JP2002023852A - 数値制御工作機械の送り機構の補正装置および数値制御工作機械 - Google Patents

数値制御工作機械の送り機構の補正装置および数値制御工作機械

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JP2002023852A JP2000202764A JP2000202764A JP2002023852A JP 2002023852 A JP2002023852 A JP 2002023852A JP 2000202764 A JP2000202764 A JP 2000202764A JP 2000202764 A JP2000202764 A JP 2000202764A JP 2002023852 A JP2002023852 A JP 2002023852A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 象限突起の影響を受けずに漸増型ロストモー
ションの適切な補正を行うことのできる数値制御工作機
械の送り機構の位置補正装置を提供する。 【解決手段】 本発明の送り機構の位置補正装置はワー
ク13を搭載するテーブル9を駆動するサーボモータ1
1と、位置指令値に対してサーボモータの回転検出によ
り得られた前記テーブルの位置をフィードバックすると
ともに、位置指令値から得られた速度指令値に対して前
記テーブル位置から得られたテーブル速度をフィードバ
ックし、その結果をトルク指令値、さらには電流指令値
に変換して前記サーボモータに供給する制御部(20,
30,40,50,60,70)と、前記トルク指令値
の波形から象限切換に伴うトルクの変化点を検出してこ
の変化点間の時間t01、t02を求めるトルク解析部
(80)と、理論式に基づいて前記トルク解析部の出力
から漸増型ロストモーションによるテーブル位置誤差を
求め、これを用いてテーブル位置に対する補正値を求め
る補正量演算部(90)とを備える。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は数値制御(以下NC
という)工作機械の送り機構のバックラッシ補正装置お
よびこれを含むNC工作機械に関するもので、特にリニ
アボールガイドを用いたNC工作機械の送り駆動機構の
輪郭制御に関して駆動機構の漸増型ロストモーションに
伴う誤差を解消すべく最適なバックラッシ補正を行うこ
とを可能にするものである。
【0002】
【従来の技術】三次元切削等を行う工作機械において
は、X軸、Y軸、Z軸の各軸毎に配置された駆動機構を
用いて加工工具あるいはワークを移動させることによ
り、三次元的な立体加工を実現しており、これらの多軸
同時制御には、プログラム式のNC装置が多用されてい
る。すなわち、NC装置は外部から入力されたデータか
ら所定の動作プログラムにより、各軸等の動作指令値を
解析し、各軸毎のデータを工作機械の各軸の駆動機構に
順次出力し、動作プログラムにより設定された所期の動
作を実行させるものである。
【0003】ここで、駆動機構は、加工工具あるいはワ
ークを移動させる駆動源としてのサーボモータと、モー
タの回転を各軸に伝達するためのボールねじ、ギヤトレ
イン等の伝達機構と、モータを回転駆動するため駆動信
号を供給するとともに位置、速度を検出し駆動信号にフ
ィードバックするための位置、速度制御ループ等の制御
回路とを含む。
【0004】このような駆動機構では、加工工具あるい
はワークを移動させる際に、伝達機構によるバックラッ
シが生じ、そのために輪郭制御に悪影響を及ぼすという
問題があった。
【0005】そこで、従来より、このバックラッシを補
正する技術が種々考案されている。
【0006】典型的なNC装置におけるバックラッシ補
正としては、例えば、切削送り、早送りあるいは円弧補
間等の曲線制御における送り速度をある速度に設定し、
そのときに生じるバックラッシ量を測定し、これをバッ
クラッシ補正量として蓄積しており、駆動機構の速度制
御系に供給して補正する方法がある。
【0007】一方、特開昭60−172444号公報に
おいては、サーボモータ駆動の1サンプリングタイムの
間にバックラッシ補正量に相当するパルスを一時に加え
て速度制御系を介してサーボモータに供給せず、円弧補
間時に生じるバックラッシ補正量を複数の位置間隔で分
解したバックラッシ補正データを用意しておき、移動位
置ごとにバックラッシ補正量を徐々に加える方法を開示
する。
【0008】円弧補間等の曲線制御において、真円加工
を行う場合は、2軸同時制御が必要であるが、この場合
のバックラッシ補正は、各軸毎のバックラッシ補正量を
用いて各軸毎に行われる。このような加工において象限
の切り換え時、すなわち、一つの軸の送り方向が+から
−、あるいは−から+ヘ変化するとき、通常のバックラ
ッシ補正を行うと、所謂、喰い込みを生ずる現象があ
る。
【0009】バックラッシ補正が正しく作用し、喰い込
み現象が生じない場合は、バックラッシの間に機械系は
停止しているのに対して、バックラッシ補正が正しく作
用せず、喰い込み現象が生じる場合には、バックラッシ
の間に機械系は少しずつ戻り運動をしていることになる
ため、通常のバックラッシ補正を行うと所望の軌跡であ
る円弧より内側に喰い込む現象を引き起こし、円弧補
間、曲線加工の精度を低下させることになる。
【0010】この原因は、通常のバックラッシ補正は、
サーボモータ駆動の1サンプリングタイムの間にバック
ラッシ補正量に相当するパルスを一時に加えて速度制御
系を介してサーボモータに供給するため、象限切り換え
時に立ち上がりが緩慢な場合には、バックラッシ補正後
の軌跡が、加工したい円弧の内側に喰い込んだ軌跡を描
くことになるためである。
【0011】一方、特開昭60−172444号公報に
記載されたNC装置においては、上記の如き緩慢な立ち
上がりを有する機械系のバックラッシ補正方法として、
サーボモータ駆動の1サンプリングタイムの間にバック
ラッシ補正量に相当するパルスを一時に加えて速度制御
系を介してサーボモータに供給せず、円弧補間時に生じ
るバックラッシ量を複数の位置間隔で分解したバックラ
ッシ補正データを用意しておき、移動位置毎にバックラ
ッシ補正量を徐々に加える方法が開示されている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】この方法によれば、前
述した喰い込み現象をかなり改善することが可能である
が、次の点で不都合が存在する。
【0013】すなわち、第1は、上記の喰い込み現象
は、送り速度によりその量が変化するため、ある送り速
度で測定したバックラッシ量をもとにバックラッシ補正
を行っただけでは完全な補正にならないという点であ
り、第2は、分割位置に対応して、サーボモータ駆動の
1サンプリングタイムの間に当該分割位置におけるバッ
クラッシ補正量に相当するパルスを速度制御系を介して
サーボモータに供給しているため、緩慢な立ち上がり部
で徐々に変化する勾配に追従したバックラッシ補正とな
っていないという点である。
【0014】以上説明したように、従来のバックラッシ
補正方法では円弧補間を行う場合に、送り速度に対し
て、当該送り速度に最適なバックラッシ補正がなされて
おらず、また、緩慢な立ち上がりを有し、象限切換え時
に喰い込み現象が生じるケースで正確なバックラッシ補
正がなされていないため、加工精度の低下を生じるとい
う不都合が存在していた。
【0015】このような問題を解決すべくなされた特公
平7−71781号公報に記載された数値制御工作機械
のバックラッシ補正方法においては、バックラッシ補正
量データとして、円弧補間時に生ずるバックラッシ量を
複数の位置間隔で分割したバックラッシ補正データと、
分割した位置に応じて、速度制御系を介して駆動源に供
給されるパルスレートを算出するためのパルスレートデ
ータ算出用データとが、複数の送り速度毎にそれぞれ対
応して補正データ部に蓄積されており、指令データに基
づいて当該指令速度と位置間隔により補正データ部から
対応したバックラッシ補正データとパルスレートデータ
算出用データとを読み出す。次に、バックラッシ補正量
算出部において、当該指令速度と位置により、例えばそ
の前後の速度に対応したバックラッシ補正データから補
間演算部等により、当該指令速度に対応した最適の補正
量を求めるとともに、位置に対応して分割位置に応じた
パルスレートデータを作成し、速度制御系を介して駆動
源を供給するようにしており、これにより、象限切換時
にも正確なバックラッシ補正が可能となる。
【0016】ところで工作機械の送り駆動機構の移動方
向反転時に、漸増形ロストモーションという特異なロス
トモーションが発生する場合がある。通常のロストモー
ションが移動方向反転時にステップ的に発生するのに対
し、移動方向反転後の移動に伴って徐々に発生するとい
う特徴がある。この現象はワイパーシール,パッキンシ
ールおよびリニアボールガイドを用いた場合に顕著に見
られる。
【0017】羽山定治、伊東正頼、大岳信久、藤田純、
黒川哲郎、垣野義昭「NC工作機械送り駆動系における
漸増型ロストモーションの生成機構とその補正に関する
研究」精密工学会誌、62,2(1996)247〜2
51ページ、は漸増型ロストモーションについて研究し
たものであるが、特公平7−71781ともども、象限
突起と漸増型ロストモーションを区別することができ
ず、送り速度が速くなったり、ゲインが小さくなって象
限突起誤差が変化すると、漸増型ロストモーションを正
確に補正することができなかった。
【0018】図9はゲインが高い場合の象限切り替え時
の運動誤差を表すグラフであり、また、図10はゲイン
が小さい場合の象限切り替え時の運動誤差を表すグラフ
である。これらのグラフにおいて、これらのグラフを比
較しても象限突起の大きさが異なり、漸増型ロストモー
ション量も特定しがたい。a,b,c,Aに特異点が認
められるが、A点が象限突起である。
【0019】本願発明は以上のような問題を解決するた
めになされたもので、漸増型ロストモーションを正確に
補正し、象限突起の大きさが変化しても補正することの
できる数値制御工作機械の送り機構の補正方法および数
値制御工作機械を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】本発明にかかる数値制御
工作機械の送り機構の補正装置によれば、ワークを搭載
するテーブルを駆動するサーボモータと、位置指令値に
対してサーボモータの回転検出により得られた前記テー
ブルの位置をフィードバックするとともに、位置指令値
から得られた速度指令値に対して前記テーブル位置から
得られたテーブル速度をフィードバックし、その結果を
トルク指令値、さらには電流指令値に変換して前記サー
ボモータに供給する制御部と、前記トルク指令値の波形
から象限切換に伴うトルクの変化点を検出してこの変化
点間の時間t01、t02を求めるトルク解析部と、理
論式に基づいて前記トルク解析部の出力から漸増型ロス
トモーションによるテーブル位置誤差を求め、これを用
いてテーブル位置に対する補正値を求める補正量演算部
と、を備えたことを特徴とする。
【0021】前記補正量演算部は、前記理論式として、
【数4】 ただし、 ω:角速度(rad/sec)、 r:半径(m)、 Fkmax:ガイドの最大摩擦力(N)、 Dkmax:ガイドが最大摩擦力に達したときの変位量
(m)、 Dk0:摩擦力が0になったときに残存する変位量
(m)、 Fk1:ガイドの非線形ばね特性の剛性が変化する摩擦
力(N)、 Dk1:ガイドの非線形ばね特性の剛性が変化する変位
量(m)、, Kk1:ガイドの非線形ばねの剛性が高い部分の剛性値
(N/m)、 Kk2:ガイドの非線形ばねの剛性が低い部分の剛性値
(N/m)、 Dk2:剛性が低い部分の傾きを延長して力が0となる
ときの変位量(m)とし、かつ Kk1=(Fkmax
+Fk1)/(Dkmax−Dk1) Kk2=(Fkmax−Fk1)/(Dkmax+D
k1) Dk0=Dk1+Fk1/Kk1k2=Dk1+Fk1/Kk2r0=Gr、 を用い、X軸,Y軸の位置指令値x(t),y
(t)はそれぞれ
【数5】 と表されるとの条件の下で求められ、t01、t02
式(1)、(2)により求められるものであると良い。
【0022】この装置では送りトルク波形、実軌跡波形
をもとに理論式の係数を逆算して、理論式にもとづい
て、象限突起誤差を除いて漸増型ロストモーションによ
る位置誤差を算出し、この位置誤差をもとに補正を行う
ようにしている。したがって、象限突起の大きさが変化
してもそれに伴う象限突起誤差を除いて漸増型ロストモ
ーションのみで解析し、補正することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実
施の形態のいくつかを詳細に説明する。
【0024】(実施の形態1)図1に本発明にかかる数
値制御工作機械の送り機構の補正装置の実施の一形態を
示す。
【0025】ベッド1上にブラケット2,3によりそれ
ぞれベアリング4,5が支持されており、このベアリン
グはボールねじ6を回転自在に支持している。このボー
ルねじ6にはボールねじナット7が係合されている。
【0026】ガイド8の上にはテーブル9が摺動自在に
載置され、このテーブルの下面にはボールねじナット7
が固着されている。
【0027】一方、ボールねじ6はカップリング10に
よってサーボモータ11の軸と連結されているので、サ
ーボモータの回転によりテーブルはガイド上を左右方向
に摺動することになる。
【0028】テーブル9上にはワーク13が載置され、
工作機械の主軸14との位置関係は2個のソケットおよ
びこれに接触する2個のボール間を連結するバーにセン
サが取付けられたダブルボールバー(DBB)15によ
りコンピュータ200を経由して検出される。なお、位
置関係の検出には、その他の送り精度測定器やリニアス
ケール16を用いるようにしてもよい。
【0029】サーボモータ11の軸にはロータリエンコ
ーダ12が連結されており、このロータリエンコーダ1
2の出力信号はブロック20でテーブル位置座標へ変換
されて位置フィードバック値とされ、さらにブロック3
0で微分されて速度フィードバック値としてゲインブロ
ック50に与えられる。ここでトルク指令値に変換さ
れ、さらにブロック60で電流指令値に変換され、次の
ブロック70で電流増幅されて再びサーボモータに与え
られる。
【0030】一方、トルク指令値はトルク解析部80に
も供給されており、このトルク解析部80で解析されて
補正量演算部90に与えられ、また、位置検出器15で
検出された主軸とテーブルの位置関係は位置解析部10
0で解析されて補正量演算部90に与えられる。
【0031】補正量演算部90で演算された補正量は位
置フィードバック値を減算し、この減算された位置フィ
ードバック値は位置指令値を減算し、この減算された位
置指令値がブロック40で角速度を乗算されることによ
り速度指令値が得られる。この速度指令値に対しては前
述した速度フィードバック値が減算される。
【0032】これらの構成のうち、トルク解析部80
は、ブロック50の出力であるトルク指令値(トルク波
形)を検出し、その波形の変曲点から図2のa,b,
c,Aの各時点を検出する。
【0033】一方、テーブル上のワークの位置は位置検
出器でモニタされており、トルク解析部からの特異点の
時点に基づいて図2のa,b,c,Aの各点の位置も特
定される。これらのうち、Aは象限突起である。
【0034】補正量演算部はこれらトルク解析部および
位置解析部の出力に基づき、漸増型ロストモーションの
量を演算し、補正量を算出する。
【0035】xy平面の円弧補間を実施する場合を例に
とって説明すると、トルク検出部では象限切替え時のト
ルクを検出し、微分により、各ピークを求め、このピー
クをそれぞれ図2のa,b,c,Aとする。ab間、a
c間の時間t01、t02それぞれを求め、次の式に代
入する。
【0036】
【数6】 ここで、 ω:角速度(rad/sec)、 r:半径(m)、 Fkmax:ガイドの最大摩擦力(N)、 Dkmax:ガイドが最大摩擦力に達したときの変位量
(m)、 Dk0:摩擦力が0になったときに残存する変位量
(m)、 Fk1:ガイドの非線形ばね特性の剛性が変化する摩擦
力(N)、 Dk1:ガイドの非線形ばね特性の剛性が変化する変位
量(m)、 Kk1:ガイドの非線形ばねの剛性が高い部分の剛性値
(N/m)、 Kk2:ガイドの非線形ばねの剛性が低い部分の剛性値
(N/m)、 Dk2:剛性が低い部分の傾きを延長して力が0となる
ときの変位量(m)、 かつ Kk1=(Fkmax+Fk1)/(Dkmax
−Dk1) Kk2=(Fkmax−Fk1)/(Dkmax+D
k1) Dk0=Dk1+Fk1/Kk1k2=Dk1+Fk1/Kk2 の関係があり、 Yr0=Gr、 であり、X軸,Y軸の位置指令値x(t),y
(t)はそれぞれ
【数7】 と表される。前述の式(1)(2)はリニアボールガイ
ドを用いた場合を想定し、漸増形ロストモーションの発
生メカニズムの解析を行った結果得られたものである。
これは転がりガイドではボールあるいはローラが転がり
だす前に非線形ばね特性を示し、この特性が漸増形ロス
トモーションの発生の原因になっていると考えられるた
めである。
【0037】この導出過程においては以下の仮定を行い
簡略化している。 (1)漸増形ロストモーションは、移動速度が遅いとき
に顕著に現れる。従って、比較的遅い動きを考え、移動
物に対する慣性力の影響を無視する。これにより、テー
ブルの質量を無視する。 (2)サーボの剛性が十分高い場合を考え、ボールねじ
の回転に対する負荷の反力の影響を無視する。 (3)移動方向反転時に回転系の摩擦の影響により停止
している場合以外は、サーボ系の特性をカットオフ周波
数ωの一次遅れで近似する。 (4)周波数の低い領域の特性に影響を与えない、一次
遅れフィルタの特性を無視する。 (5)リニアボールガイドのばね特性を図7の平行四辺
形で近似する。 (6)回転系の摩擦は無視する。
【0038】前述した値および条件を式(1)(2)の
かっこ内の分子中の P=−Dkmax+Dk1−(Fkmax+Fk1)/K ={sin(ωt01−π/2)−Gr}Gr 式(4) Q=−2(Fkmax+Dkmax)/K ={sin(ωt02−π/2)−Gr}Gr 式(5) に代入することにより定数P,Qが求まる。
【0039】これにより、円弧半径rや位置ループゲイ
ンω0が変化しても、t01、t を式(1)、
(2)より求めることが可能である。
【0040】ここで、摩擦力F(t)と、ボールねじ
位置y(t)から、次式よりテーブル位置が求められ
る。
【0041】
【数8】 この式(6)と X(t)=X(t) 式(7) からテーブルの円弧運動を求め、Y軸+側の象限切り替
え部の円弧半径誤差を求める。この結果が図3に示され
る。なお、Kは送り駆動機構の剛性であり、後述するよ
うに計算、もしくは実測が可能である。
【0042】式(6)の結果をもとにy軸位置の補正が
行われる。
【0043】この補正量の決定に際しては、必ずしも式
(6)(7)を用いることなく、式(1)〜(5)によ
って、t01、t02が求まれば、(スケールフィード
バックや送り精度測定器を)位置検出器を用いて、t
01、t02の誤差をもとに補正量を決めることも可能
である。
【0044】以上のように、送り速度やゲイン、円弧半
径が変化してもy軸の位置誤差を求めることができる。
【0045】なお、トルク波形からt01、t02を求
める際に、組み立て段階でボールネジ単体のトルクを測
定し、これを図2の波形から差分するようにすると、図
3でAにより示される象限突起の影響が取り除かれ、t
01、t02がより求めやすくなる。
【0046】図4は象限突起の影響を除いた様子を示す
グラフである。
【0047】これに基づいて誤差を計算した結果を図5
に示す。象限突起の影響が除去されているため、漸増型
ロストモーションを十分に補正して送り駆動系の精度を
向上させることができる。
【0048】なお、上述した実施の形態では補正量演算
部に位置解析部の出力も供給してトルク波形の変化に対
応した位置を正確に求めるようにしたが、図8に示すよ
うに、位置測定器および位置解析部を設けず、トルク解
析部80からの出力のみを用いても演算処理が速い場合
には位置の誤差は僅少であり、補正値としては十分に使
用可能である。
【0049】(実施の形態2)式(4)、(5)を求め
るために、P,QのパラメータDkmax、Dk1、F
kmax、Fk1を実測で求めることが可能である。
【0050】例えば、テーブルを組み立てる際にボール
ネジをサドルに取り付ける前にリニアボールガイドの非
線形ばね特性を測定し、近似することができる。
【0051】あるいはテーブルをリニアボールガイドが
転がりださないところまで力を加え、この時の力をロー
ドセルなど力測定機で測定し、テーブルの変位を変位計
で測定する。力を戻して、この時の力と変位の関係を測
定する。この結果は図6に示す。
【0052】これをもとに各パラメータを図7のように
求める。この図では縦軸をガイドの摩擦力(N)、横軸
を変位(m)としており、まずガイドの最大摩擦力(F
km ax)とガイドが最大摩擦力に達したときの(変位
量Dkmax)から の点をプロットし、ガイドの非
線形ばね特性の剛性が変化する摩擦力(Fk1)とガイ
ドの非線形ばね特性の剛性が変化する変位量(Dk1
からの点がプロットされる。そして、 の原点に対
して点対称な点としての点をプロットすると、 と
を結ぶ線の傾きが,Kk1で有り、とを結ぶ線の
傾きがKk2である。これらの線と座標軸の交点、各点
の軸上の投影点が図7に示されるようなパラメータとな
る。
【0053】これらのパラメータは、式(4)、(5)
に代入することにより補正量が求められる。
【0054】これに替えて、ハンマリング測定などで、
固有振動数を測定し、各パラメータを求めることもでき
る。
【0055】(実施の形態3)以上の実施例においては
すべてのパラメータを実測するようにしているが、パラ
メータのうち、Dkmax、Dk1、Fkmax、F
k1については設計段階で計算により求めることができ
る。すなわち、非線形ばね要素については玉の数、玉の
大きさ、材質、予圧から弾性たわみの式で求めることが
できる。
【0056】このようにして計算により得られたトルク
は図4に示すものと同様となる。
【0057】そして、このように計算で得られた値を用
いて象限突起を除いた誤差を計算した結果は図5に示す
ものと同様になる。したがって、象限突起による誤差を
除いて漸増型ロストモーションのみで解析が可能とな
る。
【0058】
【発明の効果】本発明によれば、象限突起の影響をなく
した上で漸増型ロストモーションを理論式に基づいて補
正しているため、より正確な補正が可能になり、特にリ
ニアボールガイドを用いた送り駆動系の輪郭精度を向上
させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるNC装置を説明するブロック図
である。
【図2】トルクの計算結果を示すグラフである。
【図3】本発明の式による象限切替え時の運動誤差の計
算結果を示すグラフである。
【図4】象限突起の影響をなくすようになされたトルク
計算結果を示すグラフである。
【図5】象限突起の影響をなくし、本発明の式により得
られた漸増型ロストモーションの計算結果を示すグラフ
である。
【図6】パラメータを実測で求める場合の力と変位の関
係の測定結果を示すグラフである。
【図7】各パラメータの求め方を示す説明図である。
【図8】図1の変形例にかかるNC装置を説明するブロ
ック図である。
【図9】ゲインが大きい場合の象限切替え時の運動誤差
の実測データを示すグラフである。
【図10】ゲインが小さい場合の象限切替え時の運動誤
差の実測データを示すグラフである。
【符号の説明】
1 ベッド 2、3 ブラケット 4、5 ベアリング 6 ボールねじ 7 ボールねじナット 8 ガイド 9 テーブル 10 カップリング 11 サーボモータ 12 ロータリエンコーダ 13 ワーク 14 主軸 15 位置測定器 20 テーブル位置座標への変換器 30 微分器 40 角速度乗算器 50 ゲイン乗算器 60 変換器 70 アンプ 80 トルク解析部 90 補正量演算部 100 位置解析部 200 コンピュータ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 斯 波 和 広 静岡県沼津市大岡2068の3 東芝機械株式 会社内 Fターム(参考) 2F078 CA03 CA08 CB02 CB03 CB05 CB12 CC03 CC07 CC15 3C001 KA01 TA05 TB01 TB06 TB11 TC03 5H269 AB01 BB03 CC01 EE01 EE06 GG01 GG06 NN07 5H303 AA01 BB01 BB06 BB11 CC09 DD01 DD25 EE03 HH05 JJ02 JJ10 KK02 KK17 KK19 KK23

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ワークを搭載するテーブルあるいは工具を
    搭載する主軸等を駆動するサーボモータと、 位置指令値に対してサーボモータの回転検出により得ら
    れた前記テーブルの位置をフィードバックするととも
    に、位置指令値から得られた速度指令値に対して前記テ
    ーブル位置から得られたテーブル速度をフィードバック
    し、その結果をトルク指令値、さらには電流指令値に変
    換して前記サーボモータに供給する制御部と、 前記トルク指令値の波形から象限切換に伴うトルクの変
    化点を検出してこの変化点間の時間t01、t02を求
    めるトルク解析部と、 理論式に基づいて前記トルク解析部の出力から漸増型ロ
    ストモーションによるテーブル位置誤差を求め、これを
    用いてテーブル位置に対する補正値を求める補正量演算
    部と、 を備えた数値制御工作機械の送り機構の補正装置。
  2. 【請求項2】前記補正量演算部は、 前記理論式として、 【数1】 ここで、 ω:角速度(rad/sec)、 r:半径(m)、 Fkmax:ガイドの最大摩擦力(N)、 Dkmax:ガイドが最大摩擦力に達したときの変位量
    (m)、 Dk0:摩擦力が0になったときに残存する変位量
    (m)、 Fk1:ガイドの非線形ばね特性の剛性が変化する摩擦
    力(N)、 Dk1:ガイドの非線形ばね特性の剛性が変化する変位
    量(m)、, Kk1:ガイドの非線形ばねの剛性が高い部分の剛性値
    (N/m)、 Kk2:ガイドの非線形ばねの剛性が低い部分の剛性値
    (N/m)、 Dk2:剛性が低い部分の傾きを延長して力が0となる
    ときの変位量(m)とし、かつ Kk1=(Fkmax
    +Fk1)/(Dkmax−Dk1) Kk2=(Fkmax−Fk1)/(Dkmax+D
    k1) Dk0=Dk1+Fk1/Kk1k2=Dk1+Fk1/Kk2r0=Gr、 を用い、X軸,Y軸の位置指令値x(t),y
    (t)はそれぞれ 【数2】 と表されるとの条件の下で式(1)(2)のかっこ内の
    分子中の P=−Dkmax+Dk1−(Fkmax+Fk1)/K ={sin(ωt01−π/2)−Gr}Gr 式(4) Q=−2(Fkmax+Dkmax)/K ={sin(ωt02−π/2)−Gr}Gr 式(5) に代入することにより定数A,Bを求め、そして
    01、t02を式(1)、(2)により求め、摩擦力
    (t)と、ボールねじ位置y(t)から、 【数3】 によりテーブル位置に対する補正値を求めるものである
    ことを特徴とする請求項1に記載の数値制御工作機械の
    送り機構の補正装置。
  3. 【請求項3】前記理論式に代入される要素のうちの一部
    はリニアボールガイドの非線形ばね要素の実測あるいは
    計算により求められるものであることを特徴とする請求
    項2に記載の数値制御工作機械の送り装置の補正装置。
  4. 【請求項4】請求項1ないし3のいずれかに記載の送り
    機構の補正装置を含む数値制御工作機械。
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