JP2001247401A - 組織の冷却保存液 - Google Patents

組織の冷却保存液

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JP2001247401A JP2000057143A JP2000057143A JP2001247401A JP 2001247401 A JP2001247401 A JP 2001247401A JP 2000057143 A JP2000057143 A JP 2000057143A JP 2000057143 A JP2000057143 A JP 2000057143A JP 2001247401 A JP2001247401 A JP 2001247401A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 微小な細胞の保存のみならず、大きな組織の
保存に対しても有効な冷却保存液の提供。 【解決手段】細胞膜透過性物質、氷晶形成抑止能力を有
する物質、及び細胞膜非透過性脱水促進物質とを含有す
ることを特徴とする。細胞膜透過性物質が、主としてメ
タノールであり、氷晶形成抑止能力を有する物質が、主
としてエチレングリコールであり、細胞膜非透過性脱水
促進物質が、主としてショ糖であることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、細胞又は組織の冷
却保存液に関し、特に、動物類の雌性生殖器官等の器官
を保存するための冷却保存液に関する。
【0002】
【従来の技術】細胞を生かしたままである期間保存する
には、大別して4℃程度の低温保存と凍結保存がある。
低温保存は代謝速度を低下させて生存期間の延長を図る
もので、細胞は比較的緩やかな生存率の減少を示し、実
用的な保存期間は数日間から2週間程度である。一方、
長期的な保存法としては、−80℃または−196℃の凍結
保存がある。凍結保存は、細胞機能を回復可能な状態に
保ったまま凍らせて保存することである。凍結保存は、
グリセロールまたはジメチルスルホキシド(5〜10%)
を凍結保護剤として培地に加え、毎分1℃程度の速度で
ゆっくり凍結し、−196℃の液体窒素温度に保存したの
ち毎分200℃程度て急速に溶解し、保護剤を取り除いた
のち培地に移す方法が標準的である。
【0003】このような凍結保存において、凍結保存に
用いる冷却保存液を改良し、より効果的な保存法の開発
が行なわれている。細胞の保存のうち、特に生殖細胞の
保存は、生物の系統を維持するための効率的な方法であ
り、保存された系統は遺伝資源として有効に活用でき
る。また生物集団の遺伝的多様性の維持にも役立つ。さ
らに、哺乳類においては、雌の成熟生殖子である卵子は
極わずかしか排卵されないため、卵巣内に多数存在する
未成熟卵母細胞を保存する方が効率が良い。
【0004】かかる条件下、動物類の卵巣などの大きな
組織の凍結保存のために、保護物質としてジメチルスル
フォキシド、グリセロール、エチレングリコール、プロ
ピレングリコール、ショ糖を用い、コンピューター制御
されたプログラムフリーザーを利用した緩慢凍結法が知
られている。
【0005】さらに、精子、卵子、受精卵のような極微
小な細胞の保存のために、冷却保存液として、例えば、
ジメチルスルホキシド、アセトアミド、プロピレングリ
コール、ポリエチレングリコールなどの高濃度の保護物
質を含有する急速冷却法(ガラス化法)が知られている。
ここで、このガラス化法について、捕捉説明する。ガラ
ス化法とは、細胞や組織に含まれる水分にガラス化を起
こさせて氷晶形成による傷害を避ける保存法である。水
を氷点下まで冷却すると、通常は結晶構造を持つ氷に相
転移し氷の結晶(氷晶)が形成される。細胞又は組織の
保存のためには、細胞質内や細胞近傍に形成される氷晶
による傷害の防止が必須である。そのために各種の方法
が開発されてきたが、ガラス化法もその中の一種で、現
在最も優れたものである。
【0006】水は、特殊な条件下では氷晶形成すること
なくガラス状の非晶質の固体になる。このような、結晶
化を伴わない固体化をガラス化(vitrification)と呼
ぶ。水のガラス化が生じる条件としては、急速な冷却、
高静水圧、および凍害保護物質の高濃度での存在が挙げ
られる。 これらはそれぞれ単独でもガラス化を起こさ
せることができるが、単独の場合は条件が非常に厳しく
なり細胞死をもたらす。すなわち、冷却完了までの間に
生じる細胞への悪影響、処理できる組織・細胞のサイズ
の制限から、細胞・組織の超低温保存においては単独使
用できない。そのため、これまでに開発されているガラ
ス化法では、高濃度の保護物質と急速冷却をたくみに併
用することにより、これらの負の側面を緩和し、それぞ
れについて必要とされる条件が実用的なレベルになって
いる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記緩
慢凍結法については、細胞内氷晶形成を回避することが
できるが、緩慢な速度での冷却は長い処理時間と特殊な
装置を必要とし実用的には不満足な結果しか得られてい
ない。
【0008】また、急速冷却法は、微小な細胞に対して
有効に作用するが、ガラス化法で、高濃度の保護物質と
急速冷却とを併用しても、冷却保存液に高濃度のジメチ
ルスルホキシド、アセトアミド、プロピレングリコー
ル、ポリエチレングリコールを含有するため、毒性が高
く、細胞や組識を損傷してしまう可能性があり、卵巣の
ような大きな組織の凍結保存には応用できていない。
【0009】したがって、細胞や組識の損傷を防止し、
完全な形で細胞、特に、保存の困難な動物類の生殖細胞
を保存し得る冷却保存液の開発が求められている。
【0010】しかし、このような冷却保存液はこれまで
知られていない。
【0011】そこで、本発明は、微小な細胞の保存のみ
ならず、大きな組織の保存に対しても有効な冷却保存液
を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の冷却保存液は、細胞膜透過性凍害保護物
質、氷晶形成抑止能力を有する凍害保護物質、及び細胞
膜非透過性脱水促進物質とを含有することを特徴とす
る。
【0013】また、本発明の好ましい実施態様として、
細胞膜透過性物質が、メタノール、エタノール、ホルム
アミド、又はアセトアミドからなる群から選択される少
なくと1つであることを特徴とする。
【0014】また、本発明の好ましい実施態様として、
氷晶形成抑止能力を有する物質が、多価アルコール、又
はジメチルスルフォキシドの少なくとも1つであること
を特徴とする。
【0015】また、本発明の好ましい実施態様として、
多価アルコールが、エチレングリコール、プロピレング
リコール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール及
びグリセロールからなる群から選択される少なくとも1
つであることを特徴とする。
【0016】また、本発明の好ましい実施態様として、
細胞膜非透過性脱水促進物質が、ショ糖であることを特
徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明の冷却保存液は、細胞膜透
過性物質、氷晶形成抑止能力を有する物質、及び細胞膜
非透過性脱水促進物質とを含有する塩類溶液である。
【0018】本発明の冷却保存液は、保存する対象が細
胞の場合に限らず、細胞より大きい組織に対しても適用
することができる。また、本発明の冷却保存液は、保存
対象が細胞であれば、動物細胞、植物細胞を問わず適用
することができ、特に限定されることはない。保存対象
は、精子、卵子、胚、血球細胞、幹細胞類のなどの微小
な細胞から、卵巣等の細胞より大きな組織を対象とする
ことができる。以下では、組織のうち保存価値の高い卵
巣を主として説明するが、本発明はこれに限定される意
図ではない。
【0019】また、凍結保存とは、主として「氷晶形
成」させることを意味する場合があり、一方、ガラス化
法は、氷晶形成をなるべく生じさせないように、保存さ
せることを意味する。したがって、本明細書において、
氷晶形成をなるべく生じさせない場合の保存を、特に超
低温保存と定義して用いることとする。また、組織・細
胞の凍結保存を行う際に、ある種の化合物を冷却液に添
加することにより、冷却及び凍結により生じる傷害、す
なわち凍害を防止あるいは低減することができる。この
ような化合物を凍害保護物質と定義して用いることとす
る。凍害保護物質の作用機序としては氷晶形成の抑制、
タンパクの変性防止等が挙げられるが、ある化合物が凍
害保護物質であるか否かは、その物質が凍害から細胞を
保護する能力があるかによって決定され、その作用機序
がどのようなものであるかは問わない。
【0020】細胞膜透過性物質は、細胞又は組織内部に
おいて凍害保護を行なうために用いる。細胞膜透過性物
質は、凍害保護物質の1つである。超低温保存の対象と
する細胞又は組識に対して、凍害保護物質が短時間に均
質に分布されるようにするためである。細胞膜透過性物
質は、一般的には、低分子量の物質が好ましいが、細胞
及び組識の生体膜を通過することが容易な凍害保護物質
であれば、特に限定されない。
【0021】細胞膜透過性物質は、細胞又は組織の生体
膜透過性が優れていれば、特に限定されることはない
が、メタノール、エタノール、ホルムアミド、アセトア
ミドを挙げることができる。分子量が小さく組織又は細
胞中への透過性に優れ、細胞への毒性が比較的低いとい
う観点から、細胞膜透過性物質としては、好ましくは、
メタノールが挙げられる。
【0022】氷晶形成抑止能力を有する物質は、細胞又
は組織内及びその近傍において超低温保存中に氷晶形成
が生じるのを防止するために用いる。氷晶形成抑止能力
を有する物質も、凍害保護物質の1つである。この氷晶
形成抑止能力を有する物質は、細胞膜透過性物質と併用
することにより、各成分による毒性が許容範囲となる濃
度の溶液において氷晶形成抑制を可能とする。
【0023】氷晶形成抑止能力を有する物質には、多価
アルコール又はジメチルスルフォキシドを挙げることが
できる。これら氷晶形成抑制能力を有する物質の少なく
とも1つを用いることができる。多価アルコール、ジメ
チルスルフォキシドなどを単独で用いても良く、これら
を併用しても良い。併用する場合には、多価アルコール
のうち1つと、ジメチルスルフォキシドとの組み合わせ
が、保存能力を向上させるという観点から好ましい。そ
の他の任意の組み合わせによって使用する場合には、同
等の保存能力を有する。
【0024】多価アルコールとしては、エチレングリコ
ール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、2,
3-ブタンジオール、グリセロールからなる群から選択さ
れる少なくとも1つを挙げることができる。これらを単
独で用いても良くこれらを任意に組み合わせて用いても
良い。これらを、メタノールなど他の物質と組み合わせ
て低濃度で使用することにより、各成分による毒性が許
容範囲となる濃度の溶液において保存能力を向上させる
ことができる。
【0025】多価アルコール、ジメチルスルフォキシド
などの氷晶形成抑止物質に併用することができる成分と
しては、ポリエチレングリコール、フィコール、デキス
トラン、ヒドロキシエチルスターチ、ポリビニルアルコ
ール、ポリビニールビロリドン、パーコール、アルブミ
ンなどを挙げることができる。ガラス化を行なうために
冷却保存液に含まれる保護物質濃度が十分でない場合
に、これらの成分を添加すると保存能力をさらに向上さ
せることができる。これらの成分及び成分の用量は、氷
晶形成抑止物質の量、保存対象と組織の種類などに応じ
て適宜決定することができる。
【0026】細胞膜非透過性脱水促進物質は、細胞を適
度に脱水させることにより、細胞内での氷晶形成を抑制
するとともに、細胞内への過剰な保護物質浸透による傷
害を抑制するために用いる。また、細胞膜非透過性脱水
促進物質は、細胞外液の塩濃度を過度に上昇させずに細
胞の脱水を促進し、細胞内氷晶形成の抑制及び透過性保
護物質の毒性低減を補助するために必要である。基礎溶
液として使用する細胞培養液、緩衝液などの塩類溶液は
そのままでは細胞質とほぼ同じ浸透圧であるため脱水促
進効果を持たない。また細胞培養液あるいは緩衝塩類溶
液の溶質濃度を上昇させて細胞の脱水を行おうとする
と、細胞外液の塩濃度が過度に上昇し細胞に悪影響をお
よぼす可能性が高いので不適当である。細胞膜非透過性
脱水促進物質としては、ショ糖、トレハロース、ラフィ
ノース、ラクトース、フルクトースなどを挙げることが
できる。
【0027】上記細胞膜透過性物質、氷晶形成抑止能力
を有する物質及び細胞膜非透過性脱水促進物質の比率
は、保存する細胞、組織などの種類により適宜変更して
使用することができる。細胞膜透過性物質及び氷晶形成
抑止能力を有する物質の用量は、用いる物質の細胞毒性
をパラメータとして許容限界を設定することができる。
また、氷晶形成抑止能力を有する物質の用量は、超低温
保存に必要とされる濃度を勘案して適宜設定することが
できる。
【0028】一般に、これらの比率は、細胞膜非透過性
脱水促進物質を1として固定して考えると、細胞非透過
性脱水促進物質:細胞膜透過性物質:氷晶形成抑止能力
を有する物質=1:0.1〜0.5:0.3〜0.85である。好ま
しくは、これらの比率は、細胞非透過性脱水促進物質:
細胞膜透過性物質:氷晶形成抑止能力を有する物質=
1:0.2〜0.3:0.5〜0.7である。
【0029】この冷却保存液は、細胞膜透過性保護物質
及び細胞膜非透過性脱水促進物質をダルベッコ-リン酸
緩衝生理食塩水等の塩類溶液と適宜混和して作製するこ
とができる。塩類溶液を細胞培養液または緩衝液とする
ことは、組織内の細胞の細胞質のイオン組成の過大な変
動を防ぐために必要である。細胞培養液および緩衝液
(緩衝塩類溶液)については、細胞の培養や保存に使用
可能な組成が従来より多数開発されており、これらのい
ずれかを使用すればよい。いずれの組成を用いるかによ
り、保護効果に影響が生じる可能性はあるが、決定的な
因子ではないと考えられる。前記塩類溶液は、例えば、
NaCl、KCl、Na2HPO4、NH2PO4 、MgCl2・6H2O及びCaCl2
を含有することができる。
【0030】1リットル中の水の各成分の含有量につい
ては、好ましくは、NaClは、6000〜10000mg/l、KClは、
100〜300mg/l、Na2HPO4 は、1000〜1300、NH2PO4は、10
0〜300、MgCl2・6H2Oは、50〜150、CaCl2は、50〜150で
ある。このように調製した塩類溶液のpHは、好ましくは
6〜8、さらに好ましくは、pH7〜7.5である。このよう
な範囲としたのは、生体内での状態に近い範囲とするた
めである。これらの範囲で適宜変更して使用することが
できる。なお、水は、蒸留水、純水、超純水などを特に
限定されないが、好ましくは、超純水である。超純水
は、蒸留水をミリポア製ミリQフィルターなどのフィル
ターを通して濾過することにより得られる。
【0031】なお、細胞非透過性脱水促進物質、細胞膜
透過性物質及び氷晶形成抑止能力を有する物質が含まれ
ていれば良く、本発明の冷却保存液には、従来の他の成
分、例えば、緩衝剤、抗生物質、抗菌剤、高酸化剤、血
清、糖及びその分解産物、ビタミン、タンパク質、アミ
ノ酸、pH指示薬、キレート剤、浸透圧調節剤などを含む
こともできる。
【0032】冷却保存液の使用方法 次に、本発明の冷却保存液を用いた保存方法について説
明する。本発明の冷却保存液は、原則として常法の冷却
保存法に組み込み使用することができる。
【0033】即ち、保存の対象となる細胞又は組織など
を、本発明による冷却保存液が入った保存用容器中に封
入した後、液体窒素に投入して急速冷却して長期間液体
窒素中にて保存する。保存した細胞又は組織を使用する
場合、水中で急速融解した後、素早く培養液中に浸漬し
て、冷却保存液中に含まれる様々な添加物質を除去す
る。
【0034】前記添加物質を除去した後、細胞又は組織
を取り出し体外受精に供する。但し、組織を超低温保存
を行なう際に、そのまま適用できない場合には、以下の
ような他の処理を施すことができる。
【0035】他の処理としては、超低温保存前について
は、脱水処理及び浸漬処理などの前処理、超低温保存後
については、洗浄処理などの後処理を挙げることができ
る。
【0036】超冷凍保存前に、脱水処理や浸漬処理を行
なう理由は、本発明の冷却保存液を直接適用した場合、
細胞、組織の種類によっては、細胞及び組織の表面側の
冷却保存液の濃度が高くなり、一方、細胞及び組織の内
部での冷却保存液の濃度が低くなり、細胞及び組織内の
状態が均質化されない場合があるからである。均質化さ
れなければ、細胞又は組識内で冷却保存液の行き届かな
い部分において、完全な保存が困難となるからである。
【0037】脱水処理は、保存する細胞又は組織内の状
態を均質化するために行なう。細胞又は組織内の状態を
均質にできれば、脱水処理の条件は特に限定されない。
脱水処理を行なう場合には、室温(15℃〜25℃)が好まし
い。また、脱水処理は、細胞膜非透過性脱水促進物質を
含む塩類溶液を用いるのが好ましく、例えば、0.5Mシ
ュークロース添加ダルベッコ-リン酸緩衝生理食塩水に1
0〜30分間浸漬して行なうことができる。脱水時間は、
組織内の状態を均質化するために要求される時間で特に
限定されない。
【0038】次に、浸漬処理も保存する組織内の状態を
均質化するために行なう。特に浸漬処理は、保存対象で
ある細胞又は組織の内部の水分、及び保護物質の分布を
均一にするために行なう。浸漬処理を行なう場合、室温
(15℃〜25℃)が好ましい。また、浸漬処理には、冷却保
存液の構成成分の1部又は全てからなる溶液を用いるの
が好ましく、例えば、冷却保存液を用いることができ
る。冷却保存液に保存する細胞や組織を数分間〜数十分
間の間、浸漬することにより浸漬処理を行なうことがで
きる。保存対象である細胞や組織により浸漬の処理時間
は異なる。必要以上に浸漬すると、保存対象によって
は、損傷を受ける場合があるので、細胞又は組織に応じ
て上限を設定する。
【0039】卵巣組織の場合には、浸漬処理時間は、2
分〜7分間が好ましい。特に好ましくは、処理時間は5
分前後である。
【0040】また、超低温保存後の洗浄処理は、保存後
の組織又は細胞から冷却保存液中に含まれる様々な添加
物質を除去するために行なう。洗浄処理は、室温(15℃
〜25℃)で、5〜15分間程度行なうことができる。洗浄処
理は、異なる洗浄液によって、複数回行なっても良い。
例えば、始めに、0.5Mシュークロース添加ダルベッコ
−リン酸緩衝生理食塩水を使用し、その後ダルベッコ−
リン酸緩衝生理食塩水を使用して行なうことができる。
このようにすると、非透過性物質を含む溶液を用いた洗
浄により浸透圧ショックによる細胞侵害を防ぐことがで
きると考えられる。また、非透過性物質自体も最終的に
は組織から除去する方が好ましいからである。
【0041】但し、あまり多く洗浄を行なうと、細胞及
び組織を損傷する虞が有る。したがって、洗浄時間、洗
浄回数の上限は、細胞及び組識を損傷しない程度に設定
される。
【0042】
【実施例】ここで、本発明の一実施例を説明するが、本
発明は、下記の実施例に限定して解釈されるものではな
い。
【0043】比較例 比較例として、超低温保存せずに移植した場合の移植後
の組織について試験した。まず、8〜11週齢雌性ddY系マ
ウスを麻酔し、麻酔下において左側卵巣を摘出した。こ
の左側卵巣を摘出したマウスの右腎被膜下に自家移植
し、さらに右側卵巣を切除した。膣スメア検査を手術2
日後から12日後まで毎日1回実施し、性周期の回帰(角化
細胞からなる膣スメアの出現)の有無を判定した。性周
期の回帰したマウスでは移植した卵巣が機能を果たして
いることが分かった(エストロゲン分泌を行なってい
る)。手術後12〜14日目に解剖し、移植部における卵巣
組織の形態を判定した。移植後の結果は、スメア検査及
び卵巣形態から卵巣機能ありと判定された割合は、100
%であった(6匹中6匹)。
【0044】実施例1 10〜11週齢雌性ddY系マウスを麻酔し、麻酔下において
左側卵巣を摘出した。0.5Mシュークロース添加ダルベッ
コーリン酸緩衝生理食塩水に室温で20分間浸漬して脱
水処理した。そして、0.5Mシュークロース添加生理食塩
水:メタノール:エチレングリコール=1:0.25:0.66
である組成の冷却保存液を準備した。これらの冷却保存
液に摘出した前記左側卵巣を室温で、5分間浸漬した。
その後、ガラス試験管に(これらの冷却保存液と共に)前
記左側卵巣を入れ、液体窒素中で急速冷却した。さら
に、30分以上、−196℃で超低温保存した。その後、組
成A,B及びCで保存した各左側卵巣を室温の水中で加
温し融解した。次に、各左側卵巣を、0.5Mシュークロー
ス添加ダルベッコ−リン酸緩衝生理食塩水中に室温で10
分間浸漬して、さらにダルベッコリン酸緩衝生理食塩水
中に室温で10分間浸漬して洗浄した。左側卵巣を摘出し
たマウスの右腎被膜下に自家移植し、右側卵巣を切除し
た。膣スメア検査を手術2日後から12日後まで毎日1回実
施し、性周期の回帰(角化細胞からなる膣スメアの出現)
の有無を判定した。性周期の回帰したマウスでは移植し
た卵巣が機能を果たしていることが分かった(エストロ
ゲン分泌を行なっている)。手術後12日目に解剖し、移
植部における卵巣組織の形態を判定した。移植後の結果
は、スメア検査及び卵巣形態から卵巣機能ありと判定さ
れた。卵巣機能有りと判定された割合は、33%であっ
た。
【0045】
【発明の効果】本発明の保存液によれば、微小な細胞の
保存のみならず、大きな組織の保存に対しても有効に保
存効果を発揮するという有利な効果を奏する。
【0046】また、本発明の保存液を用いることで、細
胞養鯉大きな組織、例えば、卵巣及び卵胞を含む卵巣組
織などの小片の超低温保存を簡便かつ好成績に実現でき
るという有利な効果を奏する。
フロントページの続き Fターム(参考) 4B065 AA90X BD12 BD27 CA60 4H011 BB03 BB06 BC03 BC07 BC08 CA01 CB05 CB08 CD02 CD06

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】細胞膜透過性物質、氷晶形成抑止能力を有
    する物質、及び細胞膜非透過性脱水促進物質とを含有す
    ることを特徴とする組織の冷却保存液。
  2. 【請求項2】細胞膜透過性物質が、メタノール、エタノ
    ール、ホルムアミド、又はアセトアミドからなる群から
    選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求
    項1記載の冷却保存液。
  3. 【請求項3】氷晶形成抑止能力を有する物質が、多価ア
    ルコール又はジメチルスルフォキシドの少なくとも1つ
    であることを特徴とする請求項1又は2項に記載の冷却保
    存液。
  4. 【請求項4】多価アルコールが、エチレングリコール、
    プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタ
    ンジオール及びグリセロールからなる群から選択される
    少なくとも1つであることを特徴とする請求項3記載の
    冷却保存液。
  5. 【請求項5】細胞膜非透過性脱水促進物質が、ショ糖で
    あることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載
    の冷却保存液。
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