JP2001311463A - 車両用無段変速機の変速制御装置 - Google Patents

車両用無段変速機の変速制御装置

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JP2001311463A
JP2001311463A JP2000129204A JP2000129204A JP2001311463A JP 2001311463 A JP2001311463 A JP 2001311463A JP 2000129204 A JP2000129204 A JP 2000129204A JP 2000129204 A JP2000129204 A JP 2000129204A JP 2001311463 A JP2001311463 A JP 2001311463A
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rotation speed
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Hiroki Asayama
弘樹 浅山
Ataru Tanimura
中 谷村
Makoto Shimada
誠 島田
Azusa Shimoda
亜寿左 下田
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Mitsubishi Motors Corp
Original Assignee
Mitsubishi Motors Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 車両用無段変速機の変速制御装置に関し、ド
ライバの加速要求に応じてキックダウン時の変速制御を
行なえるようにする。 【解決手段】 通常時は、エンジン負荷及び車速を表す
パラメータ値に応じて変速比にかかる基準目標値を設定
し、該基準目標値に基づいて車両に備えられた無段変速
機の変速比を制御する。ドライバからの加速要求があっ
たら、加速要求を表す加速要求値に応じてキックダウン
制御を行ない、全開加速時のように車速が所定値以下で
且つ該加速要求値が所定値以上の場合、及び、キックダ
ウン制御時で且つ該加速要求値が所定値以上の場合に
は、該基準目標値の場合よりも高いエンジン回転速度領
域を用いた加速用目標値に基づいて該無段変速機の変速
比を制御するように構成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両用無段変速機
においてキックダウン時の変速制御を行なう変速制御装
置に関する。
【0002】
【従来の技術】変速比を連続的に制御することができる
無段変速機は、変速ショックを回避でき、また燃料消費
効率の優れた動力伝達装置として車両に用いられてい
る。このような無段変速機においては、車速とエンジン
負荷(例えば、スロットル開度)とに基づいて目標変速
比を設定して、変速比の制御を行なう。この場合、一般
に例えばDレンジでは一種類の変速パターンが設定され
ていて、車速とエンジン負荷とに応じて目標変速比は一
義的に決定される。従って、スロットル全開状態で車両
を発進させた場合(全開発進状態)と、走行中に追い越
しのためなどにスロットル全開として加速した場合(キ
ックダウン加速状態)とでは、同一変速パターンから目
標変速比が決定される。
【0003】しかしながら、キックダウン時の一般的な
変速フィーリングを重視すると、スロットル全開におけ
る変速パターンを比較的変速比が小さいものとする必要
があり、もしも、スロットル全開において比較的大きい
変速比を設定すると、変速に伴ってエンジン回転速度は
急上昇するが実際には加速感が生じないこととなり、エ
ンジンが空吹き状態となった場合と同様の運転フィーリ
ングとなる。一方、スロットル全開側の変速比を小さく
すると、全開発進状態におけるエンジン回転速度が比較
的低い回転速度となり、エンジン性能を十分に利用する
ことができず、発進加速性能上が好ましくない。
【0004】そこで、かかる課題を解決すべく、特公平
8−10024号公報に開示されているように、全開発
進状態とキックダウン加速状態とを判別し、これに応じ
て変速パターンを切換える技術が提案されている。この
技術では、エンジン負荷が所定値(例えばスロットル全
開)となった場合には、全開発進状態かキックダウン加
速状態かを判定段し、全開発進状態にあると判定した場
合には、その判別期間中、図6(a)に示すような全開
発進変速パターンを選択する。全開発進変速パターンは
高い回転速度領域まで変速比の最大値を維持するので、
これによりエンジン回転速度が上昇し、エンジンの動力
性能を十分に引き出し、良好な発進加速性能が得られ
る。また、キックダウン加速状態にあると判定した場合
には、図6(b)に示すような変速比の最大値が全開発
進変速パターンよりも低い領域に設定されたキックダウ
ン加速変速パターンを選択する。これにより、追い越し
加速時などキックダウンした場合には全開発進加速状態
よりも小さい変速比により運転される領域が拡大され、
良好なキックダウン加速性能が確保される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、キック
ダウン時には、ドライバによって或いは運転状況によっ
て、好ましいキックダウンのフィーリングは一様ではな
い。つまり、ドライバが強く加速要求している場合に
は、実際には加速感が生じなくてもエンジン回転速度が
急上昇する方がフィーリング上好ましい場合もあり、上
記従来技術のように変速比の最大値が全開発進変速パタ
ーンよりも低い領域に設定されたキックダウン加速変速
パターンを選択するのは却ってキックダウンのフィーリ
ングを損ねる場合もある。
【0006】また、キックダウン時の実際の加速性能を
上げるには、必ずしも変速比の最大値を低く抑えること
が有効とは言えず、むしろ変速比の最大値を高い回転速
度領域まで与え得るようにしながら目標変速比の設定に
工夫を施すようにした方が、有効であるものと考えられ
る。すなわち、上記従来技術では、キックダウン時に車
両の加速性能を十分に発揮しているとはいいがたい。
【0007】本発明は、上述の課題に鑑み創案されたも
ので、ドライバの加速要求に応じてキックダウン時の変
速制御を行なえるようにした、車両用無段変速機の変速
制御装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】このため、請求項1にか
かる本発明の車両用無段変速機の変速制御装置では、通
常時は、エンジン負荷及び車速を表すパラメータ値に応
じて変速比にかかる基準目標値を設定し、該基準目標値
に基づいて車両に備えられた無段変速機の変速比を制御
する。ドライバからの加速要求があったら、加速要求を
表す加速要求値に応じてキックダウン制御を行なう。
【0009】そして、全開加速時のように車速が所定値
以下で且つ該加速要求値が所定値以上の場合、及び、キ
ックダウン制御時で且つ該加速要求値が所定値以上の場
合には、該基準目標値の場合よりも高いエンジン回転速
度領域を用いた加速用目標値に基づいて該無段変速機の
変速比を制御する。したがって、キックダウン制御時に
加速要求が強ければ、全開加速時等に用いる加速用目標
値を流用しながら、基準目標値を用いた場合よりも高い
エンジン回転速度領域を使用して、より速やかな加速を
実現できるようになる。
【0010】また、請求項2にかかる本発明の車両用無
段変速機の変速制御装置では、キックダウン制御中に、
該基準目標値よりも低いエンジン回転速度領域を用いた
第1目標値を設定し、該第1目標値に基づいて該無段変
速機の変速比を制御する。これにより、キックダウン制
御時に、エンジン回転速度のみが過剰に上昇し、車速が
上昇しないといった不具合が回避され、エンジン回転速
度と車速とがバランス良く上昇する。
【0011】その後は、該第1目標値設定時の該加速要
求値が所定値以上の場合には、該第1目標値と該加速用
目標値との差が所定値以下になった時点で該加速用目標
値に基づく変速比制御に切り換え、該第1目標値設定時
の該加速要求値が所定値未満の場合には、該第1目標値
と該加速用目標値との差が所定値以下になった時点で該
基準目標値に基づく変速比制御に切り換える。したがっ
て、キックダウン制御の加速要求が強いと、高いエンジ
ン回転速度領域を使用して、より速やかな加速を実現で
きるようになる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、図面により、本発明の実施
の形態について説明する。図1,図2は本発明の一実施
形態としての車両用無段変速機の変速制御装置について
示すもので、図1はその構成を示すブロック図、図2は
その無段変速機を説明するための模式図である。なお、
本実施形態では、変速機としてベルト式無段変速機(C
VT)が用いられている。
【0013】まず、本実施形態にかかる無段変速機を備
えた動力伝達機構について説明すると、図2(a),
(b)に示すように、本動力伝達機構では、エンジン
(内燃機関)1から出力された回転は、トルクコンバー
タ(トルコン)2,正転反転切換機構4,ベルト式無段
変速機(CVT)20を介してフロントデフ31へ伝達
され、駆動輪30を駆動するようになっている。
【0014】また、無段変速機構20は、エンジン1の
出力側に連結されたプライマリプーリ(第1回転部材)
21と車両の駆動輪30側に連結されたセカンダリプー
リ(第2回転部材)22と両プーリ間に介装されたベル
ト(介装部材)23とから構成され、正転反転切換機構
4からプライマリシャフト24に入力された回転は、プ
ライマリシャフト24と同軸一体のプライマリプーリ2
1からベルト23を介してセカンダリプーリ22へ入力
されるようになっている。
【0015】プライマリプーリ21,セカンダリプーリ
22はそれぞれ一体に回転する2つのシーブ21a,2
1b,22a,22bから構成されている。それぞれ一
方のシーブ21a,22aは軸方向に固定された固定シ
ーブであり、他方のシーブ21b,22bは油圧アクチ
ュエータ(油圧ピストン)21c,22cによって軸方
向に可動する可動シーブになっている。
【0016】油圧ピストン21c,22cには、オイル
タンク61内の作動油をオイルポンプ62で加圧して得
られる制御油圧が供給され、これに応じて可動シーブ2
1b,22bの固定シーブ21a,22a側への押圧力
が調整されるようになっている。セカンダリプーリ22
の油圧ピストン22cには、調圧弁63により調圧され
たライン圧が加えられ、プライマリプーリ21の油圧ピ
ストン21cには、調圧弁63により調圧された上で流
量制御弁64により流量調整された作動油が供給され、
この作動油が変速比調整用油圧として作用するようにな
っている。
【0017】そして、セカンダリプーリ22の油圧ピス
トン22cに与えられるライン圧P 1及びプライマリプ
ーリ21の油圧ピストン21cに与えられる変速比調整
用油圧P2は、コントローラ(電子制御コントロールユ
ニット=ECU)50の指令信号により、それぞれ行な
われるようになっている。ECU50には、エンジン回
転数センサ(クランク角センサ又はカム角センサ)4
1,スロットル開度センサ46,プライマリプーリ21
の回転速度を検出する第1回転速度センサ43,セカン
ダリプーリ22の回転速度を検出する第2回転速度セン
サ44,ライン圧を検出するライン圧センサ45,車速
センサ47等の各検出信号が入力されるようになってお
り、ECU50では、これらの検出信号に基づいて各プ
ーリ21,22への油圧供給系にそなえられた調圧弁6
3や流量制御弁64を制御するようになっている。
【0018】特に、変速比調整用油圧は、ECU50内
の制御機能(変速制御手段)51によって制御される。
この変速制御手段51には、目標回転速度設定手段52
と、エンジン1の負荷情報(ここでは、スロットル開度
情報)からキックダウンの要否を判定するキックダウン
判定手段53と、キックダウン判定手段53によりキッ
クダウンが必要と判定されるとキックダウン制御を実行
するための各機能要素、即ち、プライマリプーリ回転制
御手段(第1回転部材制御手段)54,プライマリプー
リ回転速度推定手段(回転速度推定手段)55,仮目標
回転速度設定手段56と、発進時全開判定手段71と、
キックダウン制御時全開判定手段72と、マップ使用域
選択手段73とがそなえられる。
【0019】はじめに、本装置の特徴である3つの手段
71,72,73について説明すると、発進時全開判定手
段71は、車速情報とスロットル開度情報とから、車両
が発進状態にあって且つスロットル開度が加速要求の強
い全開領域にある(即ち、発進時全開状態)か否かを判
定する。つまり、車速センサ47で検出された車速Vの
情報に基づいて車速Vが0又は0に近い微速状態にあっ
て、且つ、スロットル開度センサ46で検出されたスロ
ットル開度(加速要求値)THの情報に基づいてスロッ
トル開度THが全開領域にあると判定されて、その後、
スロットル開度THの全開領域の状態が継続したら、こ
の間は、発進時全開状態にあると判定する。一方、発進
後、スロットル開度THが一度でも全開領域を外れた
ら、発進時全開状態ではないと判定する。なお、全開領
域とは、スロットル開度THが所定の高い開度値(例え
ば開度95%)以上の場合をいう。
【0020】キックダウン制御時全開判定手段72は、
キックダウン判定情報とスロットル開度情報とから、無
段変速機がキックダウン制御状態にあって且つスロット
ル開度が加速要求の強い全開領域にある(即ち、キック
ダウン制御時全開状態)か否かを判定する。つまり、後
述するキックダウン判定手段53によりキックダウンが
判定されてキックダウン制御状態になって、且つ、スロ
ットル開度センサ46で検出されたスロットル開度(加
速要求値)THの情報に基づいてスロットル開度THが
全開領域(例えば開度95%以上)にあると判定された
ら、その後、キックダウン制御が終了するか又はスロッ
トル開度THが全開領域を外れるまでは、キックダウン
制御時全開状態にあると判定する。したがって、キック
ダウン制御時であっても、スロットル開度THが全開領
域に達しなければ、キックダウン制御時全開状態ではな
いと判定する。
【0021】なお、上記の加速要求値としてスロットル
開度に代えて、例えばアクセル開度(アクセルペダル踏
込量)等の他のパラメータ値を用いても良い。マップ使
用域選択手段73は、通常時、即ち、発進時全開判定手
段71により発進時全開状態ではないと判定され、キッ
クダウン制御時全開判定手段72によりキックダウン制
御時全開状態ではないと判定された時には、図3に示す
線100%以下の通常走行用変速パターンのマップを選
択し、発進時全開判定手段71により発進時全開状態に
あると判定されるか、又は、キックダウン制御時全開判
定手段72によりキックダウン制御時全開状態にあると
判定されたら、線100%よりも上方の全開用変速パタ
ーン(発進時全開&K/D時全開)を選択する。
【0022】ここで、図3の変速制御マップについて説
明する。図3はシフトポジションがDレンジの場合の変
速制御マップであるが、本装置の制御はエンジンの高回
転域(即ち、フル・ロー側である低速段域)に特徴があ
るので、このDレンジについての説明は低速段域に限定
した他のレンジにも適用できる。変速制御マップ変速制
御は、車速Vとスロットル開度THとに基づいてプライ
マリプーリ21の回転速度(エンジン回転速度に対応す
る)の目標値(目標回転速度)を設定して変速比を制御
する。この際、図3の変速制御マップを用いて目標回転
速度を設定する。変速比は、図3の目標回転速度と車速
との比に相当するが、無段変速機の場合も上限(フル・
ロー)と下限(フル・オーバドライブ)とがあり、この
範囲内で変速比が制御される。
【0023】通常時には、スロットル開度と車速とに応
じて図3の斜線内の領域で目標回転速度を設定する。し
たがって、変速比(プライマリプーリ回転速度/セカン
ダリプーリ回転速度)は線100%を上限に制御され
る。もちろん、この線100%は、ごく高速域を除いて
エンジン回転速度の上限には達しないように設定されて
いる。
【0024】一方、発進時全開状態にある場合、又は、
キックダウン制御時全開状態にある場合には、通常時の
変速比制御の変速比の上限(線100%)よりも高い
(エンジン回転速度Neの大きい)全開用変速パターン
(発進時全開&K/D時全開と付す線)により変速比制
御を行なう。これにより、発進時全開状態にある場合、
又は、キックダウン制御時全開状態にある場合には、通
常時用の変速マップ(線100%以下)に基づく目標回
転速度(基準目標値)よりも高いエンジン回転速度領域
を用いた目標回転速度(加速用目標値)に基づいて無段
変速機の変速比を制御することになる。
【0025】即ち、発進時のみならずキックダウン制御
時にも、ドライバがスロットルを全開状態に操作すれば
それだけ加速を要求しているとみなすことができ、この
ようにエンジン回転速度を高速回転させて高出力を得な
がら加速要求に答えるようにしているのである。このよ
うに、加速時に変速比を高めると、はじめにエンジンの
みが回転上昇して車速の上昇が遅れるおそれがあるが、
本装置では、後述するようなキックダウン制御に関する
各手段53〜56によって、目標変速比の設定に工夫を
施すようにしながら、エンジン回転と車速とをバランス
よく速やかに上昇させるようにしている。
【0026】目標回転速度設定手段52は、所定の周期
で、車速センサ47により検出された車速Vとスロット
ル開度センサ46により検出されたスロットル開度(機
関の負荷情報,アクセル開度でも良い)THとからプラ
イマリプーリの目標回転速度(真の目標回転速度とい
う)WPT0を算出して、通常は、この真の目標回転速度
PT0を、プライマリプーリ21の目標回転速度WPT
する。キックダウン制御時にも、この車速V,スロット
ル開度THに応じた真の目標回転速度WPT0を基本的な
プライマリプーリ21の目標回転速度WPTとするが、キ
ックダウン制御の途中で、後述する仮目標回転速度設定
手段56で設定された仮目標回転速度WPT 1を目標回転
速度WPTに使用する。
【0027】この際、マップ使用域選択手段73で選択
されたマップ使用域を用いて、真の目標回転速度WPT0
を設定する。つまり、通常時には、スロットル開度の値
THと車速とに応じて線0%〜100%の範囲内で目標
回転速度を設定する。発進時全開状態にある場合、又
は、キックダウン制御時全開状態には、全開用変速パタ
ーンを用いて設定する。
【0028】キックダウン判定手段53は、所定周期で
得られるスロットル開度THの値を時間微分したスロッ
トル開度変化率dTH/dtが、所定値ΔTH0以上に
なったら急加速が指令されたものとして、キックダウン
が必要であると判定する。なお、上記のスロットル開度
情報は、エンジン1の負荷情報を表すものであればよ
く、例えばアクセル開度(アクセルペダル踏込量)やア
クセル開度変化率やキックダウン信号に基づき判定して
もよい。
【0029】プライマリプーリ回転制御手段54は、通
常運転時(キックダウン制御時も含む)、プライマリプ
ーリ21の実回転速度WPrが目標回転速度設定手段52
で設定された目標回転速度WPTになるよう、流量制御弁
64を通じてプライマリプーリ21の油圧ピストン21
cをフィードバック制御し、可動シーブ21bを適宜駆
動してプライマリプーリ21の回転速度及びエンジン回
転速度を制御する。
【0030】回転速度推定手段55は、キックダウン制
御時に、制御開始時点T0で起動するタイマ48のカウ
ント値から時点を判定しながら、プライマリプーリ回転
制御手段54の制御によりプライマリプーリ21の実回
転速度WPrが目標回転速度W PTに向けて増加している際
の第1時点T1から第2時点T2までの間に、プライマリ
プーリ21の実回転速度WPrの上昇率mを算出し、この
上昇率mに基づいて第3時点T3におけるプライマリプ
ーリ21の回転速度WPrを推定する。つまり、第1回転
速度センサ43の検出結果からプライマリプーリ21の
第1時点T1の実回転速度WP1とプライマリプーリ21
の第2時点T2の実回転速度WP2とから、式:m=(W
P2−WP1)/(T2−T1)により上昇率mを算出する。
【0031】なお、キックダウン制御開始直後はエンジ
ンの出力トルク変動によりプライマリプーリ21の実回
転速度WPrが変動するので、この実回転速度WPrの変動
がある程度治まってから上昇率mを算出するように、予
め実験結果等に基づいて第1時点T2が設定されてい
る。また、第3時点T3は車速の増加応答性とエンジン
回転速度の増加とがバランスするような時点として固定
値に設定されるが、この第3時点T3は、例えばキック
ダウン判定時のスロットル開度変化率dTH/dtと反
比例するような可変の値や車速に比例する可変の値とし
てもよい。また、第2時点T2は、当然ながら第1時点
1よりも後で第3時点T3よりも前の時点となるが、上
昇率mの算出精度を考慮すれば第1時点T1と第2時点
2との間の時間を十分にとるようにするのが好まし
い。
【0032】仮目標回転速度設定手段56は、回転速度
推定手段55で推定したプライマリプーリ21の実回転
速度WPrの上昇率mとプライマリプーリ21の実回転速
度W Pr(例えば第2時点T2で得られる実測値WP2)と
から、第3時点で到達すると予測されるプライマリプー
リ21の回転速度WP3〔=WP2+m・(T3−T2)〕を
算出して、この回転速度WP3に第2時点T2からの経過
時間に応じて増加する補正量WPAを加算することにより
真の目標回転速度よりも小さな仮目標回転速度(第1目
標値)WPT1(=WP3+WPA)を設定する。なお、補正
量WPAの初期値はゼロに設定されているので、仮目標回
転速度WPT1としては値WP3が出力されることになる。
【0033】補正手段57は、真の目標回転速度WPT0
と仮目標回転速度WPT1との差WPD(=WPT0−WPT1
が第1所定値α以内になったら(この時点を第4時点T
4とする)、仮目標回転速度WPT1の算出時の補正量WPA
を減少補正する。ここでは、差WPDが第1所定値αより
も大きい場合(第3時点T3から第4時点T4までの間)
は、図4に実線で示すように経過時間(第3時点T3
らの経過時間)に応じて線形に増加する補正量WPAを採
用し、差WPDが第1所定値α以内になったら(第4時点
T4以降)、図4に1点鎖線で示すように経過時間(第
4時点T4からの経過時間)に応じて補正量WPAよりも
緩やかに線形増加する補正量WPA′を採用するようにし
ている。
【0034】なお、第1所定値αは一定値としてもよい
が、可変としてもよい。例えば図5は、第1所定値αを
プライマリプーリ21の実回転速度WPrの時間変化率
(dW Pr/dt)に応じて可変に設定する例であり、実
回転速度WPrの時間変化率(dWPr/dt)の増加に対
応して第1所定値αを増加させている(この例では線形
増加であるがこれに限定されない)。また、第1所定値
αが過少であれば制御効果が少なく、第1所定値αが過
大であればプライマリプーリ21やエンジンの速度増加
が遅れるので、時間変化率(dWPr/dt)が小さい領
域では最小値αmi nに大きい領域では最大値αmaxに
制限することが望ましい。
【0035】目標回転速度設定手段52では、キックダ
ウン制御時には、タイマ48のカウント値から時点を判
定しながら、キックダウンの制御開始時点T0から第3
時点T3までは、真の目標回転速度WPT0をプライマリプ
ーリ21の目標回転速度WPTに用い、第3時点T3から
第5時点T5(差WPDが第1所定値αよりも十分に小さ
く0に近くなる時点)までは、仮目標回転速度設定手段
56で設定された仮目標回転速度WPT1を目標回転速度
PTに用い、差WPDが微少な閾値又は0まで減少した
ら、第5時点T5で、真の目標回転速度WPT0を目標回転
速度WPTに用いる。
【0036】本発明の一実施形態としての車両用無段変
速機の変速制御装置は、上述のように構成されているの
で、通常時には、スロットル開度の値THに応じて、図
3に示すような特性で車速に対応して目標回転速度を設
定する。この場合、変速比は線100%を上限に制御さ
れるので、エンジン回転速度が比較的抑えられて静かで
燃費にも有利な走行をすることができる。通常の(大き
な加速要求でない)キックダウン制御時にも、変速比は
線100%を上限に制御され、比較的静粛性や燃費に優
れた運転となる。
【0037】一方、ドライバが発進加速を強く要求して
いるとみなせる発進時全開状態の場合には、通常時の変
速比制御の変速比の上限(線100%)よりも高い全開
用変速パターンにより変速比制御を行なうので、通常時
よりもエンジン回転速度の高い領域が用いられ、高いエ
ンジン出力を得ながら加速要求に答えることができる。
【0038】そして、ドライバが走行中に加速を強く要
求しているとみなせるキックダウン制御時全開状態の場
合にも、通常時の変速比制御の変速比の上限(線100
%)よりも高い全開用変速パターンにより変速比制御を
行なうので、通常時よりもエンジン回転速度の高い領域
が用いられ、高いエンジン出力を得ながら加速要求に答
えることができる。
【0039】また、図5に示すように、スロットル開度
(機関の負荷情報)THの変化率dTH/dtが所定値
ΔTH0以上になったら(時点T0)、キックダウン判定
手段53がキックダウンが必要であると判定し、制御フ
ラグKDTを立てて、キックダウン制御が開始される。
以下、キックダウン制御時全開状態ではない場合のキッ
クダウン制御について、図5中の二点鎖線(目標回転速
度)と破線(実回転速度)とを参照して説明する。な
お、図5中の一点鎖線はキックダウン制御時全開状態に
おける目標回転速度であり、実線はキックダウン制御時
全開状態における実回転速度である。時点T3から、時
点T3と時点T4と間は二点鎖線と一点鎖線とが重なって
おり、この部分は一点鎖線を優先させて示している。
【0040】このキックダウン制御開始時には、目標回
転速度設定手段52で、車速Vとスロットル開度THと
からプライマリプーリの真の目標回転速度WPT0を算出
して、プライマリプーリ回転制御手段54が、この目標
回転速度WPT0を目標回転速度WPTとして、プライマリ
プーリの実回転速度WPrがこの目標回転速度WPT0にな
るように、つまり、プライマリプーリ21及びエンジン
の回転速度が急増するように、油圧制御量を最大にしな
がら流量制御弁64の開度状態を制御する。
【0041】プライマリプーリ21が回転速度を増加し
ている際の第1時点T1から第2時点T2までの間、プラ
イマリプーリ21の実回転速度WPrの上昇率mを算出
し、第2時点T2に達したら制御フラグKDTを下ろし
制御フラグKDSPを立てて、この上昇率mと第2時点
2で得られるプライマリプーリ21の実回転速度WP 2
等に基づいてこの後の第3時点T3におけるプライマリ
プーリ21の実回転速度WPrを推定する。そして、この
推定回転速度WP3に第1補正量WPAと第2補正量Wth
を加算して仮目標回転速度WPT1を設定する。この仮目
標回転速度WPT1は、真の目標回転速度WPT0と仮目標回
転速度WPT1との差が第1PAを増加率の少ない補正量W
PA′に変更し仮目標回転速度WPT1を減少補正する。
【0042】目標回転速度設定手段52では、キックダ
ウン制御開始時(初期時点T0)から第3時点T3までは
真の目標回転速度WPT0をプライマリプーリ21の目標
回転速度WPTに用いて制御するため、エンジン1及びプ
ライマリプーリ21の回転が速やかに上昇し(この間、
車速及びセカンダリプーリ22の回転は変化しない)、
その後、第3時点T3から第5時点T5までは仮目標回転
速度WPT1を目標回転速度WPTに用いて制御するため、
エンジン1及びプライマリプーリ21の回転と車速及び
セカンダリプーリ22の回転とが共に上昇するようにな
り、キックダウン時のエンジンの回転数の速やかな上昇
を実現すると共にこれに続く車速の上昇をも間延びせず
に行なうことができる。
【0043】そして、差が第1所定値αよりも十分に小
さく0又は0に近い値になったら(第5時点T5)、制
御フラグKDSP,KDEを下ろして、再び、真の目標
回転速度WPT0を目標回転速度WPTに用いるようにする
が、この途中の第4時点T4から、仮目標回転速度WPT1
を算出する補正量WPAを増加率の少ない補正量WPA′に
変更しているので、第5時点T5に到達する際には、仮
目標回転速度WPT1が極めて緩やかに増加するようにな
り、目標回転速度WPTを仮目標回転速度WPT1から真の
目標回転速度WPT0に復帰させる際の実回転速度WPr
オーバシュートが防止され、実回転速度WPrが速やかに
真の目標回転速度WPT0に近づく。したがって、運転フ
ィーリングを向上させることができる。その後は、エン
ジン回転はそれ以上高まらなくても、高速回転で作動す
るエンジンの高出力によって車両が加速していく。
【0044】一方、キックダウン制御時に、スロットル
開度(加速要求値)THが所定値(例えば95%)以上
になったら(即ち、キックダウン制御時全開状態の場合
には)、通常時の変速比制御の変速比の上限(線100
%)よりも高い全開用変速パターンにより変速比制御を
行なう。ただし、本実施形態では、真の目標回転速度と
して、第2時点T2までは、通常時の変速比の上限(線
100%)の値を採用し、第2時点T2以降から、全開
用変速パターンの値を採用している。また、真の目標回
転速度WPT0と仮目標回転速度WPT1との差が第1所定値
α以内になると(第4時点T4′)補正量WPAを増加率
の少ない補正量WPA′に変更し仮目標回転速度WPT1
減少補正する。そして、差が第1所定値αよりも十分に
小さく0又は0に近い値になったら(第5時点
5′)、制御フラグKDSP,KDEを下ろして、再
び、真の目標回転速度WPT0を目標回転速度WPTに用い
る。
【0045】このように、発進時のみならずキックダウ
ン制御時にも、ドライバがスロットルを全開状態に操作
すればそれだけ加速を要求しているとみなして、エンジ
ンの高回転速度域を使用して高出力を得ながら加速要求
に答えることができる。また、このように加速時に変速
比を高めると、はじめにエンジンのみが回転上昇して車
速の上昇が遅れるおそれがあるが、本装置では、前述の
ように、目標変速比の設定に工夫を施しているので、エ
ンジン回転と車速とをバランスよく速やかに上昇させる
ことができる。
【0046】しかも、発進時前回状態に用いるマップを
利用しながら、新たなマップの追加をしないで、キック
ダウン制御にか速要求の程度に応じて、エンジンの高回
転速度域を使用できるようにしているので、コスト増の
問題もない。こうして、通常のキックダウン時には、静
粛性や燃費性能と加速性能とをバランスさせる変速制御
を行ない、加速要求の強いキックダウン時には、加速性
能を優先させる変速制御を行なうので、ドライバの加速
要求に応じた変速制御を実現できる。
【0047】なお、本発明は、上記の実施形態に限定さ
れるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変
更し売るものである。例えば補正量WPA,WPA′の増加
特性は図4に示すように線形なものに限らず、種々の特
性に設定しうる。また、第1所定値αについても、真の
目標回転速度WPT0に応じて可変にするなど他の設定形
態も考えられる。また、本実施形態では、差WPDが0に
近い値になったら、目標回転速度WPTを仮目標回転速度
PT1から真の目標回転速度WPT0に復帰させているが、
差WPDが0になったら真の目標回転速度WPT0に復帰さ
せるようにしてもよい。
【0048】また、キックダウン制御時全開判定手段7
2による判定は、キックダウン制御開始後の時点T2
時点T4の時点で行なってもよい。これらの時点で判定
を行なえば,キックダウン制御が行なわれている状態で
も、運転者が加速を要求していることが確認でき、より
運転者の意思に沿った加速を行なうことが可能になる。
【0049】
【発明の効果】以上詳述したように、請求項1にかかる
本発明の車両用無段変速機の変速制御装置によれば、キ
ックダウン制御時に加速要求が強ければ、全開加速時等
に用いる加速用目標値を流用しながら、基準目標値を用
いた場合よりも高いエンジン回転速度領域を使用して、
より速やかな加速を実現できるようになる。
【0050】また、請求項2にかかる本発明の車両用無
段変速機の変速制御装置によれば、キックダウン制御時
に、エンジン回転速度のみが過剰に上昇し、車速が上昇
しないといった不具合が回避され、エンジン回転速度と
車速とをバランス良く上昇させることができ、キックダ
ウン制御の加速要求が強いと、高いエンジン回転速度領
域を使用して、より速やかな加速を実現できるようにな
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかる車両用無段変速機
の変速制御装置を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる車両用無段変速機
を説明する図であり、(a)は駆動系の模式的構成図、
(b)は無段変速機の構成図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる制御マップを示す
図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかる補正特性を示す図
である。
【図5】本発明の一実施形態にかかる制御例を示すタイ
ムチャートである。
【図6】従来技術を説明する図である。
【符号の説明】
1 エンジン(内燃機関) 20 変速機としてのベルト式無段変速機(CVT) 21 第1回転部材(プライマリプーリ) 22 第2回転部材(セカンダリプーリ) 23 ベルト(介装部材) 51 変速制御手段 52 目標回転速度設定手段 53 キックダウン判定手段 54 プライマリプーリ回転制御手段(第1回転部材制
御手段) 55 プライマリプーリ回転速度推定手段(回転速度推
定手段) 56 仮目標回転速度設定手段 71 発進時全開判定手 72 キックダウン制御時全開判定手段 73 マップ使用域選択手段
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 島田 誠 東京都港区芝五丁目33番8号 三菱自動車 工業株式会社内 (72)発明者 下田 亜寿左 東京都港区芝五丁目33番8号 三菱自動車 工業株式会社内 Fターム(参考) 3J552 MA07 NA01 NB01 PA20 PA32 QA14A QA24C RA08 SA36 VA32Z VA37Z VA74W VA74Y VA74Z VA76Z VB01Z VC03Z

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エンジン負荷及び車速を表すパラメータ
    値に応じて変速比にかかる基準目標値を設定し、該基準
    目標値に基づいて車両に備えられた無段変速機の変速比
    を制御するとともに、加速要求を表す加速要求値に応じ
    てキックダウン制御を行なう車両用無段変速機の変速制
    御装置において、 車速が所定値以下で且つ該加速要求値が所定値以上の場
    合、及び、キックダウン制御時で且つ該加速要求値が所
    定値以上の場合に、該基準目標値の場合よりも高いエン
    ジン回転速度領域を用いた加速用目標値に基づいて該無
    段変速機の変速比を制御することを特徴とする、車両用
    無段変速機の変速制御装置。
  2. 【請求項2】 該キックダウン制御中に該基準目標値よ
    りも低いエンジン回転速度領域を用いた第1目標値を設
    定し、該第1目標値に基づいて該無段変速機の変速比を
    制御するとともに、 該第1目標値設定時の該加速要求値が所定値以上の場合
    には、該第1目標値と該加速用目標値との差が所定値以
    下になった時点で該加速用目標値に基づく変速比制御に
    切り換え、 該第1目標値設定時の該加速要求値が所定値未満の場合
    には、該第1目標値と該加速用目標値との差が所定値以
    下になった時点で該基準目標値に基づく変速比制御に切
    り換えることを特徴とする、請求項1記載の車両用無段
    変速機の変速制御装置。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7537543B2 (en) 2005-11-30 2009-05-26 Jatco Ltd Speed change control device for belt type continuously variable transmission
JP2010513785A (ja) * 2006-12-18 2010-04-30 ルノー・エス・ア・エス 自動車用連続可変オートマチック・トランスミッションの制御方法

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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