JP2001505219A - 創傷の治癒および線維症の治療 - Google Patents

創傷の治癒および線維症の治療

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Abstract

(57)【要約】 治療上有効量の細胞内および/または細胞外においてアクチンの組み立ておよび組織化を調節する化合物ならびに医薬的に許容しうるビヒクルを含む、創傷および線維症の治療用組成物;このような化合物は、創傷治癒の速度を促進し、線維症を予防または軽減する。好ましい化合物は、ゲルソリンである。

Description

【発明の詳細な説明】 創傷の治癒および線維症の治療 本発明は、創傷の治癒、および線維症が組織修復の主なメカニズムである状態 あるいは過剰の線維症が病的障害および組織の機能不全を引き起こす状態の治療 における、線維症の調節に関する。 成人における創傷治癒は、複雑な修復プロセスである。治癒プロセスは、創傷 部位における種々の特殊細胞の漸増から始まり、細胞外マトリックスおよび基底 膜の蓄積、血管形成、選択的プロテアーゼ活性および再上皮形成を含んでいる。 成人哺乳類における治癒プロセスの重要な構成要素は、線維芽細胞を刺激して細 胞外マトリックスを産生させることである。この細胞外マトリックスは、創傷領 域の修復を進展させる結合組織の主な構成要素である。 治癒プロセス中に形成される結合組織は、天然においてしばしば線維状であり 、通例、結合組織に瘢痕が形成される(線維症として知られるプロセス)。 瘢痕は、損傷および創傷(切開、切除または外傷など)の結果として形成され る異常な形態学上の構造である。瘢痕は、主としてI型およびIII型コラーゲ ンならびにフィブロネクチンからなるマトリックスである結合組織を含む。瘢は 、異常な組織形成にけるコラーゲン線維からなる場合もあり(皮膚の瘢痕)、あ るいは結合組織の異常な蓄積である場合もある(中枢神経系の瘢痕)。大部分の 瘢痕は、異常に組織されたコラーゲンおよび過剰なコラーゲンからなる。ヒトの 皮膚の場合、瘢は皮膚表面の下に押し下げられているかまたは上に押し上げられ た形状で存在する。肥大した瘢痕は、正常な瘢痕よりも深刻な形態であり、皮膚 の正常な表面の上に押し上げられており、異常なパターンで配列された過剰のコ ラーゲンを含んでいる。ケロイドは、病的瘢痕の他の形態であり、皮膚の表面の 上に押し上げられているばかりでなく、もとの損傷の境界を越えて広がる。ケロ イドには、膠原性の組織の渦巻き中で主に異常な形式で組織される過剰の結合組 織が存在する。肥大性瘢痕とケロイド性瘢の両方を形成する遺伝的素因がある。 このような素因は、人種としてはアフリカ−カリビアンおよびモンゴロイ ドに特によく見られる。 創傷の治癒を促進する医薬を提供する必要がある。たとえば、急性創傷(刺し 傷、火傷、電気的外科手術の結果生じる神経損傷または創傷など)、慢性創傷( 糖尿病性潰瘍形成、静脈潰瘍形成および床ずれ潰瘍形成など)または一般に治癒 が困難となっている個体(老年者など)の場合、治癒進度の増進を所望されるこ とが多い。これらの例において、創傷は、生命の状況に重大な影響を及ぼし、死 に至らしめることさえもあるので、臨床的に可能な限り、治癒進度の増進が必要 とされる。創傷治癒進度が増進すると、瘢形成もそれにともなって増進すること も多いが、このことは、所望の治癒進度の増進と比べると二次的重要度である。 本明細書で用いる語句「創傷」は、皮膚への損傷を意味するがこれに限定され るものではない。他のタイプの創傷には、肺、腎臓、心臓、腸、腱または肝臓な どの内部組織あるいは臓器への障害、損傷または外傷が含まれる。 しかし、瘢痕形成の調節が一次的重要度であり、創傷治癒の進度が二次的に考 慮されるという場合もある。このような状況の例は、過剰の瘢痕が、組織の機能 を妨げるような場合の皮膚の瘢痕であり、特に、瘢痕拘縮が起こる場合である( たとえば、関節の柔軟性を減損するような皮膚の火傷および創傷)。美容上の考 慮が重要である場合の皮膚の瘢の減少もまた、強く所望されている。皮膚におい て、肥大性またはケロイド性瘢痕(特に、アフリカ−カリビアンおよびモンゴロ イドにおいて)は、機能的および美容的減損を引き起こすものであり、それらの 発生を予防する必要がある。両方(移植部および切除部)の皮膚部位に生じる瘢痕 および人工皮膚の適用によって生じる瘢痕もまた、問題であり、最小化あるいは 予防が必要とされている。 皮膚の瘢痕と同様に、内部瘢痕または線維症も非常に有害であり、その特定の 例として以下のものが挙げられる。 (i)中枢神経系において、グリアの瘢痕形成は、(神経外科手術または脳の 穿損傷後などの)神経の再接続を妨げる。 (ii)眼内の瘢形成は、減損性である。角膜において、瘢形成は異常な混濁 を引き起こし、視覚に問題を与え、盲目に至らしめることさえある。網膜に おいて、瘢痕形成は、ゆがみあるいは網膜剥離を引き起こし、盲目に至らしめる 。緑内障において眼圧を低下する手術(緑内障ろ過術など)における創傷治癒後 の瘢痕は、水性体液が排出されないことによって外科処置の失敗を引き起こし、 その結果として緑内障が再発する。 (iii)心臓における瘢痕形成(外科手術または心筋梗塞後など)は、異常 な心臓機能を亢進する。 (iv)腹部または腎盂における手術は、しばしば、内臓癒着を引き起こす。 たとえば、腸と体壁の癒着が形成されると、腸のループがねじれて、虚血、壊疽 が生じ、緊急処置が必要となる(処置しなければ死亡する)。腸の外傷または切 開は、瘢の形成および瘢痕による拘縮を引き起こし、狭窄に至らしめ、腸の管腔 閉塞が起こり、その結果再び生命が脅かされる。 (v)卵管の領域における腎盂の瘢痕形成は、不妊症を引き起こす。 (vi)筋肉の損傷後の瘢痕形成は、異常な拘縮をもたらし、筋肉の機能が減 損する。 (vii)腱および靭帯の損傷後の瘢痕形成または線維症は、重篤な機能減損 をもたらす。 上記に関連して、事実、過剰の線維症が病的障害および組織の機能不全を引き 起こす線維性障害として知られる多数の医療的対処を必要とする体調がある。線 維性障害は、組織内に異常な形式で線維性組織(主にコラーゲン)が蓄積するこ とを特徴とする。このような線維性組織は、種々の障害プロセスから生じる。こ れらの障害は、必ずしも外科手術、外傷あるいは創傷によって引き起こされると は限らない。線維性障害は通常慢性的である。線維性障害の例として、肝硬変、 肝臓線維症、糸球体腎炎、肺線維症、強皮症、心筋線維症、心筋梗塞後の線維症 、発作後または神経退行性障害(アルツハイマー病)後の中枢神経系線維症、増 殖性硝子体網膜症および関節炎が挙げられる。したがって、これらの線維性障害 において、線維症/瘢痕形成を調節する(すなわち、予防、阻止または回復させ る)ことによってこのような体調の治療に用いうる医薬も必要である。 上記考察は主としてヒトの体調、障害あるいは疾病に対して適用するものであ るが、他の動物、特に愛玩動物または家畜(ウマ、ウシ、イヌ、ネコなど)にお いても、創傷治癒、瘢痕形成および線維性障害が問題であることが理解されよう 。たとえば、腱と靭帯の損傷から瘢痕形成または線維症に至るために、腹部創傷 または癒着は、ウマ(特に競走馬)を引退させる主な原因である。 創傷治癒、瘢痕形成および線維性障害の分野において、最近幾らかの発展がな されている。これらの発展の幾つかは、一連のサイトカインおよび成長因子が組 織の修復に深くかかわっているという最近の知識に関連するものである。 WO−A−92/17206には、線維症促進成長因子に対して中和剤を使用 することにより、創傷治癒中に瘢痕形成が阻害されることが開示されている。た とえば、WO−A−92/17206は、組成物がトランスフォーミング成長因 子β1およびβ2を特に阻害すること、および瘢痕形成を減少させるのに血小板 由来成長因子が特に有用であることを実証している。 WO−A−93/19769には、トランスフォーミング成長因子β3といっ たような非線維性因子を使用することにより、線維症を誘発することなく創傷治 癒が促進されるという驚くべき発見が開示されている。 GB−A−2288118には、成長因子に対して産生された特異的抗体を用 いることにより、該成長因子の作用が強化されて治癒を促進することが開示され ている。 他の発展の例として、マンノース−6−ホスフェートを、細胞外マトリックス の蓄積およびトランスフォーミング成長因子β1またはβ2の濃度上昇に関連し た線維性障害の治療に使用することが挙げられる(GB−A−2265310) 。マンノース−6−ホスフェートは、これらのトランスフォーミング成長因子の 潜伏型から活性型への転換を妨げると考えられる。 WO−A−95/26203には、成長因子の能力に影響を及ぼし、創傷治癒 を促進する他の化合物が開示されている。 これらの進歩にもかかわらず、創傷治癒、瘢痕形成および線維症を調節するの に用い得る医薬を発達させることを継続する必要性は依然として残っている。特 に、効能が、創傷治癒の速度または瘢痕形成の一方または他方に偏ることのない 医薬が必要である。 以下に詳述するように、本発明は、その最も広い態様において、創傷の治療の ための、アクチンの組み立て(assembly)および組織化を調節する化合物の使用 に関する。 すべての真核細胞は、単細胞生物あるいはヒトの組織由来のいずれにおいても、 アクチンを含んでいる。アクチンは、細胞の細胞骨格の主要タンパク質成分であ るフィラメント状アクチン(Fアクチン)として見出すことができる。細胞骨格 は、多くの細胞機能、特に、運動性、形態の変化、走化性および分泌の調節にお いて影響を及ぼす。 Fアクチンは、方向性のあるアクチンモノマーの堅いヘリックスからなるポリ マーである。これらのモノマーは、球状アクチン(Gアクチン)として知られる シングルポリペプチド球状タンパク質として細胞内に発現する。Gアクチンモノ マーのポリマー化によるFアクチンへの変換は、細胞の細胞質内で起こる。 Fアクチンは、動的な構造であり、フィラメントのサイズは、細胞の機能的要 求に応じて調節することができる。たとえば、Gアクチンモノマーをフィラメン トに付加もしくはフィラメントから削除する速度を変化させること、またはFア クチンの崩壊を阻害または促進することによって。Fアクチンは、細胞骨格の一 部を形成するのみならず、筋肉内の薄いフィラメントなど、細胞構造内に組織化 することもでき、それらのいずれもが特異的な細胞機能を有している。 多くの制御タンパク質がFアクチンの組み立ておよび組織化に影響を及ぼす。 これらの制御タンパク質のうちのそのようなひとつのクラスは、アクチンモノマ ーに結合し、アクチンフィラメントの高速成長端にキャップをかぶせ、アクチン フィラメントを切断するものである。このクラスの制御タンパク質の例として、 ゲルソリン、ビリン、CapG、アドセベリン、フライトレス−1およびアドビ リンが挙げられる。 ゲルソリンは、血小板、線維芽細胞、好中球およびマクロファージといったよ うな細胞内に天然に見出される82kDaのタンパク質であり、たった1秒で1 μmのアクチンを半分に分断することができる。Witkeらの(Cell vol.81,p4 1-51,1995)学術論文には、ゲルソリンを発現しないように作られたマウスモデ ル(Gsnマウスまたはゲルソリンノックアウトマウスとしても知られている) を用いて、インビボおよびインビトロにおいてゲルソリンを発現しない細胞内で は、好中球および線維芽細胞の移動性が減じられるという研究が述べられていた 。 この論文は、創傷の治療に対するゲルソリンおよび類似した化合物の使用を企 図するものではなく、驚くべきことに、発明者らが、アクチンの組み立ておよび 組織化を調節する化合物が創傷治癒に有用であることを見出した。 本発明の第1の態様は、創傷またはの治療用医薬を製造するための、細胞内お よび/または細胞外においてアクチンの組み立てと組織化を調節する化合物の使 用を提供する。 本発明の第2の態様は、治療上有効量の、細胞内および/または細胞外におい てアクチンの組み立ておよび組織化を調節する化合物ならびに医薬的に許容しう るビヒクルを含む創傷および線維症の治療用組成物を提供する。 本発明の第3の態様は、細胞内および/または細胞外においてアクチンの組み 立てと組織化を調節する化合物を、治療上有効量にて、冒された組織に適用する ことを特徴とする創傷または線維症の治療方法を提供する。 本発明において、発明者らは、アクチンの組み立ておよび組織化を調節する化 合物を創傷の治療に使用することにより、形成された瘢痕の質が改善され、創傷 の治癒速度も改善されうることを見出した。該化合物は、不適切な線維症が存在 する状態の治療にも用いることができる。 本発明化合物は、細胞内アクチンおよび/または細胞外に存在するアクチン( 死亡するかまたは損傷した細胞から放出される)の組み立てと組織化を調節する のに有効である。 アクチンの組み立ておよび組織化を調節する化合物は、本発明にしたがって、 次のような、瘢痕の予防または減少が必要とされる状況または身体状態において 使用することができる。 (i)皮膚の瘢痕が組織機能に対して過剰および/または有害である場合、特 に、瘢痕の拘縮が起こるかまたは起こる可能性がある場合(たとえば、関節の柔 軟性を損なう皮膚の火傷および創傷、特に子供の瘢痕)。 (ii)美容上の考慮が重要である皮膚における瘢痕形成。 (iii)機能的および美容的減損を引き起こす、肥大性またはケロイド性瘢 痕(特に、アフリカ−カリビアンおよびモンゴロイドにおいて)が生じる場合。 (iv)両方(移稙部および切除部)の皮膚部位に生じる瘢痕および人工皮膚の 適用によって生じる瘢痕形成。 (v) (神経外科手術または脳の穿損傷後などの)中枢神経系における瘢痕 形成。たとえば、グリアの瘢痕形成は、傷んだ神経の再接続を妨げる。 (vi)眼内、特に角膜における瘢痕形成(瘢痕形成が異常な混濁を引き起こ し、視覚に問題を与え、盲目に至らしめることさえある)、網膜における瘢痕形 成(ゆがみあるいは網膜剥離を引き起こし、盲目に至らしめる)、および緑内障 において眼圧を低下する手術(緑内障ろ過術など)における創傷治癒後の瘢痕形 成(水性体液が排出されないことによって外科処置の失敗を引き起こし、その結 果として緑内障が再発する)。 (vii)異常な心臓機能を亢進する心臓における瘢痕形成(外科手術または 心筋梗塞後など)。 (viii)腹部または腎盂における手術は、しばしば、内臓癒着を引き起こ す。たとえば、腸と体壁の癒着が形成されると、腸のループがねじれて、虚血、 壊疽が生じ、緊急処置が必要となる(処置しなければ死亡する)。腸の外傷また は切開は、瘢痕の形成および瘢による拘縮を引き起こし、狭窄に至らしめ、腸の 管腔閉塞が起こり、その結果再び生命が脅かされる。 (ix)不妊症を引き起こす、卵管の領域における腎盂の瘢痕形成。 (x)異常な拘縮をもたらし、筋肉の機能が減損する、筋肉の損傷後の瘢痕形 成。 (xi)重篤な機能減損をもたらす、腱および靭帯の損傷後の瘢痕形成または 線維症。 本発明化合物は、線維症の治療または予防にも用いることができる。本発明化 合物は、たとえば、肝硬変、肝臓線維症、糸球体腎炎、肺線維症、強皮症、心筋 線維症、心筋梗塞後の線維症、発作後または神経退行性障害(アルツハイマー病 )後の中枢神経系線維症、増殖性硝子体網膜症(PVR)および関節炎の治療ま たは予防においても有用である。 本発明化合物は、線維性疾患における線維症の予防および、肥大性の瘢痕また はケロイド(特に、皮膚の)として現れる線維症の形成の軽減または予防に有用 である。 アクチンの組み立ておよび組織化を調節する化合物は、治癒速度を増加し、瘢 痕の質の改善または線維症の治療を増進させる。我々は、これらの化合物が、創 傷の治癒速度を促進しうることを見出した。したがって、このような化合物は、 急性創傷(刺し傷、火傷、電気的外科手術の結果生じる神経損傷または創傷など )、慢性創傷(糖尿病性潰瘍形成、静脈潰瘍形成および床ずれ潰瘍形成など)ま たは一般に治癒が困難となっている個体(老年者など)において有用である。本 発明化合物は、皮膚(skin)の創傷(すなわち、皮膚(dermal)創傷)の治療に 特に有用である。上記創傷は、生命の状況に重大な影響を及ぼし、死に至らしめ ることさえもあるので、臨床的に可能な限り、治癒進度の増進が必要とされる。 本発明において最も好ましい化合物はゲルソリンである。 本発明者らは、アクチンの組み立ておよび組織化を調節する化合物が創傷治癒 に影響を及ぼすことを実証する研究を行った。たとえば、本発明者らは、ゲルソ リンノックアウトマウスモデルにおいて、創傷の治癒が改善され、瘢痕の質が軽 減されることを見出した。さらに、外因性のゲルソリンなどの化合物を適用する ことにより、処置しない創傷に観察される治癒状態と比べて、瘢痕の質および創 傷治癒速度が改善される。 Witkeらの論文の意図以外に、驚くべきことに、本発明者らは、アクチンの組 み立ておよび組織化を調節する化合物が創傷の治療に特に効果的であり、瘢痕の 形成を減少し、さらに創傷治癒速度を増加することを見出した。出願人は、どの ような仮説を強いられることも望まないが、調節タンパク質ゲルソリンなどの化 合物が、瘢痕の減少に有効であると確信する。なぜならば、彼らは、これらの化 合物が細胞の移動性を調節するのみならず、創傷内の細胞の移動性(細胞外マト リックスの成分の効果的分泌およびそれによる線維症および瘢形成)に影響を及 ぼすことも見出したからである。本発明者らは、これらの機能が、これらの細胞 内および細胞外の改造Fアクチンによって制御されると確信する。さらに、本発 明者らは、本発明化合物が創傷内の線維芽細胞に方向性を与えることを確信する 。線維芽細胞の方向性はまた、線維芽細胞によって蓄積された細胞外マトリック スの性質、組織化および方向性にも影響を及ぼし、したがって、傷を負った領 域を修復する結合組織である瘢痕に影響を及ぼす。本発明者らは、該マトリック ス内でのコラーゲンの蓄積が、本発明化合物によって特に影響を及ぼされること を見出した。本発明者らは、可溶性、細胞外ゲルソリンが、創傷部位における崩 壊する細胞から放出された細胞外アクチンに結合して除去すること、およびこの 細胞の残骸の除去が、慢性創傷の治癒の促進において重要なメカニズムであるこ とも実証した。したがって、本発明者らは、本発明化合物を創傷に適用すること により、最終的な質および外見が改善され、前述したような創傷の治癒の速度が 増加されることを確信する。 ゲルソリンが好ましいが、ビリン、CapG、アドセベリン、フライトレス− 1およびアドビリンといったような他の化合物も本発明に使用することができる 。 本発明に用いる化合物はタンパク質である。このようなタンパク質は容易に修 飾して(たとえば、アミノ酸付加、置換または削除)、アクチンモノマーに結合 し、アクチンフィラメントの高速成長端にキャップをかぶせ、アクチンフィラメ ントを切断する能力を保持する誘導体を製造することができる。したがって、天 然のタンパク質の機能的特徴を保持する誘導体もまた本発明の好ましい化合物で ある。このような誘導体として、天然のタンパク質の機能的活性フラグメントお よび常温常圧で活性化される天然のタンパク質の先駆体(プロタンパク質など) が挙げられる。 本発明組成物は、特に該組成物が用いられるべき作法に応じて多くの異なる形 態をとることができる。したがって、たとえば、組成物は、液剤、軟膏、クリー ム剤、ゲル剤、ヒドロゲル剤、粉剤またはエアロゾル剤の形態であってよい。こ のような組成物はすべて、本発明化合物を患者(ヒトまたは動物)へ投与する手 段として好ましい投与方法である、皮膚への局所投与に適している。 組成物は、治療されるべき創傷を覆うかまたは封じるために用い得る滅菌包帯 またはパッチに塗布して適用してもよい。別法として、本発明組成物は、注射用 液剤であってよく、または点眼剤として適用しても良い。 本発明組成物のビヒクルは、患者にとって充分に寛容であり、有効成分が創傷 に放出されるものを使用すべきである。このようなビヒクルは、生体崩壊性、生 体分解性および/または非炎症性であることが好ましい。 本発明組成物は、多くの経路で使用しうる。したがって、たとえば、創傷の治 癒を調節するために、患者の創傷の内部および/または周囲に適用することがで きる。本発明組成物を“現存する”創傷に適用する場合、医薬的に許容し得るビ ヒクルは相対的に“刺激性の少ない”もの、すなわち生体適合性、生体崩壊性、 生体分解性および/または非炎症性のビヒクルである。 本発明組成物は、外科手術によって形成される創傷の治癒を調節するために、 外科手術(特に電気的外科手術)の前に使用することもできる。この場合、局所 適用された組成物のビヒクルは、皮膚のケラチン層を透過しうるものであること が必要である。この目的に適当なビヒクルとして、ジメチルスルホキシドおよび 酢酸が挙げられる。本発明組成物の使用は、このような予防的使用が好ましい。 本発明組成物は、眼の外科手術(たとえば、角膜のレーザー手術など)に起因 する治癒の促進および瘢痕形成の軽減または制御に使用するのに適している。こ の場合、該組成物または医薬は、点眼剤の形態で使用する。 本発明組成物は、体内創傷の治癒にも適用しうる。したがって、たとえば、該 組成物を、肺の創傷治癒に用いるための吸入剤、または肺の線維症および狭窄の 予防あるいは治療のための吸入剤として製剤することができる。 創傷部位に適用される、アクチンの組み立ておよび組織化を調節する化合物の 量は、化合物の生物学的活性およびバイオアベイラビィティなどの複数の因子、 さらに投与形態ならびに化合物の生理化学的特性に依存する。他の因子として、 A)処置される患者における化合物の半減期; B)治療される特定の状況; C)迅速治癒または瘢痕形成減少のいずれを所望するか; D)患者の年齢; が挙げられる。 また、投与頻度、特に、処置された患者の体内における化合物の半減期が上記 因子に関与する。 一般に、該組成物を用いて存在する創傷または線維性障害を治療する場合、創 傷が生じた直後、あるいは障害が診断された直後に、化合物を投与すべきである 。該組成物を用いる療法は、臨床医が満足する創傷治癒結果が得られるまで、ま た は線維性障害の場合、異常な線維組織形成の恐れあるいは原因が排除されるまで 継続すべきである。 創傷治癒を促進する本発明組成物は、創傷が形成された直後に、創傷に適用さ れるべきである。急性の創傷および回復中の患者の創傷に対しては、創傷形成時 、好ましくは、創傷形成後数時間以内、遅くとも2、3日以内に、組成物の完全 投与(若年者向けなど)を、行うのが理想的である。慢性創傷または回復した創 傷に対しては、できるだけ早くに、妥協投与(老年者向けなど)を行うべきであ る。 瘢痕形成および/または線維性障害を調節する、本発明組成物もまた、創傷が 形成された直後に、創傷に適用されるべきである。しかし、線維症は、数日ある いは数週間にわたって進行することが可能である。したがって、創傷形成または 障害進行(またはその診断)の数日後あるいは数週間後に該組成物が投与される 場合でさえも、化合物(ゲルソリン)を投与することによって、治療される患者 は恩恵を受けることができる。 予防的に使用する場合(たとえば、外科手術前あるいは線維性障害が進行する 恐れのある場合)、望ましくない線維症の恐れまたは創傷治癒の進度が遅いとい う可能性が確認されたら(老年者の患者の場合など)すぐに、組成物を投与すべ きである。たとえば、任意の外科手術が行われる予定であり、その後の創傷治癒 の進度を増進したい患者の皮膚の部位に、ゲルソリンを含有するクリーム剤また は軟膏剤を適用する。この場合、患者に手術前処置をしているとき、または、外 科手術の数時間前もしくは数日前に、(患者の健康状態および年齢ならびに形成 される予定の創傷の大きさに応じて)組成物を適用するのが望ましい。 投与頻度は、使用する化合物の生物学的半減期によって決定する。典型的には 、創傷部位または線維性障害に冒された組織における化合物の濃度が、治療効果 を得るのに適した濃度に維持されるように、標的組織に化合物を含有するクリー ム剤または軟膏剤を投与すべきである。このためには、一日一回投与または一日 数回投与が必要である。 製薬業界において通例用いられる公知の操作(インビボ実験用、臨床施療用な ど)を用いて、特定の組成物を配合し、厳密な(化合物の一日投与量および投与 頻度について)治療養生法を行う。 通常、本発明組成物は、50〜1000nM、最も好ましくは、100から5 00nMの化合物(ゲルソリンなど)を含有する。例えば、100〜500μg /mlのゲルソリンを含有する組成物が、現存する(すなわち開口している)創 傷への適用に適しているが、これらに限定されるものではない。 さらに例を挙げると、手術によって生じる、瘢痕形成の発生を予防するかまた は創傷治癒の速度を改善するために、予防剤として手術前に用いる組成物は、所 望の創傷治癒効果を得るために、500〜1000nMのゲルソリンを含有する 。 アクチンの組み立ておよび組織化を調節する化合物の好適な一日投与量は、前 述の因子ならびに治療される創傷の大きさまたは線維症に冒された組織の量に応 じて決定する。創傷または線維性障害の治療に必要な化合物の代表的な量は、2 4時間当たり、1ng〜100gの範囲の有効化合物であり、創傷の大きさまた は線維症の質ならびに他の幾つかの因子に応じて決定する。 また、本発明に使用する化合物は、天然から単離しうるかまたは化学的に合成 しうることが理解されよう。このような化合物は、タンパク質であったり、天然 に存在するタンパク質の構造的類似物である必要はないが、やはり、アクチンの 組み立ておよび組織化において同様な効果を及ぼす。これらの化合物もまた、好 ましい本発明の化合物である。 アクチンの組み立ておよび組織化を調節する化合物として用いる、タンパク質 およびその誘導体は、ペプチドライゲーションおよび完全タンパク質合成といっ たような、どのような簡便な方法により製造してもよい。別法として、該タンパ ク質をて天然物から精製してもよい。たとえば、ゲルソリンは、該タンパク質を 発現している好中球、血小板または線維芽細胞から単離できる(たとえば、Brya n J.のMethods in Enzymology vol215,p88-99,アカデミック・プレス,ロンド ン,1992の方法により)。 本発明で用いるタンパク質およびその誘導体の好ましい製造方法は、組換えD NAシステムにより発現させることである。 組換えDNAテクノロジーによって、このようなタンパク質およびその誘導体 が、所望の量、医薬製造業で使用するのに充分な量で形成されるための簡便な手 段が提供される。 活性薬剤は通常、インビボにおいて半減期が非常に短いので、化合物を当該す る組織に投与する公知の方法には、たとえわずか2、3日の過程であっても、活 性化合物を創傷部位または線維症の部位へ濃度を維持したまま到達することが困 難であるという不利点があることが多い。化合物の半減期は、次に述べるような 理由から短くなりがちである。 (i)プロテアーゼなどによる分解 (ii)結合タンパク質によるクリアランス(α2マクログロブリンなど) (iii)デコリンおよびフィブロネクチンなどの細胞外マトリックス分子に よる結合および薬剤活性の阻害 さらに、創傷の治癒および/または瘢痕形成/線維症の治療用化合物は、適当 なビヒクルとともに投与する必要があり、化合物とビヒクルを含む組成物として 提供されることが多い。これまでに概略で述べたようにこのようなビヒクルは、 非炎症性、生体適合性、生体吸収性であることが好ましく、活性化合物を分解ま たは不活性化してはならない(貯蔵中または使用中に)。しかし、特定の化合物 を治療される組織へデリバリーするための満足できるビヒクルを提供するのが困 難であることが多い。 これらの問題を除去するかまたは軽減することができる簡便な経路は、遺伝子 治療によって、創傷部位(または線維症の部位)に、治療上有効な創傷治癒量の アクチンの組み立ておよび組織化を調節する化合物を提供することである。 本発明の第4の態様は、遺伝子治療技術に使用するためのデリバリーシステムを 提供することであり、該デリバリーシステムは、アクチンの組み立ておよび組織 化を調節する化合物タンパク質をコードするDNA分子を特徴とし、該DNA分 子は、転写されて該タンパク質を発現する能力をもつ。 本発明の第5の態様は、前パラグラフで定義した、創傷または線維症の治療用 の医薬の製造に用いるデリバリーシステムの使用を提供する。 本発明の第6の態様は、治療を必要とする患者に、治療上有効量の、本発明の 第4の態様で定義したデリバリーシステムを投与することを特徴とする、創傷ま たは線維症を治療する方法を提供する。 該デリバリーシステムは、大部分の慣例のデリバリーシステムと比較して、有 効成分の濃度を創傷部位または線維症部位において長期にわたって維持するのに 非常に適している。創傷部位または線維症部位において、本発明のDNA分子で 形質転換された細胞から、タンパク質が継続的に発現される。したがって、該タ ンパク質が、インビボにおいて作用剤としての半減期が非常に短かったとしても 、治療上有効量のタンパク質が、処置された組織から継続的に発現される。 さらに、本発明のデリバリーシステムを用いて、創傷に塗布される軟膏剤また はクリーム剤に必要であった慣例の医薬的ビヒクルを使用することなく、DNA 分子(およびそれによって、有効な治療剤であるタンパク質)が提供される。 本発明のデリバリーシステムは、DNA分子が発現して、アクチンの組み立て および組織化を調節することによって、直接的または間接的に、創傷を治癒およ び/または線維症もしくは瘢痕形成を治療する、タンパク質を産生しうるもので ある。“直接的”とは、遺伝子発現産物それ自体が、アクチンの組み立ておよび 組織化を調節することによって、創傷治癒および/または線維症もしくは瘢痕形 成の調節に必要な活性をもつことを意味する。“間接的”とは、遺伝子発現産物 が、少なくとも一つのさらなる反応を受けるかまたは媒介して、創傷治癒および /または線維症もしくは瘢痕形成の調節に有効な作用剤を提供することを意味す る。 ゲルソリンまたはその生物学的なフラグメントまたは誘導体をコードするDN A分子が好ましい。該DNA分子は、ビリン、CapG、アドセベリン、フライ トレス−1およびアドビリンまたはその誘導体などの化合物をコードする分子で あってもよい。また、間接的にゲルソリンなどの化合物の発現を増加するタンパ ク質をコードするDNA分子であってもよい。たとえば、該DNA分子は、ゲル ソリンの発現を促進する酵素、転写因子などをコードする。 該DNA分子を、適当なベクターに導入して組換えベクターを作製することが できる。ベクターは、たとえば、プラスミド、コスミドまたはファージである。 このような組換えベクターは、本発明のデリバリーシステムにおいて、該DNA 分子で細胞を形質転換するのに非常に有用である。 組換えベクターには他の機能要素を含めることもできる。たとえば、細胞の核 内で自律複製するように、組換えベクターを設計することができる。この場合、 DNA複製を誘発する要素は、組換えベクター内に必要である。別法として、ベ クターおよび組換えDNA分子が細胞のゲノムに組み込まれるように、組換えベ クターを設計することができる。この場合、標的となる組み込みに有利なDNA 配列が望ましい。組換えベクターは、クローニング過程において選択可能なマー カーとして用いる遺伝子をコードするDNAを含むこともできる 組換えベクターは、さらに、遺伝子発現のコントロールに必要とされる、プロ モーターまたはレギュレーターを含むこともできる。 DNA分子は、必須ではないが、治療される患者の細胞のDNAに組み入れら れてもよい。未分化細胞は、安定に形質転換されて、遺伝子的に修飾された娘細 胞が産生される。この場合、患者における発現の調節には、たとえば、特異的転 写因子、遺伝子アクチベーター、あるいはより好ましくは、創傷部位に見出され るシグナルに特異的に応答して遺伝子を転写する誘発可能プロモーターが必要で ある。別法として、治療される患者の分化細胞の不安定または過渡的形質転換を 補助するように、該デリバリーシステムを設計することができる。この場合、D NA分子の発現は、形質転換細胞が死亡するかまたはタンパク質の発現を止めた 時に停止するので、発現の調節は、さほど重要ではない(理想的には、創傷、線 維症もしくは瘢痕形成が治療されるかまたは予防された時点)。 デリバリーシステムは、ベクターに組み入れることなく、患者にDNA分子を 提供することができる。たとえば、DNA分子をリポソームまたはウイルス粒子 に組み入れることができる。別法として、直接のエンドサイトーシスによる飲み 込みなどの適当な手段により、“裸の(naked)”DNA分子を患者の細胞に挿入 することができる。 DNA分子を、トランスフェクション、感染、マイクロインジェクション、細 胞融合、原形質融合または弾道衝撃によって、治療される患者の細胞に移入する ことができる。たとえば、被覆金粒子を用いる弾道トランスフェクション、DN A分子を含むリポソーム、ウイルスベクター(アデノウイルスなど)および、局 所適用または注射によりプラスミドDNAを直接創傷領域に適用することによる 直接DNA取り込みを提供する手段(エンドサイトーシスなど)などによって、 移入を行う。 該DNA分子からタンパク質の発現すると、瘢痕形成の減少とともに創傷治癒 を直接的または間接的に提供する場合、同時に瘢痕形成の増加がもたらされる場 合もある創傷治癒進度の増進を提供する場合、あるいは線維症の調節(阻止、予 防または回復)を提供する場合がある。 本発明の第4の態様のデリバリーシステムを、本発明の第5または6の態様に おいて用い、これまでに述べた身体状態の治療を行いうることが理解されよう。 次に記載する実施例および図面において本発明をさらに詳しく説明するが、こ れらは本発明を限定するものではない。 図1は、実施例1のゲルソリンノックアウトおよび野生型マウスにおける創傷 の直線幅のグラフである。 図2は、実施例1のゲルソリンノックアウトおよび野生型マウスにおける再上 皮形成のパーセンテージのグラフである。 図3は、実施例1のゲルソリンノックアウトおよび野生型マウスにおける創傷 の中部創傷/瘢痕の幅のグラフである。実施例1 ゲルソリンノックアウトマウス(KO−ゲルソリン発現なし)および正常野生 型マウス(WT−ゲルソリン発現あり)について、創傷治癒におけるゲルソリン の影響を評価した。ゲルソリンノックアウトマウスは、Witkeらの(Cell vol.81 ,p41-51,1995)に開示されている実験操作にしたがって作成した。 1.1方法 1.1.1処置 48匹の成体雄性マウスを8匹ずつ6つのグループに分割した:4匹のノック アウトマウスおよび4匹のコントロール。アベルタインのIP注入によりマウス に麻酔を行い、背面を剃毛し、皮膚から皮筋に達する2つの1cm切開を解剖学 的に特別な位置に作成した。創傷を縫合することなく放置し、動物を個々のケー ジに戻した。創傷形成後1日後、3日後、5日後、7日後、14日後および70 日後に屠殺し、創傷を採取した。採取した創傷の半分を常套の生理食塩水に入れ 、他の半分をOCT培地に入れ、液体窒素で凍らせた。微視的および巨視的結果 を 比較するために、各時点における創傷を写真で記録した。 1.1.2組織学的評価 ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)ならびにマッソンのトリクロム着色 料を用いてそれぞれ創傷の細胞的特徴およびコラーゲン含量を決定した。 1.1.3創傷形成後70日の瘢痕の評点 10cmの長さの視覚アナログスケールを用いて組織標本スライドを評点した (ここで、0は正常な皮膚および10は肥大した瘢痕/ケロイドを意味する)。 別に、0から5のランクスケールを用いて評点した(ここで、0は正常な皮膚お よび5は肥大した瘢痕/ケロイドを意味し、3はコントロールの点数である)。 1.1.4免疫組織化学 次の抗体を用いて第1、3、5および7日の創傷を染色した。 1.抗マウスフィブロネクチン。 2.ゲルソリンノックアウトマウスの正確な遺伝子型を確認し、野生型動物の 創傷におけるゲルソリンの免疫局在性を決定するための抗マウスゲルソリン。 3.TRITC−標識ファロイジン。ファロイジンは、キノコ(amanita phal loides)から抽出され、フィラメント状アクチンに結合するため、細胞外Fアク チンと細胞内Fアクチンとを局在化し、区別するのに有用である。 創傷内の細胞外アクチンのクリアランスは、血液システムから放出された細胞 質ゲルソリンに起因するので、創傷内に見られる細胞外アクチンが、細胞外ゲル ソリンと共局在化するかどうかの決定を行うために、抗ゲルソリン(FITC− 標識第2抗体)とTRITCファロイジンの両方による染色を行った。 1.1.5画像分析 PCベースイメージ捕捉システム(PCイメージ)を用いて画像分析を行い、 ノックアウト創傷と野生型の創傷との質的差異を量的に表すために、次のパラメ ーターを測定した。 1.創傷の幅(創傷の端の間の直線および実際の周囲の両方) 2.皮筋収縮力 3.中部創傷の幅 4.再上皮形成 5.3点における瘢痕の幅(底部、中部、頂部) 6.新しい上皮の厚み すべての創傷の幅と皮筋収縮力を測定した。他の測定は、適当な時点で行った 。 マンチェスター大学のW.Bardsley博士によるSimfitプログラムを用いて測定値 の統計学的分析を行った。野生型コントロールとノックアウト動物から得られた 結果を比較するために使用した2つの統計学的検定は、マンーホイットニーのU 検定とコルゴモロフ−スミルノフ検定であった(表1参照)。 1.2結果 1.2.1組織学 コントロール(WT=野生型)とノックアウトマウス(KO)との最も顕著な 差異は、創傷形成後第5日に観察された。24時間目に、ノックアウトマウスの 創傷は、コントロールマウスの創傷の外観と類似していた:すべてのマウスの創 傷は、幅広く、多くの炎症細胞を含んでいた(第1図参照)。創傷形成後第3日 に、正常マウスでは、ほとんどが、創傷領域に現在まで残る焼痂および新血管形 成とコラーゲン形成の徴候をともなう再上皮形成が行われた。ゲルソリンノック アウトマウスの創傷は、再上皮形成において非常に多様であり、幾つかはコント ロール創傷に似ており、それら以外は、まったく再上皮形成が行われなかった。 ノックアウトマウスの創傷は、幾つかは非常に炎症性であり、それら以外は、さ ほど透き目状ではなく、すべての場合において新規コラーゲン形成のレベルが減 少した。 第5日に、ゲルソリンノックアウトマウスの創傷は、ほとんどのケースにおい て再上皮形成が行われた野生型コントロールと比較して、非常に幅広いままであ り、完全には再上皮形成は行われなかった(第2図、第3図および表1参照)。 第7日に、創傷は、再び異なる様相を示し、数個のノックアウトマウスの創傷は 、再上皮形成され、相対的に少ない数の炎症細胞を含んでいたが、一方、残りの 創傷は、依然として相当幅が広く、細胞様(cellular)であり、表面に焼痂があ った。ノックアウトマウスの創傷には、炎症細胞および線維芽細胞のクラスター が存在するものもあった。コントロールマウス創傷は、この段階でほとんど再上 皮形成が行われ、高レベルの新しいコラーゲンが蓄積された。ノックアウトマウ ス 創傷は、第5日と第7日の両方において、コラーゲンのレベルは非常に低く、ま だらの様相を呈し、上皮に対して垂直なきわだった直線パターンの状態で蓄積さ れた。この細胞クラスターおよびまだらのコラーゲンは、ゲルソリンノックアウ トマウスにおいて行われる、正常なアクチン改造の結果として生じたものである 。 第14日に、この段階ですべての創傷に再上皮形成が行われたとはいえ、ほと んどのノックアウトマウス創傷は、永続性の炎症細胞を有し、創傷の幅も広いま まであった。形成されたコラーゲンの量は、多様であった。第70日に、ノック アウトマウスは、コントロールマウスと同様な幅広い瘢痕を生じたが、ノックア ウトマウスの瘢には多量の線維芽細胞が現れた。ノックアウトマウスの2つの瘢 痕には、該瘢に接して、およびその周囲に、毛胞の著しい局所的集積があった。 この時点では、ノックアウトマウスの瘢痕は、概ね、野生型マウスの瘢痕と類似 していたが、やや質の点で劣っていた。 これらの結果は驚くべきことであり、ゲルソリンが瘢痕の質を改善し(第70 日以降に見られる)、また、治癒速度を改善すること(第5日における観察結果 によって実証される)を示している。したがって、本発明化合物は、治癒を促進 し、瘢痕形成を軽減または予防するので、創傷の治療に使用することができ、特 に有用である。 表1.ゲルソリンノックアウトおよび野生型創傷の画像分析のデータの要約 表1a 創傷の幅(直線) *)ノックアウト創傷が野生型創傷よりも有意に広い。p<0.05において有 意(マン−ホイットニーのU検定)。 表1b 創傷の幅(周囲)表1c 皮筋層の幅 *)皮筋の収縮力はノックアウト創傷よりも野生型創傷のほうが勝っている,p <0.05において有意(マン−ホイットニーのU検定)。 表1d 中部創傷の幅*)ノックアウト創傷が野生型創傷よりも有意に広い。p<0.05において有 意(コルゴモロフ−スミルノフ)およびp<0.01において有意(マン−ホイ ットニーのU検定)。 表1e 再上皮形成のパーセント 表1f 中部上皮の厚み(5−14日のみ)表1g 瘢痕の幅(14および70日のみ) 表2.野生型(WT)およびゲルソリンノックアウト(KO)動物の第70日に おける瘢痕の評点1.1.2免疫組織化学 ノックアウトマウスおよび野生型マウスの創傷を抗ゲルソリンおよびTRIT IC−ファロイジンで2重染色し、Biorad MRC600共焦点顕微鏡で分析し てスペリオール波長分離を行った。この分析法は、FITCまたはTRITCか ら他のチャンネルへのどのような滲みをも防止した。 TRITC−ファロイジンを用いた単独染色または2重染色のいずれの場合で も、ノックアウト創傷にはゲルソリンは存在しなかった。創傷形成後第1日と第 3日に、TRITC−ファロイジンに対する高レベルの免疫染色があったが、こ れは7日間のうちに一時的に減少した。TRITC−ファロイジンで標識された アクチンにおける付随的減少によるものであるとはいえ、分析したすべての時点 において野生型創傷に免疫染色があり、特に第7日の創傷において増加した。創 傷形成後7日間までのゲルソリンノックアウトにおいて、創傷TRITC−ファ ロイジンに対する免疫染色の増加があり、このことは、ゲルソリンの欠如(細胞 質と血漿の両方における)によって説明することができる。ゲルソリンノックア ウトマウス創傷における細胞外アクチン(細胞の分解により放出されたもの)の クリアランスの減少が、創傷治癒の遅れの原因となり、その結果、外因性のゲル ソリンを添加することにより、このクリアランスが促進されることになり、創傷 治癒が促進される。 1.2.3.画像分析 画像分析の結果から、ノックアウトおよび野生型創傷の再上皮形成に差異があ ること、および最も有意な差異が創傷形成後第5田こあることが支持された。結 果をまとめた表1および第2図を参照せよ。 1.3要約 1.3.1瘢痕形成および/または線維症における効果 ゲルソリンノックアウトマウスの創傷の研究から得られた結果から、ゲルソリ ンの欠如によって創傷中に混乱した線維芽細胞の方向性が生じ、さらに得られた 瘢痕の質が悪くなることの証拠が提供される。これは、瘢痕の最終的な質の決定 において、最初の線維芽細胞の方向性が重要な因子であることを示している。し たがって、ゲルソリンなどのアクチンの組み立ておよび組織化に影響を及ぼす化 合物は、創傷の治療、特に瘢痕形成の改善または予防において有用である。 1.3.2創傷治癒の速度に及ぼす効果 創傷形成後第5日おける創傷の幅のデータは、アクチンの組み立ておよび組織 化をに影響を及ぼすゲルソリンおよび他の化合物が、創傷治癒速度の促進(すな わち創傷の幅の減少)に必要であることを示している。 1.3.3概論 ゲルソリンノックアウトマウスから得られた結果は、初期の創傷の収縮を予防 することが、必ずしも良い瘢痕が得られるとは限らず、実際、有害であるかもし れず、創傷治癒の遅延化によって瘢痕形成が改善されないことの証拠を提供する 。また、該結果は、細胞該の残骸物を切断または除去するゲルソリンなどの化合 物を外部から添加することが、創傷、特に慢性の創傷(静脈潰瘍、糖尿病性潰瘍 または床ずれなど)の治癒を促進するのに有用であることを示している。 さらに、これらのデータは、アクチンの組み立ておよび組織化を調節する化合 物が、2つの面での創傷治癒(すなわち、瘢痕形成を減少すると同時に創傷治癒 速度を増進すること)に有用であることを示している。ほとんどの慣用の創傷治 療方法が、瘢痕形成を減少するかまたは創傷治癒速度を増進するかのいずれかで あり、非常に多くの場合、一つの面(瘢痕形成など)の治療効果が、もう一つの 面(治癒速度など)の治療効果を損なうものであるゆえに、これは、驚くべき効 果である。実施例2 2.1方法 11匹の野生型(WT)および11匹のトランスジェニック(KO)の同腹子 を用いて実施例1の実験を繰り返した。実施例1においてノックアウトマウスと コントロールマウスの治癒に有意な差異が観察された、創傷形成後第5日(8匹 のWTと8匹のKO)および第7日(3匹のWTと3匹のKO)に創傷組織を採 取した。 2.2結果 創傷の周囲幅および再上皮形成の分析を行い、表3と表4に要約した。 2.2.1創傷の幅 表3は、第5日と第7日における、ゲルソリンゼロマウス(KO)およびコン トロールマウス(WT)の創傷の周囲幅を示す。 第5日に、KOマウスの創傷(平均幅2571.7μ)の幅は、コントロール 創傷よりも広く、より透き目状であった。創傷領域内では、わずかに新しいコラ ーゲンが観察できるのみであり、細胞は、クラスター状であった。統計的分析( マンチェスター大学のW Bardsley博士によるシムフィットプログラムを用いた )により、WTおよびKOマウスの創傷間の差異が、創傷形成後第5日において 有意度が高いことが実証された。 創傷形成後第7日におけるWTおよびKOマウスの創傷間の幅の差異は、有意 ではなかった。 2.2.2再上皮形成 創傷形成後第5日において、トランスジェニック(KO)の再上皮形成率(6 3.4%)は、野生型(WT)のもの(95.4%)と比べて小さく、大きなか さぶたが存在した。統計的分析により、WTとKOマウスの創傷間の差異が、創 傷形成後第5日において有意度が高いことが実証された。 創傷形成後第7日において、ゲルソリンゼロマウス(KO)の創傷は、ほとん ど再上皮形成され(平均再上皮形成率は、95.03%であり、一つの創傷のみ に完全な再上皮形成がされなかっただけである)、新しいコラーゲンを含んでい た。しかし、実施例1で記載したものと同じく、コラーゲンは非常に不規則なま だら様で蓄積された。 創傷形成後第7日野生型マウスのコントロール創傷は、すべて再上皮形成され 、高レベルの新しいコラーゲンを含んでいた。 創傷形成後第7日におけるWTおよびKOマウスの創傷間の再上皮形成率の差 異は、有意ではなかった。しかし、コラーゲン組成物について観察される差異は 、価値あるものであった。 表3.創傷の幅(周囲) 表3のデータの統計的分析: (i)第5日* 1.コルゴモロフ−スミルノフの2サンプル検定 下式に対して、HO:F(WT)はG(KO)と等しい: H1:F(WT)はG(KO)と等しくない p=0.0007(高度に有意) H3に対するHO:F(WT)<G(KO) p=0.0003(高度に有意) 2.マン−ホットニーのU検定 下式に対して、HO:F(WT)はG(KO)と等しい: H1:F(WT)はG(KO)と等しくない p=0.0002(高度に有意) H3に対するHO:F(WT)<G(KO) p=0.0001(高度に有意) (ii)第7日 1.コルゴモロフ−スミルノフの2サンプル検定 下式に対して、HO:F(WT)はG(KO)と等しい: H1:F(WT)はG(KO)と等しくない H3に対するHO:F(WT)<G(KO) p=0.47(有意でない) 2.マン−ホットニーのU検定 下式に対して、HO:F(WT)はG(KO)と等しい: H1:F(WT)はG(KO)と等しくない H3に対するHO:F(WT)<G(KO) p=0.3(有意でない) 表4.再上皮形成のパーセント 表4のデータの統計的分析: (i)第5日* 1.コルゴモロフ−スミルノフの2サンプル検定 下式に対して、HO:F(WT)はG(KO)と等しい: H1:F(WT)はG(KO)と等しくない p=0.0112(高度に有意) H3に対するHO:F(WT)<G(KO) p=0.0056(高度に有意)2 .マン−ホットニーのU検定 下式に対して、HO:F(WT)はG(KO)と等しい: H1:F(WT)はG(KO)と等しくない p=0.0012(高度に有意) H3に対するHO:F(WT)<G(KO) p=0.0005(高度に有意) (ii)第7日 1.コルゴモロフ−スミルノフの2サンプル検定 下式に対して、HO:F(WT)はG(KO)と等しい: H1:F(WT)はG(KO)と等しくない H3に対するHO:F(WT)<G(KO) p=0.5(有意でない) 2.マン−ホットニーのU検定 下式に対して、HO:F(WT)はG(KO)と等しい: H1:F(WT)はG(KO)と等しくない H3に対するHO:F(WT)<G(KO) p=0.5(有意でない) 実施例1および2に記載したデータの有意さを表現するために、両実施例のデー タを合せて表5〜9に示した。 表5 ゲルソリンノックアウトマウスおよびコントロールマウスの創傷の 直線幅(μm) **p<0.01 表6 皮筋の収縮幅(μm) *p<0/05 表7 中部創傷の幅(μm) *p<0.05 表8 周囲創傷の幅(μm) **p<0.01 表9 再上皮形成のパーセント *p<0/05,**p<0/01 要約 表5〜9に示した結果は、KOマウスにおける正常なアクチン改造が阻害され ることを表している。このことは、創傷治癒のプロセスに2つの方法で影響を及 ぼす。 (i)ケラチノサイトおよび線維芽細胞の可動性が減少し、再上皮形成が低下す ることから明らかなように、細胞の動きが減少する(特に創傷形成後第5日にお いて)。我々は、これが、当該細胞における細胞内ゲルソリンの減少によるもの と考える。 (ii)通常、細胞外ゲルソリンの作用によって除去される、細胞外アクチンの 蓄積による上皮細胞の成長(およびそれによる再上皮形成)を妨げる身体的バリ ヤーが存在する。この細胞外アクチンの蓄積もまた、KOマウスにおいて観察さ れる瘢痕の質がよくないことに寄与する。 これらの結果および観察から、創傷の部位に、アクチンの組み立ておよび組織 化を調節する化合物(ゲルソリンなど)を投与することによって創傷治癒が改善 されることが実証される。さらに具体的に述べると、これらの化合物によって創 傷の再上皮形成が増加するゆえに、該化合物は、創傷治癒速度を増すのに適して いる。さらに、ゲルソリンなどの化合物が存在することにより、コラーゲン蓄積 が、より整えられるが、このことは、本発明化合物が瘢痕の質の改善にも有用で あることを示している。ほとんどの慣用の創傷治療方法が、瘢痕形成を減少する かまたは創傷治癒速度を増進するかのいずれかであり、非常に多くの場合、一つ の面(瘢痕形成など)の治療効果が、もう一つの面(治癒速度など)の治療効果 を損なうものであるゆえに、これらの効果は、驚くべきものである。 アクチンの組み立ておよび組織化を調節する化合物は、一般に線維症(先に述 べている線維性疾患など)および瘢痕形成の治療に有用である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61P 1/16 A61P 11/00 11/00 13/12 13/12 17/02 17/02 25/00 25/00 27/02 27/02 A61K 37/02 (81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE, DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF ,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE, SN,TD,TG),AP(GH,KE,LS,MW,S D,SZ,UG,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG ,KZ,MD,RU,TJ,TM),AL,AM,AT ,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,CA, CH,CN,CU,CZ,DE,DK,EE,ES,F I,GB,GE,GH,HU,ID,IL,IS,JP ,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR, LS,LT,LU,LV,MD,MG,MK,MN,M W,MX,NO,NZ,PL,PT,RO,RU,SD ,SE,SG,SI,SK,SL,TJ,TM,TR, TT,UA,UG,US,UZ,VN,YU,ZW (72)発明者 オケイン,シャロン イギリス、エスケイ23・7ピーエックス、 ダービーシャー、ハイ・ピーク、ファーネ ス・ベイル、バクストン・ロード、バン ク・エンド・バーン

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.創傷または線維症の治療用医薬の製造における、細胞内および/または細 胞外においてアクチンの組み立ておよび組織化を調節する化合物の使用。 2.アクチンの組み立ておよび組織化を調節する化合物が、アクチンフィラメ ントを切断する請求項1に記載の使用。 3.化合物が、ゲルソリン、ビリン、CapG、アドセベリン、フライトレス −1およびアドビリンおよびその誘導体から選ばれる請求項2に記載の使用。 4.化合物が、ゲルソリンまたはその誘導体である請求項3に記載の使用。 5.瘢痕の形成を阻止または予防するための創傷の治療における、前記請求項 のいずれかに記載の使用。 6.眼神経組織または腸の瘢痕形成の阻止または予防における、請求項5に記 載の使用。 7.皮膚の瘢痕形成の阻止または予防における、請求項6に記載の使用。 8.火傷の後の瘢痕形成の阻止または予防における、請求項6に記載の使用。 9.創傷の治癒速度が増加するような創傷の治療における、請求項1〜4のい ずれか一つに記載の使用。 10.急性創傷の治療における、請求項9に記載の使用。 11.急性創傷が、刺し傷、火傷、電気的外科手術の結果生じる神経損傷また は創傷のいずれか一つである、請求項10に記載の使用。 12.慢性創傷の治療における、請求項9に記載の使用。 13.慢性創傷が、糖尿病性潰瘍形成、静脈潰瘍形成および床ずれ潰瘍形成な らびに一般に治癒が困難となっている個体の創傷のいずれか一つである、請求項 12に記載の使用。 14.線維症を予防または軽減における、請求項1〜4に記載のいずれか一つ に記載の使用。 15.線維症が、線維性疾患である、請求項14に記載の使用。 16.線維性疾患が、糸球体腎炎、肝硬変、肺線維症、成人呼吸困難症候群お よび線維細胞性疾患の一つである、請求項15に記載の使用。 17.治療上有効量の細胞内および/または細胞外においてアクチンの組み立 ておよび組織化を調節する化合物ならびに医薬的に許容しうるビヒクルを含む、 創傷または線維症の治療用組成物 18.アクチンの組み立ておよび組織化を調節する化合物が、アクチンフィラ メントを切断する請求項19に記載の組成物。 19.化合物が、ゲルソリン、ビリン、CapG、アドセベリン、フライトレ ス−1およびアドビリンおよびその誘導体から選ばれる請求項17または18に 記載の組成物。 20.化合物が、ゲルソリンまたはその誘導体である請求項19に記載の組成 物。 21.冒された組織に、細胞内および/または細胞外においてアクチンの組み 立ておよび組織化を調節する化合物を、治療上有効量にて、適用することを特徴 とする創傷または線維症の治療方法。 22.遺伝子治療技術に使用するためのデリバリーシステムであって、アクチ ンの組み立ておよび組織化を調節する化合物タンパク質をコードするDNA分子 を特徴とし、該DNA分子は、転写されて該タンパク質を発現する能力をもつ、 デリバリーシステム。 23.DNA分子が、ゲルソリン、ビリン、CapG、アドセベリン、フライ トレス−1およびアドビリンおよびその誘導体のひとつをコードする、請求項2 2に記載のデリバリーシステム。 24.創傷または線維症の治療における、請求項22または23に記載のデリ バリーシステムの使用。 25.治療を必要とする患者に、治療上有効量にて、請求項24または25に 記載のデリバリーシステムを投与することを特徴とする、創傷または線維症の治 療方法。
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