JP2001303085A

JP2001303085A - 高温用ねじ焼付防止剤

Info

Publication number: JP2001303085A
Application number: JP2000122780A
Authority: JP
Inventors: Seiichiro Hironaka; 清一郎広中; Yoshiro Ota; 善郎太田
Original assignee: Kyodo Yushi Co Ltd
Current assignee: Kyodo Yushi Co Ltd
Priority date: 2000-04-24
Filing date: 2000-04-24
Publication date: 2001-10-31

Abstract

(57)【要約】【課題】潤滑性及び耐焼付性に優れた高温用ねじ焼付
防止剤を提供すること。【解決手段】下記成分を含有する高温用ねじ焼付防止
剤。（ａ）潤滑油又はグリース基剤、及び（ｂ）セリサイ
ト。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は高温用ねじ焼付防止
剤に関し、更に詳細には、高温下で使用されるボルト又
はナットのねじ部に塗布され、締め付け時の焼付を防止
し得ると共に、潤滑性の優れた高温用ねじ焼付防止剤に
関する。

【０００２】

【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】現在、
ボルト及びナット等のねじ締結部品はあらゆる産業界の
機械設備等に広く用いられており、組立、保守点検及び
分解修理等を円滑に行うため、上記ねじ締結部品のねじ
部にねじ焼付防止剤を塗布することが広く行われてい
る。製鉄所の高温箇所や発電プラントに用いられるねじ
締結部品は、充分な強度を必要とすると共に、高温に晒
される過酷な環境下で用いられるため、潤滑性（トルク
係数）に優れ、熱に対して安定であり、優れた耐焼付性
を有し、更にねじ面を保護することのできるねじ焼付防
止剤が求められている。従来、このようなねじ焼付防止
剤としては、黒鉛、又は二硫化モリブデン等の固体成分
を用いた潤滑剤や、ニッケル粉、アルミニウム粉、又は
銅粉などの金属粉末が用いられている。また、上記固体
成分や金属粉末を組み合わせた多くの種類の潤滑剤（ね
じ焼付防止剤）が市販されている。黒鉛や二硫化モリブ
デン等の固体成分を用いた、代表的な潤滑剤は、ねじ締
め付け時のねじ面の金属同士の接触を防止し、焼付やか
じりを防止する作用に優れているが、高温下（５００℃
以上の温度）に晒された場合、金属材質へ悪影響（浸炭
や反応）を及ぼすことが知られている。また、上記金属
粉末を用いた潤滑剤は、高温下では安定性が高いが、黒
鉛や二硫化モリブデンよりも潤滑性がやや劣る傾向にあ
り、分解時に円滑にゆるめることができない等の問題が
発生する場合がある。上記潤滑剤によっては、高温環境
等の過酷な条件下で潤滑性に影響を与えず焼付を防止す
ることは困難であり、新たな高温用ねじ焼付防止剤が望
まれている。従って、本発明の目的は、高温下で使用さ
れるボルト又はナットのねじ部に塗布され、締め付け時
の焼付を防止すると共に、潤滑性の優れた高温用ねじ焼
付防止剤を提供することにある。

【０００３】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、鋭意検討
した結果、特定の成分を含有する高温用ねじ焼付防止剤
が上記目的を達成し得るという知見を得た。本発明は、
上記知見に基づいてなされたもので、下記成分を含有す
る高温用ねじ焼付防止剤を提供するものである。（ａ）潤滑油又はグリース基剤、及び（ｂ）セリサイ
ト。本発明者らは、ボルト、ナット等を用いてねじ焼付
防止性能の試験を行った結果、セリサイトを含有する高
温用ねじ焼付防止剤が、潤滑性能を有し、熱に対して安
定であり、他の固体潤滑剤では見られない酸化抑制作用
を発揮し、優れた耐焼付性を有することを見出した。理
論に拘束されるものではないが、上記酸化抑制作用は、
高温下で潤滑油等が蒸発（燃焼）した場合に、セリサイ
トの粒子がねじ表面に緻密に積層し、保護膜を形成して
材質の酸化スケールの生成を抑えることによると考えら
れる。高温下に晒したボルト、ナットの締結部を切断し
走査電子顕微鏡で観察すると、セリサイトを含有する高
温用ねじ焼付防止剤が塗布されたものは、ねじ面の表面
が非常にきれいであることからもこのことがわかる。

【０００４】

【発明の実施の形態】以下、本発明の高温用ねじ焼付防
止剤について詳述する。本発明の高温用ねじ焼付防止剤
は、下記成分（ａ）及び（ｂ）を含有する。（ａ）潤滑油又はグリース基剤、及び（ｂ）セリサイ
ト。上記（ａ）成分について説明する。上記（ａ）成分
の潤滑油としては、従来から公知の鉱物油、エステル系
合成油、エーテル系合成油、炭化水素系合成油等の普通
に使用されている潤滑油又はそれらの混合油等が挙げら
れるが、これらに限定されるものではない。上記（ａ）
成分のグリース基剤としては、例えば潤滑油を増ちょう
剤で増ちょう化させたグリースを用いることができ、例
えば、潤滑油をカルシウム石けん又はリチウム石けん等
で増ちょう化させたカルシウムグリース、及びリチウム
グリース等が挙げられるが、これらに限定されるもので
はない。高温用ねじ焼付防止剤中の上記（ａ）成分の含
有量は、好ましくは９０〜４０質量％であり、更に好ま
しくは８０〜５０質量％である。また、上記（ａ）成分
の含有量を変えることにより、高温用ねじ焼付防止剤の
硬さ（ちょう度）を調節することができる。

【０００５】次に、上記（ｂ）成分のセリサイトについ
て説明する。セリサイトは、一般にK₂(Al,Fe³⁺,Fe²⁺,M
g)₄(Si,Al)₈O₂₀(OH,F)₄の化学式で示される雲母粘土鉱
物の一種である。本発明において用いられる（ｂ）成分
のセリサイトとしては、硫化鉱物などの不純物を除去
し、生成された微細な粉末のものであることが好まし
い。上記セリサイトとしては、平均粒径が０．２〜１０
μｍのものを用いることが好ましい。また、平均粒径の
更に好ましい上限値は５μｍであり、更に好ましい下限
値は０．２μｍである。上記セリサイトの平均粒径は微
細なほど潤滑性及び耐焼付性が優れているが、現在の加
工技術等を考慮し、入手可能な０．２μｍ以上のものを
用いることができる。また、１０μｍを越えると潤滑性
及び耐焼付性が劣る場合があるので、上記範囲内とする
ことが好ましい。

【０００６】高温用ねじ焼付防止剤中の上記（ｂ）成分
の含有量は、好ましくは１０〜６０質量％であり、更に
好ましくは２０〜５０質量％である。１０質量％未満で
あるとセリサイトの酸化抑制作用の効果が少なくなって
しまい、６０質量％を越えると高温用ねじ焼付防止剤が
固形状になり、ねじ面への塗布が困難になる場合がある
ので、上記範囲内とすることが好ましい。

【０００７】本発明の高温用ねじ焼付防止剤には、上記
（ａ）成分及び上記（ｂ）成分に加えて、二硫化モリブ
デン又はメラミンシアヌル酸（以下、ＭＣＡという）等
を含有させることができる。上記二硫化モリブデン又は
ＭＣＡを含有させる場合、その含有量は、高温用ねじ焼
付防止剤の全量中、好ましくは１０〜３０質量％であ
る。

【０００８】本発明の高温用ねじ焼付防止剤の製造方法
に特に制限はないが、一般には、（ａ）成分の潤滑油又
はグリース基剤に所定量の（ｂ）成分のセリサイト、及
び必要に応じて二硫化モリブデン又はＭＣＡを添加し、
撹拌、混合することにより製造することができる。上記
撹拌、混合は、ホモジナイザー又はロール等を用いるこ
とにより実施することができ、この方法により、高温用
ねじ焼付防止剤が容易に分散、均一化される。

【０００９】

【実施例】以下、本発明を実施例により更に詳細に説明
する。なお、本発明の範囲は、かかる実施例に限定され
ないことはいうまでもない。実施例１〜３及び比較例１〜４表１に示す組成の成分を、ロールを用いて撹拌混合し、
高温用ねじ焼付防止剤を製造した。得られた高温用ねじ
焼付防止剤の潤滑性及び耐焼付性について、下記方法に
従って評価を行った。評価結果を表２に示す。比較例５及び６市販品の高温用ねじ焼付防止剤についても同様に試験を
行った。比較例５は、市販品Cuタイプの防止剤、比較例
６は、市販品黒鉛タイプの防止剤である。比較例５及び
６の高温用ねじ焼付防止剤についても、実施例１と同様
に評価を行った。評価結果を表２に示す。

【００１０】〔高温用ねじ焼付防止剤の潤滑性〕ＪＩＳ
Ｂ１０８４ねじ部品の締め付け試験方法に準じて
行った。すなわち、ボルト締め付け試験機を用いて、ス
テンレス製のボルト、ナット及びワッシャー（Ｍ２０）
の締結部に高温用ねじ焼付防止剤を塗布し、軸力計に組
み込み、回転数０．５ｒｐｍで軸力１０Ｔまで締め付け
る。軸力が１０Ｔになったら、速やかに反転（回転数
０．５ｒｐｍ）させ、軸力が０Ｔになるまでゆるめる。
この操作を５回繰り返し、軸力が１０Ｔの時の締め付け
トルクを用い、下記式により、トルク係数（Ｋ）を求め
る。トルク係数（Ｋ）＝Ｔ／ｄ・Ｎ式中、Ｔは締付トルクを表わし、ｄはボルトの直径を表
わし、Ｎは軸力を表す。このトルク係数（Ｋ）は、高温
ねじ焼付防止剤自体の潤滑特性の他に、焼付やかじりが
生ずると著しく大きくなる傾向にある。

【００１１】〔高温用ねじ焼付防止剤の耐焼付性〕ステ
ンレス製のボルト、ナット及びワッシャー（Ｍ２０）の
ねじ締結部やワッシャー部に高温用ねじ焼付防止剤を塗
布し、穴（２２ｍｍ）のあいたステンレス製ブロックに
挟み込む。次いで、ボルト一式をボルト締め付け試験機
を用いて、回転数０．５ｒｐｍで締め付けトルクが３９
２Ｎ・ｍになるまで締め付ける。締め付けトルクが３９
２Ｎ・ｍになったら、速やかに反転（回転数０．５ｒｐ
ｍ）させ軸力が０Ｔになるまでゆるめる。この時の最大
トルク値を測定しておく。この操作を３回繰り返し、４
度目に締め付けトルクが３９２Ｎ・ｍになった時にボル
ト一式を締め付け試験機から外す。締め付けた状態で８
００℃の電気炉内に５時間放置する。次いで、室温に冷
却し、締め付け試験機に再度セットし、ボルトをゆるめ
る。加熱前のゆるめトルクと加熱後のゆるめトルクでの
トルクの値の変化率（％）で耐焼付性を評価する。

【００１２】トルク変化率は下記式により求めることが
できる。トルク変化率（％）＝（加熱後のゆるめトルク−加熱前
のゆるめトルク）／加熱前のゆるめトルク×１００ねじ締結部において、熱による高温用ねじ焼付防止剤の
材質への悪影響（変質）等があると焼付現象が生じやす
く、加熱前のトルクより加熱後のトルクが著しく大きく
なる。トルク変化率が小さいほど、耐焼付性に優れる。
トルク変化率を求めた後、それぞれ、下記評価基準に従
って評価を行った。なお、加熱後のゆるめ時に、トルク
が３４３Ｎ・ｍ以上であり、５秒間以上続いた場合には
固着と判定した。 ◎：非常に優れる（トルク変化率が０％未満である。） ○：優れる（トルク変化率が０％以上５０％未満
である。） △：やや劣る（トルク変化率が５０％以上であ
る。） ×：劣る（トルク変化率：固着）

【００１３】

【表１】

【００１４】表１の中の数字は、質量部を示す。表１中
に記載された物質の粒径を以下に示す。セリサイト：平均粒径０．３μｍ白雲母：平均粒径１８μｍ黒鉛：平均粒径５μｍ二硫化モリブデン：平均粒径０．７５μｍＭＣＡ：平均粒径５μｍ以下

【００１５】

【表２】

【００１６】表２中、加熱後ゆるめトルクの×は、加熱
後のゆるめ時にトルクが３４３Ｎ・ｍ以上で５秒間以上
続いた場合であり、固着を意味する。また、比較例１に
ついては、トルク係数が高く、潤滑性に劣るので、耐焼
付性の試験は行わなかった。表２から明らかなように、
実施例１〜３の高温用ねじ焼付防止剤は、比較例２〜６
の高温用ねじ焼付防止剤に比し、優れた潤滑性及び耐焼
付性を有するものであった。また、比較例１の高温用ね
じ焼付防止剤はトルク係数が高く、潤滑性に劣り、高温
用ねじ焼付防止剤として用いることのできないものであ
る。

【００１７】以上、詳述した通り、本発明の高温用ねじ
焼付防止剤は、（ａ）潤滑油又はグリース基剤、及び
（ｂ）セリサイトを含有することにより、潤滑性及び耐
焼付性に優れたものとなる。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.⁷ 識別記号ＦＩテーマコート゛(参考）Ｃ１０Ｎ 20:06 Ｃ１０Ｎ 20:06 Ｚ 30:06 30:06 30:08 30:08 40:00 40:00 Ｇ 50:10 50:10

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】下記成分を含有する高温用ねじ焼付防止
剤。（ａ）潤滑油又はグリース基剤、及び（ｂ）セリサイ
ト。
【請求項２】上記セリサイトの平均粒径が０．２〜１
０μｍである、請求項１記載の高温用ねじ焼付防止剤。
【請求項３】上記セリサイトの平均粒径が５μｍ以下
である、請求項１記載の高温用ねじ焼付防止剤。
【請求項４】上記セリサイトを、高温用ねじ焼付防止
剤の全重量中１０〜６０質量％含有する、請求項１〜３
のいずれか１項記載の高温用ねじ焼付防止剤。
【請求項５】更に、二硫化モリブデン又はメラミンシ
アヌル酸を含有する、請求項１〜４のいずれか１項記載
の高温用ねじ焼付防止剤。