JP2001271176A - 金属成形品の表面改質方法 - Google Patents

金属成形品の表面改質方法

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JP2001271176A
JP2001271176A JP2000084065A JP2000084065A JP2001271176A JP 2001271176 A JP2001271176 A JP 2001271176A JP 2000084065 A JP2000084065 A JP 2000084065A JP 2000084065 A JP2000084065 A JP 2000084065A JP 2001271176 A JP2001271176 A JP 2001271176A
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Yoshihisa Suzuki
良尚 鈴木
Shiro Maeda
四朗 前田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 表面改質する領域の終止部のクレータの発生
を効果的に防止できる金属成型品の表面改質方法を提供
する。 【解決手段】 高密度加熱エネルギ3を金属成形品1の
表面に投入し、その投入位置に形成される金属成形品1
の表層を構成する金属が溶融した溶融池4を表面改質す
る領域の開始部1aから終止部1bまで進行させ、その
表層を構成する金属を連続的に溶融凝固させて行う金属
成形品の表面改質方法において、表面改質する領域の終
止部1bにおいて、投入する高密度加熱エネルギ3を減
少させてかつ溶融池4に固体金属からなる溶材6を溶融
添加した後、溶融池4を構成する金属を凝固させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属成形品の表面
改質方法に関し、特にアルミニウム合金鋳物等の表面改
質に好適な表面改質方法に関する。
【0002】
【従来の技術】今日、金属成形品は、自動車、船舶、航
空機、工作機械等をはじめ、建築金具や日常家庭用品に
至るまで幅広い製品に用いられている。金属成形品は、
原料となる金属材料を鋳造、鍛造、プレス加工、圧延加
工、押し出し加工等することにより作成されるが、その
加工過程において熱や応力等が負荷されるので、成形品
の表層に変形、亀裂、ピンホール、ブローホール、引け
巣等の欠陥が生じやすい。これらの表層欠陥は、成形品
の機械的特性等に悪影響を及ぼす。
【0003】そこで、これらの表層欠陥を取り除き、成
形品の機械的特性等を改善するため、アロイング処理、
コーティング処理、拡散浸透処理等、様々な表面改質方
法が用いられている。これら表面改質方法の中には、金
属成形品の表面に添加したい合金元素をメッキ、蒸着、
塗布などで付着させ、レーザーや電子ビームを照射して
表層を溶融、拡散、混合し、合金層を作る表面合金化処
理や、高密度加熱エネルギを利用して、表層のみ加熱急
冷して表面焼き入れするアモルファス化処理のように、
金属成形品の表面を溶融凝固させることにより表層の機
械的特性等を改善するものがある。
【0004】これら表面改質方法の一つである再溶融処
理は、鋳造された金属成形品の中でも特にアルミニウム
合金の鋳物の表層の機械的特性を局部的に改善するのに
有効な表面改質方法である。例えば、自動車エンジンの
シリンダヘッドのような複雑な形状をした部品は、通常
鋳造により成形され、また、その用途から耐熱疲労特性
が特に問題となる。例えば、アルミニウム合金鋳物製の
シリンダヘッドにおいては耐熱疲労特性を改善するため
の一つの方法としては、その部分の合金の共晶組織(例
えばAl−Si系合金の鋳造においては針状の共晶シリ
コンが析出する)の微細化があり、共晶組織を微細化す
るには、溶湯の凝固速度を速くすればよい。しかし、凝
固速度を速くすると、溶湯が鋳型の空洞部を完全に満た
す前に凝固してしまうので湯回りが悪化したり、あるい
は湯境が生じたり、溶湯内のガスが成形品の内部に閉じ
こめられて欠陥が残留したりするおそれがある。そこ
で、シリンダヘッドの場合、鋳造後局部的に耐熱疲労特
性を改善するためにこの再溶融処理が用いられる。
【0005】上記再溶融処理は、例えばTIGアーク等
の高密度加熱エネルギを移動させながら、金属材料の表
面に投入し、その表層を再溶融させ、引き続き急冷凝固
させることによって、その部分のピンホール、ブローホ
ール、引け巣等の欠陥を除去するとともに合金の組織を
微細化するものである。
【0006】アルミニウム合金鋳物に対してTIGアー
クを用いて行う再溶融処理は具体的には以下のように行
われる。まず初めに、TIGアークをタングステン電極
と鋳物の表面との間に発生させる。TIGアークにより
表面は加熱され所望の深さにおいて表層を構成するアル
ミニウム合金が溶融し、鋳物表面のTIGアーク投入部
に溶融池が発生する。次に、再溶融処理を行う領域、す
なわち処理領域において鋳物の表面に沿ってTIGアー
クを移動させる。TIGアークを移動させると、それに
対応してTIGアーク投入部も移動するので、溶融池も
進行し、溶融池後方では溶融したアルミニウム合金が急
冷凝固しビードが形成される。すなわち、TIGアーク
投入部のアルミニウム合金は連続的に溶融凝固すること
になり、ビードが形成された表層部分のピンホール等の
欠陥が除去され、その部分の組織が微細化される。
【0007】しかし、上記再溶融処理のような高密度加
熱エネルギを用いた金属成形品の表面改質処理は、その
処理領域の終止部において、以下の問題点を有する。溶
融池が移動している場合は、溶融池の溶融金属の液面
は、例えばTIGアークのアーク圧等により中央部の溶
湯が周囲に押しやられることで、その部分が凹んでい
る。処理領域の終止部においてアークエネルギの投入を
中止した場合、溶融池がそのままの状態で凝固すること
と凝固収縮のため中央部が凹んだ形状で凝固する。この
ため凝固後、処理領域の終止部にはいわゆるクレータが
形成されるといった問題がある。また場合によっては、
クレータ中央部に引け巣が発生するという問題がある。
さらにまた、例えばアルミニウム合金鋳物に対する場合
には、処理領域の終止部にアルミニウム合金中のシリコ
ンが濃縮され、針状の共晶シリコンや粗大な初晶シリコ
ンが晶出し、アルミニウム合金の組成が局部的に変化し
てしまうという問題もある。
【0008】通常、改質処理後に形成されるビードの表
面は、その後の表面切削加工工程において切削除去等さ
れるが、クレータが大きい場合は切削後もなお金属成形
品の表面に残る場合がある。このようなクレータは寸法
不良をもたらし、またクレータ中央部に引け巣が発生し
ている場合は、引け巣に熱負荷による応力が集中し、ク
ラックが発生するおそれもある。したがって、いかにク
レータを除去するか、すなわちいかにクレータ処理を行
うかが問題となる。またクレータ深さに左右されるこの
ような悪影響を無くすために加工代を大きくする必要が
でてくるが、そうすると加工費用の増大および生産性低
下につながるとともに、再溶融深さが深くなることによ
りTIG再溶融の費用も増大する。さらに、アルミニウ
ム合金鋳物の場合等には、上述したシリコンの濃縮によ
る組成の変化は鋳造品における当該部位の耐熱疲労特性
を悪化させるおそれがある。
【0009】アルミニウム合金鋳物に対する再溶融処理
についての上記問題の対策として、特開平5−1958
63号公報には、再溶融処理の処理領域の終止部に鋳物
と異なる組成の突起部材を設けることで、また特開平5
−195864号公報には、再溶融処理の処理領域の終
止部に鋳物と同一の組成の突起部材を設けることで、さ
らに特開平7−11458号公報には、再溶融処理の処
理領域の終止部における溶融池に鋳物と同一の組成の線
材を固体の状態で注入することで、それぞれ再溶融処理
の処理領域の終止部におけるクレータの発生を防止する
方法が記載されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記、特開平
5−195863号公報に記載の再溶融処理の処理領域
の終止部に鋳物と異なる組成の突起部材を設ける方法
や、特開平5−195864号公報に記載の再溶融処理
の処理領域の終止部に鋳物と同一の組成の突起部材を設
ける方法や、特開平7−11458号公報に記載の再溶
融処理の処理領域の終止部における溶融池に鋳物と同一
の組成の線材を固体の状態で注入する方法では、ある程
度のクレータの抑制は可能だが、TIGアークのアーク
電圧、アーク電流も一定であるため、終止部における溶
融池を構成する溶融金属量は十分に減少ぜず、また、ア
ーク圧による溶融池の掘り下げという現象も維持されて
おり、クレータの発生を十分に防止することは困難であ
った。したがってTIGアーク等の高密度加熱エネルギ
を用いて表層を溶融、凝固させる表面処理においては処
理領域の終止部に発生するクレータをいかに防止する
か、すなわち効果的なクレータ処理をどのように行うか
が未だ重要な問題となっている。
【0011】上記クレータ処理に関する数々の実験の結
果、本発明者は、処理領域終止部での高密度加熱エネル
ギのコントロールによりクレータの大きさを制御できる
という知見を得た。本発明は上記知見に基づいてなされ
たもので、表面改質する領域の終止部のクレータの発生
を効果的に防止できる金属成形品の表面改質方法を提供
することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明の金属成形品の表面改質方法は、高密度加熱
エネルギを金属成形品の表面に投入し、その投入位置に
形成される該金属成形品の表層を構成する金属が溶融し
た溶融池を表面改質する領域の開始部から終止部まで進
行させ、該表層を構成する金属を連続的に溶融凝固させ
て行う金属成形品の表面改質方法であって、表面改質す
る領域の終止部において、投入する高密度加熱エネルギ
を減少させてかつ前記溶融池に固体金属からなる溶材を
溶融添加した後、前記溶融池を構成する金属を凝固させ
ることを特徴とするものである。つまり、本発明の金属
成形品の表面改質方法は、表面改質を行う領域の終止部
におけるクレータ処理に関するものであり、終止部に投
入する高密度加熱エネルギの減少および終止部における
溶融池への溶材の添加という2つの手段を併用してクレ
ータ処理を行うものである。
【0013】表面改質を行う領域の終止部において高密
度加熱エネルギの投入量を減少させることによる作用
は、終止部に加えられる熱量が減少することで溶融池が
小さくなるというものである。例えば高密度加熱エネル
ギがアーク等の場合は、アーク電流を減少させると、終
止部に投入されるエネルギ量が少なくなり、終止部の溶
融池は小さくなる。また、アーク電流の減少と同時にア
ーク圧が低くする場合には、アークの掘り下げ力が減少
し、さらに溶融池を小さくすることができ特に溶融池の
深さを浅くすることができる。次いで、溶融池を小さく
してから、または小さくするのと同時に溶材を溶融添加
することによる作用は、終止部における金属を過剰な状
態にすることにより溶融金属表面を盛り上げるというも
のである。
【0014】上記2つの作用により、クレータ処理にお
いて、終止部の溶融池は溶融金属量が少なく、かつ溶融
金属表面の盛り上がった溶融池となる。このような溶融
池をそのまま凝固させることで、本発明の金属成形品の
表面改質方法は終止部においてクレータの発生が効果的
に防止される表面改質方法となる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の金属成形品の表面
改質方法の基本的、応用的実施形態について説明する。
なお、以下の説明では、適宜、その実施形態と対応する
請求項に係る発明の請求項番号を記す。
【0016】最初に、本発明の基本的な実施形態につい
て説明する。本発明の金属成形品の表面改質方法の基本
的な実施形態は、高密度加熱エネルギを金属成形品の表
面に投入し、その投入位置に形成される該金属成形品の
表層を構成する金属が溶融した溶融池を表面改質する領
域の開始部から終止部まで進行させ、該表層を構成する
金属を連続的に溶融凝固させて行う金属成形品の表面改
質方法であって、表面改質する領域の終止部において、
投入する高密度加熱エネルギを減少させてかつ前記溶融
池に固体金属からなる溶材を溶融添加した後、前記溶融
池を構成する金属を凝固させる態様である(請求項1に
対応)。
【0017】図1および図2に本実施形態の概要を示
す。図1は、終止部において表面改質を行っている状態
の斜視を示している。図2(a)は溶融池の表面改質領
域の開始部1aから終止部1bまでの進行過程の断面を
示しており、高密度加熱エネルギ投入装置2の移動に伴
い溶融池4を進行させている状態である。この場合、大
きな高密度加熱エネルギ3により溶融池4の溶融金属は
周囲に押しやられ、中央部は大きく凹んだ状態となって
いる。溶融池通過時に成形品1の表層は溶融し、溶融池
通過後に表層は凝固することで、溶融池4の後方にビー
ド5が形成される。図2(b)は終止部において投入す
る高密度加熱エネルギ3を減少させる過程を示してい
る。高密度加熱エネルギ3を減少させることにより、終
止部における溶融池4は小さくなる。なおここで、高密
度加熱エネルギ3の減少方法には、エネルギを目標とす
る値まで一気に減少させる方法と、徐々に減少させる方
法の二つの方法がある。図2(c)は終止部において溶
融池4に固体金属からなる溶材6を添加し、その溶融池
4を凝固させる直前の状態を示している。図2(b)に
示す過程により溶融池4が小さくなってから溶材6を添
加するため、効率よく終止部における溶融金属を過剰な
状態とでき、高密度加熱エネルギの投入が小さいため溶
融池4は凹んだ状態とならず、溶材6を溶融添加し分だ
け溶融池4の表面が盛り上がっている。このような溶融
池をそのまま凝固させることにより終止部におけるクレ
ータの発生を効果的に防止することができる。なお、図
2(b)に示す高密度加熱エネルギを減少させる過程と
図2(c)に示す溶材を添加する過程とを同時に進行し
ても同様にクレータの発生を効果的に防止することがで
きる。
【0018】ちなみに、本発明の表面改質方法によって
改質される金属成形品の表面とは、その表面のみならず
ある程度の深みを持った立体的な部分、つまり表層を意
味する。具体的には高密度加熱エネルギにより加熱され
る表面のみならず、熱伝導によりその部位を構成する金
属が溶融する領域あるいはその近傍をいう。高密度加熱
エネルギの種類やその投入量等によって改質される表層
の断面形状、改質範囲等は異なる。例えば、エネルギ投
入量が同じ場合であっても、投入部の表面積が広いとき
改質される表層は広く浅くでき、表面積が狭いときは深
くできる。また、投入部の表面積が同じ場合であって
も、エネルギ投入量が多いときは改質される表層は深く
でき、エネルギ投入量が少ないときは表層は浅くでき
る。
【0019】なお、本発明の表面改質方法では、表面改
質を行う領域の終止部において、高密度加熱エネルギを
減少させて溶融池を小さくしてから、または小さくする
のと同時に溶材を添加するので、溶融池を小さくしない
で溶材を添加する場合と比較して、溶融添加する溶材の
量が少なくてよいという利点をも併せ持つ。
【0020】本発明の表面改質方法の対象となる金属成
形品は、特にその種類を限定するものではなく、本発明
の表面改質方法は例えば低合金鋼、ステンレス鋼、アル
ミニウム合金等の金属材料を鋳造、鍛造、プレス加工、
圧延加工、押し出し加工等により成形したもの等に幅広
く適用できる。これらの中でも、本発明の表面改質方法
は金属成形品をアルミニウム合金鋳物とする態様で実施
するのが望ましい(請求項2に対応)。その理由を、以
下に説明する。
【0021】まず、金属材料にアルミニウム合金が特に
適している理由を説明する。本発明の表面改質方法は溶
融状態の成形品を構成する金属を急冷凝固してその組織
を微細化し、機械的特性の改善を図るものだが、金属材
料の中でも特にアルミニウム合金は熱伝導度が高い。し
たがって、成形品の表面に投入された高密度加熱エネル
ギにより表面が加熱され表層を構成するアルミニウム合
金が溶融してもその熱は直ちに周辺部に移動するので、
溶融状態のアルミニウム合金は速やかに凝固する。すな
わちアルミニウム合金は急冷凝固しやすく本発明の表面
改質方法に特に適しているといえる。また、熱伝導度が
高いことは、例えば鉄合金等に比べて溶融池が大きくな
る。したがって、大きなクレータが残存しやすい金属成
形品に対して効果的にそのクレータを防止できるという
点でも、本発明の表面改質方法は好適である。
【0022】つぎに、成形方法のなかでも鋳物が本発明
の表面改質方法に特に適している理由を説明する。例え
ば、砂型鋳造の場合、鋳造品は組織が粗大であるため、
鍛造やプレス加工と比較して疲労特性の高い製品が得ら
れない。鋳物の疲労特性を改善する一つの方法としては
組織の微細化があり、組織を微細化するには、溶湯の凝
固速度を速くすればよい。しかし、凝固速度を速くする
と、溶湯が鋳型の空洞部を完全に満たす前に凝固してし
まうので湯回りが悪化したり、あるいは湯境が生じた
り、溶湯内のガスが成形品の内部に閉じこめられ、欠陥
が残留するおそれがある。したがって、鋳造後に鋳物の
組織を微細化し疲労特性を改善する必要がある。本発明
の表面改質方法は、再度成形品の表層を溶融しつつ急冷
凝固させることにより成形品の組織を微細化し、機械的
特性を改善することを可能としているので、鋳物の表面
改質に特に適しているといえる。
【0023】また、以下の事情を考慮すれば本発明の表
面改質方法は、より具体的には、金属成形品をアルミニ
ウム合金鋳物製のシリンダヘッドとする態様で実施する
のが望ましい。例えば、自動車業界においては、燃費改
善等の要請から自動車の軽量化が一つの重要な課題とな
っており、アルミニウム合金は鉄と比較して密度が小さ
く軽量性を有するので、自動車エンジンのシリンダヘッ
ド等の素材としてアルミニウム合金鋳物が利用されるこ
とが多い。高圧で燃料が燃焼する気筒を密封しているシ
リンダヘッドには高圧の燃焼ガスが直接作用するため高
い熱応力が発生する。燃焼室部における吸気孔からは比
較的低温の空気が流入し、また排気孔からは高温高圧の
燃焼ガスが排気されるので吸気孔と排気孔との弁座間部
には、他の箇所に比べて高い熱応力が発生して熱疲労に
対して厳しい環境にある。したがって、エンジンを軽量
化しかつ安全性、信頼性を確保するためには弁座間部の
耐熱疲労特性を改善する必要がある場合があり、耐熱疲
労特性を改善する一つの方法として表層の組織を微細化
すればよい。そこで、本発明の表面改質方法をアルミニ
ウム合金製シリンダヘッドに適用することにより、弁座
間部の表層の組織を微細化し、耐熱疲労特性を改善する
ことができ、簡便な表面改質方法となる。
【0024】高密度加熱エネルギは、金属成形品の表面
に投入し、その表層を加熱するために用いられるエネル
ギである。本発明の表面改質方法においては、金属成形
品の表面を加熱することが可能ならば、特に高密度加熱
エネルギの種類については限定しないが、例えば、アー
ク、電子流、レーザー光線等は本発明の表面改質方法に
使用することができる。また、より具体的には、TIG
アーク、電子ビーム、レーザー等は本発明表面改質方法
において投入する高密度加熱エネルギとして好適に用い
ることができる。なかでも、TIGアークは、数Aから
数百Aまでベル状の安定したアークを継続的に維持する
ことが可能であり、また不活性ガスを用いてアークと溶
融池を大気から遮蔽することができるため酸素、窒素、
水素等のガスや不純物等や溶融部に混入しにくく、極め
て優れた品質の表面改質部を形成することができるとい
う利点を有し、さらにTIGアークを発生するTIGア
ーク電源装置は比較的安価であり、また制御しやすいと
いう利点を有している。上記利点を考慮すれば、本発明
の表面改質方法は高密度加熱エネルギをTIGアークと
する態様で実施することが望ましい(請求項3に対
応)。
【0025】終止部において、高密度加熱エネルギを減
少させる割合は、その高密度加熱エネルギの種類によっ
て異なる。選択する高密度加熱エネルギに応じ、終止部
における溶融池の状態、つまり、溶融池の大きさ、深さ
等を確認しつつ、適正な範囲でその減少割合を決定すれ
ばよい。
【0026】例えば、TIGアークをアルミニウム合金
鋳物の表面に投入して行う表面改質方法においては、表
面改質する領域の終止部において投入するTIGアーク
のエネルギを、減少させる前のTIGアークのエネルギ
に対して25〜75%とすることが望ましい。エネルギ
の大きさとは、アーク出力であり、具体的には、アーク
電流、アーク電圧を調整すればよい。例えば、定電圧で
電流が400Aの条件で表面改質を行う場合、その終止
部においては、100〜300Aの条件でクレータ処理
を行えばよい。
【0027】本発明の表面改質方法において、表層を改
質する領域の終止部にて溶融池に溶融添加する固体金属
の溶材は、その形状を特に限定するものではない。例え
ば、線状、棒状、粉末状等、当技術分野において一般的
に用いられる様々な形状の溶材を用いることができる。
投入量を調節しやすいという点を考慮すれば線材を用い
るのが好ましい。
【0028】次に、溶材に関する応用的な実施形態につ
いて説明する。本発明の表面改質方法は、溶融池に溶融
添加する固体金属からなる溶材の組成を金属成形品の表
層を構成する金属と同組成である態様として実施するこ
とができる(請求項4に対応)。同組成の溶材を溶融添
加することにより、表面改質を行った終止部の組成を成
形品の組成に近いものとすることができ、組成の著しい
不均質を防止することができる。
【0029】成形品を構成する合金と同組成を有する溶
材を製造する場合、その成形品が鋳造によって製造され
ているときには、鋳造の際の溶湯から直接溶材を製造す
ることで、溶材の組成を成形品を構成する合金の組成と
容易に一致させることができる。例えば、溶材が線状、
棒状等のものである場合は、溶湯から吸引鋳造等を行
い、容易に、その線状、棒状等の形状のものを得ること
ができる。
【0030】また、本発明の表面改質方法は、溶融池に
溶融添加する固体金属からなる溶材の組成を金属成形品
の表層を構成する金属と異なる組成とする態様で実施す
ることができる(請求項5に対応)。さらにこの場合に
おいて、溶材の組成を、成形品を構成する合金の主成分
である金属のみからなるようにする態様、または、溶材
を溶融添加した結果において終止部が所望の組成を有す
る合金となるような態様で実施することができる。
【0031】溶材の組成を、成形品を構成する合金の主
成分である金属のみからなるようにする態様の場合の実
施形態の一例として、成形品がAl−Si系を含むアル
ミニウム合金で構成されており、そのアルミニウム合金
の主成分である純アルミニウムを溶材として添加する場
合を挙げることができる。この場合、終止部の溶融池を
構成するアルミニウム合金には成形品のアルミニウム合
金と比較して、溶質元素である例えばシリコン等が濃縮
される。これに着目して、純アルミニウムを溶材として
溶融池に溶融添加して希釈することで、溶融池に濃縮さ
れているシリコンが、凝縮後に、針状の共晶シリコンや
粗大な初晶シリコンとして晶出するのを防止し、本発明
の表面改質方法により本来改善されるはずの例えば耐熱
疲労特性が、終止部において悪化するのを効果的に防止
することができる。また、最終凝固の組成が純アルミニ
ウムに近いことにより、容易に塑性変形し、凝固収縮に
より発生した応力の解放も期待できる。
【0032】溶材の組成を、溶材を溶融添加した結果に
おいて終止部が所望の組成を有する合金となるような態
様の実施形態の一例として、成形品がAl−Si系アル
ミニウム合金で構成されている場合において、終止部の
合金組成を成形品の合金組成と一致させるべく、終止部
でのシリコン等の濃縮を考慮して、シリコン等の含有量
が少ない溶材を添加する態様が挙げられる。成形品の合
金組成と表面改質する領域の終止部の合金組成との組成
を均質化できるとともに、上記態様と同様、本来改善さ
れるはずの例えば耐熱疲労特性が終止部において悪化す
るのを効果的に防止することができる。
【0033】以上本発明金属成形品の表面改質方法の実
施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎ
ず、本発明の金属成形品の表面改質方法は、上記実施形
態を始めとして、当業者が行い得る改良、変更を施した
種々の態様にて実施することができる。
【0034】
【実施例】上記実施形態に基づく方法により、アルミニ
ウム合金鋳物に対して、所定のクレータ処理を含む表面
改質を行った。これを実施例として説明する。また、こ
れと比較すべく、比較例として、所定のクレータ処理を
行わない方法にて表面改質を行った。そして、両者の終
止部の形状等を比較することにより、本発明の金属成形
品の表面改質方法の優秀性を実証した。以下、これらに
ついて説明する。
【0035】〈実施例〉実験に用いたテストピースは、
その材質をAC2B(JIS H 5202)相当品と
し、その寸法を、長さ150mm×幅80mm×厚さ6
0mmとした。高密度加熱エネルギはTIGアークと
し、それを投入するための機器としてはTIG溶接機
(直流、定格容量500A)を用いた。TIG溶接機の
トーチ内のタングステン電極棒は直径6mmφのものを
用いた。また、シールドガスとしてArガスを40L/
min流し、電極の先端とワークとの距離は3mmとし
た。また、トーチの傾斜角は90°(テストピースに直
角)とし、トーチの進行速度は20mm/minとし
た。開始部から終止部に至る過程におけるアーク電流は
400Aとした。処理領域の終止部において、TIGア
ークの電流を減少させながら、その溶融池に、略同組成
の直径3mmφの棒状の溶材を溶融添加した。添加した
溶材の量は、長さにして約10mmであった。アーク電
流減少から、7sec後に200Aとしアークを切っ
て、つまり7secのクレータ処理を行って、表面改質
処理を終了させた。
【0036】〈比較例〉上記実施例と同様のテストピー
ス、TIG溶接機を用い、開始部から終止部に至る過程
を同条件で表面改質を行い、終止部においてクレータ処
理を行わずに表面改質処理を終了させた。つまり、アー
ク電流を減少させないでかつアーク電圧を降下させない
で、終止部に達した時点でいきなりアークを切るという
終止部処理である。
【0037】〈断面写真による評価〉実施例の表面改質
処理を行った後の処理領域の終止部の断面写真を図3
に、比較例の表面改質処理を行った後の処理領域の終止
部の断面写真を図4に、それぞれ示す。図4に示すクレ
ータ処理を行わなかった比較例の場合は、終止部に、直
径約10mmφ、深さ約2mmのクレータが残存した。
ちなみに、クレータの中央部(最深部)には、小さな引
け巣があり、その部分からクラックが発生していること
が確認された。これに対して、図3から明らかなよう
に、所定のクレータ処理を行った実施例の場合は、終止
部を盛り上げさせることができたため、当然ながらクレ
ータは存在していない。この実験結果から、本発明の表
面改質方法を用いれば処理領域の終止部におけるクレー
タ発生が効果的に防止できることが実証された。
【0038】
【発明の効果】本発明は、高密度加熱エネルギを用いた
金属成形品の表面改質方法を、表面改質領域の終止部に
おいて、高密度加熱エネルギを減少させて溶融池を小さ
くするようにし、かつ、その溶融池に溶材を溶融添加す
るクレータ処理を採用するように構成するものである。
このようなクレータ処理を含む本発明の表面改質方法に
よれば、表面改質領域の終止部において、クレータの発
生が効果的に防止されることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の表面改質方法の実施形態の概要を示
す図であって、終止部において表面改質を行っている状
態の斜視図である。
【図2】 本発明の表面改質方法の実施形態の概要を示
す図であって、表面改質領域の開始部から終止部までの
進行過程、終止部において投入する高密度加熱エネルギ
を減少させる過程、および溶材を添加し溶融池を凝固さ
せる直前の状態のそれぞれの断面図である。
【図3】 実施例の表面改質処理を行った後の処理領域
の終止部の断面を示す写真である。
【図4】 比較例の表面改質処理を行った後の処理領域
の終止部の断面を示す写真である。
【符号の説明】
1:金属成形品 1a:開始部 1b:終止部 2:高密度加熱エネルギ投入装置 3:高密度加熱エネルギ 4:溶融池 5:ビード 6:溶材
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成12年5月19日(2000.5.1
9)
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図3
【補正方法】変更
【補正内容】
【図3】
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図4
【補正方法】変更
【補正内容】
【図4】

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 高密度加熱エネルギを金属成形品の表面
    に投入し、その投入位置に形成され該金属成形品の表層
    を構成する金属が溶融した溶融池を表面改質する領域の
    開始部から終止部まで進行させ、該表層を構成する金属
    を連続的に溶融凝固させて行う金属成形品の表面改質方
    法であって、 表面改質する領域の終止部において、投入する高密度加
    熱エネルギを減少させかつ前記溶融池に固体金属からな
    る溶材を溶融添加した後、該溶融池を構成する金属を凝
    固させることを特徴とする金属成形品の表面改質方法。
  2. 【請求項2】 前記金属成形品は、アルミニウム合金鋳
    物である請求項1に記載の金属成形品の表面改質方法。
  3. 【請求項3】 前記高密度加熱エネルギは、TIGアー
    クである請求項1または請求項2に記載の金属成形品の
    表面改質方法。
  4. 【請求項4】 前記溶材は、その組成が前記金属成形品
    の前記表層を構成する金属と同組成である請求項1ない
    し請求項3のいずれかに記載の金属成形品の表面改質方
    法。
  5. 【請求項5】 前記溶材は、その組成が前記金属成形品
    の前記表層を構成する金属と異なる組成である請求項1
    ないし請求項3のいずれかに記載の金属成形品の表面改
    質方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007519821A (ja) * 2003-11-15 2007-07-19 ダイムラークライスラー・アクチェンゲゼルシャフト 内燃機関の構成部品及びその製造方法

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