JP2002004193A - 調湿紙及びその製造方法 - Google Patents

調湿紙及びその製造方法

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JP2002004193A
JP2002004193A JP2000179830A JP2000179830A JP2002004193A JP 2002004193 A JP2002004193 A JP 2002004193A JP 2000179830 A JP2000179830 A JP 2000179830A JP 2000179830 A JP2000179830 A JP 2000179830A JP 2002004193 A JP2002004193 A JP 2002004193A
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Takeshi Morimura
剛 森村
Kazumoto Akaike
一元 赤池
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YKK Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 水蒸気等の目的とするガスの吸着又は吸着・
脱着を行えるのみならず、ある蒸気圧(相対湿度)で急
激な吸着及び/又は脱着が行え、また、その吸着及び/
又は脱着の開始蒸気圧を任意に調整できる調湿紙及びそ
の製造方法を提供する。 【解決手段】 調湿紙は、金属水酸化物又は金属硫化物
の乾燥粉末又は熱処理粉末、好ましくは金属水酸化物又
は金属硫化物の非晶質の分子集合体粒子又はその凝集
体、特に沈殿法で得られた金属水酸化物又は金属硫化物
の非晶質の分子集合体粒子又はその凝集体の乾燥粉末又
は熱処理粉末を含有することを特徴としている。このよ
うな調湿紙は、上記乾燥粉末又は熱処理粉末と、製紙用
繊維、及び必要に応じて結合剤を含有する水懸濁液を湿
式抄紙することによって得られ、襖紙、障子紙、壁紙、
包装紙、梱包用資材(箱、袋等)、筆記用用紙、レター
用紙など種々の用途に有用である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、調湿紙及びその製
造方法に関し、さらに詳しくは、室内空間を一定の湿度
雰囲気に保ったり、結露を防止するための調湿、果物等
の生鮮食料品や菓子類などの調湿梱包、文化財や美術
品、書籍などの調湿保存、トルエン、ホルムアルデヒド
などの有害ガス又は不快ガスの脱臭や腐食性ガスからの
保護、インクの滲み防止等を目的として、襖紙、障子
紙、壁紙、包装紙、梱包用資材(箱、袋等)、筆記用用
紙、レター用紙など、種々の用途に有用な調湿紙及びそ
の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】我国の住
宅建築様式においては、古来、木材や土壁等の調湿性の
良好な建築材料が用いられてきたが、気密性や施工性に
劣るため、最近では新建材が使用されている。しかしな
がら、新建材は調湿性に劣るため、内部結露、腐朽菌や
ダニ、カビの繁殖、室内の高温化が問題となってきてい
る。そのため、除湿機やエアコンを用いることが一般的
であるが、経済的な負担は大きく、さらに局所的な場所
の湿度の調整は困難である。また、吸湿機能を持ったゼ
オライト複合材、石膏ボード等の材料も用いられている
が、これらは吸湿機能はあるが放湿機能に劣るため、充
分な調湿作用が期待できない。そこで、生活の快適化、
衛生化を図るのに適した安価で簡便に使用できる調湿材
料の開発が望まれている。
【0003】また、果物等の生鮮食料品の包装紙の場
合、ガス吸着機能を有していないと果物等から発する例
えばエチレンガス等のガスが滞留し、これによって果物
等が早く熟したり、腐敗したりするという問題がある。
そのため、ガス吸着性能や調湿機能に優れた包装紙の開
発も望まれている。さらに、例えば美術品、工芸品等の
文化財や貴金属類などの貴重な商品類は、従来、密閉容
器や準密閉容器に納められて保存や保管あるいは展示が
なされており、商品類の劣化を防止するために最大限の
注意が払われてきたが、調湿機能が充分でないと劣化を
生じることは避けられない。
【0004】物品類を劣化させる因子としては、光、ガ
ス、水、火など数多く考えられるが、その中でも特に湿
気、物品類の含有水分率の変化、及び有害ガス成分が劣
化に及ぼす影響が大きいと言われている。このため、従
来から吸放湿性を有する紙、箱、容器等の開発が進めら
れ、数多くの提案がなされている。例えば、特開昭54
−10910号や特許第2527167号には、パルプ
とシリカゲルを混合抄紙して紙状の乾燥剤にすることが
提案されており、また、特開昭58−51921号に
は、シリカゲル、ゼオライト等の調湿剤をできるだけ細
かくし、紙や布、不織布等にバインダーと共に塗布した
り、紙の中に含有させた湿度調節用シートが開示されて
いる。さらに、特許第1823632号には、上記のよ
うな調湿剤とガス吸着性能を有する貝化石とを併用した
物品保存用紙が開示されている。
【0005】しかしながら、無機系の粘土鉱物を調湿材
料とした場合、一般に吸湿能力はあるが放湿能力が劣っ
ているため、長期間の使用に対して充分な調湿能力を持
ち合わせておらず、さらに得られる産地により水蒸気の
吸着量も異なる。また、水蒸気を急激に吸着及び脱着す
る湿度範囲も産地により異なり、所望の湿度範囲で吸放
湿する材料の選定が困難である。また、シリカゲルは一
度吸湿すると、加熱しない限り水分を放出しないので、
調湿材料としては必ずしも適当ではない。
【0006】本発明は、前記したような従来技術の問題
に鑑みなされたものであり、その目的は、前記のような
従来の材料とは対照的に、水蒸気等の目的とするガスの
吸着又は吸着・脱着を行なえるのみならず、ある蒸気圧
(相対湿度)で急激な吸着及び/又は脱着が行なえ、ま
た、その吸着及び/又は脱着の開始蒸気圧を任意に調整
できる調湿紙、及びこのような優れた性能を示す調湿紙
を生産性良く、かつ低コストで製造できる方法を提供す
ることにある。これにより、例えば、室内空間を一定の
湿度雰囲気に保ったり、結露を防止してカビ、ダニの発
生や繁殖を防ぐための調湿、果物等の生鮮食料品や菓子
類などの調湿梱包、文化財や美術品、書籍などの調湿保
存、住環境や収納ケースの不快又は有害なガスの脱臭、
物品類の腐食性ガスからの保護、インクの滲み防止等を
目的として、襖紙、障子紙、壁紙、包装紙、梱包用資材
(箱、袋等)、筆記用用紙、レター用紙など、種々の用
途に有用な調湿紙及びそれを利用した製品を提供しよう
とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本発明の第一の側面によれば、水蒸気等のガスの吸
着・脱着性能に優れ、かつ制御された任意の蒸気圧(相
対湿度)で吸着・脱着量が急激に変化するような調湿紙
が提供され、その第一の態様は、金属水酸化物又は金属
硫化物の乾燥粉末又は熱処理粉末を含有することを特徴
としている。また、本発明の調湿紙の第二の態様は、金
属水酸化物又は金属硫化物の非晶質の分子集合体粒子又
はその凝集体の乾燥粉末又は熱処理粉末を含有すること
を特徴としている。この場合の金属水酸化物又は金属硫
化物は、好ましくは、金属塩含有水溶液に、酸又はアル
カリ水溶液を加えるか、あるいはS2-イオンを含む溶液
を加え、金属陽イオンと陰イオンの反応により沈殿した
沈殿物又はその凝集体である。
【0008】前記いずれの態様においても、金属水酸化
物又は金属硫化物としては、Mg,Al,Ca,Sc,
Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Z
n,Ga,Y,Zr,Nb及びMoよりなる群から選ば
れた少なくとも1種の金属の水酸化物又は硫化物である
ことが好ましい。特に好ましい態様においては、前記金
属水酸化物は、非晶質の水酸化アルミニウムである。
【0009】さらに本発明の第二の側面によれば、前記
のような調湿紙の製造方法も提供され、その第一の態様
は、金属水酸化物又は金属硫化物の乾燥粉末又は熱処理
粉末と、製紙用繊維、及び必要に応じて結合剤を含有す
る水懸濁液を湿式抄紙することを特徴としている。ま
た、本発明の調湿紙の製造方法の第二の態様は、金属水
酸化物又は金属硫化物の非晶質の分子集合体粒子又はそ
の凝集体の乾燥粉末又は熱処理粉末と、製紙用繊維、及
び必要に応じて結合剤を含有する水懸濁液を湿式抄紙す
ることを特徴としている。さらにより特定的な本発明の
調湿紙の製造方法の第三の態様は、(A)金属塩含有水
溶液に、酸又はアルカリ水溶液を加えるか、あるいはS
2-イオンを含む溶液を加え、金属水酸化物又は金属硫化
物として沈殿させる工程、及び(B)得られた水分を含
んだままの沈殿物と、製紙用繊維、及び必要に応じて結
合剤を含有する水懸濁液を湿式抄紙する工程を含むこと
を特徴としている。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明者らは、前記したような特
性を付与すべく、調湿紙に配合するための調湿材料(ガ
ス吸着・脱着材料)について鋭意研究の結果、金属水酸
化物又は金属硫化物の乾燥粉末又は熱処理粉末、殊に沈
殿法によって得られる非晶質の金属水酸化物又は金属硫
化物の分子集合体粒子又はその凝集体、特に非晶質水酸
化アルミニウム沈殿物の乾燥粉末又は熱処理粉末が、調
湿材料として最適な吸放湿特性(ガス吸着・脱着特性)
を有し、また、金属塩の種類や特に熱処理温度を変える
ことにより、細孔(隙間)の大きさを制御でき、従っ
て、水蒸気(ガス)の吸放湿(吸着・脱着)の急激な変
化を生起する相対湿度(蒸気圧)を任意に変えることが
でき、用途に応じた所望の吸放湿特性(ガス吸着・脱着
特性)を有する調湿紙を提供できることを見出し、本発
明を完成するに至ったものである。
【0011】ガス吸着剤は、化学吸着と物理吸着に大別
できるが、化学吸着は、吸着されるガスと吸着剤の化学
反応により行なわれ、一旦吸着されたガスは容易に脱着
しないという特徴があるため、調湿材料としては利用で
きない。一方、物理吸着についても種々の物質の例が知
られており、その理論として、ラングミュア理論や毛管
凝縮理論がある。毛管凝縮理論によると、ケルビン(K
elvin)は、狭い毛細管中の液体のメニスカス上の
蒸気圧が同温度の平坦な液面上の蒸気圧より低いことか
ら、もし液体が毛細管を濡らし、凹状のメニスカスを作
ると、毛細管内の自由空間の飽和蒸気圧(Ps)と平面
の液体上の飽和蒸気圧(P)との間に下記式(1)
【数1】 ln(P/Ps)=−(2γV)/(ρRT)…(1) の関係があり、毛細管中の液面上の飽和蒸気圧は平らな
液面上の飽和蒸気圧より小さいので、液化が起こってい
くとしている。ここで、γは液体の表面張力、Vは分子
容、ρはメニスカスの曲率半径、Rは気体定数、Tは絶
対温度である。ここで物質が決まれば(γが一定であれ
ば)、ρ(メニスカスの曲率半径、ひいては多孔質体の
細孔半径)が重要なファクターとなる。実際の経験上か
らも、細孔径の大きさが吸着分子(水分子)の大きさ
(水分子の直径は約0.3nm)の数倍から数10倍程
度の時に、細孔メニスカス部と細孔外部の圧力差により
吸着(吸湿)が可能であることが知られている。すなわ
ち、細孔内と外部との蒸気圧差により平衡に達するまで
吸着(吸湿)できるが、平衡状態よりも外部の蒸気圧が
下がりすぎると脱着(放湿)することになる。
【0012】上述の通り、水蒸気(ガス)の吸放湿(吸
着・脱着)においては、細孔の径が重要であるが、孔径
が水蒸気分子(ガス分子)よりも小さい時はもちろん吸
湿(吸着)は起こらない。そして、孔径が大きくなるに
従って吸湿(吸着)が起こり始め、ある大きさを超える
とやはり吸湿(吸着)が殆ど起こらなくなってしまう。
さらに、吸湿(吸着)が起こる孔径の範囲であっても、
孔の径や温度によって、外気の飽和蒸気圧との関係(P
/Psの比)により、吸湿(吸着)が起こり易い状態や
放湿(脱着)が起こり易い状態ができる。すなわち、吸
湿(吸着)と放湿(脱着)が平衡状態にあるときは、実
際の外部雰囲気の水蒸気圧(ガス蒸気圧)が高くなると
吸湿(吸着)が起こり、逆に外部雰囲気の水蒸気圧(ガ
ス蒸気圧)が低くなると放湿(脱着)が起こることにな
る。前記した従来の天然素材の調湿材では、最初からそ
の細孔径(隙間)が素材により決定されており、製造方
法の制御によって、吸湿量や、吸放湿を開始する蒸気圧
を所望通りに設定することはできない。
【0013】上記のように、調湿材料の吸放湿性能(吸
放湿量、吸放湿開始蒸気圧等)は、細孔の大きさや細孔
径の分布によって決まる。本発明者らは、上記の観点か
ら鋭意研究の結果、細孔の代わりに分子の集合粒子間に
細孔に相当する隙間を作ることを考え、沈殿法により形
成される金属水酸化物又は金属硫化物の非晶質(無定
型)の分子集合体粒子を乾燥又は熱処理することによ
り、分子集合粒子間の水分が飛び、分子集合粒子間に適
当な隙間を任意に作り、水蒸気を吸着・脱着することが
可能となり、しかも製造条件(金属塩の種類や熱処理温
度等)を変えることにより、吸湿・放湿の開始蒸気圧を
任意に調整できることを見出した。このことは、他のガ
スについても同様である。これによつて、従来の天然素
材という固定的なものに限定されない調湿材を提供する
ことが可能となる。なお、上記熱処理は、通常、大気圧
下で行なうが、減圧下に行なってもよい。
【0014】さらに詳しく説明すると、金属水酸化物又
は金属硫化物の沈殿性の分子は、一個一個が弱い分子間
引力で数万〜数十万個オーダーで凝集して、均一に沈殿
物として析出してくる。これらを一次粒子とすると、さ
らにこれらの一次粒子がいくつも集合して凝集力が弱い
二次集合体が形成され、さらに、この二次集合体が三次
集合体になる。この集合体粒子を回収し、乾燥又は熱処
理すると、一次粒子間や二次、三次粒子間の隙間の水分
が飛び出し、それぞれの粒子は若干収縮し、その間に空
隙ができる。この熱処理で形成される粒子内の微細な約
1〜数nm程度の隙間やクラック、又は粒子間の約1n
m〜20nm程度、好ましくは約2nm〜15nm程度
の空隙(隙間)が、水蒸気を吸着するのに有効に使用で
き、また熱処理温度を変えることによりコントロールで
きる。同時に2次粒子同士や3次粒子同士の間にも同様
に隙間やクラックができるが、これらは水分子の吸着・
脱着を行なうために有効な空隙よりも大きなものが多
く、これらの隙間は水蒸気の外界との出入りをスムーズ
に行なうための通路として有用な働きをする。
【0015】本発明において、金属塩として用いる金属
をMg,Al,Ca,Sc,Ti,V,Cr,Mn,F
e,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Y,Zr,Nb,
Moとしているのは、これらの金属の水酸化物や硫化物
は水に難溶であり、目的とする沈殿物が得られること、
また、Moよりも分子量(原子サイズ)が大きくなると
一次粒子(沈殿粒子)が大きくなり、乾燥又は熱処理し
ても水蒸気の吸放湿にとって適切な細孔(隙間)を作製
できなくなってしまうためである。本発明者らが検討し
たところによれば、分子集合体としての一次粒子は10
0nm以下程度であり、乾燥又は熱処理後に50nm以
下程度にすることが好ましい。
【0016】前記のような金属塩を含有する水溶液は、
新たに調製されたものでもよく、あるいは金属の表面処
理工程から排出される1種又は数種の金属塩を含有する
水溶液でもよい。金属塩の水溶液を中和又はS2-で沈殿
させるには、NaOHやKOH,NH4OH,Na2S,
2S,(NH42Sなど、OH-やS2-を含む可溶性の
ものであれば、無機、有機のいずれを問わない。また、
必要により酸を用いる必要がある場合は、硫酸、硝酸、
塩酸などの無機酸や蓚酸、クエン酸などの有機酸など全
ゆる酸を用いることができる。また、沈殿を生じ易いp
Hは金属塩により異なることは知られているので、最も
作業性、収率の良いpHにすればよい。さらに沈殿物に
中和又は硫化物化の時に用いた物質の混入が懸念される
場合は、水洗を行なってもよい。
【0017】乾燥又は熱処理は約80℃以上、約120
0℃以下、好ましくは約1000℃以下の温度で行なわ
れる。これは、既に述べたように、粒子間の水が飛び、
一次、二次、三次の粒子が収縮することと、粒子間空隙
の水が飛ぶことによって空隙をあけるためである。空隙
(隙間)の大きさは処理温度によって異なる。低温であ
れば水はより均一に飛び、隙間の大きさは小さくなる。
一方、高温で処理すると粒子の収縮も大きく、粒子間の
空隙が大きくなる。高温で処理すると水分子が一気に抜
けて粒子が収縮し易くなること、また分子レベルでは溶
融や溶着が起こり易くなること、さらに場合によって
は、水酸化物から酸化物へと変わることにより分子とし
て小さくなることが考えられる。
【0018】上記作用の相乗効果によって一次粒子や二
次粒子、特に一次粒子間に吸放湿に適切な隙間があくも
のと考えられる。しかし、溶融の起こり易いものでは、
高温で処理すると孔径がむしろ小さくなっていくことも
ある。低温でも長時間かけて乾燥した場合、沈殿一次粒
子は柔らかく、変形し易く、充分密着した状態であり、
乾燥によりゆっくりしかも均一に水分が蒸発していくた
め、一次粒子同士の間の隙間やクラックが成長し難くな
る。このようなことから、処理温度は80℃以上である
ことが望ましく、さらに水分を飛ばす乾燥という意味で
は、この温度以下では時間がかかり、不経済でもある。
しかし、不経済とはいえ、80〜100℃前後の乾燥で
も、金属塩の種類によっては充分に一次粒子として収縮
・凝集粒子となり、ある一定の吸放湿を起こす空隙(隙
間)が作製される。
【0019】また、処理温度の上限は、金属の水酸化
物、硫化物の種類によって異なるが、約1200℃以
下、好ましくは1000℃以下とすることが望ましい。
これは、本発明で用いる金属の水酸化物又は硫化物は、
1100℃あたりで粒子が溶融し始め、吸放湿のための
隙間がなくなり、吸放湿機能を発揮しなくなり始めるた
めである。もしくは、粒子間の固相反応による粒子間
(結晶間)の再配列がなされ、吸放湿のための隙間がな
くなるためである。溶融しない程度の短時間で処理する
ことも可能ではあるが、時間の制御や装置の耐熱仕様を
考えると不経済であるという理由による。なお、熱処理
によって水酸化物が酸化物に変化しても吸・放湿性能
(ガスの吸着・脱着性能)を示すが、このとき、金属酸
化物特有の機能、例えばTiO2の光触媒作用による抗
菌・抗カビ機能、CoOの触媒作用、Fe23のフェラ
イト電磁吸収作用等を併せ持つことも当然期待できる。
【0020】以上のように、金属水酸化物又は金属硫化
物の分子集合体、好ましくはより均一な沈殿粒子を、そ
の金属塩の種類や特に熱処理温度を変えることにより、
細孔(隙間)の大きさを制御できる。従って、所望の吸
放湿特性を有する調湿材が提供され、しかもその吸放湿
の特性を製造条件によって制御することができる。しか
しながら、水を含んだ沈殿物を乾燥粉末にし、さらに焼
成するためには、膨大なエネルギーあるいは長時間を要
する乾燥・焼成工程が必要となり、さらには乾燥・焼成
時に凝集するために粉砕などの設備が必要となる。その
ため、本発明の第二の態様においては、水を含んだ沈殿
分子集合体を直接使用し、製紙用繊維や結合剤等と混合
して抄紙する。
【0021】水不溶性の沈殿粒子が乾燥すると、多くの
粒子が集まり、凝集することが知られているが、本発明
者らの研究によると、水分を含んだままの金属水酸化物
又は金属硫化物などの水不溶性の分子の集合した沈殿物
を製紙用繊維や結合剤等と混合して湿式抄紙し、乾燥し
ても、物理的なガス吸着又はガスの吸着・脱着が起こる
無数の微細な細孔(隙間)が作られ、このときの沈殿物
や水の量、製紙用繊維の材質と量、乾燥条件、熱処理条
件により細孔(隙間)の分布を管理・コントロールし
て、所望のガス吸着又はガスの吸着・脱着特性を得るこ
とができ、例えば調湿の場合には所望の湿度で吸放湿で
きるように性能をコントロールすることができることが
見出された。
【0022】さらにこのような方法では、製紙用繊維や
結合剤等と混合する前の水不溶性沈殿粒子が水分と共存
しているため、乾燥粉末よりも凝集し難い小さな粒子と
して存在できる特徴を持つ。そのため、予め乾燥又は焼
成して得られる凝集体の粉末を用いた場合と異なり、乾
燥もしくは熱処理の際に抽出された水分子の後に約1〜
10nm程度の微小な空隙(隙間)を生じ、乾燥粉末を
用いた場合とは異なる有利な特性が得られる場合もあ
る。
【0023】また、本発明の調湿紙においては、上記の
ような調湿材料の他、高湿度側での吸放湿特性について
は前記した調湿材料よりも若干劣るものの、結晶性の金
属水酸化物又は金属硫化物の粉末を減圧雰囲気下、好ま
しくは0.9気圧以下の減圧雰囲気下で熱処理したもの
を用いるか、あるいは大気圧下においても、金属水酸化
物又は金属硫化物粉末の平均粒径を50μm以下に調整
して熱処理したものを用いることができる。このように
熱処理あるいは粒径調整すれば、細孔径分布のピーク幅
が狭くてシャープな分布となり、或る一定の比較的狭い
湿度範囲で吸着量が急峻に増大する吸放湿特性を示し、
しかも、出発材料の金属水酸化物又は金属硫化物の平均
粒径及び/又は熱処理雰囲気の圧力、あるいはさらに熱
処理温度を変えることにより、吸着量が急峻に増大する
湿度位置を任意に変えることができる。
【0024】例えば、水酸化アルミニウム(ギブサイト
Al23・3H2O)の場合、加熱により脱水反応が起
こり、ベーマイト(Al23・H2O)を経てアルミナ
(Al23)に変化し、この過程で放出された水の通り
道(脱水経路)に細孔が生じるので、熱処理条件を変え
ることにより、細孔の数及び細孔径を変化させることが
できる。すなわち、熱処理温度を変化させた場合、約2
00℃で既に一部ベーマイトが生じ、約350℃でギブ
サイトが全てベーマイトになり、約500℃以上ではア
ルミナになっている。従って、吸放湿に必要な細孔を生
じさせるためには、結晶性水酸化アルミニウムの熱処理
は約300℃以上で行なうことが望ましい。
【0025】熱処理温度の上昇に伴い、脱水による細孔
形成のため、粉末の比表面積は増大するが、一方、細孔
の融合も起こり始めるため、約500℃以後は温度の上
昇とともに漸次減少し、雰囲気圧力や出発材料の平均粒
径によっても若干異なるが、約700〜800℃付近か
ら急激に減少する。従って、結晶性水酸化アルミニウム
粉末の熱処理は約800℃以下で行なうことが望まし
い。但し、高温での熱処理はそれだけ加熱エネルギーも
必要となるため、吸着量や経済性等の観点からみて、よ
り好ましい熱処理温度は300℃以上、700℃以下で
あり、特に好ましくは400℃以上、600℃以下であ
る。なお、熱処理時間は所望の吸放湿特性に応じて任意
に選定できるが、通常は数時間程度以下で充分である。
また、金属水酸化物又は金属硫化物粉末の平均粒径及び
熱処理雰囲気の圧力が同一であっても、熱処理温度によ
って吸着量が急峻に増大する湿度位置(より正確には所
定幅の湿度域)が変化し、高温になる程、高湿度側に移
行し、またその湿度域における吸着量の増大度合(立上
がり)も急激になる。
【0026】また、金属水酸化物又は金属硫化物粉末の
熱処理による脱水反応(熱分解反応)の促進には、減圧
によって分解生成気体(水蒸気)を材料内から除去する
ことが効果的である。すなわち、熱処理雰囲気の水蒸気
分圧を減少させて熱処理することにより、細孔径を制御
することができる。例えば、雰囲気圧力を0.9気圧以
下、好ましくは0.1気圧以下の減圧雰囲気下で熱処理
した場合、細孔径分布のピーク幅が狭くてシャープな分
布となり、その結果、熱処理温度に応じて相対湿度が約
30〜約60%の任意の値で、吸着量の立上がりが急峻
な調湿材料を得ることができる。また、概して雰囲気圧
力が低くなる程、調湿材料の細孔径分布のピーク幅が狭
く、かつシャープなものとなり、また比表面積が増大
し、平均細孔径が小さくなる傾向にある。なお、熱処理
を減圧雰囲気下で行なう場合、出発材料の金属水酸化物
又は金属硫化物粉末の平均粒径は多少大きくてもよく、
例えば100μm以下でも吸着量の増大が急峻な調湿材
料を得ることができるが、この場合にも、金属水酸化物
又は金属硫化物粉末の平均粒径は後述するように50μ
m以下であることが好ましい。
【0027】さらに、大気圧下で熱処理を行なった場合
においても、金属水酸化物又は金属硫化物粉末の平均粒
径を50μm以下、好ましくは25μm以下、より好ま
しくは2μm以下に調整した場合、同様の傾向を示し、
熱処理温度に応じた所定の湿度域で吸着量が急峻に増大
する調湿材料が得られる。また、金属水酸化物又は金属
硫化物粉末の平均粒径が小さい程、得られる調湿材料の
吸着量は全体的に増大する。さらに、減圧雰囲気下で、
平均粒径の小さな金属水酸化物又は金属硫化物粉末を用
いて熱処理を行なうと、上記効果が助長されることは言
うまでもない。以上のように、結晶性の金属水酸化物又
は金属硫化物の粉末を用いた場合でも、熱処理温度、雰
囲気圧力、金属水酸化物又は金属硫化物粉末の粒径を変
えることにより、得られる粉末の細孔径分布、従って吸
放湿特性を比較的に簡単に、任意に制御することができ
る。
【0028】さらに本発明者らの研究によると、本発明
の調湿紙から作製した筆記用用紙やレター用紙の場合、
万年筆等のインクの滲みも無く筆記することができるこ
とがわかった。この理由は、必ずしも明確ではないが、
紙の内部及び表面部に含まれる調湿材料が、インクの水
分や油分を吸収するためにシャープな輪郭になったもの
と推定される。その結果、本発明の調湿材料は、通常の
紙(普通紙)の製造におけるインク滲み防止用填料とし
ても有用である。
【0029】本発明の調湿紙の製造においては、通常、
製紙用繊維に前記したような調湿材料を混合したスラリ
ーに、必要に応じて結合剤を混合し、あるいはさらに接
着剤や粘土、白土、滑石、酸化チタン、炭酸カルシウ
ム、硫酸バリウム等の填料、あるいは染料、顔料等を混
合し、充分に撹拌したスラリーを、長網抄紙機や円網抄
紙機等の公知の抄紙機で抄造する。
【0030】本発明で使用する製紙用繊維としては、針
葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹晒クラフ
トパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(L
UKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉
樹晒サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカ
ルパルプ(TMP)等の木材パルプを単独で又は混合し
て用いることができるが、これらを主体にして、これに
麻、竹、藁、ケナフパルプ等の非木材パルプや、カチオ
ン化パルプ、マーセル化パルプ等の変性パルプ、ミクロ
フィブリル化パルプ、レーヨン、ビニロン、ナイロン、
アクリル、ポリエステル等の合成繊維、ガラス繊維、ロ
ックウール等の無機繊維を単独で又は混合したものを必
要に応じて併用することもできる。
【0031】製紙用繊維の使用量は調湿材料の使用量に
よって左右されるが、一般に水以外の混合物全量の15
〜95質量%が適当であり、その内の3〜12質量%を
倦縮した合成繊維に替えて使用すると、低密度の基紙を
得ることができる。調湿材料の使用量は、5〜70質量
%程度が適当である。5質量%未満では調湿性能が充分
でなく、一方、70質量%を超えて大量に配合すると、
調湿紙の強度が低下し、粉落ちも多くなるので好ましく
ない。
【0032】本発明では、前記した製紙用繊維及び調湿
材料と共に結合剤を併用することができる。結合剤とし
ては、ポリエチレン、合成パルプ、ポリプロピレン等の
ポリオレフィン繊維及びこれらのミクロフィブリル化繊
維、ポリビニルアルコール繊維の如き熱水溶解型繊維、
ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等を複合
させた低融点の熱接着性繊維等の他に、熱可塑性エスト
ラマー、アイオノマー、変性アイオノマー、酢ビ系共重
合ポリオレフィン、低密度ポリオレフィン、低分子量ポ
リオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルア
ミド、ポリエチレンイミンなどの高分子定着剤、硫酸ア
ルミニウム等のアルミニウム塩類、ステアリン酸、ステ
アリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、エチレンビス
ステアリン酸アマイド、カルナバワックス、マイクロク
リスタリンワックス、密ロウ等のポリオレフィンやワッ
クスのエマルジョンやディスパージョンを単独で又は混
合して用いることができる。
【0033】これらの結合剤は、一般に水以外の混合物
全量の5〜15質量%程度使用されるが、特に抄紙にお
ける乾燥工程中で熱融着可能な140℃以下の融点を示
すものが望ましい。このような結合剤を配合することに
より、繊維の交絡部や繊維間に調湿材料を融着せしめ、
紙層間の強度を向上させ、粉落ちを大幅に改善できる。
また、ポリオレフィンやワックスは、断裁時の刃の摩擦
抵抗を和らげるため、切り易く刃の磨耗性も向上する。
【0034】本発明の調湿紙では、必要に応じて基紙に
接着剤を内添若しくは含浸処理を行なうこともある。使
用する接着剤としては、SBR、MBR等の合成ゴムラ
テックス、アクリルエマルジョン、エチレン酢ビエマル
ジョン、及びこれらの共重合エマルジョン、カゼイン、
澱粉、ポリビニルアルコール等を適宜組み合わせて使用
する。接着剤を内添する場合は、前述した基紙の材料を
混合したスラリーに接着剤を添加する。一方、接着剤を
含浸する場合は、湿式含浸法、乾式含浸法のいずれも採
用できる。湿式含浸法は、基紙の混合材料を一旦抄紙
し、濡れたままの紙匹をワイヤー上に乗せ、水分を絞り
出すと同時に含浸液を紙内部に含浸する方法である。ま
た、乾式含浸法は、基紙を乾燥した後、オフマシンの含
浸機で含浸する方法である。通気性と透湿性の良い調湿
紙を得るには湿式含浸法が望ましい。接着剤の使用量
は、基紙質量の25%以下程度が望ましい。このような
接着剤を添加することにより、調湿紙の粉落ち防止効果
と可撓性向上効果が得られるが、25%を超えて多量に
添加すると調湿性能に悪影響を及ぼすので好ましくな
い。
【0035】本発明の調湿紙を適用して吸着・脱着する
ガスとしては、水蒸気の他、アルゴンなどの不活性ガ
ス、トルエン、キシレン、ホルムアルデヒドなどの有機
ガスなどが考えられる。しかし、硫化水素(H2S)、
亜硫酸ガス(SO2)、塩素ガス(Cl2)、アンモニア
ガス等の反応性ガスなどは化学反応を起こすものであ
り、好ましくない。また、ガスの吸着・脱着を行なう場
合、吸着・脱着するガスの分子の大きさと細孔の大きさ
との間には既に述べたような関係があり、ガス分子に対
し好ましい細孔径は分子の数倍から数十倍の大きさが適
切であることが知られており、吸着・脱着するガスの分
子の大きさが大きくなると、必要とされる細孔径(隙間
の大きさ)も大きくなる。例えば、水分子(分子直径約
0.3nm)の場合には2〜20nm程度、好ましくは
2〜15nmの細孔径、トルエンの場合は4〜25nm
程度の細孔径が好ましい。
【0036】
【実施例】以下、実施例及び比較例を示して本発明の効
果について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に
限定されるものでないことはもとよりである。
【0037】実施例1(調湿材料の調製) JIS A6063アルミニウム合金を表面処理する製
造ラインにおいて、(A)水酸化ナトリウム水溶液中で
の化学溶解エッチング、(B)硫酸浴中での陽極酸化、
さらには(C)金属塩着色などの各処理工程の後で各々
水洗洗浄されるが、上記工程(A)、(B)の後の水洗
水中には水酸化ナトリウムや硫酸、さらにA6063ア
ルミ合金から溶出してくるAl、Mg、Si等のイオン
を含み、また上記(C)工程に用いられる電解着色液中
にはNi、Mg、Co等の金属塩が含まれており、これ
らはその水洗水中にも同様に含まれている。これらの水
洗水を混合し、さらにpH=7に調整するため、水酸化
ナトリウム水溶液を加え、その後微量の有機凝集沈殿助
剤を加え、セパックナーで水酸化物として沈殿させた。
この沈殿物をフィルタープレスにより水分の除去を行な
った。この沈殿物を蛍光X線により元素分析をしたとこ
ろ、表1に示す通りであった。また沈殿物をX線回折法
による同定を行なったところ、非晶質の水酸化アルミニ
ウムであった。このような工業的な排出物(スラッジ)
を原料として用い、これを水洗、脱水した後、300
℃、500℃、700℃及び900℃でそれぞれ熱処理
した。得られた粉末の細孔径分布を、カルロエルバ社製
ソープトマチックを用いて測定した。その結果(細孔径
分布)を図1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】また、得られたアルミナ系調湿材料粉末に
ついて、雰囲気温度を25℃一定にして、相対湿度を0
%から90%へ、そして90%から10%へ変化させ
て、それぞれの相対湿度における水蒸気の平衡吸着量、
すなわち吸着等温線を測定した。その結果を図2に示
す。図2に示される結果から、熱処理温度が上がるに従
い、急激に吸湿する相対湿度が高相対湿度側に移ること
がわかる。また、図1に示されるように、平均細孔径
も、熱処理温度が高温になるに従って大きな平均細孔径
に変化しており、平均細孔径と急激に吸放湿を開始する
相対湿度の間に関連性があることがわかる。
【0040】実施例2〜4(調湿紙の作製) NBKPパルプ:NBSPパルプ:調湿材料(実施例1
で得られたアルミナ系調湿材料粉末の粒径をサブミクロ
ンに調整したもの)=1:1:1(質量比)の割合の混
合物と、適量の水、さらに結合剤としてポリアクリルア
ミド0.5質量%とPVA5質量%をパルプ解離機に入
れ、混合分散させてスラリー状にした。スラリー状の懸
濁液を湿式抄紙により抄紙し、乾燥後、60g/m2
調湿紙を得た。添加した調湿材料としては、熱処理温度
の異なる3種類のもの(500℃、700℃、900
℃)を用いた。
【0041】比較例1(調湿紙の作製) 比較のために、調湿材料を添加しない以外は実施例2と
同様にして調湿紙を作製した。前記実施例2〜4で作製
したそれぞれの調湿紙の水蒸気の吸着等温線を図3〜図
5に示す。また、前記比較例1で作製した調湿紙の水蒸
気の吸着等温線を図6に示す。図3〜5と図6を比較す
れば明らかなように、本発明のアルミナ系調湿材料を添
加して作製した調湿紙は、吸放湿量が大きく、また相対
湿度約80%RHでの吸放湿量の立上がりが大きく、ア
ルミナ系調湿材料を添加しないで作製した調湿紙よりも
吸放湿性能が格段に優れており、特に熱処理温度の高い
アルミナ系調湿材料を添加して作製した調湿紙ほど吸放
湿性能が優れることがわかる。
【0042】実施例5 実施例2の作製手順で調湿紙を作製した。調湿材料とし
ては、実施例1で作製したものと、結晶性の水酸化アル
ミニウムを150〜900℃で焼成したものを用いた。
調湿材料の添加量は、NBKPパルプとNBSPパルプ
を1対1に配合したもの100質量部当り10〜100
質量部とした。作製した調湿紙に、万年筆によるインク
の滲み試験を行なった。調湿材料を添加したものは、全
て滲みが見られなかった。
【0043】比較例2 NBKPパルプ:NBSPパルプ=1:1(質量比)の
割合の混合物と、適量の水、さらに結合剤としてポリア
クリルアミド0.5質量%とPVA5質量%をパルプ解
離機に入れ、混合分散させてスラリー状にした。スラリ
ー状の懸濁液を湿式抄紙により抄紙し、乾燥後、60g
/m2の紙を得た。この紙に、万年筆によるインクの滲
み試験を行なったところ、滲みが見られた。
【0044】
【発明の効果】以上のように、本発明の調湿紙は、水蒸
気等の目的とするガスの吸着又はガス吸着・ガス放出を
行なえるのみならず、ある蒸気圧(相対湿度)で急激な
吸着及び/又は脱着が行なえるように、また、その吸着
及び/又は脱着の開始蒸気圧を任意に調整できるよう
に、その製造条件によって制御することができる。しか
も、本発明の調湿紙は、物理的に水蒸気(ガス)を吸着
・脱着するものであるため、不可逆的な化学吸着と異な
り、繰り返し利用することができる。また、本発明の調
湿紙から作製した筆記用用紙やレター用紙の場合、万年
筆等のインクの滲みも無く筆記することができる。さら
に、本発明の方法によれば、このような優れたガス吸着
・脱着性を有する調湿紙を生産性良く、かつ低コストで
製造できる。従って、本発明によれば、例えば、襖紙、
障子紙、壁紙、包装紙、梱包用資材(箱、袋等)、筆記
用用紙、レター用紙など、室内空間を一定の湿度雰囲気
に保ったり、結露を防止してカビ、ダニの発生や繁殖を
防ぐための調湿、果物等の生鮮食料品や菓子類などの調
湿梱包、文化財や美術品、書籍などの調湿保存、住環境
や収納ケースの不快又は有害なガスの脱臭、物品類の腐
食性ガスからの保護、インクの滲み防止等を目的とした
種々の用途に有用な調湿紙を安価に提供することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1において水酸化アルミニウムスラッジ
を熱処理して得られた粉末試料の細孔径分布図である。
【図2】実施例1において水酸化アルミニウムスラッジ
を熱処理して得られた粉末試料の水蒸気の吸着等温線図
である。
【図3】実施例2で作製した調湿紙の水蒸気の吸着等温
線図である。
【図4】実施例3で作製した調湿紙の水蒸気の吸着等温
線図である。
【図5】実施例4で作製した調湿紙の水蒸気の吸着等温
線図である。
【図6】比較例1で作製した調湿紙の水蒸気の吸着等温
線図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4D052 AA08 CA02 HA33 HA35 4G066 AA12B AA15B AA16B AA18B AA19B AA23B AA24B AA25B AA26B AA27B AA46B AC02B BA03 BA16 CA02 CA04 CA43 DA03 FA03 FA15 4L055 AG09 AG15 EA22 FA30 GA50

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属水酸化物又は金属硫化物の乾燥粉末
    又は熱処理粉末を含有することを特徴とする調湿紙。
  2. 【請求項2】 金属水酸化物又は金属硫化物の非晶質の
    分子集合体粒子又はその凝集体の乾燥粉末又は熱処理粉
    末を含有することを特徴とする調湿紙。
  3. 【請求項3】 前記金属水酸化物又は金属硫化物が、金
    属塩含有水溶液に、酸又はアルカリ水溶液を加えるか、
    あるいはS2-イオンを含む溶液を加え、金属陽イオンと
    陰イオンの反応により沈殿した沈殿物又はその凝集体で
    あることを特徴とする請求項2に記載の調湿紙。
  4. 【請求項4】 前記金属水酸化物又は金属硫化物が、M
    g,Al,Ca,Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,
    Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Y,Zr,Nb及びM
    oよりなる群から選ばれた少なくとも1種の金属の水酸
    化物又は硫化物であることを特徴とする請求項1乃至3
    のいずれか一項に記載の調湿紙。
  5. 【請求項5】 前記金属水酸化物が、非晶質の水酸化ア
    ルミニウムであることを特徴とする請求項2乃至4のい
    ずれか一項に記載の調湿紙。
  6. 【請求項6】 金属水酸化物又は金属硫化物の乾燥粉末
    又は熱処理粉末と、製紙用繊維、及び必要に応じて結合
    剤を含有する水懸濁液を湿式抄紙することを特徴とする
    調湿紙の製造方法。
  7. 【請求項7】 金属水酸化物又は金属硫化物の非晶質の
    分子集合体粒子又はその凝集体の乾燥粉末又は熱処理粉
    末と、製紙用繊維、及び必要に応じて結合剤を含有する
    水懸濁液を湿式抄紙することを特徴とする調湿紙の製造
    方法。
  8. 【請求項8】 (A)金属塩含有水溶液に、酸又はアル
    カリ水溶液を加えるか、あるいはS2-イオンを含む溶液
    を加え、金属水酸化物又は金属硫化物として沈殿させる
    工程、及び(B)得られた水分を含んだままの沈殿物
    と、製紙用繊維、及び必要に応じて結合剤を含有する水
    懸濁液を湿式抄紙する工程を含むことを特徴とする調湿
    紙の製造方法。
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