JP2001263196A - フューエルデリバリーパイプ用遮音装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】フューエルデリバリーパイプからの騒音を低減
するとともに、小さな工数で容易に着脱することができ
る遮音装置とする。 【解決手段】繊維集積体又は発泡体から形成された略半
割筒状の一半部３と他半部４とからなり、ヒンジ部５で
折り返してパイプ本体１を包み、第１係合部３１と第２
係合部４１との係合により一半部３と他半部４とを一体
的に保持固定する。一半部３には切り欠き３０が形成さ
れている。一半部３の切り欠き３０により、フューエル
インジェクタ１０などが存在してもパイプ本体１を包み
込むことができるので、装着が容易である。またパイプ
本体１の全体を包み込んでいるので、遮音性能に優れ
る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、自動車エンジンの
各気筒へ燃料を供給するフューエルデリバリーパイプ用
の遮音装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】近年、環境問題への対応として、自動車
にはさらなる燃費の向上が求められている。そして燃費
向上の手段として、リーンバーンエンジンの開発、燃料
直噴エンジンの開発などが進められ、実用化されてい
る。

【０００３】このうち燃料直噴エンジンは、エンジンの
各気筒に設けられたフューエルインジェクタから各気筒
へそれぞれ燃料を直噴するものであり、コンピュータに
よってフューエルインジェクタからの噴出量や噴出タイ
ミングを最適に制御することによって燃費を向上させよ
うとするものである。

【０００４】そして複数のフューエルインジェクタは、
一本のフューエルデリバリーパイプにそれぞれ連結さ
れ、フューエルデリバリーパイプに供給された燃料がそ
れぞれのフューエルインジェクタに配分される構成とさ
れている。また近年では、フューエルデリバリーパイプ
には燃料の圧力を検出する圧力センサーとリリーフバル
ブが設けられ、フューエルデリバリーパイプ内の燃料圧
力が所定圧力を超えた場合にリリーフバルブが燃料をフ
ューエルタンクへ戻すように構成されたものも開発され
ている。

【０００５】このフューエルデリバリーパイプは、例え
ばエンジンブロックに設けられたスタッドボルトなどに
締結されて用いられる。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】ところがフューエルデ
リバリーパイプをもつ自動車においては、フューエルイ
ンジェクタが５０〜１５０Ｐａの高圧で燃料を噴射する
ために、その作動音が大きく騒音の発生源となるという
問題がある。またフューエルインジェクタの振動がパイ
プ本体に共鳴して音が発生するという問題もある。そこ
でフューエルデリバリーパイプの締結部にＯリングなど
を介在させて作動音の伝達を低減し、静粛性を向上させ
ることも行われているが、まだ十分とはいえない。

【０００７】またフューエルデリバリーパイプは、パイ
プ本体から複数のフューエルインジェクタや圧力センサ
ー、リリーフバルブなどが突出した複雑な構造であり、
またフューエルインジェクタはパイプ本体とエンジンと
を強固に連結し、圧力センサー及びリリーフバルブには
ハーネスが接続されるとともに、リリーフバルブは燃料
タンクと連結されている。したがって、表面から全体を
遮音材で覆ったとしても完全に覆うことは困難であり、
隙間から音が漏れてしまう。さらに、遮音材で隙間なく
覆うことができたとしても、構造が複雑であるために覆
う工数が多大となり、フューエルデリバリーパイプのメ
ンテナンス時の着脱が面倒であるという問題がある。

【０００８】本発明はこのような事情に鑑みてなされた
ものであり、フューエルデリバリーパイプからの騒音を
低減するとともに、小さな工数で容易に着脱することが
できる遮音装置とすることを目的とする。

【０００９】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決する本発
明のフューエルデリバリーパイプ用遮音装置の特徴は、
パイプ本体と、パイプ本体に接続されたフューエルイン
ジェクタとから主として構成され、自動車のエンジン近
傍に配置されてエンジンへ燃料を供給するフューエルデ
リバリーパイプからの騒音を遮音する装置であって、繊
維集積体又は発泡体から形成され、略半割筒状をなす一
半部と一半部とヒンジ部を介して一体的に連結され略半
割筒状をなす他半部とからなり、一半部及び他半部の少
なくとも一半部にはフューエルインジェクタの進入を許
容する切り欠き又は貫通孔をもつとともに一半部は第１
係合部をもち、他半部には第１係合部と係合可能な第２
係合部をもち、一半部と他半部とでパイプ本体を包んだ
状態で第１係合部と第２係合部との係合により一半部と
他半部とが一体的に保持固定されることにある。

【００１０】また上記遮音装置において、一半部及び他
半部は、径の大きな繊維の集積体からなる内層と、内層
表面に積層され内層を構成する繊維より径の小さな繊維
の集積体からなる中間層と、中間層表面に積層されたフ
ィルム状の外層とよりなり、内層がパイプ本体に対向す
るように保持固定されることが望ましい。

【００１１】

【発明の実施の形態】本発明の遮音装置は、ヒンジ部を
介して連結された半割形状の一対の半部から構成され、
一方の一半部にはフューエルインジェクタの進入を許容
する切り欠き又は貫通孔を有している。したがって一半
部をフューエルインジェクタが存在する側に配置し、他
半部をヒンジ部で揺動させて第１係合部と第２係合部と
を係合させることにより、一半部と他半部とは筒状とな
ってパイプ本体を包む。これによりパイプ本体からの音
が遮音され、騒音を防止することができる。そして一半
部にフューエルインジェクタの進入を許容する切り欠き
を設けておけば、フューエルデリバリーパイプがエンジ
ン近傍に固定されている状態で、一半部をフューエルイ
ンジェクタ側に差込み、他半部を揺動させて第１係合部
と第２係合部とを係合することで取り付けることがで
き、着脱がきわめて容易であるので、フューエルデリバ
リーパイプのメンテナンスを容易に行うことができる。

【００１２】そして上記遮音装置は繊維集積体又は発泡
体から形成されているので、軽量であり着脱作業におけ
る作業者の負担も小さい。

【００１３】また遮音装置を、径の大きな繊維の集積体
からなる内層と、内層表面に積層され内層を構成する繊
維より径の小さな繊維の集積体からなる中間層と、中間
層表面に積層されたフィルム状の外層とから構成し、内
層がパイプ本体に対向するように保持固定すれば、内層
の制振作用によって振動エネルギーを効果的に低減する
とともに、中間層で騒音を吸音することができ、かつ外
層によって遮音特性が一層向上するので、フューエルデ
リバリーパイプに特有の８〜１０ＫＨｚの周波数の騒音
を効果的に遮音することができる。

【００１４】一半部と他半部とは、１枚のシート状の繊
維集積体又は発泡体からヒンジ部とともに一体的に形成
することが好ましい。このようにすれば打ち抜きプレス
成形などで容易に製造することができ、安価な遮音装置
とすることができる。

【００１５】繊維集積体としては、パルプ、セルロース
を原料とした紙状のもの、短繊維からなるフェルト状の
もの、ＰＰ繊維やＰＥＴ繊維などの熱可塑性樹脂繊維を
原料としたものなどを用いることができる。また発泡体
としては、ウレタンフォーム、ＰＰフォーム、ポリスチ
レンフォームなどを用いることができる。

【００１６】少なくとも一半部に形成される切り欠き又
は貫通孔は、フューエルデリバリーパイプから突出して
エンジンと結合されているフューエルインジェクタの通
過を許容すればよく、一半部の形成と同時に形成するこ
とが望ましい。なお切り欠きを形成する場合には、フュ
ーエルインジェクタなどの最小径の部分が通過するよう
に構成し、フューエルデリバリーパイプに装着したとき
に切り欠きによって形成される隙間を極力小さくするよ
うに構成することが望ましい。

【００１７】またフューエルデリバリーパイプが圧力セ
ンサーやリリーフバルブなどを備えている場合には、一
半部ばかりでなく他半部にも切り欠き又は貫通孔を形成
することが望ましい。これにより圧力センサーやリリー
フバルブなどとの干渉が回避でき、よりコンパクトな遮
音装置とすることができる。

【００１８】一半部に形成される第１係合部と、他半部
に形成される第２係合部とは、フューエルデリバリーパ
イプを包んだ状態で互いに着脱可能に係合して保持され
るものであれば特に制限されない。例えば爪部と孔部と
の係合、フック部どうしの係合、マジックテープ（登録
商標）による係合などから選択することができる。ある
いはそれぞれを板状のフランジ部とし、互いに重ねて鋲
やホッチキスで固定してもよい。

【００１９】またヒンジ部は、揺動しやすい蝶番形状と
してもよいし、単に繊維集積体又は発泡体を折り曲げ
て、その折り曲げ部分をヒンジ部とすることもできる。

【００２０】径の大きな繊維の集積体からなる内層と、
内層表面に積層され内層を構成する繊維より径の小さな
繊維の集積体からなる中間層と、中間層表面に積層され
たフィルム状の外層とよりなり、内層がパイプ本体に対
向するように保持固定されることが望ましい。内層を構
成する繊維の径は２〜２０デニール程度が好ましく、中
間層を構成する繊維の径は０．５〜２デニール程度が好
ましい。また内層の目付は２５０ｇ／ｍ² 〜１０００ｇ
／ｍ² の範囲が好ましく、中間層の目付は５００ｇ／ｍ
² 〜２０００ｇ／ｍ² の範囲が好ましい。このような内
層及び中間層とすることで、フューエルデリバリーパイ
プの振動による振動エネルギーをよく低減することがで
き、また吸音作用も奏されるため、フューエルデリバリ
ーパイプに特有の８〜１０ＫＨｚの周波数の騒音を効果
的に遮音することができる。また外層は音波が透過しな
い遮蔽層として機能し、その材質や厚さは特に制限され
ない。

【００２１】そして本発明の遮音装置をフューエルデリ
バリーパイプに装着するには、先ず一半部をフューエル
インジェクタが突出している表面に沿って、切り欠きに
フューエルインジェクタを挿通しながら差し込む。貫通
孔の場合には、フューエルインジェクタなどとフューエ
ルデリバリーパイプを予め分離し、貫通孔にフューエル
インジェクタなどを挿通した後、フューエルインジェク
タなどとフューエルデリバリーパイプを結合する。そし
てヒンジ部で他半部を折り返してフューエルデリバリー
パイプを包み込み、第１係合部と第２係合部との係合に
より一半部と他半部を互いに保持固定する。

【００２２】したがって本発明の遮音装置によれば、既
にエンジンに取り付けられているフューエルデリバリー
パイプに容易に装着することができ、着脱がきわめて容
易である。そして軽量であるので燃費が低下するような
不具合なく、フューエルデリバリーパイプからの騒音を
確実に遮音することができる。また着脱が容易であるの
で、フューエルデリバリーパイプのメンテナンスも容易
に行うことができる。

【００２３】

【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
る。

【００２４】図１に、本実施例の遮音装置が装着される
フューエルデリバリーパイプを示す。このフューエルデ
リバリーパイプは、アルミ合金製のパイプ本体１と、パ
イプ本体１とエンジンブロック２を連通するように両者
に固定された複数のフューエルインジェクタ１０と、パ
イプ本体１から突出するように設けられた圧力センサー
１１及びリリースバルブ１２とから構成されている。

【００２５】複数のフューエルインジェクタ１０は、一
端がパイプ本体１に挿入された状態で、他端がクランプ
１３を介してエンジンブロック２にそれぞれ固定されて
いる。図１では、１個のフューエルインジェクタ１０を
パイプ本体１から分離してエンジンブロック２に固定し
た状態で示している。また圧力センサー１１及びリリー
スバルブ１２には、それぞれ図示しないハーネスが接続
され、リリースバルブ１２には燃料タンクと連結された
図示しない配管が接続されている。

【００２６】そしてパイプ本体１の両端部にはそれぞれ
取付座１４が備えられ、エンジンブロック２から突出す
るスタッドボルト２０に固定されることで、エンジンブ
ロックに固定されている。

【００２７】このフューエルデリバリーパイプでは、パ
イプ本体１の一端から燃料がパイプ本体１内に供給さ
れ、供給された燃料は複数のフューエルインジェクタ１
０に分配されて、フューエルインジェクタ１０からエン
ジンブロック２の各シリンダに高圧で直噴される。そし
て直噴時などにフューエルインジェクタ１０から発する
音、フューエルインジェクタ１０の振動による音、ある
いはその振動がパイプ本体１に共鳴して発する音などが
騒音源となる。

【００２８】そこで図２に示す本発明の一実施例の遮音
装置は、繊維集積体とフィルムとからなるシート状の積
層体を打ち抜きプレス成形することによって製造されて
いる。この遮音装置は、半割筒状の一半部３及び他半部
４と、一半部３及び他半部４を揺動可能に連結するヒン
ジ部５とから構成されている。一半部３には、フューエ
ルインジェクタ１０の小径部が通過可能なスリット状の
複数の切り欠き３０が形成されている。また他半部４に
は、圧力センサー１１が挿通可能な貫通孔（図示せず）
と、リリースバルブ１２が挿通可能な貫通孔４０がそれ
ぞれ形成されている。そして一半部３のそれぞれの切り
欠き３０どうしの間にはそれぞれ長孔形状の第１係合部
３１が形成され、他半部４の先端には断面湾曲状の突起
状の複数の第２係合部４１が形成されている。

【００２９】また一半部３及び他半部４は、図３に拡大
して示すように、平均径が２０デニールのＰＥＴ繊維か
らなり目付が５００ｇ／ｍ² の内層３２と、内層３２の
表面に積層され平均径が０．５デニールのＰＥＴ繊維か
らなり目付が１０００ｇ／ｍ ² の中間層３３と、中間層
３３の表面に積層された厚さ５０μｍのＰＥＴ製フィル
ムからなる外層３４とから構成されている。

【００３０】この遮音装置をフューエルデリバリーパイ
プに装着するは、図４に示すように、先ず一半部３をパ
イプ本体１とエンジンブロック２の間に差し込み、切り
欠き３０にフューエルインジェクタ１０の小径部を沿わ
せながらさらに差し込む。そして一半部３の先端がパイ
プ本体１の反対側から表出した後に、他半部４をヒンジ
部５で折り返し、貫通孔４０にハーネスや配管を外した
圧力センサー１１とリリースバルブ１２を挿通させて、
一半部３と他半部４とでパイプ本体１を包み込む。そし
て第２係合部４１を第１係合部３１に挿入する。すると
ヒンジ部５の弾性反力によって、第２係合部４１は第１
係合部３１の周壁に圧接され、これにより第２係合部４
１は第１係合部内３１で保持固定されて、一半部３と他
半部４とが保持固定される。

【００３１】したがって本実施例の遮音装置によれば、
一半部３と他半部４とでパイプ本体１の全体を包み込ん
でいるため、パイプ本体１からの騒音を効果的に遮音す
ることができる。また繊維集積体の積層構造体から形成
されているため、振動エネルギーが低減され共鳴による
騒音の発生が防止されるとともに、吸音効果も発現され
る。これにより遮音特性に優れている。

【００３２】また本実施例の遮音装置によれば、フュー
エルインジェクタ１０など各種突起物をもち既にエンジ
ンブロック２に固定されているフューエルデリバリーパ
イプに容易に装着することができ、着脱作業性に優れて
いるので、フューエルデリバリーパイプのメンテナンス
も容易に行うことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例の遮音装置が装着されるフュ
ーエルデリバリーパイプ及びエンジンブロックを分離し
た状態で示す斜視図である。

【図２】本発明の一実施例の遮音装置をフューエルデリ
バリーパイプへ装着する前の状態で示す要部斜視図であ
る。

【図３】本発明の一実施例の遮音装置の要部拡大断面図
である。

【図４】本発明の一実施例の遮音装置をフューエルデリ
バリーパイプへ装着した状態で示す断面図である。

【符号の説明】

１：パイプ本体 ２：エンジンブロック ３：一
半部 ４：他半部 ５：ヒンジ部 １０：フ
ューエルインジェクタ １１：圧力センサー １２：リリースバルブ ３０：
切り欠き ３１：第１係合部 ４０：貫通孔 ４１：
第２係合部

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 安田 善一 愛知県西春日井郡春日町大字落合字長畑１ 番地 豊田合成株式会社内 Ｆターム(参考） 3D038 CA01 CD00 3G066 AA02 AB02 AD12 BA12 BA22 BA54 BA56 CB00 CB01 CB05 CD04 CD15 CD17 CD28 CD30 DC18

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 パイプ本体と、該パイプ本体に接続され
   たフューエルインジェクタとから主として構成され、自
   動車のエンジン近傍に配置されて該エンジンへ燃料を供
   給するフューエルデリバリーパイプからの騒音を遮音す
   る装置であって、 繊維集積体又は発泡体から形成され、略半割筒状をなす
   一半部と該一半部とヒンジ部を介して一体的に連結され
   略半割筒状をなす他半部とからなり、該一半部及び該他
   半部の少なくとも該一半部には該フューエルインジェク
   タの進入を許容する切り欠き又は貫通孔をもつとともに
   該一半部は第１係合部をもち、該他半部には該第１係合
   部と係合可能な第２係合部をもち、該一半部と該他半部
   とで該パイプ本体を包んだ状態で該第１係合部と該第２
   係合部との係合により該一半部と該他半部とが一体的に
   保持固定されることを特徴とするフューエルデリバリー
   パイプ用遮音装置。
2. 【請求項２】 前記一半部及び前記他半部は、径の大き
   な繊維の集積体からなる内層と、該内層表面に積層され
   該内層を構成する繊維より径の小さな繊維の集積体から
   なる中間層と、該中間層表面に積層されたフィルム状の
   外層とよりなり、該内層が該パイプ本体に対向するよう
   に保持固定されることを特徴とする請求項１に記載のフ
   ューエルデリバリーパイプ用遮音装置。