JP2002020781A - 油糧種子から高濃度油脂含有物と未変性たんぱく質を分離、製造する方法 - Google Patents

油糧種子から高濃度油脂含有物と未変性たんぱく質を分離、製造する方法

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JP2002020781A
JP2002020781A JP2000204532A JP2000204532A JP2002020781A JP 2002020781 A JP2002020781 A JP 2002020781A JP 2000204532 A JP2000204532 A JP 2000204532A JP 2000204532 A JP2000204532 A JP 2000204532A JP 2002020781 A JP2002020781 A JP 2002020781A
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Makoto Wakabayashi
眞 若林
Kentaro Kawamura
健太郎 川村
Koji Mitsuki
浩司 光木
Hiroshi Okada
弘 岡田
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Ajinomoto Co Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】油糧種子の水抽出物より油脂とたんぱく質を分
離回収するに際し、工業的実施を容易とするため、水抽
出物中の油脂を回収率良く高濃度油脂含有凝集物として
浮上させ、これを低速遠心分離法により油脂とたんぱく
質を分離回収する方法の提供。 【解決手段】油糧種子の水抽出物に、1価カチオンを添
加し、溶液のpHをアルカリ性とした後にこの溶液を40
℃〜60℃に加温し、0.5時間〜4時間保温した後、
生じた高濃度油脂含有浮上凝集物を低速遠心分離により
たんぱく質と分離する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の所属する技術分野】本発明は、オイルボディー
を含有する油糧種子から中性油脂含有率(中性油脂x 1
00/(中性油脂+たんぱく質)、w/w(%))70%以上の中
性油脂・たんぱく質複合物、すなわち、高濃度油脂含有
物と、未変性たんぱく質を分離・製造する方法に関し、
詳しくは、従来の有機溶媒抽出による油脂製造法、ある
いは、酵素的な油脂抽出法とは異なる方法によって、油
糧種子、とりわけ丸大豆から高濃度油脂含有物と未変性
たんぱく質を、回収率良く分離・製造する方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】油糧種子からの油脂製造法としては、ヘ
キサンのような有機溶媒を用いて抽出する方法(有機溶
媒法)や圧搾法のほかに環境に優しい新規な油脂製造法
として、油糧種子組織を酵素的に崩壊して、油脂を抽出
する方法も検討されている。 例えば、油脂を高濃度に
含有しているオリーブ(特開平5−59390号公報)を原料
とする搾油法について、近年は、酵素処理を行って搾油
する方法が提案されており、実用化段階に入っている。
しかしながら、大豆、菜種など、油糧種子中の中性油脂
は、中性油脂微粒子がりん脂質と「オレオシン」と称す
る塩基性たんぱく質とで覆われた「オイルボデイー」と
称する小器官として種子中に存在している。これがた
め、「オイルボデイー」を含有する油糧種子から、酵素
的に油脂を抽出する際には、圧扁、あるいは磨砕中に原
料種子組織が破壊され、市販の組織崩壊酵素に微量混在
する脂質、ならびにたんぱく質分解酵素によって中性
油、りん脂質、大豆貯蔵たんぱく質、さらには僅かなが
らも、上記塩基性たんぱく質が部分的に分解され、これ
らの部分分解物によって乳化物が形成され易く、一旦形
成された乳化物を含む組成物から油層を分別すること
は、極めて困難となる。
【0003】一方、食品素材としての大豆貯蔵たんぱく
質を製造するには、多くの場合、脱脂大豆フレークを原
料として、先ず、たんぱく質を抽出し、次いで等電点沈
殿法でたんぱく質を沈殿・分離し、これを乾燥して製造
されたものが大豆単離たんぱく質である。このような大
豆単離たんぱく質が広く食品素材として使われている
が、この単離たんぱく質は、フレークの段階で有機溶媒
によって変性を受け、かつ減圧下ながら、加熱による脱
溶媒工程を経るため、部分的な変性を受けることは避け
られず、ゲル化能を付与され易くなり、それがために利
用範囲も限られる。
【0004】最近の学術文献によると、大豆子葉の単細
胞中に存在する「オイルボデイー」を実験室的に単離回
収するには、僅かな比重差を利用しなければならず、そ
れがために超遠心分離機を利用する方法が採られてい
る。
【0005】例えば、Bair, Snyderら(JAOCS, 1980年 9
月号, 279-282)は、大豆水抽出物に0.5M生理的食塩水
を含有する50mM Tris-HCl緩衝液(pH 7.2)を添加し、水
平ローター付きのBeckman Model 13-50超遠心分離機に
て100,000xgの条件で遠心浮上させ、中性油脂63%、
たんぱく質27%からなる大豆「脂肪ーパッド画分」を
分離している。しかし「脂肪ーパッド画分」を浮上分離
させるためには、大豆と抽出溶媒の相対比率を1:3、
ないしは1:4とする必要があり、抽出溶媒を多くして
1:10にすると、最早や「脂肪ーパッド」を浮上分離
させることは出来ないと報告している。
【0006】その理由として、本発明者らは、大豆原料
当たりの抽出溶媒比率が少ない場合には、大豆子葉単細
胞内で共存する「たんぱく質ボデイー」が破壊され難
く、「オイルボデイー」と接触し難いためであり、また
大豆原料当たり10倍容の抽出溶媒を用いた場合には、
『たんぱく質ボデイー』が破壊され、ここから遊離した
可溶性たんぱく質が「オイルボデイー」に付着し、これ
が「オイルボデイー」の比重を高め、「脂肪ーパッド画
分」の浮上量を減らすと解釈している。さらに抽出溶媒
(食塩水:0.5M)添加容量の相対比率を低くして
も、浮上物のみならず、かなりの量の中性油脂が上清、
ならびに沈殿両画分に存在し、分別度は必ずしも良くな
く、工業的に有用な方法とはなり得ない。
【0007】一方hermanは、Bair, Snyder らと同様、
大豆に僅か2倍量の0.1M Tris―HCl緩衝液(pH8.6)を加
え、12時間浸漬し、これを磨砕、ろ過した後、20,000回
転(72,000xg)、4℃にて20分間超遠心分離した。 浮
上した「オイルボディ−パッド」を同じ緩衝液に懸濁、同
様な条件で超遠心分離を繰り返し、0.5M食塩を含む0.1M
NaHCO3溶液に懸濁し、0℃にて30分放置して、オイルボ
ディーに緩く結合しているたんぱく質を除去して「オイ
ルボディー」を単離している(Planta,Vol.172,336-345,
1987)。
【0008】また、Huang らは浸漬大豆磨砕媒体として
0.6M蔗糖、1mM エチレングライコール4酢酸、0.
1mM KCl, 1 mM MgCl2, ジチオエリスリトール、0.
15M Tricine 緩衝液(pH 7.5) を用い、10,00
0 x g, 30分遠心分離している。 さらに0.25M
蔗糖と2M の食塩を含む緩衝液を用いて、遠心分離を
繰り返し,オイルボディーを単離精製している。
【0009】小野らは1M 食塩存在下で、オイルボディ
ーが分離できることを認めた、としている(化学と生
物、Vol.37, No.5, 290-292,1999)が、引用文献が未発
表であるため、その詳細は不明である。
【0010】以上の如く、これら公知文献には、1価あ
るいは/および2価のカチオンを含有する溶液を大豆原
料の2−4倍容加えて磨砕し、3−4回以上の遠心分離
法を繰り返して「オイルボデイー」を単離しているが、
本発明者が「特開平11−56248」にも明らかにし
た如く、「オイルボデイー」と「大豆グロブリン」とを
主成分とする「生豆乳」に対する、1価カチオンの挙動
と、2価のそれは全く異なるとの認識はない。しかも
Bair, Snyderらが指摘しているように、「オイルボデイ
ー」と「プロテインボデイー」を分離するためには、原
料大豆に添加する抽出溶媒量を少なくする必要があると
の指摘があるが、抽出溶媒量を減らすと、豆乳残さ、す
なわち「オカラ」画分に残存する中性油、たんぱく質が
多くなり、原料からの高濃度油脂含有物ならびに大豆た
んぱく質の回収率もそれだけ低下することになる。
【0011】一方 わが国における大豆の貯蔵たんぱく
質大豆グロブリンに関する研究は極めて多いが、有機溶
媒抽出法で中性油脂を抽出除去後、脱溶剤工程が入るた
め、部分的に熱変性した脱脂大豆フレークを出発原料と
している。それがために得られる大豆たんぱく質も、す
でに部分的に変性を受けいるがために、これら大豆たん
ぱく質に関する知見を参考にするだけでは、本願発明の
課題を解決することは出来なかった。
【0012】本発明者らは、上述の如く丸大豆から中性
油脂、たんぱく質を回収するに際し、新たな発想によ
り、従来法の問題点ないし欠点を克服し、環境に優しく
工業的に容易な操作で高濃度油脂含有物、ならびに、未
変性の大豆たんぱく質を再現性良く分離回収し、安価に
製造することに成功し、「特開平11−56248」を出願し
た。 即ち本公開公報では、油糧種子の水抽出物に、油
脂をたんぱく質の一部と凝集させる作用を有する物質を
加え、中性油脂含有率45%以上の油脂・たんぱく質複
合体を凝集物として沈降もしくは浮上させ、これを回収
して未変性たんぱく質と分別する技術を開示している。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】上記公開公報の発明で
は、凝集物を沈殿物として分離回収した場合、沈殿物へ
の中性油脂回収率が90%以上で、中性油脂含有率も4
5%以上のものが得られ、実用化への道を開いた。 一
方、食塩のような1価カチオンを最終濃度0.4M以上
に高めると、高濃度油脂含有凝集物が浮上するようにな
ることを見出している。しかし生豆乳原料から凝集浮上
物に回収される油脂回収率は80%以下であり、当然の
ことながら、非凝集画分中にも油脂が残存することにな
る。それがために非凝集画分からの大豆たんぱく質の回
収を困難にしている。凝集浮上物への油脂回収率を高
め、同時に凝集浮上物中の油脂含有率を高めることが出
来れば、油脂・たんぱく質の分離が低速遠心分離により
工業的に実施しやすくなるメリットがある。 従って、
本発明の課題は、工業的に再現性良く、凝集浮上物中に
高収率で中性油脂を回収する条件・方法を確立すること
である。
【0014】
【問題解決のための手段】以上のような視点から、本発
明者らは、工業的に操作が容易な低速遠心分離法にて、
中性油脂含有率が70%以上の高濃度油脂含有凝集物
を、生豆乳からの中性油脂回収率80%以上で浮上、回収
させ、一方の非凝集画分からは、そこに残存する変性度
の低い大豆グロブリンを、これまた収率良く回収するた
め種々検討し、従来短時間の加温により凝集能を失って
いた生豆乳が、1価カチオン存在下で加温することによ
り安定な浮上凝集物を形成することを見だし、これにイ
オン強度のみならず、pH, 加温時間、温度などの微細
環境因子の影響を検討し、本発明を完成した。
【0015】即ち本発明は、オイルボディ−を含有する
油糧種子を原料とし、その水抽出物に中性油脂とたんぱ
く質の一部とを凝集させる作用を有する物質を加え、生
じた油脂含有凝集物を浮上物としてこれを回収する方法
において、油糧種子の水抽出物に1価カチオンを添加
し、溶液のpHをアルカリ性とした後にこれを40℃〜
60℃に加温し、0.5時間〜4時間保温した後、生じ
た浮上凝集物を、該水抽出物中からの油脂の回収率が8
0%以上かつ凝集物中の中性油脂含有率70%以上の高
濃度油脂含有物として回収することを特徴とする、油糧
種子から高濃度油脂含有物と未変性たんぱく質とを分離
製造する方法である。
【0016】
【発明の実施の形態】大豆の貯蔵たんぱく質を部分的に
凝集沈殿させる方法としては、古くは柴崎らによって溶
媒法で抽出した後の脱脂大豆フレークを出発原料とした
ものが有名である。すなわち、たんぱく質濃度、イオン
強度などを調整し、Tris-HCl緩衝液(pH 6.4)を添加す
ると、大豆貯蔵たんぱく質のうち11Sグロブリンのみ
が沈殿し、7Sグロブリンは沈殿しないことを見出し、
両グロブリンを分離させる方法として報告している(J.
Agric. Food Chem.24巻,1117-1121(1976))。
【0017】しかし、丸大豆を原料に本方法を適用した
例なく、ましてや、このような条件下で、中性油脂ある
いは「オイルボデイー」がどのような挙動をとるか、全
く不明であったので、本発明者らは、上述のごとき新規
な視点より生豆乳に食塩を代表とする1価カチオンを添
加した際の、微細環境を種々検討した結果、低速遠心分
離条件下で、高濃度油脂含有凝集物が浮上物として分
離、回収され、その中性油脂含有率を70%以上に、ま
た 生豆乳からの中性油脂回収率を80%以上に高め得
る至適条件を見出して、本発明を完成した。
【0018】まず、本発明者らは中性油脂ならびに大豆
たんぱく質の回収率を高めるために、通常の豆腐製造時
同様、原料丸大豆を一夜浸漬した後、膨潤大豆に8倍容
以上の水を添加し、これを磨砕した。磨砕物を振り切り
型遠心分離機に掛けて、「未加熱豆乳」と「残さ」(豆
乳製造時のオカラに相当する)に分離することとした。
この時のたんぱく質濃度は0.5−5.0%の範囲であ
る。また、「特開平11−56248」に開示した様
に、生豆乳を50℃、10分加温前処理した後、0.2M
となるように食塩を添加すると、低速遠心分離条件下
(遠心分離機は特に指定されるものではなく、5000
rpm程度以下の回転数が確保できるものであればいず
れも使用できる)で沈降し得る高濃度油脂含有凝集物の
形成能は50℃、10分で消失し始め、60℃、10分で
は、ほぼ完全消失する。
【0019】しかし、予め0.2Mの食塩を添加した後に
加温前処理を行うと、40℃ならば、2−3時間、50℃
ならば3時間、60℃では、1時間加温しても凝集浮上
能は消失しないことを観察した。このことは塩類添加に
よって、「オイルボデイー」あるいは「大豆グロブリ
ン」を加温することによって、凝集能を消失するような
たんぱく質変性が阻止されたことを意味する。換言すれ
ば、1価のカチオンが安定化作用を有することを意味す
る。
【0020】このよな事実を念頭に、生豆乳に予め食塩
を添加した後、pHを10.0に調整し、10−90℃、1−
4時間、加温あるいは加熱すると、表1に示す如く、3
0℃、1−3時間までは、凝集物が沈殿するが、40−
60℃では、1−3時間加温すると、凝集物が浮上する
ようになることを見出した。
【0021】
【表1】
【0022】丸大豆に10倍容の水を加えて一夜浸漬後、
磨砕、ろ過して得られる生豆乳に、等容量の 0.4M食塩
水を添加後(終濃度0.2M)、pH を10.0 に調整し、各
温度に加温あるいは加熱し、1−3時間靜置した。夫々
を10℃まで冷却後、pHを6.5に再調整し、3,000回転で低
速遠心分離を行い、凝集物が沈降するか、浮上するかを
観察した。
【0023】また表1では、40℃周辺に凝集物の沈降、
あるいは浮上の臨界点があるように思えるが、食塩添加
後、アルカリ側(pH 8.0, 10.0, 12.0)で、40℃にて、
0.5-3.5 時間加温後、低速遠心分離条件下で、凝集物が
沈降するのか、あるいは浮上するのか観察したところ、
第2表に示す如く、pHと靜置時間にも依存することが判
明した。
【0024】
【表2】
【0025】丸大豆に10倍容の水を加えて一夜浸漬後、
磨砕、ろ過して得られる生豆乳に、等容の 0.4M食塩水
を添加後(終濃度0.2M)、pHを6.5-12.0 に調整し、4
0℃にて加温靜置した。夫々を10℃まで冷却後、pHを6.5
に再調整し、3,000回転で10分低速遠心分離を行い、凝
集物が沈降するのか、浮上するのかを観察した。加温静
置後の10℃への冷却は、単に実験条件を揃えるための
操作であり、実用的には冷却せず分離することが可能で
ある。
【0026】表1、2に示した如く、高濃度油脂含有物
が沈降するか、浮上するか生豆乳が置かれた微細環境の
如何に依存し、「浮上(++)」を付した条件下では、
浮上物の中性油含有率が高く、ほぼ70%を凌駕し、本発
明の目標に合致した。食塩添加後、アルカリ性下での加
温、ないしは加熱放置時間に依存して、オイルボデイー
に付着する大豆グロブリン量が減少し、浮上分離された
ものと解釈できる。その条件とは、生豆乳に食塩のごと
き一価のカチオンを溶液最終濃度で0.1-1.0M、好ましく
は0.1-0.5M添加後、 pH 7.0-12.0 好ましくは pH 8.0-
10.0にて、30℃-60℃、好ましくは40℃-60℃に
て0.5−4時間、加温前処理することによって、高濃
度油脂含有凝集物を浮上させることができる。 ただ
し、加熱殺菌、あるいは不要な酵素を失活させることを
意図して、これらの処理条件を強化しょうとする場合な
ど、これらの設定因子の組み合わせを僅かながら変動さ
せる必要がある場合は、予め上記設定因子組み合わせの
微調整が必要となる場合もある。
【0027】このように、中性油脂含有率(中性油x10
0/(中性油+たんぱく質)(w/w,%))が70%を越
すような高濃度油脂含有凝集物は、実施例に示すような
条件下で、これを噴霧あるいは凍結乾燥しても、中性油
が遊離あるいは沁み出ることなく、「粉末油脂」とでも
称せられる、さらさらした微粉末が得られる。「オイル
ボデイー」は上記温度、あるいは、範囲では安定な状態
を維持しているので、本発明の処理条件下でも、これら
大豆の「オイルボデイー」がそのまま温存され、その表
面をグロブリンたんぱく質で覆われたものと判断できる
知見も得られている。
【0028】従って、本発明によって得られる、これら
高濃度油脂含有物は中性油脂ならびにたんぱく質を混合
して調製される栄養剤、あるいは経腸栄養剤などの素材
として利用可能である。特に飲料用栄養剤として利用す
る場合は、遊離中性油 ならびにたんぱく質を添加・混
合した従来製品を、本法で得られるような高濃度油脂含
有物で置き換えれば 嗜好性を改善させることができ
る。 また油脂含量に比してたんぱく質含量の少ない本
高濃度油脂含有物から、中性油のみを抽出回収するため
の出発原料としても利用可能である。
【0029】次に本発明を実施例によって詳細に説明す
るが、大豆原料処理時の微細環境の変動によって多少の
変動は回避し難いので、本発明はこれらに限定されるも
のではない。 「実施例1」丸大豆1Kg(中性油脂含量21.3%、たん
ぱく質含量35.7%)を4℃で24時間浸漬し、水切り
後、10Lの蒸留水を添加し、磨砕機で3分間磨砕、晒
し布2枚を張り付けた振り切り型遠心分離機にて生豆乳
9.5Kgを回収した。 生豆乳に回収された中性油脂なら
びにたんぱく質含量を、夫々クロロフオルム・メタノー
ル法、ならびにケルダール法で分析したところ、原料大
豆の油脂含量ならびにたんぱく質含量の夫々80%が生豆
乳に回収された。
【0030】生豆乳9.5Kgに、0.4Mの食塩溶液9.5
Kgを添加し、カセイソーダにてpH10.0に調整後、6
0℃にて、緩く攪拌しながら30分放置した。加温溶液
を10℃まで低下させた後、pHも6.5に再調整し、低
速遠心分離機にて、3,000回転で、10分遠心分離
を行い、浮上した凝集物を回収した。 得られた凝集物
を凍結乾燥させ、260gの粗製回収物(高濃度油脂含
有物)が得られた。凝集浮上物、非凝集画分および粗製
回収物の分析結果表3に示す。
【0031】
【表3】
【0032】また非凝集画分(18.1Kg)に硫酸7gを添
加し、pHを4.5に調整後、室温にて20分放置後、低
速遠心分離(3,000回転、20分)した結果、大豆た
んぱく質が192g 回収できた。非沈殿画分には80g
(生豆乳からの回収率は28%)のたんぱく質が残存し
た。 なお表3には、pH調整、ならびに加温処理するこ
となく、食塩添加量を多く(0.4M, 0.5M)して凝
集物を浮上させた場合の対照実験区I, II の結果を併記
するが、本願発明の条件によって浮上物中に回収される
高濃度油脂含有物の量は明らかに増加した。また中性油
脂含有率も70%を超え、中性油脂/たんぱく質の相対
比率も4.8を上回った。
【0033】「実施例2」実施例1と同様な操作で、原
料大豆100gから油脂濃度1.7%(回収率80%)、
たんぱく質濃度2.8回収率77%)の生豆乳950gを
得た。実施例1と同様、未加熱豆乳950gに0.4M
食塩溶液950mlを添加後、カセイソーダでpH 8.
0に調整し、50℃にて2時間加温し、10℃に冷却
後、pH6.5に再調整する。これを実施例1同様の条件
下で低速遠心分離を行い、浮上した凝集物を回収した。
得られた凝集物を凍結乾燥させ、24.2gの高濃度油
脂含有物が得られた。中性油/たんぱく質含有比率は
3.0で、原料に比して中性油脂含有量は5.0倍に濃
縮されたことになる。
【0034】また非凝集画分(1.8Kg)に硫酸0.7
gを添加し、pHを4.5に調整後、室温にて20分放置
後、遠心分離法(3,000回転、10分)で遠心分離し
た結果、単離たんぱく質が乾物換算で12.5g回収で
きた。回収された各画分の分析結果を表4に示す。
【0035】
【表4】
【0036】「実施例3」丸大豆1Kgを実施例1と同
様な条件で一夜浸漬し、10KLの蒸留水を添加、磨砕
後、晒し布2枚を張り付けた振り切り型遠心分離機でオ
カラ画分と生豆乳(1)に分離する。オカラ画分に5KLの
蒸留水を添加、再度磨砕後、上と同様な条件でオカラ洗
浄液(II)を回収する。(I)(II)両画分に回収された中
性油脂、たんぱく質の回収率はそれぞれ90%であっ
た。(I)(II)両画分14.2KLに対し、食塩0.4M溶
液14.2KLを添加、30分室温に放置後、低速遠心分
離機で3,000回転、10分間遠心分離し、凝集沈殿
物と遠心上清に分離した。本凝集沈殿物には生豆乳当た
り96%の油脂と原料当たり39%のたんぱく質が回収
された。得られた凝集沈殿物の中性油/たんぱく質含有
比率は1.5で、油脂の濃縮率は2.5であった。
【0037】次いで本凝集沈殿物を蒸留水にて洗い流し
(550g)、これに0.4M食塩溶液550gを添加し、
カセイソーダにて、pH10.0に調整し、60℃にて3
0分加温し、10℃に冷却後、pH 6.5に再調整し
た。これを実施例1 同様の条件下で低速遠心分離を行
い、浮上した凝集物を回収した。
【0038】得られた凝集浮上物を凍結乾燥させ、25
8gの高濃度油脂含有物が回収された。 pHを調整する
ことなく中性近傍で凝集沈殿物を回収した際の非凝集画
分1.43Kgとアルカリ処理した際の非凝集画分1.1
Kgを併せ、これに硫酸0.92gを添加し、pHを4.5
に調整し、酸沈たんぱく質を回収し、これを凍結乾燥し
た。その結果164gの粗粉末が得られた。なおここで
上清中には91gのたんぱく質(豆乳当たり27%に相
当)が残存した。
【0039】
【表5】
【0040】
【発明の効果】本発明の方法は、浸漬大豆から生豆乳を
回収し、これに食塩のような1価カチオンを至適量添加
し、中性〜アルカリ性下で40℃〜60℃、0.5時間
〜4時間加温し、冷却後、工業的に容易に利用可能な低
速遠心分離機にて大豆中性油脂と貯蔵たんぱく質の一部
とを凝集浮上させて、中性油が70%以上の高濃度油脂
含有物を、またその非凝集画分、すなわち上清から、変
性度の低いたんぱく質を製造する方法を提供するもので
ある。本発明による丸大豆から高濃度油脂含有物と、変
性度の低い大豆たんぱく質を製造する方法は下記の特色
を有している。
【0041】(1)生豆乳に至適量の食塩を添加し、中
性ーアルカリ性下で加温後、pHを再調整、温度を下げ
て、低速遠心分離法で容易に回収できる油脂・たんぱく
質複合物を凝集、浮上させるか、凝集物がたとえ沈殿し
ても、同様のアルカリ、加温処理することによって浮上
させ、中性油/たんぱく質含有比率が原料大豆のそれに
比して6倍以上の高濃度油脂含有物を製造することがで
きる。特に70%以上の油脂を含有しているにも拘わら
ず、中性油は殆ど沁み出ることなく、オイル臭なく、オ
イル様物性を示すこともなく、あたかも粉末油脂のごと
き性状を有する高濃度油脂含有物が製造できるので、本
発明によって得られるれる高濃度油脂含有物には、今後
新たな用途が期待できる。
【0042】(2)丸大豆由来の生豆乳から たんぱく
質含量の極めて少ない高濃度油脂含有物を浮上分離さ
せ、その非凝集画分、すなわち、上清画分からより多く
のたんぱく質を等電点沈殿法のような簡単な方法で製造
することができる。かつ 従来の脱脂大豆フレークから
製造される大豆たんぱく質に比して、変性度の低い大豆
たんぱく質を製造することができ、今までにない広い用
途が期待できる。
【0043】(3)環境問題で課題の多い溶媒抽出法に
代わり得る、環境に優しい新規な大豆中性油を製造する
ために、大豆原料から収率高く、かつ中性油含有率70
%以上の本油脂含有物を出発原料として利用できる。
【0044】(4)規模の大小に関わらず、環境に優し
く、簡単な装置、方法で、再現性良く、高濃度油脂含有
物、変性度の低い大豆たんぱく質、大豆オリゴ糖が製造
できる。ホエイたんぱく質、オカラ画分まで利用できれ
ば、廃棄物の量が極めて少ない、時代の要請に合致する
大豆原料の完全加工法を提供するものである。また油脂
を含有する大豆原料から乳化形成を可及的に回避できる
加工法を提供するものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C11B 3/16 C11B 3/16 (72)発明者 岡田 弘 東京都中央区京橋1−15−1 味の素株式 会社内 Fターム(参考) 4B026 DC05 DG05 DL01 DX03 4H059 AA04 AA07 AA09 AA10 BC15 BC45 CA09 CA11 CA74 EA21

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】オイルボディ−を含有する油糧種子を原料
    とし、その水抽出物に中性油脂とたんぱく質の一部とを
    凝集させる作用を有する物質を加え、生じた油脂含有凝
    集物を浮上物としてこれを回収する方法において、油糧
    種子の水抽出物に1価カチオンを添加し、溶液のpHを
    アルカリ性とした後にこれを40℃〜60℃に加温し、
    0.5時間〜4時間保温した後、生じた浮上凝集物を、
    該水抽出物中からの油脂の回収率が80%以上かつ凝集
    物中の中性油脂含有率70%以上の高濃度油脂含有物と
    して回収することを特徴とする、油糧種子から高濃度油
    脂含有物と未変性たんぱく質とを分離製造する方法。
  2. 【請求項2】1価カチオンがNa+,K+,NH4+ から選ば
    れた1種以上の塩である請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】1価カチオンの塩が、塩化ナトリウム、酸
    性リン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸水素ナトリ
    ウム、塩化カリウム、硫酸アンモニウム及び塩化アンモ
    ニウムのうちのいずれか1種以上である請求項2記載の
    方法。
  4. 【請求項4】Na+, K+ 及びNH4+ から選ばれた1価
    カチオンの塩を最終濃度がイオン強度で0.05から
    0.5となるように油糧種子の水抽出物に添加する請求
    項2記載の方法。
  5. 【請求項5】1価カチオン添加後の溶液のpHが7〜1
    2である請求項1記載の方法。
  6. 【請求項6】油糧種子が大豆である請求項1〜5記載の
    方法。
  7. 【請求項7】浮上凝集物の回収方法が低速遠心分離法で
    あることを特徴とする請求項1記載の方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2010519928A (ja) * 2007-03-02 2010-06-10 スペシャルティ プロテイン プロデューサーズ リミテッド ライアビリティ カンパニー 大豆材料から脂肪を分離する方法及びそこから製造される組成物
WO2011155328A1 (ja) 2010-06-07 2011-12-15 不二製油株式会社 減脂大豆蛋白素材及び大豆乳化組成物、並びにそれらの製造法
JP5532603B2 (ja) * 2006-08-29 2014-06-25 不二製油株式会社 低変性大豆蛋白質組成物の殺菌法
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