JP2002022560A5 - - Google Patents
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Description
【書類名】 明細書
【発明の名称】 可撓性圧電素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】 高分子母材中に圧電セラミック粉体を混入した平板状複合圧電体と、前記平板状複合圧電体の両面に密着して配置された可撓性電極とからなり、前記両可撓性電極に接続された振動電圧検出手段と、前記可撓性電極の少なくとも一方に接続された抵抗検出手段とからなる可撓性圧電素子。
【請求項2】 抵抗検出手段に可撓性電極の抵抗温度特性に基づいて抵抗値を温度に換算する温度換算手段を接続してなる請求項1記載の可撓性圧電素子。
【請求項3】 高分子母材が塩素化ポリエチレンである請求項1記載の可撓性圧電素子。
【請求項4】 圧電セラミック粉体がチタン酸鉛とジルコン酸鉛の固溶体である請求項1記載の可撓性圧電素子。
【請求項5】 圧電セラミック粉体がチタン酸鉛である請求項1記載の可撓性圧電素子。
【請求項6】 平板状可撓性電極が電極用高分子材と導電性粒子とからなる複合導電体である請求項1記載の可撓性圧電素子。
【請求項7】 電極用高分子材が高分子母材と同質材料である請求項6記載の可撓性圧電素子。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、可撓性圧電素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、可撓性圧電素子としては、図4に示すように高分子母材1と圧電セラミック粉体2とを混合しシート状に成形後、この複合圧電シート3表面に電極12を設ける。この際、電極としては分極処理によって付与された圧電特性や高分子母材1の耐熱性等を考慮して一般に銅、アルミニウム、金等の金属蒸着あるいは接着剤により貼付した金属の箔電極が用いられている。
【0003】
また、特開平5−102548号公報では、平板状複合圧電体3に金属を溶射した溶射電極を用いた可撓性圧電素子が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記の可撓性圧電素子は信頼性や感度、及び複雑な製造工程を有するという課題を有していた。すなわち、蒸着電極では一般に設けられる電極の厚みが0.02〜0.1μmと程度と非常に薄いため平板状複合圧電体が撓んだ場合に電極内に亀裂が生じてしまい感度が低下あるいは、出力が得られないという課題があった。
【0005】
また、金属箔電極は、一般に6〜100μm程度の厚さの金属箔を、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等からなる5〜40μm程度の接着剤を介して、平板状複合圧電体に貼付される。しかし、この金属箔電極は、特に平板状複合圧電体両面に設けた場合、複合圧電体の可撓性という重量な長所を損ない、感度が低いという課題があった。
【0006】
また、溶射電極の場合は複合圧電体の耐熱性のため、容易に溶射成形できるのは低沸点の金属のみであり、用いられる電極材料が制限されるという課題があると同時に、溶射時に平板状複合圧電体にエアー圧等の負荷が印加されるため、平板状複合圧電体の信頼性に課題があった。
【0007】
さらに、従来の平板状の可撓性圧電素子では時間的に変化する圧力を検出できるが、温度を検出できないという課題を有していた。前記平板状複合圧電体3をもちいた場合でも、その最高使用温度は80〜120℃程度である。この平板状可撓性圧電体3が最高使用温度以上に放置される環境になった場合、その圧電性能が劣化する。従って、平板状複合圧電体3の使用にあたっては十分な温度管理画筆用である。この点、従来の可撓性圧電素子では、温度センサを別途に準備する必要がある。しかし、構成が複雑になる、温度センサで検出される温度は必ずしも可撓性複合圧電体3の温度と一致しない、の課題があった。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、高分子中母材に圧電セラミック粉体を混入した平板状複合圧電体と、前記平板状複合圧電体の両面に密着して配置された可撓性電極とからなり、前記両可撓性電極に接続された振動電圧検出手段と、前記可撓性電極の少なくとも一方に接続された抵抗検出手段とからなる可撓性圧電素子である。
【0009】
上記発明によれば、平板状複合圧電体に圧力が印加されたとき、前記平板状複合圧電体両面に配置された可撓性電極間に発生する平板状複合圧電体の振動電圧を検出することにより圧力検知をする。
【0010】
また、2つの可撓性電極の少なくとも一方に接続された抵抗検出手段で、可撓性電極の抵抗温度特性に基づいて抵抗値の温度依存性を測定して可撓性複合圧電体の温度を検出することができる。従って、温度センサを特別に準備する必要がない。このため、温度検出も可能な可撓性圧電素子を簡単な構成で実現できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
上記課題を解決するために請求項1記載の発明は、高分子母材中に圧電セラミック粉体を混入した平板状複合圧電体と、前記平板状複合圧電体の両面に密着して配置された可撓性電極とからなり、前記両可撓性電極に接続された振動電圧検出手段と、可撓性電極の少なくともどちらか一方に接続された抵抗検出手段とからなる可撓性圧電素子である。前記可撓性電極と前記平板状複合圧電体が密着する構成であるので可撓性が向上すると同時に、抵抗検出手段により可撓性電極の抵抗が検出できるので、可撓性電極で挟持されている平板状複合圧電体の平均温度を可撓性電極抵抗の温度依存性に基づいて検出できる。従って、温度センサを別に準備する必要がないので簡素な構成で圧力と温度の両者を検知できる可撓性圧電素子を提供できる。
【0012】
請求項2記載の発明は、抵抗検出手段に可撓性電極の抵抗温度特性に基づいて抵抗値を温度に換算する温度換算手段を接続してなる可撓性圧電素子である。
【0013】
抵抗検出手段により検出された抵抗値は、温度換算手段により温度に換算されるので容易に温度を直読できる。
【0014】
請求項3記載の発明は、高分子母材を塩素化ポリエチレンで構成した可撓性圧電素子である。塩素化ポリエチレンは優れた耐熱性と優れた可撓性を有するのでこれらの特性を兼ね備えた平板状複合圧電体が得られる。
【0015】
請求項4記載の発明は、圧電セラミック粉体をチタン酸鉛とジルコン酸鉛の固溶体で構成した可撓性圧電素子である。チタン酸鉛とジルコン酸鉛の固溶体の圧電セラミック粉体は工業的に多量に利用されているので、安価であり、入手も容易であるため、高感度で安価な可撓性圧電素子が提供できる。
【0016】
請求項5の発明は、圧電セラミック粉体をチタン酸鉛で構成した可撓性圧電素子である。チタン酸鉛の誘電率は、チタン酸鉛とジルコン酸鉛の固溶体の誘電率よりも小さいので、圧電セラミック粉体の誘電率を小さくできるため、分極処理が容易になり、簡単に高感度な可撓性圧電素子が提供できる。
【0017】
請求項6の発明は、可撓性電極が電極用高分子材と導電性粒子とからなる複合導電体で構成した可撓性圧電素子である。導電性粒子の接触を通して複合導電体の導電性が確保される。また、電極用高分子自身の可撓性を通して複合導電体の可撓性が確保される。また、複合導電体電極の電極用高分子と、平板状複合圧電体中の高分子母材の軟化温度を適切に選択することにより、容易に熱圧着で接着できる。
【0018】
請求項7の発明は、電極用高分子が高分子母材と同質材料で構成した可撓性圧電素子である。電極用高分子が高分子母材と同質材料であるので、電極を平板状複合圧電体に容易に強固接着でき、信頼性が向上する。
【0019】
【実施例】
以下、本説明の実施例について図面を用いて説明する。
【0020】
(実施例1)
図1は本発明の実施例1における可撓性圧電素子の断面図である。この可撓性圧電素子は高分子母材1中に圧電セラミック粉体2を、オープンロール装置で混合して均一に分散させた後、熱プレス装置により平板金型で厚さ0.5mmのシートに成形して、複合圧電体3を得た。この平板状複合圧電体3の両面に平板状金型を使用して熱プレスにより、平板状複合圧電体3と可撓性電極4と可撓性電極5をそれぞれ熱圧着した。
【0021】
次に圧電特性を付与するために、可撓性電極4と5の間に直流高電圧を印加して圧電セラミック粉体2を分極し、可撓性圧電素子を構成した。
【0022】
以上の可撓性圧電素子構成の中で、高分子母材1に塩素化ポリエチレン、圧電セラミック粉体2にチタン酸ジルコン酸鉛を用いた。高分子母材1としてエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、クロロプレン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂などが用いられるが、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂の耐熱性は(60〜80℃)程度であるのに対し、塩素化ポリエチレンは、120℃の高耐熱を有する点で優れている。
【0023】
また、塩素化ポリエチレンは分子量や結晶化度等を適切に選ぶことにより、加硫無しでも上記高耐熱性を実現できる点で有効である。また、塩素化ポリエチレンは可撓性に優れるため、外力による電極剥離等が抑制され、信頼性及び感度が高い。また、圧電セラミック粉体2の材質は、チタン酸鉛とジルコン酸鉛の固溶体であることが望ましい。この組成の圧電セラミックは電子部品用セラミックとして工業的に多量に実用されているので、安価であり入手も容易である。
【0024】
また、チタン酸鉛とジルコン酸鉛の固溶体以外にも圧電セラミック粉体2の材質としてチタン酸鉛も好ましい。チタン酸鉛とジルコン酸鉛の固溶体の比誘電率はおよそ(800〜3000)程度の大きな値であるが、チタン酸鉛の比誘電率は(200〜300)程度の小さな値である。この場合、圧電セラミック粉体2と可撓性電極4、5の間に高分子母材1に起因する静電容量は、圧電セラミック粉体2に起因する静電容量と同程度にできる。従って、圧電セラミック粉体の分極が容易にできる。
【0025】
可撓性圧電素子の一部あるいは全面に時間的に変化する圧力が印加されたときその部分の圧電素子に生じる加速度に応じた振動電圧が可撓性電極4及び5間に誘起される。この振動電圧は振動電圧検出手段6により検出される。この振動電圧を用いて、時間的に変化する圧力を検知する。
【0026】
他方、可撓性電極4及び5は、平板状複合圧電体3に密着して構成されているので、可撓性電極4及び5の温度は殆ど平板状複合圧電体3の温度に等しい。可撓性電極4、5は、その構成材料特有の抵抗温度特性を示すので、検出された抵抗から温度を求めることができる。検出された抵抗から温度を求めるには、抵抗温度特性を参照する必要がある。しかし、その都度参照する事は煩雑な作業であるので、図1に示すように抵抗温度特性に基づき抵抗を温度に換算する温度換算手段8を抵抗検出手段7に接続することが望ましい。これにより温度を直読できる。
【0027】
このように図1に示した実施例1の構成は、温度と圧力を同時に検出することができる。
【0028】
(実施例2)
図2は本発明実施例2の可撓性圧電素子の構成図である。
【0029】
可撓性電極4および可撓性電極5の構成材料として、複合導電体11を用いた。この複合導電体11は、電極用高分子9と導電性粒子10とから構成される。このとき、導電性粒子10は電極用高分子9中に網目状に相互に接触して配列され、これらの接触を通して複合導電体11の導電性が確保される。
【0030】
また、電極用高分子9により、それ自身の可撓性を通して複合導電体11の可撓性が確保される。このため、電極に金属箔電極を張り付けた構成の圧電素子よりも高い可撓性が得られる。電極用高分子9として、高分子母材1と同様、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、クロロプレン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂などが用いられる。
【0031】
また、導電性粒子10として、カーボン粒子や銀粒子が用いられる。銀粒子を用いた場合、複合導電体電極7の比抵抗は5×10−3Ω・cm程度の小さな値を示すが、カーボン粒子を用いた場合、同比抵抗値は約1桁以上の大きな値を示す。この圧電素子を人体検知に用いた場合の周波数範囲は約5Hz程度であるので、この時の平板状複合圧電体3のインピーダンスは約100kΩ以上であり、両可撓性電極4、5の比抵抗値は1kΩ以下程度で充分であるので、導電性粒子10として低価格のカーボン粒子を用いることが有効である。
【0032】
ここでは、カーボン粒子として導電性カーボンブラック粉体(商品名:ケッチェンブラックEC製造元:ケッチェン・ブラック・インターナショナル株式会社)を用いた。
【0033】
高分子母材1と電極用高分子9は同質材料で形成することが望ましい。
【0034】
これは、熱によって接着する場合、同質材料同志が容易に接着しやすいため、接着強度が高く接着剤等を使用しないため信頼性も高い。この時、高分子母材1と電極用高分子9に塩素化ポリエチレンを使用することが望ましい。これは、平板状複合圧電体3の高分子母材1で述べたように、塩素化ポリエチレンは可撓性に優れるため、感度も高い上、耐熱性も優れているため、信頼性も高い。
【0035】
図2に示す実施例2の平板状複合圧電体3は高分子母材1に塩素化ポリエチレンを用い、圧電セラミック粉体2にチタン酸ジルコン酸鉛粉体を用いて、オープンロール装置で混練り後、熱圧縮装置で幅10mm×長さ75mm×厚み0.5mmの大きさに成形した。また、可撓性電極4及び5の複合導電体11は塩素化ポリエチレンに対してケッチェンブラックECを10重量%添加してオープンロール装置で混練り後、熱圧縮装置で幅10mm×長さ75mm×厚み0.3mmの大きさに成形し、前記作成の平板状複合圧電体3両面に熱圧着して可撓性圧電素子を得た。
【0036】
複合導電体11からなる可撓性電極4または5の直流抵抗温度特性を図3に示す。図3から、約6900ppm/度の高い抵抗温度係数を示す。従って、抵抗検出手段7による抵抗検出と、この抵抗温度特性に基づいて可撓性電極4または5に挟持された平板状複合圧電体3の温度を温度換算手段8を用いて算出することが容易である。実用状態で、可撓性圧電素子が一定の温度以上になった場合に素子を保護するために、警報手段で知らせるということが可能である。
【0037】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、請求項1記載の発明によれば、可撓性電極と前記平板状複合圧電体が密着する構成であるので可撓性が向上すると同時に、抵抗検出手段により可撓性電極の抵抗が検出できるので、可撓性電極で挟持されている平板状複合圧電体の平均温度を可撓性電極抵抗の温度依存性に基づいて検出できる。従って、温度センサを別に準備する必要がないので簡素な構成で圧力と温度の両者を検知できる可撓性圧電素子を提供できる。
【0038】
また、請求項2記載の発明によれば、抵抗検出手段に可撓性電極の抵抗温度特性に基づいて抵抗値を温度に換算する温度換算手段を接続してなる可撓性圧電素子であるので、抵抗検出手段により検出された抵抗値は、温度換算手段により温度に換算されて容易に温度を直読できる。
【0039】
また、請求項3記載の発明によれば、高分子母材を塩素化ポリエチレンで構成したので、優れた耐熱性と優れた可撓性を兼ね備えた平板状複合圧電体が得られる。
【0040】
また、請求項4記載の発明によれば、圧電セラミック粉体としてチタン酸鉛とジルコン酸鉛の固溶体を用いているので、安価であり、入手も容易であるため、高感度で安価な可撓性圧電素子が提供できる。
【0041】
また、請求項5記載の発明によれば、圧電セラミック粉体としてをチタン酸鉛を用いているので、圧電セラミック粉体の誘電率を小さくできるため、分極処理が容易になる。
【0042】
また、請求項6記載の発明によれば、可撓性圧電素子の電極を電極用高分子と導電性粒子とからなる複合導電体で構成したため、電極用高分子自身の可撓性を通して複合導電体の可撓性が確保されるとともに、容易に熱プレス等の熱溶着により接着できる。
【0043】
また、請求項7記載の発明によれば、電極用高分子と高分子母材とを同質材料で構成したので、電極を平板状複合圧電体に容易に強固接着でき、信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の実施例1における振動電圧検出手段と温度検出手段に接続された可撓性圧電素子の断面図
【図2】
本発明の実施例2における可撓性電極の断面図
【図3】
本発明の抵抗値温度特性の一例を示す特性図
【図4】
従来の可撓性圧電素子の断面図
【符号の説明】
1 高分子母材
2 圧電セラミック粉体
3 平板状複合圧電体
4 5 可撓性電極
6 振動電圧検出手段
7 抵抗検出手段
8 温度換算手段
9 電極用高分子
10 導電性粒子
11 複合導電体
【発明の名称】 可撓性圧電素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】 高分子母材中に圧電セラミック粉体を混入した平板状複合圧電体と、前記平板状複合圧電体の両面に密着して配置された可撓性電極とからなり、前記両可撓性電極に接続された振動電圧検出手段と、前記可撓性電極の少なくとも一方に接続された抵抗検出手段とからなる可撓性圧電素子。
【請求項2】 抵抗検出手段に可撓性電極の抵抗温度特性に基づいて抵抗値を温度に換算する温度換算手段を接続してなる請求項1記載の可撓性圧電素子。
【請求項3】 高分子母材が塩素化ポリエチレンである請求項1記載の可撓性圧電素子。
【請求項4】 圧電セラミック粉体がチタン酸鉛とジルコン酸鉛の固溶体である請求項1記載の可撓性圧電素子。
【請求項5】 圧電セラミック粉体がチタン酸鉛である請求項1記載の可撓性圧電素子。
【請求項6】 平板状可撓性電極が電極用高分子材と導電性粒子とからなる複合導電体である請求項1記載の可撓性圧電素子。
【請求項7】 電極用高分子材が高分子母材と同質材料である請求項6記載の可撓性圧電素子。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、可撓性圧電素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、可撓性圧電素子としては、図4に示すように高分子母材1と圧電セラミック粉体2とを混合しシート状に成形後、この複合圧電シート3表面に電極12を設ける。この際、電極としては分極処理によって付与された圧電特性や高分子母材1の耐熱性等を考慮して一般に銅、アルミニウム、金等の金属蒸着あるいは接着剤により貼付した金属の箔電極が用いられている。
【0003】
また、特開平5−102548号公報では、平板状複合圧電体3に金属を溶射した溶射電極を用いた可撓性圧電素子が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記の可撓性圧電素子は信頼性や感度、及び複雑な製造工程を有するという課題を有していた。すなわち、蒸着電極では一般に設けられる電極の厚みが0.02〜0.1μmと程度と非常に薄いため平板状複合圧電体が撓んだ場合に電極内に亀裂が生じてしまい感度が低下あるいは、出力が得られないという課題があった。
【0005】
また、金属箔電極は、一般に6〜100μm程度の厚さの金属箔を、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等からなる5〜40μm程度の接着剤を介して、平板状複合圧電体に貼付される。しかし、この金属箔電極は、特に平板状複合圧電体両面に設けた場合、複合圧電体の可撓性という重量な長所を損ない、感度が低いという課題があった。
【0006】
また、溶射電極の場合は複合圧電体の耐熱性のため、容易に溶射成形できるのは低沸点の金属のみであり、用いられる電極材料が制限されるという課題があると同時に、溶射時に平板状複合圧電体にエアー圧等の負荷が印加されるため、平板状複合圧電体の信頼性に課題があった。
【0007】
さらに、従来の平板状の可撓性圧電素子では時間的に変化する圧力を検出できるが、温度を検出できないという課題を有していた。前記平板状複合圧電体3をもちいた場合でも、その最高使用温度は80〜120℃程度である。この平板状可撓性圧電体3が最高使用温度以上に放置される環境になった場合、その圧電性能が劣化する。従って、平板状複合圧電体3の使用にあたっては十分な温度管理画筆用である。この点、従来の可撓性圧電素子では、温度センサを別途に準備する必要がある。しかし、構成が複雑になる、温度センサで検出される温度は必ずしも可撓性複合圧電体3の温度と一致しない、の課題があった。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、高分子中母材に圧電セラミック粉体を混入した平板状複合圧電体と、前記平板状複合圧電体の両面に密着して配置された可撓性電極とからなり、前記両可撓性電極に接続された振動電圧検出手段と、前記可撓性電極の少なくとも一方に接続された抵抗検出手段とからなる可撓性圧電素子である。
【0009】
上記発明によれば、平板状複合圧電体に圧力が印加されたとき、前記平板状複合圧電体両面に配置された可撓性電極間に発生する平板状複合圧電体の振動電圧を検出することにより圧力検知をする。
【0010】
また、2つの可撓性電極の少なくとも一方に接続された抵抗検出手段で、可撓性電極の抵抗温度特性に基づいて抵抗値の温度依存性を測定して可撓性複合圧電体の温度を検出することができる。従って、温度センサを特別に準備する必要がない。このため、温度検出も可能な可撓性圧電素子を簡単な構成で実現できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
上記課題を解決するために請求項1記載の発明は、高分子母材中に圧電セラミック粉体を混入した平板状複合圧電体と、前記平板状複合圧電体の両面に密着して配置された可撓性電極とからなり、前記両可撓性電極に接続された振動電圧検出手段と、可撓性電極の少なくともどちらか一方に接続された抵抗検出手段とからなる可撓性圧電素子である。前記可撓性電極と前記平板状複合圧電体が密着する構成であるので可撓性が向上すると同時に、抵抗検出手段により可撓性電極の抵抗が検出できるので、可撓性電極で挟持されている平板状複合圧電体の平均温度を可撓性電極抵抗の温度依存性に基づいて検出できる。従って、温度センサを別に準備する必要がないので簡素な構成で圧力と温度の両者を検知できる可撓性圧電素子を提供できる。
【0012】
請求項2記載の発明は、抵抗検出手段に可撓性電極の抵抗温度特性に基づいて抵抗値を温度に換算する温度換算手段を接続してなる可撓性圧電素子である。
【0013】
抵抗検出手段により検出された抵抗値は、温度換算手段により温度に換算されるので容易に温度を直読できる。
【0014】
請求項3記載の発明は、高分子母材を塩素化ポリエチレンで構成した可撓性圧電素子である。塩素化ポリエチレンは優れた耐熱性と優れた可撓性を有するのでこれらの特性を兼ね備えた平板状複合圧電体が得られる。
【0015】
請求項4記載の発明は、圧電セラミック粉体をチタン酸鉛とジルコン酸鉛の固溶体で構成した可撓性圧電素子である。チタン酸鉛とジルコン酸鉛の固溶体の圧電セラミック粉体は工業的に多量に利用されているので、安価であり、入手も容易であるため、高感度で安価な可撓性圧電素子が提供できる。
【0016】
請求項5の発明は、圧電セラミック粉体をチタン酸鉛で構成した可撓性圧電素子である。チタン酸鉛の誘電率は、チタン酸鉛とジルコン酸鉛の固溶体の誘電率よりも小さいので、圧電セラミック粉体の誘電率を小さくできるため、分極処理が容易になり、簡単に高感度な可撓性圧電素子が提供できる。
【0017】
請求項6の発明は、可撓性電極が電極用高分子材と導電性粒子とからなる複合導電体で構成した可撓性圧電素子である。導電性粒子の接触を通して複合導電体の導電性が確保される。また、電極用高分子自身の可撓性を通して複合導電体の可撓性が確保される。また、複合導電体電極の電極用高分子と、平板状複合圧電体中の高分子母材の軟化温度を適切に選択することにより、容易に熱圧着で接着できる。
【0018】
請求項7の発明は、電極用高分子が高分子母材と同質材料で構成した可撓性圧電素子である。電極用高分子が高分子母材と同質材料であるので、電極を平板状複合圧電体に容易に強固接着でき、信頼性が向上する。
【0019】
【実施例】
以下、本説明の実施例について図面を用いて説明する。
【0020】
(実施例1)
図1は本発明の実施例1における可撓性圧電素子の断面図である。この可撓性圧電素子は高分子母材1中に圧電セラミック粉体2を、オープンロール装置で混合して均一に分散させた後、熱プレス装置により平板金型で厚さ0.5mmのシートに成形して、複合圧電体3を得た。この平板状複合圧電体3の両面に平板状金型を使用して熱プレスにより、平板状複合圧電体3と可撓性電極4と可撓性電極5をそれぞれ熱圧着した。
【0021】
次に圧電特性を付与するために、可撓性電極4と5の間に直流高電圧を印加して圧電セラミック粉体2を分極し、可撓性圧電素子を構成した。
【0022】
以上の可撓性圧電素子構成の中で、高分子母材1に塩素化ポリエチレン、圧電セラミック粉体2にチタン酸ジルコン酸鉛を用いた。高分子母材1としてエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、クロロプレン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂などが用いられるが、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂の耐熱性は(60〜80℃)程度であるのに対し、塩素化ポリエチレンは、120℃の高耐熱を有する点で優れている。
【0023】
また、塩素化ポリエチレンは分子量や結晶化度等を適切に選ぶことにより、加硫無しでも上記高耐熱性を実現できる点で有効である。また、塩素化ポリエチレンは可撓性に優れるため、外力による電極剥離等が抑制され、信頼性及び感度が高い。また、圧電セラミック粉体2の材質は、チタン酸鉛とジルコン酸鉛の固溶体であることが望ましい。この組成の圧電セラミックは電子部品用セラミックとして工業的に多量に実用されているので、安価であり入手も容易である。
【0024】
また、チタン酸鉛とジルコン酸鉛の固溶体以外にも圧電セラミック粉体2の材質としてチタン酸鉛も好ましい。チタン酸鉛とジルコン酸鉛の固溶体の比誘電率はおよそ(800〜3000)程度の大きな値であるが、チタン酸鉛の比誘電率は(200〜300)程度の小さな値である。この場合、圧電セラミック粉体2と可撓性電極4、5の間に高分子母材1に起因する静電容量は、圧電セラミック粉体2に起因する静電容量と同程度にできる。従って、圧電セラミック粉体の分極が容易にできる。
【0025】
可撓性圧電素子の一部あるいは全面に時間的に変化する圧力が印加されたときその部分の圧電素子に生じる加速度に応じた振動電圧が可撓性電極4及び5間に誘起される。この振動電圧は振動電圧検出手段6により検出される。この振動電圧を用いて、時間的に変化する圧力を検知する。
【0026】
他方、可撓性電極4及び5は、平板状複合圧電体3に密着して構成されているので、可撓性電極4及び5の温度は殆ど平板状複合圧電体3の温度に等しい。可撓性電極4、5は、その構成材料特有の抵抗温度特性を示すので、検出された抵抗から温度を求めることができる。検出された抵抗から温度を求めるには、抵抗温度特性を参照する必要がある。しかし、その都度参照する事は煩雑な作業であるので、図1に示すように抵抗温度特性に基づき抵抗を温度に換算する温度換算手段8を抵抗検出手段7に接続することが望ましい。これにより温度を直読できる。
【0027】
このように図1に示した実施例1の構成は、温度と圧力を同時に検出することができる。
【0028】
(実施例2)
図2は本発明実施例2の可撓性圧電素子の構成図である。
【0029】
可撓性電極4および可撓性電極5の構成材料として、複合導電体11を用いた。この複合導電体11は、電極用高分子9と導電性粒子10とから構成される。このとき、導電性粒子10は電極用高分子9中に網目状に相互に接触して配列され、これらの接触を通して複合導電体11の導電性が確保される。
【0030】
また、電極用高分子9により、それ自身の可撓性を通して複合導電体11の可撓性が確保される。このため、電極に金属箔電極を張り付けた構成の圧電素子よりも高い可撓性が得られる。電極用高分子9として、高分子母材1と同様、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、クロロプレン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂などが用いられる。
【0031】
また、導電性粒子10として、カーボン粒子や銀粒子が用いられる。銀粒子を用いた場合、複合導電体電極7の比抵抗は5×10−3Ω・cm程度の小さな値を示すが、カーボン粒子を用いた場合、同比抵抗値は約1桁以上の大きな値を示す。この圧電素子を人体検知に用いた場合の周波数範囲は約5Hz程度であるので、この時の平板状複合圧電体3のインピーダンスは約100kΩ以上であり、両可撓性電極4、5の比抵抗値は1kΩ以下程度で充分であるので、導電性粒子10として低価格のカーボン粒子を用いることが有効である。
【0032】
ここでは、カーボン粒子として導電性カーボンブラック粉体(商品名:ケッチェンブラックEC製造元:ケッチェン・ブラック・インターナショナル株式会社)を用いた。
【0033】
高分子母材1と電極用高分子9は同質材料で形成することが望ましい。
【0034】
これは、熱によって接着する場合、同質材料同志が容易に接着しやすいため、接着強度が高く接着剤等を使用しないため信頼性も高い。この時、高分子母材1と電極用高分子9に塩素化ポリエチレンを使用することが望ましい。これは、平板状複合圧電体3の高分子母材1で述べたように、塩素化ポリエチレンは可撓性に優れるため、感度も高い上、耐熱性も優れているため、信頼性も高い。
【0035】
図2に示す実施例2の平板状複合圧電体3は高分子母材1に塩素化ポリエチレンを用い、圧電セラミック粉体2にチタン酸ジルコン酸鉛粉体を用いて、オープンロール装置で混練り後、熱圧縮装置で幅10mm×長さ75mm×厚み0.5mmの大きさに成形した。また、可撓性電極4及び5の複合導電体11は塩素化ポリエチレンに対してケッチェンブラックECを10重量%添加してオープンロール装置で混練り後、熱圧縮装置で幅10mm×長さ75mm×厚み0.3mmの大きさに成形し、前記作成の平板状複合圧電体3両面に熱圧着して可撓性圧電素子を得た。
【0036】
複合導電体11からなる可撓性電極4または5の直流抵抗温度特性を図3に示す。図3から、約6900ppm/度の高い抵抗温度係数を示す。従って、抵抗検出手段7による抵抗検出と、この抵抗温度特性に基づいて可撓性電極4または5に挟持された平板状複合圧電体3の温度を温度換算手段8を用いて算出することが容易である。実用状態で、可撓性圧電素子が一定の温度以上になった場合に素子を保護するために、警報手段で知らせるということが可能である。
【0037】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、請求項1記載の発明によれば、可撓性電極と前記平板状複合圧電体が密着する構成であるので可撓性が向上すると同時に、抵抗検出手段により可撓性電極の抵抗が検出できるので、可撓性電極で挟持されている平板状複合圧電体の平均温度を可撓性電極抵抗の温度依存性に基づいて検出できる。従って、温度センサを別に準備する必要がないので簡素な構成で圧力と温度の両者を検知できる可撓性圧電素子を提供できる。
【0038】
また、請求項2記載の発明によれば、抵抗検出手段に可撓性電極の抵抗温度特性に基づいて抵抗値を温度に換算する温度換算手段を接続してなる可撓性圧電素子であるので、抵抗検出手段により検出された抵抗値は、温度換算手段により温度に換算されて容易に温度を直読できる。
【0039】
また、請求項3記載の発明によれば、高分子母材を塩素化ポリエチレンで構成したので、優れた耐熱性と優れた可撓性を兼ね備えた平板状複合圧電体が得られる。
【0040】
また、請求項4記載の発明によれば、圧電セラミック粉体としてチタン酸鉛とジルコン酸鉛の固溶体を用いているので、安価であり、入手も容易であるため、高感度で安価な可撓性圧電素子が提供できる。
【0041】
また、請求項5記載の発明によれば、圧電セラミック粉体としてをチタン酸鉛を用いているので、圧電セラミック粉体の誘電率を小さくできるため、分極処理が容易になる。
【0042】
また、請求項6記載の発明によれば、可撓性圧電素子の電極を電極用高分子と導電性粒子とからなる複合導電体で構成したため、電極用高分子自身の可撓性を通して複合導電体の可撓性が確保されるとともに、容易に熱プレス等の熱溶着により接着できる。
【0043】
また、請求項7記載の発明によれば、電極用高分子と高分子母材とを同質材料で構成したので、電極を平板状複合圧電体に容易に強固接着でき、信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の実施例1における振動電圧検出手段と温度検出手段に接続された可撓性圧電素子の断面図
【図2】
本発明の実施例2における可撓性電極の断面図
【図3】
本発明の抵抗値温度特性の一例を示す特性図
【図4】
従来の可撓性圧電素子の断面図
【符号の説明】
1 高分子母材
2 圧電セラミック粉体
3 平板状複合圧電体
4 5 可撓性電極
6 振動電圧検出手段
7 抵抗検出手段
8 温度換算手段
9 電極用高分子
10 導電性粒子
11 複合導電体
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