JP2001262257A - 耐衝撃特性に優れたチタン及びその製造方法 - Google Patents

耐衝撃特性に優れたチタン及びその製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐衝撃特性に優れたチタン及びその製造方法
を提供する。 【解決手段】 Al、Mo、Vなどの合金元素を添加す
ることなく、O,N,C,Feの濃度を所定の範囲内に
し冷間加工性を確保しつつ、且つチタン成品へ成形する
前、及びその途中で実施する予備加工や焼鈍を組み合わ
せて、加工硬化させた状態のチタン成品そのものの断面
ビッカース硬さを、その成分濃度に応じた所定の範囲に
調整することによって、耐衝撃特性に優れたチタン成品
を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐衝撃特性に優れ
たチタン及びその製造方法に関する。ここで耐衝撃特性
とは外部からの衝撃に対して破損しにくいことであり、
例えば盾やヘルメットやベスト及び重要部分のカバ−や
自動車のドアなど中身の人体や重要な箇所を防護する用
途における特性である。
【0002】
【従来の技術】耐衝撃特性が要求される成品において、
軽量化を図るために高強度な合金鋼や比強度の高いチタ
ン合金が適用されており、いずれも高強度故に成形が難
しく、温間や熱間での成形、更には成形速度を遅くする
などの対策が実施されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】以上の従来技術では成
形性は改善されるが、加熱・保温工程や成形後のデスケ
ール工程などが付与されるため生産効率が必ずしも高く
なく、更にチタン合金はV,Moなどの合金元素を添加
して高強度化しているため、一般的な純チタンと比べて
決して廉価ではないという課題を有している。またチタ
ン合金は高強度故に、高速の衝撃に対して優れた耐衝撃
特性が必ずしも得られないという課題がある。
【0004】そこで本発明は、前記した従来技術の課題
に鑑みて、耐衝撃特性に優れた廉価なチタン及びその製
造方法を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、以下の構成を有
する耐衝撃特性に優れたチタン及びその製造方法である
本発明を成すに至った。
【0006】すなわち本発明は、チタンの成分と硬さに
おいて、OとN、Cの合計Sが0.04〜0.27質量
%、Feが0.1質量%以下、残部がTi及び不可避な
不純物よりなり、且つ加工により硬化させることにより
断面部のビッカース硬さ:Hv* が下記の式(1)、式
(2)、式(3)のいずれかを満たすことを特徴とする
耐衝撃特性に優れたチタンである。 0.04≦S≦0.09(質量%)の場合、 150≦Hv* ≦400×S+175 ………………式(1) 0.09<S≦0.20(質量%)の場合、 510×S+104≦Hv* ≦400×S+175 …式(2) 0.20<S≦0.27(質量%)の場合、 510×S+104≦Hv* ≦255 ………………式(3) ここで、S:[O]+[N]+[C] Hv* :加工硬化後の断面部におけるビッカース硬さ
【0007】また、上記チタンを製造する方法であっ
て、成品形状に成形加工した後のチタンの断面ビッカー
ス硬さ:Hv* が上記式(1)、式(2)、式(3)の
範囲内になるように、成形加工前の被成形材に圧延、矯
正などの予備加工を施すことを特徴とする。
【0008】また、上記チタンを製造する方法であっ
て、成品形状に成形加工した後のチタンの断面ビッカー
ス硬さ:Hv* が上記式(1)、式(2)、式(3)の
範囲内になるように調整する成形加工前の被成形板への
予備加工において、それ以前での熱間圧延或いは冷間圧
延とは直交する方向にて、ロールを用いた圧延又は矯
正、或いはその両方を実施することを特徴とする。
【0009】さらに、上記チタンを製造する方法であっ
て、成品形状に成形加工した後のチタンの断面ビッカー
ス硬さ:Hv* が上記式(1)、式(2)、式(3)の
いずれかを満たすように成形加工の前或いは途中で焼鈍
を実施することを特徴とする。
【0010】ここで予備加工は、方法を特定していない
場合には圧延や矯正に限定するものでなく、鍛造など他
の加工方法も含む。また予備加工の温度は酸化の防止を
考慮すると室温相当が好ましいが、温度域を制限するも
のではない。
【0011】
【発明の実施形態】図1に、本発明の成分範囲(S=
[O]+[N]+[C](質量%)と加工硬化させた後
の断面ビッカース硬さ(Hv* )の範囲を示す。図1の
耐衝撃特性は、先端に突起(2mmR、φ4×20mm)の
ある重さ60kgの落下物を高さ1.5mmより落とす落
重試験により評価した。試験材は板厚3.3mmでローラ
ーで曲げた150Rの曲面形状であり、落下物は試験材
の曲面凸側から衝突させた。
【0012】前記試験に供したチタン材は以下の手順で
準備、調整した。まず各種成分のチタン板を最終成形材
の板厚が3.3mmになるように熱間圧延し、一部は更に
冷間圧延を実施した後に焼鈍した。その後、種々の加工
度(0〜約70%)にて冷間圧延の予備加工を実施した
後に、ローラー曲げ加工により150Rに成形した。こ
こでローラー曲げ加工に用いた設備はロールが千鳥配置
された曲げ加工機である。更に曲げ成形後の一部は高真
空中にて焼鈍して軟質化させた。
【0013】以上のように試験材は、成分、加工度及び
焼鈍により断面ビッカース硬さを調整した成形まま或い
は焼鈍状態であり、酸化スケールのない金属色である。
【0014】前記方法の落重試験に供した試験材の被衝
突部を目視にて観察し、突起が貫通(記号▼)、不貫通
だが割れが発生(記号△)、不貫通で且つ割れの発生が
ない(記号○)の三つに分類した。
【0015】その結果、図1に示すように、突起が不貫
通な場合(記号△及び記号○)を直線で結ぶと、硬さへ
の影響が比較的大きな以下3元素、O、N、Cの合計濃
度S:[O]+[N]+[C](質量%)と、断面ビッ
カース硬さ:Hv* が以下の式(1)、式(2)、式
(3)の領域にあるとき不貫通であり、所定の領域の硬
さに加工硬化させることが耐衝撃特性に優れていること
を見出した。 0.04≦S≦0.09(質量%)の場合、 150≦Hv* ≦400×S+175 ………………式(1) 0.09<S≦0.20(質量%)の場合、 510×S+104≦Hv* ≦400×S+175 …式(2) 0.20<S≦0.27(質量%)の場合、 510×S+104≦Hv* ≦255 ………………式(3)
【0016】図1の式(1)、式(2)、式(3)の領
域よりも上部では、加工硬化の度合いが高過ぎて延性が
不十分なため、衝撃に対してチタンが変形できずに割れ
の発生、伝播が起こりやすくなり貫通してしまい、一
方、式(1)、式(2)、式(3)の領域よりも下部で
は加工硬化の度合いが低すぎて衝撃に対するチタンの変
形抵抗が小さいため、変形が局所化して貫通してしまう
ことから、本発明のS([O]+[N]+[C](質量
%))と加工硬化後の断面ビッカース硬さHv* の範囲
を式(1)、式(2)、式(3)とした。
【0017】S([O]+[N]+[C](質量%))
が0.04質量%未満の場合、精錬及び真空溶解工程で
一般的な工業用純チタンよりも高純化する必要があり、
決して廉価ではなくなることから、本発明の範囲はSを
0.04質量%以上とした。またSが0.27質量%超
及びFe濃度が0.1質量%超の場合には、加工硬化を
付与することによる耐衝撃特性の向上がほとんどなくな
り、加えて加工素材であるチタンそのものが非常に硬質
化するため、冷間での加工や成形が容易でなくなること
から、本発明ではSを0.27%以下、Fe濃度を0.
1質量%以下とした。
【0018】また前記試験と同様の板厚及び形状の2種
類のチタン合金、Ti−3Al−2.5VとTi−15
V−3Cr−3Sn−3Alにおいて、同一の落重試験
を実施した結果、いずれも貫通もしくは不貫通ではある
が割れが発生したことから、本発明のチタンは一般的な
チタン合金と同等以上の耐衝撃特性を有すると考えられ
る。
【0019】以上より本発明は、Al、V、Moなどの
合金化元素を添加することなく一般的に純チタンに含ま
れるO,N,C,Feの濃度を制限し冷間加工性を確保
しつつ、且つ成形の前及び途中での予備加工や焼鈍の組
合わせにより、チタンの加工硬化後の断面ビッカース硬
さを所定の範囲内に調整するという比較的容易な方法に
よって、チタン合金と同等以上の優れた耐衝撃特性を有
するチタンを得ることができる。
【0020】また予備加工の冷間圧延や矯正をそれ以前
で実施した圧延方向と直交する方向にて施すこと、例え
ばコイルで圧延し焼鈍したものを板に切断し、コイル圧
延方向に対して直交する方向に予備加工の冷間圧延を施
すなどであり、これにより異方性が低減されてプレス成
形性や耐衝撃特性が改善されることから、本発明では好
ましくは成形加工前の被成形板への予備加工において、
それ以前での熱間圧延或いは冷間圧延とは直交する方向
にロールを用いた圧延又は矯正、或いはその両方を施す
こととした。
【0021】
【実施例】以下、実施例により本発明の効果を説明す
る。表1(表1〜表4)に、チタン成品における成分、
形状、予備加工と成形及び焼鈍の組合せ状態(予備加工
の冷間圧延率や方向、焼鈍条件など)、成品(加工硬化
後)の断面ビッカーズ硬さHv* 、前記落重試験の被衝
撃部の形態などを示す。ここで断面ビッカース硬さは、
圧延方向断面(L断面)及びその直交方向断面(C断
面)の両断面にて板厚の1/2及び1/4で各5点、合
計20点測定した平均値である。尚、測定荷重は9.8
N(1kgf)であった。
【0022】また表1のチタン成品は以下の手順で準備
した。まず各種成分のチタン板を最終成形材の板厚が
3.3mmになるように熱間圧延、一部は更に冷間圧延を
実施した後に焼鈍した。その後、種々の加工度(0〜約
70%)にて冷間圧延の予備加工を実施した後に、ロー
ラー曲げ加工により150Rに成形した。ここで予備加
工の冷間圧延は、コイルでの圧延方向と同一方向又は直
交方向にて施した。またローラー曲げ加工にはロールが
千鳥配置された曲げ加工機を用いた。更に一部は高真空
中にて最終または中間での焼鈍処理を実施した。尚、全
てのチタンとも酸化スケールのない金属色であった。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
【表3】
【0026】
【表4】
【0027】表1(表1〜表4)の比較例であるNo.
1,5,8,9,13,16,19,23,26,29
〜33,44は、S([O]+[N]+[C])及びF
e濃度が本発明の範囲内であるが、断面のビッカーズ硬
さ:Hv* が範囲外であり、本方法の落重試験にて、硬
質な場合には加工硬化の度合いが高過ぎて延性が不十分
なため、チタンが変形できずに割れが発生、伝播し貫通
している。一方、軟質な場合にはチタンの変形抵抗が小
さいため変形が局所化して貫通した。
【0028】これに対して、表1(表1〜表4)の実施
例であるNo.2〜4,6,7,10〜12,14,1
5,17,18,20〜22,24,25,35,38
〜43,45は、S([O]+[N]+[C])とFe
濃度及び加工硬化後の断面のビッカーズ硬さ:Hv* が
本発明の範囲内にあり、適度な加工硬化を施すことによ
り本方法の落重試験にて不貫通となり、表1(表1〜表
4)のNo.46,47のチタン合金(Ti−3Al−
2.5V、Ti−15V−3Cr−3Sn−3Al)と
比べても、同等以上の優れた耐衝撃特性を示した。
【0029】表1(表1〜表4)の比較例であるNo.
27,28,34は、S([O]+[N]+[C])が
0.28質量%超と本発明の範囲より高いため、またN
o.36,37はFe濃度が0.15質量%超と本発明
の範囲より高いため、いずれも本方法の落重試験におい
て加工硬化による耐衝撃特性の向上がほとんどなかっ
た。
【0030】曲げ成形前に予備加工と焼鈍を組み合わせ
たNo.38〜41や、予備加工の冷間圧延を直交方向
に施したNo.39〜43も、S([O]+[N]+
[C])とFe濃度及び加工硬化後の断面のビッカーズ
硬さ:Hv* が本発明の範囲内にあり、適度な加工硬化
を施すことにより本方法の落重試験にて不貫通であっ
た。
【0031】また冷間圧延の方向についてコイルの圧延
と同一方向に実施したNo.14と、直交方向に実施し
たNo.45を比較すると、曲げ成形直前の冷間圧延率
が10%で硬さもほぼ等しい。しかしながら、本方法の
落重試験の結果では両者とも不貫通であったが、同一方
向に冷間圧延したNo.14では割れが発生し、直交方
向に冷間圧延したNo.45では割れが発生せず、N
o.45の方が耐衝撃特性に上回っていた。
【0032】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、Al、M
o、Vなどの合金化素を添加することなく、一般的に純
チタンに含まれるO,N,C,Fe濃度を所定の範囲内
にし冷間加工性を確保しつつ、且つチタン成品へ成形す
る前及びその途中で実施する予備加工や焼鈍を組み合わ
せて、加工硬化させた状態のチタン成品そのものの断面
ビッカース硬さをその成分濃度に応じた所定の範囲に調
整することによって、耐衝撃特性に優れたチタン及びそ
の製造方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】チタンの成分O、N、Cの合計濃度;S
([O]+[N]+[C])及び加工硬化後の断面ビッ
カース硬さ:Hv* と落重試験による耐衝撃特性の関係
を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C22F 1/00 673 C22F 1/00 673 683 683 685 685Z (72)発明者 正木 基身 東京都千代田区大手町2丁目6番3号 新 日本製鐵株式会社内 (72)発明者 三浦 和行 東京都港区赤坂7丁目1番16号 日本エ ム・アイ・シー株式会社内 (72)発明者 大矢 龍夫 東京都港区赤坂7丁目1番16号 日本エ ム・アイ・シー株式会社内 Fターム(参考) 4E003 AA02 AA03 BA01

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 OとN、Cの合計Sが0.04〜0.2
    7質量%、Feが0.1質量%以下、残部がTi及び不
    可避な不純物よりなり、且つ加工により硬化させること
    により断面部のビッカース硬さ:Hv* が下記の式
    (1)、式(2)、式(3)のいずれかを満たすことを
    特徴とする耐衝撃特性に優れたチタン。 0.04≦S≦0.09(質量%)の場合、 150≦Hv* ≦400×S+175 ……………式(1) 0.09<S≦0.20(質量%)の場合、 510×S+104≦Hv* ≦400×S+175 …式(2) 0.20<S≦0.27(質量%)の場合、 510×S+104≦Hv* ≦255 ……………式(3) ここで、S:[O]+[N]+[C] Hv* :加工硬化後の断面部におけるビッカース硬さ
  2. 【請求項2】 成品形状に成形加工した後のチタンの断
    面ビッカース硬さ:Hv* が上記式(1)、式(2)、
    式(3)のいずれかを満たすように成形加工前に被成形
    材に予備加工を施すことを特徴とする請求項1に記載す
    る耐衝撃特性に優れたチタンを製造する方法。
  3. 【請求項3】 成品形状に成形加工した後のチタンの断
    面ビッカース硬さ:Hv* が上記式(1)、式(2)、
    式(3)のいずれかを満たすように、成形加工前の被成
    形板への予備加工において、それ以前での熱間圧延或い
    は冷間圧延とは直交する方向にロールを用いた圧延又は
    矯正、或いはその両方を施すことを特徴とする請求項1
    に記載する耐衝撃特性に優れたチタンを製造する方法。
  4. 【請求項4】 成品形状に成形加工した後のチタンの断
    面ビッカース硬さ:Hv* が上記式(1)、式(2)、
    式(3)のいずれかを満たすように成形加工の前或いは
    途中で焼鈍を実施することを特徴とする請求項1に記載
    する耐衝撃特性に優れたチタンを製造する方法。
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