JP2001279569A - ポリビニルアルコール系耐水性長繊維不織布 - Google Patents

ポリビニルアルコール系耐水性長繊維不織布

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JP2001279569A
JP2001279569A JP2000091057A JP2000091057A JP2001279569A JP 2001279569 A JP2001279569 A JP 2001279569A JP 2000091057 A JP2000091057 A JP 2000091057A JP 2000091057 A JP2000091057 A JP 2000091057A JP 2001279569 A JP2001279569 A JP 2001279569A
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pva
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water
mol
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Naoki Fujiwara
直樹 藤原
Takuya Tsujimoto
拓哉 辻本
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Kuraray Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 溶融紡糸によるPVA系長繊維からなり、熱
圧融着によってのみ接着され、良好な地合と優れた不織
布物性を有し、かつ水との高い親和性を有するPVA系
耐水性長繊維不織布を提供する。 【解決手段】 けん化度が90〜99.99モル%であ
り、かつエチレンを1〜50モル%含有する熱可塑性ポ
リビニルアルコールを溶融紡糸し、紡出フィラメント群
を吸引噴射装置で牽引細化させた後、開繊フィラメント
を移動式捕集コンベア装置上に捕集堆積させて長繊維ウ
エブを形成し、このウエブを加熱ロールからなる熱エン
ボス装置により部分的な熱圧融着を施し、形態を保持し
て得られるスパンボンド不織布において、該不織布の2
0℃水中溶出量が1%以下であるポリビニルアルコール
系耐水性長繊維不織布。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はポリビニルアルコー
ル系(以下PVA系と略記することがある)耐水性長繊
維不織布に関する。さらに詳しくは、従来困難とされて
いた熱圧着のみにより接着が形成されている低溶出性の
PVA系耐水性長繊維不織布に関する。
【0002】
【従来の技術】現在、スパンボンド不織布に代表される
長繊維不織布は、カード法等で得られる短繊維不織布に
比べて、引張強力・引裂強力が高い、繊維の脱落や端部
がほつれない、生産性が高い等の優れた特長を有するた
め様々な用途に用いられている。これまでの所、スパン
ボンド不織布を構成する繊維素材としては熱可塑性樹脂
を溶融紡糸延伸する、いわゆる溶融紡糸繊維より製造さ
れるものが一般的で、ポリエステル、ポリプロピレン、
ナイロン等に限られていた。それに対してPVA系繊維
は、高い強度、優れた耐候性、吸水性、吸湿性等の点
で、前記溶融紡糸繊維に勝る性能を有する事から、織編
物や乾式、湿式双方の短繊維不織布として種々製造さ
れ、産業資材分野等を中心に広く使用されている。
【0003】しかしその紡糸方法が乾式法や湿式法であ
るため、紡糸→延伸→開繊→捕集→接着と繊維製造工程
と不織布製造工程を連続した一般的スパンボンドの製造
を行なうには、工程、製造設備とも複雑化し、高い生産
性も望めない、さらにはスパンボンド法に適したPVA
が開発されていない等の理由でスパンボンド法での長繊
維不織布は工業的に製造されていない。唯一の提案とし
て特開平2−191760号公報では、トウ状態のPV
A系長繊維を機械的に幅方向へ拡幅する方法でつくられ
たPVA系長繊維不織布が提案されている。しかし該長
繊維不織布はトウを拡幅したものであるため幅方向の強
力が非常に小さく実用性において問題のあるものであっ
た。
【0004】また本発明者等は、特開平5−18695
2号公報で、PVA系ポリマーを乾式又は湿式、あるい
は乾湿式法により一旦、無撚の連続マルチフィラメント
束を製造した後、該マルチフィラメント束を出発原料に
開繊→捕集→接着の不織布化を行ない製造したPVA系
長繊維不織布について提案している。すなわち特開平5
−186952号公報の提案は、PVA系長繊維に対し
て異種ポリマーである熱融着性長繊維を混繊し、熱融着
によって両繊維間を接着したPVA系長繊維不織布であ
ったり、PVA系長繊維ウエブを化学接着剤すなわちケ
ミカルバインダーにより接着したPVA系長接着不織布
である。これらの場合は確かに、タテ方向、ヨコ方向の
強力異方性の少ない長繊維不織布が得られるが、PVA
系不織布の特長である親水性、吸水性、吸湿性、ヒート
シール性等の特徴が大きく損なわれてしまうのみなら
ず、接着に工夫を凝らしているために生産性が低下し、
コスト高になってしまうという問題点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記の如く、従来技術
では、他の溶融紡糸系繊維からなる一般の長繊維不織布
いわゆるスパンボンド不織布では実現されていない、高
耐候、高保水、高吸水、高吸湿性等の特長を有し、かつ
それらのスパンボンド不織布が有する強度、水中への低
溶出性すなわち耐水性とを兼備するようなPVA系ポリ
マーからなる熱圧着によって接着されたノーバインダー
のPVA系長繊維不織布は得られていない。従って本発
明の目的は、熱圧着によってのみ接着されたノーバイン
ダーの水との高い親和性を有するPVA系耐水性長繊維
不織布(いわゆるスパンボンド不織布)を提供すること
にある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題に対して、本発
明者らは鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成した。す
なわち本発明は、けん化度が90〜99.99モル%で
あり、かつエチレンを1〜50モル%含有する熱可塑性
ポリビニルアルコールを溶融紡糸し、紡出フィラメント
群を吸引噴射装置で牽引細化させた後、開繊フィラメン
トを移動式捕集コンベア装置上に捕集堆積させて長繊維
ウエブを形成し、このウエブを加熱ロールからなる熱エ
ンボス装置により部分的な熱圧融着を施し、形態を保持
して得られるスパンボンド不織布において、該不織布の
20℃水中溶出量が1%以下である事を特徴とするポリ
ビニルアルコール系耐水性長繊維不織布である。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明におけるポリビニルアルコ
ール(PVA)とは、PVAのホモポリマー、共重合に
より官能基を導入した変性PVAは勿論のこと、例え
ば、末端変性、および後反応により官能基を導入した変
性PVAも包含するものである。
【0008】まず、本発明の不織布を形成する繊維の原
料であるPVAについて説明する。本発明に用いられる
PVAの粘度平均重合度(以下、単に重合度と略記す
る)はPVA中のエチレン含量によっても異なるので特
に制限はないが、紡糸性および得られる不織布の引張強
力、引裂強力、引張伸度等の不織布物性の観点から20
0〜700が好適であり、220〜650がより好まし
く、240〜600が特に好ましい。重合度が200未
満の場合には紡糸時に十分な曳糸性が得られない場合が
あり、その結果として満足な長繊維不織布も得られない
場合がある。一方、重合度が700を越えると溶融粘度
が高すぎて、紡糸ノズルから安定にポリマーを吐出する
ことができず、満足な長繊維不織布が得られない場合が
ある。
【0009】PVAの重合度(P)は、JIS−K67
26に準じて測定される。すなわち、PVAを完全に再
けん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘
度[η](dl/g)から次式により求められるもので
ある。 P=([η]×103/8.29)(1/0.62) また後述する高エチレン含量の水不溶性PVAの場合に
は、上記と同様にPVAを完全に再けん化し、精製した
後に、30℃の15%含水フェノール中で測定した極限
粘度[η]ph(l/g)から次式により求められるも
のである。 [η]ph=(2(ηsp−lnηrel))(1/2)
C P=([η]ph/K)(1/n) ここでCはPVA濃度(g/l)、K=1.3×10-3
exp(−0.13x)、n=0.65−0.059
(x−0.2)、xはエチレン含量(モル分率)を表
す。重合度が上記範囲にある時、本発明の目的がより好
適に達せられる。
【0010】本発明のPVA系耐水性長繊維不織布にお
いて重要な事は、用いられるPVAのけん化度は90〜
99.99モル%である事が必須である。けん化度が9
0モル%未満の場合には、得られる不織布の溶出率が大
きくなり耐水性不織布が得られない。一方、けん化度が
99.99モル%よりも大きいPVAは安定に製造する
ことができず、当然ながら、安定した繊維化とそれと直
結した長繊維不織布もできない。そのため用いられるP
VAのけん化度は、90〜99.99モル%でなければ
ならず、95〜99.99モル%がより好ましく、96
〜99.97モル%が特に好ましい。
【0011】本発明のPVA系耐水性長繊維不織布に用
いられるPVAの融点(Tm)は160〜230℃が好
適であり、165〜228℃が好ましく、170〜22
6℃がより好ましい。融点が160℃未満の場合にはP
VAの結晶性が低下し不織布構成繊維の強度が低くなっ
て不織布自信の強度が低下する。場合によっては溶融紡
糸に必要な曳糸性がなくなったり、PVAの熱分解が激
しく発生したりして、長繊維不織布が得られないことも
ある。一方、融点が230℃を越えると好適な溶融粘度
を確保するために溶融紡糸温度を高くしなければならな
くなり、紡糸温度とPVAの分解温度が近づくために、
安定した溶融紡糸ができなくなり安定したPVA系長繊
維不織布の製造もできない。
【0012】PVAの融点は、DSCを用いて、窒素
中、昇温速度10℃/分で250℃まで昇温後、室温ま
で冷却し、再度昇温速度10℃/分で250℃まで昇温
した場合のPVAの融点を示す吸熱ピークのピークトッ
プの温度を意味する。また本発明の目的や効果を損なわ
ない範囲で、PVAには融点や溶融粘度を調整する等の
目的で可塑剤を添加することが可能である。本発明の最
大の特長である溶出率が1%以下の耐水性長繊維不織布
を得る目的から、水溶性の可塑剤の配合量は、溶融紡糸
に供される配合PVA系樹脂の1%以下であることが重
要である。可塑剤としては、従来公知のもの全てが使用
できるが、ジグリセリン、ソルビトール、マンニトール
等のグリコール類、ポリグリセリンアルキルモノカルボ
ン酸エステル類、トレハロース等のオリゴ糖類、α−メ
チルグルコシド等のグルコシド類、グリコール類にエチ
レンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドを
付加したものが好適に使用される。そのなかでも、ジグ
リセリン、ソルビトール1モルに対してエチレンオキサ
イドおよび/またはプロピレンオキサイドを1〜10モ
ル%付加した化合物が好ましい。
【0013】PVAは、ビニルエステル系重合体のビニ
ルエステル単位をけん化することにより得られる。ビニ
ルエステル単位を形成するためのビニル化合物単量体と
しては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニ
ル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸
ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリ
ン酸ビニルおよびバーサティック酸ビニル等が挙げら
れ、これらの中でもPVAを得る点からは酢酸ビニルが
好ましい。
【0014】本発明の長繊維不織布を構成するPVA
は、エチレン単位を共重合したエチレン変性PVAであ
り、PVAのエチレン含量は1〜50モル%でなければ
ならない。2〜40モル%が好ましく、3〜30モル%
がより好ましく、5〜20モル%が特に好ましい。エチ
レン含量が1モル%未満の場合には、得られる長繊維織
布の耐水性が不足し、50モル%を越える場合には、水
との親和性が低下してPVA系長繊維不織布としての特
長がなくなる。また本発明の目的や効果を損なわない範
囲で、溶融紡糸性、耐水性、繊維および不織布物性の観
点からは、エチレン以外の共重合単位を更に導入した変
性PVAを用いることも可能である。共重合単量体の種
類としては、公知の物全てが使用可能であるが、本発明
の目的から、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1
−ヘキセン等のα−オレフィン類、メチルビニルエーテ
ル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテ
ル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエ
ーテル等のビニルエーテル類、エチレングリコールビニ
ルエーテル、1,3−プロパンジオールビニルエーテ
ル、1,4−ブタンジオールビニルエーテル等のヒドロ
キシ基含有のビニルエーテル類、アリルアセテート、プ
ロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ヘキシ
ルアリルエーテル等のアリルエーテル類、オキシアルキ
レン基を有する単量体、酢酸イソプロペニル、3−ブテ
ン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキ
セン−1−オール、7−オクテン−1−オール、9−デ
セン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オー
ル等のヒドロキシ基含有のα−オレフィン類、N−ビニ
ルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル
ピロリドンなどのN−ビニルアミド類等の単量体が挙げ
られる。これらの単量体の含有量は、通常5モル%以下
である。
【0015】本発明で使用するPVAの製造方法として
は、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法
などの公知の方法が挙げられる。その中でも、無溶媒あ
るいはアルコールなどの溶媒中で重合する塊状重合法や
溶液重合法が通常採用される。溶液重合時に溶媒として
使用されるアルコールとしては、メチルアルコール、エ
チルアルコール、プロピルアルコールなどの低級アルコ
ールが挙げられる。共重合に使用される開始剤として
は、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’
−アゾビス(2,4−ジメチル−バレロニトリル)、過
酸化ベンゾイル、nープロピルパーオキシカーボネート
などのアゾ系開始剤または過酸化物系開始剤などの公知
の開始剤が挙げられる。重合温度については特に制限は
ないが、0℃〜200℃の範囲が適当である。
【0016】本発明で使用するPVAにおけるアルカリ
金属イオン(C)の含有割合は、PVA100質量部に
対してナトリウムイオン換算で0.00001〜0.3
質量部であり、0.00005〜0.1質量部が好まし
く、0.0001〜0.07質量部がより好ましく、
0.0002〜0.05質量部が特に好ましい。アルカ
リ金属イオンの含有割合が0.00001質量部未満は
工業的に製造困難である。またアルカリ金属イオンの含
有量が0.3質量部より多い場合には溶融紡糸時の分
解、ゲル化および断糸が著しく、安定に繊維化すること
ができない。なお、アルカリ金属イオンとしては、カリ
ウムイオン、ナトリウムイオン等が挙げられる。
【0017】本発明において、特定量のアルカリ金属イ
オン(C)をPVA中に含有させる方法は特に制限され
ず、PVAを重合した後にアルカリ金属イオン含有の化
合物を添加する方法、ビニルエステルの重合体を溶媒中
においてけん化するに際し、けん化触媒としてアルカリ
イオンを含有するアルカリ性物質を使用することにより
PVA中にアルカリ金属イオンを配合し、けん化して得
られたPVAを洗浄液で洗浄することにより、PVA中
に含まれるアルカリ金属イオン含有量を制御する方法な
どが挙げられるが後者のほうが好ましい。なお、アルカ
リ金属イオンの含有量は、原子吸光法で求めることがで
きる。
【0018】けん化触媒として使用するアルカリ性物質
としては、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムが挙
げられる。けん化触媒に使用するアルカリ性物質のモル
比は、酢酸ビニル単位に対して0.004〜0.5が好
ましく、0.005〜0.05が特に好ましい。けん化
触媒は、けん化反応の初期に一括添加してもよいし、け
ん化反応の途中で追加添加してもよい。けん化反応の溶
媒としては、メタノール、酢酸メチル、ジメチルスルホ
キシド、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。これ
らの溶媒の中でもメタノールが好ましく、含水率を0.
001〜1質量%に制御したメタノールがより好まし
く、含水率を0.003〜0.9質量%に制御したメタ
ノールがより好ましく、含水率を0.005〜0.8質
量%に制御したメタノールが特に好ましい。洗浄液とし
ては、メタノール、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチ
ル、ヘキサン、水などが挙げられ、これらの中でもメタ
ノール、酢酸メチル、水の単独もしくは混合液がより好
ましい。洗浄液の量としてはアルカリ金属イオン(C)
の含有割合を満足するように設定されるが、通常、PV
A100質量部に対して、300〜10000質量部が
好ましく、500〜5000質量部がより好ましい。洗
浄温度としては、5〜80℃が好ましく、20〜70℃
がより好ましい。洗浄時間としては20分間〜100時
間が好ましく、1時間〜50時間がより好ましい。
【0019】本発明で使用するPVAは、該PVAにお
ける25℃におけるpKaが5.0以下の酸基を有する
酸(D)を、下記で表すαが0.01〜0.8の割合で
含有することが好ましい。αは0.03〜0.6がより
好ましく、0.05〜0.5がさらに好ましい。本発明
では、下記に表すαの式中の酸(D)の含有率は中和滴
定法で求めた値を酢酸に換算したものを意味する。pK
aとは、酸の解離定数をKaとするとき、pKa=−l
ogKaで定義したものである。 α=〔PVA中の酸(D)の含有率(質量%)〕/〔P
VA中のアルカリ金属イオン(C)の含有率(質量
%)〕 酸(D)のpKaが5.0を越える酸基を有する酸を用
いた場合および酸(D)含有割合が上記で表したαで
0.01〜0.8から外れる場合は、溶融紡糸時のPV
Aの分解、ゲル化および断糸が著しく、安定に繊維化す
ることができないのみならず、得られる不織布が黄変す
る場合がある。なお、25℃におけるpKaが5.0以
下の酸基を有する酸(D)としては、酢酸、乳酸、リン
酸、第一リン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0020】本発明において、特定量の25℃における
pKaが5.0以下の酸基を有する酸(D)をPVA中
に含有させる方法は特に制限されず、ビニルエステルの
重合体を溶媒中においてけん化した後に、pKaが5.
0以下の酸基を有する酸を使用することによりPVA中
に該酸を配合し、けん化して得られたPVAを洗浄液で
洗浄することにより、PVA中に含まれる酸含有量を制
御する方法、乾燥したPVAを酸を含有する溶媒で処理
することにより特定量の酸を含有させる方法、PVAの
ペレットを作成する際に特定量の酸を添加することによ
って含有させる方法等が挙げられる。なお、酸の含有量
は、PVAからのメタノール抽出分を水酸化ナトリウム
水溶液によって中和滴定することで求めることができ
る。
【0021】また本発明の目的や効果を損なわない範囲
で、必要に応じて銅化合物等の等の安定剤、着色剤、紫
外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃
剤、潤滑剤、結晶化速度遅延剤を重合反応時、またはそ
の後の工程で添加することができる。特に熱安定剤とし
てヒンダードフェノール等の有機系安定剤、ヨウ化銅等
のハロゲン化銅化合物、ヨウ化カリウム等のハロゲン化
アルカリ金属化合物を添加すると、繊維化の際の溶融滞
留安定性が向上するので好ましい。
【0022】また必要に応じて平均粒子径が0.01μ
m以上5μm以下の微粒子を0.05質量%以上10質
量%以下、重合反応時、またはその後の工程で添加する
ことができる。微粒子の種類は特に限定されず、たとえ
ばシリカアルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸
バリウム等の不活性微粒子を添加することができ、これ
らは単独で使用しても2種以上併用しても良い。特に平
均粒子径が0.02μm以上1μm以下の無機微粒子が
好ましく、紡糸性、延伸性が向上する。
【0023】次に、本発明に用いる熱可塑性PVAから
なる長繊維で構成された不織布の製造方法について説明
する。本発明の不織布を形成するPVA系繊維は長繊維
である事が必須である。すなわち同じ繊度、繊維物性の
PVA系繊維から不織布を形成した場合においても短繊
維と長繊維では不織布強力、就中引裂強力は繊維が長繊
維の場合の方が短繊維の場合よりも著しく高いものとな
るからである。さらに長繊維の場合、低リントという特
長を有し、かつ不織布表面に毛羽端を生じる事がないた
め、不織布を実用に供した場合、不織布の耐摩耗性が短
繊維からなる不織布より良好なものとなる。したがって
本発明の不織布はPVA系繊維よりなる長繊維不織布で
なければならない。
【0024】本発明の長繊維で構成されたPVA系の耐
水性不織布は、溶融紡糸と直結したいわゆるスパンボン
ド不織布の製造方法によって製造されなければならな
い。すなわち、溶融押し出し機でPVA組成物を溶融混
練し、溶融したポリマー流を紡糸頭に導き、流量を計量
し紡糸ノズル孔から吐出させ、この吐出糸条を冷却装置
により冷却せしめた後、エアジェット・ノズルのような
吸引装置を用いて、目的の繊度となるように、1000
〜6000m/分の糸条の引取り速度に該当する速度で
高速気流により牽引細化させた後、開繊させながら移動
式の捕集面の上に堆積させて不織布ウエブを形成させ、
引き続きこのウエブを部分圧着して巻き取ることによっ
てPVA系耐水性長繊維不織布を得ることができる。
【0025】本発明のPVA系耐水性長繊維不織布を構
成する繊維化の条件は、用いるエチレン変性PVAの種
類、目的とする不織布の性質に応じて適宜設定する必要
があるが、主に、以下のような点に留意して繊維化条件
を決めることが望ましい。紡糸口金温度は、PVAの融
点Tmに対してTm+10〜Tm+80℃の範囲が好ま
しく、せん断速度(γ)500〜25,000se
-1、ドラフトV50〜2000で紡糸することが好ま
しい。
【0026】本発明におけるPVAの融点Tmとは、示
差走査熱量計(DSC:例えばMettler社TA3
000)で観察される主吸熱ピークのピーク温度であ
る。せん断速度(γ)は、ノズル半径をr(cm)、単
孔あたりのポリマー吐出量をQ(cm3/sec)とす
るときγ=4Q/πr3で計算される。またドラフトV
は、引取速度をA(m/分)とするときV=(A・πr
2/Q)×(5/3)で計算される。
【0027】本発明のPVA系繊維を製造するに際し
て、紡糸口金温度がPVAの融点Tm+10℃より低い
温度では、該PVAの溶融粘度が高すぎて、高速気流に
よる曳糸・細化性に劣り、またTm+80℃を越えると
PVAが熱分解しやすくなるために安定した紡糸ができ
ない。また、せん断速度は500sec-1よりも低いと
断糸しやすく、25,000sec-1より高いとノズル
の背圧が高くなり紡糸性が悪くなる。ドラフトは50よ
り低いと繊度むらが大きくなり安定に紡糸しにくくな
り、ドラフトが2000より高くなると断糸しやすくな
る。
【0028】本発明において、エアジェット・ノズルの
ような吸引装置を用いて吐出糸条を牽引細化させるに際
し、1000〜6000m/分の糸条の引取り速度に該
当する速度で高速気流により牽引細化させることが重要
である。吸引装置による糸条の引取り条件は、紡糸ノズ
ル孔から吐出する溶融ポリマーの溶融粘度、吐出速度、
紡糸ノズル温度、冷却条件などにより適宜選択するが、
1000m/分未満では、吐出糸条の冷却固化遅れによ
る隣接糸条間の融着が起こる場合があり、また糸条の配
向・結晶化が進まず、得られる不織布は、粗雑で機械的
強度の低いものになってしまい好ましくない。一方、6
000m/分を越えると、吐出糸条の曳糸・細化性が追
随できず糸条の切断が発生して、安定した長繊維不織布
の製造ができない。また耐水性不織布を得る点からは、
3000〜6000m/分の糸条の引取り速度相当が好
ましい。さらに、本発明のPVA系長繊維不織布を安定
に製造するに際し、紡糸ノズル孔とエアジェット・ノズ
ルのような吸引装置との間隔は、該間隔は使用するPV
A、組成、上記で述べた紡糸条件にもよるが、30〜2
00cmが好適であり、35〜120cmがより好まし
く、40〜100cmがさらに好ましい。該間隔が30
cmより小さい場合には、吐出糸条の冷却固化遅れによ
る隣接糸条間の融着が起こる場合があり、また糸条の配
向・結晶化が進まず、得られる不織布は、粗雑で機械的
強度の低いものになってしまい好ましくない。一方、2
00cmを越える場合には、吐出糸条の冷却固化が進み
すぎて吐出糸条の曳糸・細化性が追随できず糸条の切断
が発生して、安定したPVA系長繊維不織布の製造がで
きない。
【0029】本発明では、このようにして得られたPV
A系不織ウエブを部分的な熱圧融着によって接着されて
いる事が必要である。具体的には、加熱された凹凸模様
の金属ロール(エンボスロール)と加熱平滑ロールとの
間に該ウエブを通して、部分的な熱圧着により長繊維同
士を結合させ、不織布としての形態安定化を図る。熱圧
着処理における加熱ロールの温度、熱圧する圧力、処理
速度、エンボスロールの模様等は目的に応じて適宜選択
することができる。本発明における不織布を構成するP
VA系系長繊維は、水に対して活性であって水の存在下
では見掛けの融点が低下する事から、水を付与した後で
熱圧着処理を行う場合には、加熱ロールの温度を下げる
ことが可能であるが、本発明の耐水性長繊維不織布を得
る点からは、熱圧着処理における加熱ロールの温度は1
00〜230℃が好適であり、120〜225℃がより
好ましく、130〜220℃が更に好ましい。さらには
本発明の主旨から、熱圧融着により形態を保持させたP
VA系不織ウエブを、必要に応じて熱処理することも可
能である。熱処理方法は熱風炉、熱カレンダーロール、
熱プレス等公知の方法が採用可能であり、熱処理温度は
120〜220℃が好適であり、130〜210℃がよ
り好ましく、150〜200℃が更に好ましい。
【0030】本発明の熱可塑性PVA系耐水性長繊維不
織布の肝心な点は、上記のように、従来困難であったス
パンボンド方式を適用せしめ、合理的に吸水性、吸湿
性、耐候性等の機能を有しつつ強度等の適正な不織布の
機械的物性を持ち、しかも水中への低溶出性すなわち耐
水性のある熱圧着によってのみ接着されたノーバインダ
ーのPVA系長繊維不織布を提供することにある。従っ
て、本発明は、不織布を構成する長繊維の繊度や繊維断
面形状あるいは不織布の目付や引張強度、引張伸度、引
裂強度等の機械的特性や厚さ、嵩高性等の形態特性、あ
るいは柔軟性等の特性については特に制約されるもので
はなく、通常、設定できる範囲内で適宜選択することが
できる。
【0031】本発明のPVA系耐水性長繊維不織布は、
液体、気体、集塵用フィルター等の空調用材、リントフ
リーワイパー、各種ワイピングクロス等のワイパー、絶
縁材、電池セパレータ等のエレクトロニクス用、レザー
基布、セメント用配合材、ゴム用配合材、各種テープ基
材などの産業用資材;紙おむつ、ガーゼ、ホータイ、医
療用ガウン、ドレープ、シーツ、検査着、キャップ類、
各種カバー類、サージカルテープなどの医療・衛材;印
刷物基材、包装・袋物資材、ワイパー、収納材などの生
活関連資材;衣料用;建設資材用;農業・園芸用資材;
土壌安定材、濾過用資材、流砂防止材、植生マット、補
強材などの土木・資材用;鞄靴材等の用途に用いること
ができる。さらに、本発明で得られるPVA系耐水性長
繊維不織布を単独で使用するのみではなく、他の熱可塑
性樹脂から構成される長繊維不織布、メルトブロー等の
他の方法で製造される不織布等と積層して用いることが
可能であり、上記の用途に用いる場合、実用機能をさら
に付与することができる。
【0032】
【実施例】次に本発明を具体的に実施例で説明するが、
本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実
施例において、各物性値は以下のようにして測定した。
なお、実施例中の部及び%はことわりのない限り質量に
関するものである。
【0033】[PVAの分析方法]PVAの分析方法は
特に記載のない限りはJIS−K6726に従った。変
性量は変性ポリビニルエステルあるいは変性PVAを用
いて500MHzプロトンNMR(JEOL GX−5
00)装置による測定から求めた。アルカリ金属イオン
の含有量は原子吸光法で求めた。
【0034】[PVA中の酸の含有量の分析方法]絶乾
したPVA50gを使用して、メタノール100mLを
用いてメタノールソックスレー抽出を3日間行った。抽
出液50mLに蒸留水50mLおよびフェノールフタレ
インを数滴加え、抽出液中の酸を1/1000Nの水酸
化ナトリウム水溶液により中和滴定し、わずかに赤色を
呈したところを終点とした。次式によりPVA中の含有
酸量を酢酸に換算した。 酢酸(%)=(0.12×滴定量mL×100)/(1
000×50)
【0035】[融点]PVAの融点は、DSC(メトラ
ー社、TA3000)を用いて、窒素中、昇温速度10
℃/分で250℃まで昇温後室温まで冷却し、再度昇温
速度10℃/分で250℃まで昇温した場合のPVAの
融点を示す吸熱ピークのピークトップの温度を調べた。
【0036】[紡糸状態]溶融紡糸の状態を観察して次
の基準で評価した。 ◎:極めて良好、○:良好、△:やや難あり、×:不良
【0037】[不織布の状態]得られた不織布を目視観
察および手触観察して次の基準で評価した。 ◎:均質で極めて良好、○:ほぼ均質で良好、△:やや
難あり、×:不良
【0038】[不織布の裂断長]JIS L1906
「一般長繊維不織布試験方法」に準じて測定した強力、
目付から算出した。
【0039】[目付、厚さ]JIS L1906 「一
般長繊維不織布試験方法」に準じて測定した。
【0040】[不織布の保水量]予め絶乾した後に精秤
した20cm×20cmの不織布を、20℃の純水50
0cc中に3分間浸漬後、不織布を水上に引き上げた状
態で1分間保ち、水滴が落ちなくなった時点での全質量
を精秤して、絶乾状態の不織布100質量部あたりの不
織布の吸水量(質量部)を求めた。
【0041】[不織布の溶出率]予め絶乾した後に精秤
した20cm×20cmの不織布を、20℃の蒸留水5
00cc中に24時間浸漬後、不織布を取り出し105
℃,24時間絶乾した後の不織布の質量を精秤して、絶
乾状態の不織布あたりの不織布の溶出率(%)を求め
た。
【0042】[エチレン変性PVAの製造]撹拌機、窒
素導入口、エチレン導入口および開始剤添加口を備えた
100L加圧反応槽に酢酸ビニル29.0kgおよびメ
タノール31.0kgを仕込み、60℃に昇温した後3
0分間窒素バブリングにより系中を窒素置換した。次い
で反応槽圧力が5.9kg/cm2(5.8×105
a)となるようにエチレンを導入仕込みした。開始剤と
して2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメ
チルバレロニトリル)(AMV)をメタノールに溶解し
た濃度2.8g/L溶液を調整し、窒素ガスによるバブ
リングを行って窒素置換した。上記の重合槽内温を60
℃に調整した後、上記の開始剤溶液170mlを注入し
重合を開始した。重合中はエチレンを導入して反応槽圧
力を5.9kg/cm2(5.8×105Pa)に、重合
温度を60℃に維持し、上記の開始剤溶液を用いて61
0ml/hrでAMVを連続添加して重合を実施した。
10時間後に重合率が70%となったところで冷却して
重合を停止した。反応槽を開放して脱エチレンした後、
窒素ガスをバブリングして脱エチレンを完全に行った。
次いで減圧下に未反応酢酸ビニルモノマーを除去しポリ
酢酸ビニルのメタノール溶液とした。
【0043】得られた該ポリ酢酸ビニル溶液にメタノー
ルを加えて濃度が50%となるように調整したポリ酢酸
ビニルのメタノール溶液200g(溶液中のポリ酢酸ビ
ニル100g)に、46.5g(ポリ酢酸ビニル中の酢
酸ビニルユニットに対してモル比(MR)0.10)の
アルカリ溶液(NaOHの10%メタノール溶液)を添
加してけん化を行った。アルカリ添加後約2分で系がゲ
ル化したものを粉砕器にて粉砕し、60℃で2時間放置
してけん化を進行させた後、0.5%酢酸濃度の蒸留水
1000gを加えて残存するアルカリを中和した。フェ
ノールフタレイン指示薬を用いて中和の終了を確認後、
濾別して得られた白色固体のPVAに蒸留水2000g
を加えて室温で3時間放置洗浄した。上記洗浄操作を3
回繰り返した後、さらにメタノール1000gを加えて
室温で3時間放置洗浄した。その後、遠心脱液して得ら
れたPVAを乾燥機中70℃で2日間放置して乾燥PV
A(PVA−1)を得た。
【0044】得られたエチレン変性PVAのけん化度は
99.4モル%であった。また該変性PVAを灰化させ
た後、酸に溶解したものを用いて原子吸光光度計により
測定したナトリウムの含有量は、変性PVA100質量
部に対して0.0001質量部であった。続いて、上記
で得た変性PVAを50℃で10時間真空乾燥させた絶
乾のPVA50gを、メタノール100mLを用いてメ
タノールソックスレー抽出を3日間行った。抽出液50
mLに蒸留水50mLおよびフェノールフタレインを数
滴加え、抽出液中の酸を1/1000Nの水酸化ナトリ
ウム水溶液での中和滴定により測定した酢酸の含有量
は、変性PVA100質量部に対して0.000006
質量部であり、PVA中の酢酸とナトリウムイオンの比
を表す値αは0.06であった。
【0045】また、重合後未反応酢酸ビニルモノマーを
除去して得られたポリ酢酸ビニルのメタノール溶液をn
−ヘキサンに沈殿、アセトンで溶解する再沈精製を3回
行った後、80℃で3日間減圧乾燥を行って精製ポリ酢
酸ビニルを得た。該ポリ酢酸ビニルをDMSO−d6に
溶解し、500MHzプロトンNMR(JEOL GX
−500)を用いて80℃で測定したところ、エチレン
の含有量は10モル%であった。上記のポリ酢酸ビニル
のメタノール溶液をアルカリモル比0.5で鹸化した
後、粉砕したものを60℃で5時間放置して鹸化を進行
させた後、メタノールソックスレーを3日間実施し、次
いで80℃で3日間減圧乾燥を行って精製されたエチレ
ン変性PVAを得た。該PVAの平均重合度を常法のJ
IS K6726に準じて測定したところ330であっ
た。さらに該精製された変性PVAの5%水溶液を調整
し厚み10ミクロンのキャスト製フィルムを作成した。
該フィルムを80℃で1日間減圧乾燥を行った後に、D
SC(メトラー社、TA3000)を用いて、前述の方
法によりPVAの融点を測定したところ215℃であっ
た(表1)。
【0046】
【表1】
【0047】実施例1 上記で得られたPVA(PVA−1)を90℃で10時
間真空乾燥させた後に、2軸同方向の押し出し機で23
5℃でペレットを作成した。該ペレットを押し出し機で
加熱して溶融混練し(入口200℃±1℃から出口23
5℃±1℃)、235℃の紡糸パックに導き、ノズル径
0.35mmφ×1008ホール、吐出量655cm3
/分、せん断速度2,600sec-1の条件で紡糸口金
から吐出させ、紡出フィラメント群を20℃の冷却風で
冷却しながら、ノズルから55cmの距離にあるエジェ
クターにより高速エアーで3500m/分の引取り速
度、ドラフト520で牽引細化させ、開繊したフィラメ
ント群をエンドレスに回転している捕集コンベア装置上
(ライン速度45m/分)に捕集堆積させ長繊維ウエブ
を形成させた。紡糸状態は、断糸は全く見られず極めて
良好であった。
【0048】次いで、このウエブを200℃に加熱した
凹凸柄エンボスロールとフラットロールとの間で、線圧
70kg/cmの圧力下で通過させ、エンボス部分熱圧
着した。さらに、該ウエブを200℃熱風乾燥機内を通
過させて30秒間熱処理を行うことにより、単繊維繊度
1.9デシテックスの長繊維からなる目付30g/m 2
の長繊維不織布を得た。得られた不織布は均質なもので
極めて良好であった。長繊維不織布の製造条件および製
造結果を表2に示した。
【0049】
【表2】
【0050】また、得られた不織布は手で揉んだりして
も単糸にばらけたり毛羽立つ事はなかった。さらに該不
織布を走査型電子顕微鏡観察したところ、不織布の中で
繊維の交差点や接触部の多くの部分で、繊維同志の接着
しているところが認められた。得られた不織布の裂断
長、保水量および20℃水中溶出率を測定した評価結果
を表3に示した。
【0051】
【表3】
【0052】実施例2〜10 実施例1で用いたPVAの代わりに表1に示すPVAを
用いて作成したペレットを使用して、表2に示した紡糸
条件を採用したこと以外は実施例1と同じ条件下にてP
VA系長繊維からなる不織ウエブを得た。続いて表2に
示したエンボス処理温度にて部分熱圧着して長繊維不織
布とした後に、表2に示した熱処理を施した。紡糸性お
よび得られた不織布の状態の結果を表2に示す。得られ
た不織布の目付、厚さ、裂断長、保水性および溶出率に
ついて試験した評価結果を表3に示す。
【0053】実施例2〜3に示したPVAペレットを用
いて、表2に示した不織布製造条件を採用したものは、
断糸は全く見られず極めて安定した良好な紡糸性であっ
た。得られた不織布は極めて均質で良好な地合と良好な
強度および高い保水性を有しており、かつ極めて溶出し
にくいものであった。実施例4のエチレン含量28モル
%のPVAペレットを用いたものは、極めて良好な紡糸
性を示し、得られた不織布は均質なものであったが、保
水量が実施例1のものに比べて半分以下の値であり、保
水性が少々小さい。実施例5の重合度170のPVAを
用いたものは、紡糸時に僅かに断糸が発生し、得られた
不織布の状態は実施例1に比べて僅かに低下した。ま
た、重合度が小さいためと思われるが、得られた不織布
の裂断長が実施例1のものに比べて少々小さい。実施例
6の重合度750の高エチレン含量のPVAを用いたも
の、実施例7の融点157℃の高エチレン含量のPVA
を用いたものおよび実施例8のナトリウム含量が0.0
6部のPVAを用いたものは、紡糸時に粘度が高く紡出
安定性が僅かに低下したり、僅かに分解臭がしたり、断
糸があったりして紡糸性が実施例1に比べて若干低下し
ており、また得られた不織布の状態も実施例1に比べて
若干低下しており、良好な程度であった。そのためか不
織布の強度と保水性の高いレベルでのバランスが実施例
1に比べて僅かに低下した。実施例9および10のPV
A中の酢酸含量とナトリウム含量のバランスが好適な範
囲から外れたものは、紡糸時にPVAの熱分解やゲル化
により溶融粘度が徐々に上昇して安定な繊維形成ができ
なかったので、紡糸温度を250℃まで高くした。それ
にも拘わらず少々分解臭があり、得られた不織布は若干
均質性に欠ける物であった。そのためと思われるが、得
られた不織布の強度および保水量は比較例3に比べて少
々低下した。
【0054】比較例1〜7 実施例1で用いたPVAの代わりに表1に示すPVAを
用いて作成したペレットを使用して、表2に示した紡糸
条件を採用したこと以外は実施例1と同じ条件下にてP
VA系長繊維からなる不織ウエブを得た。続いて表2に
示したエンボス処理温度にて部分熱圧着して長繊維不織
布とした後に、表2に示した熱処理を施した。紡糸性お
よび得られた不織布の状態の結果を表2に、得られた不
織布の目付、厚さ、裂断長、保水性および溶出率につい
て試験した評価結果を表3に示す。
【0055】比較例1に示したエチレンを共重合してい
ない未変性PVAを用いたもの、比較例2のプロピレン
3モル%変性PVAを用いたものおよび比較例3のエチ
レン含量0.5モル%のPVAを用いたものは、良好な
紡糸性を示し、均質な不織布が得られたが、溶出量が大
きかった。比較例4のエチレン含量56モル%のPVA
ペレットを用いたものは、極めて良好な紡糸性を示し、
得られた不織布は均質なものであったが、保水量が15
0質量部であり実施例1のものに比べて保水性が極めて
小さかった。比較例5に示したけん化度が低いPVAを
用いたものは、紡糸時に酢酸臭が発生しPVAが分解し
ていることがわかった。そのために得られた不織布の状
態は良くなく、裂断長は極めて小さかった。また、不織
布の溶出率は10%を越えるものであった。比較例6の
融点が234℃の無変性PVAを用いたものは、紡糸温
度を270℃まで上げたが紡出糸にゲルが多量に混入し
ており粗悪な不織布であった。実施例1で使用したPV
A100質量部に可塑剤SE−270(三洋化成製;ソ
ルビトール1モルにエチレンオキサイドを平均2モル付
加した化合物)10質量部を混合した後に90℃で10
時間真空乾燥させ、続いて2軸同方向の押し出し機で2
25℃でペレット化したものを用いた比較例7は、極め
て良好な不織布が得られたが溶出率が大きかった。
【0056】比較例8 実施例1と同様にして得たPVA系長繊維からなる不織
ウエブを、50℃のエンボスロールで処理したところ、
不織布の形態をなさなかった。
【0057】比較例9 実施例1で用いたPVA系ペレットにて、実施例1と同
様の条件で押し出し機によって溶融混練したものを、2
35℃の紡糸パックに導き、ノズル径0.35mmφ×
24ホール、吐出量16g/分、せん断速度2600s
ec-1、ドラフト230の条件で複合紡糸し、紡速16
00m/分で巻き取り、PVAフィラメントを得た。次
いで、得られた紡糸原糸を160℃の熱風炉で3倍に延
伸し、単繊維繊度2.1デシテックスの複合繊維を得
た。該延伸糸を捲縮機で捲縮を付与し50mmにカット
して原綿化した。この原綿をローラーカードでカーディ
ングし、ニードルパンチで絡合して目付30g/m2
不織布とした。該不織布の裂断長はタテ1.9km、ヨ
コ0.8kmであり、実施例1に比べて大幅に不織布強
度の小さいものであった。
【0058】
【発明の効果】本発明によれば、従来技術では到達でき
なかった安定した溶融紡糸によるPVA系長繊維からな
り、熱圧融着によってのみ接着されたノーバインダーの
PVA系長繊維不織布(いわゆるスパンボンド不織布)
において、良好な地合と優れた不織布物性を有し、かつ
水との高い親和性を有するPVA系耐水性長繊維不織布
が提供される。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 けん化度が90〜99.99モル%であ
    り、かつエチレンを1〜50モル%含有する熱可塑性ポ
    リビニルアルコール(A)を溶融紡糸し、紡出フィラメ
    ント群を吸引噴射装置で牽引細化させた後、開繊フィラ
    メントを移動式捕集コンベア装置上に捕集堆積させて長
    繊維ウエブを形成し、このウエブを加熱ロールからなる
    熱エンボス装置により部分的な熱圧融着を施し、形態を
    保持して得られるスパンボンド不織布において、該不織
    布の20℃水中溶出量が1%以下である事を特徴とする
    ポリビニルアルコール系耐水性長繊維不織布。
  2. 【請求項2】 熱可塑性ポリビニルアルコール(A)
    が、エチレンを1〜20モル%含有し、かつけん化度が
    95〜99.99モル%である請求項1に記載のポリビ
    ニルアルコール系耐水性長繊維不織布。
  3. 【請求項3】 請求項1または2記載の熱可塑性ポリビ
    ニルアルコール(A)が、粘度平均重合度が200〜7
    00、融点が160℃〜230℃であるエチレン変性ポ
    リビニルアルコール(B)からなり、かつ(B)100
    質量部に対してアルカリ金属イオン(C)が0.000
    01〜0.05質量部含有されており、かつ(B)に対
    して25℃におけるpKaが5.0以下の酸基を有する
    酸(D)を、下記の式で表すαが0.01〜0.8を満
    足するように含有する熱可塑性ポリビニルアルコールで
    ある請求項1または2に記載のポリビニルアルコール系
    耐水性長繊維不織布。 α=〔ポリビニルアルコール中の酸(D)の含有率(質
    量%)〕/〔ポリビニルアルコール中のアルカリ金属イ
    オン(C)の含有率(質量%)〕
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007154402A (ja) * 2005-11-14 2007-06-21 Nippon Synthetic Chem Ind Co Ltd:The エチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維
JP2008542568A (ja) * 2005-06-03 2008-11-27 ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー ポリマー構造体を含む繊維構造体
CN108103669A (zh) * 2017-12-29 2018-06-01 嘉兴市宏景无纺面料有限公司 一种压纹无纺布
CN110106563A (zh) * 2019-04-27 2019-08-09 苏州市欣楠纺织科技有限公司 一种具有高拉伸性能的纳米-非织造复合材料的制备方法

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