JP2001347355A - ダイキャスト用プランジャーチップとその製造方法 - Google Patents

ダイキャスト用プランジャーチップとその製造方法

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JP2001347355A
JP2001347355A JP2000170381A JP2000170381A JP2001347355A JP 2001347355 A JP2001347355 A JP 2001347355A JP 2000170381 A JP2000170381 A JP 2000170381A JP 2000170381 A JP2000170381 A JP 2000170381A JP 2001347355 A JP2001347355 A JP 2001347355A
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plunger
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die casting
die
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Heiichi Koide
平一 小出
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TAIRA GIKEN KK
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Abstract

(57)【要約】 【課題】ダイキャストの鋳造作業において、鋳造時に使
用されるプランジャーオイル等の潤滑剤を低減でき、し
かも、スリーブとかじりを生じることが無い安価なダイ
キャスト用プランジャーチップを提供する。 【解決手段】ダイキャスト用プランジャーチップ1の母
材2をオーステンパ球状黒鉛鋳鉄、あるいは、ボロナイ
ジング処理した鉄で形成すると共に、該ダイキャスト用
プランジャーチップ1の表面2fの摺接部分の一部に固
体潤滑材3としてモリブデンを配設して、ダイキャスト
用プランジャーチップを構成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ダイキャスト鋳造
において、スリーブとのかじりを防止でき、しかも安価
に製造できるダイキャスト用プランジャーチップとその
製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】鋳造法の一つであるダイキャストは、A
l,Zn,Mg,Cu合金等の溶融合金を金型に高速高
圧で圧入し急速凝固させる鋳造方法である。そのためダ
イキャストではスリーブの一端に開口された供給口から
アルミ合金等の溶湯を所定量供給し、その内部に貯めた
溶湯をダイキャストマシンのプランジャー装置のロッド
の先端に設けたプランジャーチップで高速かつ高圧で金
型内に押出して金型内に溶湯を充填して製品を成形する
鋳造方法であり、特に薄肉物の製造が可能であり、ま
た、大量生産に適しているので、自動車、通信機器、日
用品、カメラ等の部品製造に用いられている。
【0003】このように高温・高圧(高荷重)という苛
酷な条件下で使用されているダイキャストマシンのスリ
ーブとプランジャーチップは、従来技術においては熱間
強度のみが考慮されており、両者とも同材質のSKD材
を使用し、図2及び図3に示すような形状に製作されて
いる。
【0004】ダイキャストにおいては、スリーブ内に入
れられた溶融した金属は、スリーブやプランジャーチッ
プに熱を奪われ冷却が始まる。この冷却が始まった溶湯
を完全に凝固する前に金型内に充填しなければならな
い。そのために高速で、0.01〜0.7sの短時間で
スリーブ内の溶湯をプランジャーチップで押し出して金
型内へ充填するのであるが、この際、速度が遅すぎると
スリーブ内の溶湯の表面が波打ちしながら移動するので
ガスを巻込む傾向が有り、また、速すぎると乱流の発生
によるガスの巻込みが発生しやすくなる。また、金型内
においては、射出速度が速い程ガスを巻込みやすく成
る。経験的に60m/s以上ではスリーブとプランジャ
ーチップの焼付きが発生する事が知られているので、通
常30〜55m/sの範囲で射出されている。
【0005】また、プランジャチップが高速で移動して
溶湯を一挙にキャビティ内に流し込むと、溶湯には必然
的に高圧が作用することになる。
【0006】このように、高温の溶湯を高圧かつ高速で
キャビティ内に流し込むためにはスリーブとプランジャ
チップとの間の相対速度が高くなり、焼付き現象が発生
し、磨耗が促進されるのである。
【0007】特に、高速で摺動する金属同士の摩耗は、
相接する金属面上の微小突起部が金属溶着を起こし、こ
の溶着部分が摺動運動によって引き離される時に、この
溶着部分の一部が一方に奪取されて摩耗が生じる溶着摩
耗であり、この金属溶着が過度に発生すると、一方の金
属に奪取されずに双方の一部が溶着したまま摺動できな
くなる状態、即ち、焼付現象となり、これが発生すると
ダイキャストマシンの修理が必要となる。
【0008】この金属溶着は、相接する金属同士の固溶
体の作り易さに起因しており、同一材質を組み合わせた
場合には、従来から「ともがね」と称する焼付きが発生
し易い状態となることが知られている。
【0009】このような理由でダイキャスト用のスリー
ブとプランジャーチップの両者を同一材料で形成するの
は好ましくないのであるが、従来技術では、通常は、熱
間強度等の機械的性質の観点から同一材料のSKD材を
使用している。そして摩耗対策として、高価なスリーブ
を傷めないように、スリーブ側を熱処理して、ロックウ
エルCスケールで5〜6程度の表面硬度差をプランジャ
ーチップに対してつけて、高価なスリーブよりも、より
安価なプランジャーチップが早く摩耗するようにしてい
る。
【0010】更に、プランジャーオイル等の油性や水性
の潤滑剤をスリーブ内に多量に噴射供給して焼付きや摩
耗を防止している。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ダイキ
ャスト用のスリーブとプランジャーチップを同一材料で
形成しているため、本質的に焼付きが生じ、かじりを発
生し易い上に摩耗し易いという問題がある。
【0012】また、スリーブに溶湯を供給する前に多量
の潤滑剤を噴霧供給するために、溶湯がスリーブ内に流
し込まれると、この高温の溶湯に潤滑剤が接触して蒸発
や発火・発煙して多量のガスを発生する。このガスは周
囲に飛散して作業環境を悪化させるという問題がある。
【0013】従来のダイキャスト用のスリーブとプラン
ジャーチップの組合わせにおいては焼付きを防止するた
めに潤滑剤を多量に(例えば直径が50mmのプランジ
ャチップを持つダイキャストマシンの場合、1ショット
当たり0.5〜0.8cc)供給する必要があることか
ら、この潤滑剤から発生したガスや潤滑剤自体が、溶湯
と共に金型内に流入し、その流入状態によっては溶湯内
に巻込まれるので、これが微小な空洞や不連続な層を形
成して鋳造された製品の品質を著しく損なうという問題
がある。
【0014】また、従来技術においては、この潤滑剤か
ら発生するガスの圧力に対抗して溶湯を型内に供給する
必要があり、そのためにダイキャスト鋳造時に必要な射
出圧力以上の高圧力で、また、ガスの発生量の少ないう
ちに溶湯を型内に供給するために、ダイキャスト鋳造時
に必要な射出速度以上のプランジャ速度で鋳造してい
る。このように溶湯の射出時の圧力と速度が高いため、
必要以上にスリーブとプランジャーチップの摩耗や、ダ
イキャストマシン及び金型の損傷が促進されるという新
たな問題が生じている。
【0015】これらの問題を解決するためにはスリーブ
とプランジャチップとの焼付きを防止することが重要で
あり、そのためにベリリウム銅製のプランジャーチップ
を使用して、かじりの発生を回避することが試みられて
いる。しかし、このベリリウム銅を使用した場合には、
プランジャチップの材料費が高価となる上に、耐摩耗性
や耐久性の点で劣り、1ショット当たりのプランジャー
チップの価格が高くなるために、実用的ではないという
問題がある。
【0016】本発明者らは、焼付き現象ががなく、更に
安価なプランジャチップを製造するために、試験的では
あるが、プランジャーチップの摺動面に固体潤滑材とし
て黒鉛を球状黒鉛鋳鉄で鋳包み、これを焼入れ焼戻しを
して、表面硬度をロックウエルCスケール45としたプ
ランジャーチップを作成し、ダイキャスト鋳造の実験を
試みた。
【0017】しかし、このプランジャーチップは、作業
雰囲気温度が高いことが起因して2,500ショットで
表面硬度がロックウエルCスケールで38までに焼きが
戻ってしまい、摩耗量も0.3mmと使用限界を越え
た。また、黒鉛自身は強度が殆どないことから、鋳包ん
だ黒鉛部分が溶湯で侵食され、固体潤滑材としての役割
を果せなくなってしまった。ちなみに、SKD材製のプ
ランジャーチップの通常のショット数は、25,000
ショットであるから、前記プランジャーチップは如何に
寿命が短いかが分かる。
【0018】本発明者等は、これらの経験から、プラン
ジャーチップは、ともがねを防止するために、スリーブ
の材質とは異なる安価な材質を使用する必要があるこ
と、そして鋳造時に使用する潤滑剤の量を減少するため
に、プランジャーチップ自体に固体潤滑材の機能をもた
せると共に、供給された潤滑剤を有効に利用できるよう
に潤滑剤を保持する機能を持たせる必要があり、更に、
耐久性はSKD材で形成したプランジャーチップと同等
以上のショット数を可能にする必要があることを理解し
た。
【0019】本発明はこの知見を得て、上記各種の問題
を解決すべくなされたもので、本発明の目的とするとこ
ろは、鋳造時に使用されるプランジャーオイル等の潤滑
剤を低減でき、しかも、スリーブとかじりを生じること
がなく、しかも安価なダイキャスト用プランジャーチッ
プを提供することにある。
【0020】また、本発明の別の目的は、上記のダイキ
ャスト用プランジャーチップの製造方法を提供すること
にある。
【0021】
【課題を解決するための手段】以上のような目的を達成
するためのダイキャスト用プランジャーチップは、次の
ような特徴を有して構成される。
【0022】1) ダイキャスト用プランジャーチップ
の母材をオーステンパ球状黒鉛鋳鉄で形成し、このプラ
ンジャーチップの表面の摺接部分の一部に、モリブデン
からなる固体潤滑材の薄層を配設したことを特徴として
いる。
【0023】この構成により、ダイキャスト用プランジ
ャーチップの表面硬度を高く維持することができ、ま
た、摺接部分の一部に形成されたモリブデンの薄層で形
成された固体潤滑作用により、プランジャーチップがス
リーブに対してかじり現象を生じるのを防止できる。
【0024】また、プランジャーチップを、通常使用さ
れるSKD材で形成されるプランジャースリーブとは異
なった材質で構成することによって、「ともがね現象」
を回避してかじりの発生を防止している。
【0025】更に、オーステンパ球状黒鉛鋳鉄はSKD
材よりも安価であるので、低コストでダイキャスト用プ
ランジャーチップを提供できる。
【0026】2) また、ダイキャスト用プランジャー
チップの母材をボロナイジング処理した鉄で形成し、こ
のプランジャーチップの表面の摺接部分の一部にモリブ
デンからなる固体潤滑材の薄層を配設したことを特徴と
している。
【0027】前記のように構成することにより、従来技
術においては、100mmφ以上の大径のプランジャー
チップの母材をオーステンパ球状黒鉛鋳鉄した場合に所
定の良好な組織が得られなくなるという問題があった
が、本発明においては、鋼の表面にボロン化合物層を作
ることにより、100mmφ以上の大径において高い表
面硬度と、更に潤滑性を得ることができる。
【0028】3)上記のダイキャスト用プランジャーチ
ップにおいて、前記モリブデンの量をダイキャスト用プ
ランジャーチップの摺接部分の表面積の10〜40%と
することを特徴としている。
【0029】この構成により、固体潤滑作用を有するが
硬度が低くアルミ溶湯に侵され易いモリブデン層を、固
体潤滑作用は無いが硬度の高い母材で守ることができ、
オイル量、射出圧力、射出速度、不良率を改善しなが
ら、耐久性も著しく向上することができ、バランスのよ
いダイキャスト用プランジャーチップを得ることができ
る。
【0030】4)上記のダイキャスト用プランジャーチ
ップの製造方法において、前記プランジャーチップの表
面の円周方向に浅溝を形成し、この浅溝内にモリブデン
を溶射してこのプランジャーチップの表面に固体潤滑層
を形成することを特徴としている。
【0031】このダイキャスト用プランジャーチップの
製造方法によれば、プランジャーチップの母材に、モリ
ブデンを溶射して薄層を形成してプランジャーチップに
潤滑性を付与している。
【0032】そしてこの溶射工程においてモリブデン層
をポーラス状で広い面積を有する構造とすることができ
るために、このモリブデン層にプランジャーオイル等の
潤滑剤の保持機能を付与することができる。このポーラ
ス状のモリブデン層に潤滑剤を滲み込ませながら鋳造で
きるので、更に、潤滑性を向上することができる。
【0033】従って、プランジャーチップにモリブデン
薄層による潤滑性と、高温強度を付与することができ、
スリーブとプランジャーチップの摩耗量を減らして耐久
性を増すことができる。
【0034】そして、上記のように構成されたダイキャ
スト用プランジャーチップを使用することにより、その
高度の潤滑特性により、鋳造時のプランジャーオイル量
と、更に射出圧力と射出速度を、従来のSKD材製のプ
ランジャーチップを使用した場合よりも、低減すること
ができる。
【0035】個のプランジャーオイル量の減少に伴って
ダイキャスト時にオイルからの発生ガス量が減少し、作
業環境が改善される。
【0036】特に、この発生ガスに伴う鋳造欠陥が抑制
され、また、射出圧力及び射出速度の低減によりプラン
ジャーチップやスリーブの摩耗が減少する。更に、成形
用の機器の損傷が減少し、保守管理も容易となり、ま
た、消費エネルギーも減少するので、低コストで鋳造す
ることが可能と成る。
【0037】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係るダイキャスト
用プランジャーチップについて、図面を参照しながら説
明する。
【0038】図1に示すように、このダイキャスト用プ
ランジャーチップ1は、母材2とその摺動表面2fに環
状の浅い凹溝を形成し、その中に形成した固体潤滑材3
で構成されている。また、この母材2は後端側に開口す
る中空部4を有し、この冷却室となる中空部4に連続し
て、開口側に雌ねじ部5を設けて、図示しないチップジ
ョイントを螺合できるように形成している。
【0039】このダイキャスト用プランジャーチップ1
は、100mmφ以下の小径用のものにおいては、母材
2の材質として組織内に黒鉛を持つFCD600相当の
球状黒鉛鋳鉄で形成する。
【0040】これは、SKD材より安価に製造できると
上に、SKD材で形成されているスリーブとのかじりを
防止するためであると共に、鋳造時に使用されるプラン
ジャーオイル等の潤滑剤の保持機能を与えるためであ
る。
【0041】この母材2の熱処理は、通常の焼き入れ、
焼き戻しにおいては、使用温度雰囲気が高いことから、
焼きが戻り、焼き入れの効果が持続しないことがあるの
で、この状態を防止するために、この母材2を900℃
で1時間保持した後に急冷する。そして270℃で1.
5時間保持し、更に大気中で保冷してオーステンパー処
理を行なう。その結果、プランジャーチップ1の表面2
fの硬度がロックウエルCスケール44〜48を有し、
基地組織をベイナイトと残留オーステナイトとする。
【0042】この残留オーステナイトは、応力が加わる
とマルテンサイト変態を起こし加工硬化する特性を持っ
ており、通常の焼き入れよりも、使用時の硬度低下を少
なくすることができる。前記ロックウエルCスケールの
硬度は、43以下であると摩耗が激しく、また、49以
上ではスリーブを傷めることとなるので、前記範囲内に
調整しておくことが好ましい。
【0043】また、100mmφ以上の大径用のダイキ
ャスト用プランジャーチップ1の場合は、SC(鋼)の
表面をボロナイジング処理して使用する。
【0044】その理由は、母材2を材質中に黒鉛を持つ
FCD600相当の球状黒鉛鋳鉄で大径のものを形成す
ると、プランジャーチップ1の肉厚が厚くなることによ
り、球状黒鉛鋳鉄の鋳造時に、所定の良好な組織が形成
され難く、それに伴い、オーステンパー処理の効果が期
待できないからであり、また、SC材がSKD材より遙
かに安価であるためである。
【0045】そして、S45材の表面2fをペースト状
のホウ素で被い、約900℃で約3時間加熱することに
よって表面2fに100μm程度のFeBやFe2 Bの
ボロン層を形成するというボロナイジング処理をする。
【0046】このS45材の表面処理により、通常のS
KD材よりも劣る耐摩耗性等を補完できると共に、表面
2fに鉄以外の層を形成することによってSKD材のス
リーブとのかじりを防止できる効果がある。
【0047】この金属間化合物であるボロン層は、鋼に
櫛の歯状に入り込んで組織を形成することから剥離が起
き難く、また、硬度がHv1600〜1900と硬く耐
摩耗性に優れているにもかかわらず、相手材を傷つけな
いという、固体潤滑材に類似した作用を有している。そ
のため、ボロナイジング処理によりSKD材のスリーブ
とのかじりを防止できる。
【0048】次に、これらの母材2に潤滑性を持たせる
ために、固体潤滑材3としてモリブデンを用いて母材2
に溶射法により溶着させる。
【0049】この固体潤滑材3としては、モリブデンの
他に、二硫化モリブデンや黒鉛、窒化ホウ素があるが、
二硫化モリブデンは使用温度が400℃までで耐熱性が
低いこと、黒鉛は安価で使用方法が容易であるが強度が
低く、使用中に容易に欠落したり、溶湯に侵食されてし
まうこと、また、窒化ホウ素は母材へ固定させることが
困難なこと等がある。このような欠点を防止するため
に、本発明においては高価ではあるが固体潤滑材として
モリブデンを使用する。
【0050】そして、ダイキャスト用プランジャーチッ
プ1の母材2の表面にモリブデン層を形成する方法とし
て溶射法を使用する。この方法により、モリブデンを母
材2の周面に接合する溶着が容易にでき、また、プラズ
マにより溶けたモリブデン粒子が母材2に付着する際に
微細な空隙を作りながらモリブデン層3を形成すること
ができる。
【0051】これにより、プランジャチップ1の母材2
の表面にポーラス状のモリブデン層3を薄層で形成し、
これにより固体潤滑作用と共に、鋳造時に使用されるプ
ランジャーオイル等の潤滑剤の保持機能を持たせること
ができる。
【0052】このモリブデン層3は所定の厚さより薄層
であると簡単に剥離したり、要求される寿命より短い。
そこで図1に示すように、プランジャチップ1の周面に
例えば幅1〜5mm程度、厚み0.2〜0.5mm程度
の帯状で、1〜5本、10〜30mm程度の間隔をおい
てプランジャーチップ2の表面2fを一周するようにリ
ング状に形成する。また、先端から5〜10mm位の部
分は特に磨耗し易いので、この磨耗性に劣るモリブデン
層3はこの部分を避けて設ける。
【0053】〔実施例〕実施例として、135tのダイ
キャストマシン(東芝株式会社製のELタイプ)と自動
循環ポンプ(日米製作所製のS型0〜5cc)を使用し
て、潤滑剤としてプランジャーオイル〔松村石油株式会
社製のNW−11(油性タイプ)〕を噴霧して、アルミ
材(ADC12)をダイキャスト用材料として鋳造し
た。
【0054】この例においては、図1に示すような形状
の50mmφのダイキャスト用プランジャーチップ1を
使用し、母材2には、オーステンパー処理した球状黒鉛
鋳鉄を採用し、そして厚さ0.3mmのモリブデンの溶
射層3を15mmの間隔を明けて3本配置し、巾が表面
の10%,20%,40%になる様に形成し、実施例I
〜IIIとした。また、モリブデンの溶射層3の表面積が
20%の場合においては、母材2にボロナイジング処理
したS45C材を使用したものも実験を行った。
【0055】そして、比較のために、従来技術の表面を
窒化処理したSKD材を使用したプランジャーチップを
を比較例として示した。
【0056】
【表1】
【0057】この表1に示すように、モリブデン量を増
加すると、オイル量を従来のプランジャチップに比較し
て減少することができ、最大で60%も減少することが
できる。また、このオイルの減少に伴ない、射出圧力を
25%、射出速度(バルブ回転数)を30%も減少する
ことができ、安定した状態でダイキャストが可能となる
ことが分かる。
【0058】そして、不良率で見てみると、潤滑剤であ
るオイル量が減少し、ガスの発生量が少なくなった本発
明のプランジャチップを使用した鋳造では、ダイキャス
ト製品の湯ジワやバフ研摩後のピンホール等による不良
が少なくなり、不良率を従来技術の比較例の1.6%か
ら最大で1.3%も減少することができ、特に実施例II
Iにおいては0.3%となっている。次にショット数を
見てみると、従来のSKD材を使用したプランジャチッ
プにおいては25,000ショットであったが、本発明
の実施例IIにおいては、最大で30,000ショットも
持続しており、24%も耐久性を向上することができて
いる。
【0059】このショット数の増加を見ても、本発明に
係るプランジャチップにおいては、潤滑剤を供給量を減
少しても、かじりや焼付けが発生せず、スムーズな鋳造
ができていることが分かる。
【0060】なお、この表1のショット数は、鋳造条件
の低下が見られる段階までのショット数を表示してい
る。
【0061】そして、このショット数を達成した後の母
材を検査したが、その硬度は、ロックウエルCスケール
46〜49であり、雰囲気温度による焼き戻しが発生し
ておらず、逆に加工硬化のためと見られる硬度の増加が
認められた。
【0062】また、アルミの溶湯による侵食に関して
は、使用後のモリブデン層の硬度は40〜43と使用前
と変化はなく、また、モリブデン層に多少侵食の後が認
められたが、固体潤滑部全面に及ぶような侵食ではな
く、黒鉛を鋳包んだ場合とは異なっている。
【0063】次に、モリブデン層の占める表面積の割合
については、10%から20%への変化と20%から4
0%への変化を比べると、ショット数を除く各項目に於
いて、前者に比べ後者が大きくなっており、モリブデン
層の表面積割合を増加することにより、オイル量、射出
圧力、射出速度、不良率が著しく改善されることが分か
る。しかし、耐久性を示すショット数は、20%の場合
が30,000ショットと一番大きく40%では逆に低
下している。
【0064】この傾向は、硬度の低いモリブデン層が摩
耗及びアルミ溶湯により侵食されるためと考えられる。
そのため、固体潤滑作用を有するが硬度が低くアルミ溶
湯に侵され易いモリブデン層を、固体潤滑作用はないが
硬度の高い母材で守るのがよいことを教示している。
【0065】この実施例より、高価なモリブデンの占有
表面積は、スリーブとプランジャーチップの接触面の面
積の20〜25%がより好ましいと言える。
【0066】また、20%のモリブデン溶射層を含むボ
ロナイジング処理したS45C材製のプランジャーチッ
プのダイキャスト鋳造結果は、オイル量、射出圧力、射
出速度、不良率、耐久性の各項目において、オーステン
パー処理した球状黒鉛鋳鉄製のプランジャーチップと同
じ結果である。
【0067】そしてこの場合の母材の摩耗量は0.1m
m以下であったが、使用後のプランジャーチップの表面
のモリブデン溶射層には、オーステンパー処理した球状
黒鉛鋳鉄製の場合と同様にアルミ溶湯による侵食の跡が
認められた。
【0068】以上の比較実施例より、次のようなことが
分かった。から、オイル量、射出圧力、射出速度、不良
率、耐久性に対して固体循環材としてのモリブデンが極
めて有効である。
【0069】また、耐久性の限界は、モリブデンが摩耗
したり、アルミの溶湯により侵食を受けたりして固体潤
滑材としての作用効果を発揮できなくなった時であると
言える。
【0070】そして、硬度が低くポーラスでアルミの溶
湯により摩耗、侵食を受け易いモリブデン溶射層を、硬
度が高くアルミの溶湯により侵食を受け難いオーステン
パー処理した球状黒鉛鋳鉄やボロナイジング処理等の表
面処理した鋼の表面に部分的に形成して保護することに
より、相互に補完し合い良好な鋳造条件で鋳造すること
ができる。
【0071】また、小径の場合ではオーステンパー処理
した球状黒鉛鋳鉄製、また、大径の場合では、ボロナイ
ジング処理した鋼製のプランジャーチップであれば、そ
のプランジャチップの表面の10%〜40%のモリブデ
ン層を配設することによって十分な固体潤滑効果を得る
ことができ、価格的にも十分従来品と遜色がないものを
得ることができる。
【0072】そして耐久性の増加による1ショット当た
りの単価を低下させ、潤滑油の使用量を低減し、更に不
良率の低下と作業環境の改善による大きな経済効果を期
待することができる。
【0073】
【発明の効果】以上の説明したように、本発明に係るダ
イキャスト用プランジャーチップ及びその製造方法とこ
のプランジャーチップを使用したダイキャスト鋳造方法
によれば、次のような効果を奏することができる。
【0074】1)ダイキャスト用プランジャーチップ
に、スリーブの材質とは異なるオーステンパ球状黒鉛鋳
鉄やボロナイジング処理した鉄を使用しているので、か
じりを防止でき、しかも、これらの材料や加工は低コス
トであるので、安価なダイキャスト用プランジャーチッ
プを得ることができる。
【0075】2)固体潤滑材としてモリブデンを使用
し、これを溶射してダイキャスト用プランジャーチップ
を形成しているので、ダイキャスト用プランジャーチッ
プ自体が固体潤滑材の機能を有することになり、鋳造時
に使用する潤滑剤の量を大きく減少することができる。
【0076】3)プランジャチップの表面にモリブデン
を溶射してダイキャスト用プランジャーチップを形成し
ているので、このプランジャーチップの表面に形成され
るモリブデン層がポーラス状に形成され、潤滑剤を保持
する機能を有するので、鋳造時に使用する潤滑剤を有効
利用でき、潤滑剤の量を減少することができる。
【0077】特にプランジャチップの表面に浅い溝を形
成し、この溝内にモリブデンを溶射して薄層を形成する
ことによって耐久性のある固体潤滑層を形成することが
できる。
【0078】4)更に、これらのダイキャスト用プラン
ジャーチップは、硬度が高く、潤滑性に優れているの
で、耐久性において、SKD材で形成したダイキャスト
用プランジャーチップと同等以上のショット数が可能と
なる。
【0079】5)従って、これらのダイキャスト用プラ
ンジャーチップを使用してダイキャスト鋳造を行うと、
鋳造作業時のプランジャーオイル量、射出圧力及び射出
速度を低減しても鋳造欠陥を防止して健全なダイキャス
ト製品を鋳造でき、しかも、プランジャーオイル量を減
少しているので、このオイルから発生するガスや煙の量
が少なくなり、作業環境も改善できる
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るダイキャスト用プランジャーチッ
プの上半分の断面を示す側面図である。
【図2】従来技術のダイキャスト用プランジャーチップ
の上半分の断面を示す側面図である。
【図3】図2のプランジャーチップの断面を含む背面図
である。
【符号の説明】
1 ダイキャスト用プランジャーチップ 2 母材 2f 表面 3 固体潤滑材(モリブデン) 4 中空部(冷却室) 5 雌ねじ部

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ダイキャスト用プランジャーチップの母
    材をオーステンパ球状黒鉛鋳鉄で形成し、このプランジ
    ャーチップの表面の摺接部分の一部に、モリブデンから
    なる固体潤滑材の薄層を配設したことを特徴とするダイ
    キャスト用プランジャーチップ。
  2. 【請求項2】 ダイキャスト用プランジャーチップの母
    材をボロナイジング処理した鉄で形成し、このプランジ
    ャーチップの表面の摺接部分の一部にモリブデンからな
    る固体潤滑材の薄層を配設したことを特徴とするダイキ
    ャスト用プランジャーチップ。
  3. 【請求項3】 前記モリブデンの量を、ダイキャスト用
    プランジャーチップの摺接部分の表面積の10〜40%
    としたことを特徴とする請求項1又は2に記載のダイキ
    ャスト用プランジャーチップ。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3の前記ダイキャスト用プラ
    ンジャーチップの製造方法において、前記プランジャー
    チップの表面の円周方向に浅溝を形成し、この浅溝内に
    モリブデンを溶射してこのプランジャーチップの表面に
    固体潤滑層を形成することを特徴とするダイキャスト用
    プランジャーチップの製造方法。
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