【発明の詳細な説明】
mplリガンドを含有する医薬組成物発明の分野
本発明は医薬としての適用に好適な、mplリガンドを含有する組成物に関する
。発明の背景
天然のヒトmplリガンドは、循環血小板レベルの主要なレギュレーターである
と見られる、最近クローニングされたサイトカインである。Bartley,T.D.ら、Ce
ll 77:1117-1124(1994);Lok,S.ら、Nature 369:565-568(1994);de Sauvage,F.
J.ら、Nature 369:533-538(1994):Miyazake,H.ら、Exp.Hematol.22:838(1994)
;およびKuter,D.J.ら、PNAS USA,91:11104-11108(1994)を参照されたい。トロ
ンボポエチン(TPO)およびメガポエチンとも称される、天然のヒトmplリガンドは
総計332個のアミノ酸を有するタンパク質である。
チャイニーズハムスターの卵巣(CHO)および大腸菌細胞中の両方で産生された
組換えmplリガンドは、マウス、ラットおよびサルにおいてin vivoで巨核球およ
び/または血小板を特異的に剌激または増加させる、生物学的活性を有すること
が証明された。例えば、Hunt,P.ら、Blood 84(10):390A(1994)を参照されたい。
C-末端から181個までのアミノ酸を末端切断されたヒトmplリガンドはin vivoで
生物学的活性を保持している。生成したmplリガンドはヒトの全長配列のアミノ
酸1〜151から1〜331までに相当する配列を有する。ヒトmplリガンドのN-末端か
ら最初の6個までのアミノ酸を除去しても、生物学的活性を保持することが可能
である。したがって、生物学的活性はヒトmplリガンドの成熟アミノ酸配列のア
ミノ酸7〜151(両端を含む)内に保持されているものと見られる。
in vivo試験において、mplリガンドの誘導体が巨核球および/または血小板の
産生を刺激するのに有利な活性を有することが証明された。PCT公開公報WO95/26
746を参照されたい。特に、ポリエチレングリコール("PEG")部分などの水溶性
ポリマーを使用して誘導体化したmplリガンドはin vivoで長寿命かつ活性であ
るため、臨床方面において興昧深い。
mplリガンドおよび関連する誘導体を含有する組成物は一般的な意味では開示
されている。PCT公開公報WO95/26746,WO95/21919,WO95/18858,およびWO95/21
920を参照されたい。しかし、本明細書に記載されたような、mplリガンドを含有
するどの組成物が医薬としての使用のために適切な安定性を有するかを決定する
に至った対照実験(controlled experiment)は、これ以前には報告されていない
。こうした組成物はヒトなどの患者に対してmplリガンドを実際に適用するのに
重要である。このように、血小板の増加をもたらすために、患者にmplリガンド
を投与するのに使用するための組成物への需要が当業界で存在し続けている。発明の要約
したがって、mplリガンドを含有する、医薬として許容される安定な組成物を
提供することが、本発明の一つの目的である。
本発明のもう一つの目的は、患者へ投与するための、mplリガンドを含有する
組成物を提供することである。
一態様において、本発明の主題は、場合によっては1以上の水溶性ポリマーと
共有結合で連結した、天然のヒトmplリガンドのアミノ酸7〜151から1〜332まで
(両端を含む)に相当するアミノ酸配列を有する、全長または末端切断されたmp
lリガンド;グルタメート、ホスフェート、ヒスチジン、イミダゾール、および
アセテートから選択される緩衝剤;ソルビトール、スクロース、マンニトール、
グリセロール、ポリエチレングリコール、および非極性アミノ酸から選択される
賦形剤;任意成分としてTweenなどの界面活性剤;任意成分としてグルタチオン
、メチオニン、シトレートおよびEDTAから選択される抗酸化剤またはキレート化
剤を含み、5.0〜6.0(両端を含む)の範囲のpHを有する、mplリガンドの組成物
に関する。こうした組成物は液状(好ましくは水性)、凍結状態(好ましくは水
性)または凍結乾燥状態とすることができる。
本発明の別の態様は、以下の詳細な説明で述べる。図面の簡単な説明
図1はmplリガンドの天然のヒトcDNAおよび対応するタンパク質の配列(
配列番号1および2)を示す。この配列にはリーダー配列(アミノ酸-21〜-1(両
端を含む))が含まれており、cDNAにコードされたタンパク質からin vivoで
切断されて、成熟タンパク質が生成する。発明の詳細な説明
本発明は、mplリガンド、および人間などの対象に適用するのに好適な、安定
で生物学的に活性な組成物を生成するためのその他の薬剤をともに含む、組成物
を提供する。
第1の態様において、本発明の主題はmplリガンドの組成物に関する。「mplリ
ガンド」は最も広い意味において、mplレセプターに特異的に結合して活性化し
、その結果巨核球および/または血小板の産生をin vivoで刺激する能力を有す
る、いずれのタンパク質性分子をも意味する。好ましい態様では、mplリガンド
は、天然のヒトの配列のアミノ酸1〜332(配列番号2)などの、ヒトから取得し
得るものと同一のアミノ酸配列を有する。別の好ましい態様において、mplリガ
ンドは配列番号2の少なくともアミノ酸7〜151、好ましくは配列番号2に対応す
る、1〜171±20番目のアミノ酸(すなわち、アミノ酸1〜151から1〜191まで)、
特に好ましくは1〜161±10番目のアミノ酸に同一のアミノ酸配列を有する。mpl
リガンドのいくつかの特定の好ましい種類は以下のとおりである:配列番号2の
アミノ酸1〜151、1〜152、1〜153、1〜154、1〜163、1〜174、1〜191、〜232、1
〜244アミノ酸。最も好ましい種類は配列番号2のアミノ酸1〜163を有する。
mplリガンドを、1以上のポリエチレングリコール(PEG)基などの1種以上の
水溶性ポリマーを使用して誘導体化してもよい。選択されるポリマーは、これが
結合するmplリガンドが生理的環境などの水性環境中で沈殿しないように、水溶
性のものでなければならない。水溶性ポリマーの例はPCT公開公報WO95/26746に
記載されている(前記公報は、引用により本明細書に含まれるものとする)。
PCT公開公報WO95/26746に記載されたような化学反応によって、水溶性ポリマ
ーを結合させることができる。好ましい結合の化学反応はアシル化およびアルキ
ル化である。本発明のmplリガンド誘導体を多数のポリマー性分子に結合させる
こ
とができる。例えば、誘導体に2〜6、好ましくは2〜5個の結合ポリマー基を含有
させてもよい。ポリマー基は通常はアミノ酸のαまたはεアミノ基の位置でタン
パク質に結合されるが、好適な反応条件下でポリマー基に結合するのに十分な反
応性があれば、タンパク質に結合したいずれのアミノ基にでもポリマー基を結合
させ得ることをも意図している。
好ましい態様では、mplリガンドに1個のポリマー分子を結合させる。このよ
うな場合、mplリガンドと反応させるために選択するポリマーは、アシル化のた
めの活性エステルまたはアルキル化のためのアルデヒドなどの単一の反応性基を
有するように改変すべきであり、これによって重合の程度を制御することができ
る。
ポリマーは分枝でも非分枝でもよい。好ましくは、最終生成物を治療用に使用
するためには、ポリマーは医薬として許容されるものである。水溶性ポリマーは
、例えば、ポリエチレングリコール、モノメトキシポリエチレングリコール、デ
キストラン、ポリ-(N-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレ
ングリコールホモポリマー、ボリプロピレンオキサイド/エチレンオキサイドコ
ポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えばグリセロール)およびポリビ
ニルアルコールからなる群から選択することができる。アシル化反応を介したmp
lリガンドの誘導体化のためには、選択されるポリマーは単一の反応性エステル
基を有するべきである。還元性アルキル化反応を介したmplリガンドの誘導体化
のためには、選択されるポリマーは単一の反応性アルデヒド基を有するべきであ
る。一般的に、水溶性ポリマーは天然に存在するグリコシル残基からは選択され
ないであろう。なぜならば、これらは通常、哺乳動物の組換え発現系によって、
より好都合に製造されるからである。ポリマーは、得られるmplリガンド誘導体
の生物学的活性を実質的に妨害または排除しないかぎり、どんな分子量のもので
もよい。
本明細書中で使用するために特に好ましい水溶性ポリマーはポリエチレングリ
コールであり、PEGと短縮して称する。本明細書で使用するポリエチレングリコ
ールまたはPEGは、モノ-(C1−C10)アルコキシ−またはアリールオキシ−ポリエ
チレングリコールなどの、他のタンパク質を誘導体化するのに使用されてきたい
ずれの形態のPEGをも包含することを意味する(米国特許第5,252,714号を参照さ
れたい)。
mplリガンドのペギル化は当業界で知られているペギル化反応のいずれかによ
り行われてもよい。例えば、Focus on Growth Factors 3(2):4-10(1992);EPO 15
4 316;EP 0 401 384;およびペギル化に関する本明細書に引用されたその他の刊
行物を参照のこと。ペギル化はアシル化反応または反応性ポリエチレングリコー
ル分子とのアルキル化反応により行われることが好ましい。
したがって、好ましい局面では、本発明は、PEG基がアシル基またはアルキル
基により結合されるペギル化されたmplリガンドに関する。先に説明したように
、このような生成物はモノ−ペギル化またはポリ−ペギル化されてもよい(例え
ば2−6個、好ましくは2−5個のPEG基を含む)。PEG基は一般にアミノ酸のα
アミノ基またはεアミノ基の位置でタンパク質に結合されるが、PEG基がタンパ
ク質に結合されたアミノ基(これは好適な反応条件下でPEG基に結合されるよう
になるのに充分に反応性である)に結合し得ることがまた意図されている。
PEG基は還元アルキル操作により結合され、5kdから50kdまでの分子量を有す
ることが好ましい。最も好ましい実施態様では、PEG-mplリガンドは約20kd(例
えば、20kd±2kd)の平均分子量を有するPEG基を有する。
特に好ましいmplリガンド誘導体は最初のアミノ酸のαアミノ基について単一P
EG基に結合された配列番号2のアミノ酸1-163に相当する誘導体であり、そのPEG
はPEGアルデヒド反応体との還元アルキル化反応により結合される。この型のmpl
リガンドが本明細書中に略号「PEG-rHuMGDF」により表される。
好ましい実施態様では、mplリガンドは宿主細胞にトランスフェクトされた外
来DNA配列の発現の産物である。すなわち、好ましい実施態様では、mplリガ
ンドは「組換えmplリガンド」である。組換えmplリガンドはこの目的に知られて
いるあらゆる細胞、例えば、CHO細胞中でつくられてもよい。好ましい宿主はバ
クテリア細胞、特に好ましくはE.coli細胞である。組換えmplリガンドはクロー
ニングおよびmplリガンドの発現に関して本明細書に引用された刊行物に記載さ
れた操作に従って好適に生成される。
従来の研究者らは天然ヒトmplリガンド(配列番号2のアミノ酸1-332)を含む組
成物について報告していたが、今までに、本明細書に示されたように組成
物成分と広範な安定性データとの関係報告した者はいなかった。こうして、mpl
リガンド組成物の安定性の予測が本発明の以前になされていたが、望ましい安定
性を有する組成物が特にトランケートされた誘導体化mplリガンドについて明ら
かに実証されていなかった。
以下に示されるデータに基いて、本発明者らは必要により少なくとも一種の水
溶性ポリマーに共有結合される、天然ヒトmplリガンドのアミノ酸1-332中のアミ
ノ酸7-151に相当するアミノ酸の配列を有する完全長またはトランケートされたm
plリガンド;グルタミン酸塩、リン酸塩、ヒスチジン、イミダゾール、および酢
酸塩から選ばれた緩衝剤:ソルビトール、蔗糖、マンニトール、グリセロール、
ポリエチレングリコール、および非極性アミノ酸から選ばれた賦形剤;必要によ
り、Tweenのような界面活性剤;必要により、グルタチオン、メチオニン、クエ
ン酸塩およびEDTAから選ばれた酸化防止剤またはキレート剤を含み、かつ好まし
くは5.0〜6.0の範囲のpHを有する或る種の安定な組成物を発見した。このような
組成物は液体(好ましくは、水性)であってもよく、凍結されていてもよく(好
ましくは、水性)、または凍結乾燥されていてもよい。
最終組成物中のタンパク質(mplリガンド)の濃度は一般に約0.1mg/ml〜5mg/
ml、好ましくは0.2mg/ml〜3mg/ml、特に好ましくは0.3mg/ml〜1mg/mlの範囲で
あるべきである。
緩衝剤は5〜20mM、特に好ましくは約10±2mMの濃度の酢酸塩であろう。特定
の緩衝剤および濃度の要約が下記の表1に示される。
組成物のpHは特別な緩衝剤およびその他の因子に応じて変化するであろう。
適当な酸性緩衝剤(例えば、酢酸塩)による増進された安定性に好ましいpH範囲
は4.0-6.0である。更に好ましい範囲は4.5-5.5であり、約5.0が最も好ましい実
施態様である。
組成物はまた賦形剤を含むべきである。幾つかの例示の賦形剤および代表的濃
度が表2に列挙される。
賦形剤は一般に等張性溶液を生じるような量で添加されるであろう。
組成物はアミノ酸を更に含んでもよく、これは或る場合に安定性を増進するで
あろう。アミノ酸は極性または非極性であってもよく、非極性アミノ酸が好まし
い。例示の極性アミノ酸はアルギニンおよびリジンであり、例示の非極性アミノ
酸はグリシン、プロリン、およびアラニンである。
酸化防止剤またはキレート剤がまた本発明の組成物中に含まれてもよい。好ま
しい酸化防止剤はEDTA、アスコルビン酸、グルタチオン、メチオニンおよびクエ
ン酸塩である。これらの薬剤の組み合わせ、例えば、クエン酸塩+EDTAがまた意
図されている。このような薬剤はmplリガンドの酸化を減少または排除するのに
適する量で含まれる。例示の濃度は0.1-10mM、好ましくは0.5-5mM、典型的には1
-3mMである。
界面活性剤または脂質がまた本発明の組成物中に含まれてもよい。幾つかの
代表的な界面活性剤はポリソルベートのTweenブランド(例えば、Tween 20およ
びTween 80)、Brij35、Pluronics(例えば、F-127およびF-68)、ドデシル硫酸ナ
トリウム、Triton(例えば、X-100)、ジミリストイルホスファチジルグルセロー
ル(DMPG)、PEGヒマシ油(例えば、PEG-40)、オレス−3−ホスフェート、ジエ
タノールアミンオレス−10−ホスフェート、および例えば、C8(カプリル)脂質
およびC14(ミリスチック)脂質を含む短鎖、長鎖単層小胞(SLUV)の混合物(例えば
、1:1)である。これらの界面活性剤/脂質は一般に表面への粘着または凝集のた
めのmplリガンドの損失を阻止するのに充分な量で含まれる。或る例示の界面活
性剤濃度は0.004mg/ml-50mg/ml、好ましくは0.004mg/ml-10mg/ml、最も好ましく
は0.006mg/ml-0.060mg/mlである。これらの界面活性剤/脂質を含ませる要望は
、mplリガンドの濃度が低く、例えば、特に0.2mg/ml以下のmplリガンドであると
きに、より大きいであろう。
このような組成物は液体であってもよく(好ましくは、水性)、凍結されてい
てもよく(好ましくは、水性)、または凍結乾燥されていてもよい。
凍結乾燥された組成物に関して、液体組成物と比較してタンパク質凝集が増大
する可能性がある。特に好ましい凍結乾燥された組成物は4.0-6.0の範囲内のpH
でグルタミン酸塩、蔗糖およびマンニトールの組み合わせを含む。特に好ましい
組成物のリストが下記の表3に示される。
本発明の組成物は「安定」であり、これはそれらがSECクロマトグラフィーの
みにより分析して37℃の温度で12週間の貯蔵後にインタクトなmplリガンド
誘導体の少なくとも約87%、好ましくは約90%、最も好ましくは約93%を保持す
ることを意味する(表4を参照のこと)。安定性の低さは、患者に許容できない
安全性についての懸念をもたらすため、安定性の程度は実用的な意味で重要であ
る。
本明細書に使用される「治療有効量」は被験者中で好適な生物学的効果、通常
、患者中で所定の条件および投与レジメについて治療効果を与える量をいう。
本発明の組成物は非経口、静脈内または皮下で全身投与し得る。全身投与され
る場合、本発明における使用のための治療組成物は発熱源を含まない生理的に許
される水溶液の形態であってもよい。選ばれる特別な経路は治療される症状に依
存するであろう。必要とされる投薬量は患者の血小板レベルおよび/または巨核
球レベルを上昇させるのに充分な量であり、治療される症状の重篤度、使用され
る投与の方法等に応じて変化するであろう。
本発明の方法および組成物により治療される症状は、一般に既存の巨核球/血
小板欠乏または将来予想される巨核球/血小板欠乏(例えば、計画された手術の
ため)を伴う症状である。このような症状は通常in vivoの活性mplリガンドの欠
乏(一時的または永久的)の結果であろう。血小板欠乏に関する一般用語は血小
板減少症であり、それ故、本発明の方法および組成物は一般に血小板減少症を治
療するのに有益である。
血小板減少症(血小板欠乏)は化学療法および種々の薬剤によるその他の療法
、放射線療法、手術、偶発的血液損失、およびその他の特定の症状を含む種々の
理由のために存在し得る。血小板減少症を伴い、本発明に従って治療し得る例示
の特定の症状は再生不良性貧血、突発性血小板減少症、血小板減少症を生じる転
移性腫瘍、全身性エリテマトーデス、巨牌腫、ファンコニ症候群、ビタミンB12
欠乏症、葉酸欠乏症、May-Hegglin奇形、Wiskott-Aldrich症候群、および発作性
夜間ヘモグロビン尿症である。また、エイズの或る種の治療が血小板減少症を生
じる(例えば、AZT)。或る種の創傷治癒障害がまた血小板の数の増加から利益を
得るかもしれない。
例えば、将来の手術のために予想される血小板欠乏に関して、本発明のmplリ
ガンド類似体は血小板についての要求の数日〜数時間前に投与し得る。急性
の状況、例えば、偶発かつ大量の血液損失に関して、mplリガンド類似体は血液
または精製血小板とともに投与し得る。
mplリガンド組成物はまた将来血小板またはその他の関連細胞を供与する計画
のある正常なヒト被験者に投与されてもよい。本発明の組成物の投与は、患者が
一度に供与し得る血小板および/または関連細胞の量を増大するであろう。
上記症状を治療するための方法に関係する投薬レジメは、薬剤の作用を変更す
る種々の因子、例えば、患者の年齢、状態、体重、性別および食事、感染症の重
篤度、投与の時点およびその他の臨床上の因子を考慮して、担当医師により決め
られるであろう。一般に、毎日のレジメは体重1キログラム当たりmplリガンド
類似体0.01-1000マイクログラムの範囲であるべきである。
また、本発明の組成物は、その他の症候並びに血小板欠乏を特徴とする症状の
治療に単独で、またはその他のサイトカイン、可溶性Mpl(すなわち、mplリガン
ド)受容体、造血因子、インターロイキン、増殖因子もしくは抗体と組み合わせ
て使用されてもよい。このような組成物は造血の一般的刺激物質、例えば、IL-3
またはGM-CSFと組み合わせて血小板減少症の幾つかの形態を治療するのに有益と
判明するものと予想される。その他の巨核球刺激因子、すなわち、meg-CSF、幹
細胞因子(SCF)、白血病抑制因子(LIF)、オンコスタチンM(OSM)、または巨核球
刺激活性を有するその他の分子がまたmplリガンドとともに使用されてもよい。
このような同時投与のための付加的な例示のサイトカインまたは造血因子として
、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-11、コロニー刺激因子-
1(CSF-1)、GM-CSF、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、EPO、インターフェロン−
α(IFN-α)、IFN-β、またはIFN-γが挙げられる。有効量の可溶性哺乳類Mpl受
容体を同時または連続的に投与することが更に有益なことがあり、これは巨核球
が一旦成熟形態に達すると巨核球を血小板に断片化させる効果を有することが明
らかである。こうして、PEG-mplリガンドの投与(成熟巨核球の数を高めるため
)、続いて可溶性Mpl受容体の投与(類似体を不活化し、成熟巨核球に血小板を
生じさせるため)は血小板生産を刺激する特に有効な手段であると予想される。
上記投薬量は治療組成物中のこのような付加的な成分を補償するように調節され
るであろう。治療された患者の経過は
通常の方法により監視し得る。
下記の実施例は本発明を更に充分に説明するために提示され、本発明の範囲を
限定するものと見なされるべきではない。
実施例1
下記の表4および5は下記の実施例の幾つかに示されたデータの要約である。
これらの実施例のそれぞれでは、試験したmplリガンドはPEG-rHuMGDFであり、こ
れは約20kDaの平均分子量を有するポリエチレングリコール基でN末端アミノ酸
のαアミノ基の位置でモノ−ペギル化された配列番号2のアミノ酸1-163を含む
。
1付加的な安定性を示すアッセイ、詳しくは、逆相クロマトグラフィーおよび陽
イオン交換クロマトグラフィーがSECと同様の結果を生じた。
主ピークの減少%は、4.0-6.0、好ましくは5.0-6.0のpH範囲が好ましいことを
示す。加えて、pH範囲4.0-6.0内の緩衝効果は、この範囲内の或る種の緩衝剤が
好ましくないことを示す。
ソルビトール、蔗糖、グリセロール、マンニトールおよびポリエチレングリコ
ールを含む、試験した全てのポリオールは同様の結果を示した。
NaCl、CaCl2、CuCl2、MgCl2、MnCl2、NiCl2、ZnCl2およびFeCl2を含む全ての
塩(1価および2価の両方)が同様の結果を示した。
アルギニン、およびリジンを含む、試験した全ての極性アミノ酸は同様の結果
を示した。
グリシン、プロリン、およびアラニンを含む、試験した全ての非極性アミノ酸
は同様の結果を示した。
EDTA、アスコルビン酸、グルタチオン、メチオニン、メチオニン+EDTAおよび
クエン酸塩を含む、試験した全ての酸化防止剤はA5OS(定義に関する実施例
2を参照のこと)を越えるPEG-rHuMGDFの安定性の実質的な増大を示さなかった
。
実施例2
pH 評価
A.出発物質: PEG-rHuMGDF
B.製剤:
10mM酢酸塩pH5.0、5%ソルビトール (A50S)
10mM酢酸塩pH4.0、5%ソルビトール (A40S)
10mMコハク酸塩pH3.5、5%ソルビトール (S35S)
10mMコハク酸塩pH4.0、5%ソルビトール (S40S)
10mMコハク酸塩pH5.0、5%ソルビトール (S50S)
10mMヒスチジンpH6.0、5%ソルビトール (H60S)
10mMイミダゾールpH6.0、5%ソルビトール (I60S)
10mM酒石酸塩pH4.0、5%ソルビトール (T40S)
10mMグルタミン酸塩pH4.0、5%ソルビトール (E40S)
10mMリン酸塩pH6.0、5%ソルビトール (P60S)
10mMリン酸塩pH7.0、5%ソルビトール (P70S)
10mMTrispH8.0、5%ソルビトール (T80S)
10mMヒスチジンpH5.0、5%ソルビトール (H50S)
10mMヒスチジンpH6.0、5%ソルビトール (H60S)
10mMヒスチジンpH7.0、5%ソルビトール (H70S)
10mMヒスチジンpH8.0、5%ソルビトール (H80S)
C.バイアル:0.5mg/mLのタンパク質濃度で入れられた3ccバイアル中1mL
D.温度&時点:37℃;表に示された時点
E.分析: HPLC:サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、
逆相クロマトグラフィー(RP)、
イオン交換クロマトグラフィー(IEX)
F.データ
表6−11は示された時間にわたる37℃のインキュベーション後のサイズ排除ク
ロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーおよび陽イオン交換クロマトグラフ
ィーによる主ピーク%を示す。
pHの評価−37℃にて指示時間にわたってインキュベートした後での
サイズ排除クロマトグラフィーによる主要ピーク(%) pHの評価−37℃にて指示時間にわたってインキュベートした後での
逆相クロマトグラフィーによる主要ピーク(%)
pHの評価−37℃にて指示時間にわたってインキュベートした後での
陽イオン交換クロマトグラフィーによる主要ピーク(%)
実施例3
Mpl リガンド濃度の評価
A.出発材料: PEG-rHuMGDF
B.処方:
10mM 酢酸塩 pH5.0、5%ソルビトール、2.0mg/ml (20A5S)
10mM 酢酸塩 pH5.0、5%ソルビトール、1.0mg/ml (10A5S)
10mM 酢酸塩 pH5.0、5%ソルビトール、0.5mg/ml (05A5S)
10mM 酢酸塩 pH5.0、5%ソルビトール、0.2mg/ml (02A5S)
C.バイアル: 3cc容のバイアルに所定のタンパク質濃度で1ml満たす
D.温度および時点: 37℃;表に示す時点
E.分析: HPLC:SEC、RP、IEX
F.データ
表12〜14には、37℃にて指示時間にわたってインキュベートした後でのサイズ
排除クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーおよび陽イオン交換クロマト
グラフィーによる主要ピーク(%)を示す。
Mplリガンド濃度の評価−指示時間37℃で
インキュベーションした後の主要ピーク(%)
表12
サイズ排除クロマトグラフィー
*Form.=処方
表13
逆相クロマトグラフィー
表14
陽イオン交換クロマトグラフィー
実施例4
賦形剤の評価
A.出発材料: PEG-rHuMGDF
B.処方:
10mM 酢酸塩 pH5.0、5%ソルビトール、5mM EDTA(A5SE)
10mM 酢酸塩 pH5.0、2%アラニン (A5A)
10mM 酢酸塩 pH5.0、1.6%グリシン (A5G)
10mM 酢酸塩 pH5.0、2.7%プロリン (A5P)
10mM 酢酸塩 pH5.0、3.5%リシン (A5K)
10mM 酢酸塩 pH5.0、4.3%アルギニン (A5R)
10mM グルタミン酸 pH5.0、9.3%ショ糖 (E5Su)
10mM グルタミン酸 pH5.0、5%ソルビトール (E5S)
C.バイアル: 3cc容バイアルにタンパク質濃度0.5mg/mlで1ml満たす
D.温度および時点: 37℃;表に示す時点
E.分析: HPLC:SEC、RP、IEX
F.データ
表15〜17には、37℃にて指示時間にわたってインキュベートした後でのサイズ
排除クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーおよび陽イオン交換クロマト
グラフィーによる主要ピーク(%)を示す。
賦形剤の評価−指示時間37℃で
インキュベーションした後の主要ピーク(%)
表15
サイズ排除クロマトグラフィー 表16
陽イオン交換クロマトグラフィー
表17
逆相クロマトグラフィー
実施例5
等張性の評価
A.出発材料: PEG-rHuMGDF
B.処方:
10mM 酢酸塩 pH5.0、9.3%ショ糖 (A5SU)
10mM 酢酸塩 pH5.0、5%マンニトール (A5MA)
10mM 酢酸塩 pH5.0、140mM NaCl (A5N)
10mM 酢酸塩 pH5.0、2%PEG 8000 (A5P8)
10mM 酢酸塩 pH5.0、2.5%グリセロール (A5G)
10mM 酢酸塩 pH5.0、5%ソルビトール、0.01%Tween20(A5ST)
10mM ヒスチジン pH6.0、5%ソルビトール (H6S)
10mM ヒスチジン pH6.0、5%ソルビトール、0.001%アスコルビン酸
(H6AA)
C.バイアル: 3cc容バイアルにタンパク質濃度0.5mg/mlで1ml満たす
D.温度および時点: 37℃;表に示す時点
E.分析: HPLC:SEC、RP、IEX
F.データ
表18〜20には、37℃にて指示時間にわたってインキュベートした後でのサイズ
排除クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーおよび陽イオン交換クロマト
グラフィーによる主要ピーク(%)を示す。
等張性の評価−指示時間37℃で
インキュベーションした後の主要ピーク(%)
表18
サイズ排除クロマトグラフィー
*Form.=処方
表19
逆相クロマトグラフィー 表20
陽イオン交換クロマトグラフィー
実施例6
抗酸化剤/キレート剤の評価
A.出発物質:PEG-rHuMGDF
B.処方:
10mM酢酸塩pH5.0、5%ソルビトール
3mMグルタチオン (A5S GT)
10mM酢酸塩pH5.0、5%ソルビトール
5mMメチオニン (A5S M)
10mM酢酸塩pH5.0、5%ソルビトール
5mMメチオニン、1mM EDTA (A5S ME)
10mM酢酸塩pH5.0、5%ソルビトール
1mMクエン酸塩 (A5S C)
10mM酢酸塩pH5.0、5%ソルビトール
0.5mMクエン酸塩 (A5S 05C)
10mM酢酸塩pH5.0、5%ソルビトール
1mM EDTA (A5S 1E)
10mM酢酸塩pH5.0、5%ソルビトール
0.5mM EDTA (A5S E)
C.バイアル:3cc容のバイアルにタンパク質濃度0.5mg/mlで1ml満たす。
D.温度および時点:37℃;表に示す時点
E.分析:HPLC:SEC、RP、IEX
F.データ
表21〜23は、37℃にて指示時間にわたってインキュベートした後でのサイズ排
除クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、および陽イオン交換クロマト
グラフィーによる主要ピーク(%)を示す。
抗酸化剤/キレート剤の評価−37℃で指示時間にわたってインキュベート
した後での主要ピーク(%)
表21
サイズ排除クロマトグラフィー
表22
逆相クロマトグラフィー
表23
陽イオン交換クロマトグラフィー
実施例7
界面活性剤の評価
A.出発物質:PEG-rHuMGDF
B.処方:
全ての処方は、5%ソルビトールおよび0.050mg/mlのPEG-rHuMGDFと共に10mM
酢酸塩(pH5.0)を含む。
004T20:0.004mg/mlのTween-20
006T20:0.006mg/mlのTween-20
010T20:0.010mg/mlのTween-20
040T20:0.040mg/mlのTween-20
060T20:0.060mg/mlのTween-20
004T80:0.004mg/mlのTween-80
006T80:0.006mg/mlのTween-80
010T80:0.010mg/mlのTween-80
040T80:0.040mg/mlのTween-80
060T80:0.060mg/mlのTween-80
C.データ
表24は、主要ピーク(%)に基づく逆相HPLC精製の結果を示す。D.結果
PEG-rHuMGDF処方物には、化学的安定性に悪影響を及ぼすことなしに物理的安
定性および回収率を増大させるために、Tweenのような界面活性剤を含有させて
もよい。Tween-20およびTween-80は、PEG-rHuMGDF処方物に最終濃度約0.060mg/m
lまで添加することが可能であり、この場合、過度のメチオニン酸化は起こらな
い。Tween-20およびTween-80は0.006mg/ml〜0.06mg/mlの濃度範囲で最も効果的
である。
実施例8
凍結乾燥した組成物
以下の表25は、mplリガンドを含む凍結乾燥した組成物について得られたデー
タをまとめたものである。これらの例の各々において、試験したmplリガンドはP
EG-rHuMGDFであり、これは配列番号2のアミノ酸1〜163を含み、N末端アミノ酸
のαアミノ基においてポリエチレングリコール基によりモノPEG化されており、
平均分子量が約20kDaである。表25〜27では、分析の前に、
凍結乾燥したPEG-rHuMGDFを注射用として約1mlの水で戻し、主要ピーク(%)
は、凍結乾燥の結果としてのPEG-rHuMGDFの回収率を表す。
注:Mplリガンド濃度は0.5mg/mlとした。
凍結乾燥したサンプルでは、サイズ排除により測定したところ、pHが6、7お
よび8では物理的安定性がさらに達成されることはなかった。
調べたショ糖の濃度範囲
調べた緩衝液(10mM濃度)の範囲
表27
アミノ酸(例えば、等張アルギニン、リシン、プロリンおよびヒスチジン)の
ような全ての安定化剤および非晶化剤(例えば、トレハロースおよびPEG)は凍
結乾燥の間に改善された安定性を示さなかった。
最良の主要ピーク回収率および最小レベルの凝集を示す処方:
10mMグルタメート、6%ショ糖、2%マンニトール、pH5.0
本発明はその好ましい実施形態と思われるものについて記載してきたが、開示
した実施形態に限定されるものではなく、それどころか、添付の請求の範囲の精
神および範疇に含まれる種々の修飾および等価物を包含しようとするものであり
、その範疇には、かかる修飾および等価物を全て包含するような最も広い解釈が
与えられるものとする。
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D,SZ,UG,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG
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TT,UA,UG,US,UZ,VN,YU,ZW
(72)発明者 トリューヘイト,マイケル,ジェイ.
アメリカ合衆国 91320 カリフォルニア
州,ニューバリー パーク,パメラ ウッ
ド ストリート 824