JP2001263443A - 自動車用トロイダル式無段変速機 - Google Patents
自動車用トロイダル式無段変速機Info
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Abstract
成状態を維持しながら、トラクション係数を高く保持す
ることができ、押し付け力を高めることなく大きな駆動
力を伝達することができる自動車用のトロイダル式無段
変速機を提供する。 【解決手段】 トロイダル式無段変速機において、駆動
側および従動側転動体トラクション面の一方もしくは両
方の油溜り深さ率Kを0.9以上とすると共に、トラク
ション部が最も高温になる運転条件下での両転動体接触
部における油膜厚さh(mm)と、駆動側および従動側
それぞれの転動体トラクション面の油溜り量Vo (mm
3/mm2)の値の2乗和の平方根Vo syn との比(h
/Vo syn)を15.0以下、望ましくは5.0以下と
する。
Description
制御するのに用いる自動車用のトロイダル式無段変速機
に係わり、とくにその転動体(入出力ディスク、パワー
ローラ)のトラクション面の表面粗さ構造に関するもの
である。
ては、例えば特開平7−167240号公報に記載され
たものが知られている。
本構造を示すように、トラクションオイルの油膜を介し
て接触する金属製転動体、すなわち入力軸1および出力
軸2にそれぞれ連結された入力ディスク3および出力デ
ィスク4と、これら入出力ディスク3,5の間に介在し
て回転することによって入力ディスク3の回転を出力デ
ィスク5に伝達するパワーローラ6を備えた構造を有
し、パワーローラ6の傾きを変化させることによって入
出力ディスク3,5のパワーローラ6との接触位置(半
径)を変え、入力ディスク3の回転を無段階に変速させ
て出力ディスク5に伝えることができるようになってい
る。
機における転動体、すなわちディスク3,5およびパワ
ーローラ6の相互接触面(トラクション面)の表面形状
(粗さ構造)測定結果の一例を示すものであって、従来
の無段変速機転動体のトラクション面としては、一般
に、JIS B0601−1994に規定される中心線
平均粗さRa が0.05μm以下、ISO 468−1
982に規定される2乗平均平方根粗さRq が0.07
μm以下、DIN4776に規定される特殊負荷曲線パ
ラメータにおける油溜り深さ率Kが0.9未満、同じく
特殊負荷曲線パラメータとして油溜り量Vo については
1.3×10−5(mm3/mm2)以下の表面形状と
なっていた。
ては、その表面粗さがディスク3,4とパワーローラ6
間の油膜厚さに対してある程度以上大きいと、ディスク
3,4およびパワーローラ6の転動疲労寿命が劣化し、
無段変速機の耐久性が低下することから、研削によって
表面粗さ高さを十分に小さくするよう超仕上げが施さ
れ、上記のように中心線平均粗さRa で0.05μm以
下に設定されている。
0601に規定されるているように、抽出曲線からそ
の平均線の方向に基準長さLだけ抜き取り、この抜き取
り部分の平均線をX軸、縦倍率の方向をY軸として抽出
曲線をy=f(x)で表したときに、式(1)によって
求められる値(μm)と定義される。
(x)と平均線(X軸)とによって囲まれる部分の面積
を基準長さLで割った平均偏差を表す。
468−1982に規定されているように、抽出曲線
からその平均線の方向に基準長さLの部分を抜き取り、
この抜き取った部分の平均線をX軸、縦倍率の方向をZ
軸として抽出曲線をz=f(x)で表したとき、式
(2)によって求められる値(μm)と定義される。
(x)と平均線(X軸)との距離を2乗した曲線と、平
均線によって挟まれる部分の面積を基準長さLで割った
後に平方根を求めた2乗平均平方根偏差を表す。
メータは、負荷曲線を初期摩耗部分と実質接触部と油溜
り部分に分けて潤滑性を評価するものであって、負荷長
さ率1(初期摩耗負荷率)Mr1,負荷長さ率2(油溜り
負荷率)Mr2,初期摩耗高さRpk,油溜り深さRvk,有
効負荷粗さRk ,油溜り量Vo ,油溜り深さ率Kを言
い、それぞれ次のように定義されている。
率) 図3に示すように、負荷曲線上でpt値の方向に40%
の幅をとり、この両端の高さの差が最小となる位置を探
し、その2点を通る直線(最小傾斜線)とtp=0%の
限界線との交点aを求める。そして、この交点aからの
水平線と負荷曲線との交点をcとし、交点cのtp値を
Mr1(%)とする。これは初期摩耗後の負荷長さ率を表
す。
Mr2 同様に、負荷曲線上でpt値の方向に40%の幅をと
り、この両端の高さの差が最小となる位置を探し、その
2点を通る直線(最小傾斜線)とtp=100%の限界
線との交点bを求める。そして、この交点bからの水平
線と負荷曲線との交点をdとし、交点dのtp値をMr2
(%)とする。これは長期摩耗後の負荷長さ率を表す。
有する直角三角形の面積が、0%限界線と辺acと負荷
曲線によって囲まれる部分の面積に等しくなるような0
%限界線上の高さをRpk(μm)とする。これは初期摩
耗高さを表す。
辺を有する直角三角形の面積が、100%限界線と辺b
dと負荷曲線によって囲まれる部分の面積に等しくなる
ような100%限界線上の高さをRvk(μm)とする。
これは油溜りの谷深さを表す。
る。これは面が長期間の摩耗で使用できなくなるまでに
摩耗する高さを表す。
/mm2)で定義され、1mm2の面積当たりの油溜り
深さの中に溜まる油の容量を表している(図4参照)。
vk/Rk (無次元数)で定義され、この値が大きいほど
潤滑性が良好であることを示す。
用環境に対応する必要があり、自動車用無段変速機につ
いても、そのオイル温度が−30℃程度の極低温から1
20℃程度の高温にまでいたる極めて広範囲の温度条件
で運転される可能性があり、トラクションオイルは、こ
のような極低温での流動性をも十分に確保する必要があ
ることから、高温時の粘度は低下することになる。
オイルにおいては、入出力ディスク3,4およびパワー
ローラ6のトラクション面の表面粗さがこれらディスク
3,4とパワーローラ6の間に介在するトラクションオ
イルの油膜厚さに対して十分に小さい場合、例えば、油
膜厚さが0.2μm程度に対して、表面粗さRa が上記
従来例に示したように0.05μm以下の場合には、押
し付け力に対する伝達可能な力(この比がトラクション
係数)は、伝達面の温度上昇と共に低下することにな
る。すなわち、運転時の温度条件に拘らず駆動力を伝達
できるようにするためには、高温時にも十分な伝達力が
得られるような大きな押し付け力を設定する必要が生じ
ることになる。
小さい場合には、所定の伝達力を得るために大きな押し
付け力が必要となり、このような大きな押し付け力に耐
え得る部品強度を確保するために部品重量が増大すると
共に、各部品を支持するベアリングなどの摩擦損失が増
大し、自動車動力の損失が増すという問題点があり、こ
のような問題点の解消が従来の自動車用トロイダル式無
段変速機における課題となっていた。
無段変速機における上記課題に着目してなされたもので
あって、従来と同様の油膜形成状態を維持しながら、高
温運転時においてもトラクション係数を高く保持するこ
とができ、押し付け力を高めることなく大きな駆動力を
伝達することができる自動車用のトロイダル式無段変速
機を提供することを目的としている。
る自動車用トロイダル式無段変速機は、駆動側および従
動側転動体を備え、これら転動体のトラクション面間に
トラクションオイルを介在させて動力を伝達する自動車
用トロイダル式無段変速機において、駆動側および従動
側転動体の少なくとも一方のトラクション面における油
溜り深さ率Kの値が0.9以上で、油溜り量Vo が7×
10−6(mm3/mm2)以上であると共に、駆動側
および従動側それぞれの転動体トラクション面の2乗平
均平方根粗さRq (μm)の値の2乗和の平方根をRq
syn とし、トラクション部が最も高温になる運転条件下
での接触部におけるトラクションオイルの油膜厚さをh
(μm)とするとき、前記油膜厚さと2乗和平方根の比
(h/Rq syn )が3.0以下である構成としており、
自動車用トロイダル式無段変速機におけるこのような構
成を前述した従来の課題を解決するための手段としたこ
とを特徴としている。このとき、油膜厚さと2乗和平方
根の比(h/Rq syn )については、請求項2に記載し
ているように1.0以下とすることがより望ましい。
ダル式無段変速機は、同じく駆動側および従動側転動体
を備え、これら転動体のトラクション面間にトラクショ
ンオイルを介在させて動力を伝達する自動車用トロイダ
ル式無段変速機において、駆動側および従動側転動体の
少なくとも一方のトラクション面における油溜り深さ率
Kの値が0.9以上であると共に、駆動側および従動側
それぞれの転動体トラクション面における油溜り量Vo
(mm3/mm2)の値の2乗和の平方根をVo syn と
し、トラクション部が最も高温になる運転条件下での接
触部におけるトラクションオイルの油膜厚さをh(m
m)とするとき、前記油膜厚さと2乗和平方根の比(h
/Vo syn )が15.0以下である構成としたことを特
徴としており、自動車用トロイダル式無段変速機におけ
るこのような構成を前述した従来の課題を解決するため
の手段としている。このとき、油膜厚さと二乗和平方根
の比(h/Vo syn )については、請求項4に記載して
いるように5.0以下とすることがより望ましい。
転条件下での接触部におけるトラクションオイルの油膜
厚さhについては請求項5に記載しているように、転動
体の接触面寸法、材料特性、温度条件、運転条件、トラ
クションオイルの粘度特性から弾性流体潤滑理論により
計算された油膜厚さを用いることができ、弾性流体潤滑
理論による計算式としては請求項6に記載しているよう
に、Hamrockand Dowsonの式を用いる
ことが望ましく、トラクション部が最も高温になる運転
条件としては請求項7に記載しているように、エンジン
が最大出力を発生し、供給されるトラクションオイルの
温度が最高となる条件を採用するようになすことができ
る。
ダル式無段変速機は、駆動側および従動側転動体を備
え、これら転動体のトラクション面間にトラクションオ
イルを介在させて動力を伝達する自動車用トロイダル式
無段変速機において、駆動側および従動側転動体の少な
くとも一方のトラクション面における油溜り深さ率Kの
値が0.9以上で、油溜り量Vo の値が7×10
−6(mm3/mm2)以上であると共に、駆動側およ
び従動側それぞれの転動体トラクション面における2乗
平均平方根粗さRq の値の2乗和の平方根Rq syn が
0.07(μm)以上である構成としたことを特徴とし
ており、自動車用トロイダル式無段変速機におけるこの
ような構成を前述した従来の課題を解決するための手段
としている。このとき、駆動側および従動側それぞれの
転動体トラクション面における2乗平均平方根粗さRq
の値の2乗和の平方根Rq syn については、請求項9に
記載しているように0.2(μm)以上であることがよ
り望ましい。
イダル式無段変速機は、駆動側および従動側転動体を備
え、これら転動体のトラクション面間にトラクションオ
イルを介在させて動力を伝達する自動車用トロイダル式
無段変速機において、駆動側および従動側転動体の少な
くとも一方のトラクション面における油溜り深さ率Kの
値が0.9以上であると共に、駆動側および従動側それ
ぞれの転動体トラクション面における油溜り量Vo (m
m3/mm2)の値の2乗和の平方根Vo synが1.3
×10−5(mm3/mm2)以上である構成としてお
り、自動車用トロイダル式無段変速機におけるこのよう
な構成を前述した従来の課題を解決するための手段とし
たことを特徴としている。このとき、駆動側および従動
側それぞれの転動体トラクション面における油溜り量V
o の2乗和の平方根Vo syn としては、請求項11に記
載しているように4×10−5(mm3/mm2)以上
であることがより望ましい。
段変速機においては、転動体のトラクション転動面の表
面微細形状を接触部における高温時のトラクションオイ
ルの油膜厚さとの関連において特定することにより、パ
ワーローラおよび入出力ディスクの動力伝達面(トラク
ション面)における転がり滑り接触時の油膜形成状態を
従来と同等に確保しながら、高温時においても、トラク
ション係数を高く保ち、もってパワーローラおよびディ
スクの転動疲労寿命を従来と同等に維持しつつ、押し付
け力を低減して、押し付け力の増大に基づく部品の重量
化を避けると共に、各部品の支持ベアリングにおける摩
擦損失を少なくして自動車の動力損失の低減を図るもの
であるが、以下に、このような作用を2円筒転がり試験
機によって再現した転がり滑り接触における実験データ
に基づいて説明する。
示す概略図であって、図に示す2円筒転がり試験機10
は、試験片としての一方の転動体T1 を支持する主軸1
1と、同じく試験片としての他方の転動体T2 を支持す
る従軸12を備え、主軸11にはトルクセンサ13が設
けてあると共に、サーボモータ14のモータ軸14aと
の間に主軸タイミングベルト15が掛け渡されている。
に移動するスライドベースB上に固定された軸受16に
より回転自在に支持されていると共に、同様にスライド
ベースB上に固定されたサーボモータ17のモータ軸1
7aとの間に掛け渡された従軸タイミングベルト18を
介してモータ軸17aに連結されており、スライドベー
スBをエアシリンダ19によって加圧することにより、
従軸12に取付けられた転動体T2 がベースBおよびサ
ーボモータ17と共に移動し、オイルバス20中におい
て両転動体T1 ,T2 が接触して転動するようになって
いる。そして、一方の転動体T1 側の動力伝達系である
主軸11に設けたトルクセンサ13により主軸に発生す
るトルクを測定することによって、トラクション係数を
算出することができる。
さ20mmであって、トラクション転動面がR=700
mmのクラウニング形状をなす形状とし、JIS G
4052に規定されるクロムモリブデン鋼SCM420
H鋼の浸炭焼入れ焼戻し材に研削および超仕上げ加工を
施すことによって作成した。このとき、トラクション面
の中心線平均粗さRa は0.021μm、2乗平均平方
根粗さRq は0.03μm、DIN4776に規定され
る油溜り量Vo は1.8×10−6mm3/mm2、油
溜り深さ率Kについては0.54となった。
mm,厚さ20mmであり、トラクション転動面がフラ
ットな円筒形状とし、上記クロムモリブデン鋼SCM4
20H鋼の浸炭焼入れ焼戻し材に種々の加工方法を施す
ことによって、トラクション面の表面微細形状の異なる
ものを多数用意して、上記転動体T1 との組み合わせに
よる転がり滑り試験を行い、トラクションおよび油膜形
成率を測定した。なお、これら転動体T1 ,T2 の表面
形状については、触針式の粗さ計を用いて、カットオ
フ:0.08mm、測定長さ:0.4mmで測定した。
は、スリップ率:0〜5%、平均転がり速度:0.52
〜5.2m/s、平均軸回転数(主軸11と従軸12の
回転数の算術平均):250〜2500rpmとし、主
軸11と従軸12に均等に差動を与えて平均転がり速度
を一定にした。さらに、オイルバス20中のトラクショ
ンオイルの温度を100℃に設定し、エアシリンダ19
の加圧によって生じる垂直荷重を147Nとした。そし
て、電気抵抗法を用いて運転中の金属接触の状態をモニ
タリングし、測定電位差と完全分離状態における電位差
との比を油膜形成率と定義し、運転中の金属接触状態を
表すパラメータとした。
せた、上記試験条件による試験結果としてのトラクショ
ン応力τ(トラクション力を接触面積で除したもの)を
油膜厚さh(μm)と転動体T1 およびT2 のトラクシ
ョン面における表面粗さRqsyn (ISO 468−1
982による2乗平均平方根粗さRq (μm)の駆動側
転動体T1 および従動側転動体T2 の値の2乗の和の平
方根)の比(膜厚比Λ=h/Rq syn )に対して整理し
たものである。なお、図6において、□は超仕上加工を
施した実施例2、◆はディンプル形状を施した実施例1
を表している。
ock and Dowsonの式(B.J.Harm
rock & D.Dowson, Proc. 5t
hLeeds−Lyon Symp.(1978)2
2)、すなわちH=3.42gv0.49gE0.17
(1−e−0.68k)により算出した。ここで、 H(膜厚パラメ−タ)=(h/Rx)(W/U) gv(粘性パラメ−タ)=GW3/U2 gE(弾性パラメ−タ)=W8/3 /U2 k(楕円パラメ−タ)=(Ry/Rx)2/π U(速度パラメ−タ)=u/(E´Rx) W(荷重パラメ−タ)=w/(E´Rx2) G(材料パラメ−タ)=αE´ ηo :トラクションオイルの大気圧下粘度(mPa・
s) α:トラクションオイルの圧力粘度係数(GPa−1) w:トラクション部の押し付け力(N) u:トラクション部の転がり速度(m/s) Rx:トラクション部の転がり方向等価曲率半径(m) Ry:トラクション部の転がり方向に垂直な等価曲率半
径(m) E´:トラクション部の等価縦弾性係数(GPa) である。
弾性変形および潤滑油粘度の圧力依存性の両者を考慮し
た潤滑理論である。一般にレイノルズ方程式と潤滑面の
応力と歪みの関係式(または圧力と潤滑面変形の関係
式)および潤滑油粘度と圧力の関係式を連立差せて解
(発生圧力および潤滑面形状)を求めるものであって、
実際の油膜厚さを計算する方法として、現状では最も精
度の良い方法と言える。
状にかかわらず、前記膜厚比Λが3以下の場合にトラク
ション応力τが増大し、特に、膜厚比Λが1以下になる
とトラクション応力τが最大値を示すことが判る。
して整理したものであって、油膜形成率は表面粗さの形
状に影響されている。
776に規定される特殊負荷曲線パラメータの油溜り量
Vo と油溜り深さ率Kを用いて整理すると、図8の結果
が得られ、油溜り深さ率Kが大きいものは、表面粗さの
凸部頂点がより平らで、凹部がより深い形状となる。ま
た、油溜り深さ率Kが0.9以上のものをAグループと
すると共に、0.9未満のものを油溜り量Vo の大きい
順に、D,B,Cの各グループにグループ分けすると、
Aのグループは他のグループのものと比べて、油溜り量
Vo も比較的大きくなっており、油溜り量Vo が大きい
ことは凹部の溝深さの絶対値が大きいことを示してい
る。
ン係数(押し付け力に対する伝達可能な力の比)との関
係で、図8に示したグループ毎に整理したものであっ
て、グループAのものが、他のグループに比較して、油
膜形成率が高い状態でトラクション係数が大きくなるこ
とが判明した。つまり、Aのグループのような表面微細
形状とすることにより、油膜厚さが小さくなって(トラ
クション係数が大きくなって)も、高い油膜形成率を保
ち得ることが判る。すなわち、図8および図9からは、
Aのグループの表面微細形状のみが0.9以上の油溜り
深さ率Kと、7×10−6(mm3/mm2)以上の油
溜り量Vo を備えており、このように油溜り深さ率Kを
0.9以上とし、油溜り量Vo を7×10−6(mm3
/mm2)以上とすることにより、大きなトラクション
係数のもとで高い油膜形成率が保持されることになる。
るものと考えられる。
厚比Λ(h/Rq syn )が小さくなると、表面粗さ先端
で金属接触が発生し、流体摩擦より大きな金属接触また
は境界摩擦によって見掛けのトラクションが大きくなる
とも考えられる。図8に示された加工法A以外の加工法
によって得られる表面微細形状における特性について
は、見掛けのトラクションの増大が金属接触の増大に伴
って発生しているため、この現象とも考えられる。しか
し図8の加工法Aにより得られる表面微細形状における
特性については、上記の考え方だけでは説明できず、以
下のメカニズムが想定される。
ンオイルが(せん断率に対して非線型ではあるが)粘性
的な特性を示す条件であり、流体摩擦応力(トラクショ
ン応力)はせん断率に応じて発生する。実機のトラクシ
ョンドライブ部の転がり滑り接触も、トラクション係数
が低下する高温時には、この点において同等である。こ
の時、膜厚比が小さいと、表面粗さの先端では、油膜厚
さが局部的に小さくなり、油膜厚さの逆数である局部的
せん断率が非常に大きくなることが想定される。このこ
とによって、流体摩擦応力(トラクション応力)は境界
膜強度を超えて発生することも十分想定できる。これに
より、流体膜が部品表面間に存在(金属接触がない)し
ていても、局部的には少なくとも境界膜強度(=境界摩
擦応力)相当の応力が発生し得ると考えられる。さら
に、加工法Aにより得られる表面微細形状の特徴は、油
溜り深さ率Kが大きく、表面粗さの凸部頂点がより平ら
で、凹部がより深い形状となることであるが、このよう
な形状であれば、同等の平均的な油膜厚さの時に表面粗
さの先端における油膜厚さが局部的に小さくなり、油膜
厚さの逆数である局部的せん断率が非常に大きくなる領
域がより広いことが容易に推定される。さらに、表面粗
さの先端が平らであるために、金属接触の確立が低いと
同時にせん断率が小さくなり得ることも想定できる。こ
のような考え方によって図8に示された特性が説明で
き、このようなメカニズムによって、本発明に係わる自
動車用トロイダル式無断変速機においては、転動体のト
ラクション面を上記各請求項において規定した表面微細
形状とすることにより、金属接触を抑制しつつ、高温時
においてもトラクション係数が向上することになる。
m)と油溜り量Vo (mm3/mm2)の関係を示すグ
ラフであって、油溜り深さ率Kの大きさをプロット点の
大きさで表しており、Kの値が同一であればRq とVo
とが比例関係にあることを示している。すなわち、油溜
り量Vo がある程度大きくなると、2乗平均平方根粗さ
Rq について示した図6と同様に、トラクション応力τ
やトラクション係数が増大することになり、油溜り深さ
率K=0.9のとき、図10からRq (mm)=5Vo
の関係が得られることから、Kが0.9以上を考える
と、図6において膜厚比Λ(h/Rq syn )=3のとき
の油膜厚さhとVo の比(h/Vo syn )は、15.0
に相当することになる。
れば、油膜厚さhが小さくなっても高い油膜形成率を保
つことができ、このとき上記比(h/Vo syn )を15
以下とすることによって、トラクション応力やトラクシ
ョン係数が増大することになる。すなわち、自動車用ト
ロイダル式無段変速機においてトラクション係数が低下
する高温時の油膜厚さについて、請求項3に記載してい
るように、Vo に対する油膜厚さhの比(h/Vo syn
)が15以下になるように転動体トラクション面の表
面微細形状を調整すれば、請求項1において膜厚比Λ
(h/Rq syn )が3以下である場合と同様に、高温時
のトラクション係数が増大し、かつKが0.9以上であ
れば、油膜厚さが小さくなっても高い油膜形成率を保持
して、金属接触の発生を抑制でき、転動体の転動疲労寿
命が従来と同様に維持されることになる。
q syn )が1以下であれば、高温時のトラクション応力
およびトラクション係数が最も大きくなり(図6)、よ
り好ましい作用効果が得られることになる(請求項
2)。そして、図10に示した関係から、油溜り深さ率
Kが0.9以上であれば、膜厚比Λ(h/Rq syn )の
1以下は、Vo に対する油膜厚さhの比(h/Vo syn
)の5以下に相当することから、請求項4に記載して
いるように、上記比(h/Vo syn )が5以下になるよ
うに設定すれば、請求項1と同様に、最大限の作用効果
が得られることになる。
における高温時の油膜厚さについては、材料の許容面圧
および耐熱性、オイルの耐熱性、エンジンの回転数およ
び出力の限界などを考慮すると、0.2μmからさほど
大きくかけ離れることはないと考えられる。したがっ
て、トラクションオイルの油膜厚さhを0.2μmの一
定値と考えれば、膜厚比Λ(h/Rq syn )が3以下と
いうことは、Rq syn の0.07μm以上に相当(請求
項8)し、Vo と油膜厚さhの比(h/Vo syn)の1
5以下は、Vo syn の1.3×10−5(mm3/mm
2)に相当(請求項10)する。そして、膜厚比Λ(h
/Rq syn )の1以下は、Rq syn の0.2μm以上に
相当(請求項9)し、Vo と油膜厚さhの比(h/Vo
syn )の5以下は、Vo syn の4×10−5(mm3/
mm2)に相当(請求項11)する。
イダル式無段変速機は、上記した構成、すなわち駆動側
および従動側転動体の少なくとも一方のトラクション面
における油溜り深さ率Kの値が0.9以上で、かつ油溜
り量Vo が7×10−6(mm 3/mm2)以上である
と共に、駆動側および従動側それぞれの転動体トラクシ
ョン面の2乗平均平方根粗さRq (μm)の値の2乗和
の平方根をRq syn とし、トラクション部が最も高温に
なる運転条件下での接触部におけるトラクションオイル
の油膜厚さをh(μm)とするとき、前記油膜厚さと2
乗和平方根の比(h/Rq syn )が3.0以下である構
成としたものであるから、金属接触を防止して、転動体
の転動疲労寿命を従来と同様に維持することができると
共に、高温運転時においてもトラクション係数を高く維
持して、押し付け力を高めることなく大きな駆動力を伝
達することができるという極めて優れた効果をもたらす
ものである。また、本発明の請求項2に係わるトロイダ
ル式無段変速機においては、前記油膜厚さと2乗和平方
根の比(h/Rq syn )を1.0以下としていることか
ら、上記効果を最大限のものとし、より確実な効果を得
ることができる。
ダル式無段変速機は、駆動側および従動側転動体の少な
くとも一方のトラクション面における油溜り深さ率Kの
値が0.9以上であると共に、駆動側および従動側それ
ぞれの転動体トラクション面における油溜り量Vo (m
m3/mm2)の値の2乗和の平方根をVo syn とし、
トラクション部が最も高温になる運転条件下での接触部
におけるトラクションオイルの油膜厚さをh(mm)と
するとき、前記油膜厚さと2乗和平方根の比(h/Vo
syn )が15.0以下である構成としたものであるか
ら、請求項1における油膜厚さと2乗和平方根の比(h
/Rq syn )が3.0以下である場合に相当し、上記請
求項1に係わるトロイダル式無段変速機の場合と全く同
様の効果を得ることができる。さらに、本発明の請求項
4に係わるトロイダル式無段変速機は、前記油膜厚さと
二乗和平方根の比(h/Vo syn )を5.0以下とした
ものであって、請求項2における油膜厚さと2乗和平方
根の比(h/Rq syn )が1.0以下である場合に相当
するので、上記請求項2に係わるトロイダル式無段変速
機の場合と同様に、上記効果を最大限に発揮させて、よ
り確実なものとすることができる。
る自動車用トロイダル式無段変速機においては、トラク
ション部が最も高温になる運転条件下での接触部におけ
るトラクションオイルの油膜厚さhとして、転動体の接
触面寸法、材料特性、温度条件、運転条件、トラクショ
ンオイルの粘度特性から弾性流体潤滑理論により計算さ
れた油膜厚さを用い、とくに請求項6に記載しているよ
うに、弾性流体潤滑理論による計算式として、Hamr
ock and Dowsonの式を用いるようにして
おり、さらに請求項7に記載しているように、トラクシ
ョン部が最も高温になる運転条件として、エンジンが最
大出力を発生し、供給されるトラクションオイルの温度
が最高となる条件を採用するようにしているので、実際
の油膜厚さを極めて精度よく算出することができる。
ダル式無段変速機は、駆動側および従動側転動体の少な
くとも一方のトラクション面における油溜り深さ率Kの
値が0.9以上で、油溜り量Vo の値が7×10
−6(mm3/mm2)以上であると共に、駆動側およ
び従動側それぞれの転動体トラクション面における2乗
平均平方根粗さRq の値の2乗和の平方根Rq syn が
0.07(μm)以上である構成としたものであって、
トラクションオイルの油膜厚さhを0.2μmの一定値
とみなしたときに、請求項1における油膜厚さと2乗和
平方根の比(h/Rq syn )が3.0以下である場合に
相当することから、上記請求項1に係わるトロイダル式
無段変速機の場合と同様に、転動体の転動疲労寿命を従
来と同等に維持しながら、高温運転時においてもトラク
ション係数を高く維持することができ、押し付け力を高
めることなく大きな駆動力を伝達することができるとい
う極めて優れた効果がもたらされる。また、本発明の請
求項9に係わるトロイダル式無段変速機は、前記2乗平
均平方根粗さRq の値の2乗和の平方根Rq syn を0.
2(μm)以上としたものであって、油膜厚さhを一定
値とみなしたときに、請求項2における油膜厚さと2乗
平均平方根粗さRq の2乗和平方根の比(h/Rq syn
)が1.0以下である場合に相当することから、上記
請求項2に係わるトロイダル式無段変速機の場合と同
様、上記効果をさらに高め、より確実なものとすること
ができるという効果がもたらされる。
車用トロイダル式無段変速機においては、駆動側および
従動側転動体の少なくとも一方のトラクション面におけ
る油溜り深さ率Kの値が0.9以上であると共に、駆動
側および従動側それぞれの転動体トラクション面におけ
る油溜り量Vo (mm3/mm2)の値の2乗和の平方
根Vo syn が1.3×10−5(mm3/mm2)以上
であって、トラクションオイルの油膜厚さhを一定値
(0.2μm=2×10−4 mm)とみなしたとき
に、請求項3における油膜厚さと油溜り量Vo の2乗和
平方根の比(h/Vo syn )が15.0以下である場合
に相当することから、転動体の転動疲労寿命を従来と同
等に維持することができ、高温運転時においてもトラク
ション係数を高く維持して、押し付け力を高めることな
く大きな駆動力を従動側転動体に伝達することができる
という請求項3および請求項1に係わるトロイダル式無
段変速機の場合と同様の効果がもたらされる。そして、
本発明の請求項11に係わるトロイダル式無段変速機に
おいては、前記油溜り量Vo の2乗和の平方根Vo syn
を4×10−5(mm3/mm2)以上としていること
から、油膜厚さhを一定値とみなしたときに、請求項4
における油膜厚さと油溜り量Vo の2乗和平方根の比
(h/Vo syn )が5.0以下である場合に相当し、請
求項4および請求項2に係わるトロイダル式無段変速機
の場合と同様に、上記効果をさらに高め、より確実なも
のとすることができる。
体的に説明する。
入出力ディスク3,5およびパワーローラ6をクロムモ
リブデン鋼を用いて作成した。
れるSCM420H鋼(クロムモリブデン鋼)に浸炭焼
入れ、焼戻しを施し、トラクション転動面を研削および
超仕上げしたのち、空気式ショットピーニング機によっ
て、硬さ750Hv,平均粒径0.05mmの鋼球を投
射材として、エア圧0.49MPa(5kg/cm2)
でショットピーニングを施した。このとき、トラクショ
ン転動面となる部位に対して投射量がほぼ均一となるよ
うに、ワークを回転させると共に、ワークの回転軸方向
に投射ノズルの首を振らせるようにした。なお、投射時
間は20秒とし、このショットピーニングによって転動
面にランダムな凹凸形状を形成させた。ショットピーニ
ング処理ののち、テープラップを施すことにより、表面
粗さの凸部を削り落とした。
ローラ6のトラクション転動面における表面形状を触針
式の粗さ計を用いて測定し、DIN4776およびIS
O468に基づいて、油溜り深さ率K、油溜り量Vo 、
および2乗平均平方根粗さRq をそれぞれ算出した。
パワーローラ6を用いて、図1に示したようなトロイダ
ル式無段変速機を組み立て、トラクション部が最も高温
になる条件として、エンジンが最大出力を発生し、環境
温度が高くてトラクションオイルの温度がオイルパン中
で120℃程度となり、しかもトラクション面での発熱
が最大となる変速比1:1の条件を想定して、このよう
な無段変速機の運転条件において当該トロイダル式無段
変速機のトラクション性能を調査し、これらの結果を表
2に示した。
部は約150℃の最高温度に達し、温度150℃でのト
ラクションオイルの粘度特性値、エンジン最大出力時に
おける変速比1:1での押し付け力、転がり速度、接触
面の等価曲率については当該無段変速機の寸法から、等
価弾性係数については部品の物性値から、それぞれ以下
のようになる。
求められた無次元パラメータと油膜厚さの関係を記述す
るHamrock and Dowsonの式H=3.
42gv0.49gE0.17(1−
e−0.68k )に代入して、油膜厚さhを求める
と、h=0.2μm(=2×10−4 mm)と計算
され、この値を用いて、油膜厚さと2乗平均平方根粗さ
Rq の2乗和平方根の比(h/Rq syn )、および油膜
厚さと油溜り量Vo の2乗和平方根の比(h/Vosyn
)を算出すると、表2示す結果となる。
(クロムモリブデン鋼)に、同様に浸炭焼入れ、焼戻し
を施し、トラクション転動面を研削および超仕上げする
ことによって、入出力ディスク3,5およびパワーロー
ラ6を形成したのち、油溜り深さ率K、油溜り量Vo 、
および2乗平均平方根粗さRq をそれぞれ同様に測定す
ると共に、これら入出力ディスク3,5およびパワーロ
ーラ6を用いて、図1に示したようなトロイダル式無段
変速機を同様に組み立て、実施例1と同様の運転条件の
もとに、当該トロイダル式無段変速機のトラクション性
能を調査し、これらの結果を表2に併せて示した。
て、その後、先端Rが200μmの焼結体立方晶窒化ほ
う素(c−BN)工具を用いて、切削速度250m/m
in、送り0.05mm/rev、片肉切り込み量0.
02mmの条件で超精密切削を行った。その後、テープ
ラップを施すことにより、表面粗さの凸部を削り落と
し、表面微細形状を連続した溝と平坦部の組み合わせと
することによって、入出力ディスク3,5およびパワー
ローラ6を形成したのち、油溜り深さ率K、油溜り量V
o 、および2乗平均平方根粗さRq をそれぞれ同様に測
定すると共に、これら入出力ディスク3,5およびパワ
ーローラ6を用いて、図1に示したようなトロイダル式
無段変速機を同様に組み立て、実施例1と同様の運転条
件のもとに、当該トロイダル式無段変速機のトラクショ
ン性能を調査し、これらの結果を表2に併せて示した。
(クロムモリブデン鋼)に、同様に浸炭焼入れ、焼戻し
を施し、トラクション転動面を研削および超仕上げする
ことによって、入出力ディスク3,5およびパワーロー
ラ6を形成し、油溜り深さ率K、油溜り量Vo 、および
2乗平均平方根粗さRq をそれぞれ同様に測定すると共
に、これら入出力ディスク3,5およびパワーローラ6
を用いて、図1に示したようなトロイダル式無段変速機
を同様に組み立て、実施例1と同様の運転条件のもと
に、当該トロイダル式無段変速機のトラクション性能を
調査した。これらの結果を表2に併せて示す。
溜り深さ率Kが0.9以上で、油溜り量Vo が7×10
−6(mm3/mm2)以上、トラクション部が最も高
温になる運転条件下での接触部におけるトラクションオ
イルの油膜厚さh(μm)と駆動側および従動側それぞ
れの転動体トラクション面の2乗平均平方根粗さRq
(μm)の値の2乗和の平方根Rq syn との比(h/R
q syn )が3.0以下で、さらに前記油膜厚さh(m
m)と駆動側および従動側それぞれの転動体トラクショ
ン面における油溜り量Vo (mm3/mm2)の値の2
乗和の平方根Vo syn との比(h/Vo syn )が15.
0以下である転動体を備えた実施例1に係わるトロイダ
ル式無段変速機においては、これらの各数値が上記数値
範囲から外れた転動体を用いた比較例の無段変速機に較
べて格段に優れたトラクション性能を示すことが認めら
れた。また、前記油膜厚さhと2乗平均平方根粗さRq
の2乗和平方根Rq syn との比(h/Rq syn )が1.
0以下であるとともに、油膜厚さhと油溜り量Vo の2
乗和の平方根Vo syn との比(h/Vo syn )が5.0
以下である転動体を備えた実施例2に係わるトロイダル
式無段変速機においては、さらに優れたトラクション性
能を備えていることが確認された。
図である。
び2乗平均平方根粗さRq の定義を示す説明図である。
メータにおける油溜り深さRvk,有効負荷粗さRk ,油
溜り深さ率Kなどの定義を示す説明図である。
メータにおける油溜り量Vo の定義を示す説明図であ
る。
ン性能に及ぼす影響の調査に用いた2円筒転がり試験機
の構造を示す概略説明図である。
の関係を示すグラフである。
を示すグラフである。
溜り量Vo と油溜り深さ率Kとの関係を示すグラフであ
る。
に示したグループについて整理して示すグラフである。
と特殊負荷曲線パラメータ油溜り量Vo との関係を示す
グラフである。
Claims (11)
- 【請求項1】 駆動側および従動側転動体を備え、これ
ら転動体のトラクション面間にトラクションオイルを介
在させて動力を伝達する自動車用トロイダル式無段変速
機において、 駆動側および従動側転動体の少なくとも一方のトラクシ
ョン面における油溜り深さ率Kの値が0.9以上で、油
溜り量Vo が7×10−6(mm3/mm2)以上であ
ると共に、駆動側および従動側それぞれの転動体トラク
ション面の2乗平均平方根粗さRq (μm)の値の2乗
和の平方根をRq syn とし、トラクション部が最も高温
になる運転条件下での接触部におけるトラクションオイ
ルの油膜厚さをh(μm)とするとき、前記油膜厚さと
2乗和平方根の比(h/Rq syn)が3.0以下である
ことを特徴とする自動車用トロイダル式無段変速機。 - 【請求項2】 前記油膜厚さと2乗和平方根の比(h/
Rq syn )が1.0以下であることを特徴とする請求項
1記載の自動車用トロイダル式無段変速機。 - 【請求項3】 駆動側および従動側転動体を備え、これ
ら転動体のトラクション面間にトラクションオイルを介
在させて動力を伝達する自動車用トロイダル式無段変速
機において、 駆動側および従動側転動体の少なくとも一方のトラクシ
ョン面における油溜り深さ率Kの値が0.9以上である
と共に、駆動側および従動側それぞれの転動体トラクシ
ョン面における油溜り量Vo (mm3/mm2)の値の
2乗和の平方根をVo syn とし、トラクション部が最も
高温になる運転条件下での接触部におけるトラクション
オイルの油膜厚さをh(mm)とするとき、前記油膜厚
さと2乗和平方根の比(h/Vo syn )が15.0以下
であることを特徴とする自動車用トロイダル式無段変速
機。 - 【請求項4】 前記油膜厚さと2乗和平方根の比(h/
Vo syn )が5.0以下であることを特徴とする請求項
3記載の自動車用トロイダル式無段変速機。 - 【請求項5】 トラクション部が最も高温になる運転条
件下での接触部におけるトラクションオイルの油膜厚さ
hが転動体の接触面寸法、材料特性、温度条件、運転条
件、トラクションオイルの粘度特性から弾性流体潤滑理
論により計算された油膜厚さであることを特徴とする請
求項1ないし請求項4のいずれかに記載の自動車用トロ
イダル式無段変速機。 - 【請求項6】 油膜厚さhがHamrock and
Dowsonの式: H=3.42gv0.49gE0.17(1−e
−0.68k ) ここで、 H(膜厚パラメ−タ)=(h/Rx)(W/U) gv(粘性パラメ−タ)=GW3/U2 gE(弾性パラメ−タ)=W8/3/U2 k(楕円パラメ−タ)=(Ry/Rx)2/π U(速度パラメ−タ)=u/(E´Rx) W(荷重パラメ−タ)=w/(E´Rx2) G(材料パラメ−タ)=αE´ ηo :トラクションオイルの大気圧下粘度(mPa・
s) α:トラクションオイルの圧力粘度係数(GPa−1) w:トラクション部の押し付け力(N) u:トラクション部の転がり速度(m/s) Rx:トラクション部の転がり方向等価曲率半径(m) Ry:トラクション部の転がり方向に垂直な等価曲率半
径(m) E´:トラクション部の等価縦弾性係数(GPa) に基づいて計算された油膜厚さであることを特徴とする
請求項5記載の自動車用トロイダル式無段変速機。 - 【請求項7】 トラクション部が最も高温になる運転条
件として、エンジンが最大出力を発生し、供給されるト
ラクションオイルの温度が最高となる条件を採用したこ
とを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記
載の自動車用トロイダル式無段変速機。 - 【請求項8】 駆動側および従動側転動体を備え、これ
ら転動体のトラクション面間にトラクションオイルを介
在させて動力を伝達する自動車用トロイダル式無段変速
機において、駆動側および従動側転動体の少なくとも一
方のトラクション面における油溜り深さ率Kの値が0.
9以上で、油溜り量Vo の値が7×10−6(mm3/
mm 2)以上であると共に、駆動側および従動側それぞ
れの転動体トラクション面における2乗平均平方根粗さ
Rq の値の2乗和の平方根Rq syn が0.07(μm)
以上であることを特徴とする自動車用トロイダル式無段
変速機。 - 【請求項9】 前記2乗平均平方根粗さRq の2乗和の
平方根Rq syn が0.2(μm)以上であることを特徴
とする請求項8記載の自動車用トロイダル式無段変速
機。 - 【請求項10】 駆動側および従動側転動体を備え、こ
れら転動体のトラクション面間にトラクションオイルを
介在させて動力を伝達する自動車用トロイダル式無段変
速機において、 駆動側および従動側転動体の少なくとも一方のトラクシ
ョン面における油溜り深さ率Kの値が0.9以上である
と共に、駆動側および従動側それぞれの転動体トラクシ
ョン面における油溜り量Vo (mm3/mm2)の値の
2乗和の平方根Vo syn が1.3×10−5(mm3/
mm2)以上であることを特徴とする自動車用トロイダ
ル式無段変速機。 - 【請求項11】 前記油溜り量Vo の2乗和の平方根V
o syn が4×10− 5(mm3/mm2)以上であるこ
とを特徴とする請求項10記載の自動車用トロイダル式
無段変速機。
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