JP2001354951A - 摩擦材 - Google Patents

摩擦材

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 鉛などの有害物質を使わずに、摩擦材のμ−
v特性を向上させる。 【解決手段】 摩擦材は、銅合金から成るメタリック摩
擦材であって、黒鉛1〜20重量%と、セラミックス1
〜15重量%とを含有する。黒鉛は、粒度が50〜20
0μmであり、層状に配列される。セラミックスは、粒
度が50〜200μmである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、摩擦材、特に、銅
合金又は鉄合金から成るメタリック摩擦材あるいはサー
メット摩擦材に関する。
【0002】
【従来の技術】車両のクラッチ装置は、エンジン側のフ
ライホイールに取り付けられるもので、フライホイール
からトランスミッションのメインドライブシャフトへの
トルクの伝達とトルクの遮断とを切り替える装置であ
る。クラッチ装置は、主として、クラッチディスク組立
体と、クラッチカバー組立体とから構成されている。ク
ラッチディスク組立体は、トランスミッションから延び
るメインドライブシャフトに連結されたハブと、ハブに
トルクを伝達し得るようにハブに連結されたプレート部
材と、プレート部材の外周部に固定された摩擦連結部材
(クラッチディスク)とから構成されている。摩擦連結
部材は、例えば、環状のプレートと、プレートの両面に
固定された摩擦フェーシング(摩擦材)とから構成され
る。この摩擦フェーシングの材料として、銅系、あるい
は鉄系のメタリック摩擦材,サーメット摩擦材が存在す
る。
【0003】メタリック摩擦材やサーメット摩擦材は、
金属のもつ耐熱性、高面圧性を利用し、重車両やレース
車両用のクラッチ装置におけるクラッチディスクに使用
されている。これらの摩擦材から成る摩擦フェーシング
は、所定の材料を混入したものを加熱焼結するととも
に、芯板に焼結して製造する。例えば、銅系の摩擦材の
主成分は銅粉であり、黒鉛、セラミックス等が添加剤と
して配合されている。黒鉛は、滑らかな作動特性を与え
るための潤滑成分として添加される。また、シリカ等の
セラミックスは、摩擦抵抗の保持向上及び耐摩耗性向上
のための摩擦調整材として添加される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記のようなメタリッ
ク摩擦材やサーメット摩擦材は、耐熱性・耐摩耗性に優
れている反面、μ−v特性が負勾配をなす。すなわち、
摩擦材と相手材との摩擦摺動時において、相対速度が小
さくなるほど摩擦係数が高くなる傾向にある。したがっ
て、スティックスリップが発生しやすく、クラッチ装置
のクラッチディスクやブレーキ装置のブレーキ材料に使
用した場合には、いわゆるジャダーが生じる。
【0005】このジャダーを抑えるためには、より高い
潤滑性を確保するために、有害物質とされている鉛など
を摩擦材に含有させることが必要となる。しかし、環境
への配慮から、なるべく鉛などの有害物質を使用しない
摩擦材が求められている。本発明の課題は、鉛などの有
害物質を使わずに、摩擦材のμ−v特性を向上させるこ
とにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の摩擦材
は、銅合金又は鉄合金から成るメタリック摩擦材あるい
はサーメット摩擦材であって、黒鉛1〜20重量%と、
セラミックス1〜15重量%とを含有する。黒鉛は、粒
度が50〜200μmであり、層状に配列される。セラ
ミックスは、粒度が50〜200μmである。
【0007】ここでは、潤滑成分として黒鉛を1〜20
重量%含有させ、摩擦抵抗の保持及び耐摩耗性の確保の
ために50〜200μmの粒度のセラミックスを1〜1
5重量%含有させている。そして、従来よりも潤滑性が
向上するように、黒鉛を層状に配列している。このよう
に黒鉛を層状に配列すると、従来のように黒鉛がブロッ
ク状に含有されている摩擦材と違い、摩擦摺動によって
黒鉛が剥離する場合に、層状のものが1枚1枚剥がれる
ようになる。したがって、多少黒鉛が剥離しても、潤滑
性が保たれる。これに対し、従来のようにブロック状に
黒鉛が配されている場合には、黒鉛の剥離によって摺動
面が粗くなり、潤滑性が大きく損なわれる。
【0008】また、黒鉛の粒度が50μmより小さけれ
ば層状に配列させることが極めて難しく、黒鉛の粒度が
200μmよりも大きければ滑りが大きくなりすぎるた
め、ここでは黒鉛の粒度を50〜200μmとしてい
る。このように、本請求項の摩擦材では、含有させる黒
鉛を層状に配列することにより、鉛等の有害物質を含有
させることなく従来よりも潤滑性を向上させることがで
き、摩擦材のμ−v特性を向上させることが可能とな
る。
【0009】なお、摩擦材のμ−v特性は、黒鉛の粒度
や含有量を調整することによって正勾配にすることがで
きる。そして、摩擦材のμ−v特性が正勾配になれば、
ジャダーが生じにくくなる。請求項2に記載の摩擦材
は、請求項1に記載の摩擦材であって、黒鉛は天然黒鉛
である。
【0010】黒鉛には、大きく分けて天然黒鉛と人造黒
鉛とが存在するが、ここでは層状に配列しやすい(層状
になりやすい)天然黒鉛を潤滑物質として摩擦材に含有
させている。請求項3に記載の摩擦材は、請求項1又は
2に記載の摩擦材であって、セラミックスは、シリカ、
ムライト、あるいはジルコンサンドの単一物、又はシリ
カ、ムライト、及びジルコンサンドの少なくとも2つの
複合物である。
【0011】
【発明の実施の形態】<摩擦材の概略>本発明の一実施
形態に係る摩擦材は、金属マトリックスが銅合金から成
るメタリック摩擦材であり、例えばクラッチの摩擦フェ
ーシングに用いられる。滑らかな作動特性を与えるため
の潤滑成分として、天然黒鉛が用いられている。天然黒
鉛は、粒度50〜200μmで、1〜20重量%であ
る。
【0012】摩擦抵抗の保持向上及び耐摩耗性向上のた
めの摩擦調整材として、シリカ、ムライト、あるいはジ
ルコンサンドの単一物、又はシリカ、ムライト、及びジ
ルコンサンドの少なくとも2つの複合物が用いられてい
る。このセラミックスは、粒度50〜200μmで、1
〜15重量%である。製造工程では、初めに、銅粉末、
黒鉛粉末、及びセラミックス粉末が混入される。次に、
混合された粉末が、常温で高圧成形される。最後に、還
元雰囲気中で高温焼結される。
【0013】<摩擦材における黒鉛の配列>このように
して製造された摩擦材を図1に示す。この摩擦材には、
鱗片状の天然黒鉛が、層状に配列されている。この配列
方向(図1の左右方向)は、摩擦材が使用されるときに
相手材と摺動する方向である。図2(a)に、鱗片状の
黒鉛が層状に配列された本発明に係る摩擦材の断面構造
の概略を示す。鱗片状の黒鉛は、摺動面に沿って積層さ
れている。そして、図2(b)に示すように、摩擦材が
相手材と摺動すると、次第に黒鉛が層状に剥離してい
く。しかし、図2(b)に示すように層状に剥離するた
め、潤滑効果は長く維持され、面圧の著しい上昇も起こ
らない。すなわち、本発明に係る摩擦材は、耐摩耗性及
び摩擦性能の保持に対して有効なものとなる。
【0014】これに対し、図3(a)に示すような断面
構造を持つ従来の摩擦材の場合には、摩擦材が相手材と
摺動すると、図3(b)に示すように、黒鉛が粒子状あ
るいは塊状に粉砕されてマトリックスから脱落する。こ
れにより、摩擦材には脱落痕が存在するようになって、
面圧の上昇や面粗さの不均一から、さらに摩耗が促進さ
れるようになる。
【0015】<従来の摩擦材と本発明の摩擦材との比較
>従来の摩擦材及び本発明の摩擦材を回転体に装着し
て、摩擦によって相手材にトルク伝達させたときのトル
ク波形の測定結果を、図4に示す。ここに示すように、
本発明の摩擦材は、従来の摩擦材に比較してトルク振幅
が小さくなっている。
【0016】また、μ−v特性に関しては、従来の摩擦
材が負勾配であるのに対して、本発明の摩擦材は正勾配
を有している。これらの違いによって、本発明の摩擦材
は、クラッチの摩擦フェーシングとして使用したとき
に、従来の摩擦材に較べてジャダーの発生が少なくな
り、発進フィーリングが良好になる。
【0017】<本発明の摩擦材の特徴> (1)本発明では、潤滑成分として黒鉛を1〜20重量
%含有させ、摩擦抵抗の保持及び耐摩耗性の確保のため
に50〜200μmの粒度のセラミックスを1〜15重
量%含有させている。そして、従来よりも潤滑性が向上
するように、黒鉛を層状に配列している。このように黒
鉛を層状に配列することにより、摩擦摺動によって黒鉛
が剥離する場合に層状のものが1枚1枚剥がれるように
なるため、多少黒鉛が剥離しても潤滑性が保たれる。
【0018】また、黒鉛の粒度が50μmより小さけれ
ば層状に配列させることが極めて難しく、黒鉛の粒度が
200μmよりも大きければ滑りが大きくなりすぎるた
め、ここでは黒鉛の粒度を50〜200μmとしてい
る。 (2)本発明では、層状に配列しやすい(層状になりや
すい)天然黒鉛を潤滑物質として摩擦材に含有させるこ
とにしたため、層状に黒鉛を配列することが実現され、
鉛等の有害物質を含有させることなく従来よりも潤滑性
を向上させることができている。
【0019】なお、黒鉛の粒度や含有量を調整すること
によって、摩擦材のμ−v特性を正勾配としている。こ
れにより、ジャダーの発生が抑えられる。
【0020】
【発明の効果】本発明では、潤滑成分として摩擦材に1
〜20重量%含有させる黒鉛を層状に配列するため、摩
擦摺動によって多少黒鉛が剥離しても、潤滑性が保たれ
る。また、黒鉛の粒度を50〜200μmとしているた
め、黒鉛の層状配列の実現と、適度な滑り(潤滑性)と
が両立する。このように、本発明では、鉛等の有害物質
を含有させることなく従来よりも潤滑性を向上させるこ
とができ、摩擦材のμ−v特性を向上させることも可能
である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る摩擦材の断面状況を
示す図。
【図2】鱗片状の黒鉛が層状に配列された本発明に係る
摩擦材の断面構造の概略図。
【図3】従来の摩擦材の断面構造の概略図。
【図4】従来の摩擦材と本発明の摩擦材とのトルク波形
の測定結果の比較図。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) F16D 69/02 F16D 69/02 F // B22F 5/00 B22F 5/00 G C22C 38/00 304 C22C 38/00 304 Fターム(参考) 3J056 AA57 AA62 BA02 BE17 BE27 CA16 EA02 EA14 EA22 EA23 EA28 GA02 GA12 3J058 BA73 BA78 FA01 FA11 FA21 GA28 GA31 GA34 GA43 GA45 GA82 GA92 GA93 4K018 AA04 AA24 AB01 AB07 AC01 AD20 DA11 KA05

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】銅合金又は鉄合金から成るメタリック摩擦
    材あるいはサーメット摩擦材であって、 粒度が50〜200μmであり層状に配列される黒鉛1
    〜20重量%と、 粒度が50〜200μmであるセラミックス1〜15重
    量%と、を含有する摩擦材。
  2. 【請求項2】前記黒鉛は天然黒鉛である、請求項1に記
    載の摩擦材。
  3. 【請求項3】前記セラミックスは、シリカ、ムライト、
    あるいはジルコンサンドの単一物、又はシリカ、ムライ
    ト、及びジルコンサンドの少なくとも2つの複合物であ
    る、請求項1又は2に記載の摩擦材。
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