JP2001351567A - イオン付着質量分析装置のイオン源 - Google Patents

イオン付着質量分析装置のイオン源

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JP2001351567A JP2000169645A JP2000169645A JP2001351567A JP 2001351567 A JP2001351567 A JP 2001351567A JP 2000169645 A JP2000169645 A JP 2000169645A JP 2000169645 A JP2000169645 A JP 2000169645A JP 2001351567 A JP2001351567 A JP 2001351567A
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gas
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emitter
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Yoshiro Shiokawa
善郎 塩川
Megumi Nakamura
恵 中村
Toshihiro Fujii
敏博 藤井
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Abstract

(57)【要約】 【課題】イオン源内の空間電荷の形成を防ぎ、質量分析
において充分な量の被検出ガスイオンの生成、イオン源
外部への供給を可能にするイオン付着質量分析装置のイ
オン源を提供する。 【解決手段】このイオン源は、被検出ガスを内部空間に
導き入れるガス導入部16、電圧印加部13による給電
で金属イオンを発生する放出体14、開口11aを有す
る第1アパーチャ11を備え、被検出ガスに金属イオン
を付着させて被検出ガスイオンを生成し、被検出ガスイ
オンを開口を通して外部の質量分析機構へ送るように構
成され、さらに放出体の付近と第1アパーチャの開口の
付近の少なくともいずれか一方に電極を配置している。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はイオン付着質量分析
装置のイオン源に関し、特に、被検出ガスに正電荷の金
属イオンを付着させて質量分析するイオン付着質量分析
装置において空間電荷の形成を防ぐ構造を有するイオン
源に関する。
【0002】
【従来の技術】ガス分子を質量分析するには、電磁場内
における荷電粒子の運動が電荷と質量の比によって異な
ることを利用する。そのためガス分子の質量分析では、
ガス分子に正または負の電荷を帯びさせイオン化する必
要がある。ガス分子をイオン化させる方法には、従来、
電子衝撃イオン化法、化学イオン化法、大気圧イオン化
法、イオン付着イオン化法などがある。中でもイオン付
着イオン化法は、ガス分子に金属イオンが付着する際に
生ずる余剰エネルギが非常に小さいので、弱い結合部
(結合エネルギの低い部分)を含むガス分子を解離(分
裂)せずにイオン化できる。そのため、質量分析装置に
おいて被検出ガスをイオン化する方法としてイオン付着
イオン化法を用いれば、被検出ガス分子の正しい分子量
をイオン電流による電気信号(分子イオンピーク)とし
て計測することができ、低い結合エネルギを含むガスの
質量分析には大変有効である。ここで、「結合エネル
ギ」とは、分子中の結合部を一部でも解離(分解)する
ために要するエネルギのことである。
【0003】金属酸化物(絶縁物)を加熱すると、そこ
に含有された金属が正電荷のイオンとして放出される。
特にアルカリ金属を含有する酸化物を加熱すると、表面
から正電荷の金属イオンが容易に放出されることが古く
から知られている。イオン付着イオン化法は、この金属
イオンがガス分子の電荷の偏った場所に穏やかに付着す
る現象を利用しており、特にアルカリ金属イオンをガス
分子に付着させてイオン化することは、それぞれホッジ
(Hodges)、ボムビック(Bombick)、藤井などにより
報告されている(「Analytical Chemistry vol.48 No.6
P825 (1976)」、「Analytical Chemistry vol.56 No.3
P396 (1984)」、「Journal of AppliedPhysics vol.82
No.5 P2056 (1997)」)。
【0004】次に図面を参照して従来のイオン付着質量
分析装置のイオン源を説明する。図25は従来のイオン
付着質量分析装置におけるイオン源の代表的構成例を概
略的に示す図である。このイオン源は、中央部に開口1
01aが形成された第1のアパーチャ101と、この第
1アパーチャ101と接続されその内部に空間を有する
容器を形成する隔壁102とで外側部分が形成される。
第1アパーチャ101と隔壁102の間には絶縁部材1
03が設けられる。イオン源内の空間には、隔壁102
を電気的に絶縁して貫通する電圧印加部104と、イオ
ン源内にある電圧印加部104の任意な位置に取り付け
られた球状金属酸化物からなる放出体105と、放出体
105と隔壁102の間の領域であって第1アパーチャ
101側と反対の領域に配置されたリペラ電極106が
設けられる。イオン源の隔壁102には、被検出ガスお
よび他のガスをイオン源内に導入するためのガス導入部
107が設けられる。第1アパーチャ101は、隔壁1
02と絶縁部材103により電気的に絶縁され、かつ接
地電位に保持されている。電圧印加部104には、隔壁
102の外部に配置された電源(バッテリ)108,1
09が接続され、所要の電圧が印加されている。またリ
ペラ電極106にも隔壁102の外部に配置された電源
110によって必要な電圧が印加されている。外部から
の電気配線が隔壁102を通過するときには、隔壁10
2に設けられた絶縁部111を経由して配線が行われ
る。また図25において、放出体105と第1アパーチ
ャ101の間の領域112はイオン付着が行われる領域
である。
【0005】図26は、上記のイオン源内に内在する電
圧印加部104の一部と、その任意な位置に取付けられ
た放出体105と、第1アパーチャ101と、リペラ電
極106の部分を拡大して示した図である。放出体10
5は、この放出体105から放出される金属イオンが例
えばLi+の場合、Al23やSiO2などからなるアル
ミナシリケイトとLiを含有した酸化物(化合物)であ
るLi2Oなどとの混合物で作られている。
【0006】図25と図26において、ガス導入部10
7を介して被検出ガスとその他のガスの混合ガスを、真
空状態とした隔壁102と第1アパーチャ101に囲ま
れた空間に導入して100Pa程度の減圧雰囲気とす
る。このイオン源は、第1アパーチャ101側の外部に
真空ポンプを備えた質量分析機構等と接続されており
(図示せず)、真空ポンプより第1アパーチャ101に
設けられた開口101aを介してイオン源内の気体分子
を排気する。その他のガスは、金属イオンが付着しにく
い例えばN2などの不活性ガスであり、金属イオンが被
検出ガスに付着する際に生ずる余剰エネルギを奪いとる
ために導入される。放出体105に電源108,109
と電圧印加部104によって10V程度のバイアス電圧
を印加する。また第1アパーチャ101は接地電位であ
る。
【0007】さらに電圧印加部104は、それに電流を
流すことによりジュール熱を発生させ、電圧印加部10
4に取り付けられた放出体105を600℃程度に加熱
する。これにより、放出体105の表面に金属イオン
(Li+)が生成する。バイアス電圧(10V)を印加
された放出体105と接地電位(0V)である第1アパ
ーチャ101との間には電界が形成され、金属イオンは
正電荷であるために電位の低い第1アパーチャ101側
に引き出されて放出体105の表面から離脱(放出)
し、第1アパーチャ101の方向へ移送される。その
後、放出体105と第1アパーチャ101の間の領域1
12において、金属イオンはイオン源内に導入された被
検出ガスに付着してガスイオンを生成する。このガスイ
オンは第1アパーチャ101の開口101aよりイオン
源の外部に位置する図示しない質量分析機構へ移送され
る。
【0008】図26のa−a’上における電位の変化
は、リペラ電極106の位置をA、放出体105の位置
をB、第1アパーチャ101の位置をCとするとき、図
27に示すようになる。電界中の荷電粒子が正電荷の場
合では電位の低い方向へ、負電荷の場合では電位の高い
方向へ移送されるが、このときの荷電粒子の速度は電界
強度と密接な関係がある。図27における電界傾斜の傾
きの絶対値は電界強度を表している。電界が形成された
領域であって、荷電粒子の平均自由行程が当該領域の寸
法よりも充分に短い時には、移動する荷電粒子は領域内
に存在するガス分子などと衝突して、一旦、速度が低下
もしくは停止するが、電界によって再び加速される。荷
電粒子は、正電荷の場合は電位の低い方向へ、負電荷の
場合は電位の高い方向へ加速および減速運動を繰り返し
て、平均的には一定速度で移動する。よって荷電粒子の
平均的な速度は図27に示された電界傾斜の傾きの絶対
値に比例する。図27の横軸に対応する領域で、傾斜が
急である領域では高速で、傾斜が緩やかな領域では低速
で荷電粒子が移送される。
【0009】イオン付着質量分析装置の上記イオン源で
は、内部の雰囲気は、被検出ガスと例えばN2などの混
合ガスを導入して100Pa程度となっている。これに
対して電子衝撃イオン化型イオン源では10-2Pa程度
である。この時、金属イオンや被検出ガスイオンの平均
自由行程は0.07mm程度であり、イオン源内に存在
するガス分子などと1秒間に107回程度も衝突する。
従って金属イオンや被検出ガスイオンのそれぞれのイオ
ンは、非常に短い領域で加速運動および減速運動を繰り
返し、その平均的な速度は非常に遅い。それぞれのイオ
ンが低速であれば、所定の体積中に存在するイオンの
数、すなわちイオンの密度が高くなる。イオンの密度が
高くなると、イオン自らの電荷によって形成される電
荷、すなわち空間電荷が無視できなくなる。
【0010】また空間電荷の形成されやすい領域は主と
して放出体近傍である。その理由として、放出体が金属
イオンの発生源であり、イオン付着領域に拡散される前
の金属イオンが放出体表面という局所的な領域において
生成されて存在し、さらに放出体近傍における金属イオ
ンの拡散領域が狭い、つまり放出体近傍の領域はイオン
の流れに垂直な方向の断面積が小さいためである。従っ
て放出体近傍では、他の領域と比べてイオンの密度が高
くなっている。なお電界(静電)レンズなどを具備する
場合には、第1のアパーチャに設けられた開口近傍も空
間電荷が形成されやすくなる。
【0011】上記の空間電荷は、イオン源内の電界を乱
し、放出体表面に生成された金属イオンをイオン付着領
域に引出す力を低下させる。このため、金属イオンをイ
オン付着領域に充分な量で供給することができず、金属
イオンを被検出ガスに付着させる効率を低減させる。さ
らに空間電荷は、それぞれのイオンと反発するクーロン
力を発生させ、空間電荷の形成された領域に移送されて
くるイオンの移送方向を変えてイオン源内に分散させ、
またはイオン源内に滞留させる。その結果イオン源の外
部に充分な量の被検出ガスのイオンを移送することがで
きなかった。
【0012】ここで、単に金属イオンをイオン付着領域
に充分な量で供給するだけであれば、放出体に印加され
るバイアス電圧を高くして放出体と第1アパーチャの間
に形成される電界強度(電位差)を増大し、金属イオン
の移送力を増大させることが考えられる。しかしなが
ら、バイアス電圧を高くすると、放出体表面から離脱す
る金属イオンの放射エネルギを高くするだけでなくイオ
ン付着領域を移送する際の速度も高速となる。その結
果、金属イオンが被検出ガスに付着する効率は大幅に低
下する。さらに、衝突する際に生ずるエネルギも高くな
り、このエネルギよりも低い結合解離エネルギを有する
被検出ガスを解離(分裂)させることになる。よって、
イオン付着質量分析装置のイオン源では、金属イオンを
低速で穏やかに被検出ガスに付着させなくてはならない
ため、放出体に印加されるバイアス電圧を高くすること
はできない。
【0013】またイオンの初速を維持して移送が行われ
るようにするのであれば、イオン源内の圧力を低下さ
せ、イオンの平均自由行程を長くすることが考えられ
る。しかしながら、イオン付着イオン化法においては、
前述のように金属イオンが被検出ガスに付着する際に生
ずる余剰エネルギを例えばN2などのガスで奪い去らな
ければならず、そのために100Pa程度の高い圧力と
してN2などのガスとの衝突頻度を高くすることは、高
い付着効率で被検出ガスイオンを生成するための必須条
件である。よって、イオン付着質量分析装置のイオン源
では、上述の問題を解決する程度まで圧力を低下するこ
とができない。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】質量分析装置は、イオ
ン化された被検出ガスをイオン電流値(電気信号)とし
て検出する。そのためイオン付着質量分析装置のイオン
源における上述のような空間電荷の形成は、質量分析装
置の感度低下を引き起こし、被検出ガスの正しい質量分
析を行う上で大きな問題となっていた。
【0015】本発明の目的は、上記の問題に鑑み、イオ
ン源内の空間電荷の形成を防ぎ、質量分析において充分
な量の被検出ガスイオンの生成、イオン源外部への供給
を可能としたイオン付着質量分析装置のイオン源を提供
することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段および作用】本発明者ら
は、イオン付着質量分析装置の感度低下の原因が、当該
装置のイオン源内部に形成される空間電荷に起因するこ
とに着目し、この空間電荷を形成させないまたは取除く
ことによってその問題を解決するものである。そこで本
発明に係るイオン付着質量分析装置のイオン源は、上記
を目的を達成するために、次のように構成される。
【0017】本発明に係るイオン源は、イオン付着質量
分析装置のためのものであり、被検出ガスを内部空間に
導き入れるガス導入部と、例えば電圧印加部による給電
で加熱されることにより金属イオンを発生する放出体
と、開口を有する第1アパーチャを備え、被検出ガスに
金属イオンを付着させて被検出ガスイオンを生成し、被
検出ガスイオンを開口を通して外部の質量分析機構へ送
るように構成されている。特に、本発明に係る第1のイ
オン源の構成は、放出体の付近と第1アパーチャの開口
の付近の少なくともいずれか一方に電極を配置すること
によって特徴づけられる。
【0018】上記のイオン源の構成において、上記電極
の電位は放出体の電位よりも低く第1アパーチャの電位
よりも高いことが好ましい。また好ましくは、電極は1
つまたは複数の開口を有する導電体であり、またはメッ
シュ状形態を有する導電体である。
【0019】上記構成を有するイオン源では、イオン源
内の望ましい位置に新たな電極を配置し、意図的に、空
間電荷が形成されやすい領域で従来に比して大きな電界
を形成し、イオン付着領域では小さな電界を形成し、こ
れによりイオン源内に存在する金属イオンと被検出ガス
イオンの移送速度を制御する。そこで、放出体の付近、
第1アパーチャの開口の近傍等の所定の位置に電極を配
置する。これにより所望な電位分布を形成し、イオン源
内に形成される電界によって、金属イオンと被検出ガス
イオンは、空間電荷が形成されやすい領域では高速で、
イオン付着領域では低速となるようにイオン移送速度を
制御する。
【0020】第2のイオン源は、前述の基本的構成にお
いて、さらに放出体と第1アパーチャの開口とを直線で
結ぶ方向でかつ放出体を囲むように配置した抵抗体を設
けるように構成されている。
【0021】さらに上記の構成において、好ましくは、
上記抵抗体はコイル形状を有し、または複数の棒状、ま
たは円筒状である。
【0022】上記第2のイオン源では、イオン付着領域
であって放出体を含みこれから第1アパーチャの方向に
延びる抵抗体を用いて構成される。これにより、空間電
荷が形成されやすい領域では大きな電界を形成し、イオ
ン付着領域では小さな電界を形成するものであって、イ
オン源内に存在する金属イオンと被検出ガスイオンの移
送速度を制御するものである。
【0023】第3のイオン源は、上記の基本的構成にお
いて、さらに、放出体と第1アパーチャの間の領域で中
心軸から外れた位置に電子放出源を配置するように構成
される。
【0024】上記の第3のイオン源では、空間電荷が形
成されやすい領域に負電荷(電子など)を分散させて空
間電荷を電気的に中和する。電子放出源は加熱されて熱
電子を放出し、イオン源内の領域に電子を拡散させる。
電子放出源の電位は、イオン源内で最も高い電位でなけ
ればよいが、第1アパーチャよりも低い電位とすること
が好ましい。これにより第1アパーチャや放出体の方向
等の多方向へ拡散させる。ただしその配置位置をイオン
源を形成する隔壁の近傍とし、イオン移送のために、イ
オン源内に形成される電界に与える影響を極力少なくす
る。
【0025】第4のイオン源は、上記の基本的構成にお
いて、さらに、内部空間を形成する壁部における少なく
とも放出体の付近と第1アパーチャの付近に対応する部
分が、ガスの流れと垂直な方向における断面積を低減し
た形状を有するように構成される。
【0026】第4のイオン源では、空間電荷の形成され
やすい領域において、イオン源の容器を形成する壁部の
断面積を小さくし、ガスの流れと金属イオンおよび被検
出ガスイオンの流れ方向を概ね同一方向とし、かつガス
の流速を増大する。よって、前記金属イオンおよび被検
出ガスイオンは、ガスの流通に従って、イオン源外部へ
移送される。好ましくは、放出体近傍または第1アパー
チャの開口近傍、それらの両方の領域において、イオン
源内のガスの流れと垂直な方向における断面積を減少さ
せ、当該領域を流通するガスの流速を速くする。
【0027】上記のイオン源において、イオン源を形成
する隔壁が筒状の形態を有し、少なくとも両端方向に長
い径を有することが望ましい。イオン源内部のガスの流
れと垂直な方向における断面積は、放出体の近傍、また
は第1アパーチャの開口の近傍、またはそれらの両方の
領域がイオン付着領域より小さいように形成される。ま
たイオン源で、放出体が取り付けられる電圧印加部の一
部をメッシュ状または格子状にし、その上に放出体を堆
積または被膜したり、放出体が取り付けられる電圧印加
部の一部を複数の開口を有する平板状とすることも可能
である。
【0028】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の好適な実施形態
を添付図面に基づいて説明する。以下の説明は、構成に
ついては本発明が理解できる程度に概略的に示したもの
にすぎず、また数値においては例示に過ぎない。
【0029】第1の実施形態:図1は第1実施形態に係
るイオン源を示す。このイオン源は、ほぼ中心部に開口
11aを有する第1のアパーチャ11と、この第1アパ
ーチャ11と絶縁部材22aを介して接続されかつその
内部に空間が形成される容器形態の隔壁12と、隔壁1
2を絶縁部材22bで電気的に絶縁されて貫通する電圧
印加部13と、電圧印加部13におけるイオン源内に存
在する部分の任意の位置に取り付けられた例えば球状の
金属酸化物からなる放出体14と、放出体14と隔壁1
2の間であって第1アパーチャ11と反対側の領域に配
置されたリペラ電極15と、被検出ガスおよびその他の
ガスをイオン源内に導入するためのガス導入部16を備
える。第1アパーチャ11は接地され、0Vに保持され
る。電圧印加部13には電源(バッテリ)23,24が
接続され、電圧印加部13に所要の電圧を与え、所要の
電流を通電するように構成されている。またリペラ電極
15にも、当該リペラ電極を所定の電位に保持するた
め、電源25が接続され、その電気配線は絶縁部材22
cを介してイオン源の内部に引き込まれる。第1アパー
チャ11と隔壁12によって開口11aやガス導入部1
6を除いて密閉されたイオン源内の空間が形成される。
またガス導入部16は隔壁12の背面部分に設けられて
いる。上記のイオン源には、さらにイオン付着領域21
の近くであって放出体14の近傍に開口17aを有する
平板17が設けられている。この平板17は第2のアパ
ーチャとして扱う。第2アパーチャ17は、電源26に
接続された電気配線を絶縁部材22dを介してイオン源
内に引き込み、これに接続されることにより、所定の電
位に保持されている。
【0030】上記の構成において、放出体14はイオン
源内の任意な位置に取付けるとしたが、好ましくはイオ
ン源内の空間の中心または水平な中心軸18(図2に示
す)上に位置する電圧印加部13上に取り付けられる。
【0031】上記のイオン源は、イオン付着質量分析装
置において、真空ポンプを備えた質量分析機構(図示せ
ず)と接続され、イオン源内の空間と質量分析機構内の
空間は第1アパーチャ11に設けられた開口11aを介
して連通している。イオン源および質量分析機構の各内
部空間は上記真空ポンプにより排気され、真空状態とな
っている。ガス導入部16より被検出ガスおよびその他
のガスをイオン源内部に導入すると、圧力は上昇し、導
入されたガスは第1アパーチャ11に形成された開口1
1aを通過して真空ポンプにより排気される。第1アパ
ーチャ11はイオン源内の空間を質量分析機構内の空間
よりも高い圧力に保持し、それぞれの空間を概ね隔離す
る役割も担っている。さらに質量分析機構内部の空間は
第1アパーチャ11よりも低い電位を有している。この
電位によって、イオン源内部で生成された正電荷のイオ
ンを第1アパーチャ11の開口11aを通って質量分析
機構内部へ移送するものである。
【0032】図2は図1に示したイオン源の要部拡大図
である。電圧印加部13を介して放出体14に10V、
リペラ電極15に20V、第2アパーチャ17に2Vの
電圧を印加し、第1アパーチャ11を接地電位(0V)
とする。電圧印加部13に所定の電流を流して放出体1
4を600℃程度に加熱すると、放出体14の表面には
正電荷の金属イオンが生成される。このとき、中心軸1
8におけるリペラ電極15の位置をA、放出体14の位
置をB、第2アパーチャ17の位置をD、第1アパーチ
ャ11の位置をCとすると、中心軸18でのa−a’上
における電位の変化は図3において実線19で示したよ
うになる。図3における二点鎖線の部分20は第2アパ
ーチャ17がない場合であって従来技術の欄で説明した
図27で示した特性と同じものである。
【0033】金属イオンは、図3に示した範囲に対応す
る領域内でその傾斜に相当する電界と電荷の積である前
進力を得る。このため、金属イオンは放出体14の表面
から大きな速度で放出するが、第2アパーチャ17を通
過すると小さな速度となる。このことは、金属イオン
を、放出体14の表面または放出体14の近傍における
空間電荷が発生し増大しやすい領域において高速で移送
させると共に、イオン付着領域21内に拡散させて空間
電荷の発生と増大を低減し、その後、低速となり被検出
ガスに穏やかに付着させて被検出ガスイオンを生成す
る。被検出ガスイオンは第1アパーチャ11までの領域
を低速で移送し、第1アパーチャ11の開口11aを通
過して質量分析機構に移送される。
【0034】上記において、第2アパーチャ17による
新たな電極の電位は、放出体14よりも低く、かつ第1
アパーチャ11よりも高い電位である。より正確には、
新たな電極の配置される位置に相当する場所の電位は、
放出体14と第1アパーチャ11によって形成される電
界(図3で二点鎖線20で示される電界)上の電位より
も低くする。従って、放出体14の近傍であって第1ア
パーチャ11側の領域に第2アパーチャ17を設けるこ
とにより上述のような新たな電極を配置し、これにより
放出体近傍とイオン付着領域にそれぞれ異なる大きさの
電界を形成する。さらに新たな電極の電位を、上述の関
係を満たしながら、低くすることによって放出体側に急
傾斜の電界を形成して放出体近傍側の電界を大きくする
ことができる。従って、放出体14の表面および近傍に
存在するイオンを高速で移送させて空間電荷の発生を抑
制することができ、金属イオンの充分な供給が達成され
る。
【0035】第1の実施形態の変形例:上記の説明で
は、放出体14の近傍であって第1アパーチャ11側の
領域に新たに配置する電極を第2アパーチャ(1つの開
口を有する平板)17としたが、実施形態としてはこれ
に限定されない。例えば図4に示すごとく複数の孔等を
有するまたはメッシュ形態の半球状の電極31を用いる
こともできる。図4は前述の図2と同様な図である。こ
の半球状の電極31は、各部分の放出体14からの距離
が概ね等しくなるように配置され、さらに放出体14と
電圧印加部13に接触しないように配置されている。電
極31を図4に示された箇所に配置するために、図中、
上下の位置に抵抗体で作られた支持棒32が設けられ
る。その他の構成は図2に示した構成と同じであり、図
2に示された要素と同一の要素には同一の符号を付して
いる。
【0036】上記電極31の形状として、図5の正面図
(A)、側面図(B)に示される半球状の導電体31A
を用いることができる。この導電体31Aには、図中、
複数のスリット状開口部33が縦方向に並べて形成され
ている。図5において、破線で放出体14と一部の電圧
印加部13が示されている。これにより、放出体14と
導電体31Aとの位置関係が明らかにされ、導電体31
Aは放出体14のほぼ右半分を一定の距離間隔を設けて
被うごとく配置されている。
【0037】上記電極31の形状として、図6の正面図
(A)、側面図(B)に示される半球状の導電体31B
を用いることができる。この導電体31Bは、円状およ
び湾曲状の金属線の複数の片を適宜に組み合せて接続
し、メッシュ形態として形成されている。
【0038】さらに電極31は、半球形状でなく、例え
ばリング状もしくは平板状などの形態を有するものであ
って、放出体14の表面に生成される金属イオンに第1
アパーチャ11の方向への運動エネルギを付加するもの
であればよい。
【0039】また放出体14のリペラ電極15の側の表
面に生成される金属イオンにおいては、イオン源内に形
成された電界が金属イオンを放出体14に押し付ける方
向に働く。このため上述では放出体14の近傍における
第1アパーチャ11側の領域に新たな電極を配置すると
したが、図7に示すように放出体14の近傍であってリ
ペラ電極16の側の領域に上記電極31を配置するよう
に構成することも好ましい。これは、リペラ電極側の表
面に生成される金属イオンをすばやく離脱し、かつイオ
ン源内の領域に拡散させるためにである。このときリペ
ラ電極15の位置をA、新たな電極31の位置をD、放
出体14の位置をB、第1アパーチャ11の位置をCと
すると、中心軸18におけるa−a’上における電位の
変化は図8に示すようになる。この電位の変化特性によ
って、放出体14のリペラ電極15の側の表面に生成さ
れた金属イオンは、電極31の側に離脱し、拡散され
る。しかしながら、リペラ電極15と第1アパーチャ1
1、新たな電極31と第1アパーチャ11の間には、電
圧印加部13が配置された箇所を除けば全体的に第1ア
パーチャ11の方向に正電荷の荷電粒子を移送する電界
が形成されている。よって金属イオンは放出体14の左
側に配置された新たな電極31の近傍に滞留せず、放出
体14と第1アパーチャ11の間の領域に移送される。
【0040】ガスイオンを質量分析する質量分析装置の
イオン源には、しばしば内部で生成されたイオンを収集
して質量分析機構に移送するため、電界(静電)レンズ
が備えられる。電子衝撃イオン化法を用いたイオン源に
は、静電レンズが組み込まれることが多い。電子衝撃イ
オン化法の被検出ガスをイオン化する際の圧力は10 -2
Pa程度であり、イオン付着イオン化法のイオン化圧力
より1/10000の圧力である。よって、イオン源内
におけるガス分子およびイオンの平均自由行程はイオン
付着イオン化法の10000倍の長さである。さらに電
子衝撃イオン化法ではイオン源内に形成される電界(電
位差)を高くすることができるので、空間電荷を発生し
増大することなく、静電レンズによるイオンの収集が可
能である。
【0041】しかしながら、イオン付着イオン化法にお
いて、静電レンズを配置することによるイオンの収集は
空間電荷の発生および増大を引き起す。該イオン源では
前記電界レンズによってイオンが収集され、空間電荷の
発生及び増大が起こりやすい領域は第1アパーチャ11
の開口11aの近傍である。
【0042】そこで本実施形態によるイオン源は図9と
図10に示すように変形することができる。この変形例
では、第1アパーチャ11の開口11aの近傍に新たな
電極34を配置する。電極34の形態は好ましくは前述
の電極31と同じものである。図9においてリペラ電極
15の電位は20V、放出体14の電位は10V、電極
31の電位は8V、第1アパーチャ11は接地電位(0
V)とされる。放出体14と第1アパーチャ11の中間
位置には電界レンズ35が配置され、その電位は6Vと
する。図9のa−a’上における電位の変化は図10の
ようになる。図10によれば、第1アパーチャ11の開
口11aの近傍において、イオンは高速となって開口1
1aを経由して質量分析機構へ移送される。開口11a
の近傍に配置される電極34は、前述した第2アパーチ
ャ、メッシュ状電極と同様な作用を有し、第1アパーチ
ャ11との間に新たな電位を形成し、金属イオンおよび
被検出ガスイオンに開口11aの方向への運動エネルギ
を付加するものであればよい。
【0043】以上のごとく第1の実施形態によるイオン
源は、その内部空間に存在する金属イオンおよび被検出
ガスイオンの移送を電界によって制御するため、新たな
電極を配置した。また電極の配置については、前述した
放出体近傍の第1アパチャ側の領域、放出体近傍のリペ
ラ電極側領域、第1アパーチャの開口近傍の領域の配置
を組み合せて例えば図11に示すごとく複合的に配置さ
せることもできる。
【0044】第2の実施形態:図12は、本発明に係る
イオン源の第2の実施形態を示す。この実施形態では、
イオン源の内部空間にコイル状の抵抗体41を配置した
構成を採用している。その他の構成は前述の第1実施形
態と同じである。図12において図1で説明した要素と
実質的に同一の要素には同一の符号を付している。
【0045】抵抗体41は、リペラ電極15と第1アパ
ーチャ11の間の領域であって、放出体14と第1アパ
ーチャ11に設けられた開口11aとを直線で結ぶ方向
(中心軸18の方向)とコイル状抵抗体41の軸方向が
同一方向になるように配置される。コイル状抵抗体41
の一端は放出体14の近傍のリペラ電極15側の領域に
位置し、他端は放出体14の近傍の第1アパーチャ11
側の領域に位置する。抵抗体41には、上記一端側にお
いて高い電位を作るための電源42と、上記他端側にお
いて所定の電位を作るための電源43が接続されてい
る。
【0046】抵抗体41のリペラ電極15側の一端から
電源42によって電圧を印加すると、径方向の中心にお
ける電位は軸方向に進むにつれて減少する電位となる。
つまり、抵抗体41に囲まれた軸方向の電界は、リペラ
電極15側の領域から第1アパーチャ11側の領域に向
けて正電荷の荷電粒子を移送する電界を形成する。これ
により放出体14の表面に生成された金属イオンは、上
記電界によって第1アパーチャ11の方向に移送され
る。抵抗体41の各部の電位は、リペラ電極15の電位
より低く、放出体14よりも高い電位であり、その電界
の傾斜はリペラ電極と放出体、放出体と第1アパーチャ
の間に形成された電界の傾斜よりも急なものとすること
が好ましい。
【0047】例えば、抵抗体41が12kΩの全抵抗か
らなる場合、抵抗体41の上記一端に接続される電源4
2の電圧を14V、上記他端に接続される電源43を2
V、電流を1mA程度とし、かつこのときのリペラ電極
15を20V、放出体14を10V、第1アパーチャ1
1を接地電位(0V)とすると、図12の中心軸18上
のa−a’の電位の変化は、リペラ電極の位置をA、放
出体の位置をB、第1アパーチャ11の位置をC、抵抗
体41の上記一端の位置をD、上記他端の位置をEとす
るとき図13に示すごとくなる。図13で明らかなよう
に、放出体14の表面に生成された金属イオンは、放出
体14の近傍で高速で第1アパーチャ11側へ移送さ
れ、その後低速となり、被検出ガスに付着させることが
できる。その結果、空間電荷の発生および増大を低減
し、質量分析機構へ被検出ガスイオンを安定的に供給す
ることができる。
【0048】なお、特に電界レンズ35などを用いる場
合、第1アパーチャ11に設けられた開口11aの近傍
にも空間電荷が発生および増大しやすくなる。そこで図
14のように、上述のコイル状抵抗体41を開口11a
の近傍まで延長することもできる。ただし抵抗体41は
金属イオンが被検出ガスに付着する際のエネルギを低く
するため、イオン付着領域にある抵抗体41は巻き数を
減らして、その領域における抵抗値を低減している。
【0049】抵抗体41はコイル状のものに限定されな
い。図15のように放出体14と第1のアパーチャ11
の開口11aの間であって、イオンが飛行する領域を囲
むように棒状の抵抗体44を複数配置したものであって
もよい。ただし棒状の抵抗体44の電気抵抗は、両端で
高く、中央部で低くすることが好ましい。この棒状の抵
抗体44には、例えば棒状の軸体表面に軸体端部と中央
部でそれぞれ物質の異なる金属膜44aを皮膜させたも
のであり、端部に皮膜される物質は、中央部に皮膜され
る物質よりも高い比抵抗を有する物質としたものであ
る。また金属膜を端部で薄く、中央部で厚く皮膜させた
ものであってもよい。
【0050】以上のごとく第2の実施形態は、放出体1
4と第1アパーチャ11に形成された開口11aを直線
で結ぶ方向に、放出体14を囲むように配置され例えば
4本の棒状抵抗体を用いて構成されたものである。
【0051】第3の実施形態:図16は、本発明に係る
イオン源の第3の実施形態を示す。この実施形態では、
イオン源内で電子放出源を配置している。すなわち、放
出体14と第1アパーチャ11の間の領域であって、放
出体と第1アパーチャの開口11aを直線で結ぶ領域か
ら外れた位置に電子放出源であるフィラメント51を配
置する。配置されるフィラメント51は複数であっても
よい。その他の構成は、第1実施形態で説明された構成
と同じであり、同一の要素には同一の符号を付してい
る。
【0052】この実施形態においてもリペラ電極15を
20V、放出体14を10V、第1アパーチャ11を接
地電位(0V)とし、さらにフィラメント51に電流を
流して加熱する。フィラメント51の電位を−5Vとす
ると、このときフィラメント51はイオン源内の領域に
電子を放出し拡散する。フィラメント51から放出され
る電子が適量であれば、被検出ガスイオンに衝突してイ
オンを電気的に中和することなく、イオン源内の領域に
金属イオン、被検出ガスイオン、および電子を混在させ
て空間電荷を緩和することができる。特に、正電荷のイ
オンによる空間電荷で電位が高くなった領域に電子が集
中するので、効率的に空間電荷の発生を防止することが
できる。その結果、イオン源内の領域における空間電荷
の発生を抑制することができ、前記金属イオン及び被検
出ガスイオンの滞留を防ぐことができる。
【0053】なお上述では、電子放出源の電位をイオン
源内で最も低い電位とし、配置位置を放出体14と第1
アパーチャ11との間の領域としているが、本発明はこ
れに限定されない。電位については、電子は電位の高い
方向へ引き寄せられるので、少なくともイオン源内で最
も高い電位でなければよい。また配置位置については、
イオンの移送の障害とならないように放出体14と第1
アパーチャ11の開口11aを直線で結ぶ領域から外れ
た領域であればよい。なお、電子放出源の電位が放出体
と第1アパーチャの間の中心軸上の電界に与える影響を
少なくするために、イオン源を形成する隔壁12の近傍
に配置されることが好ましい。
【0054】第4の実施形態:図17は本発明に係るイ
オン源の第4の実施形態を示す。図17において、図1
で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を
付している。この実施形態では、イオン源を形成する隔
壁12の一端にガス導入部16、他端に絶縁部材22a
を介して第1アパーチャ11を設け、隔壁12からなる
容器は円筒形状の容器を形成している。イオン源の内部
に導入されるガス分子は、第1アパーチャ11に形成さ
れた開口11aを通って質量分析機構内部の空間を経て
真空ポンプにより排気される。真空ポンプの排気速度は
一定であり、イオン源内に導入されるガスの流量も一定
の場合、イオン源内部のガスの流れに垂直な方向におけ
る断面積を低減すると、イオン源内を流通するガスの流
速が増大する。ここで、イオン付着イオン化法を用いた
イオン源では、その内部の圧力は100Pa程度であ
り、この圧力におけるガス分子は連続流体(粘性流体)
の性質を有する。従ってガスの流速が増大すると、イオ
ン源内に存在する金属イオンおよび被検出ガスイオン
は、ガス分子からの運動量付与により、第1アパーチャ
11に形成された開口11aを通過してイオン源外部へ
移送される。すなわちガスの流れに乗って移送される。
【0055】放出体14が取付けられる電圧印加部13
は、図18や図19に示すように、少なくともイオン源
内のガス流通方向と同方向に伸びる部分を有するように
形成されることが好ましい。これにより、円筒状の容器
形態を形成する隔壁12の径方向における断面積をより
小さくすることができる。
【0056】上記説明ではイオン源を形成する隔壁12
を円筒状としたが、本発明はこれに限定されない。少な
くとも放出体14の近傍、または第1アパーチャ11の
開口11aの近傍、またはそれら両方の領域で、ガスの
流れと垂直な方向における断面積を低減した形状であれ
ばよい。この一例として図20のように放出体14の近
傍および第1アパーチャ11の開口11aの近傍の断面
積を低減したものがある。このイオン源によると、空間
電荷の形成されやすい領域ではガスの流速が増大し、こ
の領域に存在する金属イオンおよび被検出ガスイオンを
ガスの流通によって移送し、かつイオン付着領域におい
ては、ガスの流速が低減し拡散する方向にイオンを移送
することができる。
【0057】またイオン源内の領域が図20で説明した
ものと同等となるように、当該領域に相当する位置であ
って、イオン源を形成する隔壁12の内面に疎流体を配
置して、ガスの流れに垂直な方向における断面積を低減
したものであってもよい。
【0058】第4の実施形態の変形例:放出体表面に生
成される金属イオンとガスの接触面を増大するため、図
21と図22に第4実施形態の変形例を示す。図21の
構成では上記放出体14をより小さくして形成された放
出体61を電圧印加部に複数取付けている。図22の構
成ではイオン源内に存在する電圧印加部13の一部をメ
ッシュ状部分13aとし、その表面に放出体を概ね一様
に堆積させている。図21と図22において、その他の
構成については、先の実施形態で説明した要素と同じで
あるので、同一要素には同一の符号を付している。
【0059】電圧印加部13のメッシュ状部分13a
は、例えば図23、図24に示したように円形状または
湾曲状の細い金属線を用いて形成されたものである。ま
た上記では電圧印加部13の一部をメッシュ状とした
が、本発明はこれに限定されず、複数の開口を有する平
板状部材または半球状部材を用いてもよい。
【0060】なお上述の電圧印加部13は、本発明の第
1実施形態〜第3実施形態においても用いることができ
る。
【0061】以上の本発明の実施形態の説明において、
本発明は上述の第1〜第4の実施形態のみに限定され
ず、各実施形態を複合したものであってもよい。また上
述ではイオン源内にリペラ電極を配置したもので説明し
たが、このリペラ電極は本発明によるイオン源において
必ずしも必要な構成要素ではない。
【0062】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように本発明によ
れば、第2アパーチャや抵抗体等を設けるように構成し
たため、イオン源内の電位分布が改善され、空間電荷が
形成されやすい領域で大きな電界を作り、イオン付着領
域では小さい電界を作ることにより、イオン源内におい
て空間電荷の発生および増大による金属イオンおよび被
検出ガスイオンの滞留を防ぐことができる。従って被検
出ガスイオンの生成効率を向上し、かつ質量分析機構に
安定的に被検出ガスイオンを供給することができる。本
発明によるイオン源をイオン付着質量分析装置のイオン
源として用いれば、ハロゲンガスや有機系ガスなどの解
離しやすいガスであって、従来、質量測定の困難であっ
たガスの質量分析を正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るイオン源の第1実施形態を概略
的に示す縦断面図である。
【図2】 第1実施形態の要部を拡大して示す縦断面図
である。
【図3】 図2に示したa−a’線上の電位分布を示す
図である。
【図4】 第1実施形態の変形例を示し、複数の開口を
有する半球状の電極を設けたイオン源の要部の拡大縦断
面図である。
【図5】 複数の開口を有する半球状電極の実施形態を
示し、正面図(A)と側面図(B)を示す図である。
【図6】 メッシュ状の半球状電極の実施形態を示し、
正面図(A)と側面図(B)を示す図である。
【図7】 第1実施形態の変形例を示すイオン源の要部
の拡大縦断面図である。
【図8】 図7に示した実施形態におけるa−a’線上
の電位分布を示す図である。
【図9】 第1実施形態の他の変形例を示すイオン源の
要部の拡大縦断面図である。
【図10】 図9に示した実施形態におけるa−a’線
上の電位分布を示す図である。
【図11】 第1実施形態の他の変形例を示すイオン源
の要部の拡大縦断面図である。
【図12】 本発明に係るイオン源の第2実施形態の要
部を拡大して概略的に示した縦断面図である。
【図13】 図12に示した実施形態におけるa−a’
線上の電位分布を示す図である。
【図14】 第2実施形態の第1の変形例を示すイオン
源の要部の拡大縦断面図である。
【図15】 第2実施形態の第2の変形例を示すイオン
源の要部の拡大縦断面図である。
【図16】 本発明に係るイオン源の第3実施形態の要
部を拡大して概略的に示した縦断面図である。
【図17】 本発明に係るイオン源の第4実施形態を概
略的に示した縦断面図である。
【図18】 第4実施形態の変形例を示す部分的な縦断
面図である。
【図19】 第4実施形態の他の変形例を示す部分的な
縦断面図である。
【図20】 第4実施形態の他の変形例を示す部分的な
縦断面図である。
【図21】 第4実施形態の他の変形例を示す部分的な
縦断面図である。
【図22】 第4実施形態の他の変形例を示す部分的な
縦断面図である。
【図23】 図22で示された第4実施形態の他の変形
例で使用されるメッシュ部分の第1例を示す正面図
(A)と側面図(B)を示す図である。
【図24】 図22で示された第4実施形態の他の変形
例で使用されるメッシュ部分の第2例を示す正面図
(A)と側面図(B)を示す図である。
【図25】 従来のイオン源の代表的な構成例を示す縦
断面図である。
【図26】 図25に示したイオン源の要部を拡大して
示した縦断面図である。
【図27】 図26に示したa−a’線上の電位分布を
示す図である。
【符号の説明】 11 第1のアパーチャ 12 隔壁 12a 開口 13 電圧印加部 14 放出体 15 リペラ電極 16 ガス導入部 17 平板(第2のアパーチャ、電極) 31 電極 31A,31B 電極 34 電極 41 コイル状抵抗体 44 抵抗体 51 フィラメント

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 被検出ガスを内部空間に導き入れるガス
    導入部と、金属イオンを発生する放出体と、開口を有す
    る第1アパーチャを備え、前記被検出ガスに前記金属イ
    オンを付着させて被検出ガスイオンを生成し、前記被検
    出ガスイオンを前記開口を通して外部の質量分析機構へ
    送るイオン付着質量分析装置のイオン源において、 前記放出体の付近と前記第1アパーチャの開口の付近の
    少なくともいずれか一方に電極を配置することを特徴と
    するイオン付着質量分析装置のイオン源。
  2. 【請求項2】 前記電極の電位は前記放出体の電位より
    も低く前記第1アパーチャの電位よりも高いことを特徴
    とする請求項1記載のイオン付着質量分析装置のイオン
    源。
  3. 【請求項3】 前記電極は少なくとも1つの開口を有す
    る導電体であることを特徴とする請求項1または2記載
    のイオン付着質量分析装置のイオン源。
  4. 【請求項4】 前記電極はメッシュ状形態を有すること
    を特徴とする請求項1または2記載のイオン付着質量分
    析装置のイオン源。
  5. 【請求項5】 被検出ガスを内部空間に導き入れるガス
    導入部と、金属イオンを発生する放出体と、開口を有す
    る第1アパーチャを備え、前記被検出ガスに前記金属イ
    オンを付着させて被検出ガスイオンを生成し、前記被検
    出ガスイオンを前記開口を通して外部の質量分析機構へ
    送るイオン付着質量分析装置のイオン源において、 前記放出体と前記第1アパーチャの前記開口とを直線で
    結ぶ方向でかつ前記放出体を囲むように配置した抵抗体
    を設けたことを特徴とするイオン付着質量分析装置のイ
    オン源。
  6. 【請求項6】 前記抵抗体はコイル形状を有することを
    特徴とする請求項5記載のイオン質量分析装置のイオン
    源。
  7. 【請求項7】 前記抵抗体が複数の棒状であることを特
    徴とする請求項5記載のイオン質量分析装置のイオン
    源。
  8. 【請求項8】 被検出ガスを内部空間に導き入れるガス
    導入部と、金属イオンを発生する放出体と、開口を有す
    る第1アパーチャを備え、前記被検出ガスに前記金属イ
    オンを付着させて被検出ガスイオンを生成し、前記被検
    出ガスイオンを前記開口を通して外部の質量分析機構へ
    送るイオン付着質量分析装置のイオン源において、 前記放出体と前記第1アパーチャの間の領域で中心軸か
    ら外れた位置に電子放出源を配置することを特徴とする
    イオン付着質量分析装置のイオン源。
  9. 【請求項9】 被検出ガスを内部空間に導き入れるガス
    導入部と、金属イオンを発生する放出体と、開口を有す
    る第1アパーチャを備え、前記被検出ガスに前記金属イ
    オンを付着させて被検出ガスイオンを生成し、前記被検
    出ガスイオンを前記開口を通して外部の質量分析機構へ
    送るイオン付着質量分析装置のイオン源において、 前記内部空間を形成する壁部における前記放出体の付近
    と前記第1アパーチャの付近に対応する部分が、ガスの
    流れと垂直な方向における断面積を低減した形状を有す
    ることを特徴とするイオン付着質量分析装置のイオン
    源。
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