JP2001303088A - 貼り付け油及びこれを用いた時計の製造方法 - Google Patents

貼り付け油及びこれを用いた時計の製造方法

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JP2001303088A
JP2001303088A JP2000116022A JP2000116022A JP2001303088A JP 2001303088 A JP2001303088 A JP 2001303088A JP 2000116022 A JP2000116022 A JP 2000116022A JP 2000116022 A JP2000116022 A JP 2000116022A JP 2001303088 A JP2001303088 A JP 2001303088A
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Yuji Akao
赤尾  祐司
Masayuki Koike
昌之 小池
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 時計の自動化製造ラインで製造中に部品がず
れたりはずれたりすることのない部品の貼り付け油を提
供すること。 【解決手段】 基油に少なくともポリオールエステルま
たは、炭素数が少なくとも30以上のパラフィン系炭化
水素油を含有し、これに少なくとも耐摩耗剤を0.1か
ら8wt%、金属不活性剤を混合し、粘度が200mP
a・sから400mPa・sであり、90℃で放置した
ときの重量変化が1.62wt%以下で、全酸化が0.
2mgKOH/g以下であることを特徴とする貼り付け
油を使用する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、貼り付け油に関し
特に時計の輪列部以外に用いて有効な貼り付け油であ
り、又この貼り付け油を用いた時計の製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】時計を大きく分けるとメカ式時計と電子
式時計とがある。メカ式時計はゼンマイを駆動源として
動作する時計であり、電子式時計は電気の力を利用して
動作させる時計である。電子式もメカ式の時計も共に時
刻を表示させるため、時針、分針、秒針を駆動するため
の回転する輪列系や、輪列部以外のおしどり、カンヌ
キ、ツヅミ車、レバー等の摺動部を組み合わせて表示し
ている。時計製造の初期は手で時計部品を一つづつ組み
上げて完成品を得ていたが、近年では自動化が進み1秒
で1つの時計を作れる高速な自動化ラインによって製造
されている。
【0003】近年本出願人は、1次電池で一定時間動作
するもの、光発電素子や熱発電素子と2次電池とを組み
合わせて電池交換をしなくても動作し続けるようにした
時計などを提案している。また、用途も幅広くなり、ス
カイダイビングやスキューバダイビング用、販売形態と
しては、完成時計の他、モジュールでの販売も行うよう
になった。この様に、用途や、販売形態の拡大、時計の
形態の変貌により、時計モジュールには耐湿度性、耐熱
性、耐低温性、熱衝撃性、長寿命性が求められるように
なる。また、この他時計を作成する材料も加工性に優れ
る真鍮が使用される様になったため、金属に対する腐食
性も小さくてはならないようになってきた。
【0004】これまで本出願人は時計用潤滑油として、
例えばMOEBIUS社製Synt−Lubeを輪列部
を初め、輪列部以外にも使用してきた。材料の形はMixt
ureof synthetic hydrocarbones with ether and alcoh
ol groupsで材料の基油はMixture of Alkyl-Aryloxidib
utylenglycolesで添加剤としては、1.6% Alkylphenoxya
cid、1%未満で2,6-Di-tert-butyl-4-methylphenole、
C3-C14-Zn-dialkyldithiophosphateなどが添加されてい
る(MOEBIUS社Synt−LubeMSDS、カ
タログより転記)。
【0005】本出願人は、これまで時計を生産するに当
たり、3種の油を使い分けてきた。ロータの様に回転力
が弱い部分には低粘度の油、逆に回転力のある部分には
高粘度の油を使用してきた。輪列部以外の場所である組
立中に部品がずれたり落下するのを防ぐ為の貼り付け用
の油には高粘度の油を使用していた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従来の油を輪列部以外
に給油する箇所は、おしどり、カンヌキ、ツヅミ車など
摺動部と、摺動部ではない電池受けバネがある。いづれ
も組立中に部品がずれたり、はずれたりする問題がある
ため給油を行っている。
【0007】従来の潤滑油を輪列部や輪列部以外の部位
にも使用していると、時計が停止等の動作不良を発生し
てしまう現象が発生することがある。本出願人は動作不
良の時計を回収し修理するサービスステーションを有し
ており、動作不良の様子を調査したところ、油がゲル状
に変化したり、金属を腐食して黒色に変化するといった
問題を10年以上も前から検出していた。
【0008】このため、本出願人は、製造中に部品がず
れたりはずれたりすることのない摺動部ではない部分と
おしどりカンヌキといった摺動が行われる輪列部分以外
の貼り付け油を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の本発明の要旨は以下のとおりである。基油に少なくと
もポリオールエステルまたは、炭素数が少なくとも30
以上のパラフィン系炭化水素油を含有し、粘度が200
mPa・sから400mPa・sであることを特徴と
し、または、基油に少なくともポリオールエステルまた
は、炭素数が少なくとも30以上のパラフィン系炭化水
素油を含有し、これに少なくとも耐摩耗剤を0.1から
8wt%、金属不活性剤を混合し、粘度が200mPa
・sから400mPa・sであることを特徴とし、また
は、基油に少なくともポリオールエステルまたは、炭素
数が少なくとも30以上のパラフィン系炭化水素油を含
有し、これに少なくとも耐摩耗剤を0.1から8wt
%、金属不活性剤を混合し、粘度が200mPa・sか
ら400mPa・sであり、90℃で放置したときの重
量変化が1.62wt%以下で、全酸化が0.2mgK
OH/g以下であることを特徴とする貼り付け油を使用
する。
【0010】貼り付け油の添加剤の耐摩耗剤が中性リン
酸エステルまたは中性亜リン酸エステルであることを特
徴とし、金属不活性剤がベンゾトリアゾール誘導体であ
ることを特徴とする。また、酸化防止剤が添加されてい
ることを特徴とし、酸化防止剤がフェノール系またはア
ミン系酸化防止剤であることを特徴とし、アミン系酸化
防止剤がジフェニルアミン誘導体であることを特徴とす
る。また、時計の製造方法に於いて、貼り付け油を輪列
部以外に用いることを特徴とすることで解決できる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を実施
例を基にさらに詳しく説明する。
【0012】本発明に使用する貼り付け油は粘度が20
0mPa・s以上400mPa・s以下である事が必要
である。粘度が200mPa・sよりも低くなると部品
を製造中に仮に固定する貼り付け性能が低下して、部品
がずれたり、はずれたりしてしまう。一方、粘度が高す
ぎると給油装置からの安定して貼り付け油を吐出する事
が出来なくなる(方向が定まらなくなったり、吐出ミス
を発生する)ため400mPa・s以下であることが望
まれる。基油の粘度が目的の粘度に達しない場合は、公
知の粘度向上剤を用いたり、2種類以上の油を混合する
事もできる。以上の結果は20℃での測定値でる。
【0013】合成油の候補としては、エステル油、パラ
フィン系炭化水素油(PAO)、シリコーンオイルや、
従来品の様なエーテル、グリコールなどがある。従来品
の様な油を用いると、吸湿性があることから耐湿度性が
低下する。シリコーンオイルを使用した場合には潤滑性
が少ない上に、添加剤の溶解度が低いために潤滑性の向
上の限度がある。
【0014】また、この様な油は、金属表面で流れてし
まうので部品を貼り付ける機能がほとんどない。PAO
は時計用プラスチック材料に対して安定で時計用潤滑油
に適するが、低分子量の物はを使用すると蒸発特性が悪
いので炭素数が30以上の物が良い。エステル油は基油
自身が潤滑性を有し、溶解性が高いためにスラッジの発
生を抑制することが出来るため添加剤を少なくできる。
また、低温特性を満足する油を高温で使用できるように
するため粘度指数向上剤を添加する量を多く取れるので
有利である。
【0015】時計用金属材料には、銅、亜鉛を含む真鍮
や、ニッケル、鉄等があり、時計用プラスチック材料に
は、POM、PC、PS、PPEなどがある。これらの
材料と時計用油が接触したときに、時計材料を腐食した
り、膨潤させたり、スラッジを発生したりすることがあ
ってはならない。
【0016】また、時計は一定量の油で長時間潤滑を行
わなくてはならないため蒸発量が少なくなければならな
い。また、使用中に金属が著しく摩耗してはならないの
で、耐摩耗剤を添加することが必要であるが、添加する
耐摩耗剤は腐食性の無いものが好ましい。耐摩耗剤の添
加量は、添加効果が発現する最低量以上入っていること
が必要であるが、大過剰に添加しても効果の向上が期待
できないことから、最適な量を添加することが好まし
い。全酸化は、潤滑油の酸性成分の量を定量的に測定し
た値であるから、金属を腐食しない値以下にしておく必
要がある。時計に使用した場合は、長期にわたって金属
腐食を発生してはならないため、全酸化を現状の1.2
4mgKOH/gよりも小さくする必要がある。
【0017】また、長期にわたって品質を保つために、
金属を安定化させる金属不活性剤、油の酸化劣化を防止
するための酸化防止剤を添加することが好ましい。金属
不活性剤としては、本実施例に於いてはベンゾトリアゾ
ール誘導体、酸化防止剤としてはフェノール系、ジフェ
ニルアミン誘導体などのアミン系が使用できる。また、
時計は外装部品とモジュールとの組み合わせで完成時計
となるが、販売形態として、完成品の時計の他モジュー
ルとしても販売されるため、温度の他湿度にも安定でな
くてはならない。
【0018】(実施例)基油の種類の選定と、使用可能
な粘度範囲の検討を行った。シチズン時計製時計ムーブ
メント(No.2035:金属とプラスチック部品とか
らなる)、プラスチック部品を使用しているシチズン時
計製時計ムーブメント(No.7680とNo.103
0:プラスチック製部品が2035よりも多い)と、メ
カ式時計であるシチズン時計製時計ムーブメント(N
o.6650とNo.8200:主に金属部品からな
る)を、20℃で100、200、400、600mP
a・sの粘度のエステル油とPAOとシリコーンオイル
を用いて自動化製造ラインで組み立てた。
【0019】この結果、エステル油とPAOの200m
Pa・sと400mPa・sの油を用いた場合はいづれ
も組立工程において部品がずれたり、はずれたりするこ
となく時計の組立が出来た。シリコーンオイルを用いた
場合は、200mPa・s、400mPa・sであって
も途中でラインが停止したりすると油が流れてしまい部
品がずれたり、はずれたりするといった問題が生じた。
100mPa・sの場合はいずれの場合も部品を固定す
る力が弱く、部品がずれたり、はずれたりしてしまっ
た。400mPa・sの場合は給油機が吐出不良を起こ
し、貼り付け油の給油箇所がずれてしまったり、吐出ミ
スによって貼り付け油未載が発生して結果として部品の
ずれや、はずれが出てしまった。以上のことから、シリ
コーンオイルは時計用の貼り付け油として不向きであ
り、20℃に於いて200mPa・sから400mPa
・sのPAOとエステル油が適していることが判った。
結果を表1に示す。
【0020】
【表1】
【0021】次に最も時計に適している構造のエステル
を選定する。エステル油として、ジエステルに分類され
るアジピン酸ジエステル、セバシン酸ジオクチル、アジ
ピン酸ジイソデシル、アジピン酸トリデシル、ダイマー
酸ジオクチル、ポリオールエステルに分類されるネオペ
ンチルグリコール・カプリル酸カプリン酸混合エステ
ル、トリメチロールプロパン・吉草酸ヘプタン酸混合エ
ステル、トリメチロールプロパン・デカン酸オクタン酸
混合エステル、ノナン酸トリメチロールプロパン、ペン
タエリスリトール・ヘプタン酸カプリン酸を混合した混
合エステルを用いてシチズン時計製時計ムーブメントを
作成し、70℃で0.5気圧で1000時間放置した前
後で、針回し試験(リュウズを回すトルクを測定)と、
首引き試験(リュウズの首を引いたり押したりする力を
測定)を実施し、合格水準である、針回し耐久試験の場
合はトルクの変化量が50%以内であること、首引き耐
久試験の場合は力の変化が30%以内であるかどうかで
合否を判定した。
【0022】この結果、ポリオールエステルは放置前後
で針回しトルクの変化量、首引き試験の変化量は共に合
格水準をクリアしていた。給油した油の量の変化を観察
したところ、給油時とほぼ同量の油が残留し、色の変化
もなかった。ジエステルは放置前後で針回しトルクの変
化量、首引き試験の変化量は共に合格水準を越えてしま
い使用に耐えなかった。給油部の変化見たところ油の入
りが変化していた。この結果、時計用の貼り付け油とし
てはポリオールエステル油が優れていることが判った。
結果を表2にまとめる。
【0023】
【表2】
【0024】次に、PAOの蒸発量を比較して炭素数を
決めるための実験を行った。100℃での粘度がほぼ2
(PAO2とする)、3(PAO3とする)、4(PA
O4とする)、5(PAO5とする)mPa・sのPA
Oに20℃で200から400mPa・sの粘度となる
よう粘度向上剤としてメタクリレート系、オレフィン系
などを添加して目的の粘度範囲になる貼り付け油を作成
した。前記油を用いてシチズン時計製時計ムーブメント
を作成し、70℃で0.5気圧で1000時間放置した
前後で、針回し試験(リュウズを回すトルクを測定)
と、首引き試験(リュウズの首を引いたり押したりする
力を測定)を実施し、合格水準である、針回し耐久試験
の場合はトルクの変化量が50%以内であること、首引
き耐久試験の場合は力の変化が30%以内であるかどう
かで合否を判定した。
【0025】この結果、PAO4、PAO5は放置前後
で針回しトルクの変化量、首引き試験の変化量は共に合
格水準をクリアしていた。給油した油の量の変化を観察
したところ、PAO4、PAO5は給油時とほぼ同量の
油が残留し、粘度変化もなかった。PAO2、PAO3
は放置前後で針回しトルクの変化量、首引き試験の変化
量は共に合格水準を越えてしまい使用に耐えなかった。
PAO2とPAO3の給油量の変化見たところ減量が見
られた。前記PAOを直径60mmで深さ100mmの
容器に230gの潤滑油を精秤し、90℃、1000時
間放置したときの重量変化を測定したところPAO2は
15.6wt%、PAO3は8.35wt%、PAO4
は0.70wt%、PAO5は0.30wt%の減少が
観測された。
【0026】また、金属腐食性があり、使用には耐えな
いが蒸発量の比較のため従来品を用いて同様に実験を実
施したところ、放置前後で針回し試験、首引き試験共に
金属腐食が認められたが、油は残っていた。従来品の蒸
発量は1.62wt%であった。以上の結果、90℃で
1.62wt%以内の蒸発量であれば潤滑油が時計内に
残ることが判った。PAO本実施例に用いたPAOはP
AO2からPAO5になるに連れて炭素数が多くなって
いくもの用いている。PAO4の炭素数は30であった
ことから、時計用の油に適するPAOの炭素数は30以
上であることが判った。結果を表3にまとめる。
【0027】
【表3】
【0028】次に、使用可能な全酸化の範囲を求める。
ポリオールエステルに分類されるネオペンチルグリコー
ル・カプリル酸カプリン酸混合エステル、トリメチロー
ルプロパン・吉草酸ヘプタン酸混合エステル、トリメチ
ロールプロパン・デカン酸オクタン酸混合エステル、ノ
ナン酸トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール
・ヘプタン酸カプリン酸の混合エステル、PAO4、P
AO5を用いて、それぞれ全酸化が0.2、0.5、
1.0、1.2mgKOH/gの貼り付け油を用意して
シチズン時計製時計ムーブメントを作成し、60℃で相
対湿度95%で1000時間放置した前後で、針回し試
験(リュウズを回すトルクを測定)と、首引き試験(リ
ュウズの首を引いたり押したりする力を測定)を実施
し、合格水準である、針回し耐久試験の場合はトルクの
変化量が50%以内であること、首引き耐久試験の場合
は力の変化が30%以内であるかどうかで合否を判定し
た。
【0029】この結果、全酸化が0.5mgKOH/g
以上の場合はいづれの場合も、放置前後で針回しトルク
の変化量、首引き試験の変化量は共に合格水準を越えて
しまい使用に耐えなかった。給油部の変化見たところ金
属部分が腐食していた。全酸化が0.2mgKOH/g
の場合は、放置前後で針回しトルクの変化量、首引き試
験の変化量は共に合格水準をクリアしていた。給油した
油の量の変化を観察したところ、腐食は観察されなかっ
た。この結果、時計用の貼り付け油としては全酸化が
0.2mgKOH/g以下としなければならないことが
判った。結果を表4にまとめる。
【0030】
【表4】
【0031】次に適する耐摩耗剤とその添加量を求め
る。ポリオールエステルとPAOに粘度向上剤を添加
し、粘度が、20℃で200から400mPa・sとし
た油を用意して、耐摩耗剤として、ZnDTP、MoD
TP等の金属系耐摩耗剤、アルキルスルファイドなどの
スルファイド系耐摩耗剤、トリクレジルフォスフェー
ト、トリキシレニルフォスフェート等の中性リン酸エス
テル、ラウリルアシッドフォスフェート等の酸性リン酸
エステル、トリオレイルフォスファイト等の中性亜リン
酸エステル、ジラウリルハイドロゲンフォスファイト等
の酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルアミン塩を
それぞれ0から10wt%の範囲で添加した。この潤滑
油を用いてシチズン時計製時計ムーブメント(No.2
035)を作成し、60℃で相対湿度95%で1000
時間放置した前後で、針回し試験(リュウズを回すトル
クを測定)と、首引き試験(リュウズの首を引いたり押
したりする力を測定)を実施し、合格水準である、針回
し耐久試験の場合はトルクの変化量が50%以内である
こと、首引き耐久試験の場合は力の変化が30%以内で
あるかどうかで合否を判定した。
【0032】この結果、金属系耐摩耗剤、スルフィド系
耐摩耗剤、酸性亜リン酸エステル系耐摩耗剤、酸性リン
酸エステルアミン塩耐摩耗剤を添加してある潤滑油を使
用した時計は、腐食が起こり針回し試験も首引き試験に
おいても基準値以上に変化量が大きく、使用不可であっ
た。酸性リン酸エステル系耐摩耗剤を使用した時計も同
様に腐食が起こり針回し試験も首引き試験においても基
準値以上に変化量が大きく、使用不可であった。中性リ
ン酸エステル耐摩耗剤、中性亜リン酸エステル耐摩耗剤
を0から8wt%添加した系では摩擦摩耗もなく、針回
し試験も首引き試験においても基準値以内で合格であっ
た。0%のポリオールエステルでは摩耗粉が発生したも
のの、針回し試験も首引き試験においても基準内であっ
たため使用可能と判断できたが、PAOの場合はポリオ
ールエステルに比べて摩耗粉が多く、針回し試験も首引
き試験もほぼ基準値ぎりぎりであった。また、8wt%
よりも多く添加しても、8wt%添加したときと比べて
摩擦摩耗状態に変化はなく、針回し試験も首引き試験も
ほぼ同様の値で合格であった。この結果、耐摩耗剤とし
て中性リン酸エステル、中性亜リン酸エステルを0.1
から8wt%の量を添加することが好ましいことが判っ
た。実験の結果を表5にまとめる。
【0033】
【表5】
【0034】従来品と本発明の貼り付け油とを金属製の
電子式時計で性能の比較を行った。ポリオールエステル
(ネオペンチルグリコール・カプリル酸カプリン酸混合
エステル、トリメチロールプロパン・吉草酸ヘプタン酸
混合エステル)、PAO4、に粘度向上剤(ポリアクリ
レート、ポリメタクリレート、ポリイソブチレン、ポリ
アルキルスチレン、ポリエステル、イソブチレンフマレ
ート、スチレンマレエートエステル、酢酸ビニルフマレ
ートエステル、高粘度のポリオールエステル、分子量が
大きいPAO)と、耐摩耗剤剤(中性リン酸エステル、
中性亜リン酸エステル)を0.1から8wt%と、酸化
防止剤としてフェノール系または、ジフェニルアミン誘
導体などのアミン系酸化防止剤を0.5wt%と、金属
不活性剤としてベンゾトリアゾールを0.05wt%と
を添加して20℃にて200から400mPa・s、9
0℃で放置したときの重量変化が1.62wt%以下
で、全酸化0.2mgKOH/g以下の時計用の貼り付
け油を作成した。
【0035】この貼り付け油を用いてシチズン時計製時
計ムーブメント(No.2035:金属とプラスチック
部品とからなる)、プラスチック部品を使用しているシ
チズン時計製時計ムーブメント(No.7680とN
o.1030:プラスチック製部品が2035よりも多
い)と、メカ式時計であるシチズン時計製時計ムーブメ
ント(No.6650とNo.8200:主に金属部品
からなる)を自動化ラインを使用して製造したところい
ずれの場合も部品がずれたり、はずれたりすることなし
に製造することが出来た。
【0036】針回し耐久試験(リュウズ回転速度120
rpmで10秒毎に回転方向を反転させながら1分間リ
ュウズを回転させ、5分間停止しするサイクルを300
日分実施)と、首引き耐久試験(リュウズの首引き押し
込みを15回/分の速度で550回実施)とを行った。
合格水準は針回し耐久試験の場合はトルクの変化量が5
0%以内であること、首引き耐久試験の場合は力の変化
が30%以内である。この結果いずれの時計も合格であ
った。比較のため従来の油(全酸化1.24mgKOH
/g)を用いて作成した時計についても同様の評価を行
ったところ、従来品の場合は耐久試験には合格したが、
部品を観察すると黒色に腐食されていた。
【0037】
【発明の効果】以上、本発明によれば、基油に少なくと
もポリオールエステルまたは、炭素数が少なくとも30
以上のパラフィン系炭化水素油を含有し、これに少なく
とも耐摩耗剤を0.1から8wt%、金属不活性剤を混
合し、粘度が200mPa・sから400mPa・sで
あり、90℃で放置したときの重量変化が1.62wt
%以下で、全酸化が0.2mgKOH/g以下の貼り付
け油を時計の製造方法に於いて、貼り付け油を輪列部以
外に用いたので、高速の自動化ラインで時計を生産して
も部品がずれたり、はずれたりすることがなくなった。
【0038】このため、製造工程の歩留まりが向上し、
部品を無駄にすることがなくなった。また、本発明の貼
り付け油は、金属腐食性がないために長期間使用しても
金属部材を変色させない。この結果、性能が向上したほ
か、外観品質も保たれるため信頼性が向上した。このた
め、太陽光発電時計(エコドライブ)、熱発電時計(エ
コサーモ)や、生涯補償の腕時計を信頼性良く動作でき
るようになった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C10M 133/38 C10M 133/38 137/02 137/02 137/04 137/04 G04B 31/08 G04B 31/08 Z // C10N 20:00 C10N 20:00 Z 20:02 20:02 30:06 30:06 30:10 30:10 30:14 30:14 40:06 40:06

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基油に少なくともポリオールエステルま
    たは、炭素数が少なくとも30以上のパラフィン系炭化
    水素油を含有し、粘度が200mPa・sから400m
    Pa・sであることを特徴とする貼り付け油。
  2. 【請求項2】 基油に少なくともポリオールエステルま
    たは、炭素数が少なくとも30以上のパラフィン系炭化
    水素油を含有し、これに少なくとも耐摩耗剤を0.1か
    ら8wt%、金属不活性剤を混合し、粘度が200mP
    a・sから400mPa・sであることを特徴とする貼
    り付け油。
  3. 【請求項3】 基油に少なくともポリオールエステルま
    たは、炭素数が少なくとも30以上のパラフィン系炭化
    水素油を含有し、これに少なくとも耐摩耗剤を0.1か
    ら8wt%、金属不活性剤を混合し、粘度が200mP
    a・sから400mPa・sであり、90℃で放置した
    ときの重量変化が1.62wt%以下で、全酸化が0.
    2mgKOH/g以下であることを特徴とする請求項2
    記載の貼り付け油。
  4. 【請求項4】 耐摩耗剤が中性リン酸エステルまたは中
    性亜リン酸エステルであることを特徴とする請求項2ま
    たは請求項3記載の貼り付け油。
  5. 【請求項5】 金属不活性剤がベンゾトリアゾール誘導
    体であることを特徴とする請求項2または請求項3記載
    の貼り付け油。
  6. 【請求項6】 酸化防止剤が添加されていることを特徴
    とする請求項1または請求項2記載の貼り付け油。
  7. 【請求項7】 酸化防止剤がフェノール系またはアミン
    系酸化防止剤であることを特徴とする請求項6記載の貼
    り付け油。
  8. 【請求項8】 アミン系酸化防止剤がジフェニルアミン
    誘導体であることを特徴とする請求項7記載の貼り付け
    油。
  9. 【請求項9】 請求項1から請求項8の貼り付け油を輪
    列部以外に用いたことを特徴とする時計の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN110494538A (zh) * 2017-03-24 2019-11-22 西铁城时计株式会社 手表用的润滑剂组合物、手表润滑用的处理液以及手表

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