JP2002020773A - 自己潤滑機能をもつ表面改質構造およびその製造方法 - Google Patents

自己潤滑機能をもつ表面改質構造およびその製造方法

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JP2002020773A
JP2002020773A JP2000207662A JP2000207662A JP2002020773A JP 2002020773 A JP2002020773 A JP 2002020773A JP 2000207662 A JP2000207662 A JP 2000207662A JP 2000207662 A JP2000207662 A JP 2000207662A JP 2002020773 A JP2002020773 A JP 2002020773A
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microporous
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Hideto Suzuki
秀人 鈴木
Masaru Ikenaga
勝 池永
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Abstract

(57)【要約】 【課題】構造基材面部に形成したマイクロポーラス組織
層に自己潤滑皮膜成分を浸透させることにより自己潤
滑、耐久性に優れた機能を達成できる表面改質層構造を
提供する。 【解決手段】 ドライプロセスによって鋼の表面に形成
したマイクロポーラス組織層と、このマイクロポーラス
組織層にスパッタリング等によって形成した自己潤滑皮
膜とからなることを特徴とする自己潤滑機能をもつ表面
改質構造。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自己潤滑機能をも
つ表面改質層構造とその製造方法に関するものであり、
特に構造基材面部に形成したマイクロポーラス組織層に
自己潤滑皮膜成分を浸透させることにより自己潤滑、耐
久性に優れた機能を達成できる表面改質層構造およびそ
の製造方法である。
【0002】
【従来の技術】エネルギー問題、環境問題などの観点か
らエネルギー機器の高効率化が極めて重要な課題となっ
ている。特にコジュネレーションシステムの中心である
マイクロガスタービン等の超高速 動機器では、摩擦に
よるエネルギー損失の低減が高効率化に直結する。この
ため高速摺動機器の摺動特性の改善が必要不可欠であ
る。また、自動車等輸送機器もまた、環境問題に対し
て、省エネルギー化、高効率化の要求がより一層高まっ
ている。この産業分野でも摩擦によるエネルギー損失の
低減が必要である。
【0003】こうした背景から、耐磨耗性、自己潤滑性
に優れた摺動部材として特開平5−221756号公報
に記載されたもの等が提案されている。この公報に記載
されたものは、窒化物系セラミックスからなる基体表面
に摺動面として窒化ボロンを含む窒化物系セラミックス
からなる表面層を形成するものであり、これによって高
い荷重、高い応力を受ける軸受等でも高い摺動特性をう
ることができるというものである。また、硬質セラミッ
クスの上にMoS2 皮膜コーティングを施し、自己潤滑
と硬質皮膜で動特性を向上させるようにした表面改質処
理方法も知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前者の場合に
は基材および表面層がいずれもセラミックスであるた
め、汎用性が乏しく、また後者のコーティング方法の場
合、MoS2 と基材との強固な密着力を発現させること
が極めて困難であり、結局は高速摺動体への応用ないし
は機器の長期信頼性に欠けるという欠点があった。
【0005】そこで、本発明は、基材の表面に、複合表
面改質によって硬度の傾斜化に加えマイクロポーラス組
織層を形成し、そのマイクロポーラス組織層を利用して
自己潤滑皮膜(MoS2 膜、BN膜、W−C膜、Al2
3 膜)との密着力を向上させることにより、飛躍的に
自己潤滑皮膜の基材への密着強度を向上させ、高速摺動
部品のさらなる高速化を実現できるようにした表面改質
層構造およびその製造方法であり、これによって上記従
来の問題点を解決することを目的とする。本発明は、エ
ンジン機器、宇宙機器、金型、紡績機械などドライ潤滑
が必要な産業分野への展開が期待できる。
【0006】
【課題を解決するための手段】このため本発明は、ドラ
イプロセスによって鋼の表面に形成したマイクロポーラ
ス組織層と、このマイクロポーラス組織層にスパッタリ
ング等によって形成した自己潤滑皮膜とからなることを
特徴とする自己潤滑機能をもつ表面改質構造であり、前
記自己潤滑皮膜は、マイクロポーラス組織層に進入して
アンカ効果を達成できる構造からなることを特徴とする
自己潤滑機能をもつ表面改質構造であり、前記自己潤滑
皮膜はMoS2 、BN、W−C、Al2 3 の何れかの
膜であることを特徴とする自己潤滑機能をもつ表面改質
構造であり、鋼の表面に、ドライプロセスによってマイ
クロポーラス組織層を形成し、このマイクロポーラス組
織層にスパッタリング等によって自己潤滑皮膜成分を浸
透させることを特徴とする自己潤滑機能をもつ表面改質
構造の製造方法であり、前記鋼が浸炭鋼(SCM41
5,S15C)の時には基材の表面にプラズマ窒化処理
を行ったのち、プラズマ浸炭焼き入れを行うことによ
り、基材の表面に硬さの傾斜化およびマイクロポーラス
組織層を形成することを特徴とする自己潤滑機能をもつ
表面改質構造の製造方法であり、前記鋼が、マルテンサ
イト系ステンレス鋼(SUS440C,SUS420J
など)の時、あるいは、工具鋼、高速度鋼(SKD1
1,SKD61,SKH51など)の時には、基材に対
して焼入、窒化、加熱処理を行うことにより、基材表面
に硬さの傾斜化およびマイクロポーラス組織層を形成す
ることを特徴とする自己潤滑機能をもつ表面改質構造の
製造方法であり、前記鋼がオーステナイト系ステンレス
鋼(SUS316Lなど)の時には、基材の表面に対し
て窒化処理を行ったのち、加熱処理を行うことにより、
基材の表面に硬さの傾斜化およびマイクロポーラス組織
層を形成することを特徴とする自己潤滑機能をもつ表面
改質構造の製造方法であり、これらを課題解決のための
手段とするものである。
【0007】
【実施の形態】以下、本発明における表面改質層構造お
よび製造方法の一実施形態について図面を参照して説明
すると、図1は摺動面を形成する基材表面にマイクロポ
ーラス組織からなる改質層を形成する工程説明図、図2
はそのマイクロポーラス組織に対して自己潤滑皮膜をコ
ーティング形成(スーパーコーティング)した状態の断
面図である。
【0008】図1において、 (1) 基材1が浸炭鋼(SCM415,S15C)等
の場合、図1中プロセス1に示す表面処理、即ち、基材
の表面にプラズマ窒化処理を行ったのち、プラズマ浸炭
焼き入れを行う。この処理によって、基材の表面に硬さ
の傾斜化およびマイクロポーラス組織層2が形成され
る。こうして改質された表面に対して、スパッタリング
またはショットピーニングにより自己潤滑機能を持つ皮
膜3(MoS 2 膜、BN膜、W-C膜、Al2 3 膜)を
コーティングする。この自己潤滑皮膜は、マイクロポー
ラス組織によるクサビ効果により基材と強固に密着す
る。このように強固な密着力が、超高速摺動部品におい
て自己潤滑皮膜の自己潤滑機能を発現させる。
【0009】(2) 同様に基材1がマルテンサイト系
ステンレス鋼(SUS440C,SUS420Jなど)
等の場合、また、工具鋼、高速度鋼(SKD11,SK
D61,SKH51など)等の場合には、図1中プロセ
ス3に示す表面処理、即ち、焼入、窒化、加熱処理を行
い、これによって基材表面を硬さの傾斜化およびマイク
ロポーラス組織層2をもった表面に改質する。その後改
質された表面に(1)と同様にスパッタリングまたはシ
ョットピーニングにより自己潤滑機能を持つ皮膜3をコ
ーティングする。この結果、強固な密着力を持ちなが
ら、超高速摺動部品において自己潤滑皮膜の自己潤滑機
能を発現させることができる。
【0010】(3) また、基材1がオーステナイト系
ステンレス鋼(SUS316Lなど)等の場合には、図
1中プロセス2に示す表面処理、即ち、窒化処理を行っ
たのち、加熱処理を行い、これによって硬さの傾斜化お
よびマイクロポーラス組織層2をもった表面に改質す
る。その後改質された表面に(1)と同様にスパッタリ
ングまたはショットピーニングにより自己潤滑機能を持
つ皮膜3をコーティングする。この結果、強固な密着力
を持ちながら、超高速摺動部品において自己潤滑皮膜の
自己潤滑機能を発現させることができる。
【0011】以上のように本発明は、浸炭鋼、高速度
鋼、SUS等構造基材にそれぞれ焼き入れ,窒化、浸炭
等の処理を施したその表層部に自己潤滑皮膜(MoS2
膜、BN膜、W−C膜、A12O膜)を成膜する前の状
態で、上記基材の主成分であるFeの化合物を形成させ
ておく。即ち該構造基材外裏面部にFe化合物(Fe−
O,Fe3C,Fe3N)からなるマイクロポーラス組
織層(1μm程度の孔が表面近傍全体に極めて緻密に分
布するマイクロポーラ組織層)を上記潤滑皮膜形成前に
作成しておく。その後、改質表面にスパッタリングまた
はショットピーニングにより自己潤滑機能を持つ皮膜
(MoS2 膜、BN膜、W-C膜、Al2 3膜)をコーテ
ィングする。この結果、この自己潤滑皮膜成分は、マイ
クロポーラス層の孔内に浸透してゆき、そのアンカー効
果による密着力が向上し、最終的には皮膜側表層から基
材部に向かって硬度が徐々に変化している傾斜構造を得
ることができる。こうして形成した強固な密着力によ
り、超高速摺動部品において自己潤滑皮膜の自己潤滑機
能を発現させることができる。
【0012】図1の工程により作成された表面改質層に
おいて、予想される磨耗特性を従来のコーティングおよ
び未処理材と比較して図3に示す。同図よりこれまでの
コーティングに比べ本発明のコーンティング(スーパー
コーティング)が非常に優れた磨耗特性を示すことが明
らかである。即ち、従来のコーティング材において自己
潤滑皮膜がはがれた後、急激に磨耗してしまう。これに
対して、本発明によって生成された表面改質層は、自己
潤滑皮膜がマイクロポーラ組織によるクサビ効果により
基材に強固に付着しているため自己潤滑皮膜が剥がれ
ず、良好な磨耗特性を示す。したがって本発明の表面改
質層は、従来コーティングの10倍以上の摺動特性を有
しており、高速摺動部品に適した表面改質処理であるこ
とが理解される。
【0013】本発明に係る実施の形態について説明した
が、本潤滑機構は、回転部分のみならず、面上を移動す
る摺動部等、現在存在する各種摺動部に対して採用が可
能である。また、本発明はその精神または主要な特徴か
ら逸脱することなく、他のいかなる形でも実施できる。
そのため、前述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に
すぎず限定的に解釈してはならない。
【0014】
【発明の効果】以上の詳細に説明した如く、本発明によ
れば基材の表面にドライプロセスを用いて,1μm程度
の孔が表面近傍全体に極めて緻密に分布するマイクロポ
ーラス組織を形成し、これにスパッタリングまたはショ
ットピーニングにより自己潤滑機能を持つ皮膜をコーテ
ィングすることで、自己潤滑機能、摺動特性に優れた高
速摺動部品を得ることができる。特に本発明は自動車の
エンジン部品関連、宇宙機器部品関連、コージェネレー
ション・エネルギーシステムのタービン部品関連等様々
な産業分野の高効率化・省エネルギー化技術、およびド
ライ潤滑技術として適用を図ることができ、さらに、本
発明は、高速摺動部品だけでなく金型の耐久性・耐焼付
性の改善、金型の成形技術へ応用できる、という優れた
効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る、摺動面を形成する基
材表面にマイクロポーラス組織からなる改質層(スーパ
ーコーティング)を形成する処理プロセスの説明図であ
る。
【図2】同マイクロポーラス組織に対して自己潤滑皮膜
を形成した状態の断面図で皮膜自己潤滑機構の拡大構成
図である。
【図3】本発明と他の従来例との磨耗量と時間の比較図
である。
【符号の説明】
1 基材 2 マイクロポーラス組織層 3 自己潤滑皮膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C23C 14/06 C23C 14/06 D J B 14/08 14/08 A 14/34 14/34 N 28/00 28/00 Z // C10N 10:06 C10N 10:06 10:12 10:12 40:12 40:12 50:08 50:08 70:00 70:00 Fターム(参考) 4H104 AA12A AA13A AA19A AA26A FA03 FA06 JA01 PA34 QA12 4K029 AA02 BA44 BA51 BA57 BA59 BC00 BD04 CA05 DC05 FA02 FA05 4K044 AA02 AA03 BA18 BA19 BB03 BB13 BC01 CA12 CA13 CA51

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ドライプロセスによって鋼の表面に形成し
    たマイクロポーラス組織層と、このマイクロポーラス組
    織層にスパッタリング等によって形成した自己潤滑皮膜
    とからなることを特徴とする自己潤滑機能をもつ表面改
    質構造。
  2. 【請求項2】前記自己潤滑皮膜は、マイクロポーラス組
    織層に進入してアンカ効果を達成できる構造からなるこ
    とを特徴とする請求項1に記載の自己潤滑機能をもつ表
    面改質構造。
  3. 【請求項3】前記自己潤滑皮膜はMoS2 、BN、W−
    C、Al2 3 の何れかの膜であることを特徴とする請
    求項1または請求項2に記載の自己潤滑機能をもつ表面
    改質構造。
  4. 【請求項4】鋼の表面に、ドライプロセスによってマイ
    クロポーラス組織層を形成し、このマイクロポーラス組
    織層にスパッタリング等によって自己潤滑皮膜成分を浸
    透させることを特徴とする自己潤滑機能をもつ表面改質
    構造の製造方法。
  5. 【請求項5】前記鋼が浸炭鋼(SCM415,S15
    C)の時には基材の表面にプラズマ窒化処理を行ったの
    ち、プラズマ浸炭焼き入れを行うことにより、基材の表
    面に硬さの傾斜化およびマイクロポーラス組織層を形成
    することを特徴とする請求項4に記載の自己潤滑機能を
    もつ表面改質構造の製造方法。
  6. 【請求項6】前記鋼が、マルテンサイト系ステンレス鋼
    (SUS440C,SUS420Jなど)の時、あるい
    は、工具鋼、高速度鋼(SKD11,SKD61,SK
    H51など)の時には、基材に対して焼入、窒化、加熱
    処理を行うことにより、基材表面に硬さの傾斜化および
    マイクロポーラス組織層を形成することを特徴とする請
    求項4に記載の自己潤滑機能をもつ表面改質構造の製造
    方法。
  7. 【請求項7】前記鋼がオーステナイト系ステンレス鋼
    (SUS316Lなど)の時には、基材の表面に対して
    窒化処理を行ったのち、加熱処理を行うことにより、基
    材の表面に硬さの傾斜化およびマイクロポーラス組織層
    を形成することを特徴とする請求項4に記載の自己潤滑
    機能をもつ表面改質構造の製造方法。
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