JP2001520750A - Tshレセプター自己抗体を検出するためのレセプター結合アッセイ、およびそのようなレセプター結合アッセイを行なうための試薬類と試薬キット - Google Patents

Tshレセプター自己抗体を検出するためのレセプター結合アッセイ、およびそのようなレセプター結合アッセイを行なうための試薬類と試薬キット

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Abstract

(57)【要約】 TSHR自己抗体(TSHR-auto-ab)を検出するための改良されたレセプターアッセイは、特異的結合剤として、固定されたアフィニティ精製rTSHR製剤を使用する。これと、血清中の病理学的に増加したhTSH水準(anti-hTSH-abの添加)を中和するため、及び又は(2段階手順で)anti-bTSH-abの影響を排除するための新規な手段は、このタイプのアッセイの信頼性を高めるとともに、即時使用型、及び又はよく標準化された形でアッセイ成分を調製し、これらの成分を市場に出す可能性が開かれる。

Description

【発明の詳細な説明】 発明の名称 TSHレセプター自己抗体を検出するためのレセプター結合アッセイ、およ びそのようなレセプター結合アッセイを行なうための試薬類と試薬キット 本発明は甲状腺の自己免疫病、特にグレーブス病において生じるTSHレセプ ター自己抗体(TSHR-auto-ab)を測定するための改良されたレセプター結合アッ セイに関する。 甲状腺が関与する多くの病気は甲状腺の分子構造に対する自己抗体が形成され 、そして病気と関連して自己抗原として作用し始める自己免疫病であることが知 られている。甲状腺の自己抗原として知られる最も重要なものはチログロブリン (Tg)、チロパオキシダーゼ(TPO)そして特にTSHレセプター(TSH R)である。(フルマニアック ジェイ(Furmaniak J.)等、Autoimmunity 1 990年,7巻63−80頁を参照)。 TSHレセプターは甲状腺膜に局在し、脳下垂体腺によって分泌されるホルモ ンのTSH(甲状腺刺激ホルモン又はチロトロピン)がこれに結合し従って実際 の甲状腺ホルモン特にチロキシンの分泌を誘発するレセプターである。TSHレ セプターは、大きなアミノ末端細胞外ドメインを有している、G−プロテインの 結合した糖蛋白質レセプターからなるレセプターファミリーに属し、このファミ リーにLH/CGレセプター及びFSHレセプターも属している。TSHレセプ ターの化学構造すなわち、それをコードしているDNAの配列及びそこから誘導 されるレセプター自体のアミノ酸配列は1989年末に明らかにされた(リバー ト エフ等,Biochem.Biophys.Res.Commun.165:1250-1255;ナガヤマ ワイ 等.Biochem.Biophys.Res.Commun.165:1184-1190;を参照、又EP-A-0433509 及びWO-A-91/09121;及びWO-A-91/09137;WO-A-91/10735及びW0-A-91/03483も参照 ;更にユージ ナガヤマ及びバシル ラポポート:Molecular Endocrinology,6巻No.2、145−156頁及び そこに引用された文献も参照)。 TSHレセプターに対して形成され、甲状腺が刺激されるようにこのレセプタ ーと相互作用をする刺激性自己抗体は、甲状腺機能亢進症として現われるグレー ブス病として知られる甲状腺自己免疫病において、ある役割を果たすことが一般 に知られている。従って、TSHレセプターに対する自己抗体の測定は、グレー ブス病の診断にとってかなりの臨床的な重要性を有している。 TSHレセプター自己抗体(TSHR-auto-ab)は、今日まで本質的に2つの原理 に基づく方法に従って、生体試料で測定された(例えば、モルゲンターラー(Mor genthaler)エヌ ジー等J Clin Endocrinol Metab 81:3155-3161(1966))。 細胞刺激試験において、文献中ではしばしば略語TSI(TSI=甲状腺刺激 性免疫グロブリン)で表示される刺激性TSHレセプター自己抗体(TSHR-auto- ab)の存在は、細胞膜中に天然又は組替えTSHレセプター(TSHR)を有し 、かつ自己抗体含有試料と接触する適当な細胞の特定機能は、特にcAMP(環 状アデノシン−燐酸)の形成という刺激によって引き起こされるか又は強められ るという事実となって現われる。バイオアッセイとも呼ばれるこれらの試験にお いて、刺激効果は選択的に測定されるが、測定は極めて複雑であり、従って通常 の臨床診断には特に適しているとは言えない。 別の方法として、自己抗体は競合的なレセプター結合アッセイ、特にラジオレ セプターアッセイを用いて、例えばベー.アール.アー.ハー.エム.エス.デ ィアグノスティカ ゲーエムベーハー.(B.R.A.H.M.S.Diagnostica GmbH)から のTRAK−アッセイ(R)の使用によって測定することも出来る。この慣用方法 によるTSHレセプター自己抗体(TSHR-auto-ab)の測定の為には、血清試 料に由来する測定されるべき自己抗体は、液相において、可溶化されたブタTS Hレセプター(porc.TSH R)の結合場所に対して、放射性標識化ウシTSH(125I-bTSH)と競争させ られる(サウスゲート ケー (Southgate,K)等Clin.Endocrinol.(オック スフォード)20巻539−541頁(1984);マツバ ティ等,J.Bioch em.118巻265−270頁(1995);EP 719 858 A2;ベ ー.アール.アー.ハー.エム.エス.ディアグノスティカ ゲーエムベーハー .(B.R.A.H.M.S.Diagnostica GmbH)からのTRAK−アッセイRについての製品 情報を参照)。ブタTSHレセプター(porc.TSHR)製剤に対し結合された125I-b TSHを測定するために、培養の完了後、使用の可溶化されたブタTSHレセプ ター(porc.TSHR)は沈降試薬の使用と、その後の遠心分離段階を用いて液相から 分離される。レセプターに結合した125I-bTSHは、沈殿物中の結合された放射 活性を測定することによって決定される。測定は、125I-bTSHと測定されるべ き自己抗体の間のブタTSHレセプター(porc.TSHR)上の共通の結合場所に対す る競争に基づいているから、実際にウシTSH(bTSH)と競争する自己抗体のすべ てが、そしてそれらのみがこの方法で測定される。TSH結合を阻害することが できるそのような競争的な自己抗体は、文献でTBII(TBII=チロトロピ ン結合阻害性免疫グロブリン)とも呼ばれ、それらの活性の程度は、いわゆるT BII活性のパーセントとしても表わされる。 TSHレセプター自己抗体の検出用に今日まで知られた競合的なラジオレセプ ターアッセイは、種々の欠点をもっており、それらは使用の検定成分の品質又は 入手性、既知アッセイでの測定結果を誤らせ得る、個々の患者の血清中に生ずる 異常、およびTSHレセプター製剤の結合能力が、レセプターの変化やレセプタ ーに結合される生体分子の変化に対して、一般的に非常に感受性が高いという事 実に起因している。 ペプチドや蛋白質性の生体分子、例えばホルモンや自己抗体のレセプターに対 する結合は、原則として非常に複雑なもので あり、レセプターと生体分子間の特異的結合の形成は、特にレセプターの場合の 構造上の変化に対し、レセプターが役割をもたないほとんどのイムノアッセイの 基礎をなす通常の抗原抗体結合対の場合よりも、はるかに感受性が高い。今日ま で、TSHレセプターを固定及び/又は標識化する試みは、レセプターの機能を 一般に大きく損なう構造的な変化につながっている。その結果、TSHレセプタ ー自己抗体(TSHR-auto-ab)の測定用のレセプター結合アッセイの場合に、 抗原抗体結合を用いたイムノアッセイに利用可能な多くの基本的アッセイ型を実 際に実行することについての、再現可能な記載はこれまでほとんどなかった。従 って、このような他のアッセイ型は、TSHレセプター自己抗体(TSHR-aut o-ab)の測定に実際には使用できなかった。このことは、固定された結合パート ナーを使用し、固相に結合されたトレーサーの濃度を測定の終りに直接決定する 検定型や、酵素、酵素基質又は化学発光剤標識のような、かさ高の分子を標識に 使用する検定型に特にあてはまる。固相に結合されたトレーサーの測定は、一連 の測定でほとんどの自動検定装置の基礎をなすから、これまでTSHレセプター 自己抗体の測定用に知られたアッセイは、このような自動装置では使用できなか った。 DE 43 28 070 C1特許は被覆試験管技術に基づくレセプター結 合アッセイ法の一つの型を記載しており、ここでは標識又は固定された機能的レ セプター製剤を製造することの難しさが、ある程度、実際のレセプター結合反応 のいわばシャドウ(影)を表わす競合反応系の固相成分に結合することによって 回避される。しかし、この方法の開示された原理は複雑すぎることがわかってお り、従って通常の臨床診断に検定法を提供することは実現しそうにない。この特 許のレセプター結合アッセイ全般の問題と、特にTSHレセプター自己抗体の測 定についての問題に関する一般的な記載は、参照によって本明細書に取り込まれ ることをここに明示する。 EP−B−0 488 170は、細胞を含まないレセプター結合試験を開示 しており、ここではアミノ末端レセプター蛋白質及び担体蛋白質、特にイムノグ ロブリンの重い鎖の一定断片(Fc)を含む組替え融合レセプターが使用され、 この融合レセプター類は抗血清又はモノクローナル抗体によって固相に結合され る。この議論されているレセプター類は高分子量G−蛋白質結合された糖蛋白質 レセプターの部類には属していない。更に、イムノグロブリンのFc部分である 担体蛋白質を結合させることによる固定は、レセプター結合アッセイの助けによ って自己抗体を測定しようとするこのレセプター結合アッセイにとって、非常に 適しているとは言えない。なぜならば、自己抗体自体がイムノグロブリン類に属 していて、固定化系に結合し得るからである。 慣用のアッセイ法のある種の欠点は、異なる動物起源の反応体類、すなわち標 識化ウシTSH(bTSH)と組み合わせた安定化されたブタTSHレセプター 製剤が、ヒトTSHレセプター自己抗体(TSHR-auto-ab)の測定に使用されたこ ととも関連している。これらの検定成分が、良好な相互の結合によって区別され 、グレーブス病で生ずるヒトTSHレセプター自己抗体(TSHR-auto-ab)の 約80−90%の検出を可能としているのは事実である。しかし、検出しようと するTSHレセプター自己抗体(TSHR-auto-ab)の100%検出に比べれば低いも のであるその臨床的価値は、恐らく、少なくとも部分的には、患者の血清中に生 ずる自己抗体がヒトTSHRに対するものであるのにブタTSHR製剤への結合 に基づいて測定される事実によって低くなっているのである。組み替え法で製造 されるヒトTSHレセプター製剤(rhTSHR)が基本的には入手可能である にも関らず、どんな期待される利点も実施上の多くの新たな欠点によって帳消し にされてしまうため、このようなrhTSHRはこれまで臨床的なアッセイで使 用されたことがなかった。特に、固相に結合された形態(固定型)や標識化形態 の アッセイにおいて、機能的な自然のrhTSHRを使用する可能性は、ブタTS Hレセプター(porc.TSHR)の場合と同様に、今日までわずかなものであった。 ダブリュー ビー ミニッチ、エム ベーア、及びユー ルース、Exp Clin E ndocrinol Diabetes 105巻282−290頁(1997)、及び「アメリカ 甲状腺学会第70回年会」1997年10月15〜19日、Abstract第89号、 及びダブリュー ビー ミニッチ、ジェイ ディー ウェイマイヤー、ユー ル ース、Thyroid 8巻3−7頁(1998)(出版ずみ)の発表文献は、遺伝子 工学で結合させたペプチド残基によって組み替えヒト融合TSHRを固定するこ とが可能であり、またこの型の融合TSHレセプターをTSHレセプター自己抗 体(TSHR-auto-ab)の測定に使用できることを明らかにしている。対応する要約 の開示も、それ以前に刊行されていない国際特許出願公開WO 98/2034 3に見出される。 更に、EP−A 0 719 858は、骨髄腫細胞系統の助けによって機能 的rhTSHRを調製する方法を記述している。この出願は、調製されたrhTSHR ポリペプチドを使用してモノクローナル抗体をつくる可能性を、一般的、推測的 な形で言及しており、このような抗体を、とりわけrhTSHRを固定化するた めに、及びTSHレセプター自己抗体(TSHR-auto-ab)の測定への利用のために 使用することを提案している。しかし、このようなモノクローナル抗体の実際の 調製と選択は記載されておらず、また、この提案が、rhTSHRを得られるこ ともあるモノクローナル抗体と機能を失わずに固定すること、そのモノクローナ ル抗体をその固定形でTSHレセプター自己抗体(TSHR-auto-ab)の測定に使用す ることを可能とするということは、具体的に示されていない。EP−A 719 858の開示は、その程度のもので再現できない。モノクローナル抗体はその 親文献たる科学刊行物(マツバ等、J.Biochem.118巻265−270頁(1 995)では言及されていない。 TSHレセプターの分子構造が決定された後に、完全なヒト組替えTSHレセ プター(rhTSHR)のポリペプチド、そのようなレセプターの(シグナルペ プチドなしの398個のアミノ酸からなる)N−末端細胞外部分、及びより短い レセプターペプチド部分配列のコンジュゲート類に対するモノクローナル及びポ リクローナル自己抗体が、TSH結合及び抗体結合の責任を担っているTSHレ セプターのエピトープを決定する目的で、多くの研究グループによって製造され た。(例えばエヌ.ジー.モルゲンターラー(Morgenthaler)等,J Clin Endoc rinol Metab 81:3155-3161(1996);シーサラマイアー ジー.エス.等,End ocrinology 134,No.2,549-554(1994);デサイ アール.ケー.等,J.Clin.E ndocrinol.Metab.77:658-663,1993;ダラス ジェイ.エス.等,Endocrinolo gy 134,No.3,1437-1445頁(1994);ジョンストン エー.ピー.等,Mol.Cell .Endocrinol.105(1994),R1-R9:シーサラマイアー ジー.エス.等,Endocr inology 136,No.7,2817-2824頁(1995);ニコルソン エル.ビー.等,J.Mol .Endocrinol.(1996)16,159-170頁:ロパース エー.等,Cell.Immunol. 161,262-269頁(1995);オオモリ エム.等,Biochem.Biophys.Res.Commun. 174,No.1(1991),399-403頁;エンドー ティ等,Biochem.Biophys.Res.Commu n.181,No.3(1991),1035-1041頁;コスタグリオラ エス.等,Endocrinology 128,No.3,1555-1562頁,1991;マリオン エス.等,Endocrinology 130,No.2 ,967-975頁(1992):ジェイ.サンダース等,J.Endocrinol.Invest.19(Suppl .6),1996及び更にこれらの発表論文に引用されている文献を参照)。TSHレ セプター又は組替え法によって造られたその部分配列に関する結合挙動について 、そして特にTSHレセプターの種々の形態又は断片に対するTSHの結合に干 渉する能力に関して、種々の抗体が試験された。種々のポリクローナル又はモノ クローナル抗体が異なる動物の免疫化により、及び/又は異なる発 現系からの組替え物質を使用してつくられ、そのうえ組替え法で造られた異なる 起源からのTSHレセプター又はそのペプチド断片が、しばしば結合試験に使用 されて以来、また更にレセプターペプチドのグリコシル化及び/又は正しい折り たたみが多くの抗体の結合に決定的なものでありそうとわかってからも、天然の TSHレセプターのエピトープ構造、及びヒト血清のポリクローナル抗体群中に 生じる自己抗体のエピトープ特異的な結合挙動は、まだ完全には説明されてはい ない。 例えばダラス ジェイ.エス.等,Endocrinology 134,No.3,1437-1445頁(1 994)の刊行物中で、バクロウィルス/昆虫細胞発現系の助けにより造られ、N− 末端シグナルペプチドのないヒトTSHレセ7プターの細胞外ドメインのアミノ 酸を有している部分的な組替えTSHレセプターが、ウサギを免疫化するのに使 用され、また、生ずる免疫グロブリンフラクションから、約20個のアミノ酸を 各々有している合成ペプチド類を使用するアフィニティクロマトグラフィーによ り、特異的な抗体フラクションが得られる。次に上記の特異的な抗体フラクショ ンは、市販レセプター結合アッセイにおいて、なかでも可溶化ブタTSHレセプ ターに対するTSHの結合を封鎖する適性について検討される。これらの抗体は 刺激活性を示さなかった。 シーサラマイアー ジー.エス.等,Endocrinology 136,No.7,2817-2824頁 (1995)による刊行物は、マウスを免疫化するのに、そして標準技術によってTS Hレセプターの個々のエピトープに対するモノクローナル抗体を造るのに、上記 刊行物と同じ部分的組替えTSHレセプターが、どのように使用されたかを記載 している。同様の手順がニコルソン エル.ビー.等,J.Mol.Endocrinol.(1 996)16,159-170頁に記載されている。 シーサラマイアー ジー.エス.等,Endocrinology 134,No.2,549-554頁(1 994)に従って、上に記載のとおりに造られた部分的組替えTSHレセプターは、 その後折りたたまれて次に放射性標識化ウシTSH(bTSH)への結合適性に ついて試験 される。この目的の為に、これを液相で放射性標識化bTSHと反応させる。次 に、生じる複合体をできるだけ定量的に反応混合物から分離するために、完全な TSHレセプター配列の357−372のアミノ酸を含有し、そして折りたたま れていない部分的組替えTSHレセプターに対するbTSHの結合を阻害しない ことが示されている部分ペプチドのコンジュゲートでウサギを免疫化し、それに よって造られた抗体を、沈殿系の一部として加える(デサイ アール.ケー.等 ,J.Clin.Endocrinol.Metab.77:658-663,1993)。次に添加された抗体又は この抗体及び結合された放射性標識化bTSHを含有している複合体を、各抗体 と非特異的に結合するプロテインAの助けによって沈殿させる。試験条件下でプ ロテインAのレセプター結合抗体に対する結合は、同時的なbTSHの結合を損 なうことがないように見える。 更に、より以前の以前に刊行されたことがない特許出願196 51093. 7で、TSHレセプター自己抗体の測定用に実施可能な競合的な固相レセプター アッセイが、初めて記述されている。このアッセイで、測定しようとするTSH レセプター自己抗体(TSHR-auto-ab)と、標識化bTSHと、そして存在すること もある標識化モノクローナル抗体とを、可溶化TSHRの結合位置に対して競合 せしめ、形成されるTSHR複合体を固定モノクローナル抗体によって固相に結 合させる。出願196 51093.7で、TSHレセプター(TSHR)の比 較的短いアミノ酸配列を認識するモノクローナル抗体が、粗製のブタTSHR又 は任意選択的に組み替え型のTSHR製剤とも組み合わせて使用される。その具 体例においてはTSHR複合体の固定は、シーケンシャルな抗ヒトTSHレセプ ターモノクローナル抗体(anti-hTSHR-mab)の結合されたアフィニティゲ ルの助けにより、行われている。出願196 51 093.7の開示の焦点は 、特に慣用の可溶化された粗製TSHR製剤の使用によるTSHレセプター自己 抗体(TSHR-auto-ab)測定の臨床的価値 の増加にある。しかし、この出願の内容、特に測定法の変化があり得ることにつ いては、参照によって本明細書に取り入れることを明示する。 anti-hTSHR-mabを得るための特定の方法が、エス コスタグリオラ及び ジー ヴァッサート、J.Endocrinol.Invest.20(No.5への付録)、アブストラ クト4(1997)に更に記述されている。この方法によると、抗体生成を目的 としたマウスの免疫化は、ペプチド抗原によるのでなく、ヒトTSHレセプター (hTSHR)をコードしたDNAプラスミド構造体の筋肉内注射によって行わ れる。この方法で、天然のヒトTSHレセプター(hTSHR)に高いアフィニ ティをもった新規なモノクローナル抗体が得られる。この手法は非常に価値ある ことが立証され、特に立体配座エピトープを認識するanti-hTSHR-mabの調 製のために、本出願でも使用されている。 更に、組み替えTSHレセプターまたはその部分に対する抗体について得られ た知識によって、免疫沈降試験としてそれ自体知られている第三の原理を、レセ プター自己抗体の測定に使用することが提案されたこととなったことがわかる。 この試験では、35S-メチオニンを組み込んで標識化された組替えTSHレセプタ ーの細胞外部分の製剤が沈降試薬として使用されている。このようなアッセイの 一つに於ては、TSI又はTBIIのいずれに対しても選択性がない(エヌ ジ ー モルゲンターラーら、J Clin Endocrinol Metab 81:700-706(1996))。しか し、インビトロの翻訳によって35S-標識化レセプターを調製することは極めて複 雑で費用がかかり、35Sによって放出される放射線の通常の臨床的測定に適した 測定装置は存在しない。従ってこの方法は通常の臨床診断の為の測定方法として は適していない。 本発明の目的は、先行技術のそのような競合的レセプター結合アッセイの記載 された欠点を有さず、しかも臨床的に高い価値を有している、TSHレセプター 自己抗体の測定のためのレセプター結合アッセイ法を提供することである。 特に、本発明の目的は、アッセイの反応体から形成されたTSHレセプター複 合体が固相に結合された形で直接に得られ、従って、このレセプター結合アッセ イの自動化方法が可能となる、TSHレセプター自己抗体を測定するための改良 されたレセプター結合アッセイ法を提供することである。 特に本発明の更に別の目的は、異常な血清成分による測定の特異的な撹乱が効 果的に排除され、アッセイ反応体の最適結合が確保される方法で、TSHレセプ ター自己抗体の検出用の改良されたレセプター結合アッセイ法を設計することで ある。 本発明の更に別の目的は、そのような改良されたレセプター結合アッセイを通 常の臨床診断において実施するために必要な試薬キットを提供することである。 上記の目的は、請求項1のプレキャラクタライジングクローズに従う競合的レ セプター結合アッセイに於て、請求項1のキャラクタライジングクローズで再現 される特徴をもったラジオレセプターアッセイによって少なくとも部分的には達 成される。 上記の目的達成に至る研究調査において、TSH、特にbTSHやrhTSH Rの結合に関係し、実験部分で下記の試験に使用されている種々の知識が更に得 られた。 本発明による改良されたレセプター結合アッセイの有利な具体例は、サブクレ ーム中にも記載されており、特に本明細書記載中のより詳細な説明と組み合せて 記載されている。 本発明を実現するために試薬キットを提供する目的は、請求項13による成分 (i)と(ii)の少なくとも一つを含有している好ましい試薬キットによって 達成される。 本出願の序論と以下の部分において、使用の試薬又は分析薬/生体分子は原則 として種々の略語によって特徴付けられており、例外として特定の文脈から異な る点が当業者に明らかな場合を除き、常に下記の意味をもつものとして理解され るべきである。特定データの使用は実施された試験及び測定の正確な記述を行な う意図のものであり、記述された結果と結論が記述さ れた特別な場合にのみ該当することを意味するものではない。むしろ、得られた 情報の多くは当業者にとって、一般的な意味で明白に認識可能なものである。 使用される略語の説明: TSH=甲状腺刺激ホルモン(チロトロピン)。略語TSHが付加なしに使用 される場合、それは特定生成物を指すのでなく、ホルモンの結合や機能が一般的 な形で論じられている。 bTSH=ウシTSH(すなわち牛から得られるもの)。TSHレセプターに 対する自己抗体の測定用アッセイにおいてトレーサーとして使われる製剤(特に 放射性ヨウ素化されたもの、又は本明細書に記載のように、化学発光剤標識、特 にアクリジニウムエステルラベルで標識されたもの;但し、その他の既知のラベ ルを使用することも、本発明の範囲内にある。) 125I-bTSH=競合物質として使用される放射性ヨウ素化されたbTSH。 ベー.アール.アー.ハー.エム.エス.ディアグノスティカ ゲーエムベーハ ーによるアッセイの説明との関連では、125I-bTSHは特にDE 042 3 7 430 C1又はEP 0 668 775 B1に従って得られた生成物 であり、ベー.アール.アー.ハー.エム.エス.ディアグノスティカ ゲーエ ムベーハーによるTRAKアッセイ(R)の成分を形成するものを表わしている。 hTSH=ヒトTSH。0.2-4mU/lの非常な低濃度で健康人の血清・血漿中に 生ずる。しかし、甲状腺機能低下症にかかった患者の血清では、hTSH濃度が かなり高まる。上昇したhTSH水準(20mU/Lを超えるもの)によって起こる自 己抗体測定の攪乱は説明中で論じられており、特別な手段によって排除される。 hTSHの構造に関する知識の現状は、グロスマン等、Endocrine Review、18 巻、1997年、476−501頁に要約されている。 TSHR=TSHレセプターのこと。甲状腺膜内に固定されている糖蛋白質レ セプター。略語TSHRがそれ以上の付加な しに使用される場合は、特定生成物を指すのでなく、レセプターの機能や結合に おけるその関与が一般的な形で論じられている。 porc.TSHR=ブタ(porcine)の甲状腺からの抽出によって得られる 可溶化された粗製レセプター製剤。TSHRに対する自己抗体の測定用に先行技 術のラジオレセプター沈降試験(ベー.アール.アー.ハー.エム.エス.ディ アグノスティカ ゲーエムベーハー社の慣用のTRAKアッセイ(R))で特異的 結合剤として使用される。 rhTSHR=遺伝子工学処理された(組替え型)ポリペプチドであって、少 なくとも「機能的にはヒトTSHレセプター」であるとみなされる程度に、天然 のヒトTSHRのアミノ酸配列をもっている。このことは、TSHRに対する自 己抗体の結合又はhTSHの結合に関して、天然のヒトTSHRにかなりの程度 似た挙動を示すことを意味している。略語rhTSHRがそれ以上の付加なしに 使用される場合は、それは特定の生成物を指すものではない。すなわち、rhT SHRは、組替え型の完全な、多少ともグリコシル化されたポリペプチド、十分 な長さの部分的配列、又は遺伝子工学処理された融合生成物(例えば、国際特許 PCT/EP97/06121に記述されているもの)を表わしうる。それ以上の説明がない場 合、単に「rhTSHR」と呼ばれる生成物は、粗製の洗剤可溶化された膜製剤 として、すなわち組替えポリペプチドの発現に使用される細胞の膜の洗剤を使っ た慣用の可溶化で得られる形で存在する。 rTSHR(imm)=固相に選択的に結合(固定)されたヒト組替えヒトT SHR製剤(rhTSHR)。結合は下の説明中により正確に記述されているよ うに、適当な抗体を介してなされるが、融合生成物の場合は、特定のペプチド残 基、例えばビオチン残基でなされることもある。固相は試験管(被覆管又はCT 手法)の管壁でありうるが、適当な懸濁された固体でもよい。 rhTSHR(imm)*=選ばれたanti-hTSHR-mabを経由して固相に結 合され(上を参照)、外来成分を除くために洗浄によって結合型で精製された固 定rhTSHR。「アフィニティ精製rhTSHR」とも呼ばれる。 Ab=抗体。 TSHR-auto-ab=生体試料、特にヒト血清又は血漿中で検出可能なTSHレ セプターに対する自己抗体。このタイプの刺激性TSHR-auto-ab(文献中でTSI =甲状腺刺激性免疫グロブリンとも略される)の検出は、グレーブス病の診断に とって特に重要である。TSHR-auto-abの測定用の市販のアッセイ(ラジオレセプ ターアッセイ)は、ベー.アール.アー.ハー.エム.エス.ディアグノスティ カ ゲーエムベーハー社のTRAKアッセイ(R)である。 Anti-hTSHR-mab=rhTSHRに結合するモノクローナル抗体。それ以 上の説明がない場合に、例えば先願のDE 196 51 093.7に記述さ れたとおり、その結合挙動に関して配列性のものでありうるが、立体配座性でも ありうる。本発明によるアッセイを実現するための、このタイプの特異的なanti -hTSHR-mabの選択は、本出願で、より詳細に記述されている。特別なanti- hTSHR-mabを実験に使用する場合は、これらは本出願で説明された数で特徴 づけられる。やや変更された、特定がより低い略語(例えば単にanti−TSHR −ab)を用いる場合は、この時点で不要な、ヒトTSHRに対するモノクロー ナル抗体への制限を避ける意図がある。 Anti-bTSH-ab=ヒト血清又は血漿中に生じ、bTSHと反応して、免疫複 合体を形成し、従って、bTSHのアッセイ成分への結合と、得られた測定結果 とに影響する、起源不明の抗体(ワイ オーチ等、Acta Endocrinologica(Copen h)、1989年、120巻、773−777頁;エス サカタ等、J.Endocrino l.Invest.14:123-130,1991;ティー イヌイ、Thyroid,6巻、259-299頁、1 996年を参照)。 序論の部分で説明されたように、すべてラジオレセプターアッセイとして設計 された既知の競合的レセプター結合アッセイは、必要な基準と緩衝液のほかに、 以下の基本的アッセイ成分を含有する。 (i)慣用のアッセイにおける特異的結合剤としてのTSHレセプター製剤。 特にブタ甲状腺膜から得られる可溶化された天然のブタTSHレセプター(porc .TSHR)。(ii)125I-bTSH。これは使用されるTSHレセプター上の共通 の結合位置について、血清試料又は血漿試料からのTSHレセプター自己抗体( TBII)と競争する。(iii)生ずるTSHR複合体を反応溶液から分離するた めの薬剤。これは慣用のアッセイの場合、沈降剤のポリエチレングリコール(P EG)である。 本発明を既知の先行技術と区別する一つの特徴は、測定しようとするTSHレ セプター自己抗体(TSHR-auto-ab)と標識されたbTSHに関するアフィニ ティ精製rhTSHR(rhTSHR(imm)*)の結合能力が著しい損傷を 受けることなく、溶解TSHR製剤ではなく固相に選択的に固定((mobil ize)されたアフィニティ精製形態の機能し得るrhTSHR(すなわちヒト 組替えTSHレセプター)を使用できることが実験的に示されたことである。こ の知識によって、結合した標識化bTSHの定量が固相結合形で直接行なえる多 くの点で更に改良されたTSHR-auto-abの測定用のレセプター結合アッセイを 開発するための前提条件がつくられた。新規なTSHR製剤へのbTSHの結合 のより正確な検討から、追加の価値ある知識が得られ、本発明とその好ましい具 体例に使用された。もっと詳細な点は実験部分に記載されている。これらの追加 的知識の最も重要な面は以下のものである。 1.個々の患者の試料中における病理学的に高濃度のhTSHの干渉効果は、 試料含有測定液に特異的な市販の抗体(anti-hTSH-ab)を添加することで排 除できる。これらの抗体は、hTSHに選択的に結合し、競合物質として使用さ れるbTS Hと交差反応をしない。 2.測定を「2段階法」として実施し、下流段階で標識bTSHを、原測定液 から分離されたTSHR-auto-abの事前生成複合体、及びアフィニティ精製rh TSHR(imm)*と反応させる場合、患者試料中に存在しうるanti-bTSH -abはもはや妨害効果をもたない。 3.上の2で述べた新知識は、第二アッセイ段階においてbTSHとの反応を 可能とする。すなわち血清を含まない、厳密に標準化の可能なbTSH試薬との 反応を実施可能とする。 4。第三の物質、例えば分子量10,000d未満の物質のみを含有する血清 フラクション成分として特徴づけられ得る、特異的血清成分の存在は、bTSH のrhTSHR製剤への結合に有利である。結合を改良する幾つかの低分子量物 質、特に溶解された無機イオン類は、より正確に同定できた。しかし、EDTA で錯化する時は、すなわち堅固な錯体に結合される時には、無機イオン類は記述 された効果をもたない。 本発明方法は、TSHレセプター自己抗体(TSHR-auto-ab)の結合、及び 試験液からの標識化競合物質bTSHの結合が、固相に結合されたアフィニティ 精製rhTSHR(imm)*に直接可能であるため、得られるシグナルの測定 が、沈降試験(プレシピテーションアッセイ)に比べて、望ましい意味で実際上 単純化されるだけでなく、1段階アッセイ法(中間的な固−液分離なしの連続ピ ペット操作によって得られる単一試験液)から、試料とrhTSHR(imm)* との反応や標識化競合物質のbTSHとの反応が固−液分離によって互いに隔 てられた二つの連続的段階で実施される場合の、2段階アッセイ法へ転換するこ とにより、アッセイの設計を根本的に変更することができる。 プラスチック表面、特にCT手法用のプラスチック試験管壁や、微粒子、磁気 粒子、フィルター、ポリマーゲル材料、及びその他の既知の固相担体を、アフィ ニティ精製されたrhTS HR(imm)*用の固相担体として使用できる。本発明方法により、TSHR- auto-abの測定を自動化することもできる。このため、本発明方法を既知の自動 化システム(例えば、ベーリンガー マンハイム製のエレクシス システム又は チロン(Chiron)製のACS180システム)で実施できるように、アッ セイ設計を適合させることができる。このような自動化システムの場合、試料を レセプターで被覆された試験管にピペットで注入し、培養し、液体反応混合物を 吸引又は傾斜によってろ別し、自動手順の過程で、標識化bTSH、例えば125 I-bTSHを加えた第二の溶液を添加する。所定の培養後、通例の最終的な固 −液分離を行ない、その後、場合によっては適当な試薬の添加によって信号を誘 発後、信号を測定できる。2段階アッセイ法の例として記述されたピペット操作 の順序は可変的なものであり、場合によっては事前にrTSHRの固定するか又 はせずに、1段階アッセイ(2.1.1)のピペット操作順序と取り替えること ができる。 以下に、本発明は8つの図を参照しながら特定の具体例と実験結果に基づいて 、種々の面が更に詳しく説明されている。本発明の開示の一部として、明示的に 記載された実験に関連する一般的な説明を参照するものとする。 図は、種々の線図の形で以下のものを示している。 図1: 上流反応段階で、増加量のhTSHを含有する血清 (曲線-■-)及 び過剰量の選択的anti-hTSH-abを更に含有する一部の血清(曲線-▲-)で処 理されたアフィニティ精製されたrhTSHR(imm)*への125I-bTSH の結合の依存性。 図2: 2段階法における125I-bTSHとアフィニティ精製rhTSHR( imm)*を使用した場合のTSHR-auto-ab測定の標準曲線。 図3: 2段階法におけるアクリジニウムエステル化学発光剤で標識されたb TSHの使用及びアフィニティ精製rhTSHR(imm)* 使用での、TS HR自己抗体(TSHR-auto -ab)測定の標準曲線。 図4: 125I-bTSHとアフィニティ精製rhTSHR(imm)*を使用す る2段階法による患者血清の測定結果(対照血清100、グレーブス病患者の血 清70)。 下記の調製及び測定実験の記載が、以下のように構成された。 1. 使用アッセイ成分の調製・選定。 2. 1段階及び2段階技術による標識されたbTSH及びアフィニティ精製 rhTSHR(imm)*を使用した2つの測定法の培養プロトコル。 3. 標識されたbTSHとの競合原理に従う、アフィニティ精製rhTSH R(imm)*で被覆した本発明による試験管を使用した。標準試料又は患者血 清中のTSHR自己抗体(TSHR-auto-ab)の測定結果。 1.材料 1.1 粗製可溶化rhTSHR製剤の製造 哺乳類細胞系統で高収率でrhTSHRを発現するために、完全なヒトTSH レセプターに対するcDNAを含有する2シストロン性ベクターで、慣用の手順 と類似した安定なやり方で、ヒト慢性白血病細胞系統をトランスフェクトし、こ の白血病細胞系統を懸濁培養基中で培養した。他の系での探査実験で、特定のな 発現系が必須ではないことが示され、EP−A−0 719 858に記載され た発現系を使用し、PCT/EP97/06121に記載された骨髄腫細胞系統又 はワクシニアウイルス/ヒーラ細胞発現系で操作しても、本質的に同じ成功をお さめることができる。EP−BI−0 433 509に記載された温血動物の 細胞でも、本出願の開示を実行できるような量でrhTSHRを得ることができ た。しかし、これまでの知識に基づいて、ヒトTSHレセプターの発現が、哺乳 類細胞で実施されることが重要であり、使用細胞が懸濁液中で培養でき、高いr hTSHR収率を与えるような細胞であるのが好ましい。 細胞膜中に発現されたrhTSHRを含有する細胞を、より 詳細にはエス コスタグリオラ等、J.Clin.Endocrinol.Metab.75:1540-1544( 1992)に記載されるように、溶解化rhTSHR製剤を得るために消化させ、全 操作を4℃で実施した。各場合とも、109個の細胞を50mM HEPES(4−(2− ヒドロキシエチル)−1−ピペリジンエタンスルホン酸、pH7.5)中で消化 させた。ポッター ホモジナイザー(ビー ブラウン メルスンゲン アーゲー 製)の助けによって消化を行ない、ピストンを900rpmの速度で10回上下 させた。得られた材料を100,000gで30分の遠心分離にかけた。得られ た沈降物を緩衝液(10mM HEPES;2%トリトンX−100;pH7. 5)20mL中で再ホモジナイズ処理し、上記の手順をもう一度くり返し、再び 100,000gで30分の遠心分離にかけた。得られた上澄み液は粗製の可溶 化rhTSHR製剤を含有しており、小分けしてその後の使用時まで−80℃で 保存した。 1.2 標識つきbTSHの調製 1.2.1 125I-bTSH 125I-bTSHはDE 42 37 430 C1特許及びEP 0 668 775B1特許に記載されたとおりに調製した。 1.2.2 アクリジニウムエステルを有する化学発光標識されたbTSH アクリジニウムエステルで化学発光標識されたbTSHを以下のように調製し た。bTSH100μg(蛋白質mg当り50−60IU;20mM燐酸ナトリウ ム中;pH7.0)をアクリジニウムエステル10μl(ベーリングヴェルケ アー ゲー(マールブルク)製、EP 0 257 541 B1を参照;アセ トニトリル中1mg/ml)と室温で15分反応させ、次にウォータース プロ テインPak SW125カラム(移動相:0.1M酢酸アンモニウム;pH5 .5;流速:毎分0.6mL)上で、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC )に よって調製した。280nm及び368nmでのUV吸収によるカラム流出物の 全フラクションを集めた。一緒にした蛋白質フラクションを、レセプター結合ア ッセイで更に使用するまで、−80℃で保存した。 1.3 標準物質 TSHR自己抗体(TSHR-auto-ab)測定用の標準物質は、既知の抗体含有 量をもつTSHR自己抗体陽性の血清と、自己抗体を含まないヒト血清とを混合 して調製され、いずれの場合も0.05%ナトリウムアジドで調整し、その後の 使用時まで4℃で保存した。標準物質の較正は、ベー.アール.アー.ハー.エ ム.エス.ディアグノスティカ ゲーエムベーハー製のTRAKアッセイRを使 用して実施した。 1.4 anti-hTSHR-mabの製造と選定 文献中に記載の種々の免疫化法を用いて、TSHレセプターに対する1群のモ ノクローナルマウス抗体をつくった(ジェイ エス ダラス等、Endocrinology 134巻、3号、1437-1445頁(1994)−バクロウィルス法により組替え調製された 細胞外レセプタードメインでの免疫化;エル ビー ニコルソン等、J.Mol.En docrinol.(1996)16巻159-190頁−原核細胞又はバクロウイルス法でつくった 細胞外レセプタードメインでの免疫化;ジョンストン エイ ピー等、Mol.Cel l.Endocrinol.105巻(1994)、R1-R9−種々の組替えTSHRポリペプチドによ る免疫化;合成レセプター ペプチド コンジュゲートによる免疫化;ジェイ サンダース等、J.Endocrinol.Invest.19(No.6の補追):1996年、Abstract 33−大腸菌中で製造され、TSHR断片を含有する融合蛋白質での免疫化;及び 特にエス コスタグリノラ及びジー ヴァッサート、J.Endocrinol.Invest.2 0(No.5の補追):1997年、Abstract No.4−DNA構造体でのマウスの免疫化 )。 個々のクローンの選定と製造は、各発表文献に引用された方法又はモノクロー ナル抗体の調製に一般的に知られた方法によ って実施された。得られた種々のモノクローナル抗体の精製は、プロテインA アフィニティ クロマトグラフィによって実施された。得られたanti-hTSHR-mab のうち11種を、事前調製されたrhTSHRと125-I-bTSHの複合体に結合 する能力について試験した。 この目的で、第一段階では、50mM HEPES;pH7.5;ヘパリン1 0,000IU/mL;10mM CaCl2;0.2%トリトンX−100を含有す る全容量100μL中で、125I-bTSH(全活性36,000cpm)を可溶化 rhTSHR(約1ng)とともに培養した(下の実験結果を参照)。非特異的 結合を検査するため、標識なしのbTSH0.1IU/mLを別のバッチで添加した。 室温で1時間培養後、bTSH/rhTSHR結合の測定を異なる3つの方法で 行なった。 1.4.1 PEG沈降による事前生成bTSH/rhTSHR複合体の単離( 参照値の入手) ベー.アール.アー.ハー.エム.エス.ディアグノスティカ ゲーエムベー ハー製のTRAKアッセイRによるPEG沈降試薬2mLを上の反応液に添加し た。次に、遠心分離(2000gで10分)を行ない、上澄み液を傾斜分離し、 沈降物中に残る放射能を測定した。生ずるbTSH/rhTSHR複合体の定量 的沈降が見出された。 1.4.2 予め生成したbTSH/rhTSHR複合体の試験しようとするant i-hTSHR-mabによる免疫沈降 各場合とも、検査しようとするそれぞれのanti-hTSHR-mab10μg(b TSH/rhTSHR複合体製造に使用の緩衝液50μL中)を上の反応液に添 加し、1時間培養後、プロテインA100μL(ベー.アール.アー.ハー.エ ム.エス.ディアグノスティカ ゲーエムベーハー製のへニング試験Ranti-TP O)を沈降試薬として加え、培養を15分行ない、最後に燐酸緩衝された食塩水 溶液(PBS)2mLを加えてから、遠心分離(2000gで50分)を行なっ た。プロテインAを加え ると、反応混合物中に含まれる全抗体が沈殿した。bTSH/rhTSHR複合 体は、検査される抗体に結合されただけ沈殿する。従って、遠心分離沈降物中に 見出される放射能は、各々anti-hTSHR-mabによって結合されたbTSH/r hTSHR複合体の量を表わしている。 1.4.3 固定されたanti-hTSHR-mabの助けによる事前生成bTSH/r hTSHR複合体の結合(CT技術) 各々のanti-hTSHR-mabを固定するため、ヤギ抗マウス抗体(ベー.アー ル.アー.ハー.エム.エス.ディアグノスティカ ゲーエムベーハー製のダイ ノテストDYNOtest(R)TBGのキット成分)で被覆されたポリスチレン 試験管を、PBS200μL中で、コード番号1−11を有する検査しようとす るanti-hTSHR-mab 100ngとともに、それぞれ室温で2時間培養した 。次に、燐酸緩衝食塩水(PBS)2mLを加え、液体の試験管内容物を傾斜分 離した。得られた被覆試験管を、bTSH/rhTSHR複合体(100μL) を含有する上記の反応液と一緒に直接培養し、300rpmで振とうしながら、 1時間培養を行なった。次に、試験管を洗浄用緩衝液(10mM HEPES; 0.1%トリトンX−100;pH7.5)各2mLの2回分で洗い、試験管表 面に固定された放射能を測定した。PEG沈降物の場合に得られる放射能値は、 別個に測定された非特異的結合を差し引き、(B-UB)=10,490−433cpm=10,057c pmをbTSH/rhTSHR複合体の完全な結合として使用する。この値は、2 8%のB/T値(使用の全放射能に対する結合放射能)に相当する。 1.4.3及び1.4.4の方法に従ってanti-hTSHR-mabの1−11の 試験で得られた結合値を、下の表1に示す。ここで、1.4.1によるPEG沈 降の沈降物の放射能を100%の参照値としている。表示された全データにおい て、非特異的結合、すなわち標識のないbTSHの過剰量の存在下における放射 能は、差し引かれている。 表1の説明: * 値はそれぞれ、最大の沈降可能なbTSH/rhTSHR複合体の沈降率( %)として記載されている(100%=PEG沈降物の場合の沈降)。 ** ジョンストン エイ ピー等、Mol.Cell.Endocrinol.105巻(1994年 )、R1−R9の記述に従って測定。 *** anti-hTSHR-mab結合位置(マウス)のマッピングについては、以下の 実験を参照。 1.4.4 anti-hTSHR-mab結合位置のマッピング(マウス) マッピングの原理は、検査しようとする各抗体が結合する先のhTSHRの合 成の部分ペプチド配列を見つけることにある。 1.4.4.1 hTSHRの部分配列に相当する1群のペプチド類の調製 各々13アミノ酸からなるhTSHR配列の部分配列を、合成ペプチド類の形 で調製した。全hTSHR配列が再現され、各場合とも二つの連続する配列が9 個のアミノ酸で重複する(例えばペプチド1:アミノ酸1−13;ペプチド2: アミノ酸4−16;ペプチド3:アミノ酸7−19等)ように、部分配列を選ん だ。次に、合成ペプチド類を、セルロース紙上で約2x2mmの「スポット」の 形で互いに隣り合わせて合成した。このペプチド合成法は確立された方法であり 、とりわけJERINIバイオツール ゲー エム ベー ハー社(ベルリン) から市販されている。説明のために以下の発表文献を参照することができる。ア ール フランク、Peptides 1990,151-152;エイ ファーガ等、Int.J.Peptide Protein Res.37,1991,487-493;アール フランク、Tetrahedron 48巻、42号 、9217-9232,1992。ペプチドスポットを付けた紙をいわゆる「遮断(ブロッキ ング)液」(遮断液:50mMトリス;pH8.0;50mM NaCl;0. 05%ツウィーン20;5%蔗糖;1x(ケンブリッジ リサーチ バイオケミ カル製遮断試薬No.SU−07−250)20mL中で、室温で1時間培養し た。 1.4.4.2 anti-hTSHR-mab1−11の特性決定 検査しようとするa nti-hTSHR-mab1−11の一つを10μgの濃度で含有する溶液20μLを 、1.4.4.1に従って調製されたセルロース紙に加えた。次に、かきまぜな がら室温で3時間の培養を行ない、傾斜分離を行なった。紙を洗浄緩衝液(洗浄 緩衝液:50mMトリス;pH8.0;50mM NaCl;0.5%ツウィー ン)5mLで6回洗った。バイオラド社のヤギ抗マウスIgGアルカリ性フォス ファターゼコンジュゲート(No.172−1015)5μLを新しく希釈した 状態で含有する上の遮断液20mLを添加した。培養を、かきまぜながら室温で 2時間、再び行なった。次に、傾斜分離を再び行ない、紙を上の洗浄緩衝液5m Lで6回洗った。 抗体結合されたアルカリ性フォスファターゼと反応する基質 溶液を加えることにより、それぞれの検査されるanti-hTSHR-mabが結合さ れたペプチド類を、最終的に同定した。視覚化用に使われる基質溶液は、次のよ うに得られた。ニトロブルーテトラゾリウム(シグマNo.N−6876)6m gをジメチルホルムアミド6mLに溶解した。5−ブロモ−4−クロロ−3−イ ンドリルホスフェート(シグマNo.B−8503)をジメチルホルムアミド0 .5mLに溶解した。上述のニトロブルーテトラゾリウム溶液4mL、5−ブロ モ−4−クロロ−3−インドリルホスフェート溶液400μL、及び1M Mg Cl2溶液36mLを、ベー.アール.アー.ハー.エム.エス.ディアグノス ティカ ゲーエムベーハー製ELIテスト(R)アンチ−TG(No.94463 8)からの基質溶液36mLに溶解した。得られた溶液をセルロース紙に添加し た。 室温で20分後、検査されるanti-hTSHR-mabが結合されたペプチドスポ ットは、基質反応のために紫色に染色された。染色されたスポットに対応するペ プチドを、検査されるanti-hTSHR-mabの結合位置として、この方法で同定 した。このやり方で測定される検査anti-hTSHR-mabの結合位置は、上の表 1の最後の欄に示してある。No.9、10、及び11のanti-hTSHR-mab は用いられたペプチド類のいずれにも結合せず、このことによりこれらの抗体9 、10、及び11が、rhTSHRの立体配座構造を認識する抗体であるとみな されるべきである。この「立体配座的な」anti-hTSHR-mab9、10、及び 11は、J.Endocrinol.Invest.20(補追2、No.5)1997、Abstract 4 中の刊行によるエス コスタグリオラ及びジー ヴァッサートの方法によって、 hTSHR−DNA構造体でのマウスの免疫化によって得られたものであった。 bTSH/rhTSHR複合体と種々のanti-hTSHR-mabとの結合について 1.4.3で説明された実験で、表1に示されるとおり、ほとんどの抗体類は相 当な過剰量(約1μgのrhTSHRに比べて抗体10μg)で使用されるが、 bTSH/ rhTSHR複合体を完全に沈殿させることはできなかった。抗体9、10、及 び11のみ、このbTSH/rhTSHR複合体を完全に沈殿させることができ 、マッピングではこれらが「立体配座的」抗体、すなわち特定のペプチド配列を 認識しないで、立体配座構造のみを認識するような抗体、であることを立証した 。従って、TSHレセプター自己抗体(TSHR-auto-ab)を固定されたrhT SHRの助けによって測定する本発明による被覆試験管アッセイの開発には、最 高の結合を与えるこれらの立体配座抗体9、10、及び11が、好ましいものと して考慮された。 しかし、これらの立体配座抗体類はrhTSHRを固定するのに非常に適して いるが、残りのanti-hTSHR-mab 1−8も、得られた結合水準は非常に低か ったけれども機能することを強調すべきである。このようなモノクローナル抗体 を単独で、又は場合によっては2種以上のanti-hTSHR-mabの混合物の形で 、異なるhTSHRエピトープの表示(presentation)をもつrh TSHRの結合のために使用できる。必要ならば、特許出願196 51 09 3.7に開示される意味において、試験で更に自己抗体の下位集団を検出して望 ましい場合に臨床的価値を高めるためである。 1.5 TSHレセプター自己抗体(TSHR-auto-ab)測定用の被覆試験管ア ッセイ試験管を得るための、rhTSHRの固定とアフィニティ精製 1.1による粗製の可溶化rhTSHR製剤を100mMHEPES;0.5 %トリトンX−100;0.5%ウシ血清アルブミン(BSA);pH7.5で 希釈した。希釈は、本アッセイの作業の使用説明書のとおりに実施されるPEG 沈降の場合に、市販のベー.アール.アー.ハー.エム.エス.ディアグノステ ィカ ゲーエムベーハー製TRAK−アッセイの試薬を用いて、125I-bTSH の約30%結合率が得られるまで行なった。 被覆試験の調製には、得られたrhTSHR希釈液200μLに上のanti-h TSHR-mab No.9の100ngを添加し、生ずる溶液を、ヤギ抗マウス抗 体(マウスIgG結合能力約100ng)を管壁に被覆しておいたポリスチレン 試験管へ導入し、4℃で20時間培養した。 使用の試験管は、ベー.アール.アー.ハー.エム.エス.ディアグノスティ カ ゲーエムベーハー製DYNOテストR TBGキットのものであった。 培養後、試験管に洗浄緩衝液(10mM HEPES;0.1%トリトンX− 100;pH7.5)2mLを満たし、傾斜分離を行ない、次に真空乾燥器内で 4時間乾燥した。試験管がその管壁に高度のアフィニティ精製rhTSHR(r hTSHR(imm)*)をもつように、洗浄段階によって望ましくない不純物 を除去した。試験管を下記の測定に使用した。これらを使用時まで4℃で保存し た。 2.ピペット操作及び培養手順 新規なアフィニティ精製rhTSHレセプター製剤(rhTSHR(imm)* )へのbTSHの結合挙動をもっと詳細に検討するため、1.5で上に述べた とおりに得られた、アフィニティ精製rhTSHR(imm)*を含有する試験 管を使用し、また以下のピペット操作・培養手順を使用して、種々の対照実験を 実施した。 2.1 1段階アッセイ 1. rhTSHR(imm)*で被覆された試験管へ、試料(患者血清、標 準血清、又はゼロ標準血清;100μL)をピペットで注入する。 2. 各場合とも、100mM HEPES;20mM EDTA;0.5m M N−エチルマレイミド(NEM);0.1mMロイペプチン;1%BSA; 0.5%トリトンX−100;anti-hTSH-ab 5μg(3.2を参照);p H7.5の100μL中の125I-bTSH又はアクリジニウムエステル標識 化bTSHを、ピペットで加える。 3. 振とう(300rpm)しながら、室温で2時間培養する。 4. 洗浄緩衝液2mL量で洗い、傾斜分離する。 5. 試験管壁に固定された放射能をガンマーカウンターで測定するか、又は 発光反応を行なって適当なルミノメーター、例えばバートホールドLB952に より、化学発光の光量を測定する。 2.2 2段階アッセイ 1. 緩衝液(200μL;100mM HEPES;20mM EDTA; 0.5mM NEM;0.1mMロイペプチン;1%BSA;0.5%トリトン X−100;anti-hTSH-ab 5μg;pH7.5)をrhTSHR(imm )*で被覆された試験管へピペットで注入する。 2. 試料(患者血清、標準血清、又はゼロ標準血清;100μL)をピペッ トで注入する。 3. 振とう(300rpm)しながら、室温で2時間培養する。 4. 洗浄緩衝液(上を参照)2mLをピペット注入し、傾斜分離する。 5. 標識化bTSH(125I-bTSH又はアクリジニウムエステル標識bT SH)を含有する緩衝液200μL(10mM HEPES;ヘパリン10,0 00IU/mL;10mM塩化カルシウム;1%BSA;0.1%トリトンX− 100;pH7.5)をピペットで注入する。 6. 振とう(300rpm)しながら室温で1時間培養する。 7.125I-bTSHを使用する場合は、洗浄緩衝液2mLで2回、アクリジニ ウムエステル標識化bTSHを使用する場合は、洗浄緩衝液1mLで4回、試験 管を洗う。 8. 試験管壁に固定された放射能をガンマーカウンターで 測定するか、又は発光反応を行なって適当なルミノメーター、例えばバートホー ルドLB952により、化学発光の光量を測定する。 3.患者血清中のTSHR自己抗体(TSHR-auto-ab)の測定 3.1 TSHR-auto-ab測定の2段階アッセイとその利点 種々の対照実験で確認された知識により、2段階アッセイとしてrhTSHR (imm)*で被覆された試験管を使用して、TSHレセプター自己抗体(TS HR-auto-ab)の測定を実施することができる。その2段階アッセイでは、血清 を含まないbTSH、すなわち標準化の容易な標識化bTSH製剤が第二段階で 使用される。アッセイの第二段階で、固定rhTSHRに結合されない全試料成 分の非存在下に於て標識化bTSHを使用すると、種々の患者血清にかなりな程 度存在するanti-bTSHR-abによって測定値が曲げられることが確実に除外さ れる(anti-bTSH-abに関する上の説明を参照)。 慣用のアッセイ手順によると、患者血清中のこのようなanti-bTSH-abは、 TSHレセプター自己抗体(TSHR-auto-ab)濃度の測定値を“誤って”低下 させることとなる。なぜならば、このような抗体類は、PEG沈降において結合 された標識化bTSHと一緒に共沈し、TSHR-auto-abの結合が過度に低いよ うに見せかけるからである。 上記の1段階アッセイ手順による測定では、試験管壁に結合される標識された bTSHが不十分であるため、anti-bTSH-abの存在は、測定値を誤った高い 値にしてしまう。 2段階法では、特に血清の非存在下に第二段階を行なう時は、試料と標識され たbTSHの間に接触がないので、anti-bTSH-abは干渉要因とはならない。 従って現在、TSHR-auto-abでの手順には、2段階変法が好ましい。 3.2 患者血清中の病理学的に増加したhTSH濃度による誤った測定値防止 上記の被覆試験管を使用したTSHR-auto-abの測定結果が患者試料中のhT SHの存在によって乱されるかどうかを、レセプター結合剤としてヒトTSHR 製剤を使用して試験しようとした。hTSHは通常、問題を生じないほど非常に 低い濃度でヒト血清中に生ずる。しかし、甲状腺機能低下状態では、病理学的に 増加したhTSH濃度が生じうることが知られている。 hTSH(ベーリンガー マンハイム社、ドイツ)の増加量を、hTSHを含 まない血清(スカンディバディズ社、米国)に添加すると、定義された試料溶液 が得られた。得られた血清を、上の2段階アッセイ手順(2.2)による試料と して測定した。 図1に示すように、標識化bTSHの結合は、病理学的に高いhTSH濃度の 場合には、hTSHとの競合によって影響される。 試料溶液にhTSH抗体を添加することにより、試料中におけるhTSHの存 在の効果は排除される。適当なhTSH抗体は、フィンランドのオイ メディク ス バイオケミカ アーベー社(Oy Medix Biochem Ab)の 品番5404の市販抗体である。過剰量(例えば試験当り5μg)のこのような 抗体を加えることで、hTSHの増加濃度の影響が排除される。このhTSH抗 体はbTSHとの交差反応を示さないため、1段階アッセイ変法(2.1の段階 2を参照)でもこれを試料溶液に添加でき、測定結果に同じ改善を生ずる。 3.3 TSHR-auto-ab測定用の改良されたアッセイと、その実際の試験 上の知識はすべて、患者血清や患者血漿中のTSHレセプター自己抗体(TS HR-auto-ab)の測定用の新規なアッセイに導かれる。その測定の信頼度は、2 段階アッセイ培養手順(2.2)を使用して、患者血清群を測定することで試験 できる。 3.3.1 標準曲線 図2と3は、125I-bTSH(図2)及びアクリジニウムエス テル標識bTSH(図3)を使用し、1.3による標準物質を用いて得られ標準 曲線を示す。ゼロ標準は、健康な甲状腺をもった人々のものをプールした血清で あり、標準400−3は、健康な甲状腺をもった人々のもののプールした血清と グレーブス病にかかった患者のもののプールした血清の混合物である。ベー.ア ール.アー.ハー.エム.エス.ディアグノスティカ製の慣用のTRAKアッセ イRを使用して、較正を行なった。 3.3.2 患者血清の測定 bTSHの標識のタイプとは無関係に、TSHレセプター自己抗体(TSHR -auto-ab)は、濃度依存的な形で、試験管表面への標識化bTSHの結合を低下 させ、実質的に陽性のシグナルは、わずか3 U/Lから検出可能である。 (2.1.2)に述べた2段階アッセイ手順に従って、健康な甲状腺を持つ人 々の100の対照血清とグレーブス病患者の70の血清を測定した。結果を図4 に示す。TSHR-auto-abを含有するグレーブス病患者の血清と健康な甲状腺を もった人々の対照血清との間で、相当な違いが明白である。 本発明は、これまでのアッセイで測定結果を誤まらせるかもしれない、干渉す る生理学的要因の排除に関して、また特に実際的な観点から、TSHR-auto-ab の測定法の改良をなすものである。本発明の開示に基づいて、すぐに使用できる 準備のできた形でこのような方法を実施するための全部又は少なくともほとんど の試薬を調製し、かつこれらの試薬を(例えば、事前被覆ずみ試験管と血清を含 まない標準化されたトレーサー試薬の形で)使用者に利用できるようにすること が、初めて可能となる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 モルゲンサーラー,ニルス ドイツ国 ベルリン デー―12099 ウェ ンケバック ストラッセ 4 (72)発明者 ウェグロナー,ウォルフガング ドイツ国 ベルリン デー―12099 ロー レンズウェッグ 2 (72)発明者 ホリッドット,ジョーグ−ミヒャエル ドイツ国 ベルリン デー―12165 スク ロー ストラッセ 50

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1. 試料を(i)TSHレセプター製剤(TSHR製剤)及び(ii)標識 されたウシTSH(bTSH)と反応させ、液相から分離されるbTSH又はT SHR-auto-abとTSHRとの複合体中の標識されたbTSHの結合量に基づい て、生物試料中の測定しようとするTSHR-auto-abの存在及び/又は量を測定 する、レセプター結合アッセイの助けにより、生物試料中のTSHレセプター自 己抗体(TSHR-auto-ab)を測定する方法に於て、 使用されるTSHR製剤が、TSHレセプターに対する選択的抗体(anti-T SHR-ab)の助けによって固相に結合された機能し得る組替えTSHレセプタ ー(rTSHR)であり、結合状態で洗浄する精製方法によりアフィニティ精製 された固定rTSHR(rTSHR(imm)*)へ変換されていることを特徴 とする方法。 2.使用される機能し得る組替えTSHレセプターが、機能し得る組替えヒトT SHレセプター(rhTSHR)であり、使用される選択的な抗体がヒトTSH レセプターに対する少なくとも一つのモノクローナル抗体(anti-hTSHR-ma b)であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。 3.使用される固相が、anti-TSHR-abを結合するための動物の特異的抗体で 事前被覆された試験管壁からなることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方 法。 4.モノクローナル抗体類の少なくとも一つが、DNA構造体での免疫化技術に よって得られる、rhTSHRの立体配座構造のみを認識するヒトTSHレセプ ターに対するモノクローナル抗体(anti-hTSHR-mab)であることを特徴と する、請求項2及び3のいずれかに記載の方法。 5.レセプター結合アッセイが、アフィニティ精製されたrhTSHR(imm )*で被覆された試験管内で1段階アッセイとして実施され、このアッセイにお いて、(i)血清含有試料と (ii)標識されたbTSH製剤を含有する緩衝液とをピペット注入することに より、単一反応溶液を調製し、この反応溶液を十分な期間培養した後に試験管か ら取り出し、試験管を洗浄し、試験管壁に結合されたトレーサーをそれ自体は知 られたやり方で測定することを特徴とする、請求項1、2、3、又は4に記載の 方法。 6.レセプター結合アッセイが、アフィニティ精製されたrhTSHR(imm )*で被覆された試験管内で2段階アッセイとして実施され、このアッセイにお いて、(i)第一段階で、試料と緩衝液のみをピペット注入し、培養し、次に傾 斜分離し、試験管を洗浄し、そして(ii)第二段階で、標識されたbTSH製 剤を含有する緩衝液を試験管に添加し、十分な期間培養した後、液相を試験管か ら除去し、試験管を洗い、試験管壁に結合されたトレーサーをそれ自体知られた やり方で測定することを特徴とする、請求項1、2、3、又は4に記載の方法。 7.請求項1又は2に記載の方法に於て、方法を自動化形式で行ない、使用した 固相が選択的なanti-TSHR-abで被覆された懸濁粒子を含み、かつrTSHR製剤 と試料この2つのアッセイ成分を含有する試料溶液が一時的に形成される方法で rTSHR製剤と試料とが添加されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方 法。 8.標識されたbTSHが第二段階で、血清を含まない緩衝液に添加されること を特徴とする、請求項6に記載の方法。 9.試料とアフィニティ精製ずみrhTSHR(imm)*との反応が、ヒトT SHに対する少なくとも一つの抗体(anti-hTSHR-ab)の存在下に実施され ることを特徴とする、請求項1−8のいずれかに記載の方法。 10.ヒトTSHに対する少なくとも一つの抗体が、ウシTSHとの交差反応を しないように選択されることを特徴とする、前へ戻って請求項5に関する請求項 9に記載の方法。 11.測定しようとするTSHレセプター自己抗体が、ヒト血 清中の発生がグレーブス病に特徴的なレセプター刺激性自己抗体であることを特 徴とする、請求項1−10のいずれかに記載の方法。 12.試料を(i)TSHレセプター製剤(TSHR製剤)及び(ii)標識さ れたウシTSH(bTSH)と反応させ、液相から分離されるbTSH又はTS HR-auto-abとの複合体中の標識されたbTSHの結合量に基づいて、生物試料 中の測定しようとするTSHR-auto-abの存在及び/又は量を測定する、レセプ ター結合アッセイの助けにより、生物試料中のTSHレセプター自己抗体(TS HR-auto-ab)を測定する方法に於て、 レセプター結合アッセイが、アフィニ ティ精製rhTSHR(imm)*又は固定された融合rhTSHRで被覆され た試験管内で2段階アッセイとして実施され、このアッセイにおいて、(i)第 一段階で、添加されたanti−hTSH抗体を含有する試料と緩衝液をピペット注 入し、培養し、次に液相を試験管から除き、試験管を洗浄し、そして(ii)第 二段階で、標識されたbTSH製剤を含有し血清を含まない緩衝液を試験管に添 加し、十分な期間培養した後、液相を試験管から取り出し、試験管を洗い、試験 管壁に結合されたトレーサーをそれ自体知られたやり方で測定することを特徴と する方法。 13.この種の試薬キットの慣用的な成分のほか、試薬キットが少なくとも、 (i)アフィニティ精製された固定rhTSHR又は固定された融合TSHR の形のrhTSHRで被覆された試験管、及び (ii)血清を含まない緩衝液中の標識された付きTSH又は標識された特異 的なTSHレセプター抗体; を含むことを特徴とする、請求項1−12のいずれかに記載の競合的レセプター 結合アッセイを実施するための試薬キット。
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