JP2001279358A - 斜板式圧縮機用ピストンおよびその製造方法 - Google Patents

斜板式圧縮機用ピストンおよびその製造方法

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JP2001279358A JP2000093477A JP2000093477A JP2001279358A JP 2001279358 A JP2001279358 A JP 2001279358A JP 2000093477 A JP2000093477 A JP 2000093477A JP 2000093477 A JP2000093477 A JP 2000093477A JP 2001279358 A JP2001279358 A JP 2001279358A
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Takayuki Kato
崇行 加藤
Masato Takamatsu
正人 高松
Seiji Katayama
誠二 片山
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Toyoda Automatic Loom Works Ltd
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    • F04B27/00Multi-cylinder pumps specially adapted for elastic fluids and characterised by number or arrangement of cylinders
    • F04B27/08Multi-cylinder pumps specially adapted for elastic fluids and characterised by number or arrangement of cylinders having cylinders coaxial with, or parallel or inclined to, main shaft axis
    • F04B27/0873Component parts, e.g. sealings; Manufacturing or assembly thereof
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 溶体化処理を施すことなくAl−Si合金中
の共晶Si相を球状化させることにより、耐摩耗性が良
好で、ブリスタ発生等の問題がなく、かつ安価な圧縮機
用ピストンを提供する。また、その製造方法を提供す
る。 【解決手段】 斜板式圧縮機用ピストンを、Siを7〜
18重量%含むAl−Si合金溶湯にNaおよびSrの
いずれか1種以上を20〜1000ppm添加して溶湯
処理を行い、そのAl−Si合金溶湯をダイカスト鋳造
することにより製造する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は斜板式圧縮機に用い
られるピストンおよびピストンの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】斜板式圧縮機は、主として車両空調用に
供されており、その構造により、片頭型、両頭型、ある
いは容量固定型、容量可変型といった種々の型式のもの
が存在する。これらの斜板式圧縮機の一例として、片頭
型容量可変斜板式圧縮機の縦断面図を図1に示し、その
圧縮機を構成する片頭形のピストンを図2に示す。
【0003】図示した斜板式圧縮機は、以下のように構
成される。駆動軸1は、シリンダブロック2とフロント
ハウジング3により形成される斜板室(クランク室)4
に収容されており、ラジアル軸受により回転自在に支持
されている。そしてシリンダブロック2内には駆動軸1
を囲む位置に複数個のボア5が配設されており、各ボア
5には片頭形のピストン6がそれぞれ往復動可能に嵌挿
されている。斜板室4内において、駆動軸1にはロータ
7が結合され、そのロータ7の後方に斜板8が嵌合され
ている。特に、可変容量型の片頭型斜板式圧縮機では斜
板8は支点回りに傾動可能となっており、斜板室4の圧
力変化に基づくピストン6の両端面に作用するガス圧の
釣り合いによって、斜板8の傾角変位を制御するように
なっている。また、斜板8には両端面外周側に平滑な摺
接面8aが形成され、この摺接面8aにはシュー9が当
接されており、これらシュー9のそれぞれはピストン6
の半球面座6aと係合されている。このシュー9を介し
てピストン6が斜板8と連係することにより、斜板8の
回転運動がピストン6の直線運動に変換されて冷媒ガス
の圧縮が行われる。
【0004】このような斜板式圧縮機では、車室空調用
としてのあくなき軽量化要求から、シリンダブロックに
加えてピストンにもアルミニウム合金を用いることが主
流となってきており、このようなアルミニウム合金製ピ
ストンは、一般には鍛造法又は鋳造法により製造されて
いる。
【0005】また、ピストンとシューとの摺接面は、過
酷な摺動条件を強いられるため、ピストンには機械的特
性として特に良好な耐摩耗性が要求されており、一般に
は、素材作成後に溶体化処理を行い、次いで人工時効処
理等を行うことにより耐摩耗性の向上を図っている。こ
こで、溶体化処理とは、一定時間、均一固溶体範囲の温
度に加熱した後急冷する処理であり、また人工時効処理
とは、一定時間、200℃程度の温度に加熱保持した後
放冷する処理である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記溶体化処理は、鋳
造品の機械的特性、特に斜板式圧縮機用ピストンの製造
においては、耐摩耗性の向上を図るために施される処理
の一つである。すなわちアルミニウム合金として主とし
て用いられるAl−Si合金中の共晶組織中のSi晶、
つまり共晶Si相は、鋳造後は針状の形状となってお
り、この形状が原因で合金の機械的特性が悪くなる。こ
の針状の共晶Si相は、溶体化処理を施すことによって
球状に変化し、Al−Si合金の機械的特性、特に耐摩
耗性が向上するのである。
【0007】しかしながら、溶体化処理は、鋳物を50
0℃前後の溶融開始温度直下の高温に加熱、保持する必
要があるため、設備、電力等のコストが高くなり、また
鋳造品にブリスタが発生する等の問題点があった。
【0008】本発明は、上記問題点に鑑み、溶体化処理
を施すことなくAl−Si合金中の共晶Si相を球状化
させることにより、耐摩耗性が良好で、ブリスタ発生等
の問題がなく、かつ安価な圧縮機用ピストンを提供する
ことを目的とする。また、本発明は、溶体化処理を施す
ことなくAl−Si合金中の共晶Si相を球状化させる
ことにより、ブリスタ発生等の問題がなく、かつ耐摩耗
性の良好な圧縮機用ピストンを低コストに製造する方法
を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の本発明の斜板式圧縮機用ピストンは、Siを7〜18
重量%含むAl−Si合金溶湯にNaおよびSrのいず
れか1種以上を20〜1000ppm添加して溶湯処理
を行い、そのAl−Si合金溶湯をダイカスト鋳造する
ことにより製造されたことを特徴とするものである。
【0010】また本発明の斜板式圧縮機用ピストン製造
方法は、Siを7〜18重量%含むAl−Si合金溶湯
にNaおよびSrのいずれか1種以上を20〜1000
ppm添加する溶湯処理工程と、そのAl−Si合金溶
湯をダイカスト鋳造する鋳造工程とを含むことを特徴と
するものである。
【0011】上記本発明の斜板式圧縮機用ピストンおよ
びその製造方法では、鋳造法としてダイカスト鋳造法を
採用する。この理由は、ダイカスト鋳造法が、特に大量
生産に適し、鋳肌がきれいである等の利点を有するから
である。したがって、圧縮機用ピストンの製造におい
て、実用価値が高い鋳造法となる。
【0012】そして本発明の斜板式圧縮機用ピストンお
よびその製造方法は、そのダイカスト鋳造において、鋳
造前にNaおよびSrのいずれか1種以上を添加する溶
湯処理を行うことを特徴とするものである。
【0013】この溶湯処理は、砂型鋳造法等において
は、共晶Si相の微細化処理として用いられる方法であ
る。共晶Si相の微細化処理が施されていない場合に
は、鋳造後の組織において共晶Si相は針状に発達した
ものになるが、共晶Si相微細化処理を施すことによっ
て、鋳造後の組織において共晶Si相は微細化される。
この共晶Si相の微細化によって、その鋳物の機械的特
性、特に伸びや衝撃値を向上させるものである。
【0014】ところが、ダイカスト鋳造法は、充填され
た溶融金属を急速に冷却し凝固させる方法であるため、
その冷却速度の速さゆえ、鋳造後の組織において、上記
処理を行わなくても、共晶Si相は微細化される。この
ため、ダイカスト鋳造法においては、かかる共晶Si相
微細化処理は必要ではなく、一般には行われない。
【0015】本発明の斜板式圧縮機用ピストンおよびそ
の製造方法で行う溶湯処理は、共晶Si相の微細化では
なく、共晶Si相の球状化を目的として行うものであ
る。このNaおよびSrのいずれか1種以上を添加する
上記溶湯処理による共晶Si相の球状化は、本発明者が
度重なる実験により見出したものであり、後に組織写真
を示して説明するように、共晶Si相の球状化が実現す
ることが確認できた。しかし、共晶Si相が球状化され
るメカニズムは、残念ながら、現在のところ明らにでき
ていない。
【0016】共晶Si相が球状化されたアルミニウム合
金組織では、後に詳しく説明するように、応力集中部が
存在しないため、その組織は破壊されにくくなり、耐摩
耗性が向上することになる。したがって、本発明の斜板
式圧縮機用ピストンは、溶体化処理を施すことなくAl
−Si合金中の共晶Si相を球状化させることにより、
耐摩耗性が良好で、ブリスタ発生等の問題がなく、かつ
安価な圧縮機用ピストンとなる。
【0017】また、溶体化処理を施すことなくAl−S
i合金中の共晶Si相を球状化させる本発明の斜板式圧
縮機用ピストンの製造方法によれば、ブリスタ発生等の
問題がなく、かつ耐摩耗性の良好な圧縮機用ピストンを
低コストに製造することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下に、本発明のピストンを製造
するための地金の選定、およびピストンの製造工程を説
明する。
【0019】本発明のピストンを製造するための地金に
は、Siを7〜18重量%含むAl−Si合金を用い
る。Siは、溶湯の流動性の改善、熱膨張の低減、熱間
割れの減少、鋳造時の引けの減少等の鋳造性を改善する
効果を有するため、ダイカスト用アルミニウム合金中に
は主として含有されている元素である。具体的には、例
えばJIS H 2118に規定される、AD1、AD
3、AD10、AD10Z、AD12等を使用すること
ができるが、これに限定されるものではなく、これらの
相当品を使用しても良い。なお加工性やじん性の観点か
ら、特にSiを7〜12重量%含むAl−Si合金が好
ましい。
【0020】本発明のピストンは、このような地金を使
用して、地金を溶解する溶解工程、溶融状態の地金にN
a等を添加する溶湯処理工程、ダイカスト鋳造工程、選
択的に行う人工時効処理工程、後処理工程等を経て製造
される。以下に各工程を順に説明する。
【0021】溶解工程は、地金を溶解する工程である。
溶解方法は特に限定されるものではなく、通常、アルミ
ニウム合金の溶解に用いられている方法で行えばよい。
例えば、るつぼ炉や誘導炉等を使用し、溶解温度は67
0〜710℃で溶解を行えばよい。
【0022】溶湯処理工程は、脱ガス処理、脱滓処理等
の一般的な処理に加え、Na等の添加により共晶Si相
の球状化処理を行う工程である。ここで脱ガス処理は、
鋳物のポロシティ形成の原因となる溶湯中の水素ガス量
を低く抑える処理である。処理方法は特に限定されるも
のではなく、通常用いられているアルゴン、窒素等の不
活性ガスを溶湯中に吹き込む方法等を使用することがで
きる。また脱滓処理は、鋳造性の悪化や鋳造物の機械的
性質の低下等の原因となる酸化物等の介在物を除去する
ものである。同様に処理方法は限定されるものではな
く、通常用いられている不活性ガス等の吹込みによる浮
上分離法や、フラックス処理による方法等を使用するこ
とができる。
【0023】本発明の斜板式圧縮機用のピストンおよび
その製造方法において、最も特徴となる共晶Si相の球
状化処理は、NaおよびSrのいずれか1種以上を溶湯
に添加することにより行う。Naによる処理は、共晶S
i相を球状化する効果がより大きいという利点があり、
この点を考慮する場合には、Naを選択することが望ま
しい。また、Srによる処理は、Naによる処理と比較
して酸化消耗が少なく処理持続時間が長いこと、また取
り扱いが安全でかつ簡単であること等の利点がある。こ
の点を考慮する場合には、Srを選択することが望まし
い。これらNaとSrを単独で添加することはもとよ
り、同時に添加することも可能である。
【0024】Naを添加する場合、その添加方法は、特
に限定されるものではなく、砂型鋳造法等において一般
に行われている方法を使用することができる。例えば、
金属NaあるいはNaF、NaCl等を含有するフラッ
クスを、フォスフォライザー等を用いて溶湯中へ押込み
攪拌する方法や、溶湯表面に浮かべて使用するタブレッ
ト型のフラックスを使用する方法等である。なお、Na
の酸化消耗による変動を少なくし処理効果を持続させる
ためには、容湯表面に浮かべて使用するタブレット型の
フラックスを使用する方法が望ましい。
【0025】またSrを添加する場合、その添加方法も
特に限定されるものではなく、砂型鋳造法等において一
般に行われている方法を使用することができる。例え
ば、Al−Sr母合金を溶湯中へ投入する方法等であ
る。
【0026】Na、Srのいずれを添加する場合であっ
ても、添加するNa、Srは酸化消耗し、時間の経過と
ともに処理効果が低下する。したがって、その処理効果
の低下を考慮して、Na、Srが溶湯中に常に補充され
る態様で添加することが好ましい。
【0027】Na、Srの添加量については、Naおよ
びSrのいずれか1種以上が、鋳造時の含有量におい
て、20〜1000ppmである必要がある。(本明細
書中において、ppmは重量ppmをいう。)20pp
m未満では共晶Si相が球状化する割合が少ないため充
分な処理効果が得られず、反対に1000ppmを越え
ると鋳造の際に溶湯の流動性が悪化し、また腐食により
炉材寿命も短くなる等の弊害が生ずるからである。ま
た、より耐摩耗性の良好なピストンを得る観点からは、
Na、Srの添加量は、鋳造時の含有量において、30
〜150ppmの範囲が好ましい。なおこれらの添加量
の条件は、NaまたはSrのどちらか一方のみを添加す
る場合だけでなく、NaとSrを併用して添加する場合
にも適用される。すなわち、NaとSrを併用する場合
には、両者の添加量の合計が、鋳造時の含有量におい
て、20〜1000ppmである必要がある。なお、N
aの過剰添加は、共晶組織の悪化を招き好ましくないの
で、Naを添加した直後の溶湯中のNa量は、150p
pm程度を上限にすることが好ましい。
【0028】ダイカスト鋳造工程は、金型に溶湯を高速
かつ高圧で注入し、急速凝固して鋳物を製造する工程で
ある。その鋳造装置および鋳造条件は、特に限定される
ものではなく、通常用いられている装置を使用し、また
その装置で通常採用される条件に従って行えばよい。装
置としては、例えばコールドチャンバーダイカストマシ
ン等を使用することができ、その鋳造条件は、例えば鋳
造圧力を20〜100MPa、ゲート速度を40〜80
m/s、充填時間を5〜100sとすることができる。
【0029】また、選択的に採用することができる人工
時効処理工程は、鋳物を200℃前後の比較的低い温度
に一定時間加熱保持し、その後放冷する工程である。こ
の人工時効処理は、鋳造品の強度をさらに向上させ、ま
た寸法安定性の向上を図るため等に行われる処理であ
る。処理方法は特に限定されるものではなく、通常用い
られる方法により行えばよい。例えば、鋳物を90〜2
10℃で数時間加熱、保持した後、放冷して行うことが
できる。したがって、強度的に優れたピストンとするた
めには、本発明のピストン製造方法は、Al−Si合金
溶湯にNaおよびSrのいずれか1種以上を添加する溶
湯処理工程と、その合金溶湯をダイカスト鋳造する鋳造
工程と、さらにその後に人工時効処理工程を含む態様と
することが望ましい。なお、この態様で製造されるピス
トンのように、鋳造後に人工時効処理を行って製造され
るものは、JISに規定されている調質記号(JIS
H0001)では「T5」と示される。ちなみに、鋳造
後に溶体化処理を行った後、人工時効処理を施して製造
されるものは、JISに規定されている調質記号(JI
S H 0001)では「T6」と示される。
【0030】人工時効処理を行わない場合には、自然時
効となり、常温で合金成分が析出するため、鋳物を加熱
する設備や電力等の製造コストを低減することができ、
安価に製品を製造することができる。したがって、製造
コストを考慮し、より安価なピストンとする場合には、
本発明の製造方法は人工時効処理を行わない態様とする
ことが望ましい。
【0031】後処理工程は、鋳物に対して、所定の部位
の機械加工、メッキ等の表面処理等を行う工程である。
これらについても、必要に応じた処理を、従来からピス
トンの製造において行われている方法で行えばよい。例
えば、ピストンのボアとの摺接面にフッ素樹脂膜等を形
成する表面処理や、シューの受け座面に施すSnメッキ
等の表面処理である。
【0032】上記工程を経て製造された本発明のピスト
ンは、その組成において、地金としてのSiを7〜18
重量%含むアルミニウム合金の組成を維持するものであ
り、Siの他に、Cu、Mg、Zn、Fe等の元素を含
んでいてもよい。さらに、本発明のピストンは、Naや
Srの添加による溶湯処理を行って製造されたため、添
加されたNaやSrを20〜1000ppm含む。ま
た、そのミクロ組織においては、後に写真で示すよう
に、共晶Si相は球状化されている。つまり、共晶Si
相は、角が取れて丸みを帯びた形状となっている。この
共晶Si相の形状が、角が取れ、丸みを帯びていること
で、ピストンの機械的特性、特に耐摩耗性が向上する。
その理由は以下のように考えられる。すなわち、ピスト
ンの合金組織において針状形状をしている共晶Si相
は、ピストンに応力が加わると、組織中に亀裂(クラッ
ク)が生じている状態と同様に、針状形状の両端部が応
力集中部となり、中央部分は開口する。そしてさらに応
力が加わることによって、その開口が伸展し、組織は破
壊される。針状のSi相が表面に存在する場合、開口の
伸展は小さな応力で発生するため、表面の摩擦によって
この組織破壊の現象が顕著になる。つまりピストンの耐
摩耗性が低下する。ところが、共晶Si相が丸みを帯び
ていると、ピストンに応力がかかっても、応力集中部が
存在しないため、組織は破壊されにくくなり、その結果
耐摩耗性が向上するのである。なお、球状化した共晶S
i相の粒径は、平均粒径で1.5〜3.0μm とする
ことが望ましい。
【0033】以上、本発明の斜板式圧縮機用ピストンお
よびその製造方法の実施形態について説明したが、上記
実施形態は一実施例にすぎず、本発明の斜板式圧縮機用
ピストンおよびその製造方法は、上記実施形態を始めと
して、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施し
た種々の形態で実施することができる。
【0034】
【実施例】上記実施形態に従って製造した斜板式圧縮機
用ピストンと、これと異なる方法で製造した斜板式圧縮
機用ピストンの耐摩耗性について試験を行った。各ピス
トンとその製造方法、耐摩耗性試験、その試験結果によ
る耐摩耗性の評価、および合金組織の観察結果について
以下に述べる。
【0035】<実施例1のピストン>実施例1のピスト
ンは、本発明のピストンであり、以下の方法で製造し
た。地金には、JIS H 2118に規定するAD12
相当品であるSiを12重量%含むAl−Si合金を用
いた。このAl−Si合金の化学成分を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】上記Al−Si合金を、るつぼ炉を使用
し、溶解温度680〜700℃、溶解時間2時間で溶解
した。次ぎに溶湯処理として脱ガス処理、脱滓処理、さ
らに共晶Si相の球状化処理を行った。すなわち、脱ガ
ス処理も兼ねているフラックス処理により脱滓処理を行
った。さらに、共晶Si相の球状化処理として、Naの
みを使用し、タブレット(商品名プリマパック(日本金
属化学社))を溶湯に浮かべる方法で、1時間かけて添
加した。Naの添加量は鋳造時の含有量において100
ppmとなるように管理した。ダイカスト鋳造は、コー
ルドチャンバーダイカスト装置を使用し、鋳造圧力は2
00〜250MPaという条件で行った。また、人工時
効処理を行い、鋳造後の鋳物を200℃に加熱し、1時
間保持した後に放冷した。最後に後処理として、図2に
示す形状にすべく、所定の部位の機械加工を行い、次い
でメッキ等の表面処理を行った。なお、本ピストンは、
上述の、JISに規定されている調質記号(JIS H
0001)では、「T5」と示される処理を行ったも
のに相当する。
【0038】<比較例1のピストン>比較例1のピスト
ンの製造方法は、溶湯処理として、Naの添加による共
晶Si相の球状化処理を行わない点のみ、上述の実施例
1のピストンの製造方法と異なる。すなわち、実施例1
のピストンと同様の地金を使用し、その地金を溶解した
後、溶湯処理として脱ガス処理、脱滓処理のみを行い、
ダイカスト鋳造後に人工時効処理を施して、後処理を行
った。各工程は、上述の実施例1のピストンを製造する
場合と同様に行った。なお、本ピストンも、JISに規
定されている調質記号(JIS H 0001)では、
「T5」と示される処理を行ったものに相当する。
【0039】<比較例2のピストン>比較例2のピスト
ンの製造方法は、従来の方法を採用した。従来の方法
は、溶湯処理として、Naの添加による共晶Si相の球
状化処理を行わず、かつダイカスト鋳造後に溶体化処理
を行う点で、上述の実施例1のピストンの製造方法と異
なる。すなわち、実施例1のピストンと同様の地金を使
用し、その地金を溶解した後、溶湯処理として脱ガス処
理、脱滓処理のみを行い、ダイカスト鋳造後に溶体化処
理を行った後、人工時効処理を施して、後処理を行っ
た。ここで溶体化処理は、鋳造後の鋳物を490℃に加
熱し、1時間保持した後急冷した。その他の各工程は、
上述の実施例1のピストンを製造する場合と同様に行っ
た。なお、本ピストンは、JISに規定されている調質
記号(JIS H 0001)では、「T6」と示され
る処理を行ったものに相当する。
【0040】<耐摩耗性試験の試験方法>上述の方法に
より製造された実施例1、比較例1、および比較例2の
3種類のピストンを、それぞれ上述の図1に示す片頭型
容量可変斜板式圧縮機に嵌挿し、運転を行った。冷媒は
R134を使用し、オイルはPAGを使用した。また運
転条件は回転速度を700rpmとし、100時間の実
機による運転を行うものとした。なお、実施例1、比較
例1、比較例2の各ピストンは、それぞれn=7本、n
=10本、n=10本について試験を行った。
【0041】耐摩耗性の評価は、上述の圧縮機の運転後
における、各ピストンのシューと係合する半球面座の摩
耗量を測定することにより行った。具体的には、図3に
その測定箇所を示すように、圧縮機の運転前と運転後に
おけるシュー9と斜板8との遊間Lの変化量ΔLを測定
し、そのΔLを半球座面の摩耗量とした。 <試験結果による耐摩耗性の評価>摩耗量の測定結果を
図4示す。実施例1のピストンの摩耗量は5〜19μm
であり、比較例1のピストンの摩耗量は200〜300
μm、比較例2のピストンの摩耗量は5〜20μmであ
った。
【0042】図4から明らかなように、実施例1である
本発明のピストンは、比較例1である共晶Si相の球状
化処理を行わなかったピストンと比較して、摩耗量が約
1/20となり、大幅に耐摩耗性が向上している。ま
た、実施例1である本発明のピストンは、比較例2であ
る従来方法により製造されたピストンと比較しても、そ
の摩耗量はほぼ同量であり、これにより本発明のピスト
ンは、溶体化処理を行わなくても、良好な耐摩耗性を有
することが実証された。
【0043】<合金組織の観察結果>また、実施例1の
ピストンと比較例1のピストンのについて、その合金の
組織観察を行った。各組織の写真を図5(a)、(b)
に示す。図5(a)の写真は、実施例1のピストンの合
金組織を、図5(b)の写真は、比較例1のピストンの
合金組織を、それぞれ400倍に拡大して示したもので
ある。これらの写真からわかるように、比較例1の共晶
Si相は、細長く針状形をしているのに対し、実施例1
の共晶Si相は、角がとれて、丸みを帯びている。した
がって、実施例1である本発明のピストンにおいては、
Naを添加するという溶湯処理を行うことによって、共
晶Si相が球状化することが、組織観察からも確認でき
た。
【0044】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明の斜板式圧
縮機用ピストンは、溶体化処理を施すことなく、Na、
Srによる溶湯処理を施すことで、Al−Si合金中の
共晶Si相を球状化させる方法で製造されたものであ
り、耐摩耗性が良好で、ブリスタ発生等の問題がなく、
かつ安価なピストンとなる。また本発明の製造方法によ
れば、溶体化処理を施すことなく、Na、Srによる溶
湯処理を施すことで、Al−Si合金中の共晶Si相を
球状化させることにより、ブリスタ発生等の問題がな
く、かつ耐摩耗性の良好な斜板式圧縮機用ピストンを低
コストに製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 片頭型容量可変斜板式圧縮機の縦断面図であ
る。
【図2】 片頭型容量可変斜板式圧縮機に使用される片
頭形のピストンの正面図である。
【図3】 ピストンの摩耗量の測定箇所を示す図であ
る。
【図4】 ピストンの摩耗量の測定結果を示すグラフで
ある。
【図5】 ピストンの合金組織を示す写真であって、
(a)は溶湯処理として、Naの添加による共晶Si相
の球状化処理を行って製造されたピストンの合金組織を
示す写真、(b)は溶湯処理として、Naの添加による
共晶Si相の球状化処理を行わずに製造されたピストン
の合金組織を示す写真である。
【符号の説明】
1:駆動軸 2:シリンダブロック 3:フロントハウジング 4:斜板室 5:ボア 6:ピストン 6a:半球座面 7:ロータ 8:斜板 8a:摺接面 9:シュー
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成12年5月9日(2000.5.9)
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図5
【補正方法】変更
【補正内容】
【図5】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 片山 誠二 愛知県刈谷市豊田町2丁目1番地 株式会 社豊田自動織機製作所内 Fターム(参考) 3H003 AA03 AB07 AC03 AD01 CB00 3H076 AA06 BB26 BB41 CC31 CC33 CC34

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Siを7〜18重量%含むAl−Si合
    金溶湯にNaおよびSrのいずれか1種以上を20〜1
    000ppm添加して溶湯処理を行い、そのAl−Si
    合金溶湯をダイカスト鋳造することにより製造されるこ
    とを特徴とする斜板式圧縮機用ピストン。
  2. 【請求項2】 Siを7〜18重量%含むAl−Si合
    金溶湯にNaおよびSrのいずれか1種以上を20〜1
    000ppm添加する溶湯処理工程と、そのAl−Si
    合金溶湯をダイカスト鋳造する鋳造工程とを含んでなる
    斜板式圧縮機用ピストンの製造方法。
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