JP2001305034A - ガス同定方法、ガス定量方法およびガス同定または定量装置 - Google Patents

ガス同定方法、ガス定量方法およびガス同定または定量装置

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 多数のセンサを必要とせずコストを削減で
き、かつ経時変化するガス成分を容易に同定し、濃度の
定量と経時変化を求めることを可能とする方法および装
置を提供する。 【解決手段】 ガスセンサに脱着ガスを流すことによ
り、測定対象ガス成分の脱着応答曲線を測定し、その脱
着応答曲線の形状と、既知のガス成分の脱着応答曲線の
形状とを比較するガス成分の同定方法、および、ガス検
知センサをガス流路中に設置し、センサの前に測定対象
ガスと脱着ガスとの切り替え機構を備え、測定対象ガス
から脱着ガスに切り替えたのちの時間を計測する機構
と、ガスの応答量を記録する脱着応答曲線測定装置と、
脱着応答曲線からガス成分の同定を行なうソフトウエア
を含有する情報処理装置を共に有するガス同定または定
量装置。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、試料ガス中の測定
対象ガス成分の同定方法および濃度を定量する方法なら
びにそのためのガス同定または定量装置(ガスセンサ、
ガス検知装置)に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、ガスの吸着現象を利用するガスセ
ンサの開発が盛んに進められている。たとえば、ガス成
分の吸着による共振周波数の変化を利用した水晶振動子
式センサ、表面弾性波素子式センサ、ガス成分の吸着に
よる導伝率や熱伝導率を利用した金属酸化物半導体式セ
ンサ、有機導電性高分子を利用したセンサなどをあげる
ことができる。
【0003】これらのガスセンサにおいて、未知の試料
ガス中の測定対象ガス成分の同定、濃度の定量および濃
度の経時変化を求めることができれば、種々の分野にお
ける安全管理、食品や化粧品などに代表される商品の品
質管理、悪臭の計測などの環境計測などの様々な分野で
非常に有効である。そのため、測定対象ガス成分の同定
方法および濃度の定量方法が盛んに研究されている。
【0004】たとえば、性質の異なるセンサ素子をアレ
イ状に配置して、そこから得られる各素子の飽和吸着量
をパターン処理して、ガス成分の同定を行ない、かつ応
答量から濃度を定量する方法をあげることができる。ま
た、特開平5−164670号公報記載のように、ガス
成分の吸着時の応答曲線から時定数を求め、その時定数
を利用してガス成分の同定を行ない、かつ飽和吸着量か
ら濃度を定量する方法などをあげることができる。
【0005】上述した従来のガス成分の同定方法および
濃度の定量と経時変化の導出方法には、以下のような欠
点があった。パターン処理による方法では、多数のセン
サが必要でありコストがかかり、また、応答速度の遅い
成分に対しては、飽和吸着量に達するのが遅く、同定と
定量に時間がかかる。
【0006】また、吸着時の応答曲線の時定数から測定
対象ガス成分の同定を行なうには、センサに測定対象ガ
ス成分を濃度がステップ関数的になるように供給する必
要があり、時間とともに濃度が変化する場合においては
測定対象ガス成分の同定が困難であった。とくに、種々
の事故により発生したガスの計測や悪臭の測定に代表さ
れるような環境計測などに利用する場合には、測定対象
ガス成分の濃度は一定ではなく、時間とともに変化する
のが一般的であり、このような場合において測定対象ガ
ス成分を同定し、かつ濃度の経時変化を測定することは
困難であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、多数
のセンサを必要とすることなく、コストを削減でき、か
つ濃度が経時変化する測定対象ガス成分を容易に同定
し、濃度の定量と経時変化を求めることができる方法お
よび装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、測定対象ガス
成分の脱着応答曲線の形状を、既知のガス成分の脱着応
答曲線の形状と比較することを特徴とするガス成分の同
定方法(請求項1)、ガスセンサに、測定対象ガス成分
を含有する試料ガスを流したのちに、当該試料ガスより
も測定対象ガス成分の濃度が低い脱着ガスを流すことに
よって測定した脱着応答曲線を用いる請求項1記載のガ
ス成分の同定方法(請求項2)、脱着応答曲線をある関
数に近似し、その関数の係数を用いて脱着応答曲線の形
状を比較する請求項1記載のガス成分の同定方法(請求
項3)、tを脱着開始からの経過時間、Tiを1つまた
は複数の実数とし、ある関数を指数関数exp(−t/
Ti)を含む多項式とし、Tiを係数として用いる請求
項3記載のガス成分の同定方法(請求項4)、脱着速
度、脱着応答曲線の接線の傾き、または、応答量の値を
用いて脱着応答曲線の形状を比較する請求項1記載のガ
ス成分の同定方法(請求項5)、応答量が設定値に達し
た時点で脱着ガスを流す請求項2記載のガス成分の同定
方法(請求項6)ある時点の脱着速度まはた脱着応答曲
線の接線の傾きを用いて脱着応答曲線の形状を比較する
請求項1記載のガス成分の同定方法(請求項7)、ある
時点を、応答量が設定値に達してから脱着を開始し、脱
着を開始してから一定の設定時間を経過した時点、また
は、脱着を開始してからの応答量の変化量が設定値に達
した時点とする請求項7記載のガス成分の同定方法(請
求項8)、複数のガスセンサで測定した複数の脱着応答
曲線を用いる請求項2記載のガス成分の同定方法(請求
項9)、請求項1、2、3、4、5、6、7、8または
9記載の方法によってガス成分の同定を行ない、同定さ
れたガス成分の吸脱着にかかわる既知の情報と、応答曲
線の大きさまたは形状にかかわる情報とから、試料ガス
中の測定対象ガス成分の濃度を定量する方法(請求項1
0)、脱着応答曲線の大きさまたは形状にかかわる情報
が、脱着速度、脱着応答曲線の接線の傾き、または、応
答量である請求項10記載の試料ガス中の測定対象ガス
成分の濃度を定量する方法(請求項11)、ガス流路、
ガス流路中に設置したガスセンサ、ガスの流れから見て
ガスセンサの前に設置したガス流路に流す試料ガスと脱
着ガスとを切り替える機構、試料ガスから脱着ガスに切
り替えたのちの時間または応答量の変化が脱着の開始を
示したのちの時間を計測する機構、ガスの応答量を記録
する脱着応答曲線測定装置、および、脱着応答曲線から
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10また
は11記載の方法により測定対象ガス成分の同定または
定量を行なうソフトウエアを含有する情報処理装置を有
するガス同定または定量装置(請求項12)、ならびに
同一の性質を有する複数のガスセンサを備え、少なくと
も1つのセンサは試料ガスを流し続けられるようにした
請求項12記載のガス同定または定量装置(請求項1
3)にかかわる。
【0009】
【発明の実施の形態】実施の形態1 本発明では、ガス成分の同定に脱着応答曲線を用いる。
脱着応答曲線とは、ガスセンサに吸着した測定対象ガス
成分を一定条件下で脱着させる際の応答量の経時変化を
示す曲線である。測定対象ガス成分の脱着応答曲線の形
状を、既知のガス成分の脱着応答曲線の形状と比較する
ことにより、測定対象ガス成分を同定する。未知の測定
対象ガス成分を、もっとも近い脱着応答曲線を与えた既
知のガス成分と同定する。
【0010】脱着応答曲線は、ガスセンサに、測定対象
ガス成分を含有する試料ガスを流したのちに、当該試料
ガスよりも測定対象ガス成分の濃度が低い脱着ガスを流
すことにより、測定することができる。
【0011】たとえば、ガスセンサに、試料ガスを流
し、ガスセンサが試料ガス中の測定対象ガス成分に対し
て応答したのちに、ガスセンサに流すガスを試料ガスか
ら脱着ガスに切り替えることにより脱着応答曲線を求め
ることができる。脱着ガスとしては、たとえば、乾燥チ
ッ素を用いることができる。
【0012】ガスセンサとしては、たとえば、水晶振動
子式センサを用いることができる。水晶振動子式センサ
の概略図を図1に示す。図1中の1は測定対象ガス成分
を吸着させる吸着膜、2は下地蒸着金電極、3は水晶基
板(水晶振動子)である。水晶振動子式センサは、ガス
成分の吸着膜1への吸着による重量変化を、水晶振動子
3の共振周波数の変化として検知する。
【0013】水晶振動子3の共振周波数の変化量を応答
量、この共振周波数の時間微分値、ある時間間隔で求め
た応答量の変化量を時間間隔で除した値、または、応答
曲線の接線の傾きを応答速度とする。また、ガスセンサ
から測定対象ガス成分が脱着していくことによる水晶振
動子3の共振周波数の時間微分値、ある時間間隔で求め
た応答量の差をその時間間隔で除した値、または、脱着
応答曲線の接線の傾きを脱着速度とする。
【0014】実施の形態1は、試料ガス中の測定対象ガ
ス成分をガスセンサに吸着させる工程、ガスセンサに脱
着ガスを流して測定対象ガス成分を脱着させ、脱着応答
曲線を得る工程、および、得られた脱着応答曲線の形状
を既知のガス成分の脱着応答曲線の形状と比較する工程
とからなる。流速、温度、湿度、脱着時間、脱着ガスを
流す前の応答量などの測定条件を統一して、測定対象ガ
ス成分を含む試料ガスと既知のガス成分A、BまたはC
を含む試料ガスの吸脱着の応答量を測定して、脱着応答
曲線を取得する。得られる脱着応答曲線の形状を、同一
図面上または同一画面上で重ねて比較して、たとえば、
測定対象ガス成分の脱着応答曲線と、既知のガス成分B
の脱着応答曲線が酷似している場合には、試料ガス中の
測定対象ガス成分を、ガス成分Bと同定することができ
る。
【0015】試料ガス中の測定対象ガス成分の濃度変動
に妨害されることなく、測定対象ガス成分に固有の脱着
応答曲線を得ることができるので、ガス成分の同定に、
吸着応答曲線ではなく、脱着応答曲線を用いることによ
り、ガスセンサ1つでも測定対象ガス成分を同定するこ
とができる。
【0016】実施の形態2 実施の形態2では、測定対象ガス成分および既知のガス
成分の脱着応答曲線をある関数に近似し、その関数の係
数を用いて脱着応答曲線の形状を比較することにより、
ガス成分を同定する。測定対象ガス成分の係数の値を、
あらかじめ記録しておいた既知のガス成分の脱着応答曲
線をその関数に近似したときの係数の値と比較すること
により、測定対象ガス成分を同定する。脱着応答曲線を
近似した関数の係数の値の比較は、コンピュータなどで
自動化することができる。
【0017】脱着応答曲線を近似する関数としては、た
とえば、tを脱着開始からの経過時間、Tiを1つまた
は複数の実数とした指数関数exp(−t/Ti)を含
む多項式を用いることができ、また、その関数の係数と
してTiを用いることができる。具体的には、脱着応答
曲線を近似する関数として、多項式Σ(ai・exp
(−t/Ti))+bで表わされる関数を用いて、係数
として1つのTi(T1)または複数のTiを用いるこ
とができる。aiは実数である。
【0018】たとえば、既知の物質の脱着応答曲線から
求めた時定数を情報処理装置内に記憶させておき、測定
値と比較することにより未知の物質(測定対象ガス成
分)を同定することができる。
【0019】脱着応答曲線を、項数が多い多項式で表わ
される関数に近似すると、近似曲線の精度が向上し、そ
れとともにガス成分の同定の精度も向上する。たとえ
ば、a1、a2およびbを実数として、a1・exp
(−t/T1)+a2・exp(−t/T2)+bの3
項で表わされる関数に近似することにより、T1および
T2の2つの時定数を用いて同定することができる。同
様にして、4項以上の和で表わされる関数に近似して、
その定数を比較することにより、同定することができ
る。項数が多い関数(たとえば、3項以上で表わされる
関数)に近似することにより、ガスセンサ11の吸着膜
1が必ずしも均一でないことや、膜の厚さ方向へガス成
分が拡散することや、ガス成分が多層吸着することによ
る精度の低下を補正することができる。
【0020】なお、いずれの式においても、実数bが0
であれば、理想的な脱着応答曲線となり完全脱着する場
合を示す。しかし、試料ガス中に主成分の測定対象ガス
成分以外のガス成分が含まれ、これが非可逆的な吸着を
起こしたり、測定対象ガス成分と比較して非常に大きい
脱着時定数を有していたり、測定中にセンサの特性が部
分的に変化したりすると、0以外の値を有することにな
る。よって、脱着応答曲線を近似する関数(近似式)と
しては、はじめからbを0とすることもできるが、場合
によってはbも一緒に求める近似方法を選ぶことが必要
である。近似方法としては、たとえば、最小二乗法を利
用することができる。
【0021】脱着応答曲線の時定数(係数)は、脱着応
答曲線が近似的に応答量f=a・exp(−t/T)で
表わされる場合には、fと脱着速度df/dtを求め、
T=−f/(df/dt)より容易に求めることができ
る。脱着速度df/dtは、1秒間〜5分間程度の時間
間隔で取得したfの差をその時間間隔で除することや、
図面上で接線を引いて、その傾きを求めることによって
近似的に求めることができる。計算で求める場合には、
多点の平均化などのノイズ処理が必要な場合が多い。
【0022】実施の形態3 実施の形態3では、脱着速度、脱着応答曲線の傾き、ま
たは、応答量の値を用いて脱着応答曲線の形状を比較す
ることにより、ガス成分を同定する。
【0023】たとえば、脱着速度または脱着応答曲線の
傾きと脱着時の応答量とを併用して脱着応答曲線の形状
を比較することにより、ガス成分を同定することができ
る。しかし、分子量の大きな高沸点化合物の場合には、
指数関数で近似することや、脱着時の応答量と脱着速度
の両方の値を用いなくとも、応答量を脱着開始時の応答
量で除してノーマライズした脱着速度のみを用いること
により、ガス成分の同定を行なうことができる。分子量
の大きな高沸点化合物は、吸着時定数および脱着時定数
が大きいので、1時間以内などの短時間であれば吸着曲
線および脱着応答曲線がほぼ一定の応答速度(脱着速
度)の直線的な応答曲線(脱着応答曲線)とみなすこと
ができるからである。これはTがtに比べて大きい場合
には数学的にa・exp(−t/T)がa・(1−t/
T)に近似できることに相当する。
【0024】脱着応答曲線の時定数を近似曲線などを使
用して求める方法は、複雑なアルゴリズムを必要とする
が、応答量および脱着速度から求める方法によれば、複
雑なアルゴリズムを必要とすることなく、容易に測定対
象ガス成分を同定することができる。
【0025】実施の形態4 実施の形態4では、ガスセンサに、測定対象ガス成分を
含有する試料ガスを流したのちに、応答量が設定値に達
した時点で脱着ガスを流すことによって測定した脱着応
答曲線を用いて脱着応答曲線の形状を比較することによ
り、ガス成分を同定する。
【0026】ガスセンサの測定対象ガス成分に対する応
答量が、設定値に達した時点で、試料ガスから脱着ガス
に切り替えることにより測定した脱着応答曲線から時定
数を求めること、または、脱着開始からの時間を決めて
おいて脱着応答量を求めることによって同定の正確度を
向上させることができる。未知のガス成分の時定数また
は脱着応答量を、既知のガス成分のそれらの値と比較す
ることによりガス成分の同定を行なうことができる。
【0027】脱着応答曲線が、指数関数で完全に近似で
きる場合には、近似により求めた時定数は脱着開始時の
応答量には依存しないが、実際には不完全であるため、
前記のように脱着ガスに切り替える条件を統一すること
により、同定の精度を向上させることができる。
【0028】実施の形態5 実施の形態5では、ある時点の脱着速度または脱着応答
曲線の接線の傾きを用いて脱着応答曲線の形状を比較す
ることにより、ガス成分を同定する。ある時点は、たと
えば、応答量が設定値に達してから脱着を開始し、脱着
を開始してから一定の設定時間を経過した時点とするこ
とができる。
【0029】既知のガス成分(既知試料)に対して設定
した応答量が得られた時点で、脱着ガスに切り替え脱着
開始後一定時間経過後の応答量と脱着速度を記録したデ
ータベースと未知の測定対象ガス成分(未知試料)の脱
着開始後一定時間経過後の応答量と脱着速度との比較を
行なうことによって同定を行なうことができる。
【0030】近似曲線をa・exp(−t/T)とし、
既知試料のaおよびTをa0およびT0とする。一方未
知試料についても同様に、aおよびTをaxおよびTx
とすると、脱着開始時(t=0)の式量はaxとなる。
よって、脱着開始時の応答量を統一することはa0=a
xということであり、不明変数はTxのみとなる。
【0031】よって、脱着時間を、たとえば、t1で統
一すれば、未知試料に対する応答量はa0・exp(−
t1/Tx)となるので、想定される物質に対する応答
量a0・exp(−t1/T0)の値を、あらかじめ測
定して求めておいたり、最小二乗法によりあらかじめ求
めておいた既知試料に対するaおよびT0を用いて計算
で求めておき、未知試料の応答量a0・exp(−t1
/Tx)と比較することにより、未知試料中の測定対象
ガス成分を同定することができる。
【0032】このように脱着ガス開始後一定時間経過後
の応答量を既知試料の脱着ガス開始後一定時間経過後の
応答量と比較することにより未知試料(測定対象ガス成
分)の同定を行なうことができる。この方法では、実施
の形態2記載の方法に比べて複雑な演算を行なう必要が
なく、容易に測定対象ガス成分の同定を行なうことがで
きる。
【0033】実施の形態6 実施の形態6では、応答量が設定値に達してから脱着を
開始し、脱着を開始してからの応答量の変化量が設定値
に達した時点の脱着速度または脱着応答曲線の接線の傾
きを用いて脱着応答曲線の形状を比較することにより、
ガス成分を同定する。周波数が設定量(この場合には1
0Hz)だけ減少するまでの経過時間が物質により異な
るので一定時間経過後の応答量を用いてガス成分の同定
をすることができる。
【0034】すなわち、設定した応答量が得られた時点
で試料ガスから脱着ガスに切り替え、脱着開始後一定の
応答量の減少が確認された時点の脱着速度と経過時間か
らガス成分の同定を行なうことができる。既知のガス成
分に対して脱着開始後一定の応答量の減少が確認される
までの経過時間とその時点の脱着速度を記録したデータ
ベースと未知の測定対象ガス成分の脱着開始後一定の応
答量の減少が確認されるまでの時間と脱着速度との比較
を行なうことによって同定を行なう。
【0035】以上に示した実施の形態1〜6では、同定
すべき試料ガス(測定対象ガス成分)として、ドデカン
などの純粋な炭化水素蒸気の例を示したが、ガソリン、
灯油、軽油、重油などの有機化合物の混合物でも同様に
同定できる。これらの石油系の試料は非常に多岐にわた
る混合物であるので、脱着応答曲線は完全な形で指数関
数に近似することはできないが、不完全ながらもそれに
近似できるし、また、同じサンプルに対しては同じ形状
の脱着曲線を示すので、同定が可能となる。
【0036】ただし、油種により脱着速度が遅いものが
あるため、早期の同定を必要とする場合は、実施の形態
5記載の方法、すなわち一定時間経過後の脱着応答量を
利用することにより同定することができる。
【0037】実施の形態7 本発明の定量方法では、実施の形態1、2、3、4、5
または6記載の方法によってガス成分の同定を行ない、
同定されたガス成分の吸脱着にかかわる既知の情報と、
応答曲線の大きさまたは形状にかかわる情報とから、試
料ガス中の測定対象ガス成分の濃度を定量する。すなわ
ち、実施の形態1、2、3、4、5または6記載の方法
により同定したガス成分に対するガスセンサの応答量の
変化から、測定対象ガス成分の濃度の定量と経時変化を
求める。したがって、本発明の定量方法によれば、定量
したい時点のリアルタイムの応答曲線(すなわち、試料
ガスを検出中の応答曲線)と、測定対象ガス成分の定性
結果(物質名)から、すぐに測定対象ガス成分の定量を
することができる。本発明の定量方法では、たとえば、
(1)応答の測定、(2)脱着応答曲線の取得、(3)
計算による物質名の特定(定性)、(4)その物質の吸
脱着情報の取得、(5)応答の測定、(6)応答曲線か
ら計算によりリアルタイムで定量評価という手順で、測
定対象ガス成分の定量をすることができる。応答曲線の
大きさまたは形状にかかわる情報としては、たとえば、
脱着速度、脱着応答曲線の傾き、または応答量を用いる
ことができる。
【0038】測定対象ガス成分の濃度が一定でかつ変化
しない場合は、その応答量とそのガス成分固有の変換係
数の積を求めることにより濃度を定量することができ
る。測定対象ガス成分の濃度が変化する場合は、そのガ
ス成分固有の応答量と応答速度を利用することにより、
濃度変化を求めることができる。
【0039】濃度が変化しても、ヘキサンなどのように
定常状態に達する時間が早い物質に対しては、応答量と
換算係数の積をとることにより、濃度変化を求めること
ができる。しかし、分子量の大きなオクタデカンや軽油
や重油のように応答が定常状態に達するのに時間がかか
るものについては、応答速度と応答量を用いて濃度の経
時変化を求める必要がある。応答量と応答速度から濃度
の経時変化を求める演算方法には、使用するセンサとガ
ス成分に適した演算方法を用いる必要がある。
【0040】応答量と応答速度から濃度の定量と経時変
化を求める方法の一例を以下に説明する。一例としてガ
スセンサとして、EBセンサを用い、試料が炭化水素で
あるときの濃度と濃度の経時変化を導出する方法につい
て説明する。
【0041】吸着膜1が炭素原子と水素原子で構成され
たEBであり、測定対象ガス成分がが炭素原子と水素原
子で構成された炭化水素である場合、吸着サイトが無限
にあると仮定した演算式を利用するのが適している。こ
れまでの実験結果より、測定の範囲(1000ngの吸
着)では吸着サイトが無限であるという挙動が得られて
いる。
【0042】吸着の式はdN/dt=ka’’・α・μ
・A、脱着の式はdN/dt=−kd’・Nで表わすこ
とができる。Nは単位面積あたりの吸着分子数、k
a’’は吸着定数、αは吸着確率、μは単位面積単位時
間あたりの衝突数、Aは吸着サイト数、kd’は脱着定
数である。よって吸脱着の式はdN/dt=ka’’・
α・μ・A−kd’・Nとなる。μは気相濃度Cに比例
する量であり、前式はdN/dt=ka’・C−kd’
・Nで表わされる。ka’は定数である。また、応答量
(周波数変化量f)は、吸着数Nに比例するため、前式
を下記式(1)と書ける。 df/dt=ka・C−kd・f (1) ここで、kaは吸着定数、kdは脱着定数である。未定
定数kaとkdは、既知濃度のガス成分の濃度をステッ
プ関数的に変化させ、吸脱着時の吸着曲線と脱着応答曲
線のそれぞれを指数関数近似することにより求めること
ができる。式(1)は濃度を求める下記式(2)に変形
することができる。 C=[df/dt+kd・f]/ka (2) 式(2)を差分式で表わすと、下記式(3)になる。 C=[(f(t+Δt)−f(t))/Δt+kd・f(t)]/ka (3) ここでΔtは1秒〜5分程度の時間を表わす。(f(t
+Δt)−f(t))/Δtは応答曲線の接線の傾きと
考えることができる。kaとkdはガス成分に固有の値
であり、以上の考察から、その固有の値と応答曲線の接
線の傾きおよび応答量を用いて、任意の時点の濃度を求
めることができることがわかる。
【0043】以上のように、定常状態になるのが遅い物
質に対しても、応答量と応答速度から逐次濃度を求める
ことができる。
【0044】ここでは、吸着サイトは無限にあると仮定
した式を用いたが、ガスセンサとガス物質の関係によ
り、ラングミュアー式のように、吸着サイトの数が確定
しているという式やそのほかの最適な式を用い、応答量
と応答速度から濃度を導出することが可能である。
【0045】実施の形態8 本発明のガス同定または定量装置は、ガス流路、ガス流
路中に設置したガスセンサ、ガスの流れから見てガスセ
ンサの前に設置したガス流路に流す試料ガスと脱着ガス
とを切り替える機構、試料ガスから脱着ガスに切り替え
たのちの時間または応答量の変化が脱着の開始を示した
のちの時間を計測する機構、ガスの応答量を記録する脱
着応答曲線測定装置、および、脱着応答曲線から実施の
形態1、2、3、4、5、6または7記載の方法により
測定対象ガス成分の同定または定量を行なうソフトウエ
アを含有する情報処理装置を有する。
【0046】本発明のガス同定または定量装置によれ
ば、種々の分野における安全管理や環境計測などの様々
な分野などでセンサを使用し、検知、監視を行なう場合
に求められる、発生したガス成分の同定、濃度の定量、
濃度の経時変化の追跡をすることができる。
【0047】1素子のガスセンサを用いた本発明のガス
同定または定量装置(ガス検出装置)の一実施の形態の
構成を図6に示す。
【0048】雰囲気空気の検知、監視を行なう場合には
雰囲気空気が試料ガスとなる。本装置は、エアフィルタ
ー17を備え、脱着ガスとして、エアフィルタ17を通
過した空気(清浄化空気)、または、ボンベ中の圧縮ガ
スを用いることができる。雰囲気空気および清浄化空気
は常にポンプ16により一定流速でガスセンサ11の方
向に流れている。ガスセンサ11直前には雰囲気空気と
清浄化空気とを切り替える装置、たとえば電磁4方バル
ブ(コック)18が備えられており、コンピュータ14
の指令により、雰囲気空気または清浄化空気がガスセン
サ11に流れる。必要でない空気は大気解放される。セ
ンサ11からでた空気は大気中に解放される。ガスセン
サ11の出力(応答量)は、アナログ/デジタル変換器
(インターフェース)15を通してコンピュータ14に
入力される。
【0049】ガスセンサ11としてEBセンサを用い、
既知試料としてヘキサン、ドデカン、ヘキサデカンおよ
びオクタデカンの定性結果および定量結果については、
すでに述べたとおりである。コンピュータ14は、たと
えば、既知のガス成分のデータを保有し、脱着応答曲線
を指数関数などに近似することができるソフトウエア、
既知のガス成分のデータと測定対象ガス成分の脱着応答
曲線から求めた係数などとを比較してガス成分を同定す
るソフトウエア、実施の形態7記載の方法によりガスの
定量をすることができるソフトウエアを含んでおり、そ
れを実行することができる。
【0050】水をバブリングした清浄化空気を試料ガス
として、ガス成分の定性および定量をすることによっ
て、水質汚染を検知することもできる。すなわち、試料
ガスの調製装置として、たとえば、軽油や重油などの油
類、トリクロロエチレンなどの有機塩素化合物、ジェオ
スミンなどの悪臭物質など揮発性物質が懸濁または溶解
した水を清浄化空気でバブリングする装置を前記ガス定
性または定量装置(ガス検知装置)に装着することによ
り、水の油臭検知や悪臭検知などの水中の揮発成分の検
知装置を構成することができる。
【0051】コンピュータ14は必ずしも同じ装置内に
ある必要はなく、有線または無線のデータ回線で結ばれ
た遠隔地にあってもよい。また、装置内または遠隔地に
あるコンピュータ14は、測定したデータ(脱着応答曲
線)および解析結果を表示したり、この結果に基づきほ
かの指令を行なったり、ほかのコンピュータにデータや
解析結果を電送してもよい。また、コンピュータ14は
マイクロプロセッサを含み指令した命令を実行できるも
のなら何でもよい。
【0052】実施の形態9 実施の形態9では、複数のガスセンサで測定した複数の
脱着応答曲線を用いてガス成分を同定し、また、ガス成
分の濃度を定量する。実施の形態9では、ガス成分の同
定または定量に、同一の性質を有する複数のガスセンサ
を備え、少なくとも1つのガスセンサは試料ガスを流し
続けられるようにした装置を用いる。
【0053】ガスセンサを1つ有する装置では、ガスセ
ンサに脱着ガスを流しているあいだ(脱着中)は、試料
ガスを流し続けること(ガスセンサに測定対象ガス成分
を吸着させること)ができない。
【0054】複数のガスセンサを備えた装置を用いるこ
とによって、少なくとも1つのガスセンサは試料ガスを
流し続けることができる。
【0055】実施の形態9では、2つのセンサ11a、
11bで測定した複数の脱着応答曲線を用いて、ガス成
分を同定し、ガス成分の濃度を定量し、ガス成分の濃度
の経時変化を求める。図7に2つのセンサ11a、11
bを備えたガス検出装置の一例を示す。
【0056】この装置は実施の形態8(図7)記載の装
置(ここに示したガスセンサ11aをガスセンサA、電
磁4方バルブ18aを電磁バルブAとする)に、ガスセ
ンサAと同一のガスセンサ(ガスセンサB)11bと、
電磁4方バルブ(電磁バルブB)18bを備える。測定
時には、試料ガスをガスセンサに供給する前に清浄化空
気を両センサに供給するが、測定開始後、試料ガスをガ
スセンサに供給し始めたのちは、ガスセンサBには清浄
化空気を流さない。
【0057】一方、ガスセンサAについては実施の形態
1〜8に示したように必要に応じて清浄化空気である脱
着ガスをコンピュータの指令で流すことができる。これ
により、ガスセンサBにより常に試料ガスに対する応答
を取得できると同時に、ガスセンサAを用いて試料ガス
中の未知成分(測定対象ガス成分)の同定を行なうこと
ができる。
【0058】実施の形態8と同様に、バブリング装置な
どをもうけて油臭検出装置などの水中の揮発成分の検知
装置としても用いることができる。
【0059】実施の形態10 実施の形態10では、異なる性質を有する複数のガスセ
ンサで測定した複数の脱着応答曲線を用いてガス成分を
同定し、また、ガス成分の濃度を定量する。
【0060】実施の形態9においては、同一のセンサを
2つ使用したが、異なるセンサを用いてもガス成分の同
定、濃度の定量と経時変化を前記の方法により求めるこ
とができる。この場合、それぞれのセンサの脱着定数や
脱着応答曲線の形状の組み合わせから、未知試料を主成
分分析などの手法により同定することができる。
【0061】
【実施例】実施例1(実施の形態2) 図2に示す装置を用いて、未知の測定対象ガス成分の脱
着応答曲線を測定し、脱着応答曲線を指数関数a・ex
p(−t/T)+bに近似し、時定数Tを用いて、脱着
応答曲線の形状を、既知のガス成分の脱着応答曲線の形
状と比較して、ガス成分の同定を行なった。
【0062】ガス成分の吸脱着現象を利用するガスセン
サとして図1に示す水晶振動子式センサを用いた。AT
カット9MHzの水晶振動子3を用い、吸着膜1として
エチレンブテン共重合体を用いた。エチレンブテン共重
合体をEB、エチレンブテン共重合体をガス吸着膜1と
した水晶振動子センサをEBセンサと記載する。EBセ
ンサは、炭化水素に高感度であるので、炭化水素の同定
にとくに有用である。
【0063】EBセンサを用いて、ヘキサン、ドデカン
およびテトラデカンの脱着応答曲線を測定し、その脱着
応答曲線を指数関数a・exp(−t/T)+bに近似
して、係数T(時定数とも呼ばれる)を求めた。脱着応
答曲線を求める際には、試料の蒸気(測定対象ガス成
分)を所定の濃度になるようにチッ素ガスで希釈し、そ
の希釈した試料ガスの測定を行なった。
【0064】マスフローコントローラ7を制御して、チ
ッ素ガスによる試料蒸気の希釈率を変えることによって
種々の濃度の試料ガスの測定をすることができる。マス
フローコントローラ7を制御して、水晶振動子式センサ
11に、試料蒸気を流さないようにし、チッ素ガスのみ
を流すことによって、良好な脱着ガスを得ることができ
た。
【0065】図2中、4は試料を入れるためのガラス製
試料ビンであり、恒温槽中に設置し、常に一定の温度に
保持した。5は試料、6はチッ素ボンベ、7はマスフロ
ーコントローラ、8はガスを加湿するために蒸留水を入
れた加湿ビン、9は湿度調整を行なうための調湿器、1
0は水晶振動子式センサを設置する測定セルである。水
晶振動子式センサ11は発振器12により共振周波数で
発振しており、測定対象ガス成分の吸着による水晶振動
子の共振周波数の変化は、周波数カウンタ13で読み取
り、コンピュータ14に表示した。
【0066】それぞれの測定対象ガス成分に対して、あ
る応答量が得られた時点で、試料ガスから脱着ガス(チ
ッ素ガス)に切り替えることにより、脱着応答曲線を測
定した。
【0067】未知の炭化水素(測定対象ガス成分)、ヘ
キサン、ドデカンおよびテトラデカンの測定を行なった
ときの応答量の変化(脱着開始時における応答量を1に
ノーマライズした)、およびこのノーマライズしたデー
タをexp(−t/T)に最小二乗法により近似した近
似曲線を図3に示す。
【0068】未知の炭化水素、ヘキサン、ドデカンおよ
びテトラデカンの時定数Tは最小二乗法によりそれぞれ
90秒、30秒、100秒、300秒と求められ、未知
の炭化水素の時定数はドデカンのそれに近く、ドデカン
であると同定された。
【0069】実施例2(実施の形態3) 図4に未知の試料(測定対象ガス成分)、テトラデカン
およびオクタデカンの脱着応答曲線(脱着開始時の応答
量で応答量を除することによりノーマライズしてある)
とこれを1−t/Tで近似した近似曲線を併せて示す。
また、表1には、未知の試料の測定時と前測定時との差
を測定間隔時間で除した脱着速度を示す。
【0070】図4から、未知の試料はオクタデカンであ
ることが分かった。このとき未知の試料およびオクタデ
カンに対する係数1/Tはそれぞれ0.00088[1
/秒]および0.00091[1/秒]であった。一
方、表1からは、脱着初期においては、傾きは0.00
14[1/秒]などと大きすぎるが、200秒以降は
0.00087[1/秒]などと近似曲線とほぼ一致
し、2点間の差から充分に脱着速度を求めることができ
ることがわかった。
【0071】
【表1】
【0072】実施例3(実施の形態5) 実施例1と同様にして測定した測定対象ガス成分の脱着
応答曲線の形状を、応答量が50Hzに達してから脱着
を開始し、脱着を開始してから20秒後の脱着速度(脱
着応答曲線の接線の傾き)を用いて比較することによ
り、ガス成分の同定を行なった。
【0073】図3に、応答量が約50Hzに達した時点
からの脱着応答曲線を示す。未知試料、ヘキサン、ドデ
カンおよびヘキサデカンの脱着開始20秒後の応答量は
それぞれ10Hz、24.3Hz、9.1Hzおよび3.
2Hzであった。未知試料の応答量10Hzはドデカン
の応答量9.1Hzに最も近いので未知試料はドデカン
であると推定できた。
【0074】実施例3では、20秒後の応答量と脱着速
度からガス成分を同定したが、この20秒という値に限
定されるものではなく、測定対象ガス成分により脱着速
度が大きく異なるため、目的に適した時間を選定するこ
とができる。
【0075】実施例4(実施の形態6) 実施例1と同様にして測定した測定対象ガス成分の脱着
応答曲線の形状を、応答量が50Hzに達してから脱着
を開始し、脱着を開始してからの応答量が10Hz減少
した時点の脱着速度(脱着応答曲線の接線の傾き)を用
いて比較することにより、ガス成分の同定を行なった。
【0076】図3より、10Hz減少したときに相当す
る応答量40Hz(図3ではノーマライズしてあるので
0.8Hz)のときの応答時間を求めると、未知試料、
ヘキサン、ドデカンおよびヘキサデカンそれぞれに対し
て約20秒、約15秒、約20秒および約35秒となっ
た。未知試料の脱着時間はドデカンに対する脱着時間と
等しいので未知試料はドデカンであることが分かる。
【0077】上記説明において、50Hzの応答量が得
られた時点で試料ガスから脱着ガスに切り替え、そのの
ち、応答量が10Hz減少した時点での脱着速度と経過
時間を比較したが、脱着ガスに切り替えるときの応答量
や応答減少量の値は、上記の値に限定されるものではな
く、状況に応じて最適な値を使用することができる。
【0078】実施例5(実施の形態7) 測定対象ガス成分の脱着応答曲線の形状を、既知のガス
成分の脱着応答曲線の形状と比較することによってガス
成分の同定を行ない、脱着応答曲線の大きさまたは形状
にかかわる情報と、同定されたガス成分の吸脱着にかか
わる既知の情報とから、試料ガス中の測定対象ガス性分
の濃度を定量した。
【0079】EBセンサを用い、試料には炭化水素であ
るオクタデカンを用い、オクタデカンの濃度を変化させ
たときの測定を行ない、濃度の経時変化を導出した。
【0080】測定には図2の測定評価装置を用いた。チ
ッ素ガスによるオクタデカン蒸気の希釈率を変化させる
ことにより濃度を変化させた。図5にオクタデカンの濃
度変化、それに対するEBセンサの応答曲線、また、あ
らかじめ、実施の形態1〜5の方法で定性した物質に対
する吸着定数と脱着定数をハードディスクなどの記憶装
置の中から呼び出しておく。
【0081】式(3)により導出した濃度変化を示す。
これより、上記演算式で導出した濃度の定量値と経時変
化が実際の濃度と経時変化と類似していることが確認さ
れた。
【0082】実施例6(実施の形態9) 同一の性質を有する2つのガスセンサで測定した2つの
脱着応答曲線を用いて、軽油の同定および濃度の定量を
行なった。ガスセンサAの脱着応答曲線から脱着定数を
求め、これを用いて試料ガス中の成分を軽油と同定し、
あらためてガスセンサBの脱着応答曲線から軽油の濃度
変化を求めてプロットした。結果を図8に示す。
【0083】
【発明の効果】本発明のガス成分の同定方法(請求項1
〜8)によれば、多数のセンサを必要とすることなく、
コストを削減でき、かつ濃度が経時変化する測定対象ガ
ス成分を容易に同定することができる。
【0084】本発明のガス成分の同定方法(請求項9)
によれば、脱着にかかわる評価を複数のガス検知センサ
に対して行なうので、試料ガス中の測定対象ガス成分を
効率よく同定することができる。
【0085】本発明の試料ガス中の測定対象ガス成分の
濃度を定量する方法(請求項10および11)によれ
ば、濃度が経時変化する測定対象ガス成分を容易に同定
し、濃度の定量と経時変化を求めることができる。
【0086】本発明のガス同定または定量装置(請求項
12および13)によれば、濃度が経時変化する測定対
象ガス成分を容易に同定し、濃度の定量と経時変化を求
めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 水晶振動子式センサの断面図である。
【図2】 本発明の一実施の形態のガス同定または定量
装置の模式図である。
【図3】 ヘキサン、ドデカン、テトラデカンおよび未
知試料の脱着応答曲線(実施例1の結果)を示すグラフ
である。
【図4】 テトラデカン、オクタデカンおよび未知試料
の脱着応答曲線(実施例2の結果)を示すグラフであ
る。
【図5】 濃度変化推定時のセンサ応答、気相濃度およ
び計算気相濃度の変化(実施例5の結果)を示すグラフ
である。
【図6】 本発明の一実施の形態のガス同定または定量
装置の模式図である。
【図7】 本発明の一実施の形態のガス同定または定量
装置の模式図である。
【図8】 2センサによるガス検知器を用いた軽油濃度
推定結果(実施例6の結果)を示すグラフである。
【符号の説明】
1 吸着膜、2 下地蒸着金電極、3 水晶基板、4
試料ビン、5 試料、6 チッ素ボンベ、7 マスフロ
ーコントローラ、8 加湿ビン、9 調湿器、10 測
定セル、11 水晶振動子式センサ、12 発振器、1
3 周波数カウンタ、14 コンピュータ、15 イン
ターフェース、16 エアポンプ、17 フィルタ、1
8 電磁4方コック。
フロントページの続き (72)発明者 土方 健司 東京都千代田区丸の内二丁目2番3号 三 菱電機株式会社内 Fターム(参考) 2G046 AA22 AA23 AA34 DC16 DC17 DC18 EB01 2G047 AA01 BA04 BC04 BC15 2G060 AA01 AB16 AB19 AE19 BA01 HC19 HC21 KA01

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 測定対象ガス成分の脱着応答曲線の形状
    を、既知のガス成分の脱着応答曲線の形状と比較するこ
    とを特徴とするガス成分の同定方法。
  2. 【請求項2】 ガスセンサに、測定対象ガス成分を含有
    する試料ガスを流したのちに、当該試料ガスよりも測定
    対象ガス成分の濃度が低い脱着ガスを流すことによって
    測定した脱着応答曲線を用いる請求項1記載のガス成分
    の同定方法。
  3. 【請求項3】 脱着応答曲線をある関数に近似し、その
    関数の係数を用いて脱着応答曲線の形状を比較する請求
    項1記載のガス成分の同定方法。
  4. 【請求項4】 tを脱着開始からの経過時間、Tiを1
    つまたは複数の実数とし、ある関数を指数関数exp
    (−t/Ti)を含む多項式とし、Tiを係数として用
    いる請求項3記載のガス成分の同定方法。
  5. 【請求項5】 脱着速度、脱着応答曲線の接線の傾き、
    または、応答量の値を用いて脱着応答曲線の形状を比較
    する請求項1記載のガス成分の同定方法。
  6. 【請求項6】 応答量が設定値に達した時点で脱着ガス
    を流す請求項2記載のガス成分の同定方法。
  7. 【請求項7】 ある時点の脱着速度まはた脱着応答曲線
    の接線の傾きを用いて脱着応答曲線の形状を比較する請
    求項1記載のガス成分の同定方法。
  8. 【請求項8】 ある時点を、応答量が設定値に達してか
    ら脱着を開始し、脱着を開始してから一定の設定時間を
    経過した時点、または、脱着を開始してからの応答量の
    変化量が設定値に達した時点とする請求項7記載のガス
    成分の同定方法。
  9. 【請求項9】 複数のガスセンサで測定した複数の脱着
    応答曲線を用いる請求項2記載のガス成分の同定方法。
  10. 【請求項10】 請求項1、2、3、4、5、6、7、
    8または9記載の方法によってガス成分の同定を行な
    い、同定されたガス成分の吸脱着にかかわる既知の情報
    と、応答曲線の大きさまたは形状にかかわる情報とか
    ら、試料ガス中の測定対象ガス成分の濃度を定量する方
    法。
  11. 【請求項11】 脱着応答曲線の大きさまたは形状にか
    かわる情報が、脱着速度、脱着応答曲線の接線の傾き、
    または、応答量である請求項10記載の試料ガス中の測
    定対象ガス成分の濃度を定量する方法。
  12. 【請求項12】 ガス流路、ガス流路中に設置したガス
    センサ、ガスの流れから見てガスセンサの前に設置した
    ガス流路に流す試料ガスと脱着ガスとを切り替える機
    構、試料ガスから脱着ガスに切り替えたのちの時間また
    は応答量の変化が脱着の開始を示したのちの時間を計測
    する機構、ガスの応答量を記録する脱着応答曲線測定装
    置、および、脱着応答曲線から請求項1、2、3、4、
    5、6、7、8、9、10または11記載の方法により
    測定対象ガス成分の同定または定量を行なうソフトウエ
    アを含有する情報処理装置を有するガス同定または定量
    装置。
  13. 【請求項13】 同一の性質を有する複数のガスセンサ
    を備え、少なくとも1つのセンサは試料ガスを流し続け
    られるようにした請求項12記載のガス同定または定量
    装置。
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