JP2002034570A - ポリメラーゼ反応阻害物質の除去方法 - Google Patents

ポリメラーゼ反応阻害物質の除去方法

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JP2002034570A JP2000225218A JP2000225218A JP2002034570A JP 2002034570 A JP2002034570 A JP 2002034570A JP 2000225218 A JP2000225218 A JP 2000225218A JP 2000225218 A JP2000225218 A JP 2000225218A JP 2002034570 A JP2002034570 A JP 2002034570A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 試料中に含まれるポリメラーゼ反応阻害物質
を簡単な操作で除去できる精度の高いポリメラーゼ反応
阻害物質の除去方法を提供する。 【解決手段】 微生物を磁性体粒子に吸着させ、磁石を
利用した磁気分離により試料中の非吸着画分に存在する
ポリメラーゼ反応阻害物質を除去する吸着・磁気分離工
程を有するポリメラーゼ反応阻害物質の除去方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、試料中の原生生物
(原核原生生物および真核原生生物)(本発明では「微
生物」と云う)の核酸の一部をポリメラーゼを用いて合
成・増幅する(本発明では「ポリメラーゼ反応」と云
う)際に、その阻害物質を除去するために、前処理とし
ておこなうポリメラーゼ反応阻害物質の除去方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】1985年のDNAポリメラーゼの伸張
反応を利用したポリメラーゼ連鎖反応(以下、「PC
R」とも云う)に関するK.Mullis等による最初
の報告以来、その非常に高い感度と特異性が着目され、
微生物研究分野や臨床検査分野等において、微生物検出
へのPCR技術の応用が盛んに進められて来た。
【0003】このポリメラーゼ連鎖反応技術を応用し
て、空調冷却水等の環境試料や食品、尿、血液等の生物
試料等の検体から微生物検出をおこなう場合、このよう
な試料中にはPCRに使用されるポリメラーゼによる合
成反応を阻害する物質(本発明において「ポリメラーゼ
反応阻害物質」と云う)が含まれている場合が多く、タ
ーゲット核酸が存在するにもかかわらず、PCRが陰性
(偽陰性)となる誤った結果が得られる場合がある。
【0004】このようなポリメラーゼ反応阻害物質とし
てどのような物質があるかについてはいまだ完全には解
明されていないが、ポリメラーゼ反応阻害物質の除去に
は種々の異なる方法が提案されている。例えば、試料中
の阻害物質が水溶性であれば、試料を遠心分離して微生
物を沈殿させ、洗浄操作を繰り返すことにより、上清画
分に存在する阻害物質を簡単に除去できる。また、阻害
物質が不溶性の無機金属である場合は、核酸抽出後の試
料を塩酸酸性にして、核酸を沈殿させ、そのときの上清
画分の無機金属成分を除去することができる。
【0005】一方、阻害物質が既知のものであればその
濃度を測定し、ポリメラーゼ反応阻害を受けない程度の
濃度となるまで試料を希釈してPCRを利用した微生物
検出をおこなうことができる。また、試料中のターゲッ
ト核酸を有機溶媒処理により阻害を受けない程度までに
精製してPCRを利用した微生物検出をおこなう方法も
ある。
【0006】しかしながら、ポリメラーゼ反応を応用し
た微生物検出において、空調冷却水等の環境水や食品、
尿、血液等の生物試料等を検体として用いる場合、水溶
性のポリメラーゼ反応阻害物質のみならず、不溶性のポ
リメラーゼ反応阻害物質が同時に含まれることが多い。
【0007】この場合、従来の物理的方法のみでは、微
生物と不溶性阻害物質を分離することが困難なため、先
ず遠心分離等で水溶性の阻害物質を除去し、その沈澱画
分からDNA抽出液を調製した後、ポリメラーゼ反応阻
害物質を除去することが必要であった。
【0008】しかし、これら不溶性のポリメラーゼ反応
阻害物質はDNAと同じ挙動を示すものが多い。すなわ
ち、DNA抽出前は不溶性でありながらDNA抽出後に
は可溶性画分に移行してPCRによる微生物検出を阻害
する。そのため上記の除去操作を組み合わせてDNAを
精製することが困難であった。また、不溶性の阻害物質
を除去する操作では、核酸の回収率が低下し、PCRに
よる微生物検出の結果が偽陰性となる等の問題もあっ
た。
【0009】このように、試料中の微生物をPCRによ
り検出する方法において、正確な測定結果を得るため、
試料中に含まれるポリメラーゼ反応阻害物質除去が不可
欠であるにもかからず、このような阻害物質を除去でき
る簡便な方法は知られていなかった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
従来技術の問題点に鑑みてなされたものであって、その
目的とするところは、試料中に含まれるポリメラーゼ反
応阻害物質を磁気分離という簡単な操作で除去できる精
度の高いポリメラーゼ反応阻害物質の除去方法を提供す
ることにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者等は上記従来の
問題点について鋭意検討をおこなったところ、微生物が
磁性体粒子に吸着するのにもかかわらず、不溶性のポリ
メラーゼ反応阻害物質は磁性体粒子に吸着しないことを
見出し本発明に至った。
【0012】すなわち、本発明のポリメラーゼ反応阻害
物質の除去方法は上記課題を解決するため、請求項1に
記載の通り、微生物を磁性体粒子に吸着させ、磁石を利
用した磁気分離により試料中の非吸着画分に存在するポ
リメラーゼ反応阻害物質を除去する吸着・磁気分離工程
を有するポリメラーゼ反応阻害物質の除去方法である。
【0013】このような本願発明特有の構成により、従
来、PCRによる微生物の検出において、不溶性のポリ
メラーゼ反応阻害物質の存在のため偽陰性となりやすか
った試料であっても正確な検出が可能となり、かつ、容
易におこなうことができる。また、PCRによる微生物
検出に限らず、試料中の原生生物の核酸をポリメラーゼ
を用いて合成、増幅する際にポリメラーゼ反応の阻害物
質を容易に除去することが可能となる。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明のポリメラーゼ反応阻害物
質の除去方法において、用いる磁性体粒子の粒径は小さ
い程、相対的に磁性体粒子重量当りの微生物に対する吸
着面積が増えて好ましいが、0.1μm以下では磁石へ
の吸着力が低下するため、0.1μm以上、100μm
以下であることが好ましい。このような磁性体粒子とし
てはフェライト粒子があるが、その中で、特に四三酸化
鉄(Fe34)が入手しやすく、取り扱いが容易であ
る。
【0015】また、本発明における吸着・磁気分離工程
において、微生物とともに磁性体粒子に付着したポリメ
ラーゼ反応阻害物質を洗浄・除去する際には、吸着した
微生物を脱離或いは死滅させない条件を選択する必要が
ある。そのため、洗浄には塩化物イオン、硝酸イオンお
よび硫酸イオンの少なくとも1種を有し、かつ、これら
の塩化物イオン、硝酸イオンおよび硫酸イオンの濃度の
和が10mmol/L以下である塩溶液を用いることが
望ましく、洗浄に用いるこれら塩溶液には、後述するよ
うなリン酸塩、エチレンジアミン四酢酸塩などの、吸着
した微生物を脱離させる物質が、含有されていないこと
が望ましく、微生物を脱離させる性質が発現する濃度よ
り充分低いことが必要である。なお、洗浄に用いる塩溶
液の陽イオンは磁性体粒子に吸着した微生物に影響がな
いように適宜選択する。
【0016】このように磁性体粒子に微生物を吸着させ
た後、磁石を利用して微生物を吸着した磁性体粒子を、
その他の不溶性成分と分離(磁気分離)する。例えば、
磁性体の入った容器の外側から磁石を近づけて容器内壁
に微生物を吸着した磁性体を集めておいて、ピペットで
液相を吸い取ることにより、容易に非吸着画分を除くこ
とができる。
【0017】このように吸着・磁気分離工程により取り
出した微生物を吸着した磁性体粒子から微生物を生存し
た状態(以後、「生菌」とも云う)で脱離させる生菌脱
離工程を有することにより既に死んでいる菌のDNAを
生菌のものとしてカウントする誤差の発生のおそれもな
く、PCRによる微生物検出を精度良く容易におこなう
ことができる。
【0018】このような生菌脱離工程で、磁性体粒子に
吸着した微生物を生菌として脱離させる際には、リン酸
塩溶液、硫酸イオンを含有する塩溶液、エチレンジアミ
ン四酢酸塩溶液などを用いることができるが、なかでも
リン酸塩溶液を脱離処理液として用いることにより、特
異的に極めて回収率の高い脱離が可能となる。このとき
の脱離処理液中のリン酸塩濃度は0.1mmol/L以
上であると充分な脱離が可能となるが、特に10mmo
l/L以上であると非常に高い回収率での脱離が可能と
なる。リン酸塩濃度の上限としては、検出目的の微生物
が死滅しない濃度であることが必要である。なお、上記
脱離処理液のpHは5.5以上8.5以下であることが
好ましく、特に好ましい範囲は6.5以上7.5以下で
ある。
【0019】このようにして上記の吸着・磁気分離工程
および生菌脱離工程操作により微生物を脱離させた後
は、たとえば、通常の操作に従い、核酸抽出をおこなっ
て試料中の核酸をポリメラーゼを用いて合成・増幅する
ことが可能であり、PCRによる微生物の検出をおこな
うことにより、試料中の目的とする微生物を検出でき
る。
【0020】なお、吸着・磁気分離工程に先だって、従
来おこなわれていた可溶性ポリメラーゼ反応阻害物質除
去をおこなっても良いが、これら可溶性ポリメラーゼ反
応阻害物質が磁性体粒子に吸着しないことが明らかな場
合には可溶性ポリメラーゼ反応阻害物質の除去工程を省
くことができる。
【0021】
【実施例】以下に本発明のポリメラーゼ反応阻害物質の
除去方法についてPCRの例を挙げて具体的に説明す
る。
【0022】〔従来技術による比較例〕 A.まず、試料作成・PCR条件について示す。 (試料の採取・前処理)空調用冷却塔から採取した試料
水400mLを6000rpm・30分間の条件で遠心
分離して、得られた沈殿を4mLの滅菌蒸留水に懸濁さ
せ、PCRによる微生物検出の試料(以下、「微生物検
出試料」と略す)とした。
【0023】(DNA抽出)微生物検出試料からのDN
A抽出は、以下の操作方法でおこなった。 (1)微生物検出試料1mLを1.5mLエッペンドル
フチューブにとり、12000rpm・15分間の条件
で遠心分離し、上清950μLを捨てる。 (2)50mmol/L・NaOH水溶液を50μL添
加し、ポルテックスミキサーで良く攪拌する。 (3)沸騰水浴中で15分間、加熱する。 (4)1Mトリス塩酸緩衝液(pH7.0)を10μL
添加し、中和する。
【0024】(PCRによる検出)PCRの操作は、常
法に従い下記の手順でおこなった。 (1)PCR用チューブに以下の組成で反応液を調製し
た。
【0025】
【表1】 ──────────────────────────────────── 蒸留水 : 5.5μL 10xPCRバッファー : 2.0μL dNTPストック溶液(10mmol/L・ストック) : 1.6μL プライマー1(10pmol/μL) : 0.4μL プライマー2(10pmol/μL) : 0.4μL Taq DNAポリメラーゼ(5U/μL) : 0.1μL DNA抽出液(上記方法で調整したもの) :10.0μL ──────────────────────────────────── プライマー1:LEG448−A (5’−GAG GGT TGA TAG GTT AAG AGC−3’) (配列番号1) プライマー2:LEG854−B (5’−CGG TCA ACT TAT CGC GTT TGC T−3’) (配列番号2)
【0026】(2)PCR条件 表2にその条件を簡単に示す。
【0027】
【表2】 ────────────────── 熟変性:94℃×30秒 ↓ アニーリング:65℃×30秒 ↓ 伸長反応:72℃×1分 サイクル数:40サイクル ──────────────────
【0028】(3)PCR生成物の分析 アガロースゲル電気泳動によった。
【0029】B.結果および考察 空調用冷却塔から採取した試料31検体について、レジ
オネラ属細菌を検出するため、上記の(1)〜(3)に
示した方法に従い、PCRによる検出をおこなった。
【0030】レジオネラ属細菌の検出プライマーとし
て、16Sリボソーム遺伝子の塩基配列を持つ2種類の
合成オリゴヌクレオチドプライマー(それぞれの塩基配
列は、配列表の配列番号1及び2参照)を使用した。な
お、対照として、WYOα培地でレジオネラ属細菌のコ
ロニー数を計測した。その結果を表3および表4に示し
た。コロニー計測によりレジオネラ属細菌が検出された
検体の中で、8検体の試料がPCRの結果が陰性、すな
わち偽陰性であった。
【0031】
【表3】
【0032】
【表4】
【0033】ここで、上記の表3および表4で偽陰性を
示した8検体の中に、ポリメラーゼ反応阻害物質が存在
すると考え、DNA抽出前の菌体を蒸留水で洗浄したが
効果がなく、不溶性の成分が主たる阻害物質であること
が判明した。
【0034】次にこれら8検体につき、抽出されたDN
Aを常法に従い、フェノール/クロロホルム処理及びイ
ソプロピルアルコール沈殿をおこなって精製した後、P
CRによる検出をおこなった。
【0035】上記8検体中3検体はPCR陽性となった
が、残りの5検体はPCR陰性となり、有機溶媒による
処理によっても阻害物質を除去することができなかっ
た。さらに、塩酸溶液(0.1N)処理やDMSO(ジ
メチルスルホキシド)処理についても検討したが、すべ
て効果がなかった。
【0036】〔本発明による実施例〕 (微生物の磁性体粒子への吸着の確認)磁性体粒子(キ
シダ化学(株)製「四三酸化鉄」、325メッシュ。以
下、「マグネタイト」と略す)に対する各種細菌の吸着
性を評価した。 (1)供試細菌:表5参照
【0037】
【表5】
【0038】(2)実験方法:50mL平底フラスコ
に、蒸留水30mLとマグネタイト60mg(0.2
%)を入れ、121℃・15分条件でのオートクレーブ
滅菌をおこない、上記供試菌株を培養して調製した菌体
懸濁液を菌数が約104CFU/mLとなるように添加
して、振盪培養器(160rpm、室温)で振盪し、磁
気分離により経時的に非吸着画分を採取して、残存する
細菌数を計測した。
【0039】(3)結果を図1に示したが、いずれの細
菌も10分間の接触で殆ど100%吸着された。従っ
て、マグネタイトへの細菌の吸着は、グラム陽性及び陰
性の菌に共通の現象であることが認められた。(図1中
Reaction time)
【0040】(磁性体粒子からの生菌としての脱離の検
討)大腸菌を用いて、マグネタイトに吸着した細菌を生
菌として回収する脱離処理液の組成について試験をおこ
なった。
【0041】(1)マグネタイトへの吸着:上記の実験
方法に同じ。 (2)マグネタイトからの大腸菌の回収:大腸菌を吸着
したマグネタイトを磁気分離により回収した後、蒸留水
30mLで1回洗浄した。次に、30mLの脱離処理液
を加え、充分に攪拌した後、磁気分離により非吸着画分
を採取し、コロニー法にて生菌数を計測した。その結果
を表6に示した。
【0042】
【表6】
【0043】(3)結果:リン酸濃度として10mmo
l/L以上のリン酸緩衝液(KH2PO4/Na2HP
4、pH7.0)の濃度の希釈溶液を用いた場合、ほ
ぼ全て生菌として回収できた。一方、食塩(NaCl)
水溶液、或いは、硝酸ナトリウム(NaNO3)水溶液
では濃度を50mmol/L〜250mmol/L間で
変化させても殆ど脱離せず、また硫酸ナトリウム(Na
2SO4)水溶液の場合、濃度が10mmol/L以下で
は殆ど脱離しなかった。
【0044】また、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウ
ム水溶液の場合、濃度が10mmol/Lでは、約40
%が回収できたが、50mmol/L以上の濃度では逆
に回収率が低下する傾向が見られた。これは、エチレン
ジアミン四酢酸塩(EDTA)の濃度が高くなると、微
生物の細胞膜や細胞壁の構成成分であるマグネシウムな
どの金属がEDTAによって除去され、その結果生菌と
しての回収率が低下するものと考えられる。
【0045】これらの結果から、微生物を吸着したマグ
ネタイトの洗浄には塩化物イオン、硝酸イオンおよび硫
酸イオンの中から少なくとも一つの負イオンを有し、か
つ、これらの塩化物イオン、硝酸イオンおよび硫酸イオ
ンの濃度の和が10mmol/L以下である塩溶液を用
いるのが好ましく、一方、マグネタイトに吸着した微生
物の脱離には10mmol/L以上のリン酸イオンを含
む塩溶液が特に有効であることが判った。
【0046】なお、上記金属イオンを有する溶液とは別
に、吸着した細菌を脱離させるのに有効と考えられる界
面活性剤による細菌の脱離について検討した。検討は界
面活性剤のうち、最も細菌に対して影響が少ないと思わ
れる非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレンソ
ルビタンモノオレート(Polyoxyethylene Sorbitan Mon
ooleate)をさまざまな濃度で希釈して検討したが、い
ずれの濃度であってもリン酸塩溶液に比して低い回収率
であり、満足できる値ではなかった。
【0047】(pHの影響の検討)大腸菌を用いて、マ
グネタイトに吸着した細菌を生菌として回収する脱離処
理液のpHの影響について試験した。 (1)マグネタイトへの吸着:上記の実験方法に同じ。
【0048】(2)マグネタイトからの大腸菌の回収:
pH4.0〜8.5の10mmol/L・リン酸緩衝液
を使用して、上記と同様にして、マグネタイトから脱離
・回収される大腸菌の生菌数を計測した。 (3)結果:pHが5.5以上8.5以下の場合で60
%以上の回収、pHが6.5以上7.5以下でほぼ完全
に生菌として回収された。
【0049】(レジオネラ属細菌での確認)上記で大腸
菌を用いて検討して得られたマグネタイトからの回収条
件をレジオネラ属細菌で確認した。Legionell
bozemanii GIFU9140(レジオネ
ラボゼマニイ)をマグネタイトに吸着させて実験をおこ
なった結果、大腸菌と同様にリン酸濃度が10mmol
/L以上のリン酸緩衝液でほぼ完全に生菌として回収で
きた。
【0050】(実際の空調用冷却水系水での確認)空調
用冷却塔から採取した試料水(冷却水)で、レジオネラ
属細菌がコロニー法で検出され、かつ、従来の前処理方
法を伴うPCRによる検出で結果が偽陰性であった試料
も含めて10検体について、次のように磁性体吸着/洗
浄/脱離の処理後、DNAを抽出し、PCRによる検出
をおこなった。その結果を表7に示した。
【0051】
【表7】
【0052】(1)磁性体粒子吸着 1mLの微生物検出試料(比較例と同様の方法で調製)
を1.5mLマイクロチューブにとり、遠心分離(10
000rpm、15分)をおこなった後、沈殿に1mL
の10mmol/L・NaCl水溶液を加えて懸濁さ
せ、50μLのマグネタイト懸濁液(200mg/mL
蒸留水)を添加し、30分間、充分に転倒混和させた。
次いで、磁石を用いて磁気分離し、非吸着画分を捨て、
該マグネタイトに10mmol/L・NaCl水溶液l
mLを加えて洗浄した。再度、磁気分離をおこない、非
吸着画分を除去し、微生物を吸着させたマグネタイトに
リン酸塩濃度が10mmol/Lになるよう希釈調整し
たリン酸緩衝液(pH7.0)1mLを加え、良く攪拌
し、微生物を脱離させた。磁気分離をおこない、得られ
た液(脱離した微生物が存在する液)は別のマイクロチ
ューブに移した。マグネタイトにリン酸塩濃度が10m
mol/Lとなるように調整したリン酸緩衝液1mLを
加えて洗浄をおこない、脱離した微生物が存在する液と
洗浄液を合わせ、DNA抽出用試料を調製した。
【0053】(2)DNA抽出 上記のDNA抽出用試料を遠心分離(10000rp
m、15分)し、上清画分950μLを取り除いた後、
50μLの50mmol/L・NaOH水溶液を添加、
沸騰浴水中で15分間保持し、DNAを抽出した。次い
で、1Mトリス塩酸緩衝液(pH7.0)10μLを添
加して中和した。このうち10μLをPCR用試料とし
た。 (3)PCR:従来例同様の方法に従って、レジオネラ
属細菌の検出をおこなった。
【0054】(4)結果:吸着・磁気分離工程により、
ポリメラーゼ反応阻害物質が除去され、偽陰性を示した
試料もすべてPCR陽性となり、コロニー法の結果と一
致した。なお、コロニー法では検出下限以下であったた
めレジオネラ属細菌が検出できなかった2検体からもP
CRによってレジオネラ属菌の存在が検出された。この
ことからも本発明にかかるポリメラーゼ反応阻害物質の
除去方法によれば、検出感度が著しく向上することが証
明された。
【0055】なお、上記においては本発明のポリメラー
ゼ反応阻害物質の除去方法をPCRによる微生物検出に
ついて応用した例について説明したが、本発明はPCR
による微生物検出のみならず、その他のポリメラーゼ反
応を応用する技術、たとえば鎖置換型DNAポリメラー
ゼを用いる遺伝子増幅法(Tsugunori Not
omi等:Nucleic Acids Resaer
ch、28(12),2000)、RNA依存性DNA
ポリメラーゼを用いるRNA鎖に相補的なDNA合成、
及びファージSP6のRNAポリメラーゼを用いるDN
A鎖からのRNA合成(三浦謹一郎等編・著:「タンパ
ク質工学」、P60〜P86、1988年発行、啓学出
版)などに応用可能である。
【発明の効果】本発明のポリメラーゼ反応阻害物質の除
去方法は、微生物を磁性体粒子に吸着させ、磁石を利用
した磁気分離により試料中の非吸着画分に存在するポリ
メラーゼ反応阻害物質を除去する吸着・磁気分離工程を
有するポリメラーゼ反応阻害物質の除去方法であって、
容易な操作で極めて精度の高い優れたポリメラーゼ反応
阻害物質の除去方法である。
【0056】
【配列表】 SEQUENCE LISTING <110> AQUAS CORPORATION <120> Method for Removal of Polymerase Reaction Inhibitor <130> P82942-49 <160> 2 <170> PatentIn Ver. 2.1 <210> 1 <211> 21 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:Synthetic DNA <400> 1 gagggttgat aggttaagag c 21 <210> 2 <211> 22 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:Synthetic DNA <400> 2 cggtcaactt atcgcgtttg ct 22
【図面の簡単な説明】
【図1】マグネタイトに対する各種細菌の吸着性を示す
図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4B024 AA20 CA04 HA20 4B063 QA01 QQ42 QQ52 QR32 QR62 QS12 QS15

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 微生物を磁性体粒子に吸着させ、磁石を
    利用した磁気分離により試料中の非吸着画分に存在する
    ポリメラーゼ反応の阻害物質を除去する吸着・磁気分離
    工程を有することを特徴とするポリメラーゼ反応阻害物
    質の除去方法。
  2. 【請求項2】 上記吸着・磁気分離工程において、塩化
    物イオン、硝酸イオンおよび硫酸イオンの少なくとも1
    種を有し、かつ、これらの塩化物イオン、硝酸イオンお
    よび硫酸イオンの濃度の和が10mmol/L以下であ
    る塩溶液を用いて微生物を吸着した磁性体粒子を洗浄す
    ることを特徴とする請求項1に記載のポリメラーゼ反応
    阻害物質の除去方法。
  3. 【請求項3】 上記吸着・磁気分離工程の後に、上記磁
    性体粒子に吸着した微生物を該磁性体粒子から生存した
    状態で脱離させる脱離工程を有することを特徴とする請
    求項1または請求項2に記載のポリメラーゼ反応阻害物
    質の除去方法。
  4. 【請求項4】 脱離工程で、磁性体粒子に吸着した微生
    物を生菌として脱離させる際に用いる脱離処理液がリン
    酸塩溶液であることを特徴とする請求項3に記載のポリ
    メラーゼ反応阻害物質の除去方法。
  5. 【請求項5】 上記脱離処理液のリン酸塩濃度が0.1
    mmol/L以上であることを特徴とする請求項4に記
    載のポリメラーゼ反応阻害物質の除去方法。
  6. 【請求項6】 上記脱離処理液のリン酸塩濃度が10m
    mol/L以上であることを特徴とする請求項4に記載
    のポリメラーゼ反応阻害物質の除去方法。
  7. 【請求項7】 上記脱離処理液のpHが5.5以上8.
    5以下であることを特徴とする請求項4ないし請求項6
    のいずれかに記載ポリメラーゼ反応阻害物質の除去方
    法。
  8. 【請求項8】 上記脱離処理液のpHが6.5以上7.
    5以下であることを特徴とする請求項4ないし請求項6
    のいずれかに記載のポリメラーゼ反応阻害物質の除去方
    法。
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