面図である。
【0018】心材1の表面に犠牲材2が形成された第1
部材と、心材1の表面に犠牲材2aが形成された第2部
材とを犠牲材2、2aの表面に、例えばAl−Si系合
金からなるろう材を塗布してろう付けした場合、フィレ
ット部4が形成される。なお、フィレット部4とは、ろ
う付前の元の犠牲材2の表面から犠牲材2とフィレット
との界面に向けて延長され、この界面をとおる面と、円
弧状のフィレットと、犠牲材2aとフィレットとの界面
とで囲まれる範囲と規定する。このとき、ろう材のSi
が犠牲材2に侵入距離Xだけ侵入し、これにより、共晶
又は初晶のSi層が形成される。このため、侵入Si及
び共晶Siと近傍のα−Al相との間で腐食回路が形成
される。これにより、Si侵入部分では早期に犠牲材2
が消耗する。
【0019】なお、Siの侵入距離(Si残存距離)X
とは、フィレット部4の最端部(フィレット部4の円弧
面が犠牲材2に接するようになる部位)から、犠牲材2
におけるフィレット部4が形成されていない側において
共晶又は初晶Si層の残存が確認される部位までの最大
距離と定義する。また、腐食深さはろう付後の犠牲材2
の表面からの板厚方向の腐食距離とする。
【0020】しかしながら、図2に示すように、Siの
侵入距離Xが2.0mm以内では、残存する犠牲材2に
よりフィレット部4の端部Bまで防食効果が作用し、耐
食性を確保することができる。
【0021】一方、図3に示すように、Siの侵入距離
Xが2.0mmを超えると、防食効果が低下して腐食深
さが深くなり、図2に示すフィレット部4の端部Bの近
傍で心材1に達する腐食となる。従って、ろう付後に共
晶又は初晶Si層はろう付接合面の端部より2.0mm
を超える領域に存在しない。
【0022】腐食性媒体の作用する面:心材に対して3
0mV以上卑 腐食性媒体の作用する面において、犠牲材と心材との電
位差が30mV未満では、犠牲材としての防食効果が十
分得られない。従って、腐食性媒体の作用する面は心材
に対して30mV以上卑とする。
【0023】犠牲材:Zn:5.0質量%以下及びM
g:3.0質量%以下からなる群から選択された少なく
とも1種を含有するアルミニウム合金 Zn及びMgは電位を卑とする効果を有する元素であ
り、本発明においては、心材との電位バランスを制御す
るため、犠牲材に適宜添加することができる。
【0024】犠牲材中のZnの含有量が5.0質量%を
越えると、犠牲材の強度及び硬度等が極めて高くなり、
犠牲材と心材との間で圧延性及び成形性等に著しい差異
を生じる。このため、圧延及び成形等が困難になると共
に、心材と犠牲材との電位差が大きくなりすぎて接合部
が早期に腐食してしまい耐食性が低下する。従って、犠
牲材のZnの含有量は5.0質量%以下とすることが好
ましい。
【0025】一方、犠牲材中のMgの含有量が3.0質
量%を越えると、クラッド圧着性が低下する。従って、
犠牲材中のMgの含有量は3.0質量%以下とすること
が好ましい。
【0026】なお、犠牲材としては、上記組成のアルミ
ニウム合金に限らず、例えば、JIS 1000系アル
ミニウム合金も使用できる。JIS 1000系アルミ
ニウム合金は純度が高く、Mn又はCu等の電位を貴と
する元素が少ないため、犠牲材として好適である。
【0027】心材:Mn:0.5乃至1.5質量% Mnは心材の強度を向上させると共に、電位を貴とし、
耐食性を向上させることができる。心材中のMnの含有
量が0.5質量%未満であると、強度を向上させる効果
が低下すると共に、電位を貴とする効果が低減し、犠牲
材との電位差が小さくなるので、犠牲材の防食効果が小
さくなり、耐食性が低下する。一方、心材中のMnの含
有量が1.5質量%を越えると、粗大な化合物を形成
し、素材の加工性を低下させると共に、電位を貴とする
効果はそれ以上向上しない。従って、心材のMnの含有
量は0.5乃至1.5質量%であることが望ましい。
【0028】心材:Cu:1.0質量%以下を含有する
アルミニウム合金 Cuは心材の強度を向上させると共に、電位を貴とし、
耐食性を向上させることができる。心材中のCuの含有
量が1.0質量%を越えると、粗大な化合物を形成し、
素材の加工性を低下させる。従って、心材のCuの含有
量は1.0質量%以下とすることが好ましい。なお、C
uの添加量は犠牲材中のZn又はMgの量によって0乃
至1.0質量%の範囲で適宜添加することが好ましい。
【0029】なお、心材中には強度を向上させる元素と
して、更にSi及びMg(真空ろう付の場合)等を添加
することができる。また、腐食起点の分散又は層状化等
の機構により耐食性を向上させる元素としてTi及びZ
r等があり、これらの元素を添加しても構わない。
【0030】なお、本発明における粉末ろう材とは、A
i−Si系合金材又はSi粉末単体で構成されるろう付
成分である。
【0031】なお、ろうの流れを良くしてろう付性を向
上させるものとしてBi、Be、Sr、Sb、Mg、N
i及びBa等があり、ろう付部位の耐食性を向上させる
ものとしてIn等があり、ろう材の融点を降下させろう
付温度の低温化を得るものとしてZn、Cu及びGe等
がある。本発明においては、これらの元素を適宜添加す
ることができる。
【0032】また、フラックスには市販の非腐食性フッ
化物系フラックス(商品名:ノコロックフラックス)の
他、CsF系フラックス又は塩化物系のフラックス等が
ある。更に、エチルアルコール等の有機溶剤又はアクリ
ル系樹脂等の有機樹脂(バインダ)を適宜使用しても構
わない。
【0033】
【実施例】以下、本発明に係るアルミニウム合金製部材
の実施例について、その特性を比較例と比較して具体的
に説明する。
【0034】下表1に示す化学組成を有する心材用アル
ミニウム合金、犠牲材用アルミニウム合金及びろう材用
アルミニウム合金を各々通常の方法により溶解・鋳造
し、心材、犠牲材及びろう材を得た。図4(a)は本実
施例に係るアルミニウム合金製部材を示す断面図、
(b)は両面にろう材が形成された3層構造の比較材を
示す断面図、図5は両面にろう材が形成された4層構造
の比較材を示す断面図である。なお、図4(a)及び
(b)並びに図5に示す数値の単位はmmである。
【0035】これらの材料の種々の組合せにより加工
し、ろう材3と、ろう材3の上に形成された心材1と、
心材1の上に形成された犠牲材2とからなる板厚が0.
4mmのクラッド材を作製した。但し、クラッド率は犠
牲材2を15%、ろう材3を10%とした。
【0036】また、図4(b)及び図5に示すように、
比較材として、フラックスろう付用には、心材1の両面
にろう材3が形成された3層構造の両面ろう材(JIS
4045材(ろう材)と、Al−1質量%Mn−0.
5質量%Cu材(心材)と、JIS 4045材(ろう
材)との3層構造で各ろう材3のクラッド率が10%)
と、心材1の片面にろう材3が形成され、残りの面に中
間層5及びろう材3が順次形成された4層構造の両面ろ
う材(JIS 4045材(ろう材)と、JIS 70
72材(中間層)と、Al−1質量%Mn−0.5質量
%Cu材(心材)と、JIS 4045材(ろう材)と
の4層構造で各ろう材のクラッド率が10%、中間層の
クラッド率が12%)とを使用した。
【0037】真空ろう付用には、比較材として、図4
(b)に示す3層構造の両面ろう材(JIS 4004
材(ろう材)と、Al−1質量%Mn−0.5質量%C
u材(心材)と、JIS 4004材(ろう材)との3
層構造で各ろう材のクラッド率が10%)と、図5に示
す4層構造の両面ろう材(JIS 4004材(ろう
材)と、Al−0.2質量%Mg材(中間層)と、Al
−1質量%Mn−0.5質量%Cu材(心材)と、JI
S 4004材(ろう材)との4層構造で各ろう材3の
クラッド率が10%、中間層5のクラッド率が12%)
とを使用した。なお、下記表1に示す比較例No.17は
Al−0.5質量%Mn−0.2質量%Mg材(犠牲
材)とAl−0.5質量%Mn−0.05質量%Cu材
(心材)との積層構造をAl−0.5Mn−0.2Mg
/Al−0.5Mn−0.05Cuと表している。ま
た、表1の犠牲材の備考の欄に示す「Al:99.7」
はAlの含有量が99.7質量%であることを示す。
【0038】上述の各クラッド材において、腐食性媒体
が作用する面は、本実施例のクラッド材においては、犠
牲材2の上面20であり、3層構造の比較材において
は、ろう材3の上面21であり、4層構造の比較材にお
いては、ろう材3の上面22である。各クラッド材の電
位差について測定した。3層材では犠牲材表面と心材部
との電位差を測定した。また、4層材ではろう付後の表
面と心材部との電位差を測定した。この電位差は、各部
位において後述する孔食電位の測定方法により孔食電位
を測定し、その差をとって算出されるものである。
【0039】粉末ろう材は、市販のAl−10質量%S
i合金を使用した。フラックスは、市販の非腐食性フッ
化物系フラックス(商品名:ノコロックフラックス)を
使用した。粉末ろう材とフラックスとの混合には、粉末
ろう材をペースト状とするため、分散液として、イオン
交換水を使用し、その濃度は20質量%とした。このペ
ーストを使用してろう付した。真空ろう付用には、フラ
ックスを含有しないろう材を使用した。そして、ろう付
に際してそれを塗布し、ろう付した。
【0040】図6(a)はろう付加熱試験に使用される
プレス成形品を示す断面図、(b)はその上面図、
(c)は(a)の拡大図である。なお、図6(a)乃至
(c)に示す数値の単位はmmである。
【0041】次に、前記各クラッド材及び比較材を中央
部分が張り出した形状にプレス成形した。プレス材10
の接合面11に片面当たり100g/m2となるように
前記ペーストを塗布した。また、プレス材10の接合面
11には穴12が形成されている。このプレス成形品に
おける腐食性媒体の作用する面は、プレス材10の上面
23である。
【0042】このプレス材10のフラックスろう付で
は、窒素ガス雰囲気中で595℃の温度で3分間加熱し
てろう付した。また、真空ろう付では、4.8×10-6
Paの真空度において595℃の温度で3分間加熱して
ろう付した。
【0043】その後、上記ろう付製品について、Siの
侵入距離Xを測定し、更に最大孔食深さ及び孔食電位を
測定し、これを評価した。Siの侵入距離Xについて
は、ろう付後の部位の断面を写真観察して測定した。
【0044】最大孔食深さについては、OY水(C
-:195質量ppm,SO4 2-:60質量ppm,C
2+:1質量ppm及びFe3+:30質量ppmの水溶
液)中に浸潰した後、88℃の温度において8時間保持
し、その後、室温において16時間保持し、合計24時
間を1サイクルとして、120サイクル連続して繰り返
した。そして、最大腐食部の断面を顕微鏡により観察
し、最大孔食深さを測定した。これにより、耐食性を評
価した。
【0045】また、孔食電位の測定については、1N−
AlCl3溶液中(室温)で、電位掃引速度20mV/
分で行った。なお、孔食電位はJIS 1050アルミ
ニウム材で−745mV、JIS 3003アルミニウ
ム合金材で−720mV、JIS 7072アルミニウ
ム合金材で−862mV、Al−5質量%Mn材で−8
90mVである。また、表2の電位差の欄に示す「−」
は測定していないことを示す。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】上記表2に示すように、実施例No.1乃至
11は請求項3も満足するので、OY水による120サ
イクル後においても、心材と犠牲材との界面近傍で板厚
方向への腐食の進行が停止し、優れた耐食性能を示し
た。
【0049】また、実施例12は請求項1を満足するも
のの、心材のMnの含有量が0.5質量%未満であり、
請求項2及び3の下限値未満であるため、耐食性が若干
低下した。実施例No.13は請求項1を満足するもの
の、心材のMnの含有量が1.5質量%を超え、請求項
2及び3の上限値値を超えているので、第2相粒子が多
く、圧延性が低下したため、評価しなかった。実施例N
o.14は請求項1を満足するものの、心材のCuの含有
量が1.0質量%を超え、請求項2及び3の上限値を超
えているので、固相線温度が低下しろう付に不適である
ため、評価しなかった。実施例No.15は請求項1を満
足するものの、犠牲材のZnの含有量が5.0質量%を
超え、請求項2の上限値を超えているので、犠牲層の強
度及び硬度等が極めて高くなり、犠牲材と心材との間で
圧延性及び成形性等に著しい差異が生じた。このため、
クラッド性が低下した。実施例No.16は請求項1を満
足するものの、犠牲材のMgの含有量が3.0質量%を
超え、請求項2の上限値を超えているので、クラッド性
が低下した。
【0050】一方、比較例No.17は犠牲材と心材との
電位差が30mV未満であるので、十分な犠牲効果が得
られず、耐食性が低下した。比較例No.18乃至21
は、ろう付後において、腐食媒体が作用する面上におい
て接合面から2.0mmを越える領域にも、共晶又は初
晶Si層が残存するため、フィレット部近傍まで犠牲防
食が作用されず、早期に腐食が進行する。
【0051】また、比較例No.19及び21は犠牲防食
の効果を有する中間層があるため、比較例No.18及び
21に比べて耐食性は良好であるが、前述の如く、腐食
媒体が作用する面上において接合面から2.0mmを越
える領域にも、共晶又は初晶Si層が残存するため、本
発明の犠牲層が形成された3層構造材に比べて早期に腐
食が進行する。比較例No.22はろう付後に、共晶又は
初晶Si層が接合面(フィレット部)の端部から2.0
mmを越える領域に残存するため、フィレット部近傍部
に対する防食効果が低くなり、耐食性が低下した。
【0052】
【発明の効果】以上詳述したように本発明によれば、犠
牲材と心材との電位差及びろう付後の接合面からの共晶
又は初晶のSiの残存距離を適切に規定しているので、
従来、構造的に両面ろう材層が形成された4層構造材を
必要としたが、犠牲材が形成された3層構造材を利用す
ることができ、腐食性媒体が作用するろう付接合面上に
おいて、ろう材の残存による耐食性の低下を抑制するこ
とができる。このため、耐食性が優れると共に、薄肉化
することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Siの犠牲材への侵入形態を示す断面図であ
る。
【図2】Siの侵入距離が2.0mm以下である場合の
防食形態を示す断面図である。
【図3】Siの侵入距離が2.0mmを超える場合の防
食形態を示す断面図である。
【図4】(a)は本実施例に係るアルミニウム合金製部
材を示す断面図、(b)は両面にろう材が形成された3
層構造の比較材を示す断面図である。
【図5】両面にろう材が形成された4層構造の比較材を
示す断面図である。
【図6】(a)はろう付加熱試験に使用されるプレス成
形品を示す断面図、(b)はその上面図、(c)は
(a)の拡大図である。
【符号の説明】
1;心材 2;犠牲材 3;ろう材 4;フィレット部 5;中間層 20、21、22、23;上面

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルミニウム又はアルミニウム合金から
    なる心材と、前記心材の片面に形成されたアルミニウム
    又はアルミニウム合金材からなる犠牲材とを有し、前記
    犠牲材の腐食性媒体が作用する接合面上に、ろう付後に
    共晶又は初晶Si層がろう付接合面の端部より2.0m
    mを超える領域で存在せず、前記腐食性媒体が作用する
    面は前記心材に対して30mV以上卑であることを特徴
    とする耐食性が優れたアルミニウム合金製部材。
  2. 【請求項2】 前記犠牲材はZn:5.0質量%以下及
    びMg:3.0質量%以下からなる群から選択された少
    なくとも1種を含有するアルミニウム合金からなり、前
    記心材はMn:0.5乃至1.5質量%及びCu:1.
    0質量%以下を含有するアルミニウム合金からなること
    を特徴とする請求項1に記載の耐食性が優れたアルミニ
    ウム合金製部材。
  3. 【請求項3】 前記犠牲材は1000系アルミニウム合
    金からなり、前記心材はMn:0.5乃至1.5質量%
    及びCu:1.0質量%以下を含有するアルミニウム合
    金からなることを特徴とする請求項1に記載の耐食性が
    優れたアルミニウム合金製部材。
  4. 【請求項4】 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の
    アルミニウム合金製部材の接合面にSiを含有する粉末
    ろう材を供給してろう付することを特徴とする耐食性が
    優れたアルミニウム合金製部材のろう付方法。
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CN113453840A (zh) * 2019-10-11 2021-09-28 松下知识产权经营株式会社 热交换器用钎焊片、热交换器用钎焊片的接合结构和热交换器用钎焊片的接合方法、以及热交换器
EP3438301B1 (en) 2016-03-29 2022-05-04 UACJ Corporation Aluminum alloy brazing sheet for heat exchangers, and production method for same

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