JP2001271028A - 無機系コーティング剤及びそれを用いたキッチンボード - Google Patents

無機系コーティング剤及びそれを用いたキッチンボード

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JP2001271028A
JP2001271028A JP2000085137A JP2000085137A JP2001271028A JP 2001271028 A JP2001271028 A JP 2001271028A JP 2000085137 A JP2000085137 A JP 2000085137A JP 2000085137 A JP2000085137 A JP 2000085137A JP 2001271028 A JP2001271028 A JP 2001271028A
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coating agent
inorganic coating
inorganic
fiber
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JP2000085137A
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Motomasa Haruna
基全 春名
Kazuo Seto
和夫 瀬戸
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Panasonic Electric Works Co Ltd
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Matsushita Electric Works Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 料理用油と接触しても変色が発生せず、長期
の使用においても美麗さが保持される無機系コーティン
グ剤、ならびに、それを最表層に施した、現場での施工
が容易なキッチンボードを提供する。 【解決手段】 少なくとも加水分解性オルガノシラン成
分、ポリオルガノシロキサン成分、および触媒から成る
無機系コーティング剤において、触媒を、ぎ酸アンモニ
ウム塩またはその誘導体とし、加水分解性オルガノシラ
ン成分、ポリオルガノシロキサン成分に加えて、少なく
とも側鎖に水酸基を有するアクリル樹脂にポリシロキサ
ンを加えた混合樹脂成分を添加した無機系コーティング
剤。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この出願の発明は、無機系コ
ーティング剤およびそれを用いたキッチンボードに関す
るものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、油
による変色が起こらず、クラックが発生しない無機系コ
ーティング剤、およびそれを繊維強化無機質板または、
繊維強化無機質板を基材とした無機塗装板の最表層に施
した、現場施工の容易なキッチンボードに関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】従来、キッチンの壁には、その意匠性の
高さや耐水性、耐油性から、タイルやホーローよりなる
キッチンボードが用いられてきた。しかし、タイルは施
工に時間がかかる上、タイル貼りの面は目地部が油によ
って汚れやすく、その汚れが目立つという問題があっ
た。一方、ホーローは、切断時にクラックが発生し易
く、現場での施工が困難な上、使用中に付着した油汚れ
が簡単には拭き取れないという問題があった。
【0003】そこで、近年は、タイルやホーローに代わ
る新しいキッチンボードとして、不燃性材料である繊維
強化無機質板に、有機塗膜を施して意匠性を高めた、無
機塗装板が、現場での施工が容易なキッチンボードとし
て商品化されている。
【0004】しかし、そのような有機塗膜を施したキッ
チンボードでは、熱による変色が発生しやすく、万が
一、火炎に曝された場合には、有機塗膜が燃焼しやすい
という問題があったのが実状である。これらの問題点を
解決するために、有機塗膜の代わり、あるいは、有機塗
膜の上に、無機系コーティング剤を施すことがしばしば
行われてきた。
【0005】無機系コーティング剤としては、加水分解
性オルガノシラン成分とポリオルガノシロキサン成分と
触媒を含有するものが一般的に使用されている。このよ
うな無機系コーティング剤は、塗布後に、触媒の作用に
より、加水分解性オルガノシランとポリオルガノシラン
が縮合し、硬化することから、平滑で硬度の高い塗膜を
形成する。また、この無機系コーティング剤の塗膜は、
耐熱性も高く、燃焼しにくいため、有機塗膜において問
題であった熱による変色が起こりにくく、万が一、火炎
に曝されても、すぐには燃焼しない。さらには、硬度が
高いため、傷も付きにくいといった多くの利点があっ
た。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
無機系コーティング剤を施したキッチンボードでは、料
理中に跳ねたり、蒸気となったりして付着した料理用油
により、変色するという新たな問題が発生した。
【0007】そこで、この出願の発明は、以上のとおり
の事情に鑑みてなされたものであり、従来技術の問題点
を解消し、料理用油と接触しても変色が発生せず、長期
の使用においても美麗さが保持される無機系コーティン
グ剤、ならびに、それを最表層に施した、現場での施工
が容易なキッチンボードを提供することを課題としてい
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】この出願の発明は、上記
の課題を解決するものとして、まず第1には、少なくと
も加水分解性オルガノシラン成分、ポリオルガノシロキ
サン成分、および触媒から成る無機系コーティング剤に
おいて、触媒が、ぎ酸アンモニウム塩またはその誘導体
であり、加水分解性オルガノシラン成分、ポリオルガノ
シロキサン成分に加えて、少なくとも、側鎖に水酸基を
有するアクリル樹脂にポリシロキサンを加えた混合樹脂
成分が添加されていることを特徴とする無機系コーティ
ング剤を提供する。
【0009】第2には、この出願の発明は、上記無機系
コーティング剤において、側鎖に水酸基を有するアクリ
ル樹脂にポリシロキサンを加えた混合樹脂成分の合計添
加量が、無機系コーティング剤中の加水分解性オルガノ
シラン成分とポリオルガノシロキサン成分の合計量に対
して、5〜50重量%であることをその態様として提供
する。
【0010】そして、この出願の発明は、第3には、繊
維強化無機質板または繊維強化無機質板を基材とした無
機塗装板の最表層に、上記の無機系コーティング剤が施
されていることを特徴とするキッチンボードをも提供す
る。
【0011】さらに、第4には、この出願の発明は、上
記キッチンボードの態様として、繊維強化無機質板の嵩
密度が1.5以下であること提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】この出願の発明の無機系コーティ
ング剤は、料理用油との接触による塗膜の変色が、従来
使用されていたアミノシラン触媒と油が反応することに
起因することを、発明者らが鋭意研究の成果として明ら
かにしたことから発明されたものである。つまり、この
出願の発明の無機系コーティング剤は、触媒として、ぎ
酸アンモニウムを用いることにより、料理用油との接触
による変色(黄変)を防ぐことができるものである。
【0013】この出願の発明の無機系コーティング剤
は、少なくとも加水分解性オルガノシラン成分(以下A
成分とする)、ポリオルガノシロキサン成分(以下B成
分とする)、および、ぎ酸アンモニウム塩またはその誘
導体(以下C成分とする)の3成分を主成分とするもの
である。以下に、A〜Cの各成分の好ましい形態につい
て、詳しく説明する。
【0014】A成分としては、例えば、次の一般式
(1); R1 nSiX4-n (1) (式中R1は同一または異種の置換もしくは非置換の炭素
数1〜8の一価炭化水素基を示し、nは0〜3の整数、X
は加水分解性置換基を示す)で表される加水分解性オル
ガノシランオリゴマーの部分加水分解物を含む溶液が例
示される。
【0015】一般式(1)において、R1としては、例え
ば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペン
チル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などのア
ルキル基が例示される。これらの置換基の中でも、合成
や入手が容易な炭素数1〜4のアルキル基を用いること
が好ましい。また、一般式(1)における加水分解性置
換基Xとしては、アルコキシ基、アセトキシ基、アミノ
基などが例示される。中でも、入手および調製が容易な
アルコキシ基を用いることが好ましい。
【0016】このような加水分解性オルガノシランオリ
ゴマーとしては、一般式(1)におけるnが0〜3の整
数である、モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−の各官能性
のアルコキシシラン類、アセトキシシラン類、オキシム
シラン類、エノキシシラン類、アミノシラン類、アミノ
キシシラン類、アミドシラン類などが例示される。中で
もアルコキシシラン類が入手、および調製が容易で、好
ましい。
【0017】この出願の発明の無機系コーティング剤に
おいては、A成分は、上記のような加水分解性オルガノ
シランオリゴマーを、有機溶媒、または水の溶液とした
加水分解性オルガノシラン溶液であることが好ましい。
より好ましくは、A成分は、上記のような加水分解性オ
ルガノシランオリゴマーを、有機溶媒または水に分散さ
れたコロイダルシリカ中に混合し、オルガノシランのシ
リカ分散オリゴマー溶液としたものである。
【0018】A成分中にコロイダルシリカが存在する
と、無機系コーティング剤が硬化した際に得られる塗膜
の硬度が高くなり、好ましい。とくに、コロイダルシリ
カのシリカ分としては、A成分全体(加水分解性オルガ
ノシラン、溶媒、およびコロイダルシリカ)の合計量に
対して、5〜95重量%であることが好ましい。より好
ましくは、10〜90重量%であり、最も好ましくは、
20〜85重量%である。シリカ分が、5重量%未満の
場合は、無機系コーティング剤の塗膜硬度が低くなり、
傷が付きやすくなってしまう。また、95重量%を超え
た場合には、シリカの分散が不均一となるため、コロイ
ダルシリカがゲル化する恐れがあり、好ましくない。こ
のようなコロイダルシリカは、水ガラスから公知の方法
で作成してもよいし、市販品を用いてもよい。
【0019】さらに、A成分中の加水分解性オルガノシ
ランオリゴマーを部分加水分解する方法は、特に限定さ
れず、加水分解性オルガノシランオリゴマーと必要量の
水を混合すればよい。水の量としては、上記一般式
(1)におけるX1モルにに対して水0.001〜0.
5モルとすることが好ましい。0.001モル未満で
は、十分な部分加水分解が進行せず、0.5モルを超え
ると部分加水分解によって得られるオルガノシランの安
定性が悪くなることがあるため、好ましくない。部分加
水分解に用いられる水は、A成分の溶媒として存在する
ものであってもよいし、上記のとおりにコロイダルシリ
カを含むとき、コロイダルシリカの溶媒として存在する
ものであってもよい。もちろん、別途添加するものであ
ってもよい。とくに、A成分中の溶媒や、コロイダルシ
リカの溶媒がアルコールなどの有機溶媒の場合には、上
述の範囲内の水を添加し、部分加水分解を行うことがで
きる。このような部分加水分解は、通常、常温で容易に
進行する。もちろん、部分加水分解反応を促進させるた
めには、加熱してもよく、その場合、60〜100℃と
することが好ましい。
【0020】さらに、部分加水分解を促進させるために
は、塩酸、酢酸、ハロゲン化シラン、クロロ酢酸、クエ
ン酸、安息香酸、ジメチルマロン酸、ぎ酸、プロピオン
酸、グルタン酸、グリコール酸、マレイン酸、マロン
酸、トルエンスルホン酸、シュウ酸などの有機酸および
無機酸を触媒として添加してもよい。
【0021】この出願の発明の無機系コーティング剤に
おいて、B成分としては、例えば次の一般式(2); R2 aSi(OH)bO(4-a-b) (2) (式中R2は置換または非置換の炭素数1〜8の1価炭化
水素基を示し、aおよびbはそれぞれ、0.2≦a<2.
0、0.0001≦b≦3、a+b<4の関係を満たす数で
ある)で表される、分子中にシラノール基を含有するポ
リオルガノシロキサンを水あるいは有機溶媒中に溶解、
または分散させた溶液が好ましく使用できる。R2として
は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル
基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基
などのアルキル基、フェニル基、ビニル基などの様々な
置換基が例示される。好ましくは、炭素数1〜4のアル
キル基、フェニル基、ビニル基、あるいは、γ−グリシ
ドキシプロピル基、γ−メタクリロキシプロピル基、
3,3,3−トリフルオロプロピル基などの置換炭化水
素基である。より好ましくは、メチル基およびフェニル
基である。
【0022】さらに、式(2)において、aおよびbは上
述のとおりの関係を満たす数であるが、aが0.2未
満、またはbが3より大きい場合には、この無機系コー
ティング剤より得られる塗膜にクラックが生じやすくな
り、好ましくない。また、aが2を超えたり、bが0.0
001未満であったり、a+bが4未満であったりした場
合には、硬化が進行しないことがある。
【0023】以上のようなシラノール基を含有するポリ
オルガノシロキサンとしては、例えば、メチルトリクロ
ロシラン、ジメチルジクロロシラン、フェニルトリクロ
ロシラン、ジフェニルジクロロシラン、もしくはこれら
に対応するアルコキシシランの1種、もしくは2種以上
を混合し、公知の方法により大量の水で加水分解して得
ることができる。
【0024】そしてさらに、B成分は、このようなポリ
オルガノシロキサンとともに、水や有機溶媒等の溶媒を
含んでいることが好ましいものである。溶媒の種類は特
に限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロ
パノール、n−ブタノール等の低級脂肪族アルコールが
好ましく適用される。
【0025】この出願の発明の無機系コーティング剤に
おいては、A成分とB成分の配合比は、A成分10〜9
0重量%に対して、B成分90〜10重量%(ただし、
A成分とB成分の合計量が100重量%とする)である
ことが好ましい。このとき、AおよびBの各成分は、上
述のとおり、コロイダルシリカや溶媒などを含んでいて
もよい。より好ましくは、A成分20〜80重量%に対
して、B成分80〜20重量%である。A成分が10重
量%未満であると、無機系コーティング剤を塗布した際
に得られる塗膜の硬度が軟らかくなる場合があり、90
重量%を超えると塗膜の製膜性が低下することがあるた
め、好ましくない。
【0026】この出願の発明の無機系コーティング剤
は、少なくとも加水分解性オルガノシラン成分(A成
分)とポリオルガノシロキサン成分(B成分)と触媒
(C成分)から成るものであるが、触媒は、無機系コー
ティング剤を塗布した際に、加水分解性オルガノシラン
とポリオルガノシロキサンの縮合反応を促進し、塗膜を
硬化させるもので、ぎ酸アンモニウム塩、あるいはその
誘導体である。例えばぎ酸にテトラメチルアンモニウム
ハイドロオキサイドを反応させ、水あるいは、有機溶媒
で希釈して得られる。
【0027】この出願の発明の無機系コーティング剤で
は、従来使用されていた、N(−β−アミノエチル)−
γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N(−β−ア
ミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシ
ラン等のアミン系シランカップリング剤を使用しないこ
とにより、油と接触しても、無機系コーティング剤の施
されたキッチンボード表面が変色しなくなる。これによ
り、長期にわたりキッチンボードの美麗さが保持され
る。
【0028】この出願の発明の無機系コーティング剤に
おいては、C成分の添加量は、A成分とB成分の合計量
に対して、0.0001〜10重量%であることが好ま
しい。より好ましくは、0.0005〜8重量%であ
り、最も好ましくは、0.0007〜5重量%である。
C成分の量が0.0001重量%未満の場合は、硬化し
ないことがあり、10重量%を超えると、クラックが起
こりやすくなり、好ましくない。
【0029】しかしながら、触媒として、ぎ酸アンモニ
ウム塩、あるいはその誘導体を用いることにより、新た
な問題が生じる。つまり、これらの触媒は、加水分解性
オルガノシランとポリオルガノシロキサンの縮合反応を
強く促進するため、塗膜が硬化した際に、大きな応力が
生じ、塗膜表面にクラックが発生してしまうのである。
【0030】この新たな問題を解決するためには、側鎖
に水酸基を有するアクリル樹脂に少量のポリシロキサン
を混合した混合樹脂成分を無機系コーティング剤のD成
分として添加することが有効である。このようなD成分
におけるポリシロキサンの含有量は、アクリル樹脂とポ
リシロキサンの合計量に対して、50重量%以上である
ことが好ましい。ポリシロキサンの含有量が50重量%
未満の場合は、無機系コーティング剤が軟質になり、所
望の塗膜硬度が得られない場合がある。また、アクリル
樹脂の重量平均分子量は、5000〜15000である
ことが好ましい。5000未満では、クラックの発生を
防止する効果が得られない場合があり、15000を超
えると、無機系コーティング剤の塗膜が軟らかくなる場
合があり、傷が付きやすくなるため、好ましくない。さ
らに、D成分の合計添加量は、A成分とB成分の合計量
に対して、5〜50重量%であることが好ましく、より
好ましくは、10〜40重量%である。D成分の量がA
成分とB成分の合計量に対して5重量%未満である場
合、D成分を添加した効果が現れにくく、塗膜にクラッ
クが発生しやすくなる。一方、50重量%を超えて添加
すると、無機系コーティング剤の塗膜が軟質となり、所
望の硬度が得られなくなるため、傷が付きやすくなり、
好ましくない。
【0031】この出願の発明の無機系コーティング剤
は、取り扱いを容易にするために、各種有機溶媒で希釈
して使用することができる。有機溶媒の種類としては、
A成分中の加水分解性オルガノシランやB成分中のポリ
オルガノシロキサンにおける一価炭化水素基の種類や分
子量の大きさによって選定することができ、とくに限定
されない。例えば、メタノール、エタノール、イソプロ
パノール、n−ブタノール、イソブタノール等の低級脂
肪族アルコール類、エチレングリコール、エチレングリ
コールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモ
ノエチルエーテル等のエチレングリコール誘導体、ジエ
チレングリコールの誘導体およびジアセントンアルコー
ル等を挙げることができ、これらからなる群より選ばれ
た1種もしくは、2種以上のものを使用することができ
る。
【0032】この出願の発明においては、さらに、以上
に説明した無機系コーティング剤を、繊維強化無機質板
または繊維強化無機質板を基材とした無機塗装板の最表
層に塗布することにより、キッチンボートとすることが
できる。
【0033】基材となる繊維強化無機質板としては、そ
の嵩密度が1.5以下のもの、より好ましくは、1.4
以下のものであればどのようなものであってもよい。嵩
密度が1.5よりも高くなると、現場での切断が困難と
なり、容易に施工できなくなるため、好ましくない。こ
のような繊維強化無機質板としては、例えば、ケイ酸カ
ルシウム板、スレート板、スラグ石膏板等が例示される
が、これ以外のものであってもよい。
【0034】この出願の発明のキッチンボードでは、基
材である繊維強化無機質板に、繊維強化無機質板の種類
に応じて、有機溶媒系、水系、あるいはエマルジョン系
のシーラーにより、シーラー処理し、繊維強化無機質板
表面の凹凸をシールし、繊維強化無機質板への塗料、あ
るいは、無機系コーティング剤の吸い込みのばらつきを
均一化してもよい。使用されるシーラーは、とくに限定
されず、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン
系、エポキシ系等のあらゆるシーラーが適用できる。
【0035】また、この出願の発明のキッチンボードで
は、例えば鏡面仕上げが要求される場合などは、あらか
じめ繊維強化無機質板を研磨するなどして、平滑化処理
を施してもよい。
【0036】さらに、この出願の発明のキッチンボード
では、必要に応じて、上記のような繊維強化無機質板を
平滑化および/またはシーラー処理した後に、意匠性を
高め、防水性、防汚性、耐久性等を高めるために、エナ
メル塗装を行って無機塗装板とする。エナメル塗装は、
アクリル系、フッ素系、アクリルシリコーン系、シリコ
ン系などの様々な塗料を用いて行うことができ、塗装方
法としては、スプレー塗装やロール塗装などの通常用い
られる様々な塗装方法を適用できる。このようなエナメ
ル塗装は、あまり薄すぎると隠蔽性が確保できなくな
り、繊維強化無機質板が露出することとなり、好ましく
ない。またエナメル塗装が厚すぎる場合には、塗膜に発
泡やクラックなどが発生しやすくなるため、これらの不
都合を生じない範囲で塗布することが好ましい。エナメ
ル塗装後の乾燥は、塗料や繊維強化無機質板の種類に応
じて、適した条件で行うことができる。例えば、室温で
風乾してもよいし、エナメル塗装の塗膜を硬化させるた
めに、高温で焼き付け処理を行なってもよい。好ましく
は、エナメル塗装の発泡や、繊維強化無機質板の反りが
生じない150℃以下で焼き付けを行う。乾燥または焼
き付けの時間としては、塗料の種類、乾燥または焼き付
け温度、塗布量等によって異なるが、2分〜24時間の
範囲で処理される。工場での生産性を考えれば、2分〜
60分の範囲内で行われることが好ましい。
【0037】この出願の発明のキッチンボードでは、繊
維強化無機質板または繊維強化無機質板にエナメル塗装
を施した後に、スクリーンやグラビアオフセット等の印
刷や熱転写などの通常用いられる様々な方法で、柄付け
をし、高意匠なデザインを施すことができる。
【0038】そして、この出願の発明のキッチンボード
では、繊維強化無機質板または繊維強化無機質板に以上
のような種々の処理を施して得られた無機塗装板の最表
層に、前記の無機系コーティング剤を塗布する。これに
より耐火性を上げることができる。無機系コーティング
剤の塗装方法としては、スプレー、ロール、フローコー
トなどの通常用いられる様々な方法が適用できる。しか
しスプレー塗装やロール塗装は、塗装ムラが生じやすい
ため、無機系コーティング剤の塗膜に高い平滑性が要求
される場合には、フローコート塗装を行うことが最も好
ましい。
【0039】この出願の発明のキッチンボードにおいて
は、繊維強化無機質板または繊維強化無機質板を基材と
した無機塗装板の最表層に施す無機系コーティング剤の
粘度はとくに限定されないが、10〜100mPa・S
とすることが好ましい。10mPa・S未満や100m
Pa・Sより大きな粘度では、無機系コーティング剤を
均一に塗布し、その効果を発揮させることが困難となる
場合があり、好ましくない。
【0040】さらに、無機系コーティング剤の塗膜の膜
厚は、とくに限定されないが、5〜50μmとすること
が好ましい。膜厚が5μm未満では、無機系コーティン
グ剤がエナメル塗装、あるいは繊維強化無機質板の表面
の微細な凹凸に入り込み、光沢や平滑性が得られにくく
なる。一方、膜厚が50μmよりも厚い場合は、塗膜に
クラックが生じやすくなったり、所望の塗膜硬度が得ら
れない場合があり、好ましくない。
【0041】また、この出願の発明のキッチンボードで
は、無機系コーティング剤を塗布した後に、乾燥を行う
が、その際の乾燥条件は、繊維強化無機質板やエナメル
塗装の種類によって異なり、とくに限定されない。例え
ば室温で放置して、乾燥させてもよいし、高温の炉など
に入れて、焼き付け処理を行なってもよい。好ましく
は、100〜150℃の範囲で焼き付けを行う。100
℃未満では、無機系コーティング剤が硬化しない場合が
あり、150℃を超えると、無機系コーティング剤が発
泡したりして、塗膜にクラックが生じてしまう。このと
き、乾燥時間は、無機系コーティング剤の各樹脂成分や
触媒の種類、組成、粘度、塗布量、温度等によって異な
るが、概ね2分〜24時間で処理される。製造工程とし
ては、2分〜60分の範囲で行うことが好ましい。
【0042】以下、実施例を示し、この発明の実施の形
態についてさらに詳しく説明する。もちろん、この発明
は以下の例に限定されるものではなく、細部については
様々な態様が可能であることは言うまでもない。
【0043】
【実施例】以下の実施例においては、特に断らない限
り、「%」は、すべて「重量%」「部」は「重量部」を
表す。 無機系コーティング剤におけるA〜C成分の調製A成分の調製 攪拌機、加熱ジャケット、コンデンサー、および温度計
を取り付けたフラスコ中に、メタノール分散コロイダル
シリカ(日産化学工業社製「MT−ST」)(47.6
2部)、メチルトリメトキシシラン(68部)、水
(2.5部)を投入し、攪拌しながら部分加水分解を行
った。トルエン(20部)を加えてシリコーンオリゴマ
ー溶液を得た。B成分の調製 メチルトリイソプロポキシシラン(220部)とトルエ
ン(150部)の混合液に、1%塩酸水溶液(108
部)を滴下することにより、メチルトリイソプロポキシ
シランを加水分解した。二層分離した溶液のうち、下層
の水・イソプロピルアルコール混合液を分液し、残った
樹脂を含むトルエン溶液の塩酸を水洗除去し、さらにト
ルエンを減圧除去した。イソプロピルアルコールで希釈
することによって、平均分子量2000のシラノール基
を含有したオルガノポリシロキサンのイソプロピルアル
コール40%溶液を得た。C成分の調製 ぎ酸とテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド
(各10部)に、イソプロピルアルコール(80部)を
加え、ぎ酸アンモニウム塩の誘導体を得た。 <実施例1>上記のとおり調製したA成分とB成分を5
0部:50部の割合で混合し、C成分(5部)とD成分
(大日本インキ化学工業(株)製「アクリディック98
Z−226」)(20部)を混合し、無機系コーティン
グ剤を得た。
【0044】次に、繊維強化無機質板(日光化成(株)
製の「ケイ酸カルシウム板」)(嵩密度1.3g/cm
3)に、シーラーとして、大日本塗料(株)製アクリル
エマルジョンシーラー、エナメル塗料として、松下電工
化研(株)製シリコン系樹脂「MB−B411」を用い
て、膜厚が10μmになるように塗装した。
【0045】無機系コーティング剤を、膜厚が30μm
になるようにアネスト岩田(株)製「フローコーターF
L−S3F」を用いてコートし、120℃のバッチ式乾
燥機で10分間乾燥させた後、キッチンボードを得た。 <実施例2>無機系コーティング剤中のA成分とB成分
の比を70部:30部とし、実施例1と同様の方法でキ
ッチンボードを得た。 <実施例3>無機系コーティング剤中のA成分とB成分
の比を30部:70部とし、実施例1と同様の方法でキ
ッチンボードを得た。 <実施例4>無機系コーティング剤のC成分の量を10
部にし、実施例1と同様の方法でキッチンボードを得
た。 <実施例5>無機系コーティング剤のD成分の量を40
部にし、実施例1と同様の方法で、キッチンボードを得
た。 <比較例1>無機系コーティング剤のC成分の量を11
重量部として、実施例1と同様の方法でキッチンボード
を得た。 <比較例2>無機系コーティング剤のC成分として、ア
ミノシラン系触媒(N(−β−アミノエチル)−γ−ア
ミノプロピルトリメトキシシラン)(5部)を使用し、
実施例1と同様の方法でキッチンボードを得た。 <比較例3>無機系コーティング剤のD成分の添加量を
4部にし、実施例1と同様の方法でキッチンボードを得
た。 <比較例4>無機系コーティング剤のD成分の添加量を
51部にし、実施例1と同様の方法でキッチンボードを
得た。 <比較例5>無機系コーティング剤を無機塗装板の最表
層に塗布せずに、実施例1と同様の方法で基材にアクリ
ル塗料を塗装し、その塗膜を最表層とした。
【0046】実施例1〜5および比較例1〜4につい
て、次の(a)〜(g)の試験を行なった。 (a)クラック観察:無機系コーティング剤を塗布した
後、キッチンボードにおける焼き付け、塗布の状態を目
視で観察した。
【0047】(b)光沢度測定:各試料(キッチンボー
ド片)の鏡面光沢度測定をJISK5400に基づいて
行った。 (c)塗膜硬度測定:各試料(キッチンボード片)の鉛
筆硬度試験をJISK5400に基づいて行った。
【0048】(d)耐熱性試験:各試料(キッチンボー
ド片)を140℃の乾燥機に3時間入れ、塗膜のクラッ
クを目視で観察した。 (e)耐火試験:アルコールランプの炎を各試料(キッ
チンボード片)に30秒間接触させ、焦げた様子を目視
にて評価した。
【0049】(f)清掃性:平日8時間天ぷらを調理し
ている専門店のレンジフード内壁面に各試料(キッチン
ボード片)を設置し、3ヶ月経過後、水でぬらしたウェ
スを用いて1kg/cm2の荷重で拭き取り、油汚れの
落ちを評価した。
【0050】(g)油による変色:(f)と同じ条件で
料理油に曝した試料を洗剤で洗浄し、色差計「X−Ri
ght SP88」(日本平版機材製)を用いて変色の
度合いを初期値と比較した。
【0051】以上実施例1〜5および比較例1〜5につ
いて、(a)〜(g)の結果を表1に示した。
【0052】
【表1】
【0053】表1より、無機系コーティング剤では、ア
ミノシラン系の触媒の代わりにぎ酸アンモニウム塩誘導
体を用いることにより、料理油によるキッチンボードの
着色が防止できることが示された。
【0054】また、D成分であるポリシロキサンを含有
するアクリル樹脂の添加量が5重量%未満の場合、クラ
ックが発生しやすくなり、反対に、ポリシロキサンを含
有するアクリル樹脂の添加量が50重量%を超えた場
合、無機系コーティング剤の塗膜が軟らかくなってしま
うことが示された。
【0055】したがって、ぎ酸アンモニウム塩誘導体を
触媒とし、ポリシロキサンを含有するアクリル樹脂を適
量含有する無機系コーティング剤の塗膜は、硬度も高
く、クラックも発生せず、使用中に料理油に曝されても
変色しないことが明らかになった。
【0056】
【発明の効果】以上詳しく説明した通り、この発明によ
って、料理油に曝されても変色せず、長期にわたり美麗
さが保持される無機系コーティング剤と、それを最表層
に施した、現場での施工が容易なキッチンボードが提供
される。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4J038 CG141 CG142 DL021 DL022 DL031 DL032 GA03 HA096 HA446 JA43 KA06 MA06 MA14 NA05 NA15 PA19 PB05 PC03 PC04 PC08

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも加水分解性オルガノシラン成
    分、ポリオルガノシロキサン成分、および触媒から成る
    無機系コーティング剤において、触媒が、ぎ酸アンモニ
    ウム塩またはその誘導体であり、加水分解性オルガノシ
    ラン成分、ポリオルガノシロキサン成分に加えて、少な
    くとも、側鎖に水酸基を有するアクリル樹脂にポリシロ
    キサンを加えた混合樹脂成分が添加されていることを特
    徴とする無機系コーティング剤。
  2. 【請求項2】 側鎖に水酸基を有するアクリル樹脂にポ
    リシロキサンを加えた混合樹脂成分の合計添加量が、無
    機系コーティング剤中の加水分解性オルガノシラン成分
    とポリオルガノシロキサン成分の合計量に対して、5〜
    50重量%であることを特徴とする請求項1の無機系コ
    ーティング剤。
  3. 【請求項3】 繊維強化無機質板または繊維強化無機質
    板を基材とした無機塗装板の最表層に、請求項1または
    2のいずれかの無機系コーティング剤が施されているこ
    とを特徴とするキッチンボード。
  4. 【請求項4】 繊維強化無機質板の嵩密度が1.5以下
    であることを特徴とする請求項3のキッチンボード。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016033190A (ja) * 2014-07-31 2016-03-10 大阪ガスケミカル株式会社 塗料組成物

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