JP2001219642A5 - - Google Patents
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【発明の名称】高光沢インクジェット記録用紙
【特許請求の範囲】
【請求項1】基紙上に顔料を主成分とするインク吸収プレコート層が設けられ、該インク吸収プレコート層上にアクリルカチオン系吸放水性樹脂を主成分とする透明または半透明のインク受容層を順次積層したことを特徴とする高光沢インクジェット記録用紙。
【請求項2】前記顔料が、比表面積が50〜130m2/gの軽質炭酸カルシウムであり、インク吸収プレコート層中に70重量%以上含有され、前記軽質炭酸カルシウム100重量部に対して、バインダーを5〜50重量部含有することを特徴とする請求項1記載の高光沢インクジェット記録用紙。
【請求項3】前記インク吸収プレコート層を、キャストコーティング法により形成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の高光沢インクジェット記録用紙。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高光沢インクジェット記録用紙に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式は、フルカラー化が容易であり、記録時の騒音が小さい利点があり、汎用されている。
【0003】
このためのインクジェット記録用紙に対しては、滲みがなくインク吸収性に優れる、紙面の平滑性および光沢性に優れる、印字濃度が高い、印字耐水性が高いなどの要求がある。
【0004】
一般的にインクジェット記録用紙は、基紙に顔料およびバインダーを主成分とする塗工液を、ブレードコータ、エアナイフコータ、ロールコータ、バーコータ、グラビアコータ、ロッドブレードコータ、リップコータ、カーテンコータ、ダイコータなどを用いて塗工することにより得られる。
【0005】
ここに使用する顔料としては、非晶質シリカまたは合成シリカ、クレー、炭酸カルシウムなどが用いられる。比表面積の大きいシリカを使用すれば、インクの吸収性が高くなる点で好ましい。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のインクジェット記録用紙では、インクの吸収性が必ずしも十分でなく、滲み防止の点でも満足できるものではない。
【0007】
したがって、本発明の主たる課題は、インク吸収性に優れ、滲みが殆どなく鮮明な印字が可能であり、退色抵抗性にきわめて優れ、しかも記録紙表面の平滑性および光沢性に優れ、さらにシリカを顔料として用いる場合に比較してコストの低減も図ることができる、高光沢インクジェット記録用紙を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、基紙上に顔料を主成分とするインク吸収プレコート層と、アクリルカチオン系吸放水性樹脂からなるインク受容層を順次積層することで、優れたインク吸収性を示し、滲みが殆どなく鮮明な印字が可能であり、しかも退色抵抗性にきわめて優れることを知見した。また、かかる利点は顔料中の軽質炭酸カルシウムの割合が大きいときに特に顕著であるが、この種の塗工液を前述の塗布方式で塗布すると、記録紙表面の平滑性および光沢性が良好でないことも知見された。
【0009】
上記課題を解決した本発明は、次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
基紙上に顔料を主成分とするインク吸収プレコート層が設けられ、該インク吸収プレコート層上にアクリルカチオン系吸放水性樹脂を主成分とする透明または半透明のインク受容層を順次積層したことを特徴とする高光沢インクジェット記録用紙。
【0010】
(作用効果)
A.一般のアクリル樹脂に代表される高吸水性樹脂とは異なり、アクリルカチオン系吸放水性樹脂は、透明または半透明であり、自重の50〜100%程度の吸水性を示し、吸水した水を経時放出するという性質を有しているため、インクを受理したとき、インク成分をインク受容層の表面部における樹脂気孔間に残存させ、インク中の水分のみを気孔を通してインク吸収プレコート層、さらに基紙に浸透させる。したがって、インクの吸収性に優れ、かつ鮮明な印字が得られる。
【0011】
<請求項2記載の発明>
前記顔料が、比表面積が50〜130m 2 /gの軽質炭酸カルシウムであり、インク吸収プレコート層中に70重量%以上含有され、前記軽質炭酸カルシウム100重量部に対して、バインダーを5〜50重量部含有することを特徴とする請求項1記載の高光沢インクジェット記録用紙。
【0012】
(作用効果)
B.一般の軽質炭酸カルシウムの比表面積は0.5〜10m2/g以下である。しかるに、本発明で使用する軽質炭酸カルシウムの比表面積が50〜130m2/gはきわめて高い。その結果、インク受容層の表面部における樹脂気孔間を通り、インク吸収プレコート層に浸透するインク中の水分の吸収性に極めて優れ、かつ水分の拡散に伴う滲みも防止される。この効果を十分に発揮させるためには、本発明に係る軽質炭酸カルシウムを顔料中に70重量%以上含有させるのが好ましい。
【0013】
C.本発明の軽質炭酸カルシウムは結着性に優れるから、粉落ちのおそれからバインダーの使用量が顔料100重量部に対して、5〜50重量部、望ましくは20〜30重量部で足りる。その結果、バインダーの使用量を過度とすることがなく、結果としてバインダーに起因する退色の抵抗性が高くなる。
【0014】
<請求項3記載の発明>
前記インク吸収プレコート層を、キャストコーティング法により形成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の高光沢インクジェット記録用紙。
【0015】
(作用効果)
この発明においても、上記A〜Cのほか次記の利点がもたらされる。
D.インク吸収プレコート層に多数の気孔が形成されるために、通常の塗工方式では記録紙表面の平滑性および光沢性が良好でなくなる。そこで、本発明にしたがって、キャストコーティング法によりインク吸収プレコート層を塗工すると、通常のコート紙と比較して、記録紙表面のより高い平滑性および光沢性が得られ、しかも低コストで得ることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明は、基紙上に顔料を主成分とするインク吸収プレコート層を設けて、該インク吸収プレコート層上にアクリルカチオン系吸放水性樹脂からなるインク受容層を順次積層したことを特徴とする高光沢インクジェット記録用紙である。
【0017】
以下に、本発明について詳細に述べる。先ず、本発明で使用するアクリルカチオン系吸放水性樹脂は水分散型のアクリル酸エステルの共重合物であり、2−エチルヘキシルアクリレート、アクリル酸、β−ヒドロキシエチルアクリレート等のアクリル系モノマーを重合して作る。重合に用いるエステルを変更することで、容易に硬軟自在のアクリル酸エステル共重合物を得ることが出来る。
【0018】
本発明に使用するアクリルカチオン系吸放水性樹脂は、従来のポリアクリル酸に代表される高吸水性樹脂に比較して種々の顔料と混和性が良く、従来使用されている接着剤に比較して増粘性が少なく、かつ顔料との強い接着性を示す。特に炭酸カルシウムやシリカ系の顔料を用いた時に、強い接着性が発揮される。さらに、水溶性高分子やカチオン性ポリマー等の水性組成物と相溶性が極めて良く、増粘性が少なく極めて優れた耐水性を有する。
【0019】
さらに、本発明で用いるアクリルカチオン系吸放水性樹脂の際だった特徴は、顔料を主成分とするインク吸収プレコート層と併用したときに発揮される。即ち、上記のインク吸収プレコート層とのなじみが改善され結果的に強い接着強度が得られ、インク受容層の表面強度が改善され、耐水性の極めて優れたインク受容層が得られる。
【0020】
従来、顔料と接着剤を併用するインクジェット記録用紙では、水溶性高分子の接着剤、例えばポリビニルアルコール(以下PVAと記す),変性PVA,ヒドロキシエチルセルロース,CMC,セルロース誘導体,澱粉,カチオン澱粉等が使用されてきた。これら水溶性高分子のみを接着剤として使用した場合は、本発明のような表面強度が得られないばかりか、印字後の耐水性も劣るものであった。
【0021】
また、通常の水性エマルジョン型高分子ラテックス、例えばSBR、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体、エチレン−酢酸ビニル重合体、ポリビニルブチラールを接着剤として使用した場合には、乾燥皮膜、即ちインク受容層は耐水性を有するようになるが、反面、水性インクの吸収性が悪化したり、乾燥皮膜がラテックス特有の白化現象を起こしたりして解像能力が低下する難点がある。
【0022】
本発明のアクリルカチオン系吸放水性樹脂をインクジェット記録用紙のインク受容層に使用すると、ラテックス特有の難点が解決され、従来のラテックス系には見られない、極めて優れた耐水性改善効果と水性インクの吸収性改善効果が発揮される。
【0023】
本発明においては、顔料として比表面積が50〜130m2/g、より好適には70〜90m2/gの軽質炭酸カルシウムを用いる。
【0024】
本発明においては、インク吸収プレコート層中に顔料を含有させ、この顔料中に上記軽質炭酸カルシウムを顔料として70重量%以上使用することが必要であるが、特に合成シリカを用いない場合には、インクの吸収性を向上させるために、90重量%以上使用することが好ましい。
【0025】
上記軽質炭酸カルシウムの含有量を増加させるにつれて、ドットの濃度が高くなると共にシャープネスも良好になり、真円性も良好となるので、この場合には優れた記録画像を得ることができるが、70重量%未満の含有量とした場合には、ドットの濃度が不充分となりオリジナルからの色の再現性に劣る場合が生じる。
【0026】
本発明において、上記軽質炭酸カルシウムと併用することができる顔料は、合成シリカが好適である。合成シリカ、特に比表面積が150m2/g以上の合成シリカを使用した場合、インク吸収性を良くすることができる。しかし、その他の顔料をも用いることができ、通常の紙塗工に使用される顔料を適宜選択して用いることができる。この顔料としては、例えばカオリン、クレー、タルク、通常の軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、サチンホワイト等の無機顔料、プラスチックピグメント等の有機顔料をも挙げることができる。有機顔料を用いる場合には、その含有量を顔料中に6重量%以下とすることが好ましい。かかる顔料をインク吸収プレコート層に含有させることは、公知の方法により、当該顔料を塗液に混合・分散させることにより容易に行うことができる。
【0027】
本発明においては、顔料に基紙との結着性を付与し、インク吸収プレコート層を均一に形成するために塗工液にバインダーを添加する。上記バインダーの例としては、酸化でんぷん、エステル化デンプン等のデンプン類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、カゼイン、ゼラチン、大豆タンパク、スチレンマレイン酸樹脂およびその誘導体、スチレン・ブタジエン共重合体、メチルメタクリレートブタジエン共重合体などの共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体などのアクリル系重合体ラテックス、エチレン酢酸ビニル共重合体などのビニル系重合体ラテックス、酢酸ビニル系エマルジョン又はこれらの二種以上の混合物等を挙げることができる。
【0028】
使用されるバインダーの量は、顔料100重量部に対して5〜50重量部、より好適には20〜38重量部である。また、塗工液には、必要に応じて、顔料分散剤、保水剤、増粘剤、削泡剤、離型剤、防腐剤、着色顔料、耐水化剤、湿潤剤、蛍光染料、紫外線吸収剤等を添加することができる。
【0029】
本発明においては、記録画像の耐水性を向上させるために、インク受容層にカチオン性高分子を含有させることが好ましい。このようなカチオン性高分子電解質は、使用されるインク中の水溶性直接顔料や酸性染料分子中の−SO4Na基、−SO4H基、−NH4基等と反応して水に不溶な塩を形成し、インク中の染料が水に溶解するのを防止して記録画像の耐水性を向上させる。
【0030】
上記のカチオン性高分子電解質としては、例えば、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムハライド、ポリジアクリルジメチルアンモニウムハライド、ポリジメチルアミノエチルメタアクリレート塩酸塩、ポリエチレンイミン、ジシアンジアミドホルマリン縮合物、エピクロルヒドリン変性ポリアルキルアミン、ポリビニルピリジニウムハライド、ポリエチレンイミン第4級アンモニウム塩類、ポリアミン等を挙げることができる。
【0031】
以上のようにして調製された塗工液の塗工量は、基紙の片面当たり固形分換算で5〜50g/m2とするが、特に10〜30g/m2とすることが好ましい。また、顔料は3〜30g/m2とすることが好ましい。
【0032】
本発明においては、キャストコーティング法によりインク吸収プレコート層を基紙に設ける。このキャストコーティング法は、通常のキャストコーティング紙を製造する方法と同様の方法である。すなわち、本発明においては、基紙表面に設けられた湿潤状態のインク吸収プレコート層に鏡面加工された円筒外面を有する加熱されたドラムを圧接させて紙表面を光沢状に仕上げるウェットキャストコーティング法、基紙表面に設けられた湿潤状態のインク吸収プレコート層をゲル状態にした後、鏡面加工された円筒外面を有する加熱されたドラムを圧接させて紙表面を光沢状に仕上げるゲル化キャストコーティング法、および基紙表面に設けられた湿潤状態のインク吸収プレコート層を一旦乾燥させた後、再湿潤液を塗布することによって可塑化させられたインク吸収プレコート層に、鏡面加工された円筒外面を有する加熱されたドラムを圧接させてインク吸収プレコート層表面を光沢状に仕上げるリウェットキャストコーティング法の何れかの方法によってインク吸収プレコート層を設ける。
【0033】
塗工量としては、乾燥膜厚で0.5〜50μmとすることができる。より高光沢のインクジェット記録用紙を得るため、本発明に係る、アクリルカチオン系吸放水性樹脂を前記と同様のキャストコーティング法により塗工してよい。
【0034】
本発明に使用する基紙は、特に限定されるものではなく、通常インクジェット記録用紙に使用される木材パルプを主体とした中性紙、再生紙等、公知の紙を適宜選択して使用することができる。
【0035】
再生紙は、同一坪量の比較で不透明度が高く、裏抜け防止に優れているため特に好ましい。
【0036】
顔料として合成シリカを併用する場合、粘度調整および高い画像濃度を得るために、塗工液中にアルミニウム基を有するカチオン剤を含有させることが望ましい。
【0037】
このアルミニウム基を有するカチオン剤としては、有機アルミニウム化合物、アルミニウムの無機塩、アルミニウム酸化物、水酸化アルミニウム等のアルミニウム化合物等、あるいは上記例示の顔料の表面に上記化合物を電気的もしくはその他の方法により吸着させたり、表面の水酸基と反応させる処理を施したものを用いることができる。
【0038】
有機アルミニウム化合物は、従来公知のいずれの有機アルミニウム化合物でもよいが、好ましいものとしては、アルミニウムアルコレート化合物、アルミニウムキレート化合物、環状アルミニウムオリゴマー等のアルミニウム化合物であり、塩基性炭酸マグネシウムの表面に存在する吸着成分や表面官能基との反応性を有するものである。
【0039】
この有機アルミニウム化合物の好ましい具体例としては、例えば、アルミニウムエチレート、アルミニウムイソプロビレート、モノsec−テトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムsec−ブチレート等のアルミニウムアルコレート化合物:エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)等のアルミニウムキレート化合物:環状アルミニウムオキサイドイソプロピレート、環状アルミニウムオキサイドステアレート等の環状アルミニウムオリゴマー等が挙げられる。この他にもアルミニウムのステアリン酸塩やラウリン酸塩等を使用してもよい。
【0040】
アルミニウムの無機塩としては、その塩化物、硫酸化物、硝酸化物、アンモニウム塩、酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩などの他に、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム等のアルミン酸塩やミョウバン等の複塩等が挙げられ、これらは又結晶水を有するものであってもよい。
【0041】
アルミニウム酸化物とは、工業的には天然鉱物であるボーキサイトを熱苛性ソーダ処理して得られる水酸化アルミニウムあるいは金属アルミニウムペレットを純水中で火花放電させて得られた水酸化アルミニウム等を焼成して得られ、その製造方法自体は従来公知のものであり、種々の結晶系(α形、γ形、σ形、η形、θ形)を有するものや種々の粒子径、高密度、比表面積を有するものが市販されており、本発明ではこれらの全てのアルミナを含む。
【0042】
【実施例】
(実施例1)
原料パルプとしてフリーネス(CSF)370mlのLBKP85部(以下、「部」とは重量部を意味し、「%」とは重量%を意味する。)、フリーネス(CSF)440mlのNBKP15部を混抄して得た、米坪80g/m2の基紙に、次記のインク吸収プレコート層塗工液を、湿潤状態で鏡面加工され80℃に加熱された円筒外面を有するドラムに圧接させ、インク吸収プレコート層表面を光沢状に仕上げるウェットキャストコーティング法により塗工量8g/m2となるように塗工し、乾燥した。更にエアナイフコータにより、アクリルカチオン系吸放水性樹脂を塗工することでインク吸収プレコート層を形成した。
【0043】
インク吸収プレコート層塗工液は、顔料として軽質炭酸カルシウム(BET比表面積80m2/g、品名:ジェットコート30)100部および合成非晶質シリカ(ミズカシールP−78A:水澤化学社製)0部を含み、バインダーとしてポリビニルアルコール(r−1130:クラレ社製、固型分濃度10%)35部(対顔料部)を含み、カチオン性染料定着剤(スミレーズレジン1001:住友化学工業社製、固型分濃度30%)を10部(対バインダー部)含み、カチオン剤としてアルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(アルミキレートM:川研ファインケミカル社製)を固形分で4部(対バインダー部)含むものを使用した。
【0044】
アクリルカチオン系吸放水性樹脂としては、IJC−9C(一方社油脂工業製)を使用した。
【0045】
(他の実施例および比較例)
他の実施例および比較例は、前記実施例1で使用した軽質炭酸カルシウム、バインダー、合成非晶質シリカの配合量を変更したもの、および顔料として他の軽質炭酸カルシウム(TP−121、奥多摩工業社製)を使用したもの、アルミニウム基を有するカチオン剤としてのアルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレートを添加しないもの、さらにスーパーキャレンダー処理をしたものとした。
【0046】
<評価方法>
実施例、比較例で得られた高光沢インクジェット記録用紙の記録濃度、インク吸収性、光沢感、滲みは以下に示す方法で評価した。結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
註:※1…軽質炭酸カルシウム(TP−121、奥多摩工業社製)を使用。
※2…ウェットキャストコーティング法を採ることなく、スーパーキャレンダー処理を採用。
※3…アクリルカチオン系吸放水性樹脂に代えて、ポリアクリル酸系高吸水性樹脂を使用。
【0049】
[記録濃度]
キャノンフルカラープリンタBJF600を温度20℃、湿度20%条件下で使用して4色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)のべタ記録(大きさ3.0cm×3.0cm)を行ない、印字後30分経過後のインク浸透が安定した状態で記録部分をマクベス濃度計(RD915)にて記録濃度を測定した。表には4色の測定値の合計を示し、3.3以上を良とした。
【0050】
[インク吸収性]
イエロー、マゼンタ、シアンの各単色を印字し、印字直後から5秒毎にプリントした印字面に上質紙を貼合せ、インクが上質紙に転写するかどうかを観察する。(○:10秒未満、△:10〜30秒未満、×:30秒以上)インクが乾燥するまでの時間が10秒未満のものはインク吸収性に優れる。
【0051】
[印字部の光沢感(照り感)]
印字部の光沢感は印字部に対して20°の横角度から目視し、以下のように4段評価した。◎:銀塩方式のカラー写真と同レベルの照り感がある。○:カラー写真よりは劣るが、高い照り感がある。△:塗工紙印刷品並。×:一般PPC並。
【0052】
[滲み]
キャノンフルカラープリンタBJF600を温度20℃、湿度20%条件下で使用して3原色(シアン、マゼンタ、イエローの各インク)の重ね色でつくる赤、緑、紫をそれぞれ交互にべタ記録(大きさ3.0cm×3.0cm)を連続して記録し、印字後30分経過後のインク浸透が安定した状態で隣接するインクジェットインクが互いにもしくは片側に滲みだしを生じた度合を評価した。評価A−インクの滲みは全く無い。評価B−インクの滲みが若干見られる。評価C−インクの滲みがはっきりとある。
【0053】
<考察>
・比表面積が50〜130m2/gである軽質炭酸カルシウムの使用と一般軽質炭酸カルシウムの使用との対比
比表面積が50〜130m2/gである軽質炭酸カルシウムは、合成非晶質シリカに匹敵する比表面積と、炭酸カルシウムがカチオン性を有していることにより、インク(アニオン)の定着性の向上をもたらす。
比表面積が小さい一般炭酸カルシウムは、インクジェットインクの染料に対する吸着力が不足し、インクジェットインク中の水分と共に染料もインク受容層表面から深く浸透するために、染料の濃度が低くなり精細な画像が得られない。その使用により、光沢感は出るものの、インクジェットインクの吸収性、乾燥性には劣る。また、乾燥不良、インクの定着に問題が生じる。
【0054】
・比表面積が50〜130m2/gである軽質炭酸カルシウムの使用量を、70重量%以上とする、特に90重量%以上含有させることの理由
インクジェットインクの十分な吸収性と、インク受容層面でのセット性を得るためには、多孔性で微粒子の2次凝集状であることが好ましい。比表面積が50〜130m2/gである軽質炭酸カルシウムを使用すると、高いインクの受容性を示す。その使用量が70重量%未満では、塗工液調整時の分散性、安定性が劣る問題が生じ、操業性が極めて悪化する。特に塗料調整における安定性が得られたのが90重量%以上である。
【0055】
・顔料100重量部に対して、バインダーを5〜50重量部含有させる理由は、顔料の粉落ち防止を図るとともに、高いインクの受容性を確保するためである。すなわち、バインダーの成膜性により、多すぎると、多孔性表面の形成を阻害し、少なすぎると顔料の定着が悪くなり、粉落ちなどの問題が生じる。
【0056】
・合成シリカは、インク吸収性、乾燥性に優れ、顔料の不透明性による印字裏抜け防止効果を発揮する。合成シリカを過度に含有させると、光沢の発現を阻害する。また、炭酸カルシウムは、インクジェットインクの定着性、発色性や光沢の発現性に優れているものの、インク乾燥性に劣り高速印刷時に問題が生じる場合があるために、これを合成シリカに含有させることで補償することも意図している。合成シリカの含有量を30重量%未満とするのは、インクの発色性、光沢の維持を確保するためである。
【0057】
・アルミニウム基を有するカチオン剤を含有させると、インクの定着性、塗工液調整時の分散安定性効果が極めて高くなる。
【0058】
・キャストコーティング法と他のコーティング法との対比
従来の塗工および乾燥方法で製造したインクジェット記録用紙は、塗工面の平滑性、光沢感が低く、ドットのエッジが不明瞭のものが主であった。このことはインクの吸収速度と吸収量とを高めるためにインクジェット記録用塗工液中に顔料成分として無定形シリカや微粉ケイ酸などを配合することに起因している。またこれらの欠点を改善するためにキャレンダー、スーパーキャレンダーなどで処理を行なうと、塗工層の多孔構造が潰されてインクの吸収速度と吸収量の低下を招いてしまう。さらに、従来の塗工および乾燥方法でインクジェット記録用紙を製造すると、基紙よりも浸水伸度が高くなり、多色記録時にシワや波打ちなどの変形が生じ易く、寸法安定性の点で満足なものが得られないのが実情である。すなわち、従来の方法では塗工工程で基紙が伸長し、乾燥工程で急激に収縮するので、紙層内に不均一な歪が発生し、これが寸法安定性不良の要因となっている。このため従来の方法では多色高画質のインクジェット記録用紙に使用する基紙は浸水伸度の非常に小さいものを選択して用いなければ寸法安定性の点で不満足のものになってしまう。この点に関しては、特公平6−94229号公報に記載の内容が参照される。
これに対して、本発明のキャストコーティング法によれば、かかる問題を一挙に解決できる。
【0059】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明によれば、インク吸収性に優れ、滲みが殆どなく鮮明な印字が可能であり、退色抵抗性にきわめて優れ、しかも記録紙表面の平滑性および光沢性に優れる高光沢インクジェット記録用紙を得ることができ、さらにシリカを顔料として用いる場合に比較してコストの低減も図ることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】基紙上に顔料を主成分とするインク吸収プレコート層が設けられ、該インク吸収プレコート層上にアクリルカチオン系吸放水性樹脂を主成分とする透明または半透明のインク受容層を順次積層したことを特徴とする高光沢インクジェット記録用紙。
【請求項2】前記顔料が、比表面積が50〜130m2/gの軽質炭酸カルシウムであり、インク吸収プレコート層中に70重量%以上含有され、前記軽質炭酸カルシウム100重量部に対して、バインダーを5〜50重量部含有することを特徴とする請求項1記載の高光沢インクジェット記録用紙。
【請求項3】前記インク吸収プレコート層を、キャストコーティング法により形成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の高光沢インクジェット記録用紙。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高光沢インクジェット記録用紙に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式は、フルカラー化が容易であり、記録時の騒音が小さい利点があり、汎用されている。
【0003】
このためのインクジェット記録用紙に対しては、滲みがなくインク吸収性に優れる、紙面の平滑性および光沢性に優れる、印字濃度が高い、印字耐水性が高いなどの要求がある。
【0004】
一般的にインクジェット記録用紙は、基紙に顔料およびバインダーを主成分とする塗工液を、ブレードコータ、エアナイフコータ、ロールコータ、バーコータ、グラビアコータ、ロッドブレードコータ、リップコータ、カーテンコータ、ダイコータなどを用いて塗工することにより得られる。
【0005】
ここに使用する顔料としては、非晶質シリカまたは合成シリカ、クレー、炭酸カルシウムなどが用いられる。比表面積の大きいシリカを使用すれば、インクの吸収性が高くなる点で好ましい。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のインクジェット記録用紙では、インクの吸収性が必ずしも十分でなく、滲み防止の点でも満足できるものではない。
【0007】
したがって、本発明の主たる課題は、インク吸収性に優れ、滲みが殆どなく鮮明な印字が可能であり、退色抵抗性にきわめて優れ、しかも記録紙表面の平滑性および光沢性に優れ、さらにシリカを顔料として用いる場合に比較してコストの低減も図ることができる、高光沢インクジェット記録用紙を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、基紙上に顔料を主成分とするインク吸収プレコート層と、アクリルカチオン系吸放水性樹脂からなるインク受容層を順次積層することで、優れたインク吸収性を示し、滲みが殆どなく鮮明な印字が可能であり、しかも退色抵抗性にきわめて優れることを知見した。また、かかる利点は顔料中の軽質炭酸カルシウムの割合が大きいときに特に顕著であるが、この種の塗工液を前述の塗布方式で塗布すると、記録紙表面の平滑性および光沢性が良好でないことも知見された。
【0009】
上記課題を解決した本発明は、次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
基紙上に顔料を主成分とするインク吸収プレコート層が設けられ、該インク吸収プレコート層上にアクリルカチオン系吸放水性樹脂を主成分とする透明または半透明のインク受容層を順次積層したことを特徴とする高光沢インクジェット記録用紙。
【0010】
(作用効果)
A.一般のアクリル樹脂に代表される高吸水性樹脂とは異なり、アクリルカチオン系吸放水性樹脂は、透明または半透明であり、自重の50〜100%程度の吸水性を示し、吸水した水を経時放出するという性質を有しているため、インクを受理したとき、インク成分をインク受容層の表面部における樹脂気孔間に残存させ、インク中の水分のみを気孔を通してインク吸収プレコート層、さらに基紙に浸透させる。したがって、インクの吸収性に優れ、かつ鮮明な印字が得られる。
【0011】
<請求項2記載の発明>
前記顔料が、比表面積が50〜130m 2 /gの軽質炭酸カルシウムであり、インク吸収プレコート層中に70重量%以上含有され、前記軽質炭酸カルシウム100重量部に対して、バインダーを5〜50重量部含有することを特徴とする請求項1記載の高光沢インクジェット記録用紙。
【0012】
(作用効果)
B.一般の軽質炭酸カルシウムの比表面積は0.5〜10m2/g以下である。しかるに、本発明で使用する軽質炭酸カルシウムの比表面積が50〜130m2/gはきわめて高い。その結果、インク受容層の表面部における樹脂気孔間を通り、インク吸収プレコート層に浸透するインク中の水分の吸収性に極めて優れ、かつ水分の拡散に伴う滲みも防止される。この効果を十分に発揮させるためには、本発明に係る軽質炭酸カルシウムを顔料中に70重量%以上含有させるのが好ましい。
【0013】
C.本発明の軽質炭酸カルシウムは結着性に優れるから、粉落ちのおそれからバインダーの使用量が顔料100重量部に対して、5〜50重量部、望ましくは20〜30重量部で足りる。その結果、バインダーの使用量を過度とすることがなく、結果としてバインダーに起因する退色の抵抗性が高くなる。
【0014】
<請求項3記載の発明>
前記インク吸収プレコート層を、キャストコーティング法により形成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の高光沢インクジェット記録用紙。
【0015】
(作用効果)
この発明においても、上記A〜Cのほか次記の利点がもたらされる。
D.インク吸収プレコート層に多数の気孔が形成されるために、通常の塗工方式では記録紙表面の平滑性および光沢性が良好でなくなる。そこで、本発明にしたがって、キャストコーティング法によりインク吸収プレコート層を塗工すると、通常のコート紙と比較して、記録紙表面のより高い平滑性および光沢性が得られ、しかも低コストで得ることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明は、基紙上に顔料を主成分とするインク吸収プレコート層を設けて、該インク吸収プレコート層上にアクリルカチオン系吸放水性樹脂からなるインク受容層を順次積層したことを特徴とする高光沢インクジェット記録用紙である。
【0017】
以下に、本発明について詳細に述べる。先ず、本発明で使用するアクリルカチオン系吸放水性樹脂は水分散型のアクリル酸エステルの共重合物であり、2−エチルヘキシルアクリレート、アクリル酸、β−ヒドロキシエチルアクリレート等のアクリル系モノマーを重合して作る。重合に用いるエステルを変更することで、容易に硬軟自在のアクリル酸エステル共重合物を得ることが出来る。
【0018】
本発明に使用するアクリルカチオン系吸放水性樹脂は、従来のポリアクリル酸に代表される高吸水性樹脂に比較して種々の顔料と混和性が良く、従来使用されている接着剤に比較して増粘性が少なく、かつ顔料との強い接着性を示す。特に炭酸カルシウムやシリカ系の顔料を用いた時に、強い接着性が発揮される。さらに、水溶性高分子やカチオン性ポリマー等の水性組成物と相溶性が極めて良く、増粘性が少なく極めて優れた耐水性を有する。
【0019】
さらに、本発明で用いるアクリルカチオン系吸放水性樹脂の際だった特徴は、顔料を主成分とするインク吸収プレコート層と併用したときに発揮される。即ち、上記のインク吸収プレコート層とのなじみが改善され結果的に強い接着強度が得られ、インク受容層の表面強度が改善され、耐水性の極めて優れたインク受容層が得られる。
【0020】
従来、顔料と接着剤を併用するインクジェット記録用紙では、水溶性高分子の接着剤、例えばポリビニルアルコール(以下PVAと記す),変性PVA,ヒドロキシエチルセルロース,CMC,セルロース誘導体,澱粉,カチオン澱粉等が使用されてきた。これら水溶性高分子のみを接着剤として使用した場合は、本発明のような表面強度が得られないばかりか、印字後の耐水性も劣るものであった。
【0021】
また、通常の水性エマルジョン型高分子ラテックス、例えばSBR、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体、エチレン−酢酸ビニル重合体、ポリビニルブチラールを接着剤として使用した場合には、乾燥皮膜、即ちインク受容層は耐水性を有するようになるが、反面、水性インクの吸収性が悪化したり、乾燥皮膜がラテックス特有の白化現象を起こしたりして解像能力が低下する難点がある。
【0022】
本発明のアクリルカチオン系吸放水性樹脂をインクジェット記録用紙のインク受容層に使用すると、ラテックス特有の難点が解決され、従来のラテックス系には見られない、極めて優れた耐水性改善効果と水性インクの吸収性改善効果が発揮される。
【0023】
本発明においては、顔料として比表面積が50〜130m2/g、より好適には70〜90m2/gの軽質炭酸カルシウムを用いる。
【0024】
本発明においては、インク吸収プレコート層中に顔料を含有させ、この顔料中に上記軽質炭酸カルシウムを顔料として70重量%以上使用することが必要であるが、特に合成シリカを用いない場合には、インクの吸収性を向上させるために、90重量%以上使用することが好ましい。
【0025】
上記軽質炭酸カルシウムの含有量を増加させるにつれて、ドットの濃度が高くなると共にシャープネスも良好になり、真円性も良好となるので、この場合には優れた記録画像を得ることができるが、70重量%未満の含有量とした場合には、ドットの濃度が不充分となりオリジナルからの色の再現性に劣る場合が生じる。
【0026】
本発明において、上記軽質炭酸カルシウムと併用することができる顔料は、合成シリカが好適である。合成シリカ、特に比表面積が150m2/g以上の合成シリカを使用した場合、インク吸収性を良くすることができる。しかし、その他の顔料をも用いることができ、通常の紙塗工に使用される顔料を適宜選択して用いることができる。この顔料としては、例えばカオリン、クレー、タルク、通常の軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、サチンホワイト等の無機顔料、プラスチックピグメント等の有機顔料をも挙げることができる。有機顔料を用いる場合には、その含有量を顔料中に6重量%以下とすることが好ましい。かかる顔料をインク吸収プレコート層に含有させることは、公知の方法により、当該顔料を塗液に混合・分散させることにより容易に行うことができる。
【0027】
本発明においては、顔料に基紙との結着性を付与し、インク吸収プレコート層を均一に形成するために塗工液にバインダーを添加する。上記バインダーの例としては、酸化でんぷん、エステル化デンプン等のデンプン類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、カゼイン、ゼラチン、大豆タンパク、スチレンマレイン酸樹脂およびその誘導体、スチレン・ブタジエン共重合体、メチルメタクリレートブタジエン共重合体などの共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体などのアクリル系重合体ラテックス、エチレン酢酸ビニル共重合体などのビニル系重合体ラテックス、酢酸ビニル系エマルジョン又はこれらの二種以上の混合物等を挙げることができる。
【0028】
使用されるバインダーの量は、顔料100重量部に対して5〜50重量部、より好適には20〜38重量部である。また、塗工液には、必要に応じて、顔料分散剤、保水剤、増粘剤、削泡剤、離型剤、防腐剤、着色顔料、耐水化剤、湿潤剤、蛍光染料、紫外線吸収剤等を添加することができる。
【0029】
本発明においては、記録画像の耐水性を向上させるために、インク受容層にカチオン性高分子を含有させることが好ましい。このようなカチオン性高分子電解質は、使用されるインク中の水溶性直接顔料や酸性染料分子中の−SO4Na基、−SO4H基、−NH4基等と反応して水に不溶な塩を形成し、インク中の染料が水に溶解するのを防止して記録画像の耐水性を向上させる。
【0030】
上記のカチオン性高分子電解質としては、例えば、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムハライド、ポリジアクリルジメチルアンモニウムハライド、ポリジメチルアミノエチルメタアクリレート塩酸塩、ポリエチレンイミン、ジシアンジアミドホルマリン縮合物、エピクロルヒドリン変性ポリアルキルアミン、ポリビニルピリジニウムハライド、ポリエチレンイミン第4級アンモニウム塩類、ポリアミン等を挙げることができる。
【0031】
以上のようにして調製された塗工液の塗工量は、基紙の片面当たり固形分換算で5〜50g/m2とするが、特に10〜30g/m2とすることが好ましい。また、顔料は3〜30g/m2とすることが好ましい。
【0032】
本発明においては、キャストコーティング法によりインク吸収プレコート層を基紙に設ける。このキャストコーティング法は、通常のキャストコーティング紙を製造する方法と同様の方法である。すなわち、本発明においては、基紙表面に設けられた湿潤状態のインク吸収プレコート層に鏡面加工された円筒外面を有する加熱されたドラムを圧接させて紙表面を光沢状に仕上げるウェットキャストコーティング法、基紙表面に設けられた湿潤状態のインク吸収プレコート層をゲル状態にした後、鏡面加工された円筒外面を有する加熱されたドラムを圧接させて紙表面を光沢状に仕上げるゲル化キャストコーティング法、および基紙表面に設けられた湿潤状態のインク吸収プレコート層を一旦乾燥させた後、再湿潤液を塗布することによって可塑化させられたインク吸収プレコート層に、鏡面加工された円筒外面を有する加熱されたドラムを圧接させてインク吸収プレコート層表面を光沢状に仕上げるリウェットキャストコーティング法の何れかの方法によってインク吸収プレコート層を設ける。
【0033】
塗工量としては、乾燥膜厚で0.5〜50μmとすることができる。より高光沢のインクジェット記録用紙を得るため、本発明に係る、アクリルカチオン系吸放水性樹脂を前記と同様のキャストコーティング法により塗工してよい。
【0034】
本発明に使用する基紙は、特に限定されるものではなく、通常インクジェット記録用紙に使用される木材パルプを主体とした中性紙、再生紙等、公知の紙を適宜選択して使用することができる。
【0035】
再生紙は、同一坪量の比較で不透明度が高く、裏抜け防止に優れているため特に好ましい。
【0036】
顔料として合成シリカを併用する場合、粘度調整および高い画像濃度を得るために、塗工液中にアルミニウム基を有するカチオン剤を含有させることが望ましい。
【0037】
このアルミニウム基を有するカチオン剤としては、有機アルミニウム化合物、アルミニウムの無機塩、アルミニウム酸化物、水酸化アルミニウム等のアルミニウム化合物等、あるいは上記例示の顔料の表面に上記化合物を電気的もしくはその他の方法により吸着させたり、表面の水酸基と反応させる処理を施したものを用いることができる。
【0038】
有機アルミニウム化合物は、従来公知のいずれの有機アルミニウム化合物でもよいが、好ましいものとしては、アルミニウムアルコレート化合物、アルミニウムキレート化合物、環状アルミニウムオリゴマー等のアルミニウム化合物であり、塩基性炭酸マグネシウムの表面に存在する吸着成分や表面官能基との反応性を有するものである。
【0039】
この有機アルミニウム化合物の好ましい具体例としては、例えば、アルミニウムエチレート、アルミニウムイソプロビレート、モノsec−テトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムsec−ブチレート等のアルミニウムアルコレート化合物:エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)等のアルミニウムキレート化合物:環状アルミニウムオキサイドイソプロピレート、環状アルミニウムオキサイドステアレート等の環状アルミニウムオリゴマー等が挙げられる。この他にもアルミニウムのステアリン酸塩やラウリン酸塩等を使用してもよい。
【0040】
アルミニウムの無機塩としては、その塩化物、硫酸化物、硝酸化物、アンモニウム塩、酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩などの他に、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム等のアルミン酸塩やミョウバン等の複塩等が挙げられ、これらは又結晶水を有するものであってもよい。
【0041】
アルミニウム酸化物とは、工業的には天然鉱物であるボーキサイトを熱苛性ソーダ処理して得られる水酸化アルミニウムあるいは金属アルミニウムペレットを純水中で火花放電させて得られた水酸化アルミニウム等を焼成して得られ、その製造方法自体は従来公知のものであり、種々の結晶系(α形、γ形、σ形、η形、θ形)を有するものや種々の粒子径、高密度、比表面積を有するものが市販されており、本発明ではこれらの全てのアルミナを含む。
【0042】
【実施例】
(実施例1)
原料パルプとしてフリーネス(CSF)370mlのLBKP85部(以下、「部」とは重量部を意味し、「%」とは重量%を意味する。)、フリーネス(CSF)440mlのNBKP15部を混抄して得た、米坪80g/m2の基紙に、次記のインク吸収プレコート層塗工液を、湿潤状態で鏡面加工され80℃に加熱された円筒外面を有するドラムに圧接させ、インク吸収プレコート層表面を光沢状に仕上げるウェットキャストコーティング法により塗工量8g/m2となるように塗工し、乾燥した。更にエアナイフコータにより、アクリルカチオン系吸放水性樹脂を塗工することでインク吸収プレコート層を形成した。
【0043】
インク吸収プレコート層塗工液は、顔料として軽質炭酸カルシウム(BET比表面積80m2/g、品名:ジェットコート30)100部および合成非晶質シリカ(ミズカシールP−78A:水澤化学社製)0部を含み、バインダーとしてポリビニルアルコール(r−1130:クラレ社製、固型分濃度10%)35部(対顔料部)を含み、カチオン性染料定着剤(スミレーズレジン1001:住友化学工業社製、固型分濃度30%)を10部(対バインダー部)含み、カチオン剤としてアルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(アルミキレートM:川研ファインケミカル社製)を固形分で4部(対バインダー部)含むものを使用した。
【0044】
アクリルカチオン系吸放水性樹脂としては、IJC−9C(一方社油脂工業製)を使用した。
【0045】
(他の実施例および比較例)
他の実施例および比較例は、前記実施例1で使用した軽質炭酸カルシウム、バインダー、合成非晶質シリカの配合量を変更したもの、および顔料として他の軽質炭酸カルシウム(TP−121、奥多摩工業社製)を使用したもの、アルミニウム基を有するカチオン剤としてのアルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレートを添加しないもの、さらにスーパーキャレンダー処理をしたものとした。
【0046】
<評価方法>
実施例、比較例で得られた高光沢インクジェット記録用紙の記録濃度、インク吸収性、光沢感、滲みは以下に示す方法で評価した。結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
註:※1…軽質炭酸カルシウム(TP−121、奥多摩工業社製)を使用。
※2…ウェットキャストコーティング法を採ることなく、スーパーキャレンダー処理を採用。
※3…アクリルカチオン系吸放水性樹脂に代えて、ポリアクリル酸系高吸水性樹脂を使用。
【0049】
[記録濃度]
キャノンフルカラープリンタBJF600を温度20℃、湿度20%条件下で使用して4色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)のべタ記録(大きさ3.0cm×3.0cm)を行ない、印字後30分経過後のインク浸透が安定した状態で記録部分をマクベス濃度計(RD915)にて記録濃度を測定した。表には4色の測定値の合計を示し、3.3以上を良とした。
【0050】
[インク吸収性]
イエロー、マゼンタ、シアンの各単色を印字し、印字直後から5秒毎にプリントした印字面に上質紙を貼合せ、インクが上質紙に転写するかどうかを観察する。(○:10秒未満、△:10〜30秒未満、×:30秒以上)インクが乾燥するまでの時間が10秒未満のものはインク吸収性に優れる。
【0051】
[印字部の光沢感(照り感)]
印字部の光沢感は印字部に対して20°の横角度から目視し、以下のように4段評価した。◎:銀塩方式のカラー写真と同レベルの照り感がある。○:カラー写真よりは劣るが、高い照り感がある。△:塗工紙印刷品並。×:一般PPC並。
【0052】
[滲み]
キャノンフルカラープリンタBJF600を温度20℃、湿度20%条件下で使用して3原色(シアン、マゼンタ、イエローの各インク)の重ね色でつくる赤、緑、紫をそれぞれ交互にべタ記録(大きさ3.0cm×3.0cm)を連続して記録し、印字後30分経過後のインク浸透が安定した状態で隣接するインクジェットインクが互いにもしくは片側に滲みだしを生じた度合を評価した。評価A−インクの滲みは全く無い。評価B−インクの滲みが若干見られる。評価C−インクの滲みがはっきりとある。
【0053】
<考察>
・比表面積が50〜130m2/gである軽質炭酸カルシウムの使用と一般軽質炭酸カルシウムの使用との対比
比表面積が50〜130m2/gである軽質炭酸カルシウムは、合成非晶質シリカに匹敵する比表面積と、炭酸カルシウムがカチオン性を有していることにより、インク(アニオン)の定着性の向上をもたらす。
比表面積が小さい一般炭酸カルシウムは、インクジェットインクの染料に対する吸着力が不足し、インクジェットインク中の水分と共に染料もインク受容層表面から深く浸透するために、染料の濃度が低くなり精細な画像が得られない。その使用により、光沢感は出るものの、インクジェットインクの吸収性、乾燥性には劣る。また、乾燥不良、インクの定着に問題が生じる。
【0054】
・比表面積が50〜130m2/gである軽質炭酸カルシウムの使用量を、70重量%以上とする、特に90重量%以上含有させることの理由
インクジェットインクの十分な吸収性と、インク受容層面でのセット性を得るためには、多孔性で微粒子の2次凝集状であることが好ましい。比表面積が50〜130m2/gである軽質炭酸カルシウムを使用すると、高いインクの受容性を示す。その使用量が70重量%未満では、塗工液調整時の分散性、安定性が劣る問題が生じ、操業性が極めて悪化する。特に塗料調整における安定性が得られたのが90重量%以上である。
【0055】
・顔料100重量部に対して、バインダーを5〜50重量部含有させる理由は、顔料の粉落ち防止を図るとともに、高いインクの受容性を確保するためである。すなわち、バインダーの成膜性により、多すぎると、多孔性表面の形成を阻害し、少なすぎると顔料の定着が悪くなり、粉落ちなどの問題が生じる。
【0056】
・合成シリカは、インク吸収性、乾燥性に優れ、顔料の不透明性による印字裏抜け防止効果を発揮する。合成シリカを過度に含有させると、光沢の発現を阻害する。また、炭酸カルシウムは、インクジェットインクの定着性、発色性や光沢の発現性に優れているものの、インク乾燥性に劣り高速印刷時に問題が生じる場合があるために、これを合成シリカに含有させることで補償することも意図している。合成シリカの含有量を30重量%未満とするのは、インクの発色性、光沢の維持を確保するためである。
【0057】
・アルミニウム基を有するカチオン剤を含有させると、インクの定着性、塗工液調整時の分散安定性効果が極めて高くなる。
【0058】
・キャストコーティング法と他のコーティング法との対比
従来の塗工および乾燥方法で製造したインクジェット記録用紙は、塗工面の平滑性、光沢感が低く、ドットのエッジが不明瞭のものが主であった。このことはインクの吸収速度と吸収量とを高めるためにインクジェット記録用塗工液中に顔料成分として無定形シリカや微粉ケイ酸などを配合することに起因している。またこれらの欠点を改善するためにキャレンダー、スーパーキャレンダーなどで処理を行なうと、塗工層の多孔構造が潰されてインクの吸収速度と吸収量の低下を招いてしまう。さらに、従来の塗工および乾燥方法でインクジェット記録用紙を製造すると、基紙よりも浸水伸度が高くなり、多色記録時にシワや波打ちなどの変形が生じ易く、寸法安定性の点で満足なものが得られないのが実情である。すなわち、従来の方法では塗工工程で基紙が伸長し、乾燥工程で急激に収縮するので、紙層内に不均一な歪が発生し、これが寸法安定性不良の要因となっている。このため従来の方法では多色高画質のインクジェット記録用紙に使用する基紙は浸水伸度の非常に小さいものを選択して用いなければ寸法安定性の点で不満足のものになってしまう。この点に関しては、特公平6−94229号公報に記載の内容が参照される。
これに対して、本発明のキャストコーティング法によれば、かかる問題を一挙に解決できる。
【0059】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明によれば、インク吸収性に優れ、滲みが殆どなく鮮明な印字が可能であり、退色抵抗性にきわめて優れ、しかも記録紙表面の平滑性および光沢性に優れる高光沢インクジェット記録用紙を得ることができ、さらにシリカを顔料として用いる場合に比較してコストの低減も図ることができる。
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