JP2001240911A - ステンレス鋼製被赤熱部材及びその製造方法 - Google Patents
ステンレス鋼製被赤熱部材及びその製造方法Info
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Abstract
Cr系酸化物を主体にする酸化皮膜を生成させ、燃焼筒
等に使用したときの赤錆発生を抑制する。 【構成】 このステンレス鋼製被赤熱部材は、Cr:8
〜35%を含むステンレス鋼板を基材とし、膜厚10〜
300nmの酸化皮膜が基材表面に形成されている。基
材としては、たとえばC:0.12%以下,Si:1.
0%以下,Mn:1.5%以下,Ni:0.6%以下,
Cr:9〜20%,Al:0.5%以下,N:0.12
%以下,必要に応じNb:1.0%以下,Ti:1.0
質量以下,Cu:2.0%以下,Mo:3.0%以下の
1種又は2種以上を含むステンレス鋼板が使用される。
ステンレス鋼板を酸素濃度2体積%以上,水蒸気濃度1
5体積%以下の雰囲気中で300〜650℃の温度範囲
に0.1〜10分加熱することにより製造される。
Description
等のように赤熱雰囲気に曝されても赤錆が発生しがたい
燃焼機器に使用されるステンレス鋼製被赤熱部材及びそ
の製造方法に関する。
イト系ステンレス鋼であるSUS430を始め、高温酸
化特性に優れたFe−Cr−Alフェライト系ステンレ
ス鋼やFe−Cr−Siフェライト系ステンレス鋼等が
ストーブの機種や部位によって使い分けられている。燃
焼筒は、外筒及び内筒の二重構造が多用されており、放
射熱を直接利用し且つ外見上で温かみを感じさせるため
外部から外筒が直接観察されるように設計されている。
燃焼筒には、赤熱雰囲気に長時間曝されても赤錆(Fe
の酸化)が発生せず、酸化増量が少ないこと(以下,耐
赤熱性という)が要求される。耐赤熱性に優れた外筒を
得るためには、優れた高温酸化特性及び耐スケール剥離
性の鋼材を使用する必要があり、成分系としてはFe−
Cr−Alフェライト系ステンレス鋼(特開平1−30
9943号公報、外)が知られている。内筒に関して
は、完全には外から見えないために外見上の温かみは必
ずしも必要とされないが、加熱中に酸化皮膜が厚くなる
と燃焼筒の熱容量が大きくなり、熱伝導率の低い酸化皮
膜の厚膜化によって燃焼筒の温度が上がりにくくなる。
また、酸化皮膜が不均一に厚く成長すると,外筒の打抜
き孔の隙間から放射される温かみの色合いがまばらにな
るという不具合も生じる。この点、外筒と同様に高温酸
化特性に優れた材料を内筒にも使用することが好まし
い。
ンレス鋼はコストが高い材料であることから、ストーブ
の燃焼温度が500〜800℃と比較的低い機種では、
Fe−Cr−Al系よりも安価なFe−Cr−Siフェ
ライト系ステンレス鋼や汎用のSUS430等が使用さ
れている。この場合、800℃以上で発生するCrの酸
化よりも、むしろ500〜800℃の温度域で発生する
Feの酸化が問題になる。赤錆は、燃焼機器で使用する
燃料に応じて発生度合いが異なるが、一般には低酸素で
且つ水蒸気を含む雰囲気で発生しやすいとされている。
500〜800℃に加熱される燃焼機器用材料の赤錆対
策には、前述のAl添加の外に種々の手段が採用されて
いる。
は、Si添加を紹介している。Si添加は、Al添加と
同様に赤錆の発生を抑制するばかりでなく高温酸化特性
自体にも有効であるが、材料コストが高くなることに加
え、素材の靭性や加工性を低下させる欠点がある。特公
昭59−43993号公報では、表面研磨等の加工層を
形成することによりフェライト系ステンレス鋼の赤錆を
抑制している。加工層による赤錆の抑制は、何れのフェ
ライト系ステンレス鋼に対しても有効であるが、SUS
430程度の酸化特性をもつ鋼材に対しては必ずしも十
分な耐赤錆性が付与されず、数時間〜数十時間の比較的
短時間加熱によっても赤錆が発生することが明らかにな
ってきている。更に、SUS430を800℃で予備酸
化処理して安定な皮膜を作っておくと、予備酸化温度よ
りも低い温度で生成するビロード状スケールが防止でき
ることも知られている(防食技術31(1082)、P
172〜179)。この方法は、SUS430等の汎用
フェライト系ステンレス鋼に対しても有効であるが、予
備酸化処理で生成した酸化スケールの剥離に起因する製
造工程設備及び製造組立てラインの汚染や、内筒を製造
する際のスポット溶接性に劣ることが欠点である。
に、Fe−Cr−Alフェライト系ステンレス鋼やFe
−Cr−Siフェライト系ステンレス鋼の使用により赤
錆の発生を抑制できるが、SUS430等の汎用ステン
レス鋼では赤錆の発生を抑制する方法は十分に確立され
ていない。この点、赤錆が発生しがたく、加工性及び溶
接性に優れ、しかも安価な汎用ステンレス鋼の開発が望
まれている。本発明は、このような要求に応えるべく案
出されたものであり、基材表面に形成される酸化皮膜の
構造,組成及び膜厚を特定することにより、汎用ステン
レス鋼であっても赤熱性が改善されたステンレス鋼製被
赤熱部材を提供することを目的とする。
被赤熱部材は、その目的を達成するため、Cr:8〜3
5質量%を含むステンレス鋼板を基材とし、膜厚10〜
300nmの酸化皮膜が基材表面に形成されていること
を特徴とする。基材としては、たとえばC:0.12質
量%以下,Si:1.0質量%以下,Mn:1.5質量
%以下,Ni:0.6質量%以下,Cr:9〜20質量
%,Al:0.5質量%以下,N:0.12質量%以
下,必要に応じてNb:1.0質量%以下,Ti:1.
0質量以下,Cu:2.0質量%以下,Mo:3.0質
量%以下の1種又は2種以上を含み、残部が実質的にF
eの組成をもつステンレス鋼板が使用される。このステ
ンレス鋼製被赤熱部材は、ステンレス鋼板を酸素濃度2
体積%以上,水蒸気濃度15体積%以下の雰囲気中で3
00〜650℃の温度範囲に0.1〜10分加熱するこ
とにより製造される。
板に種々の仕上げを施したものを素材とし、赤錆発生の
再現試験により耐赤錆性に及ぼす合金成分及び表面仕上
げの影響を種々調査検討した。その結果、Crを主体と
する安定な酸化皮膜をテンパーカラー程度に非常に薄く
形成させるとき、溶接性や加工性が劣化することなく、
汎用ステンレス鋼板であっても赤錆の発生が抑制される
ことを見出した。耐赤錆性に有効な酸化皮膜は、水蒸気
量が規制された雰囲気でステンレス鋼板を予備酸化処理
することにより生成する。予備酸化で生成させる酸化物
は、ストーブ燃焼雰囲気中でFe酸化物を生成させない
よう,水蒸気酸化に対して保護性を付与することが必要
である。そこで,予備酸化処理で生成させる酸化物の種
類を検討した結果、金属拡散係数の小さいM2O3型
(M:金属元素)、すなわちコランダム型構造をもち、
且つ金属元素M中のCr濃度が50原子%以上(好まし
くは、70原子%以上)である場合に優れた保護性が発
現されることを解明した。
テンレス鋼の合金成分,含有量,予備酸化処理条件等を
説明する。 Cr:8〜35質量% 耐高温酸化性を向上させる有効成分であると共に、耐赤
錆性の改善に有効なCr系酸化皮膜を基材表面に生成す
る作用を呈する。基材表面にCr系酸化皮膜を安定して
生成させるためには,8質量%以上のCr含有量が必要
である。しかし,過剰量のCrを添加するとステンレス
鋼板が硬質化するばかりでなく、475℃脆化が生じや
すくなる。そこで、本発明においては、Cr含有量の上
限を35質量%に設定した。なかでも、9〜20質量%
(更に好ましくは16〜18質量%)のCr含有量が好
ましい。Cr以外の合金成分は、特に本発明に制約を加
えるものではなく、通常のフェライト系ステンレス鋼板
に含まれる含有量に設定される。具体的には、次の通り
である。
イト相が多量に生成すると酸化特性及び耐スケール剥離
性を劣化させることから、C及びNは低いほど好まし
い。しかし、C及びNの極端な低減は、製造コストを上
昇させる原因となる。他方、SUS430クラスの汎用
ステンレス鋼板では0.12質量%まで許容できる。好
ましくは、C及びN共に0.1質量%以下にする。ま
た、Ti,Nb等の炭窒化物生成元素を含む鋼種では、
Ti,Nb等の添加量を節減して良好な靭性を確保する
ためC及びNを更に低くし、C:0.03質量%以下,
N:0.03質量%以下が好ましい。
量添加によって耐高温酸化性及び耐赤錆性が飛躍的に改
善される。しかし、過剰量のSi添加は、鋼板を硬質化
して加工性及び靭性を劣化させる。本発明では、Siを
過剰添加することなく耐赤錆性が改善されるため、Si
含有量を1.0質量%以下(好ましくは0.8質量%以
下)に設定した。 Mn:1.5質量%以下 スケールの密着性を向上させ耐高温酸化性に有効な合金
成分であるが、耐赤錆性に関しては初期にFe系酸化物
の生成を助長させるきらいがある。また、オーステナイ
ト生成元素であるため、加熱中にオーステナイト相が生
成する場合には却ってスケール密着性を劣化させる。更
に、過剰量のMn含有は、ステンレス鋼板を硬質化する
原因でもある。このようなことからMnを積極的に添加
する必要はなく、Mn含有量を1.5質量%以下(好ま
しくは1.1質量%以下)に設定した。
が、Mnと同様にオーステナイト生成元素であるため、
スケール密着性に関してはNiの過剰添加は好ましくな
い。また、高価な元素であるNiを過剰に添加すること
は、鋼材コストを上昇させることにもなる。そこで、本
発明においては、Ni含有量0.6質量%以下(好まし
くは0.5質量%以下)に設定した。 Al:0.5質量%以下 Siと同様に高温酸化特性の改善に非常に有効な合金成
分であり、Alの多量添加によって耐高温酸化性及び耐
赤錆性が飛躍的に改善される。しかし、Alの多量添加
は、ステンレス鋼板を硬質化して加工性及び靭性を劣化
させる原因である。この点、本発明では、Alの過剰添
加を必要とせずに耐赤錆性が改善されることから、Al
含有量を0.5質量%以下(好ましくは0.1質量%以
下)に設定する。
窒化物として固定する強力な炭窒化物生成作用を呈す
る。また、フェライト相を安定化し、耐高温酸化性の改
善にも有効である。しかし、Nbの過剰添加はステンレ
ス鋼板を硬質化し、加工性及び靭性の劣化を招く。そこ
で、Nbを添加する場合には、Nb含有量を1.0質量
%以下(好ましくは0.20〜0.55質量%)に設定
する。 Ti:1.0質量以下 必要に応じて添加される合金成分であり、Nbと同様に
C及びNを炭窒化物として固定する強力な炭窒化物生成
作用を呈する。しかし、Tiの過剰添加はステンレス鋼
板を硬質化し、加工性及び靭性の劣化を招く。そこで、
Tiを添加する場合には、Ti含有量を1.0質量%以
下(好ましくは0.05〜0.40質量%)に設定す
る。
の改善にはさほど寄与しないものの、靭性,加工性,高
温強度の改善に有効であり,耐熱用途では好適な添加成
分である。しかし、Cuの過剰添加はステンレス鋼板を
硬質化し、加工性及び靭性の劣化を招く。そこで、Cu
を添加する場合には、Cu含有量を2.0質量%以下
(好ましくは1.5質量%以下)に設定する。 Mo:3.0質量%以下 耐高温酸化性及び高温強度の改善に有効で、耐熱用途に
おいて必要に応じて添加される合金成分である。しか
し、Moの過剰添加はステンレス鋼板を硬質化し、加工
性及び靭性を劣化させる。そこで、Moを添加する場合
には、Mo含有量を3.0質量%以下(好ましくは2.
5質量%以下)に設定する。
に掲げた合金成分の外、一般的な不純物元素であるP,
S,O等を可能な限り低減することが好ましい。より好
ましい範囲としてはP:0.04質量%以下,S:0.
03質量%以下,O:0.02質量%以下である。ま
た、加工性及び靭性を高いレベルで確保するためには、
P,S,O等の量をより厳しく規制する。また、一般的
に耐熱性に有効な成分として知られているYや希土類元
素(REM)、熱間加工性及び靭性の改善に有効なC
a,Mg,B,Co等を必要に応じて添加してもよい。
程度の10〜300nmと非常に薄く、Crを主体とす
る安定な化合物からなり、水蒸気酸化雰囲気中でも十分
な保護性を呈する。この酸化皮膜は、優れた耐亀裂性を
示し、鋼素地の直接的な酸化反応、或いは下地鋼中のF
eが外方に拡散して酸化されることを抑制する保護皮膜
として機能する。金属拡散係数の小さなM2O3型のコラ
ンダム構造をもつ酸化皮膜は、金属拡散係数の大きいM
3O4型のスピネル構造に比較して保護皮膜としての機能
が優れている。Al,Si等の成分を多量に含まないF
e−Cr合金では、コランダム型酸化物は(Fe,C
r)2O3の構造となり、Fe及びCrが混在する。Fe
2O3よりもCr2O3の方が保護性に優れているので、
(Fe,Cr)2O3に占めるCr濃度を50原子%以上
(好ましくは、70原子%以上)にする。酸化皮膜の膜
厚が10nm未満では十分な耐赤錆性が得られず、逆に
300nmを超える厚膜では加工金型の寿命低下や溶接
不良が生じやすくなる。酸化皮膜の好ましい膜厚は30
〜100nmの範囲にある。このような酸化皮膜を生成
させることにより、水蒸気を含む高温雰囲気に曝されて
もFe系酸化物の生成による赤錆の発生が抑えられ、燃
焼筒等で要求される放熱特性も良好に維持される。
た酸化皮膜を生成させるため、ステンレス鋼板を酸素濃
度2体積%以上,水蒸気濃度15体積%以下の雰囲気中
で300〜650℃の温度範囲に0.1〜10分加熱す
る。酸素濃度及び水蒸気濃度はFe及びCrの酸化度に
影響を及ぼし、2体積%未満の酸素濃度や15体積%を
超える水蒸気濃度ではFe系の酸化物が生成しやすく、
耐赤熱性が十分に改善されない。好ましくは、酸素濃度
を5体積%以上,水蒸気濃度を10体積%以下に設定す
る。また,必要な膜厚の酸化皮膜を生成させるため、加
熱温度を300〜650℃(好ましくは400〜600
℃),加熱時間を0.1〜10分(好ましくは0.5〜
3分)に設定する。300℃未満の加熱温度や0.1分
に達しない短時間加熱では必要な膜厚の酸化皮膜が生成
されず、逆に650℃を超える加熱温度や10分を超え
る長時間加熱では酸化皮膜が厚くなりすぎ、加工性や溶
接性が劣化する傾向がみられる。予備酸化処理されるス
テンレス鋼板は、特に本発明に制約を加えるものはな
く、酸洗仕上げ,光輝焼鈍仕上げ,研磨仕上げ等の何れ
の表面仕上げも採用可能である。また,機械的性質が要
求されない用途では、冷延ままのステンレス鋼板も使用
できる。
た試験片を酸素濃度18体積%,水蒸気濃度10体積%
の雰囲気中で種々の温度に3分加熱する予備酸化処理を
施し、試験片の表面に酸化皮膜を生成させた。生成した
酸化皮膜は、皮膜が薄すぎてX線回折で同定できなかっ
た200℃予備酸化処理材を除き、全てコランダム型酸
化物であった。また、皮膜中の金属元素は、Cr及びF
eを主体としており、何れの酸化処理材もCr濃度が5
0原子%以上であった。酸化皮膜の膜厚は、加熱温度が
高くなるほど厚くなる傾向にあり、ほぼ5〜300nm
の範囲にあった。
験に供した。耐赤熱性試験では、低酸素濃度,高水蒸気
濃度の雰囲気に燃焼筒が曝されることを考慮し、水蒸気
濃度20体積%の無酸素雰囲気中で600℃に50時間
加熱する条件を採用した。そして、試験前後に測定した
試験片の重量から酸化増量を求め、耐赤錆性の指標とし
た。比較のため、予備酸化処理しない試験片についても
同じ耐赤熱性試験で酸化増量を求めた。図1の調査結果
にみられるように、予備酸化処理しない試験片及び予備
酸化が200℃の試験片では、耐赤熱性試験における酸
化増量が大きく、多量の赤錆が観察された。他方、30
0℃以上で予備酸化処理した試験片では酸化増量が0.
002kg/m2以下と少なく、試験片表面に赤錆が視
認されなかった。なお、赤錆は、耐赤熱性試験における
酸化増量が0.002kg/m2を超えるとき目視され
ることから、酸化増量0.002kg/m2をもって耐
赤熱性の良否を判定できる。酸化処理を施していない材
料及び200℃で酸化処理材は、不動態皮膜又は酸化皮
膜が薄すぎたため、水蒸気雰囲気中での酸化に対して十
分な保護機能をもたず、耐赤熱性試験でFeを主体にす
る酸化物が生成したものと考えられる。他方、300℃
以上で予備酸化した処理材では、ステンレス鋼中のCr
が優先的に拡散して十分な保護機能をもつ酸化皮膜が形
成されるため、水蒸気酸化雰囲気中でもFeの酸化進行
が抑制されたものと考えられる。
鋼を真空溶解炉で溶製し、熱延,焼鈍・酸洗,冷延工程
を経て板厚0.4〜2.0mmの冷延焼鈍鋼帯を製造し
た。表1中、鋼種番号10は、本発明で規定した量より
もCrが少ない鋼種である。
後、予備酸化処理した。表面仕上げ,予備酸化処理条件
及び予備酸化処理で生成した酸化皮膜の膜厚を表2に示
す。酸化皮膜の膜厚は、GDS(グロー放電発光分光
法)を用いて酸素濃度プロフィールを測定し、発光強度
の最大値が1/2にまで低下したときのスパッタリング
時間から算出した。
試験片を切り出し、耐赤熱性試験に供した。耐赤熱性試
験では、水蒸気濃度20体積%の雰囲気に窒素ガスを1
00リットル/分の流量で通過させながら、その雰囲気
中で試験片を600℃に50時間加熱した。試験前後で
測定した試験片の重量から耐赤錆性試験による重量変化
を求めると共に、目視観察で赤錆の発生状況を目視観察
し、赤錆の見られないものを○,赤錆が視認されたもの
を×として耐赤錆性を評価した。また、予備酸化処理後
のステンレス鋼板を打抜き加工する際の金型寿命の劣化
度を測定し、予備酸化処理していないステンレス鋼板を
打抜き加工した際の金型寿命に比較して90%以上のも
のを○,90%未満を×として加工性を評価した。更
に、予備酸化処理後のステンレス鋼板をスポット溶接し
た際にチリ発生を目安とする溶接電流の上限を測定し、
予備酸化処理していないステンレス鋼板を溶接した場合
と比較して90%以上を○,90%未満を×として溶接
性を評価した。
有量が不足する鋼種番号10のステンレス鋼板を用いた
試験番号16では、予備酸化処理によって生成する酸化
皮膜の膜厚を本発明で規定した範囲に調整しても,酸化
皮膜中のCr濃度が十分でないため耐赤錆性に劣ってい
た。予備酸化処理時の水蒸気濃度が20体積%と高い試
験番号17及び酸素濃度が0.3体積%と低い試験番号
18では、予備酸化処理の時点でFe系の赤錆が発生す
るため、その後の耐赤熱性試験で酸化皮膜による保護作
用が期待できず、耐赤錆性に劣っていた。予備酸化処理
の加熱温度が低すぎる試験番号19や加熱時間が短すぎ
る試験番号22では、十分な膜厚の酸化皮膜が生成され
ないことから耐赤錆性に劣っていた。逆に予備酸化処理
の加熱温度が高すぎる試験番号20や加熱時間が長すぎ
る試験番号21では、酸化皮膜が厚く成長しすぎ、加工
性及び溶接性に劣っていた。
テンレス鋼板を本発明で規定した条件下で予備酸化処理
した試験番号1〜15では、膜厚が10nm以上でCr
酸化物を主体とする安定な酸化皮膜が生成されるため、
酸化皮膜の保護作用が十分に発現され、耐赤熱性試験で
酸化増量が少なく、赤錆の発生も検出されなかった。ま
た、酸化皮膜の膜厚が300nm以下に調整されている
ため、予備酸化処理していないステンレス鋼板に比較し
て加工性及び溶接性の劣化も抑制されていた。
レス鋼製被赤熱部材は、Cr系の酸化物を主体とする膜
厚10〜300nmの酸化皮膜をステンレス鋼板表面に
生成させているので、酸化皮膜の保護作用によって水蒸
気含有高温雰囲気に曝されたときでも赤錆の発生が抑制
される。そのため、赤錆の発生が問題となる各種燃焼機
器などの用途に使用される。
板を650℃×50時間で耐赤熱性試験したときの酸化
増量に及ぼす予備酸化温度の影響を表したグラフ
Claims (4)
- 【請求項1】 Cr:8〜35質量%を含むステンレス
鋼板を基材とし、膜厚10〜300nmの酸化皮膜が基
材表面に形成されているステンレス鋼製被赤熱部材。 - 【請求項2】 C:0.12質量%以下,Si:1.0
質量%以下,Mn:1.5質量%以下,Ni:0.6質
量%以下,Cr:9〜20質量%,Al:0.5質量%
以下,N:0.12質量%以下,残部が実質的にFeの
組成をもつステンレス鋼板を基材とする請求項1記載の
ステンレス鋼製被赤熱部材。 - 【請求項3】 更にNb:1.0質量%以下,Ti:
1.0質量以下,Cu:2.0質量%以下,Mo:3.
0質量%以下の1種又は2種以上を含むステンレス鋼板
を基材とする請求項2記載のステンレス鋼製被赤熱部
材。 - 【請求項4】 請求項1〜3の何れかに記載の組成を
もつステンレス鋼板を酸素濃度2体積%以上,水蒸気濃
度15体積%以下の雰囲気中で300〜650℃の温度
範囲に0.1〜10分加熱することを特徴とするステン
レス鋼製被赤熱部材の製造方法。
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---|---|---|---|
JP2000056357A JP2001240911A (ja) | 2000-03-01 | 2000-03-01 | ステンレス鋼製被赤熱部材及びその製造方法 |
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