JP2001277033A - エンドミル - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 複数の外周切刃が設けられると共に外周切刃
間に切り屑排出溝が形成されたエンドミルにより、深切
り込み加工や溝加工等のように切り屑が多く発生する切
削加工を行う場合に、切り屑が切り屑排出溝を通して適
切に排出されるようにすると共に、このエンドミルの剛
性を高め、これらの切削加工が効率よく安定して行える
ようにする。 【解決手段】 複数の外周切刃１１が設けられると共
に、各外周切刃間に切り屑排出溝１２が形成されたエン
ドミルにおいて、外周切刃よりエンドミルの回転方向前
方側におけるすくい面１３を軸芯側に凹んだ凹の円弧状
に形成し、このすくい面１３と連続する切り屑排出溝の
溝底面１４ａを半径方向外方に突出した凸の円弧状に形
成し、さらにこの凸の円弧状の溝底面と連続する溝底面
１５を軸芯側に凹んだ凹の円弧状に形成した。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、被削材に対して
端面加工や溝加工等を行うのに使用するエンドミルに係
り、複数の外周切刃が設けられると共に、各外周切刃間
に切り屑排出溝が形成されたエンドミルにおいて、その
剛性を低下させることなく、切り屑排出性を高めるよう
にした点に特徴を有するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来より、被削材の端面加工や溝加工を
行うのに様々なエンドミルが使用されており、このよう
なエンドミルとしては、図１及び図２に示すように、軸
１０の先端からシャンク部１０ａにかけて４つの外周切
刃１１を円周方向に等間隔で設け、各外周切刃１１の間
にねじれ溝からなる切り屑排出溝１２を形成したもの
や、図２に示すように、２つの外周切刃１１を設け、各
外周切刃１１の間にねじれ溝からなる切り屑排出溝１２
を形成したもの等が使用されていた。

【０００３】ここで、図１及び図２に示すような４つの
外周切刃１１を有するエンドミルの場合、この４つの外
周切刃１１により切削を行うため、切削時に各外周切刃
１１に加わる負荷は低減されるが、外周切刃１１間にお
ける切り屑排出溝１２の面積が小さくなり、例えば、深
切り込み加工や溝加工等のように切り屑が多く発生する
切削加工を行う場合において、その送り速度を速くする
と、切り屑が切り屑排出溝１２を通して十分に排出され
ず、切り屑がこの切り屑排出溝１２内に詰まり、これに
より切削時にビビリが発生し、さらに送り速度を速める
と、最後にはエンドミルが破損してしまい、深切り込み
加工や溝加工等の切削加工を効率良く行うことができな
いという問題があった。

【０００４】また、このように４つの外周切刃１１を有
するエンドミルにおいて、切り屑排出溝１２を通して切
り屑が十分に排出されるようにするため、上記の切り屑
排出溝１２を深く掘り込むと、このエンドミルの心厚が
小さくなって、エンドミルの剛性が低下するという問題
があった。

【０００５】また、図３に示すような外周切刃１１が２
つのエンドミルの場合、切り屑排出溝１２の部分の面積
は大きくなるが、それぞれの外周切刃１１に加わる負荷
が大きくなると共に、エンドミルの剛性も低く、送り速
度を速めて切削を行うと、外周切刃１１等に破損が生じ
るため、送り速度を速めることはできず、効率の良い切
削加工が行えないという問題があった。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】この発明は、複数の外
周切刃が設けられると共に、各外周切刃間に切り屑排出
溝が形成されたエンドミルにおける上記のような問題を
解決することを課題とするものであり、深切り込み加工
や溝加工等のように切り屑が多く発生する切削加工を行
う場合においても、切り屑が切り屑排出溝を通して適切
に排出されるようにすると共に、このエンドミルの剛性
を高め、これらの切削加工が効率よく安定して行えるよ
うにすることを課題とするものである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】この発明におけるエンド
ミルにおいては、上記のような課題を解決するため、複
数の外周切刃１１が設けられると共に、各外周切刃１１
間に切り屑排出溝１２が形成されたエンドミルにおい
て、上記の外周切刃１１よりエンドミルの回転方向前方
側におけるすくい面１３を軸心側に凹んだ凹の円弧状に
形成し、このすくい面１３と連続する上記の切り屑排出
溝１２の溝底面１４ａを半径方向外方に突出した凸の円
弧状に形成し、さらにこの凸の円弧状の溝底面１４ａと
連続する溝底面１４ｂを軸心側に凹んだ凹の円弧状に形
成したのである。

【０００８】そして、この発明のエンドミルのように、
外周切刃１１よりエンドミルの回転方向前方側における
すくい面１３を軸心側に凹んだ凹の円弧状に形成し、こ
のすくい面１３と連続する切り屑排出溝１２の溝底面１
４ａを半径方向外方に突出した凸の円弧状に形成し、さ
らにこの溝底面１４ａと連続する溝底面１４ｂを軸心側
に凹んだ凹の円弧状に形成すると、上記の切り屑排出溝
１２の面積が従来のものに比べて大きくなり、この切り
屑排出溝１２を通して切り屑が十分に排出されるように
なると共に、上記のように凸の円弧状になった溝底面１
４ａに外周切刃１１によって切削された切り屑があたっ
て、この切り屑が小さくカールしたり、切断されたりし
て、切り屑が適切に排出されるようになり、さらにこの
凸の円弧状になった溝底面１４ａによりエンドミルの心
厚が大きくなって、エンドミルが十分な剛性を持つよう
になる。

【０００９】このため、この発明のエンドミルを用い
て、深切り込み加工や溝加工等の切り屑が多く発生する
切削加工を高速で行うようにした場合においても、切削
された切り屑が上記の切り屑排出溝１２を通して十分に
排出されるようになり、切り屑が切り屑排出溝１２に詰
まってビビリが発生したり、エンドミルが破損したりす
るということもなく、安定した切削加工が行えるように
なる。

【００１０】また、この発明におけるエンドミルにおい
て、各外周切刃１１に加わる負荷を少なくするために
は、請求項２に示すように、エンドミルにおける外周切
刃１１の数を３以上にすることが好ましい。

【００１１】

【発明の実施の形態】以下、この発明の実施形態に係る
エンドミルを添付図面に基づいて具体的に説明する。

【００１２】この実施形態におけるエンドミルにおいて
も、軸の先端からシャンク部にかけて、図４に示すよう
に、４つの外周切刃１１を円周方向に等間隔で設けると
共に、各外周切刃１１の間に切り屑を排出させるねじれ
溝からなる切り屑排出溝１２を形成している。

【００１３】ここで、この実施形態におけるエンドミル
においては、上記の各外周切刃１１よりエンドミルの回
転方向後方側に逃げ面１５を設ける一方、各外周切刃１
１よりエンドミルの回転方向前方側におけるすくい面１
３を軸心側に凹んだ凹の円弧状に形成し、このすくい面
１３と連続する上記の切り屑排出溝１２の溝底面１４ａ
を半径方向外方に突出した凸の円弧状に形成し、さらに
この凸の円弧状になった溝底面１４ａと連続する溝底面
１４ｂを軸心側に凹んだ凹の円弧状に形成し、この凹の
円弧状になった溝底面１４ｂを、上記の外周切刃１１よ
りも回転方向前方側における前の外周切刃１１の逃げ面
１５につなげている。

【００１４】そして、この実施形態におけるエンドミル
のように、外周切刃１１よりエンドミルの回転方向前方
側におけるすくい面１３を軸心側に凹んだ凹の円弧状に
形成し、このすくい面１３と連続する切り屑排出溝１２
の溝底面１４ａを半径方向外方に突出した凸の円弧状に
形成し、さらにこの溝底面１４ａと連続する溝底面１４
ｂを軸心側に凹んだ凹の円弧状に形成すると、上記の切
り屑排出溝１２の面積が大きくなって切り屑の排出性が
向上すると共に、上記のように半径方向外方に突出した
溝底面１４ａに、外周切刃１１によって切削された切り
屑があたって、この切り屑が小さくカールしたり、切断
されたりして、切り屑が適切に排出されるようになる。

【００１５】さらに、上記のように半径方向外方に突出
した溝底面１４ａによってエンドミルの心厚が大きくな
り、エンドミルが十分な剛性を持つようになる。

【００１６】なお、この実施形態のエンドミルにおいて
は、外周切刃１１及び切り屑排出溝１２がそれぞれ４つ
設けたものを示したが、外周切刃１１及び切り屑排出溝
１２の数は上記のようなものに限定されず、外周切刃１
１及び切り屑排出溝１２を２以上有するものであればよ
い。

【００１７】次に、外周切刃１１及び切り屑排出溝１２
がそれぞれ４つ設けられた上記の実施形態に示すような
実施例のエンドミルと、外周切刃１１及び切り屑排出溝
１２がそれぞれ４つ設けられた図２に示す比較例のエン
ドミルとを用いて、それぞれ溝加工を行い、この発明の
実施例に係るエンドミルが優れていることを明らかにす
る。

【００１８】ここで、この実施例及び比較例のエンドミ
ルとしては、それぞれ外径Ｄが６ｍｍのものを用い、そ
の外周切刃１１間における切り屑排出溝１２のねじれ角
を４５°、すくい面１３のすくい角を０°、逃げ面１５
の逃げ角を１０°にし、それぞれ表面をＴｉＡｌＮでコ
ーティングしたものを用いた。

【００１９】また、実施例のエンドミルにおいては、上
記のように軸心側に凹んだ凹の円弧状になったすくい面
１３の半径を１．２ｍｍ、このすくい面１３と連続する
半径方向外方に突出した凸の円弧状になった溝底面１４
ａの半径を１．０ｍｍ、この凸の円弧状になった溝底面
１４ａと連続する軸心側に凹んだ凹の円弧状になった溝
底面１４ｂの半径を１．２ｍｍにした。この場合、上記
の凸の円弧状になった溝底面１４ａの頂部の心厚Ｓは
４．０ｍｍになっていた。

【００２０】一方、比較例のエンドミルにおいては、上
記の図２に示すように、外周切刃１１に対して回転方向
前方側におけるすくい面１３が軸心側に凹んだ円弧状に
形成され、このすくい面１３の底部１３ａと連続する切
り屑排出溝１２の溝底面１４が半径方向外方に突出する
ようにし、この溝底面１４が上記の外周切刃１１よりエ
ンドミルの回転方向前方側における前の外周切刃１１の
逃げ面１５に連続するようにした。この場合、上記のす
くい面１３の底部１３ａにおける心厚Ｓは３．６ｍｍで
あった。

【００２１】そして、上記の実施例及び比較例のエンド
ミルを用い、エアーブローを使用せずに、Ｓ５０Ｃの鋼
材を用いた被削材に対し切削速度６０ｍ／ｍｉｎ、切り
込み深さ３ｍｍにして溝加工を行うようにし、当初は、
その送り速度を０．０５ｍｍ／ｒｅｖにし、その後、送
り速度を０．０５ｍｍ／ｒｅｖづつ増加させて、溝加工
を行った。

【００２２】この結果、上記速度の比較例のエンドミル
においては、送り速度が０．２ｍｍ／ｒｅｖになった時
点から切り屑排出溝１２に切り屑が詰まってビビリが発
生し、送りが０．３ｍｍ／ｒｅｖになった時点でエンド
ミルが破損した。

【００２３】これに対して、この発明の実施例のエンド
ミルにおいては、送りが０．４５ｍｍ／ｒｅｖの時点に
おいても、切り屑が切り屑排出溝１２に詰まってビビリ
が発生するということがなく、切り屑が切り屑排出溝１
２を通して適切に排出されて良好な溝加工が行えた。

【００２４】

【発明の効果】以上詳述したように、この発明における
エンドミルにおいては、外周切刃よりエンドミルの回転
方向前方側におけるすくい面を軸心側に凹んだ凹の円弧
状に形成すると共に、このすくい面と連続する切り屑排
出溝の溝底面を半径方向外方に突出した凸の円弧状に形
成し、さらにこの凸の円弧状になった溝底面と連続する
溝底面を軸心側に凹んだ凹の円弧状に形成したため、外
周切刃間における切り屑排出溝の面積が大きくなって切
り屑の排出性が向上されるようになった。

【００２５】また、上記の凸の円弧状になった溝底面
に、外周切刃によって切削された切り屑があたって、こ
の切り屑が小さくカールしたり、切断されたりして、切
り屑が適切に排出されるようになると共に、この凸の円
弧状になった溝底面によりエンドミルの心厚が大きくな
って、エンドミルが十分な剛性を持つようになった。

【００２６】この結果、この発明のエンドミルにおいて
は、深切り込み加工や溝加工等の切り屑が多く発生する
切削加工を高速で行うようにした場合においても、切削
された切り屑が切り屑排出溝を通して十分に排出される
ようになり、切り屑が切り屑排出溝に詰まってビビリが
発生したり、エンドミルが破損するということもなく、
効率よく安定した切削加工が行えるようになった。

【００２７】また、この発明におけるエンドミルにおい
て、エンドミルにおける外周切刃の数を３以上にする
と、各外周切刃に加わる負荷が少なくなって、外周切刃
の破損が抑制され、外周切刃が２つのエンドミルに比べ
て、より高速で切削加工できるようになった。

【図面の簡単な説明】

【図１】４つの外周切刃が設けられたエンドミルの概略
側面図である。

【図２】４つの外周切刃が設けられた従来のエンドミル
の断面説明図である。

【図３】２つの外周切刃が設けられた従来のエンドミル
の断面説明図である。

【図４】４つの外周切刃が設けられたこの発明の一実施
形態に係るエンドミルの断面説明図である。

【符号の説明】

１１ 外周切刃 １２ 切り屑排出溝 １３ すくい面 １４ａ 凸の円弧状になった溝底面 １４ｂ 凹の円弧状になった溝底面

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 複数の外周切刃１１が設けられると共
   に、各外周切刃１１間に切り屑排出溝１２が形成された
   エンドミルにおいて、上記の外周切刃１１よりエンドミ
   ルの回転方向前方側におけるすくい面１３が軸心側に凹
   んだ凹の円弧状に形成され、このすくい面１３と連続す
   る上記の切り屑排出溝１２の溝底面１４ａが半径方向外
   方に突出した凸の円弧状に形成され、さらにこの凸の円
   弧状の溝底面１４ａと連続する溝底面１４ｂが軸心側に
   凹んだ凹の円弧状に形成されてなることを特徴とするエ
   ンドミル。
2. 【請求項２】 請求項１に記載したエンドミルにおい
   て、上記の外周切刃１１が３以上設けられていることを
   特徴とするエンドミル。