【発明の詳細な説明】
カルボン酸金属塩架橋遅延剤を含むオレフィンポリマー組成物 発明の背景
発明の分野
本発明は、溶融加工中の架橋を禁止するように安定化された線状低密度エチレ
ンポリマー組成物に関する。
関連技術の説明
様々なタイプのポリエチレンが本技術分野において知られている。低密度ポリ
エチレン(LDPE)は一般にラジカル開始剤を使用して高圧で調製され、典型
的には0.915〜0.940g/cm3の範囲内の密度を有する。LDPEは、
ポリマーの主鎖から伸びている比較的多数の長鎖枝分れのために、「枝分れ」ポ
リエチレンとしても知られている。
高密度ポリエチレン(HDPE)は通常0.940より大から0.960g/c
m3までの範囲内の密度を有する。HDPEは、配位触媒、例えば、チーグラー
−ナッタ触媒を使用して、低いか、中程度、又は高い圧力で調製される。HDP
Eは、一般的に、実質的な側鎖の枝分れを含まない線状であり、そして実質的に
結晶性ポリマーである。
線状低密度ポリエチレン(LLDEP)は、一般に、HDPEと同じ方法で調
製されるが、得られるポリマーの密度をLDPEの密度の範囲に入るように下げ
るために、比較的少量のブテン、ヘキセン、又はオクテンのようなアルファ−オ
レフィンコモノマーを組み入れて、その他の点では線状のポリマーに十分な短鎖
枝分れを導入する。より高濃度のコモノマーの導入は、エチレンコポリマーの密
度を非常に低密度のポリエチレン(VLDPE)の0.900乃至0.915g/
cm3の範囲及び「プラストマーの範囲」(即ち、0.88〜0.90g/cm3)
まで下げることもできる。
エチレン及びアルファ−オレフィンを共重合するのに使用されるチーグラー/
ナッタ配位触媒は、一般的に、比較的広い分子量分布、即ち、約3より大きい
Mw/Mnを有するLLDPEを製造する。そのようなLLDPEは、ポリマー
分子中に組み入れられたアルファ−オレフィンコモノマーの比率が変化するとい
う点で比較的広い組成も有する。一般に、低分子量のポリマー分子は、比較的高
分子量のポリマー分子よりも、比較的高い比率のアルファ−オレフィンコモノマ
ーを含む。
広い分子量分布を有するLLDPEのようなポリエチレンは、所望の最終用途
にもよるが、多くの点で望ましくない。例えば、比較的高い分子量の分子を含む
従来技術において公知のLLDPE樹脂は、加工プロセスの縦方向対横方向にお
いて異方性の特性をもたらす延伸にさらされる。一方、比較的低分子量の分子を
含むLLDPE樹脂は、コモノマーが常に集中しており、加工されたフィルムに
おいて高いブロッキング及び粘着性を示す傾向がある。これらの低分子量で高度
に枝分れの分子は、樹脂中に配合された特定の添加剤の適切な機能を妨害し、抽
出可能なポリマーのパーセンテージを増加させ、そして重合プラント中の汚れを
増加させる。これらの低分子量ポリマー分子の比較的高いアルファ−オレフィン
コモノマー含有率は、そのようなポリマー分子を一般的に非晶質にし、そして加
工された部材の表面に滲出し、それによって望ましくない粘着性の表面を生じさ
せる。
LLDPEのような従来技術のポリエチレンは、一般的に、コモノマー含有率
の非常に広い不均一な分布を有する傾向もあり、即ち、幾らかのポリマー分子は
比較的高いアルファ−オレフィンコモノマー含有率を有するが、その他は比較的
低い含有率を有する。一般に、低いコモノマー含有率のポリマー分子は比較的結
晶質で高い溶融温度を有するが、高いコモノマー含有率のポリマー分子はより非
晶質であり、より低い温度で溶融する。高融点成分の存在は、多くの用途、例え
ば、柔軟性又は透明性が望ましい用途においては不利である。一方、低融点成分
の存在は、しばしば、多量の抽出可能物をもたらし、このことは食品と接触する
用途を制限する。
最近、エチレンと低含有率の少なくとも1種のアルファ−オレフィンのコモノ
マーに基づく新規なクラスのLLDPEポリマーが開発された。これらのポリマ
ーは、好ましくはメタロセン遷移金属触媒を使用して調製され、3以下の平均分
子量分布及び少なくとも50%の組成分布幅指数(compositional distribution
breadth index)(CDBI)を示す。これらのコポリマー及びそれらの製造方法
は、米国特許第5,382,631号により詳細に開示されており、その開示は全
て引用によって本明細書中に組み入れられている。
より新しいLLDPE材料を従来技術のLLDPEから区別する主要な相違の
1つは、枝分れアルファ−オレフィンコモノマーが、上述の従来技術のLLDP
Eのように鎖分子の比較的低分子量のフラクション中に集中するのではなく、ポ
リマー鎖に沿ってより均一にかつランダムに分布する傾向を有するということで
ある。このより均一なコモノマー分布とより狭い分子量分布のために、より新し
いLLDPE材料は、上述したような従来のLLDPEの欠点の多くを(特に包
装用のフィルムを製造するために使用されたとき)避ける。
しかしながら、メタロセンで重合されたLLDPEポリマーは、熱成形の剪断
力、例えば、押出しにさらされたとき、チーグラー/ナッタ遷移金属触媒系を使
用して調製されたような従来のLLDPE材料よりも、分子架橋に対するより高
い感受性を有する傾向があることが観察された。この架橋現象は、押出されたフ
ィルム中に存在するゲルによって及び押出し後のポリマーのメルトインデックス
の減少によって反映される。この現象は、LLDPEポリマー中に存在するメタ
ロセン触媒残差の有機金属構造及びそれらのシリカ担体(これらからラジカルが
押出しの高加熱条件下に発生する可能性がある)によって生じると考えられる。
従来的LLDPEにおける熱劣化プロセスは、ポリマーを可塑化するのに役立つ
より低分子量の種を生成する傾向があるが、メタロセンで重合されたLLDPE
における熱劣化プロセスは分子鎖の架橋の増加を支持する傾向がある。これは恐
らく、短鎖の枝がポリマー鎖に沿ってよりランダムに配置され、従って切断に対
する感受性がより小さいためである。
従って、本発明の第1の目的は、熱成形中に遭遇する剪断条件にさらされたと
き分子鎖の架橋を禁止するように安定化された線状低密度エチレンポリマー組成
物を提供することである。発明の概要
本発明は、(a)約1〜30モル%の少なくとも1種のアルファ−オレフィン
コ
モノマーを含み、3以下の平均分子量分布Mw/Mn及び少なくとも50%の組
成分布幅指数を有する線状低密度エチレンポリマー、及び(b)C1〜C22飽和又
は不飽和カルボン酸の少なくとも1種のカルボン酸金属塩、の混合物を含む組成
物であって、前記カルボン酸金属塩が前記組成物中に、前記組成物が前記エチレ
ンポリマーの融点より高い温度において剪断条件下に加熱されたとき前記組成物
の架橋を禁止するのに十分な量で存在する、組成物を提供する。
本発明は、また、(a)約1〜30モル%の少なくとも1種のアルファ−オレ
フィンコモノマーを含み、3以下の平均分子量分布Mw/Mn及び少なくとも5
0%の組成分布幅指数を有する線状低密度エチレンポリマー、及び、前記エチレ
ンポリマーの重量に基づいて、少なくとも約0.005重量%の、C1〜C22カル
ボン酸のカルボン酸金属塩の混合物を含む組成物を形成すること、(b)前記エ
チレンポリマーのポリマー鎖の少なくとも幾らかの切断を生じさせるのに十分な
剪断の混合条件下に前記エチレンポリマーの融点より高い温度で前記組成物を熱
成形して成型品を形成すること、及び(c)前記成型品を回収すること、を含む
ポリマー組成物の溶融加工方法を提供する。
本発明のポリマー組成物を混合及び成形することによって調製された成型品、
例えば、フィルムは、カルボン酸金属塩安定剤を含まないこと以外は同一の組成
物と比較して、押出されたフィルム中のより少ないゲルの形成及び熱成形後のよ
り高いポリマーのメルトインデックスによって証明されるように、より低い程度
の架橋を示す。発明の詳細な説明
本発明の詳細な議論の前に、ポリエチレン組成物又はそれらから製造されるフ
ィルムの様々な物理的特性を強化するために少量の様々なカルボン酸金属塩をポ
リエチレン組成物に含有させることは本技術分野において知られていることを指
摘しなければならない。例えば、米国特許第4,454,281号は、押出された
フィルムの光学的特性を改善するために存在する、脂肪酸の金属塩と粘着防止剤
の組み合わせを含む低密度エチレンコポリマー組成物を開示している。ジベンジ
リデンソルビトールとステアリン酸金属塩の組み合わせを含む類似の組成物が欧
州特許公開公報第0091612号に開示されている。さらに、ポリエチレンか
ら製造され、改善された表面光沢と低い曇りを示し、そして少量のC7〜C22脂
肪酸の金属塩と芳香族カルボン酸の金属塩との混合物を含む成型品が、英国特許
第1,338,142号に開示されている。しかしながら、これら又はその他の従
来技術の刊行物のいずれも、ポリマー組成物の押出し中に遭遇するような温度と
剪断の条件下に加熱されたときにポリマーの架橋を禁止するために、本発明のL
LDPEポリマーと組合わせてカルボン酸金属塩を使用することは開示されてい
ない。
本発明の線状低密度エチレン(LLDPE)ポリマー成分は、約70〜99モ
ル%のエチレンと約1〜30モル%の1種以上のアルファ−オレフィンコモノマ
ーとのコポリマー(共重合体)であり、前記ポリマーは約0.9乃至約0.94g
/cm3の範囲内の密度を有する。このエチレンポリマーの好ましいアルファ−
オレフィン含有率は約2〜15モル%の範囲内にある。
LLDPE成分の分子量は、特定の最終用途にもよるが、1000乃至1,0
00,000或いはそれ以上の範囲内でよく、好ましくは104〜105であり、
そして特に2×104〜5×105である。本明細書中において使用されるとき、
「平均分子量」及び「分子量」という用語は、特に指示しない限り重量平均分子
量を意味する。この線状ポリエチレン成分は狭い分子量分布(MWD)を有する
のが好ましい。「狭いMWD」とは、重量平均分子量(Mw)の数平均分子量(
Mn)に対する比率が3.0以下であることを意味する。特に好ましいのは、非
常に狭いMWD、即ち、2.5以下、そして特に2.0以下のMw/Mnを有する
線状ポリエチレン成分である。エチレン共重合体の分子量分布は、例えば、ゲル
濾過クロマトグラフィー又はゲル透過クロマトグラフィーのような本技術分野に
おいて公知の方法によって容易に決定される。
線状ポリエチレン成分は、組成分布幅指数(CDBI)が少なくとも50%で
あるような組成分布(composition distribution)(CD)を有するのが好まし
く、より好ましくは組成分布幅指数が約60%より大、最も好ましくは約70%
より大となるような組成分布を有する。
CDBIは組成分布の目安であり、中央総コモノマーモル含有率の50%(即
ち、各々の片側25%)以内のコモノマー含有率を有するコポリマー分子の重量
%
として定義される。コポリマーのCDBIは、コポリマーのサンプルの個々のフ
ラクションを単離する公知の技術を使用して容易に決定される。そのような技術
の1つは、WildらのJ.Poly.Sci.,Poly.Phys.Ed.,vol.20,p.441(1982)に記載され
ているような温度上昇溶離分別(Temperature Rising Elution Fraction)(T
REF)であり、これは引用によって本明細書中に組み入れられている。
CDBIを決定するためには、溶解度分布曲線を初めにコポリマーについて作
成する。これは、上述のTREF技術から得られたデータを使用して行なうこと
ができる。この溶解度分布曲線は、温度の関数として可溶化されるコポリマーの
重量フラクションのプロットである。これは、重量フラクション対組成分布の曲
線に転換される。組成物と溶離温度との相関関係を簡単化する目的のために、1
5,000未満の重量フラクションは無視される。これらの低分子量フラクショ
ンは一般にポリマーの些細な部分を構成する。本明細書の残り及び添付の請求の
範囲においては、CDBI測定における15,000未満の重量フラクションを
無視するというこの申し合わせが維持される。
重量フラクション対組成分布の曲線から、サンプルの何重量%が中央コモノマ
ー含有率の各々の片側25%以内のコモノマー含有率を有するかを決定すること
によってCDBIが決定される。コポリマーのCDBIの決定の詳細は当業者に
知られており、例えば、1993年2月18日に公開されたPCT国際公開WO
93/03093を参照のこと。
特に指示しない限り、「コモノマー含有率」、「平均コモノマー含有率」など
の用語は、示されたコポリマーのモル基準の全コモノマー含有率を意味する。
本発明の線状ポリエチレンは、狭いCD/MWDの樹脂を提供することが知ら
れているメタロセン種の活性化された触媒系を使用することによって製造するこ
とができる。アルモキサン助触媒又はそれらの反応生成物と組み合わされたメタ
ロセン錯体を使用するシクロペンタジエニリド触媒系は、本発明において使用さ
れるポリマー成分を製造するのに適している。同様に、非配位性アニオンを提供
することができるイオン化助触媒による触媒系もこれに関して適している。メタ
ロセン触媒は一般式(CY)mMRnR'pによって表すことができ、式中、CYは
置換又は未置換のシクロペンタジエニル環であり;Mは第IVB又はVB族遷移金
属であり;R及びR'は、ハロゲン、ヒドロカルビル基、又は1〜20個の炭素
原子を有するヒドロカルボキシル基であり;m=1〜3、n=0〜3、p=0〜
3、そしてm+n+pの合計はMの酸化状態に等しい。本発明のポリマー成分を
調製するための重合用にメタロセン種の触媒系の様々な形態を使用することがで
き、それらには均一又は不均一の、担持された触媒型のものが含まれ、ここで触
媒とアルモキサン助触媒は、気相、高圧、スラリー、又は溶液重合による重合用
に、不活性支持体上に一緒に担持されるか又は一緒に反応させられる。
これらのメタロセン触媒及びそれらの製造方法のより完全な説明は、上で参照
した米国特許第5,382,631号中に見出すことができ、また、米国特許第5
,408,017号、第5,470,927号、第5,483,014号、及びWO9
6/04319中においても見出すことができる。
本発明において架橋遅延剤として適するカルボン酸金属塩は、1乃至約22個
の炭素原子、より好ましくは2乃至約18個の炭素原子を有するカルボン酸の金
属塩を含む。炭素原子の数はカルボン酸基を含む。典型的な酸は、蟻酸、酢酸、
ヘプタン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン
酸、及びベヘン酸、並びにオレイン酸及びリシノール酸のようなそれらの不飽和
類似物のような、飽和又は不飽和のモノカルボン酸である。カルボン酸は、安息
香酸又はナフテン酸及びそれらの誘導体のような芳香族酸も含むことができる。
適する塩形成カチオンは、亜鉛、カルシウム、銅、カドミウム、アルミニウム
、ナトリウム、カリウム、ニッケル、マグネシウム、バリウム、鉛、及び鉄を含
み、最も好ましくは元素の周期表の第I族乃至第III族金属のカチオンを含む。
最も好ましいカルボン酸塩は酢酸亜鉛及びステアリン酸亜鉛である。
ポリマーの架橋を禁止するためにエチレンポリマー組成物に添加されるカルボ
ン酸金属塩の量は、組成物中に存在するエチレンポリマーの重量に基づいて、一
般的に約0.005から約1重量%まででよく、より好ましくは約0.01から約
0.5重量%までであり、最も好ましくは約0.01から約0.25重量%までで
ある。
本発明の組成物は、本発明のLLDPEと、全ポリマー含有量に基づいて約5
0重量%までの、その他の低、中、又は高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、
エチレンとプロピレンのコポリマー、及び類似の熱可塑性プラスチックのような
、1種以上の異なるオレフィンポリマーとのブレンドも含むことができる。
本発明の好ましい態様においては、組成物は、フェノール系、亜リン酸エステ
ル、又はホスホナイト(phosphonite)酸化防止剤のような、1種以上の酸化防
止剤(安定剤)物質を含む。
使用できる適するフェノール系酸化防止剤は、2,6−ジ−t−ブチル−p−
クレゾール、オクタデシル−3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ
フェニル)プロピオネート、オクタデシル−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒ
ドロキシヒドロシンナメート)、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノー
ル、テトラキス(メチレン−3(3',5'−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフ
ェニル)プロピオネート)メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリ
ス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5
−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレー
ト、及びn−オクタデシル−8−(4−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチル
フェニル)プロピオネートのようなポリアルキル置換フェノールを含む。これら
のフェノール系酸化防止剤は、個々に又はそれらの2種以上を組合わせて使用す
ることができる。
使用できる適する亜リン酸エステル及びホスホナイト安定剤は、亜リン酸トリ
−n−オクチル、トリ−n−デシル、及びトリ(混合モノ及びジノニルフェニル
)、ジステアリルペンタエリトリトール二亜リン酸エステル;二亜リン酸テトラ
キス(2,4−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン;ビス(2,4
−ジ−t−ブチルフェニル)−ペンタエリトリトール二亜リン酸エステル;亜リ
ン酸トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル);及び類似の物質のような亜リ
ン酸アルキル及びアリールを含む。最も好ましい安定剤は、式:
を有するものであり、式中、RはC2〜C18アルキル又はアルキル置換フェニル
である。特に好ましい亜リン酸エステルは、Rが−C18H37である上式のもので
あり、BorgWarnerによってWESTON(登録商標)619又はWESTON(
登録商標)399の商標名で市販されている。フェノール系及び亜リン酸エステ
ル酸化防止剤の混合物も使用できる。
酸化防止剤は、組成物のポリマー含有量に基づいて約100乃至約5,000
ppmの濃度で組成物に添加されるのが好ましく、150乃至2500ppmの
濃度で添加されるのがより好ましい。
組成物は、また、可塑剤、充填剤、顔料、潤滑剤、スリップ剤、加工助剤、染
料、顔料及び類似の物質を含む、エチレンポリマーに基づく押出し可能な組成物
中において一般的に使用される1種以上の補助物質も含むことができる。
組成物は、また、酸化亜鉛又は酸化マグネシウムのような追加の分解禁止剤又
はラジカル掃去剤、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールのよ
うなポリアルキレングリコールゲル化防止剤も含むことができる。これらの成分
又はそれらの組み合わせは、一般に、組成物のポリマー成分の重量に基づいて、
約0.01乃至約1重量%の範囲内の濃度で組成物中に存在することができる。
これら及びその他の補助剤、並びにカルボン酸金属塩は、ポリマー組成物がペ
レット化されるときか、又は成型品の形成のための組成物の熱成形の前に別個の
添加剤パッケージとして使用者によって、組成物中に配合することができる。
本発明のポリマー組成物は、インフレートフィルム又はキャストフィルム押出
し、一軸又は二軸延伸、吹込み成形、射出成形、又は回転成形のような公知技術
によって、フィルム、容器、及び成形された三次元的製品のような造形品を成形
するために熱成形することができる。これらの方法において、ポリマー組成物は
、初めに、スクリュー押出し機、バンバリーミキサー又はブラベンダー(Brabend
er)(登録商標)プラスチコーダーのような適当な混合装置中において剪断条件
下に混合され、そして組成物のポリマー成分の融点より高い温度まで、一般的に
約140乃至約350℃の範囲内の温度、より好ましくは約150乃至約300
℃の範囲内の温度まで、加熱される。押出し機/混合器を使用して、押出し物を
環
状のダイを通して上向き又は下向きに通過させることによってチューブ状のフィ
ルムを製造することができ、そして得られたチューブ状フィルムは加圧された気
体を使用して所望の程度まで膨張させられ、冷却され、そして平らにされ、その
後フィルムを形成するためにスリットされる。ボトル、蓋、及びその他の成型品
のようなその他の造形品は、押出し物又は溶融したポリマーに公知の射出成形、
吹込み成形、又は回転成形技術を施すことによって製造することができる。
以下の実施例は本発明を例示するものである。実施例中において識別されてい
る材料は以下の通りである。
ECD103−エチレンと約3モル%のヘキセンのメタロセン/アルモキサン
で重合されたコポリマー−1.04dg/分のMI、0.9169g/cm3の密
度、及び274ppmの灰分。
ECD103’−エチレンと約3モル%のヘキセンのメタロセン/アルモキサ
ンで重合されたコポリマー−1.13dg/分のMI、0.9161g/cm3の
密度、及び544ppmの灰分。
LLDPE3001−エチレンと約3モル%のヘキセンのチーグラー/ナッタ
で重合されたコポリマー−0.88dg/分のMI、0.9187g/cm3の密
度、及び367ppmの灰分。
IRGANOX(登録商標)1076−オクタデシル−3−(3',5−ジ−
t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート。
W−399−亜リン酸エステル。
PEG−ポリエチレングリコール(ゲル化防止剤)
PPA−フルオロエラストマー(加工剤)実施例1
表1に記載した一連の12種の異なる組成物を、示されている成分を小型ブラ
ベンダー(登録商標)プラスチコーダー中において250℃で表1に示されてい
る時間混合することによって調製した。得られたブレンドをメルトインデックス
(MT−ASTM 1238−条件E)、フローインデックス(HMI−AST
M 1238−条件F)、メルトインデックス比(MIR−フローインデックス
/メルトインデックス)、及び膨張比(SR)(これは、MI測定中に押出され
るポリマーストランドの直径の目安であり、メルトインデックスに反比例する)
について評価した。
組成物1〜2、5〜6、及び9〜10は、ラジカル基の形成を最小化するため
の公知の添加剤である酸化亜鉛(ZnO)を含み、一方、組成物3〜4、7〜8
、及び11〜12は、本発明の範囲内の添加剤である酢酸亜鉛を含む。メルトイ
ンデックスとメルトフロー特性の比較は、酢酸亜鉛添加剤を含むメタロセンで重
合されたエチレンポリマーに基づく組成物がメルトインデックスとメルトフロー
特性における増加を示すことを示しており、これは、剪断混合の条件下の架橋の
傾
向が減少したことを示すものである。サンプル9及び10と比較されたサンプル
11及び12に関してこの効果はより目立たないが、これらのサンプルの各々は
チーグラー/ナッタで重合されたエチレンポリマーを含む。実施例2
50gのECD−103ポリエチレンと表2中に示されている量でその他の成
分をそれぞれ含む一連の19種の異なる組成物を、ブラベンダー(登録商標)プ
ラスチコーダー中において250℃で表2中に示された時間加工した。サンプル
13は加工されていない純粋なECD−103の特性を反映し、一方、サンプル
14及び15は添加剤を含まない加工された対照例である。Irganox(登
録商標)1076、W−399、及び示されている亜鉛塩を添加剤パッケージと
して表中に示されている量で混合の前に添加した。サンプル16及び17は、2
00ppmのPEG及び800ppmのPPAも含んだ。
データは、サンプル18、19、28、及び29とサンプル16及び17のメ
ルトインデックス値の比較によって、並びにサンプル22、23、30、及び3
1とサンプル26〜27のメルトインデックス値の比較によって反映されるよう
に、酢酸亜鉛又はステアリン酸亜鉛と併用された添加剤パッケージ成分Irga
nox(登録商標)1076及びW−399の使用に関して、この成分の組み合
わせを含まないか又はZnOを含む組成物と比較して、相乗効果を示した。注:全てのブレンドは50gのECD-103コポリマーを含み、250℃で加工された。
【手続補正書】特許法第184条の8第1項
【提出日】平成11年3月1日(1999.3.1)
【補正内容】請求の範囲
1.(a)1〜30モル%の少なくとも1種のアルファ−オレフィンコモノマー
を含み、3以下の平均分子量分布Mw/Mn及び少なくとも50%の組成
分布幅指数を有する線状低密度エチレンポリマー、
(b)C1〜C22飽和又は不飽和カルボン酸の少なくとも1種のカルボン酸金
属塩であって、前記カルボン酸金属塩が前記組成物中に、前記組成物が前
記エチレンポリマーの融点より高い温度において剪断条件下に加熱された
とき前記組成物の架橋を禁止するのに十分な量で存在する、カルボン酸金
属塩、及び
(c)所望により、酸化防止剤(安定剤)物質、一般的に適用される補助剤
物質、追加の分解禁止剤、ラジカル掃去剤の群の1種以上の化合物、
を含むポリマー組成物。
2.前記エチレンポリマーが60%より大きい組成分布幅指数を有する、請求項
1の組成物。
3.前記エチレンポリマーが70%より大きい組成分布幅指数を有する、請求項
1又は2の組成物。
4.前記コモノマーが少なくとも1種のC3〜C12アルファ−オレフィンを含む
、請求項1乃至3のいずれか1請求項の組成物。
5.前記エチレンポリマーが3.0未満のMw/Mnを有する、請求項1乃至4
のいずれか1請求項の組成物。
6.前記エチレンポリマーが、エチレンと前記少なくとも1種のアルファ−オレ
フィンコモノマーの混合物を式(CY)mMRnR'pを有するメタロセン遷移金
属触媒の存在下に共重合させることによって製造され、式中、CYは置換又は
未置換のシクロペンタジエニル環であり;Mは第IVB又はVB族遷移金属であ
り;R及びR'は、独立して、ハロゲン、1〜20個の炭素原子を有するヒド
ロカルビル又はヒドロカルボキシル基であり;m=1〜3、n=0〜3、p=
0〜3、そしてm+n+pの合計はMの酸化状態に等しい、請求項1乃至5の
いずれか1請求項の組成物。
7.前記カルボン酸金属塩が2〜18個の炭素原子を含む、請求項1乃至6のい
ずれか1請求項の組成物。
8.前記金属が周期表の第I族乃至第III族金属である、請求項1乃至7のいず
れか1請求項の組成物。
9.前記金属が亜鉛である、請求項8の組成物。
10.前記カルボン酸金属塩が酢酸亜鉛を含む、請求項9の組成物。
11.前記カルボン酸金属塩がステアリン酸亜鉛を含む、請求項9の組成物。
12.前記カルボン酸金属塩が、前記組成物中に、前記エチレンポリマーの重量に
基づいて0.005から1重量%までの濃度で存在する、請求項1乃至11の
いずれか1請求項の組成物。
13.前記カルボン酸金属塩が、前記組成物中に、0.01から0.5重量%までの
濃度で存在する、請求項12の組成物。
14.前記エチレンポリマーが0.9乃至0.94g/cm3の範囲内の密度を有す
る、請求項1乃至13のいずれか1請求項の組成物。
15.フェノール系、亜リン酸エステル類、ホスホナイト類、及びそれらの混合物
から成る群から選択される酸化防止剤の有効量をさらに含む、請求項1乃至1
4のいずれか1請求項の組成物。
16.前記酸化防止剤がヒンダードフェノールを含む、請求項15の組成物。
17.前記酸化防止剤が亜リン酸エステルを含む、請求項15の組成物。
18.(a)1〜30モル%の少なくとも1種のアルファ−オレフィンコモノマー
を含み、3以下の平均分子量分布Mw/Mn及び少なくとも50%の組成
分布幅指数を有する線状低密度エチレンポリマー、及び、前記エチレンポ
リマーの重量に基づいて、少なくとも0.005重量%の、C1〜C18カル
ボン酸のカルボン酸金属塩;及び、所望により、酸化防止剤(安定剤)物
質、一般的に適用される補助剤物質、追加の分解禁止剤、ラジカル掃去剤
の群の1種以上の化合物、から成る組成物を形成すること、
(b)前記エチレンポリマーのポリマー鎖の少なくとも幾らかの切断を生じ
させるのに十分な剪断の混合条件下に前記エチレンポリマーの融点より高
い温度で前記組成物を熱成形して成型品を形成すること、及び
(c)前記成型品を回収すること、
を含むポリマー組成物の熱成形方法。
19.前記組成物が、140乃至350℃の範囲内の温度で熱成形される、請求項
18の方法。