JP2001209074A - Hanモード液晶表示装置 - Google Patents

Hanモード液晶表示装置

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JP2001209074A JP2000019236A JP2000019236A JP2001209074A JP 2001209074 A JP2001209074 A JP 2001209074A JP 2000019236 A JP2000019236 A JP 2000019236A JP 2000019236 A JP2000019236 A JP 2000019236A JP 2001209074 A JP2001209074 A JP 2001209074A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 位相差板を用いることなく、しかもTNモー
ド液晶セルと同等な黒レベルが実現できるHANモード
液晶表示装置を提供することを課題とする。 【解決手段】 本発明のHANモード液晶表示装置は、
液晶層を一対の対向する基板で挟持し、前記一対の基板
外側に互いに偏光軸が直交するように配置された一対の
偏光板を有し、前記液晶層の液晶分子の配列が、一方の
基板との界面で該基板に平行で、他方の基板との界面で
該基板に垂直であるHANモード液晶表示装置におい
て、前記液晶層は、前記一対の基板間で一方から他方に
向かって液晶分子の配列方向が基板面に平行な方位角方
向で連続的に変化するように所定のねじれ角が与えられ
ており、該所定のねじれ角を与える条件として、前記一
対の基板間の間隔をdとし、前記ねじれ角のピッチをp
としたときに、0.3≦d/p≦0.45を満たすよう
に設定されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液晶表示装置に係
わり、特に、液晶分子の配列が一方の基板面との界面で
基板面に対してほぼ垂直で、他方の基板面との界面で基
板面とほぼ平行であるHAN(Hybrid Alig
ned Nematic)方式の液晶セルを使用する液
晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】図16(A)に従来のHAN型液晶セル
の構造を示し、図16(B)にTN型液晶セルの構造を
示す。HAN型液晶セルは、電圧無印加時に、液晶分子
14が一方の基板11との界面に対して垂直なホメオト
ロピック配列状態と、他方の基板12との界面に対して
水平なホモジニアス配列状態とが並存し、さらに液晶分
子14は一対の基板間で一方から他方に向かって基板面
に垂直な面内でその配列方向(極角)が連続的に90°
変化している。
【0003】一方、従来のTN(Twist Nema
tic)型液晶セルでは、液晶分子24は一対の基板2
1、22とのそれぞれの界面に対していずれも平行に配
向しており、さらに液晶分子24は一対の基板間で一方
から他方に向かって基板面に平行な面内でその配列方向
(方位角)が連続的に90°変化している。そして偏光
軸が互いに直交する2枚の偏光板(偏光子と検光子)2
5,26を少なくとも一方の偏光軸を隣接する液晶分子
の配列方向に合わせ、液晶セル20の両側に配置して表
示を行う。図16(B)は両方の偏光板の偏光軸が共に
液晶分子と平行に配置されている。ノーマリホワイト表
示の場合であり、2枚の偏光板の配向軸を互いに平行に
配置すればノーマリブラック表示となる。
【0004】従来の一軸HANモード液晶表示装置で
は、偏光軸が互いに直交する2枚の偏光板(偏光子と検
光子)15,16を液晶セル10の両側に配置し、水平
配向側の基板12の配向方向と偏光板16の偏光軸方向
とが45°の角度をなすように設定して表示を行うが、
これだけでは、図16(B)に示すようなTNモードと
同様な黒レベルを表示するのが困難であり、通常は液晶
セル10と偏光板15との間に光学位相差補償用の位相
差板13を配置して黒表示を実現している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、HANモード
液晶セルに位相差板を使用しても、温度変化による黒レ
ベルの変化が生じる温度依存性を有する。これは液晶の
屈折率異方性の温度依存性によるものである。TNモー
ド液晶セルでは温度変化に対して黒レベルが著しく変化
することはない。そのために、HANモード液晶セルで
は、セルの駆動回路側で温度補償を必要とし、回路が複
雑となる。
【0006】本発明の目的は、位相差板を用いることな
く、しかもTNモード液晶セルと同等な黒レベルが実現
できるHANモード液晶表示装置を提供することであ
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明のHANモード液
晶表示装置は、液晶層を一対の対向する基板で挟持し、
前記一対の基板外側に互いに偏光軸が直交するように配
置された一対の偏光板を有し、前記液晶層の液晶分子の
配列が、一方の基板との界面で該基板に平行で、他方の
基板との界面で該基板に垂直であるHANモード液晶表
示装置において、前記液晶層は、前記一対の基板間で一
方から他方に向かって液晶分子の配列方向が基板面に平
行な方位角方向で連続的に変化するように所定のねじれ
角が与えられており、該所定のねじれ角を与える条件と
して、前記一対の基板間の間隔をdとし、前記ねじれ角
のピッチをpとしたときに、0.3≦d/p≦0.45
を満たすように設定されている。
【0008】
【発明の実施の形態】TNモード液晶セルは、中間調レ
ベルにおけるレスポンスが階調に著しく依存し、特に低
電圧のしきい値付近においてレスポンスが非常に遅くな
る傾向がある。ところが、HANモード液晶セルは中間
調レベルにおけるレスポンスが階調に大きく依存しない
特徴を持つモードである一方、位相差フィルム(板)を
挿入して黒レベルを実現する必要がある。
【0009】図16(B)に示すノーマリホワイト表示
のTNモードは、90°ツイストの場合、電圧無印加時
の透過光強度Tは、次の式1で表されるGooch &
Tarry の式により近似される。
【0010】
【数1】
【0011】ここで、dはセル厚、Δnは液晶の屈折率
異方性、λは入射光波長を示す。この式で、λを固定し
た条件で(一般にλ=550nmと設定する。)、Δn
d(一般にはセルリタデーションと呼ばれる。)値を調
整することにより、T=1(透過率最大)になる条件が
存在する。この条件をミニマム条件と呼ぶ。90°ツイ
ストのTNモードセルではこのミニマム条件に一致した
リタデーションに設定することにより良好な正面黒レベ
ルが得られる。なお、ツイスト角90°でΔndが最小
限で最大透過率が得られる条件を1stミニマム条件と
言う。
【0012】なお、上記のGooch & Tarry
の式は、元来はノーマリブラックモードの場合におい
て、セルリタデーションの値を低い値から大きな値に徐
々に変化させていくと、それに伴いTの値が変化してい
く間で、T=0(暗表示)になる複数の異なるセルリタ
デーション値が見られるということを示している。その
場合に、最初にT=0が得られる最も低いセルリタデー
ションの値を1stミニマム条件としている。しかし、
本明細書での説明例は、ノーマリホワイトモードである
ので、T=1(明表示)が最初に現れる最も低いセルリ
タデーションの値を1stミニマム条件と定義してい
る。
【0013】ところで、HANモードは液晶層全体の平
均ティルト角は(基板面に対する角度)約45°である
ので、この配列状態にしたまま、液晶層にカイラル剤を
添加し、液晶層の一方の界面から他方の界面まで、電圧
無印加時に液晶分子の配向(基板面と平行な方位角方
向)が90°ねじれるようにしたツイストHANモード
セルとして、さらに液晶層のリタデーション(セルリタ
デーション)を1stミニマム条件のTNセルの2倍に
設定すると電気光学的にはTNモードと同等の動作が期
待できる。その理由を以下に説明する。
【0014】一般に液晶の屈折率異方性Δnは材料固有
の物性値であるが、液晶セル内に液晶を満たした状態で
は。見かけの(実効的な)屈折率異方性は、液晶層を挟
む一対の基板の配向処理によって変化する。すなわち、
基板との界面の液晶分子のプレティルト角により見かけ
のΔnは変化する。見かけの屈折率異方性をΔneff
とし、プレティルト角をθとすると、一軸配向において
次の式2が成立することが知られている。
【0015】
【数2】
【0016】ここで、neは異常光屈折率、noは常光
屈折率を示す。式2をグラフにしたものが図17であ
る。図から明らかなように、プレティルト角θを45°
としたとすると、見かけの屈折率異方性Δneffは液
晶の固有値のΔnの1/2になることが分かる。このこ
とは、プレティルト角が0°の水平配向TNモード液晶
セルの電圧無印加時の光学的特性と同等になるようなプ
レティルト角が45°のTNモード液晶セルを実現する
ためには、後者のセルのリタデーション値(Δnd)を
プレティルト角が0°の水平配向TNモード液晶セルの
リタデーション値(Δnd)の2倍に設定しなければな
らないことを意味する。従って、平均ティルト角が約4
5°で、カイラルを与えたツイストHANモードセルで
は、液晶層のリタデーションを1stミニマム条件のT
Nセルの2倍に設定すると電気光学的にはTNモードと
同等の透過率が得られるのである。
【0017】そこで、液晶セルの製作方法は従来のHA
Nモードと同等とした場合、様々なパラメータを変化さ
せた場合のシミュレーションをシンテック社製LCDシ
ミュレータLCDmasterで行った。使用液晶は、
誘電率異方性が正のZLI−4792、カイラルは右ね
じれ(p)、水平配列側の界面の液晶のプレティルト角
は基板面を基準として1°、垂直配列側のプレティルト
角は90°として固定した。
【0018】なお、誘電率異方性が負の液晶を使用する
HANモードセルは、電圧無印加時には誘電率異方性が
正のHANモードセルと同等な配向状態と光学的性質を
持つ。ところが、前者の負の液晶セルは電圧印加時には
液晶分子の配向が基板に対して平行になる傾向があり、
後者の正の液晶セルは垂直になる傾向がある。液晶分子
が基板に対して垂直に並んだ方が平行の場合よりも液晶
の屈折率異方性の温度依存が可視化されにくい傾向があ
る。つまり、誘電率異方性が負の液晶をHANモードセ
ルに使用すると、温度依存性が顕著に可視化されること
になる。特に黒表示を行う際に温度によって透過率が変
化するのは液晶表示素子として好ましくない。よって、
誘電率異方性が負の液晶はHANモードセルでは、温度
特性的に不利と判断される。
【0019】シミュレーション用のツイストHANモー
ド液晶表示装置の構成を図1に示す。図1の(A)は、
電圧無印加時で、(B)は電圧印加時の状態を示す。ツ
イストHANモード液晶セル10は、基板1,2間に挟
まれた液晶層3を有する。液晶層3には、基板面に平行
な方位角方向で液晶分子4が所定のねじれ角のピッチ
(カイラルピッチ)pを示すようにカイラル剤を添加し
てある。セル10の両側の2枚の偏光板5、6の配置は
それぞれの偏光軸が互いに直交するクロス配置(クロス
偏光板と称す。)である。図1のように水平配向側基板
2のラビング方向(水平配向方向)と隣接する偏光板6
の偏光軸とが平行になるよう配置し、カイラル角を変化
させた場合と、d/p=0の場合(カイラルピッチpが
∞)の場合に偏光板の偏光軸方向と液晶分子のダイレク
タの方位角方向とが45°の関係となるようにした場合
とをシミュレーションした。
【0020】図2に、セル厚(d)を6μmに固定した
ときの印加電圧(横軸)対光透過率(縦軸)特性をd/p
値をパラメータとして変化させてシミュレーションした
結果を示す。
【0021】なお、偏光板はクロス配置とし、水平配向
する液晶分子のダイレクタと隣接する偏光板の偏光軸と
をd/p=0の場合は45°の配置とし、d/p>0の
場合は平行の配置とした。
【0022】d/p値を大きくする(カイラルピッチp
を小さくする)に従って、0V時の透過率が低下し、か
つ黒レベルが低下していることが分かる。特に、d/p
>0.25において良好な黒レベルが得られる可能性が
ある。またカイラル剤の添加により駆動電圧を低くでき
る効果もある。
【0023】図3は、d/pが0.3から0.5の領域
をより詳細にシミュレーションした結果を示す。この結
果から、良好な黒レベルが得られ、無しきい値特性が得
られるのは、0.3≧d/p≧0.45であった。
【0024】次に、同じ液晶セル10を使用し、セル厚
d=6μmのまま、いくつかの異なるd/p値の各条件
のもとで、クロス偏光板間で液晶セル10を光軸を中心
に回転させて、図4に示したような偏光子(および検光
子)の透過軸方向と液晶セルのラビング方向(配向方
向)との角度θ(Angle of CrossedP
ol.)を変化させて、最大コントラスト値が得られる
角度θを求めたシミュレーション結果を図5に示す。
【0025】図5の結果から、d/p値が大きくなる
(カイラルピッチが少なくなる)につれて、最大コント
ラスト値が得られる角度θは、徐々に増大し、クロス偏
光板の一方の偏光板の透過軸をラビング方向にそろえる
方向にむかう。特に、0.3≧d/p≧0.45におい
ては、TNモードと同様、片方の偏光板透過軸をラビン
グ方向と平行または直交する(θ=90°)ような配置
で最大コントラストが得られる。なお、d/p=0.6
では最大コントラストが得られる角度は約15°(他方
の偏光板に対しては約75°)となった。2枚の偏光板
を入れ替えても特性に変化はなかった。
【0026】次に、0.3≧d/p≧0.45の条件で
透過率が最大になるセルリタデーションの値を求めるシ
ミュレーションをおこなった。図6にその結果を示す。
なお、クロス偏光板配置で、図4でのθを90°に固定
して行った。すなわち、ラビング方向と隣接する偏光板
の透過軸方向とが一致している。同様に、0.3≧d/
p≧0.45の条件でコントラストが最大になるセルリ
タデーションの値を求めるシミュレーション結果が図7
である。
【0027】図6の結果から、d/p値が大きくなる
(ねじれが小さくなる)につれて、最大透過率は高くな
り、かつ高いリタデーション値の方にシフトしていく傾
向が見られる。最大透過率は、セルリタデーションの値
が0.8μm〜0.9μmの領域で得られている。一
方、図7の結果から、コントラストは、セルリタデーシ
ョン値及びd/p値が大きくなるにつれて低下する。良
好な透過率とコントラストを得るためには、0.3≧d
/p≧0.45で、セルリタデーションが0.7μm〜
0.9μmの範囲が最適と考えられる。
【0028】図8は、ツイストHANモード液晶セル
と、従来の90°ツイストTNモード液晶セルの電気光
学的特性を比較したグラフである。図8において、横軸
は印加電圧を示し、縦軸は光透過率を示す。実線のカー
ブが従来のTN液晶セルであり、その他の破線のカーブ
は表1に示す異なる三つの条件(A,B,C)でのツイ
ストHANモード液晶セルの各々の特性カーブである。
【0029】
【表1】
【0030】図8の結果から、TN液晶セルとツイスト
HANモード液晶セルは、透過率と黒レベルともに同等
のレベルにある。また、HANモードは無しきい値特性
を維持しているために、中間階調表示時のダイナミック
レンジが大きくなるが、デューティ駆動は透過率を犠牲
にしなければならないと考えられる。(ブラックマスク
が必要となる。)
【0031】
【実施例】次に、以上説明したシミュレーションによる
得られた結果に基づいて良好なツイストHANモード液
晶表示装置が実際に得られるか、サンプルのセルを作製
し実験した結果を説明する。作製したセルの製造条件
は、次の通りである。
【0032】 基板:TSP−14 電極の面抵抗100Ω 配向膜成膜:スピンナー使用(2000rpm/60sec) 水平側配向膜:水平配向膜(推定厚み400Å) 垂直側配向膜:垂直配向膜(推定厚み600Å) プリベーク:ホットプレートにて90°Cで2分間 ポストベーク:水平配向膜に対して240°C/60分間、 垂直配向膜に対して160°C/60分間 配向処理:水平側のみラビング処理(プレティルト角約1.5°) セル厚:5μmねらい 液晶: d/p=0用 ZLI−5200−000,Δn=0.12 d/p>0用 RDP−00333+S−811,Δn=0.157 注入:毛細管注入 なお、比較のために用意した従来の90°ツイストTN
モード液晶セルは、水平配向膜、セル厚ともに上記ツイ
ストHANモードセルと同じで、液晶は、ZLI−30
54−100+S−811(Δn=0.097)を毛細
管注入で使用した。
【0033】上記の条件によるセルを製造して、それら
の特性を測定した結果を説明する。図9は、d/p=
0.0、0.35、0.4、0.45に設計した4つの
HANモードセルの印加電圧(横軸)対光透過率(縦軸)特
性を示す。本測定では、偏光板にSQX852−AP−
HC(シミュレーションではSH1832AP)を用い
ている。シミュレーションの結果の通りに、本実験にお
いても0.3≧d/p≧0.45の条件では良好な黒レ
ベルが得られている。
【0034】図10は、TNセルとの特性比較を示す。
本実験の結果も、図8に示したシミュレーションの結果
と非常によく一致した。d/p=0.4と0.45の場
合では、TNモードセルとほとんど遜色のない透過率と
黒レベルの性能が得られている。
【0035】次に、中間調レスポンスの傾向を大まかに
つかむために、従来のTN液晶セルと、ツイストのない
HAN液晶セル(d/p=0)と、ツイストのあるHA
N液晶セル(d/p>0)とで応答時間の比較を行っ
た。図11は、その立ち上がり時間の特性で、横軸が印
加電圧で縦軸が立ち上がりの応答時間である。また、図
12は、その立ち下がり時間の特性で、横軸が印加電圧
で縦軸が立ち下がりの応答時間である。
【0036】立ち上がり応答時間では、ツイストのない
HANモードセルでは階調に対する応答性の違いがほと
んど見られないが、ツイストHANモードセルとTNセ
ルでは、電圧が小さい場合には遅くなる傾向が見られ
る。立下り特性では、ツイストなしHANモードセルと
TNセルとではほぼ一定の応答時間であるが、ツイスト
HANモードセルでは電圧が小さい場合に遅くなる傾向
を有する。
【0037】以上説明したツイストHANモード液晶セ
ルは、一方の基板の界面の液晶分子が完全に垂直配向で
あった。片面が垂直配列であるツイストHANモードセ
ルではTNセルに比べてセル厚(リタデーション)を大
幅に大きく(約0.5〜0.8μm)取る必要がある。
また、応答性においても、立下り時間の挙動は、垂直配
向側に方位角方向の配向規制力が無いために生じている
現象と考えられる。以下の説明では、この垂直配向側に
も配向処理をすると、どのような特性となるかをシミュ
レーションにより検討した結果を示す。
【0038】まず、垂直配向側の方位角方向の配向規制
力が弱いという観点から、垂直配向側のプレティルト角
を変化させた場合、液晶層内におけるツイスト角がどう
変化するのか計算を行った。図13のグラフは、垂直配
向側のプレティルト角を5つの値(90°が完全な垂直
配向)に設定し、d/p値(横軸)を変化させた場合に
見かけのツイスト角(縦軸)がどのように変化するかを
求めたものである。
【0039】ツイストHANモードセルでは、垂直配向
側の配向方位は、水平側から90°ねじられている。プ
レティルト角90°の条件において、d/p=0.4に
てほぼ90°のツイスト角が得られている。d/p=
0.4よりも小さな領域では、プレティルト角が小さく
なるにつれて、見かけ上のツイスト角が大きくなること
が分かる。また、d/p=0.4よりも大きな領域で
は、逆にプレティルト角が大きくなるにつれて、見かけ
上のツイスト角が小さくなることが分かる。これは、プ
レティルト角が小さくなるにつれて界面の方位角配向規
制力が有効に作用するようになるためである。
【0040】すなわち、垂直配向側のプレティルト角を
小さく設定すれば小さいd/p値で良好な特性が得られ
る可能性がある。またセルリタデーションを低減するこ
とも可能になると予想できる。
【0041】次に、図14は、d/p=0.25の条件
で、垂直配向側の異なる5つのプレティルト角(90°
が完全な垂直配向)でセルリタデーション値(横軸)を
変化させた場合に各セルリタデーション値での透過率
(縦軸)を求めたグラフである。図15は、d/p=
0.4の条件で同様な特性を求めたものを示す。
【0042】求めた特性グラフから、プレティルト角が
小さくなるに従って、最大透過率が上昇し、最大透過率
がセルリタデーションが小さいところで得られる傾向が
ある。しかし、良好な透過率とコントラストが得られる
d/p値条件は、プレティルト角が変化しても0.4前
後であり、最大透過率を重視するのであれば、d/p値
を低下させることはできない。ただし、方位角規制が有
効になるためプレティルト角を89°以下にすると立下
りレスポンスへの効果は期待できると予想する。また、
最大透過率を得るセルリタデーション値はプレティルト
角を80°に設定すれば、90°の場合の0.8μmか
ら約0.7μmに低下させることができる。
【0043】以上のとおり、位相差板(フィルム)なし
でも良好な黒レベルが得られるツイストHANモード液
晶表示装置について、シミュレーションと実測結果とに
より検討した結果、0.3≧d/p≧0.45で、セル
リタデーションが0.7μm〜0.9μmの範囲にてT
Nモード液晶表示装置と同等な黒レベルと透過率のもの
が実現できることが分かった。また、シミュレーション
解析によりHANモードセルではd/p=0.4の場合
に液晶層内で実質的に90°のねじれが発生することが
分かった。さらに、垂直配向側にプレティルト角を付与
すると、方位角配向規制が有効に作用して、透過率が上
昇する傾向があるが、良好な電圧対透過率特性が得られ
るのはプレティルト角がない条件とほぼ同等であった。
【0044】以上、実施例に沿って本発明を説明した
が、本発明はこれらに制限されるものではない。例え
ば、種々の変更、改良、組み合わせが可能なことは当業
者に自明であろう。
【0045】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のツイスト
HANモード液晶表示装置は、0.3≧d/p≧0.4
5の条件を満たすように設定したことによって、液晶分
子に基板間でねじれを与え、これによって、位相差板を
なくしても、TNモード液晶表示装置と同等な黒レベル
と透過率を得ることができる。位相差板をなくしたこと
によって、黒レベルの温度依存性がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例によるツイストHANモード
液晶表示装置の構成を示す模式図である。
【図2】 ツイストHANモード液晶表示装置のいくつ
かの異なるd/p値におけるシミュレーションによる電
圧対透過率の特性グラフである。
【図3】 ツイストHANモード液晶表示装置のいくつ
かの異なるd/p値におけるシミュレーションによる電
圧対透過率の特性グラフである。
【図4】 偏光板の偏光軸方向と液晶セルのラビング方
向との関係を示す図である。
【図5】 偏光板の透過軸方向と液晶セルのラビング方
向(配向方向)との角度θを変化させて、最大コントラ
スト値が得られる角度θを求めたシミュレーション結果
のグラフである。
【図6】 ツイストHANモードセルで、0.3≧d/
p≧0.45の条件で透過率が最大になるセルリタデー
ションの値を求めるシミュレーション結果を示す透過率
対セルリターデーションのグラフである。
【図7】 ツイストHANモードセルで、0.3≧d/
p≧0.45の条件でコントラストが最大になるセルリ
ターデーションの値を求めるシミュレーション結果を示
すコントラスト対セルリタデーションのグラフである。
【図8】 ツイストHANモード液晶セルと、従来の9
0°ツイストTNモード液晶セルの電気光学的特性を比
較したグラフである。
【図9】 異なる4つのd/p値のHANモードセルの
印加電圧に対する光透過率特性を示すグラフである。
【図10】 ツイストHANモード液晶セルと、従来の
TNモード液晶セルの電気光学的特性を比較したグラフ
である。
【図11】 従来のTN液晶セルと、ツイストのないH
AN液晶セルと、ツイストのあるHAN液晶セルとにお
ける立ち上がり応答時間の比較グラフである。
【図12】 従来のTN液晶セルと、ツイストのないH
AN液晶セルと、ツイストのあるHAN液晶セルとにお
ける立ち下がり応答時間の比較グラフである。
【図13】 垂直配向側の異なる5つのプレティルト角
の場合、d/p値を変化させた時に見かけのツイスト角
がどのように変化するかを求めたツイスト角対d/pの
グラフである。
【図14】 d/p=0.25の条件で、垂直配向側の
異なる5つのプレティルト角でセルリタデーション値を
変化させた場合に各セルリタデーション値での透過率を
求めた光透過率対セルリターデーションのグラフであ
る。
【図15】 d/p=0.4の条件で、垂直配向側の異
なる5つのプレティルト角でセルリタデーション値を変
化させた場合に各セルリタデーション値での透過率を求
めた光透過率対セルリターデーションのグラフである。
【図16】 従来のHANモード液晶セルとTNモード
液晶セルの構成を示す模式図である。
【図17】 プレティルト角θと見かけの屈折率異方性
Δneffとの関係を示すΔneff対θのグラフであ
る。
【符号の説明】
1,2 基板 3 液晶層 4 液晶分子 5,6 偏光板 10 液晶セル
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 2H088 HA16 HA18 JA04 JA05 KA07 KA14 LA02 MA02 2H090 JA09 JB13 KA05 LA04 LA06 LA09 MA03 MA11 2H091 FA08X FA08Z FA11X GA01 GA11 HA07 KA02 KA05 LA16 LA20

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 液晶層を一対の対向する基板で挟持し、
    前記一対の基板外側に互いに偏光軸が直交するように配
    置された一対の偏光板を有し、前記液晶層の液晶分子の
    配列が、一方の基板との界面で該基板に平行で、他方の
    基板との界面で該基板に垂直であるHANモード液晶表
    示装置において、前記液晶層は、前記一対の基板間で一
    方から他方に向かって液晶分子の配列方向が基板面に平
    行な方位角方向で連続的に変化するように所定のねじれ
    角が与えられており、該所定のねじれ角を与える条件と
    して、前記一対の基板間の間隔をdとし、前記ねじれ角
    のピッチをpとしたときに、0.3≦d/p≦0.45
    を満たすように設定されているHANモード液晶表示装
    置。
  2. 【請求項2】 前記一方の基板と平行に配列した側の界
    面の液晶分子の配向方向が前記一方の基板外側の前記偏
    光板の偏光軸の方向と平行あるいは直交するように配置
    された請求項1記載のHANモード液晶表示装置。
  3. 【請求項3】 前記液晶層のセルリタデーション値が
    0.7μmから0.9μmの範囲に設定されている請求
    項1記載のHANモード液晶表示装置。
  4. 【請求項4】 液晶分子の配列が垂直である前記他方の
    基板の界面は配向処理がされてない請求項1記載のHA
    Nモード液晶表示装置。
  5. 【請求項5】 液晶分子の配列が垂直である前記他方の
    基板の界面は配向処理がされて該界面の液晶分子に基板
    面に対して90°より小さなプレティルト角が与えられ
    ている請求項1記載のHANモード液晶表示装置。
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