JP2001521008A - 哺乳類の中枢神経系ミエリンを一過的に変えて神経再生を促進する免疫組成物及びその使用方法 - Google Patents

哺乳類の中枢神経系ミエリンを一過的に変えて神経再生を促進する免疫組成物及びその使用方法

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Abstract

(57)【要約】 血清補体タンパク質を補体固定抗体と併せて投与することからなる、新規の組成物を記載する。抗体は、ミエリンの1以上のエピトープと補体タンパク質に特異的に結合する。これらの組成物は、哺乳類の被験者のCNSにおいてニューロンの再成長、修復及び再生を促進するのに有用である。組成物と方法は、損傷した直後又は慢性的な障害の後に用いることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】発明の分野 この発明は、中枢神経系(CNS)内での神経組織の成長及び/又は再生の促進にお
ける組成物及びその使用方法に関する。
【0002】背 景 CNS 損傷 毎年、カナダで約1,100件の新しい脊髄障害が発生している。合衆国では一年 当たり10,000件以上である。この数は、脳の外傷障害の後に神経の成長阻害に関
与する脳損傷の患者も含めると5倍以上である。北米での慢性脊髄障害患者の数
は、300,000人のオーダーである。この数も、脳の外傷障害の後に神経の成長阻 害に関与する脳損傷の患者も含めると5倍以上である。 脊髄障害は、しばしば損傷部位の下の随意運動を永久的に失わせる。主に若者
と、その他の健常者は、脊髄障害のために対麻痺か四肢麻痺になる。合衆国では
、四肢麻痺患者は200,000人と見積もられている。必要なケアをすると、中枢神 経系(CNS)損傷患者のケアに関する健康管理費が、北米で一年に100億ドルを軽く
越えることは想像に難くない。
【0003】 CNS(脳と脊髄)は、ニューロンと星状細胞、小膠細胞及び乏突起膠細胞のよう なグリアからなる。ニューロンには、一般に2つのタイプの突起:他のニューロ ンの軸索からシナプスの接触を受ける樹状突起と、各ニューロンを介して他のニ
ューロンとエフェクターとを連絡する軸索がある。CNSニューロンの軸索は、ミ エリン鞘に包まれている。 高等な脊椎動物では、CNS内の軸索は、障害後に修復する能力が限られている 。成体哺乳類のCNSのニューロンが軸索切断されると、胚もしくは新生児のCNS又
は成体の末梢神経系(PNS)内のニューロンと対照的に、実質的な軸索の再生が示 されない(Saunders ら、(1992) Proc. R. Soc. Lond. B. Biol. 250:171-180; S
chwab及びBartoldi (1996) Physiol. Rev. 76:319-370; Steevesら、(1994) Pro
g. Brain Res. 103:243-262)。実際、完全なCNS軸索の崩壊は回復を妨げるよう である。ニューロンの細胞体近くの軸索切断された線維は再生成長を開始するが
、その後短い長さ(1-2mm)で頓挫し、しばしば退化(retrograde degeneration)す
る。CNSの軸索は成体の脊髄の環境では再成長しないが、CNSへの末梢神経の移植
は好都合な環境となり、これによりCNS軸索が解剖学的に再生する(Mayら、Cajal
's Degeneration and Regeneration of the Nervous System, History of Neuro
science Series #5 (NY及びOxford: Oxford Univ. Press, 1991) 769頁)。これ らの知見は、成体のCNSニューロンは固有の成長特性を保持し、都合のよい環状 条件では成長プログラムを成功裏に再活性化できることを示している。
【0004】 脊髄障害の現在の治療 脊髄障害の治療には、現在多くの治療法がある。アヘン剤アンタゴニスト、甲
状腺刺激ホルモン放出ホルモン、局索冷却(local cord cooling)、デキストラン
浸剤、アドレナリン作動遮断、コルチコステロイド及び高圧酸素を含む介在治療
が利用されているが、その臨床上の価値は疑問である。 末梢神経の移植は、CNS障害を越えるブリッジとして提案されている (David及
びAguayo (1981) Science 214:931-933; Houle (1991) Exp. Neurol. 113:1-9;
Richardsonら、(1984) J. Neurocytol. 13:165-182; Richardsonら、 (1980) Na
ture 284:264-265; Xuら、(1995) Exp. Neurol. 138:261-276; Ye 及びHoule (1
997) Exp. Neurol. 143:70-81)。嗅覚鞘性細胞の移植組織は、最近、ラットの損
傷した皮質脊髄突起の再生を促進するのに用いられている(Liら、(1997) Scienc
e 277:2000-2002)。最近の研究(Chengら、(1996) Science 273:510-513)はコン ビナトリアル法を用いて初期の研究を展開しており(Siegalら、(1990) Exp. Neu
rol. 109:90-97)、 成体のラットの脊髄を切開後、末梢の移植片を用いて、抑制
環境から線維が再生するように中心灰白質及びより許容な灰白質に白質道をつな
いだ。
【0005】 米国特許第5650148 号と第5762926号は、ノイロトロピン(neurotrophin)のよ うな分子を産生するよう変性されたCNSにドナー細胞を移植することによるCNSに
対する損傷の治療方法を記載している。 また、移植された神経細胞の使用は、臨床上の価値が限られている。軸索は移
植組織に成長できるであろうが、CNS中の抑制物質のために移植組織からCNSには
成長できないであろう。 こうして脊髄障害の現在の治療法をレビュウすると、急性及び慢性いずれの状
況でも哺乳類のCNS中のニューロンの再成長、修復及び再生を促進する手段が依 然として必要であることが分かる。
【0006】ミエリン 障害後に再生しそこなうCNS軸索の不首尾は、ミエリンの存在に関連している ことが示唆されている。軸索を包むミエリン鞘は、シュワン細胞の緻密な原形質
膜と乏突起膠細胞からなる。この組成は脂質、タンパク質及び水を含むいずれか
の他の原形質膜の組成と似ているが、これらの成分の相対的な比率と性質はミエ
リン独特である。CNSのミエリンは乏突起膠細胞で生産され、ミエリン塩基性タ ンパク質(MBP)の発現を特徴とする。MBPはミエリンにのみ結合し、CNS軸索線維 の髄鞘形成の開始で発現される最初のタンパク質の一つである。ガラクトセレブ
ロシド (GalC)は、乏突起膠細胞により生産される主要なスフィンゴ脂質である 。GalCはヒトミエリンで全脂質の約15%を構成し、種を越えて高度に保存されて
いる。GalCは乏突起膠細胞の細胞体表面で発現されるが、ミエリン膜表面でより
高濃度で発現される(Ranschtら、(1982) Proc. Natl. Acad. Sci.USA 79:2709-2
713)。
【0007】 世界中の脊椎動物の属由来の多くの例を含めて(Schweglerら、(1995) J. Neur
osci. 15:2756-2767; Steevesら、(1994) Prog. Brain Res. 103:243-262)、CNS
ミエリンの存在は幾つかの切断されたCNS軸索の再生成長を遅らしたり抑制でき ることが、明らかになりつつある(Schwab及びBartoldi (1996) Physiol. Rev. 7
6:319-370)。下等な脊椎動物(例えばヤツメウナギ)のCNSと高等な脊椎動物(例え
ば鳥ならびに哺乳類)の発生中のCNSは、ともに障害後に実質的な軸索の再生を示
す(Davis及びMcClellan (1994) J. Comp. Neurol. 344:65-82; Hasanら、(1993)
J. Neurosci. 13:492-507; Hasanら、(1991) Restor. Neurol. Neurosci. 2:13
7-154; Iwashitaら、(1994) Nature 367:167-170; Saundersら、 (1992) Proc.
R. Soc. Lond. B. Biol. 250:171-180; Treherneら、(1992) Proc. Natl. Acad.
Sci.USA 89:431-434; Vargaら、(1995) Eur. J. Neurosci. 7:2119-2129)。全 てのこれらの陽性の再生例に共通の表現型は、CNSが障害時に緻密なミエリンを 欠いているか(ヤツメウナギ)、又はミエリンの発生が不完全であること(胎生の ヒナ、新生の子フクロネズミ及びラット)である。ミエリンの発生外観は、損傷 したCNS軸索による再生の失敗に一時的に相関している。さらに、成体CNSに移植
された胎児のニューロンのたくましい成長(Bregmanら、(1993) Exp. Neurol. 12
3:3-16; Li及びRaisman (1993) Brain Res. 629:115-127; Yakovleffら、(1995)
Exp. Brain Res. 106:69-78)は、分化段階でのミエリン阻害剤レセプターの欠 失及び/又はミエリンからのいずれかの阻害シグナルに優先する能力のいずれか に部分的に寄与している可能性がある。
【0008】 ミエリンに結合する特異的な分子はこの阻害活性の仮想媒介物として同定され
ており、ミエリン-結合糖タンパク質(MAG)(McKerracherら、(1994) Neuron. 13:
805-811; Mukhopadhyayら、(1994) Neuron. 13:757- 767)、及び未同定のミエ
リン-由来タンパク質としてのNI35/250 (Bandtlow及びSchwab (1991) Soc. Neur
osci. Abstr. 17:1495; Caroni及びSchwab (1988) J. Cell Biol. 106:1281-128
8; Caroni及びSchwab (1988) Neuron 1:85; Crutcher (1989) Exp. Neurol. 104
:39-54; Savio及びSchwab (1989) J. Neurosci. 9:1126-1133; Schwab及びCaron
i (1988) J. Neurosci. 8:2381-2393); IN-1 (Brosamleら、(1998) Abst. Soc N
eurosci., 24:1559; NI-35/250 (Huber ら、(1998) Abst. Soc Neurosci., 24:1
559; NI-220/250 (van der Haarら、(1998) Abst. Soc Neurosci., 24:1559; ア
レチン(arretin) (Jananiら、(1998) Abst. Soc Neurosci., 24:1560; 及びNOGO
(Chenら、(1998) Abst. Soc Neurosci., 24:1776)が含まれる。 抗-NI35/250抗体、IN-1を用いることによる、NI35/250に関与するミエリン結 合性阻害を機能的にブロックする実験的な試みにより、皮質脊髄軸索の解剖学的
な再生が幾らか促進されている(Bregmanら、(1995) Nature 378:498-501; Caro
ni 及びSchwab (1988) Neuron. 1:85-96; Schnell及びSchwab (1990) Nature 34
3:269-272)。
【0009】 また、鳥の脊髄内の成熟ミエリンの免疫学的な崩壊(Keirsteadら、(1995) J.
Neurosci. 15:6963-6974)及び通常の鳥又は哺乳類の神経発生中のCNS髄鞘形成の
開始の遅延 (Keirsteadら、(1992) Proc. Natl. Acad. Sci.(USA) 89:11664-11
668; Keirstead ら、(1997) Brain. Res. Bull. 44: 727-734; Vargaら、(1995)
Eur. J. Neurosci. 7:2119-2129)は、CNS軸索の再成長及び/又は新芽形成を促 進する。 障害後に軸索成長の再生を抑制する、ある種の成分がミエリン中に局在するか
又は固定されることによって、ミエリンとその阻害成分が一過的に除かれ、損傷
を受けた成体の脊髄の修復が促進されることが望ましい。成体の脊髄は、薬剤( 例えばエチジウムブロミド)を介してインビボで髄鞘脱落される。しかし、これ らの薬剤は、中枢神経系の他の細胞タイプ(例えば星状細胞)に非特異的で心身に
有害な作用を及ぼす。さらに、マウスとラットのミエリン欠失系は容易に入手で
きるが、寿命が短く、大部分は誕生後2、3週間以上生きないため実験的な価値が
限られている。 この結果、神経組織の再生を促進するために、インビボでミエリンを崩壊する
方法を改善する必要がある。本発明は、この要請に応じた方法を提供するもので
ある。
【0010】 補 体 補体系は、抗原-抗体反応の一次体液性媒介物である。これは、互いに、また 抗体と、及び細胞膜と相互作用し得る少なくとも20個の化学的かつ免疫学的に別
個の血清タンパク質からなる(例えば、J. Klein, Immunology: The Science o
f SelfNonself Discrimination (New York: John Wiley & Sons, 1982)、31034
6頁参照)。この系の主な作用体はC1〜C9、B及びDと命名されている11個のタンパ
ク質で、通常血漿タンパク質中に存在する。これらのタンパク質は通常不活性で
あるが、標準的な経路か代わりの経路の2つの別々の方法で活性化される。 標準的な経路は、抗原-抗体反応で活性化される。抗体が抗原と結合すると、 抗体の一定部分の特異的な反応部位が活性化され、次いで補体系のC1分子と直接
結合する。これは、C1プロ酵素の活性化に始まる連続的な反応のカスケードを動
かす。補体系のこの第一段階で多くの分子を活性化するには、わずかな抗原-抗 体の結合しか必要とされない。次に、補体系の後の段階で酵素量を連続的に増し
ながら、C1酵素が活性化する。多様な目的産物が形成され、ウイルスのオプソニ
ン作用及び食作用、細胞溶解、凝集作用、中和、肥満細胞と好塩基球の走化性、
活性化ならびに炎症作用を含む侵入してきた生物や毒素による損傷を妨げるのに
役立つ重要な作用が引き起こされる。
【0011】 また、補体系は、抗原-抗体反応の介在なしに別の経路で活性化される。ある 物質は補体因子B及びDと反応して因子C3を活性化する活性化産物を形成し、残り
の補体カスケードを誘発する。つまり、標準的な経路と本質的に全く同じである
系の最終生成物が形成され、同じ作用を生ずる。この別の経路は抗原-抗体反応 に関与しないので、これは、侵襲性の微生物に対する第一線の防御の一つである
。 補体系の標準的な経路と別の経路の成分は、ともに局部的に作用してC3を活性
化させるので、これは補体の中枢成分である。C3は195kDのタンパク質で、105kD
と75kDの2つのジスルフィド橋状鎖を含む。抗原-抗体複合体にC1qを結合させる
ことにより標準的な経路で活性化される酵素的に活性なC4-C2複合体は、C3を2 つのフラグメントC3aとC3bに切断する。大きい方のC3bフラグメントは目的細胞 の表面に共有結合してプロテアーゼとして作用し、補体カスケードで後の工程を
触媒する。これは、目的細胞を食菌する細胞の能力を増す、マクロファージと好
中球上の特異的なレセプタータンパク質によっても認識される。特に、膜に固定
されたC3bは別の反応カスケードを誘発し、最終的な成分から膜攻撃複合体を集 合させる。 細胞表面結合抗体による補体固定は、活性から数分以内にインビトロで多くの
異なる細胞のイオン恒常性を傷つけることが示されている(Mayer (1972) Proc.
Natl. Acad. Sci.USA 69:2954-2958; Morgan (1989) Biochem. J. 264:1-14)。
【0012】 ミエリン-特異的抗体を用いる補体の使用 ミエリン表面抗原に特異的な補体固定抗体が付着した後、補体血清は、酵素カ
スケードを介して膜攻撃複合体を形成し、細胞外カルシウムの迅速な流入(Dyer 及びBenjamins (1990) J. Cell Biol. 111:625-633)、次いで細胞骨格の再配列 を生じる(Dyer及びMatthieu (1994) J. Neurochem. 62:777-787)。これにより、
崩壊したミエリンが、インビボで、その後の小膠細胞ならびにいずれかの侵襲性
マクロファージによる食作用の標的に処理される。 ミエリンに特異的な抗体を用いる血清補体のインビトロでの使用は、精製した
乏突起膠細胞の培養物中でミエリンの同化を抑制することが示されている(Dorfm
anら、(1979) Brain Res. 177:105-114; Dubios-Dalcqら、(1970) Pathol. Eur.
5:331-347; Dyer 及びBenjamins (1990) J. Cell Biol. 111:625-633; Fryら、
(1974) Science 183:540-542; Hrubyら、(1977) Science 195:173-175)。 インビボでのミエリンの崩壊はモルモットの視神経で抗-GalC血清と補体を用 いて示され(Sergottら、(1984) J. Neurol. Sci. 64:297-303) 、ミエリンの崩 壊は処理から1〜2時間以内で観察された。
【0013】 ヒナのモデル 鳥のモデルで、E13での胎生ヒナの脊髄における髄鞘形成の開始は、切開した 脊髄の機能修復を許容する期間から、機能回復を制限する期間の移行に一致する
。発生日から10日目又は11日目(E10-E11)の胎生におけるヒナの乏突起膠細胞の 最初の発生は、2-3日目の胎生によりミエリンの最初の形成を進め、乏突起膠細 胞で産生される主要なスフィンゴ脂質であるガラクトセレブロシド(GalC)の発現
で特徴づけられる。 成熟した鳥の脊髄では、脊髄を切開した後の局部的な脊髄ミエリンの免疫学的
な崩壊は、脳幹-脊髄ニューロンによる再生を促進した(Keirsteadら、(1995) J
. Neurosci. 15:6963-6974; Keirsteadら、(1997) Brain Res. Bull., 44: 727-
734)。ミエリンの免疫学的な崩壊は一過的で、血清補体とミエリンに特異的な補
体固定(complement-fixing)抗体(例えばGalC抗体)の両方の脊髄内の侵襲により 生じた。このような処理は、成熟脳幹-脊髄軸索を20%まで再生した。 この背景情報は、出願人が本発明に関与している可能性があると考える情報を
知らしめるために示したものである。前記のいずれかの情報が本発明の従来技術
を成すことを必ずしも意図するものでなく、またそのように構成したものでもな
い。明細書を通じて言及される文献は、この出願全体において参照によりここに
導入される。
【0014】 発明の要約 本発明の目的は、哺乳類CNSにおいてニューロンの再成長、修復及び再生を促 進する手段を提供するものである。したがって、本発明は、慢性及び急性双方の
疾患の哺乳類の被験者、例えばヒトのCNSにおいて、ニューロンの再成長、修復 及び/又は再生を促進する組成物ならびにその使用方法を提供する。 本発明の一つの具体例は、治療上有効な量の (a) ミエリンのエピトープに特異的に結合する1以上の補体-固定抗体又はその フラグメント; 及び (b) 1以上の補体タンパク質又はそのフラグメント からなり、ミエリンへの該抗体の結合により、ミエリンの一過的な崩壊及び/又 は一過的な髄鞘脱落を引き起こす組成物である。抗体はモノクローナル及び/又 はポリクローナルであってもよい。補体タンパク質又はそのフラグメントは、投
与されるべき種と異なる種に由来していてもよい。好ましい具体例では、補体タ
ンパク質又はそのフラグメントは、ヒトである。補体成分は、抗体成分由来の成
分と物理的に異なっていてもよく、又は共有もしくは非共有的に抗体成分に直接
結合し、ミエリン表面への抗体の結合で内因性の免疫系攻撃(immune system att
ack)を誘発してもよい。 1以上の成長因子を加えて(適当な順序で)、再成長と再
生を促進してもよい。
【0015】 詳細な具体例で、ミエリンのエピトープは、ミエリン鞘エピトープ、例えばガ
ラクトセレブロシド(GalC)、O4、ミエリン乏突起膠細胞糖タンパク質(MOG)、又 はミエリン結合性糖タンパク質(MAG)、NOGO、NI22、NI-35/250又はアレチン又は
それらのフラグメントである。好ましい例で、ミエリンのエピトープはGalCであ
る。別の好ましい例は、MOGである。 好ましい具体例で、補体タンパク質又はそのフラグメントは、C3成分又はフラ
グメント、変異体、類似体又はそれらの化学誘導体を含む。好ましい例では、成
分C3bが用いられる。 本発明の別の具体例で、組成物は、さらにノイロトロピンと成長因子、例えば
NT-3、CNTF、FGF-1、BDNF、PDGF、GDNF、CT-1又はBNPを含む。 また、本発明は、ミエリンの一過的な崩壊及び/又は一過的な髄鞘脱落による 被験者のニューロンの再成長、修復及び/又は再生を促進するための、これらの 組成物の使用に関する。
【0016】 本発明の一つの具体例で、組成物は、ニューロンの機能障害のためにニューロ
ンの修復及び/又は再生を要する被験者で用いられる。このニューロンの機能障 害は、CNSに対する急性又は慢性の障害の結果であってもよい。また、これはア ルツハイマー病やパーキンソン病のような成人病の結果であってもよい 本発明の別の例で、組成物は、移植された細胞の成長を比較的許容する環境を
CNS内に生じるために被験者に用いられる。 また、本発明は、慢性又は急性の疾患のいずれかで損傷を受けた哺乳類のCNS のニューロンの再成長、修復及び再生を促進する方法に関する。その方法は、ミ
エリンのエピトープに特異的に結合する1以上の補体-固定抗体又はそのフラグメ
ントのデリバリー、及びともにもしくは別々に導出される1以上の補体タンパク 質又はフラグメントのデリバリーを要し、再生を要するニューロン領域でミエリ
ンを一過的に崩壊させるか、かつ/又は一過的に髄鞘脱落させる。 本発明の種々の他の目的と利点は、本発明の詳細な記載から明らかになるであ
ろう。
【0017】 表及び図面 表1は、成体ラットの腰策(lumber cord)由来の逆行性(retrograde)フルオロ ゴールド(Fluorogold)標識を用いた個々の対照動物と実験動物から得た赤核脊髄
ニューロン細胞の数を示している。 図1は、(A) T10レベルで左側を切断した損傷(クレシルバイオレットで染色) での成体ラットの脊髄の横断切片の顕微鏡写真を示す。全ての損傷を査定し、常
に赤核脊髄路が横切っている策を切断した。反対側性の背角(dh)と前角 (vh)は 、常に傷つけなかった。中心管(cc)は方向付けるために標識する。(B) 処理した
対照と免疫学的に崩壊した半側切断脊髄での可視性フルオロゴールドの拡散の査
定。逆行性トレーサの拡散は、腰脊髄に注射した後、示した時間に光顕微鏡レベ
ルで測定した(詳細は方法参照)。免疫学的な髄鞘脱落は、トレーサの拡散にあま
り影響しなかった。
【0018】 図2は、免疫試薬を脊髄内に連続的に7日間侵襲させた後の側背策を通した横断
切片の電子顕微鏡写真を示す。(A)侵襲性部位の1つの脊髄セグメント(<2mm)内
に、裸の髄鞘脱落した軸索の大きな領域が確認できた。幾つかの軸索は、単核細
胞(M、例えば浸潤性マクロファージ)及び/又は内因性小膠細胞に結合し、その中
には卵ミエリン(矢印)かミエリンデブリを含むものもあった。(B)また、他のグ リッドで、単核細胞と侵襲性の多形核細胞(PMN)は髄鞘脱落した軸索に密接に関 連して見出すことができた。マクロファージ及び/又は小膠細胞は、高密度小胞 体(矢印-頭)と「フィンガー-様(finger-like)」プロセスに基づいて同定した。 単核細胞にはコラーゲン(Col)のような基底の板成分を基調とし、それにより自 身を星状細胞と区別するものがある。多葉性核はPMNの特徴で、その同定を容易 にする。(C)ミエリン-崩壊の例。これは、軸索がミエリンに依然として結合して
いる免疫学的な侵襲部位から4〜8mm(脊髄セグメント1〜2個)の位置でしばしば認
められる。しかし、ミエリンのラメラは崩壊(離層)していた。ミエリンを包む幾
つかの結合領域は、持続していた(矢印)。(D)対照をモルモットの補体のみで侵 襲した後の側背策内での軸索の発生例。ミエリン鞘の幾つかの非特異的な損傷が
、特に侵襲部位の脊髄セグメント内で生じた。しかし、ミエリンの緻密な性質は
完全なままであった。最初の倍率x4000(A、B、D)、 x10000 (C)。
【0019】 図 3は、胸部の左側を切断し、次いでミエリンを免疫学的に抑制処理した後の
赤核脊髄ニューロンの再生を立証している。パネルAとBは、同様に実験的に処理
した動物(抗-GalCを有する血清補体で侵襲して14日後) 由来の赤核脊髄ニューロ
ンの顕微鏡写真である。Aは未損傷の赤核由来で、Bは損傷した赤核由来である。
パネルCとDも、同じ対照-処理(血清補体のみを侵襲して14日後)の動物由来のも のである。Cは未損傷の赤核かつDは損傷した赤核である。損傷してから28日後に
吻側の腰策内にフルオロゴールドを注射したところ、未損傷の赤核脊髄ニューロ
ン(A及びC)ならびに損傷した赤核(B及びD)から再生した赤核脊髄ニューロンの標
識が逆行性となった。(E)と(F)軸索切断された赤核脊髄ニューロンは、損傷時に
最初のRDA標識(白色の矢印)で、それから28日後に二番目のFG標識(白抜きの矢印
)で逆行性標識した。二回標識した(RDA+FG)細胞は星で示している。これは、免 疫学的なミエリン-抑制処理の後に赤核脊髄ニューロンが再生することを示す。 スケールバー = 100μm。
【0020】 図4は、胸部の損傷を受けて免疫学的に処理した後の赤核脊髄ニューロンの再 生に関する相対量査定を示す。再生は、別の組織切片中のFG-標識細胞を計測し て査定した。多極性ニューロンの形態とFG標識をともに有する細胞は、陽性とし
た。再生割合は、損傷した赤核由来の逆行性標識細胞の数を同じ動物内の対照の
未損傷赤核と比較して算出した。各動物について、損傷の程度を査定した。黒塗
りのバー:抑制されたミエリン;斜線の入ったバー:プールした対照処理群。デー タは、±s.d. を示す。
【0021】 図5は、免疫学的な髄鞘脱落における一つの補体タンパク質の除去効果を示す 。(A)対照の未損傷脊髄。側背策を通した横断切片の電子顕微鏡写真は、成体の ミエリン鞘の超微構造を示している。(B)ミエリン特異的抗体とヒト補体血清で 侵襲して7日後に、完全な(profound)ミエリン抑制が生じた。(C)補体のC3成分 を除くと、ミエリンを除けない。これは、このタンパク質が、(i)オプソニン作 用、又は(ii)溶解性膜攻撃複合体(MAC)、最終的な溶解性経路複合体へのカスケ ードの伝達のいずれかで基本的な役割を果たしていることを示している。これは
、有効で一過的な髄鞘脱落に対する標準的な補体経路を活性化するため、抗体を
結合するミエリンに特異的な細胞表面に基本的かつ必須の要件であると考えられ
る。
【0022】 図6は、胸部を損傷し、免疫学的処理が遅れた側方前庭脊髄ニューロンの再生 に関する相対量査定を示す。示しているように、免疫学的な髄鞘脱落処理は損傷
してから1ヶ月もしくは2ヵ月遅れた。別の組織切片中のFG-標識細胞を計測して 、再生を査定した。多極性ニューロンの形態とFG標識をともに有する細胞は、陽
性とした。再生割合は、損傷した側方前庭脊髄核由来の逆行性標識細胞数を、同
じ動物内の対照の未損傷側方前庭脊髄核と比較して算出した。各動物について、
損傷の程度を査定した。黒塗りのバー:抑制されたミエリン;白抜きのバー:プー ルした対照処理群。データは、 ±s.d.を示す。
【0023】 図 7は、A) ラットの中枢神経系の背面図を示す。これは、相対的な起点と赤 核脊髄路(RN)と側方前庭路(LVe)の経路を示している。また、胸部の左側を切断 した損傷 (〜T10、線)、免疫学的な侵襲部位(〜T11、縦の棒)及びフルオロゴー ルドの注射部位(〜L1、斜めの棒)を示している(無地の線)。B)下の位置の胸部と
吻側の腰脊髄を介した側矢状切片の複合顕微鏡写真(T9- L1、吻側が上)。幾つか
のフルオロゴールドの拡散は、強力な白い「ハロ」として注射部位から明らかに
発せられる。しかし、この染色は注射部位から離れるにつれて急速に減じ、免疫
学的な侵襲部位であるT11に対して吻側には全く見られなかった(つまり、T10に も、それより上部の損傷にも拡散はなく、この結果、脳幹-脊髄突出を逆行性標 識する「擬」陽性は全くない)。C) T10レベルでの左側切断した脊髄損傷(クレシ
ルバイオレットで染色)の横断切片の顕微鏡写真。全ての損傷を査定し、赤核脊 髄路と側方前庭脊髄路が横切っている策を常に切断した。反対側性の背角(dh)と
前角(vh)は、常に傷つけなかった。中心管(cc)は、方向づけ用に標識する。DとE
) 障害とポンプの移植部位内の血球に関連した非特異的な蛍光は、それぞれ障害
とカニューレ移植に関連した損傷の程度を示す。特異的なフルオロゴールド蛍光
標識は、カニューレ移植又は半切断損傷のレベルでは全く観察されなかった。
【0024】 図8は、胸部の左側を半切断し、次いで免疫学的にミエリン抑制処理した後の 側方前庭脊髄ニューロンの再生を示す。パネルAとB は、同様に実験的に処理し た動物(抗-GalCを有する血清補体での侵襲から14日後)由来の側方前庭脊髄ニュ ーロンの顕微鏡写真である。Aは損傷した側方前庭核由来、Bは未損傷の側方前庭
核由来である。また、パネルCとD は同様の対照-処理動物(血清補体のみの侵襲 から14日後)由来である。ここで、Cは損傷した側方前庭脊髄核、Dは未損傷の側 方前庭脊髄核である。損傷してから28日後に吻側の腰策内にフルオロゴールドを
注射したところ、未損傷の側方前庭脊髄ニューロン(BとD)ならびに損傷した側方
前庭脊髄核(AとC)から再生した側方前庭脊髄ニューロンが逆行性標識された(さ らなる詳細については結果を参照のこと)。パネルEは中脳を介した横断面図で、
側方前庭核(LVe)、SpVe = 前庭脊髄核、MVe = 内側前庭核、4V =第4室、FN = 顔面神経路、7 =第7頭部(顔面)核、PFl = 副小葉の位置を示している。スケール
バー = 100μm。
【0025】 図9は、胸部を損傷し、免疫学的に処理した後の、赤核脊髄と側方前庭脊髄の ニューロンの再生に関する相対量の査定を示す。再生は、別の組織切片でFG-標 識した細胞を計測して査定した。多極性ニューロンの形態とFG標識をともに有す
る細胞は、陽性とした。再生割合は、損傷した核を、同じ動物内の反対側性(未 損傷)の核と比較して算出した。各動物について、損傷の程度を査定した。黒塗 りのバー:実験、;白抜きのバー:プールした対照群。 図10は、慢性的に側方を半切断し、免疫学的処理が遅れた下行性脳幹-脊髄軸 索の再生についての定量的な査定を示す。対照(PBS、Ab、GpC)処理(白抜きのバ ー)又は免疫学的な崩壊/髄鞘脱落(黒塗りのバー)した後の反対側性の未損傷核に
対する、逆行性標識された赤核(赤)と側方前庭(緑)のニューロンの割合。反対側
性の未損傷に対する、損傷核中の標識細胞の割合として示す。
【0026】 発明の詳細な記載 以下の用語と略語を、明細書及び請求の範囲を通して用いる。 用語「抗体又はそのフラグメント」は、当該分野で周知の分子生物学の技術で
つくられる組換え体、キメラ及び親和性変性型を含む。 「CNS」は、中枢神経系を意味する。 用語「補体タンパク質又はそのフラグメント」(C)は、全部で13個のいずれか の血清タンパク質又は20個より多いいずれかの中間体、及び補体系の複合体、抗
原-抗体反応の一次体液性媒介物に関し、変異体、類似体及びそれらの化学誘導 体を含む。 用語「組成物」は、1以上の成分を意味するのに用いられる。組成物の要素は ともに混合することができる。しかし、必ずしも同じ溶液中で合わせる必要はな
い。別の例では、組成物の要素は必ずしも包んだり、保存したり、又はともに混
合する必要さえない。要素(抗体型及び補体型)は、連続して又は同時に神経の損
傷部位に導出される。治療上有効な一次的な順序についての必要性は、当業者に
より理解される。少なくとも補体タンパク質又はその活性フラグメントに加えて
、少なくとも1つの補体固定抗体又はそのフラグメントの概念は、組成物の概念 に等しい。これらの要素は損傷部位に導出されてミエリン中の適当なエピトープ
と複合体を形成し、一過的に髄鞘脱落される。したがって、最初の2つの型の要 素(1以上の各タイプの要素、例えば2以上の抗体又は補体タンパク質もしくはフ ラグメントであってもよい)は一過的な髄鞘脱落の標的部位に導出され、ミエリ ン上のエピトープとその場でインビボで複合体を形成する。
【0027】 用語「髄鞘脱落」は、神経系組織におけるミエリンの除去又は崩壊を意味する
。髄鞘脱落は、ニューロンの周囲やニューロン突起(例えば軸索)のようなミエリ
ン鞘の除去からなる。この工程は、実験状態と病理状態の双方で化学的か免疫学
的であってもよい。この発明は一過的に髄鞘脱落させ、修復と再成長を促進する
。 用語「崩壊」は、ミエリンの三次元的コンフォメーションの離層又は崩壊を意
味する。 本発明の治療上の用途の記載に用いられる際の用語「機能障害」は、神経系に
対するいずれかの型の外傷及びその後の機能喪失を含む。このような障害は、身
体的な障害や疾患のいずれかから生じる。 用語「Fab」は、2つのFabフラグメント(Fc領域に加えて重鎖と軽鎖の抗体ドメ
インをそれぞれ有する)を生じるヒンジ領域の抗体を切断して得られる抗体フラ グメントを意味する。 用語「Fc」は、補体を活性化しうる抗体の不変領域を意味する。 用語「Fvフラグメント」は、抗体の重鎖と軽鎖の可変ドメインのヘテロ二量体
を意味する。これらの可変ドメインは、ペプチドリンカーか設計した(engineere
d)ジスルフィド結合により結合されていてもよい。
【0028】 成長因子は、細胞の成長又は増殖を刺激する細胞外ポリペプチドシグナル分子
である。例えば、表皮細胞成長因子(EGF)と血小板由来成長因子(PDGF)である。 多くの成長因子は、細胞の成長や増殖の誘導に加えて他の作用を有する。成長因
子は、広く特異的な群と狭く特異的な群に分けることができる。広く特異的な因
子は、PDGFとEGFのように、いずれの細胞群にも影響を及ぼす。狭く特異的な因 子は、その逆である。無傷の動物において、細胞型の増殖は、一つの成長因子よ
りむしろ成長因子の特異的な組み合わせに依存している。したがって、かなり少
数の成長因子群が異なる組み合わせで役立ち、高等動物中の多くの型の細胞それ
ぞれの増殖を選択的に制御する。 線維芽細胞成長因子(FGF)は通常細胞内のタンパク質群のいずれか1つで、重 要な血管由来機能を有し、治癒ならびに組織修復を促進する。これらの因子の過
剰な活性は、新形成に関連している。 ノイロトロピン因子は、ニューロンの成長と再生を促進する物質群である。身
体の他の場所の成長因子は細胞分裂を促進し支持するが、ニューロンは分裂でき
ない。しかし、ニューロンは損傷した後に再生でき、ノイロトロピン因子はこの
再生を促進する。また、それらは軸索と樹状突起、他のニューロンとの連結をな
すニューロン枝の成長を促進する。
【0029】 「GalC」はガラクトセレブロシドを意味する。 「MAG」はミエリン結合性糖タンパク質を意味する。 「MBP」は、ミエリン塩基性タンパク質を意味する。 「MOG」は、ミエリン乏突起膠細胞糖タンパク質を意味する。 用語「神経組織」は、神経系領域に一般的に位置するニューロン及び他の細胞
、例えばCNSの脊髄を意味する。 「PNS」は、末梢神経系を意味する。 用語「組換え抗体又はそのフラグメント」は、Fcドメインが別種のFcドメイン
又はアイソタイプに位置している抗体又はそのフラグメントのキメラもしくは組
換え型、結合部位が変えられている抗体又はそのフラグメントの親和性変性型、
ヒンジ領域が変えられている抗体又はそのフラグメントの結合活性変性型、それ
らの免疫反応性フラグメント及びその組み合わせを集合的に意味する。 用語「神経組織の再生」は、解剖学的及び/又は機能的にニューロンの連結を 再形成するニューロンの再成長を含む。
【0030】 本発明は、ミエリンを産生するグリア細胞上のエピトープを結合する抗体と補
体との組み合わせはミエリン鞘の崩壊と髄鞘脱落に用いることができ、哺乳類の
神経組織の修復と再生を促進するとの予期しなかった発見にある。この発明の組
成物は、ニューロンの柔軟性と神経連結の再成長の促進を要する哺乳類の神経系
障害又は疾患の場合に、治療剤として価値がある。本発明によれば、神経組織は
障害、外傷又は疾患の後できるだけ早くミエリンを崩壊する組成物に曝される。
一過的に髄鞘脱落させるプロトコルの実際例は、Kierstead及びBlakemore, 1997
, J. Neuropath.Expt.Neurol. 56:1191-1201; Kiersteadら、1998, Glia, 22: 1
61-170から決定することができる。 本発明は、神経組織を、ミエリンに結合する補体固定抗体と補体からなる治療
上有効な量の組成物と接触させることによって、神経系機能障害の哺乳類の被験
者(例えばヒト)の神経組織の再生を促進する組成物及びその使用方法を提供する
ものである。獣医薬分野での組成物の使用も、本発明の具体例である。 本発明の組成物は、ミエリンを結合する1以上の抗体又はそのフラグメントと
、1以上の血清補体タンパク質又はそのフラグメントからなる。
【0031】抗 体 この発明に用いられる抗体は、ミエリンに特異的に結合するいずれかの抗体( 該抗体は補体系を活性化する)又はそのフラグメントであってもよい。本発明の 好ましい抗体は、ミエリン鞘エピトープ、例えばガラクトセレブロシド(GalC)、
O4、ミエリン乏突起膠細胞糖タンパク質(MOG)、又はミエリン結合性糖タンパク 質(MAG)に結合する。他の好ましいエピトープはNOGO(先のNI 35/250)及びNI220 及びアレチンである。抗体の産生 本発明の抗体又はそのフラグメントは以下のものであってもよい: a) 天然にある; b) 多発性硬化症患者由来のB-細胞のような疾患状態から得られる抗体; b) 組換えDNA技術でつくられる; c) 大きい分子の生化学的又は酵素的なフラグメント化でつくられる; d) a)〜c)を組み合わせた方法でつくられる;又は e) 抗体を産生するいずれかの他の手段でつくられる。 ヒト抗体は、昆虫細胞の使用及びタバコやトウモロコシの種のようなトランス
ジェニック植物を含む当業者に公知の幾つかの技術(Cramer, C.L., CropTech De
velopment Corp; Reno, J., NeoRx - IVC's IV Annual Conference: Sept 9-12,
S.F., U.S.A.)で産生することができる。
【0032】 本発明の抗体は、モノクローナル又はポリクローナルのような伝統的な技術( 但しモノクローナル抗体が好ましい)によってもつくることができる。一般に、 抗体は、通常の技術にしたがって広範囲な種類の脊椎動物や無脊椎動物に所望の
免疫原を注射して得ることができる。げっ歯目、特にマウスが好ましいが、ウシ
、ヒツジ、ウマ、ブタ又は鳥の群のような他の種を用いてもよい。これらの動物
の免疫処置は容易に行うことができ、それらのリンパ球、特に脾細胞は融合用に
得てもよい。 免疫化のプロトコルは周知であり、かなり変えてもよいが、依然として有効で
ある(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice (第2版) (Aca
demic Press, 1986)。ミエリン分子の抗原性フラグメントを含む単離タンパク質
、合成ペプチド及び細菌融合タンパク質は、免疫原として用いてもよい。ペプチ
ド又は組換えタンパク質の免疫原が、抗体-産生B細胞又は脾細胞に対することが
望まれるエピトープを含有するタンパク質又はそのフラグメント用に強化される
ことが好ましい。 タンパク質又はそのペプチドは所望の程度にいったん精製すれば、免疫化用の
適当な生理学的な担体に懸濁もしくは希釈してもよく、又はアジュバントに結合
させてもよい。ミエリン中で強化される免疫原性量の抗原性製剤やその抗原性の
一部は、一般に1μg〜100mg/kgの範囲の濃度で宿主に注射される。投与は、筋肉
内、腹膜、皮下又は静脈のような注射であってもよい。投与は1回、又は通常1
〜4週間の間隔で多数回であってもよい。
【0033】 免疫化した動物は所望の抗原に対する抗体の産生についてモニターし、次いで
脾臓を除いて脾臓のB-リンパ球を単離し、骨髄の細胞系と融合するか変質させる
。B-リンパ球は、血液から単離することもできる。変性又は融合は、通常の方法
で行うことができる。融合技術は、多くの特許、例えば米国特許第4,172,124号;
第4,350,683号;第 4,363,799号;第 4,381,292号;及び第4,423,147号に記載され
ている。不死化の方法は重要でないが、もっとも一般的な方法は骨髄融合パート
ナーとの融合である。不死化の他の技術はEBV変性、癌遺伝子やレトロウイルス のような裸のDNAを用いる形質転換、又は細胞系を安定に維持し、モノクローナ ル抗体を産生するいずれかの他の方法を含む。モノクローナル抗体を得るための
一般的な方法は記載されている(Kohler及びMilstein (1975) Nature 256:495-49
7)。ヒトのモノクローナル抗体は、欧州出願第82.301103.6号に記載されている ように、WI-L2のような適当なヒト融合パートナーとの脾臓細胞の融合で得るこ とができる。マウスのX-マウスモノクローナル抗体を産生する詳細な技術は、教
示されている(Oi及びHerzenberg (1980) Mishell 及び Shiigi (編集) Selected
Methods in Cellular Immunology 351-372)。得られたハイブリドーマをスクリ
ーニングして、個々のクローンを単離する。クローンは、それぞれ抗原に対して
一つの抗体種を分泌する。
【0034】 不死化した細胞系を通常の技術にしたがってクローンしスクリーニングして、
ミエリンに結合できる抗体を細胞の上清中に見出した。次いで、適当な不死化細
胞系をインビトロで成長させるか、又は腹水を生じる適当な宿主の腹腔に注入し
てもよい。不死化されたハイブリドーマ細胞系は、種々の源から容易につくるこ
とができる。また、これらの細胞系は他の新形成B-細胞と融合していてもよく、
そのような他のB-細胞は抗体をコードするゲノムDNAの受容体として役立つこと ができる。 形質転換された細胞系又はハイブリッド細胞系により分泌されるモノクローナ
ル抗体は、免疫グロブリンの群又は亜群、例えばIgM、IgD、IgA、IgG1-4 又はIg
Eのいずれであってもよい。IgGは診断アッセイで利用されるもっとも一般的なア
イソタイプであるので、しばしば好ましい。
【0035】 ヒト宿主で、ヒト以外の動物由来のモノクローナル抗体の潜在的な抗原性を回
避するためには、キメラ抗体を構築してもよい。例えば、免疫グロブリン分子の
抗原結合フラグメント(可変領域)は、ヒトで外来として認識されない別のタンパ
ク質の少なくとも一部、例えばヒト免疫グロブリン分子の一定位置に、ペプチド
連鎖で連結されていてもよい。これは、動物の可変領域の軸索を、ヒトのκ又は
γの不変領域の軸索と融合してなすことができる。例えばPCT 86/01533号、EP17
1496号及び EP173494号に記載されているように、種々の技術が当業者に知られ ている。 抗体を産生する別の方法として、米国特許第5627052号は、特定の抗体の結合 特性と所望の機能を複製するタンパク質の産生方法を記載している。この方法の
応用例は、例えば多発性硬化症患者の血液から特異的な抗-ミエリン抗体を産生 するヒトB-リンパ球細胞を単離し、特徴づけることを含む。
【0036】抗体の設計 抗体は無傷で用いるか、又は補体に結合するFc領域がある限りFv、Fab及び F(
ab')2 のようなフラグメントとして用いることができる。このような抗体フラグ
メントは、大きさが小さいために、抗体全体よりもインビボで良い分散特性を生
じる。組換えDNA及び化学的な修飾法で抗体を設計する手段は、当該分野で周知 であると考えられる。 抗体は当該分野に周知の方法により酵素ペプシンを用いてフラグメント化し、
高度に免疫反応性のF(ab')2、F(ab')及びFabフラグメントとしてもよい(Colcher
ら、(1983) Cancer Res. 43:736-742参照)。 今では分子クローニング技術の発展により、予め決めた抗原特異性に対するフ
ァージのディスプレイライブラリーをパニング(paning)することで、ヒトモノク
ローナル抗体のフラグメントを迅速に産生することができる(典型的な技術は、P
istilloら、Human Immunology, 57(1):19-26, 1997 Sep 15参照)。 抗体又はそのフラグメントは、当該分野で周知の分子生物学の技術により、組
換え型にもつくられる (Riceら、(1982) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:7862-
7865; Kurokawaら、(1983) Nucleic Acids Res. 11:3077- 3085; Oiら、(1983)
Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:825-829; Bossら、(1984) Nucleic Acids Res.
12:3791-3806; Boulianneら、(1984) Nature (London) 312:643-646; Cabilyら
、(1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3273-3277; Kentenら、(1984) Proc.
Natl. Acad. Sci. USA 81:2955- 2959; Liuら、(1984) Proc. Natl. Acad. Sci
. USA 81:5369-5373; Morrison ら、(1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:68
51-6855; Neubergerら、(1984) Nature (London) 312:604-608; Potterら、(19
84) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:7161- 7165; Neubergerら、(1985) Nature
(London) 314:268-270; Jonesら、(1986) Nature (London) 321:522-525; Oi ら、(1986) BioTechniques 4:214-221; Sahaganら、(1986) J. Immunol. 137:10
66-1074; Sunら、(1986) Hybridoma 5 (Supp. 1):S17- S20;及びSunら、(1987)
Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:214-218参照)。
【0037】 より詳細には、抗体とそのフラグメントは、上記の文献に記載されている当該
分野で公知の組換えDNA技術で、別種の抗体フラグメント、例えばマウスの不変 領域にヒト不変領域(Fcドメイン)を置換することによってキメラ型に変えること
ができる。これらのFcドメインは、種々のヒトアイソタイプ、つまりIgG1、IgG2 、IgG3、IgG4又はIgMであってもよい。 さらに、抗体とそのフラグメントは、上記の文献に記載されている当該分野で
周知の組換えDNA技術を用いて結合部位を変えるか又はヒンジ領域を変えること によって、親和性変性型、結合活性変性型又はその両方に変えられてもよい。 また、組換え抗体型はフラグメント化されて、記載されているのと同様の免疫
反応性フラグメントF(ab')2、F(ab')及びFabを産生することができる。 抗体フラグメントは、抗体全体の結合と特異性を維持するのに必要な、抗体の
もっとも小さい機能分子であるFvフラグメントを含んでいてもよい。Fvフラグメ
ントは、可変性の重鎖と可変性の軽鎖のドメインからなるヘテロ二量体である。
抗体のタンパク質加水分解消化でFvフラグメントを単離することができるが、Fv
sを得るのに好ましい方法は組換え技術によるものである(Skerra及び Pluckthun
(1988) Science 240:1038- 1041参照)。
【0038】 Fvsは非共有的に結合した VH 及びVLドメインであってもよいが、これらは互 いに解離する傾向がある。安定なFvsは、VH 及び VLドメインがペプチド連鎖で 結合している組換え分子をつくることによって産生でき、そうして抗原-結合部 位が一つのタンパク質に再生される。これらの組換え分子は、一本鎖Fvs (scFvs
)と命名されている。scFvsの製造手段は当該分野で公知である(Raag及び Whitlo
w (1995) FASEB 9:73; Birdら、(1988) Science 242:423-426; Hustonら、(1988
) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883参照)。また、設計したジスルフ ィド結合で2 つの可変ドメインを結合し、安定化することができる。これらはジ
スルフィドFvs (dsFvs) と命名されている(Reiter及びPastan (1996) Clin.Canc
er Res. 2:245-252)。 抗体のFcドメインは、補体の活性化に必要である。Fcドメインを欠くFvフラグ
メントは、補体を活性化することができない。Fvフラグメントを本発明で有用な
ものとするには、それらが補体カスケードの新たな活性体を有するように設計し
なければならない。例えば、Fvフラグメントは、IgG抗体のCH2 ドメインを含む ように設計することができる。別の例として、合成分子全体をFvフラグメントに
連結して補体を活性化するか、又は当該分野の類似した補体の活性体をFvフラグ
メントに連結してもよい。 また、ポリエチレングリコールのような分子を加えて抗体を修飾し(米国特許 第5766897号に記載)、その生物学的な半減期、効力又はその場での分子の拡散を
長くしてもよい(米国特許第5747446号、Chinolら、98 Brit. J. Cancer, 78:189
-197; Francisら、98, Intl J. Hematol. 68:1-18)。
【0039】抗体又はフラグメントの標識: この発明の抗体又はそのフラグメントは修飾せずに用いてもよく、又は種々の
方法、例えば標識して修飾してもよい。標識(ラベリング)は共有もしくは非共有
的に標識(ラベル)に結合して直接あるいは間接的な抗体の検出手段を提供し、組
成物を用いる治療処理の経過をモニターできる手段を意味する。 標識は、検出可能な化学的又は物理的な性質を有するいずれの物質からなって
いてもよい。放射性核種、酵素、酵素基質、酵素補因子、酵素阻害剤、リガンド
(特にハプテン)、蛍光剤、発色団、発光体及び磁気粒子を含む広範囲な標識が、
知られている。これらの標識は、それら自体の物理的性質(例えば、蛍光剤、発 色団及びラジオアイソトープ)、又はそれらの反応性もしくは結合特性(例えば酵
素、基質、補因子及び阻害剤)のいずれかに基づいて検出できる。これらの物質 は、当業者に周知である。米国特許第4,671,958号は、抗体を標識するか又は抗 体に補体を結合するのに使用できる方法を教示している。
【0040】補 体 組成物の補体部分は、1以上の補体タンパク質、フラグメント、変異体、類似
体及び/又は化学誘導体からなっていてもよい。 補体タンパク質のフラグメントは、C分子のいずれかのサブセットを意味する 。例えば、C3フラグメントはC3b、iC3b、C3a、C3c、C3dg及び C3dを含む。 補体タンパク質又はそのフラグメントの「変異体」は、タンパク質全体又はそ
のフラグメントのいずれかに実質的に類似し、補体タンパク質又はそのフラグメ
ントの生物活性に実質的に類似した生物活性を有する分子を意味する。分子は、
別の分子とともに実質的に類似した構造を有するか、又はともに類似した生物活
性を有する場合、その分子に「実質的に類似」であると言える。 C3b変異体は、例えばC3b二量体及びより高級なオリゴマーを含む。C活性化が 細胞表面で生じる場合、酵素反応の複数のサイクルは、マルチマー型のC3b表面 に沈積する。実際、C3b二量体や高級オリゴマーは、C3bモノマーより細胞に対す
る親和性が高い。
【0041】 補体タンパク質やそのフラグメントの変異体は、当該分野で周知の化学的方法
又は組換え法によりつくられる。このような変異体は、例えばアミノ酸配列内で
のアミノ酸残基の欠失又は挿入、又は置換を含む。例えば、少なくとも1つのア
ミノ酸残基が除かれ、異なる残基がその場に挿入されていてもよい。機能特性又
は免疫学的特性の実質的な変化は、あまり保存されていない置換、つまり(a)置 換領域のペプチド骨格(例えばシート又はヘリックスのコンフォメーション)の構
造、(b)目的部位の分子の電荷又は疎水性、又は(c)側鎖のバルクの維持作用が非
常に有意に異なる置換を選択することによってなされる。一般に大きな変化を誘
発すると考えられる置換は以下のものである:(a)グリシン及び/又はプロリンを
別のアミノ酸で置換するか、又は欠失もしくは挿入する;(b)親水性残基(例えば
セリル又はスレオニル)を疎水性残基(例えばロイシル、イソロイシル、フェニル
アラニル、バリル又はアラニル)に代えて(又はそれらで)置換する;(c)システイ
ン残基を別の他の残基に代えて(又は他の残基で)置換する;(d)電気陽性側鎖を 有する残基(例えばリシル、アルギニル又はヒスチジル)を、電荷が電気陰性の残
基(例えばグルタミル又はアスパルチル)に代えて(又はそれらで)置換する;又は
(e)側鎖が大きい残基(例えばフェニルアラニン)を、大きい側鎖がない残基(例え
ばグリシン)に代えて(又はそれで)置換する。
【0042】 多くの欠失、挿入及び置換は、タンパク質分子の特性にラジカルな変化を生じ
ないと考えられている。しかし、進行するにつれて置換、欠失又は挿入の正確な
効果を推測しにくい場合は、当業者は通常のスクリーニングアッセイでその効果
を評価することが好ましい。例えば、所定の抗体への結合のようなタンパク質分
子の免疫学的特性の変化は、競合型イムノアッセイのようなイムノアッセイで測
定される。 補体タンパク質又はそのフラグメントの「類似体」は、タンパク質全体又はそ
のフラグメントのいずれかに実質的に類似した非天然の分子を意味する。 補体タンパク質又はそのフラグメントの「化学誘導体」は、通常はタンパク質
又はフラグメントの一部ではない別の化学分子を含む。ペプチドの共有結合修飾
は、この発明の範囲に含まれる。このような修飾は、目的のペプチドのアミノ酸
残基を有機性の誘導化剤(該剤は、当該分野で周知であるように選択された側鎖 又は末端残基と反応できる)と反応させて分子に導入することができる(T. E. Cr
eighton Proteins: Structure and Molecule Properties (San Francisco: W. H
. Freeman, 1983) 7086頁)。 組成物の補体部分は、抗体成分由来の成分と物理的に異なっていてもよい。ま
た、補体タンパク質又はそのフラグメントは共有的又は非共有的に抗体成分に直
接結合し、ミエリン表面への抗体の結合で内因性免疫系攻撃を誘発してもよい。
【0043】 補体成分は、補体系を含むタンパク質中で精製された画分ならびにリッチ(enr
iched)にした画分であってもよい。このような調製は補体の相対的な不安定性を
考慮して因子を十分に組み合わせ、一過的な髄鞘脱落を生じさせるように補体カ
スケードを完全に活性化することができる。 組成物の補体部分は、1以上の補体タンパク質、フラグメント、変異体、類似
体及び/又は化学誘導体からなっていてもよい。しかし、補体のC3成分はオプソ ニン作用か、又は溶解性MACへのカスケード伝達のいずれかで基本的な役割を果 たしていることに留意すべきである。好ましい例では、C3成分又はそのフラグメ
ント、変異体、類似体又はそれらの化学誘導体は、組成物の補体の一部に含まれ
るべきである。髄鞘脱落を目的とする場合、C3成分は最適な結果を間違いなく生
じるはずである。再生を目的とした場合、その必要性は明らかに少ない。 組成物の補体部分は、被験者自身の血清、ドナーの血清、又は例えば市場で入
手可能で、一貫して承認されたスタンダードを生じる多くのドナーのプールした
血清に由来していてもよい。 補体成分は、組成物が神経組織に直接(例えば鞘内で)導入される事実により、
投与される種とは異なる種に由来していてもよい。
【0044】他の因子 組成物は、成長因子及びノイロトロピンのような他の化学品又は薬剤を任意に
含んでいてもよい。軸索の再生でCNS-ミエリン結合阻害剤をブロックする有用な
作用は、NT-3のようなノイロトロピンの並行使用で促進されることが知られてい
る(Bregmanら、(1995) Nature 378:498-501; Schnellら、(1994) Nature 367: 1
70-173)。FGF-1も用いることができる(Changら、1996, 上記)。 好ましい例では、組成物は、GalC-特異的なモノクローナル抗体とヒト血清補 体からなる。 別の好ましい例では、組成物は、MOG-特異的なモノクローナル抗体とヒト血清
補体とからなる。
【0045】用 途 本発明の組成物は、ミエリンの一過的な免疫学的崩壊又は軸索の一過的な髄鞘
脱落を刺激することによって、被験者のCNSにおけるニューロンの再成長、修復 及び/又は再生を促進するのに用いることができる。本発明の一過的な髄鞘脱落 の過程はCNSで起こることが好ましく、脊髄でおこることがもっとも好ましい。 被験者は、いずれの哺乳類であってもよい。好ましい例では、被験者はヒトで
ある。 本発明の組成物は、脊髄損傷のような障害の結果として損傷したCNSにおいて 機能障害性ニューロンの再成長、修復及び/又は再生を促進するのに用いること ができる。その方法は、損傷した直後又は慢性的な障害の後に用いることができ
る。 また、本発明の組成物は、アルツハイマー病及びパーキンソン病を含む成人病
のような疾患の結果として損傷したCNSにおいて機能障害性ニューロンの再成長 、修復及び/又は再生を促進するのに用いることができる。 本発明の組成物は、移植細胞の成長を比較的許容する環境を哺乳類のCNS内で 生じさせるのにも用いることができる。例えば、PNS細胞が損傷したCNS内の部位
に移植される場合、軸索は移植組織の中に成長することができるが、ミエリンの
阻害作用のために、この組織からCNSに抜け出すことができないであろう。本発 明の組成物は、CNS中のミエリンを崩壊して、この領域に軸索を拡張させるのに 用いることができる。
【0046】製造と投与 本発明の組成物の使用方法は、治療上有効な量の組成物を被験者に投与するこ
とからなる。ここで用いられるように、用語「治療上有効な量」は、CNSを有効 かつ一過的に崩壊及び/又は髄鞘脱落させ、神経組織と神経連結の修復と再生が 促進されるのに十分な組成物の量を意味する。一般に、治療組成物は、体重1kg
当たり20〜30%の補体溶液中、約0.03〜0.6mgの範囲の抗体で投与される。抗体 は、体重1kg当たり20〜30%補体溶液中0.05〜0.4mgであることが好ましい。抗体
が、体重1kg当たり20〜30%補体溶液中0.1〜0.3mgであることがもっとも好まし い。補体に対する抗体の正確な比は、環境によって異なる。しかし、活性化され
る補体量は結合する抗体分子の数に直接比例するので、抗体の相対的な濃度より
多い、比較的高い濃度の補体を投与することができる。さらに、投与された抗体
の詳細な濃度は、詳細な機能障害及びその発病度、ならびに患者の年齢、性別及
び既往歴のような因子に伴って変わるであろう。臨床分野の当業者は、そのよう
な因子と、それにしたがった組成物の服用範囲の補償方法を知っているであろう
【0047】 大多数の脊髄障害は、損傷部位から、脊髄の周囲の脊柱までに生じる。この損
傷は骨折、脱臼又はその両方を含む。脊髄に対する損傷の多くは二次現象による
もので、損傷して数時間以内に起こる。この時点で、結果として生ずる損傷は可
逆性であってもよい。それ故、回復可能なCNSの機能に重要な因子は、損傷して から治療機関に至るまでの時間である。損傷で神経系の機能障害が生じている場
合は、被験者への組成物の投与が損傷時にできるだけ近いことがもっとも好まし
い。 本発明の方法によれば、組成物は、注射又は段階性侵襲により時間をかけて非
経口で被験者に投与することができる。例えば、組成物は、鞘内に投与するか又
は脊髄に直接注射することができる。
【0048】 非経口投与用製剤は、組成物成分と患者の双方に適合性の医薬的に受容な担体
を含む。このような担体は、無菌性の水性又は非水性溶液、懸濁液及びエマルジ
ョンを含む。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコー
ル、オリーブオイルもしくはスクアレンのような代謝可能なオイル、及びオレエ
ートエチルのような注射可能な有機エステルを含む。水性担体は、水、アルコー
ル/水性溶液、及び生理食塩水と緩衝媒体を含むエマルジョン又は懸濁液を含む 。非経口賦形剤は、塩化ナトリウム溶液、リンガー・デキストロース、デキスト
ロース及び塩化ナトリウム、乳酸加リンガー又は固定油を含む。保存剤と、例え
ば抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤及び不活性ガスのような他の添加剤も存在して
いてもよい。好ましい担体は、人工髄的である。
【0049】キット 本発明の方法に用いる物質は、キットの製造に適していることが理想的である
。そのようなキットは、密閉された一定内(confinement)に1以上のコンテナ手段
、例えばバイアル、チューブなどを受けるための区画化した担持手段を含み、各
コンテナ手段は方法に用いられる別の部材の1つを含んでいてもよい。例えば、
コンテナ手段の1つは、GalC-特異的な抗体を含んでいてもよい。また、抗体と 補体は、同じコンテナ内にあってもよい。構成物は、望ましいように液体又は凍
結乾燥した形態であってもよい。損傷部位への補体と抗体の導出を容易にする針
及び/又は他の装置は、 a) サイラスティック、ポリエチレン、タイゴン(Tygon)(Norton Performance Pl
astics) チューブ; b) 皮下ポンプ(例えば、鞘内でのバクロフェンの投与に公知であるメドトロニ ック(Medtronic)ポンプシステム); c) 脊髄内の直接投与用、又は短期(short-term)鞘内投与用の脊髄針 を含んでいてもよい。 このようなキットを使用する方法の1つの例は、14ゲージのテュオヒー針が腰 のくも膜下の空間に挿入されていることである。5-F カテーテルはL10でチップ に同軸に位置づけ、側腹部(又は適当な位置)にトンネルをつくる。この種の指示
は、技術に熟知している者によって理解されるであろう。チューブは鞘内に入れ
、ポンプに連結する。一定量(finite folume)の試薬を含有するポンプを肌の下 に置き、ポンプの隔膜に挿入された針を介して、これを診療所で再充填する。ま
たは、インフュセッド(infusaid)ポンプを代わりに用いてもよい。
【0050】現在の方法に優る利点 本発明の組成物及びその使用は、CNSでの神経成長の再生に現在利用可能な方 法よりも優れた多くの利点がある。 アヘン剤アンタゴニスト、甲状腺刺激ホルモン-放出ホルモン、局策冷却、デ キストラン浸剤、アドレナリン作動遮断、コルチコステロイド及び高圧酸素を含
む介在治療は脊髄への外傷後の二次炎症損傷を減じ、未損傷ニューロンへの損傷
の拡大を予防することを目的とする。しかし、本発明と異なり、それらは損傷し
たニューロンの再生を促進しない。 CNSへの末梢神経の移植及びドナー細胞の移植は、軸索がそれらの中に成長で きる点で有用である。しかし、軸索は、ミエリン阻害剤があるために軸索から周
囲のCNSに成長することができない。一方、本発明はミエリン阻害剤を崩壊し、C
NSのニューロンを再成長させる。
【0051】 以下の限定されない実施例により、本発明をより詳細に記載する。後述の実施
例は、本発明の範囲の限定を意味しないことは理解されるべきである。多くの変
形は、本発明の概要を逸脱しない限り本発明に係る当業者に自明のものと予測さ
れる。適切に構築された別紙の請求の範囲は、本発明の範囲を限定するものにす
ぎない。
【0052】実施例I :脳幹‐脊髄軸索の再生 以下の実施例は、血清補体タンパク質及び補体を固定するミエリン特異性抗体
からなり哺乳類被検者の脊椎離断後に脳幹‐脊髄軸索再生を促進する浸剤を脊髄
内に局所注入することによる、髄鞘形成の一過的な発生抑制又は成熟ミエリンの
崩壊を説明するものである。
【0053】材料及び方法: 外科的脊髄離断及び一過性免疫ミエリン崩壊 : 体重約200g、10〜12週齢の成体雌ラット(Sprague-Dawley)をケタミン/キシラ ジン(それぞれ60mg/kg及び7.5mg/kg)で麻酔した。T10で限定的に側背椎弓切除し
た後、マイクロ鋏で左脊髄半側切断損傷を施した。次いでこの損傷部位に鋭利な
メスを3度通して、損傷部位の程度を確認した(図1A)。損傷直後に脊髄内カニュ
ーレをT11で挿入し(総量n=22)、Alzet浸透圧ポンプに接続し(14日)、血清補体(G
IBCOBRL, #19195- 015, 33%v/v)とガラクトセレブロシドに対する補体固定IgG 抗体(小社のポリクローナル抗体又はChemicon Intl.Ltd.の#AB142, 25%v/v)の 連続脊髄内浸剤を導出した(@0.5μl/hr)。カニューレを椎骨に塗布した歯科用 アクリル樹脂で適所に固定した。次いで筋肉層を歯科用アクリル樹脂上で縫合し
、表面組織及び皮膚を閉合した。半側切断損傷の程度は、5週間の処理及び回復 期の終了時に常に組織学的に確認した。 全ての対照動物に同じ半側切断損傷を施し、次いで賦形剤のみ(0.1Mリン酸緩 衝生理食塩水, PBS, n=5)、抗体のみ(25%v/v, n=2)、又は血清補体のみ(33%
v/v, n=6)のいずれかを浸透圧ポンプを介して脊髄内に同一時間で注入した。す
べての外科処置及びそれ以後の動物のケアプロトコルは、Canadian and Univers
ity of British Columbia Animal Care Committee Guidelinesに従った。
【0054】電子顕微鏡検査: 超微細構造の分析のための組織は、GalCに対する補体固定IgG抗体(詳細は上記
参照)とともに血清補体を浸透圧ポンプを介して注入した7日後にと殺した10〜12
週齢の成体雌SDラットから得た。動物をケタミン/キシラジン(それぞれ120mg/kg
及び15mg/kg)で致死麻酔し、次いで200mlの0.1M PBS(pH7.4)及び0.1M PB中の100
mlの4%グルタルアルデヒド(pH7.3)を心臓内に潅流させ、一晩、同一の固定液で
後固定(postfix)した。注入部位及び周辺索を1mmの横ブロックに分断し、吻側−
尾側の配列を保つように処理した。標準的なプロトコルに従って、ブロックを0.
1Mカコジル酸ナトリウム緩衝液で洗浄して(24時間) 2% OsO4で後固定し、上昇 アルコールで脱水し、Spurrs'樹脂に包埋した。並行して、実験動物及び未処理 の対照動物からの組織ブロックを処理した。各ブロックから薄切片(1μm)を切り
取り、アルカリ性トルイジンブルーで染色し、光学顕微鏡で検査した。電子顕微
鏡検査については、ブロックを整えて、次いで切片を80〜100nmに切断し、銅グ リッドに載せ、酢酸ウラニル及びクエン酸鉛で染色してZiess EM 10C電子顕微鏡
(80kV)で観察した。
【0055】逆行性ニューロン標識: 逆行性トレーサ(単一標識)を吻側腰髄(損傷部位の1cm尾側)に注入すると、再 生突起ならびに無損傷軸索の双方によって組み込まれ、起点の細胞体に送り返さ
れるはずである。したがって、逆行性トレーサが確実かつ広範囲にわたり、すべ
てではないにしてもほとんどの下行性脊髄突起ニューロンを標識することが必須
である。同様に、管理された再現性のある方法で脊髄損傷部に対して十分に尾側
方向に距離を隔ててトレーサを注入し、半側切断損傷部のレベルまでトレーサが
直接拡散するのを防止するのは重要なパラメータである。これらすべての条件を
最も満たす逆行性標識は、フルオロゴールド(Sahibzadaら, (1987) Brain Res.
415: 242-256)である。RDAのような蛍光性デキストランアミン類は軸索の取込み
を促進するのに最近の軸索外傷を必要とするため(Heimer及びZaborszky Neuroan
atomical Tract-tracing methods 2:Recent Progress (New York: Plenum, 1989
))、二重標識逆行性追跡研究での使用により適している。
【0056】単一標識研究: 半側損傷から28日後、したがって免疫試薬の脊髄内注入終了から14日後、各成
体ラットをケタミン/キシラジン(それぞれ60mg/kg及び7.5mg /kg)で麻酔した。 フルオロゴールド(FG、全容量100〜150nl、滅菌dH2O中5%w/v; Fluorochrome In
c.Englewood, CO, USA)を、L1レベルで脊髄組織の中央に損傷部位の約1cm尾側で
両側から注入した(50〜75nl)。 FGの拡散範囲に対する脱髄プロトコルの特異的効果についても評価した。ラッ
ト(n=8)を上記のように実験的に処理した。しかしながらFGをL1策に注入してか
ら12、24、72及び120時間後に動物を殺した。8匹の他のラットは対照として用い
、ポンプには賦形剤のみを入れ、実験処理した動物と並行して処理した。各注入
部位からのFG拡散の範囲については、クリオスタット切片(厚さ25μm)を分析し た(図1B)。光学顕微鏡レベルで検出された限りでは、実験処理動物と対照処理動
物の可視FG拡散の範囲に著しい違いはなかった。すべての場合において、FG拡散
範囲は損傷部位から4〜6mm(1〜1.5脊髄セグメント)、あるいは損傷部位から尾側
に少なくとも1.5脊髄セグメントであった。
【0057】二重標識研究: 損傷時に、半側切断部位を12%(滅菌dH2O中のw/v)ローダミン結合デキストラ ンアミン(RDA, 10,000MW FluoroRuby, Molecular Probes)に浸漬したジェルフォ
ームで30分間パックした。次いでこのジェルフォームを取り除き、残りの外科処
置を完了した(上記に概説)。28日間生存させた後、全ての動物をケタミン/キシ ラジン(それぞれ60mg/kg及び7.5 mg/kg)で麻酔した。FG(全容量100〜150nl、滅 菌dH2O中5%w/v)を、索(n=6)のL1レベルで脊髄実質に両側から注入した(50〜7
5nl)。
【0058】軸索再生の分析: FGトレーサを腰髄に注入してから7日後に、動物をケタミン/キシラジン(それ
ぞれ120mg/kg及び15mg/kg)で致死麻酔した。次いで200mlの0.1M PBS(pH7.4)及び
0.1M PBS中の100mlの4%パラホルムアルデヒド(pH7.3)を心臓内に潅流させた。 次いで脳及び脊髄を取り出し、同一の固定液で一晩後固定した。その後、それぞ
れの脳及び脊髄を固定液から取り出し、一連のスクロース溶液(15%、次いで21 %)中に組織を置いて凍結保存した。冠状又は傍矢状切片を、クリオスタットで 厚さ25μmに切断した。脳幹及び脊髄の組織切片をZeiss Axioskopで100Wの水銀 球を用いて検査した(励起/放射波長:FG,365/420nm; RDA, 546/590nm)。
【0059】 実験処理した動物の軸索再生能を評価するために用いた脳幹‐脊髄核は、赤核
(RN、起点は半側切断の対側)であった。各RN由来の脊髄へ突出する軸索は中脳の
反対側へと交差し、対側の側背索内で脊髄全体を下行する。この対側性脊髄突出
経路は、2〜5%の軸索が同側経路を介して索に突出する例外を除いて完全な偏側
性路(lateralized tract)であることが知られている(Brown(1974) J.Comp. Neu
rol.154: 169-188; Huismanら,(1981) Brain Res. 209: 217-286; Shiehら, (19
83) J. Comp. Neurol. 214: 79-86; Waldron 及び Gwyn (1969) J. Comp. Neuro
l. 137:143-154)。
【0060】 ブラインド(blind)プロトコルを1回用いて、赤核(RN)中の逆行標識ニューロン
数を他の全ての組織切片において核全体で計測し、同じニューロンを2回計測し ないようにした。核及びニューロンの形態(すなわち外見上の多極性)を示し、FG
によって特異的に標識され(すなわち他の蛍光フィルターでは不可視;上記参照)
、近位の突起へ拡張する細胞のみを、ポジティブに標識された脊髄突出ニューロ
ンとした。次いで、同じ動物における対側の(無損傷の)対照核中の標識ニューロ
ン数と比較してニューロンの再生割合を測定した。
【0061】結果: 免疫処理後の脊髄脱髄及びミエリン崩壊の程度 PBS中のGalCに対するポリクローナル抗体(25%)とともに33%の異種(モルモッ
ト)血清補体を7日間にわたって脊髄内に直接注入した(@0.5μl/hr)。その結果 、注入カニューレから2mmまでに広範囲の脱髄(全吻側‐尾側距離4mm又は1脊髄セ
グメント)が生じた(図2A)。この脱髄領域は、崩壊ミエリン(すなわち広範囲にわ
たって離層し、破断した様相を呈するミエリン、図2C)に特徴付けられる脊髄の いずれかの側にさらに8mm又は2脊髄セグメントで結合した。先の研究に見られる
ように(Keirsteadら, (1995) J. Neurosci. 15: 6963-6974; Keirsteadら, (19
92) Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 89: 11664-11668; Keirsteadら, (1997) Br
ain. Res. Bull. 44: 727-734)、異種血清補体のみ、ミエリン特異性抗体のみ 又はPBSのみの対照浸剤では、カニューレ部位周辺に集中して限定的な非特異的 損傷が生じたのみであった。周辺領域の脱髄又はミエリン崩壊はなかった(図2D)
【0062】 実験処理した成体ラットの脊髄における免疫的な脱髄及びミエリン崩壊は、索
の横断面全体にわたって拡張している活性突起である。免疫的なミエリン崩壊は
1日以内に開始され、これに付随してマクロファージ又は定住小膠細胞及び多形 核細胞(例えば好中球、好酸球及び好塩基球のような白血球)が侵入する。多くの
マクロファージ/小膠細胞はミエリンフラグメントを含み、食細胞活動を7日以内
に終了する(図2B)。血清補体及びミエリン特異性抗体が注入される限り、この脱
髄及びミエリン崩壊のパターンは維持することができる。最近の証明では、免疫
注入の終了後、再髄鞘形成は2週間以内に開始され(Keirstead及びBlakemore, (1
997) Glia(既刊); Dyer, Bourque及びSteeves(未刊の観察報告)、新しいミエリ ンは分化している乏突起膠細胞の原種から発生するが、侵入しているシュワン細
胞と生存している「成熟」乏突起膠細胞も再髄鞘形成に寄与していることが示唆
されている。
【0063】 逆行性トレーサの選択及び注入部位からのその拡散距離 この研究において、半側切断し、免疫的にミエリン抑制した成体ラットの脊髄
における軸索再生の主な解剖学的証明は、脳幹‐脊髄核の同種対での逆行標識ニ
ューロン数を比較することによる。この比較を有効なものにするためには、候補
となる脳幹脊髄核は、全てのレベルにおいて脊髄の片側に限定される極めて一側
性の突起を有していなければならない。左胸郭半側切断(図1A)により、対側方向
に突出する右赤核(RN)の大形細胞ニューロンを切断したが、左RNからの突起は無
損傷のまま残した(胸髄の無損傷の右側背索を介して突出する)。
【0064】 全ての場合に、フルオロゴールド標識(100〜150nl)を吻側腰髄に両側から注入
した(半側切断損傷部位から尾側方向に1cm又は3脊髄セグメント)。時間経過、及
び通常に髄鞘形成した動物(対照)及び実験処理したラット(すなわち脱髄及びミ エリン崩壊状態)の腰椎及び胸髄におけるフルオロゴールドの吻尾拡散範囲につ いて評価した。実験処理した脊髄と対照処理した脊髄の無作為の25μmの切片(L2
からL8にわたる)を、蛍光顕微鏡で最高強度に設定した100Wの水銀球を用いて検 査した。注入後の生存期間を12時間(n=4)、24時間(n=4)、3日間(n=4)及び5日
間(n=4)で変化させた時のフルオロゴールドの拡散範囲について、脊髄組織を検
査した。最大吻側拡散距離は、24時間で生じた4〜6mm(又は1〜1.5脊髄セグメン ト)であった。腰髄中のフルオロゴールド拡散範囲は、検査した連続期間におい て変化しなかった(図1B)。 要約すると、いずれの動物(実験又は対照)も、半側切断損傷レベル(T10)での 脊髄中のフルオロゴールド標識の形跡を示さなかった。したがってこの規準から
、いずれの動物もこの研究から排除する必要がなかった。この有効な証拠により
、逆行性標識が、T10損傷部位の尾側に軸索突起を有する無損傷の再生している 脳幹‐脊髄ニューロンの標識に限定されたことが示される。
【0065】 逆行性ニューロン標識による脳幹‐脊髄軸索再生の証明 28匹の動物(12匹は実験用(うち9匹が逆行単一標識、3匹が二重標識)、16匹が
対照用(うち13匹が逆行単一標識、3匹が二重標識))を、T10脊髄の左半側切断に
付した。半側切断直後、注入カニューレ(14日浸透圧ポンプに接続)を損傷部位か
ら4〜5mm(1脊髄セグメント)尾側で脊髄に直接挿入した。浸透圧ポンプは、3種の
異なる対照溶液又は実験用処理剤(それぞれPBS賦形剤のみ、血清補体のみ、抗ガ
ラクトセレブロシド抗体のみ又は血清補体と抗GalC抗体)のいずれかを多量に含 む。次いで動物を28日間回復させ、損傷部位の1cm(すなわち3脊髄セグメント)尾
側の吻側腰椎にフルオロゴールドを注入した。さらに7日間生存させた後、各動 物を殺して脳と脊髄を試験及び分析のために取り出した(標識ニューロンを決定 するために使用した材料及び方法の規準を参照)。
【0066】 全ての動物において、半側切断部位の範囲を評価した。1匹の実験処理動物及 び1匹の対照処理動物を除く全ての動物において、左胸髄を半側切断した(図1A) 。赤核脊髄路(側背索)の領域を切断するのが、最も重要である。右白質路は常に
無損傷のまま残し、対側の灰白質も通常傷をつけなかった。 各RNにおける標識ニューロン数の「ブラインド」カウント(図3A‐B、表1)と比
較して、このデータは、損傷した大型細胞RNニューロンの31.8%±13.38%(n=9
、範囲10〜50%)が、フルオロゴールドを取り込んで逆行的に輸送するのに十分 な距離を尾側腰髄に再生したことを示した(図4)。これに対し、PBS賦形剤のみ、
GalC抗体のみ又は血清補体のみのいずれかに付した対照処理動物は、有意な量の
RN標識を示さなかった:1.49%±0.84%(図3C‐D;図4、n=3、範囲0〜3、表1) 。損傷した右のRN核におけるいくつかのニューロン標識は、中脳の反対側へ突出
せず、同側(非損傷)索において下行しない少数のRNを示すと思われる(Shiehら(1
983) J. Comp. Neurol. 214:79-86)。細胞の逆行性標識は、RNの小細胞領域では
確認されなかった。これは、このRN領域が主に索の頚部までしか突出しないため
と思われる。
【0067】 また、損傷したミエリン抑制赤核脊髄路の二重逆行性標識を定性的に評価した
(図3E及びF)。胸髄の半側切断損傷時の損傷部位に直接標識した後、多数のRDA陽
性(第一標識)大型細胞RNニューロンが観察された。脊髄内のミエリン抑制及びそ
の後の損傷部位尾側へのフルオロゴールド注入後、少数のFG陽性ニューロン重複
集団が観察された(すなわちいくつかのニューロンはRDAとFGの両方で標識された
)。第一又は第二のトレーサのみで標識された細胞も、分析した全ての脳幹に存 在していた。二重標識された脳幹‐脊髄ニューロンの数が少ないのは、一つには
、切断された軸索が、切断末端部すなわち新鮮な損傷を封鎖する前にRDAを取り 込めなかったことによる(Heimer及びZaborszky Neuroanatomical tract-tracing
methods 2: Recent Progress (New York: Plenum, 1989)。脳幹を横断しない赤
核脊髄ニューロン集団もまた、「損傷」核におけるFG陽性細胞として現れるだろ
う。評価した動物の数が少ないため、これらの結果を数値化することはしなかっ
た。とはいえ、この結果は免疫脱髄及びミエリン崩壊によって促進された軸索再
生を過小評価する可能性はあっても、ミエリン抑制後の脳幹‐脊髄再生の程度を
過大評価するものでは決してないと思われる。
【0068】 脊椎離断を用いる従来技術(Keirsteadら(1995)J. Neurosci. 15: 6963 -6974;
Keirsteadら(1992) Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 89: 11664- 11668)と比較 して、本発明は、各動物が自身の内部制御を利用できるように(すなわち、損傷 した脳幹‐脊髄突起からの軸索再生が未損傷の対側の相同器官と容易に比較でき
るように)この研究に半側切断モデルを用いて立証している。さらに、本発明は 、広範な脊髄損傷に伴って頻発する嚢胞腔(cyst cavity)形成の程度、ならびに この研究に必要な比較的長期の回復期における動物の不快を最小限にするよう努
めた。 実験処理後の5週間の回復期中での機能又は挙動の相違点についての検査では 、損傷動物と非損傷の対照動物との歩行パターンに顕著な差異は見られなかった
(すなわち全ての動物は歩行し、基本的な逆流機能は同程度であった)。これらの
知見は、半側切断損傷後に脊髄内に注入された処理剤(例えばPBSのみ、GalC抗体
のみ、血清補体のみ又は血清補体とGalC抗体)とは無関係に認められた。 これらの発見は、ミエリンの免疫的抑制(脱髄及びミエリン崩壊)が成体ラット
の損傷脊髄における脳幹‐脊髄軸索の解剖学的再生を促進することを示している
【0069】実施例II :免疫的脱髄に対する単一補体タンパク質除去の効果材料及び方法: 外科的脊髄離断及び一過性免疫ミエリン崩壊: 体重約200g、10〜12週齢の成体雌ラット(SD)をケタミン/キシラジン(それぞれ
60mg/kg及び7.5mg/kg)で麻酔した。T10で限定的に側背椎弓切除してAlzet浸透圧
ポンプに接続し(14日)、次いでC3劣化(C3-depleted)血清補体(Sigma S8788, 33 %v/v)とガラクトセレブロシドに対する補体固定IgG抗体(小社のポリクローナル
抗体又はChemicon Intl.Ltd.の#AB142, 25%v/v)との連続脊髄内浸剤を導出した
(@0.5μl/hr)。カニューレを椎骨に塗布した歯科用アクリル樹脂で適所に固定 した。次いで筋肉層を歯科用アクリル樹脂上で縫合し、表面組織及び皮膚を閉合
した。 全ての対照動物に、ヒト血清補体(Sigma S1764, 33%v/v)を、ガラクトセレブ
ロシドに対する補体固定IgG抗体(小社のポリクローナル抗体又はChemicon Intl.
Ltd.の#AB142, 25%v/v)とともに浸透圧ポンプを介して同一時間で脊髄内に注入
した。すべての外科処置及びそれ以後の動物のケアプロトコルは、Canadian and
British Columbia Animal Care Committee Guidelinesに従った。 電子顕微鏡検査を実施例Iに記載のように行った。
【0070】結果: 図5に示すように、補体のC3成分除去は、ミエリンの除去不足に終わった。こ れは、このタンパク質が(i)オプソニン作用、又は(ii)最終溶解経路複合体であ る溶解性膜攻撃複合体(MAC)へのカスケードの伝播のいずれかで基本的な役割を 有していることを示している。
【0071】実施例III :慢性損傷ニューロンの再生材料及び方法: 11匹の動物(6匹が実験用、5匹が対照用)を以下のようにT10脊髄の左側切断に 付した:体重約200g、10〜12週齢の成体雌ラット(SD)をケタミン/キシラジン(そ
れぞれ60mg/kg及び7.5mg/kg)で麻酔した。T10での限定側背椎弓切除の後、マイ クロ鋏で左脊髄半側切断損傷を施した。次いでこの損傷部位に鋭利なメスを3度 通して、損傷の程度を確認した。 半側切断から1ヶ月(5匹の動物)又は2ヶ月(6匹の動物)後、注入カニューレ(14 日浸透圧ポンプに接続)を損傷部位から4〜5mm(1脊髄セグメント)尾側の脊髄に直
接挿入した。カニューレは、椎骨に塗布した歯科用アクリル樹脂で適所に固定し
た。次いで筋肉層を歯科用アクリル樹脂上で縫合し、表面組織及び皮膚を閉合し
た。浸透圧ポンプにより、モルモット血清補体(33%v/v)とガラクトセレブロシ ドに対する補体固定IgG抗体(小社のポリクローナル抗体又はChemicon Intl. Ltd
.の#AB142, 0.25mg/mL)との連続脊髄内浸剤を導出した(0.5μl/hr)。
【0072】 全ての対照動物に同一の半側切断損傷を施し、次いで浸透圧ポンプを介してモ
ルモット血清補体(33%v/v)のみを同一時間で脊髄内に注入した。 その後、動物を28日間で回復させ、実施例Iに記載のように、フルオロゴール
ドを損傷部位から1cm(すなわち3脊髄セグメント)尾側で吻側腰椎に注入した。 さらに7日間生かした後、実施例Iに記載のように各動物を殺して脳と脊髄を検 査及び分析のために取り出した。 半側切断損傷の程度は、5週間の処理及び回復期の終了時に組織学的に確認し た。すべての外科処置及びそれ以後の動物ケアプロトコルは、Canadian and Bri
tish Columbia Animal Care Committee Guidelinesに従った。
【0073】結果 : 全ての動物で、半側切断損傷の程度を評価した。全ての動物において、前庭脊
髄路領域は切断した。右の白質路は常に無損傷であったが、対側の灰白質は通常
無損傷であった。 各LVeにおける標識ニューロン数の「ブラインド」カウント(図6)と比較して
、このデータによれば、1ヶ月間慢性的に損傷させた動物において、損傷した側 方前庭脊髄ニューロンの31.5%±5%(n=3)が、フルオロゴールドを取り込んで 逆行的に輸送するのに十分な距離を尾側腰髄に再生したことが示された。これに
対し、血清補体のみを受けた対照処理動物は、有意な量のLVe標識を示さなかっ た:3.6%±2.7%(n=2)。処理開始前に処理を2ヶ月遅らせた動物では、損傷し た側方前庭脊髄ニューロンの26.8%±13%(n=3)が、フルオロゴールドを取り込
んで逆行的に輸送するのに十分な距離を尾側腰髄に再生した。これに対し、血清
補体のみを受けた対照処理動物は、有意な量のLVe標識を示さなかった:5.4%±
1.8%(n=2)。これらの結果により、本発明の組成物は哺乳類被検者のCNS中の慢
性的に損傷を受けたニューロンの再成長、修復及び再生の促進において有用であ
ることが示される。
【0074】実施例IV :外科的脊椎離断及び一過性免疫ミエリン崩壊 体重約200g、10〜12週齢の成体雌ラット(SD)をケタミン/キシラジン(それぞれ
60mg/kg及び7.5mg/kg)で麻酔した。T10での限定的な側背椎弓切除の後、マイク ロ鋏で左脊髄半側切断損傷を施し、次いでこの損傷部位に鋭利なメスを通して損
傷の程度を確認した(図7)。損傷直後、脊髄内カニューレをT11に埋め込み(総量n
=22)、Alzet浸透圧ポンプ(14日)に接続し、血清補体(GIBCO BRL,#19195-015, 3
3%v/v)とガラクトセレブロシドに対する補体固定IgG抗体(小社のポリクローナ ル抗体又はChemicon Intl. Ltd.の#AB142, 25%v/v)との連続脊髄内浸剤を導出 した(0.5μl/hr)。カニューレは、椎骨に塗布した歯科用アクリル樹脂で適所に 固定した。次いで筋肉層を歯科用アクリル樹脂上で縫合し、表面組織及び皮膚を
閉合した。半側切断損傷の程度は、5週間の処理及び回復期の終了時に常に組織 学的に確認した。 その後、同一の半側切断損傷を施した全ての対照動物に、賦形剤のみ(0.1Mの リン酸緩衝生理食塩水、PBS、n=5)、抗体のみ(25%v/v,n=2)、又は血清補体 のみ(33%v/v、n=6)のいずれかを浸透圧ポンプを介して同一時間で脊髄内に注 入した。すべての外科処置及びそれ以後の動物ケアプロトコルは、Canadian and
UBC Animal Care Committee Guidelinesに従った。
【0075】電子顕微鏡検査 : 超微細構造分析のための組織は、浸透圧ポンプを介して血清補体とGalCに対す
る補体固定IgG抗体(詳細は上記参照)とを注入した7日後にと殺した10〜12週齢の
成体雌ラット(SD)から得た。動物をケタミン/キシラジン(それぞれ120mg/kg、15
mg/kg)で致死麻酔し、次いで200mlの0.1M PBS(pH7.4)、0.1M PB中100mlの4%グ ルタルアルデヒド(pH7.3)を心臓内に潅流させ、同じ固定液で一晩、後固定した 。注入部位及び周辺索を1mmの横ブロックに切断し、吻側-尾側の配列を保つよう
処理した。標準的なプロトコルに従って、ブロックを0.1Mカコジル酸ナトリウム
緩衝液中で洗浄して(24時間)2%OsO4で後固定し、上昇アルコールで脱水し、Spu
rr's樹脂に包埋した。並行して、実験動物及び未処理の対照動物の組織ブロック
を処理した。薄切片(1μm)を各ブロックから切り取り、アルカリ性トルイジンブ
ルーで染色し、光学顕微鏡で検査した。電子顕微鏡検査のため、ブロックを整え
て次いで切片を80〜100nmに切断し、銅グリッドに載せ、酢酸ウラニル及びクエ ン酸鉛で染色し、Ziess EM 10C電子顕微鏡(80kV) で観察した。
【0076】逆行性ニューロン標識: 単一標識研究 半側切断損傷の28日後、つまり免疫試薬の脊髄内注入から14日後、各成体ラッ
トをケタミン/キシラジン(それぞれ60mg/kg及び7.5mg/kg)で麻酔した。フルオロ
ゴールド(FG、全容量100〜150nl、滅菌dH2O中5%w/v、Fluorochrome Inc. Engle
wood, CO, USA)をL1レベルで脊髄組織の中央に損傷部位から約1cm尾側で両側か ら注入した(50〜75nl)(図7)。二重標識研究 損傷時に、半側切断部位を12%(滅菌dH2O中w/v)ローダミン結合デキストラン アミン(RDA、10,000MW FluoroRuby, Molecular Probes)に浸漬したジェルフォー
ムで30分間パックした。次いでジェルフォームを除去し、残りの外科処置を完了
した(上記に概説)。28日間生かした後、全ての動物をケタミン/キシラジン(それ
ぞれ60mg/kg及び7.5mg/kg)で麻酔し、FG(全容量100〜150nl、滅菌dH2O中5%w/v)
を索のL1レベル(n=6)で両側から脊髄実質に注入した(50〜75nl)。
【0077】再生分析: 腰髄にFGトレーサを注入してから7日後、動物をケタミン/キシラジン(それぞ れ120mg/kg、15mg/kg)で致死麻酔にかけ、次いで心臓内に200mlの0.1M PBS(pH7.
4)及び0.1M PBS中100mlの4%パラホルムアルデヒド(pH7.3)を潅流させた。脳と 脊髄を取り出し、同じ固定液で一晩、後固定した。その後、各脳及び脊髄から固
定液を除き、一連続のスクロース溶液(15%、次いで21%)に組織を置いて凍結保
存した。クリオスタットで、冠状切片又は傍矢状切片を厚さ25μmに切断した。 脳幹及び脊髄の組織切片をZeiss Axioskopで100Wの水銀球を用いて検査した(励 起/放射波長:FG;360/420nm、RDA;546/590nm、フルオレセイン;490/515nm)。
【0078】 実験処理した動物の軸索再生能を評価するために用いた2つの脳幹‐脊髄核は 、赤核(RN)(起点は半側切断の対側)及び側方前庭(Lve)核(起点は半側切断と同側
)であった。各RN由来の脊髄へ突出する軸索は中脳の反対側へと交差し、対側の 側背索で脊髄全体を下行する。この対側性脊髄突出経路は、2〜5%の軸索が同側
経路を介して索へと突出しうる例外を除いて完全な偏側性路であることが知られ
ている(Waldron及びGwyn 1969; Brown,1974; Huismanら,1981; Shiehら,1983)。
LVe路は側背橋菱脳から突出し、脳幹全体及び脊髄の腹側外側白質における限定 的同側経路を維持する(Zemlanら,1979; Shamboul,1980)。
【0079】 ブラインド-プロトコルを1回用いて、赤核(RN)(半側切断の対側)及び側方前庭
(Lve)核(半側切断と同側)内の逆行性標識ニューロン数を他の全ての組織切片(脳
幹核全体)について計測し、同じニューロンを2回計測しないようにした。核、ニ
ューロンの形態(すなわち外見上の多極性)を示し、FGで特異的に標識され(すな わち他の蛍光性フィルターでは不可視;上記参照)、近位の突起へ拡張するこれ らの細胞のみを、ポジティブに標識された脊髄突出ニューロンとした。次いで、
各脳幹‐脊髄突起に対するニューロンの再生割合を、同じ動物の対側(非損傷)の
対照核における標識ニューロン数と比較して測定した。
【0080】 免疫処理後の脊髄脱髄及びミエリン崩壊の程度 33%の異種(モルモット)血清補体とPBS中のGalCに対するポリクローナル抗体(
25%)とを7日間にわたって直接脊髄内に注入し(@0.5μl/hr)、注入カニューレ から2mmまでに広範囲の脱髄を生じさせた(全吻側-尾側距離4mmあるいは約1脊髄 セグメント(図2A))。この脱髄領域は、崩壊したミエリン(すなわち広範囲に離層
し、破断した様相を呈するミエリン、図2B)に特徴づけられる脊髄のいずれかの 側にさらに8mm又は2セグメントで結合した。先の研究(Keirsteadら, 1992, 1995
)に示されるように、異種血清補体のみ、ミエリン特異性抗体のみ又はPBSのみの
対照浸剤では、カニューレ部位周辺に集中して限定的な非特異的損傷が生じたの
みであった。周辺領域の脱髄又はミエリン崩壊はなかった(図2C)。
【0081】 実験処理した成体ラットの脊髄における免疫的脱髄及びミエリン崩壊は、策の
横断面全体にわたって拡張している活性突起であった。免疫ミエリン崩壊は1日 以内に開始され、これに付随してマクロファージ又は定住小膠細胞及び多形核細
胞(例えば好中球、好酸球及び好塩基球のような白血球)が侵入する。多くのマク
ロファージ/小膠細胞はミエリンフラグメントを含み、食細胞活動を7日以内に終
了した(図2D)。血清補体及びミエリン特異性抗体が注入される限り、この脱髄及
びミエリン崩壊のパターンは維持することができる。最近の証明では、免疫的注
入の終了後、再髄鞘形成が2週間以内に開始され(Keirstead及びBlakemore, 1997
; Dyer, Bourque及びSteeves 未刊の観察報告)、新しいミエリンは分化している
乏突起膠細胞の原種から発生するが、侵入しているシュワン細胞と生存している
「成熟」乏突起膠細胞も再髄鞘形成に寄与していることが示唆されている。
【0082】 逆行性トレーサの選択及び注入部位からのその拡散距離 この研究において、半側切断し、免疫的にミエリン抑制した成体ラットの脊髄
における軸索再生の主な解剖学的証明は、同種対の脳幹‐脊髄核での逆行標識ニ
ューロン数を比較することによる。この比較を有効なものにするためには、候補
となる脳幹脊髄核は、全てのレベルにおいて脊髄の片側に限定される極めて一側
性の突起を有していなければならない。図7Aに要約するように、左胸部半側切断
により、対側方向に突出する右赤核(RN)の大形細胞ニューロンは切断したが、左
RNからの突起は傷つけなかった(胸髄の無損傷の右側背索を介して突出する)。同
様に、左胸部半側切断により、左側方前庭脊髄核(LVe)の同側突出ニューロンを 切断したが、右LVe核からの軸策は傷つけなかった(腹側外側白質を介して無損傷
の右側胸髄に突出する)。
【0083】 逆行性トレーサ(単一標識)を吻側腰髄(損傷部位の1cm尾側)に注入すると、ト レーサは再生突起ならびに無損傷軸索の双方によって組み込まれ、起点の細胞体
に送り返されるはずである。したがって、逆行性トレーサが確実かつ広範囲にわ
たり、すべてではないにしてもほとんどの下行性脊髄突起ニューロンを標識する
ことが必須である。同様に、管理された再現性のある方法で脊髄損傷部に対して
十分に尾側方向に距離を隔ててトレーサを注入し、半側切断損傷部のレベルまで
トレーサが直接拡散するのを防止することは、重要なパラメータである。これら
すべての条件を最も満たす逆行性標識は、フルオロゴールド(Sahibzadaら,1987)
である。RDAのような蛍光性デキストランアミン類は、軸索の取込みを促進する のに最近の軸索損傷を必要とすることから(Heimer及び Zaborszky, 1989参照)、
二重標識逆行性追跡研究での使用により適している(以下の記載を参照のこと)。
【0084】 全ての場合に、フルオロゴールド標識(100〜150nl)は吻側腰髄中に両側から注
入した(半側切断損傷部位から尾側方向に1cm又は2〜3脊髄セグメント)。時間経 過、及び通常に髄鞘形成した動物(対照)ならびに実験処理したラット(すなわち 脱髄及びミエリン崩壊状態)の腰椎及び胸髄におけるフルオロゴールドの吻側尾 側拡散の範囲を評価した。実験処理した脊髄と対照処理した脊髄のうち無作為の
25μmの切片(L2からL8にわたる)を、蛍光顕微鏡で最高強度に設定した100Wの水 銀ランプを用いて検査した。注入後の生存期間を12時間(n=6)、24時間(n=6)、
3日間(n=6)、5日間(n=6)及び7日間(n=22)で変化させた時のフルオロゴールド
拡散範囲について、骨髄組織を検査した。観測されたうちの最大吻側距離は、24
時間で生じた4〜6mm(又は1〜1.5脊髄セグメント)であった。腰髄中のフルオロゴ
ールド拡散の程度は、試験のその後の期間中において変化しなかった(図7)。
【0085】 逆行ニューロン標識による脳幹‐脊髄軸索再生の証明 手短に言えば、28匹の動物;12匹は実験用(うち9匹が逆行単一標識、3匹が二 重標識)、16匹は対照用(うち13匹が逆行単一標識、3匹が二重標識)を、T10脊髄 の左側方半側切断に付した。半側切断直後、注入カニューレ(14日浸透圧ポンプ に接続)を損傷部位から4〜5mm(1脊髄セグメント)尾側の脊髄に直接挿入した。浸
透圧ポンプは、3種の異なる対照溶液又は実験用処理剤(それぞれPBS賦形剤のみ 、血清補体のみ、抗ガラクトセレブロシド抗体のみ又は血清補体と抗GalC抗体) のいずれかを多量に含む。次いで、動物を28日間で回復させ、損傷部位の1cm(す
なわち少なくとも2脊髄セグメント)尾側にフルオロゴールドを注入した。さらに
7日間生かした後、各動物を殺して脳と脊髄を試験及び分析のために取り出した(
標識ニューロンの決定に用いた基準については上記参照)。 全ての動物で、半側切断部位の範囲を評価した。1匹の実験処理動物及び1匹の
対照処理動物を除く全ての動物で、左胸髄を半側切断した(図7)。赤核脊髄路(側
背索)と側方前庭脊髄路(腹側外側策)の領域を切断したことが、最も重要であっ た。右側の白質路は常に無損傷のまま残し、未損傷側の灰白質も通常傷つけなか
った。
【0086】 上記したように、(脊髄半側切断し、免疫ミエリンが抑制された後の)逆行性標
識を証明するために試験した2対の脳幹‐脊髄核は、RN及びLVeであった。これら
の脳幹‐脊髄核は胸髄及び腰髄内の一側性突出パターンのために選択され、損傷
核と非損傷の対側の相同器官における逆行性標識の比較を可能にする。このデー
タは、各RNにおける標識ニューロン数の「ブラインド」カウント(図3A‐B)と比 較して、損傷した大型細胞RNニューロンの31.8%±4.7%(n=8、範囲10〜50%) が、フルオロゴールドを取り込んで逆行的に輸送するのに十分な距離を尾側腰髄
に再生したことを示している(図9)。これに対し、PBS賦形剤のみ、GalC抗体のみ
又は血清補体のみのいずれかを受けた対照処理動物は、有意な量のRN標識を示さ
なかった:1.49%±0.23%(図3C‐D;図9、n=13、範囲0〜3)。損傷した右のRN 核におけるいくつかのニューロン標識は、中脳の反対側へ突出せず、同側(非損 傷)索において下行しない少数のRNを示すと思われる(Shiehら,1983)。RNの小 細胞領域において、細胞の逆行性標識は見られなかった。
【0087】 再生しているLVeニューロンの逆行性標識は確認されたが、実験の脱髄及び脊 髄ミエリン崩壊の後のみにおいてであった(図8)。8匹の実験動物で、再生してい
るLVe標識の平均割合は、非損傷の対側対照核と比較して41.8%±3.1%(n=8、 範囲33〜49%)であった。対照処理動物(上記参照)において、LVe標識の割合は2.
24%±0.55%であった(図5、n=13、範囲0〜6)。 損傷したミエリン抑制赤核脊髄路の二重逆行標識についても、定性的に評価し
た(図9E及びF)。胸髄の半側切断損傷時の損傷部位を直接標識した後、多数のRDA
陽性(第一標識)大型細胞RNニューロンが確認された。脊髄内のミエリン抑制及び
その後の損傷部位尾側へのフルオロゴールド注入後(詳細は上記を参照)、少数の
FG陽性ニューロン重複集団が確認された(すなわち、幾つかのニューロンはRDAと
FGの両方で標識された)。第一又は第二のトレーサのみで標識した細胞も、分析 した全ての脳幹に存在していた。 実験処理後の5週間の回復期中における機能又は挙動の相違点についての調査 では、損傷動物と非損傷の対照動物との歩行パターンに顕著な差異は見られなか
った(すなわち全ての動物は歩行し、基本的逆流機能については同程度であった)
。これは、半側切断損傷後に脊髄内に注入された処理剤(例えばPBSのみ、GalC抗
体のみ、血清補体のみ又は血清補体とGalC抗体)に無関係に認められた。したが って、微妙な差異の確認又は数 量化は極めて困難であり、「総体的」な歩行パターンは本質的に同じであった。
【0088】 脊椎離断を使用した従来技術(Keirsteadら,1995,1992)と比較して、本発明は 、各動物が各々の内部制御を利用できるように(すなわち、損傷した脳幹‐脊髄 突起からの軸索再生が未損傷の対側相同器官と容易に比較できるように)半側切 断モデルを使用して説明している。さらに、本発明は、広範な脊髄損傷に伴って
頻発する嚢胞腔形成の程度、ならびに必要とされる比較的長期の回復期における
動物の不快を最小限にするよう努めた。 本発明はまた、血清補体及びミエリン特異性抗体(例えばGalC)の脊髄内注入に
よって生じた脱髄が、注入部位のいずれかの側において、1〜2脊髄セグメントに
わたって急速かつ活発な脱髄を起こし、さらに2セグメントにわたるミエリン崩 壊を起こすことを例証している。定住小膠細胞及び/又は侵入性マクロファージ が、ミエリン破片を含むことが確認された。胸部半側切断を包囲する脊髄ミエリ
ンを免疫的に抑制することにより、2つの片側的に突出する脳幹‐脊髄経路、つ まり赤核脊髄路と側方前庭脊髄路(それぞれRN及びLVe)による顕著な軸索再生が 促進された。対照処理動物(半側切断損傷に加えてPBSのみ、GalC抗体のみ又は血
清補体のみの局所脊髄内注入)では、損傷RN又はLVeにおける逆行性標識はほとん
ど、あるいは全く認められなかった。
【手続補正書】特許協力条約第34条補正の翻訳文提出書
【提出日】平成12年4月27日(2000.4.27)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正内容】
【特許請求の範囲】
【請求項35】 請求項31に記載の方法を行うのに必要な成分を含むキッ
ト。
【手続補正書】
【提出日】平成12年5月11日(2000.5.11)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0088
【補正方法】変更
【補正内容】
【0088】 脊椎離断を使用した従来技術(Keirsteadら,1995,1992)と比較して、本発明は 、各動物が各々の内部制御を利用できるように(すなわち、損傷した脳幹‐脊髄 突起からの軸索再生が未損傷の対側相同器官と容易に比較できるように)半側切 断モデルを使用して説明している。さらに、本発明は、広範な脊髄損傷に伴って
頻発する嚢胞腔形成の程度、ならびに必要とされる比較的長期の回復期における
動物の不快を最小限にするよう努めた。 本発明はまた、血清補体及びミエリン特異性抗体(例えばGalC)の脊髄内注入に
よって生じた脱髄が、注入部位のいずれかの側において、1〜2脊髄セグメントに
わたって急速かつ活発な脱髄を起こし、さらに2セグメントにわたるミエリン崩 壊を起こすことを例証している。定住小膠細胞及び/又は侵入性マクロファージ が、ミエリン破片を含むことが確認された。胸部半側切断を包囲する脊髄ミエリ
ンを免疫的に抑制することにより、2つの片側的に突出する脳幹‐脊髄経路、つ まり赤核脊髄路と側方前庭脊髄路(それぞれRN及びLVe)による顕著な軸索再生が 促進された。対照処理動物(半側切断損傷に加えてPBSのみ、GalC抗体のみ又は血
清補体のみの局所脊髄内注入)では、損傷RN又はLVeにおける逆行性標識はほとん
ど、あるいは全く認められなかった。
【表1】 表1は翻訳文に加えなかったが、表1中に若干の英語が含まれているため、そ
の部分についても翻訳して、国際出願時の明細書に合致させた。 なお、明細書
【0017】2〜4行目にラットの赤核脊髄ニューロン細胞の数を標
識を用いて測定すること、および
【0066】5〜10行目に、実験系のものでのニュ ーロンの再生割合が31.8±13.38%、対照系で1.49±0.84%であったことが記載 されている。 また、明細書
【0019】9〜12行目に、実験系では赤核脊髄ニューロンを軸索切 断したものを用いたことが記載されている。 したがって、「表1」は国際出願時の明細書に合致させるものであり、誤訳の
訂正に相当する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SZ,UG,ZW),EA(AM ,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM) ,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG, BR,BY,CA,CH,CN,CU,CZ,DE,D K,EE,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM ,HR,HU,ID,IL,IS,JP,KE,KG, KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,L U,LV,MD,MG,MK,MN,MW,MX,NO ,NZ,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG, SI,SK,SL,TJ,TM,TR,TT,UA,U G,US,UZ,VN,YU,ZW (72)発明者 スティーブス,ジョン,ディー. カナダ、ブイ6ティー 1ゼット4 ブリ ティッシュ コロンビア、バンクーバー、 ユニバーシティー ブールバード 6270、 アナトミー & サージェリー、ズーロジ ー、デプト、コード (72)発明者 ダイアー,ジェイソン,ケー. カナダ、ブイ6ティー 1ゼット4 ブリ ティッシュ コロンビア、バンクーバー、 ユニバーシティー ブールバード 6270、 アナトミー & サージェリー、ズーロジ ー、デプト、コード (72)発明者 ケアステッド,ハンズ,エス. イギリス、シービー2 2ピーワイ ケン ブリッジ、ロビンソン ウェイ、エムアー ルシー ケンブリッジ センター フォー ブレイン リペアー Fターム(参考) 4C084 AA02 BA44 DB52 DB59 NA14 ZA012 ZA022 ZA162 4C085 AA13 BB41 BB43 CC21 EE03

Claims (35)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 インビボでミエリン上のエピトープとその場で組み合わされ
    た際にニューロンの一過的な髄鞘脱落を促進し、 このような処理が必要な哺乳類への投与前又は投与時又は投与後のいずれか
    に互いに混合される、 (a) ミエリンのエピトープに特異的に結合する1以上の補体-固定抗体又はその フラグメント; 及び (b) 1以上の補体タンパク質又はそのフラグメント からなり、ミエリンへの該抗体の結合により、ミエリンの一過的な崩壊及び/又 は一過的な髄鞘脱落を引き起こす二部組成物。
  2. 【請求項2】 組成物がさらに1以上の成長因子を含む請求項1に記載の二 部組成物。
  3. 【請求項3】 治療上有効な量の (a) ミエリンのエピトープに特異的に結合する1以上の補体-固定抗体又はその フラグメント; 及び (b) 1以上の補体タンパク質又はそのフラグメント からなり、ミエリンへの該抗体の結合により、ミエリンの一過的な崩壊及び/又 は一過的な髄鞘脱落を引き起こす組成物。
  4. 【請求項4】 組成物がさらに1以上の成長因子を含む請求項3に記載の組 成物。
  5. 【請求項5】 (a) ミエリンのエピトープに特異的に結合する1以上の補体
    -固定抗体又はそのフラグメント; 及び (b) 1以上の補体タンパク質又はそのフラグメント からなる成分が別々に又はともに導出され、ミエリンへの該抗体の結合により、
    ミエリンの一過的な崩壊及び/又は一過的な髄鞘脱落を引き起こす、ニューロン のミエリンにおいて一過的な髄鞘脱落複合体を形成するための溶液系。
  6. 【請求項6】 溶液系がさらに1以上の成長因子を含む請求項5に記載の溶 液系。
  7. 【請求項7】 抗体がモノクローナル及び/又はポリクローナルである請求 項1、3又は5に記載の組成物。
  8. 【請求項8】 抗体の幾つかが標識されている請求項1に記載の組成物。
  9. 【請求項9】 抗体が、Fv、Fab、Fab'又はF(ab')2フラグメントからなる群
    から選択される免疫反応性フラグメントである請求項1に記載の組成物。
  10. 【請求項10】 Fvフラグメントの可変領域が、ジスルフィド結合又はペプ
    チド連鎖で連結される請求項9に記載の組成物。
  11. 【請求項11】 ミエリンのエピトープが、ガラクトセレブロシド(GalC)、
    O4、ミエリン乏突起膠細胞糖タンパク質(MOG)、ミエリン結合性糖タンパク質(MA
    G)、NOGO、NI220、NI-35/250又はアレチンを含むリストから選択されるミエリン
    鞘のエピトープである請求項1に記載の組成物。
  12. 【請求項12】 補体タンパク質又はそのフラグメントが、C3成分又はフラ
    グメント、変異体、類似体又はそれらの化学誘導体を含む請求項1に記載の組成
    物。
  13. 【請求項13】 補体タンパク質又はそのフラグメントが、投与される種と
    は異なる種に由来する請求項1に記載の組成物。
  14. 【請求項14】 補体タンパク質又はそのフラグメントが、抗体成分と物理
    的に異なる成分である請求項1に記載の組成物。
  15. 【請求項15】 補体タンパク質又はそのフラグメントが、共有もしくは非
    共有的に抗体成分に直接結合し、ミエリン表面への抗体の結合で内因性の免疫系
    攻撃を誘発する請求項1に記載の組成物。
  16. 【請求項16】 成長因子とノイロトロピン因子をさらに含む請求項1に記
    載の組成物。
  17. 【請求項17】 ノイロトロピンがNT-3である請求項16に記載の組成物。
  18. 【請求項18】 ノイロトロピンがFGF-1である請求項16に記載の組成物 。
  19. 【請求項19】 生理学的に受容な担体をさらに含む請求項1のいずれかに
    記載の医薬組成物。
  20. 【請求項20】 治療上有効な量の (a) ミエリンのエピトープに特異的に結合する1以上の補体-固定抗体又はその フラグメント; 及び (b) 1以上の補体タンパク質又はそのフラグメント からなり、ミエリンへの該抗体の結合により、ミエリンの一過的な崩壊及び/又 は一過的な髄鞘脱落を引き起こし、ミエリンの崩壊及び/又は髄鞘脱落によって 被験者のニューロンの修復及び/又は再生を促進する組成物の使用。
  21. 【請求項21】 被験者が哺乳類である請求項20に記載の使用。
  22. 【請求項22】 被験者がヒトである請求項21に記載の使用。
  23. 【請求項23】 被験者が、ニューロンの機能障害のためにニューロンの修
    復及び/又は再生を要している請求項22に記載の使用。
  24. 【請求項24】 ニューロンの機能障害が、CNSに対する外傷又は障害によ り引き起こされる請求項23に記載の使用。
  25. 【請求項25】 障害が、脊髄障害である請求項23に記載の使用。
  26. 【請求項26】 ニューロンの機能障害が疾患により引き起こされる請求項
    23に記載の使用。
  27. 【請求項27】 疾患が、アルツハイマー病及びパーキンソン病からなる群
    から選択される請求項26に記載の使用。
  28. 【請求項28】 症状が慢性である請求項22に記載の使用。
  29. 【請求項29】 治療上有効な量の (a) ミエリンのエピトープに特異的に結合する1以上の補体-固定抗体又はその フラグメント; 及び (b) 1以上の補体タンパク質又はそのフラグメント からなり、ミエリンへの該抗体の結合により、ミエリンの一過的な崩壊及び/又 は一過的な髄鞘脱落を引き起こし、移植細胞の成長を許容する環境を哺乳類のCN
    S内に生じる組成物の使用。
  30. 【請求項30】 ミエリンのエピトープに特異的に結合し、標識されて請求
    項8に記載の組成物のいずれかの使用を検出かつモニターすることができる1以 上の補体固定抗体又はそのフラグメントの使用。
  31. 【請求項31】 治療上有効な量の (a) ミエリンのエピトープに特異的に結合する1以上の補体-固定抗体又はその フラグメント; 及び (b) 1以上の補体タンパク質又はそのフラグメント とニューロンとを接触させることからなり、ミエリンへの該抗体の結合でミエリ
    ンの崩壊及び/又は髄鞘脱落を引き起こす、ミエリンの一過的な崩壊及び/又は一
    過的な髄鞘脱落による被験者のニューロンの修復及び/又は再生を促進する方法 。
  32. 【請求項32】 1以上の成長因子が適当な順序で加えられて再成長又は再 生を促進する請求項31に記載の方法。
  33. 【請求項33】 被験者が哺乳類である請求項31に記載の方法。
  34. 【請求項34】 被験者がヒトである請求項33に記載の方法。
  35. 【請求項35】 請求項31に記載の方法を行うのに必要な成分を含むキッ
    ト。
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