JP2001186826A - 炭素繊維束網状組織体と水浄化および藻場形成の方法 - Google Patents

炭素繊維束網状組織体と水浄化および藻場形成の方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 水浄化及び藻場形成に適する炭素
繊維束を含む網状組織体を提供すること、及び該組織体
を用いて水浄化、藻場形成方法を提供すること。 【解決手段】 炭素繊維を含む特定の網目を有
し、該繊維束の撚り数が0.5個/m以下とした特定の
網状組織体。それを生物膜担体として用いた水浄化方法
及び藻場形成方法

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は上下水、河川、池、
ダム、湖沼、海などの水浄化および魚介類の棲みかとし
ての藻場形成に適する繊維組織体に関するものである。
また、該組織体を主組織体とする生物膜担体を用いて水
を浄化する方法並びに藻場の形成に関するものである。
より詳しくは、炭素含有量が85重量%以上を有する炭
素繊維束または/および炭素質繊維束を含む特定の網状
組織体に関する。また、該組織体を主組織体とする生物
膜担体を接触濾材として用いて水を浄化する方法に関す
る。さらに、本発明は該組織体を主組織体とする生物膜
担体を用いた魚類の棲み易い藻場を形成する方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来より、上下水、河川、池、沼などを
浄化するための水浄化装置には、バクテリアなどの微生
物あるいは微小生物を吸着する担体が生物膜からなる濾
過材として使用されており、該水浄化装置に排水などの
汚染水を、いわゆる接触酸化法により接触させて、水中
の生物を吸着し、水を浄化することは行われていた。こ
の接触酸化法に用いられる生物膜担体には、従来、ナイ
ロン、ポリ塩化ビニリデンなどの有機合成樹脂のフィル
ムや繊維が各種の形態に加工されて使用されていた。
【0003】また、近年、特開平8−266184号公
報、特開平8−290191号公報、特開平11ー90
472号公報に示されるように、人工藻場や水浄化装置
に使用される生物膜用担体として炭素含有量が85重量
%以上である炭素質繊維や炭素含有量が90重量%以上
である炭素繊維が有効であり、これらの炭素繊維を単独
または織物や編み物により特殊な形態に加工して水中に
配置することによって炭素繊維上に微生物が固着し増殖
して水中のBOD、COD、SSなどを減少させて水を
浄化できることや、炭素繊維を水中に適度に配置するこ
とによって藻場を形成し、該藻場に増殖した微生物を餌
とする小動物が棲みつき人工藻場、すなわち、魚礁が出
来ることが公知となっている。なお、以降の記載では前
記炭素質繊維および炭素繊維を炭素繊維と定義する。
【0004】前記公報によれば、アクリル繊維、ピッチ
およびメゾフェースピッチ、フェノール系繊維、セルロ
ース繊維などの出発原料から得られる炭素繊維は合成樹
脂からつくらるフィルムや繊維に比べて微生物がより速
く、より多く固着するのでかなり有効な生物膜担体の素
材であると記載されている。
【0005】一般に、炭素繊維は直径が数ミクロンメー
トルの単繊維が数百本乃至数万本からなる束状である。
この炭素繊維束は水浄化用及び藻場形成用に使う場合、
炭素繊維束を縦糸とし、該炭素繊維束または有機繊維を
横糸とする織状組織体、炭素繊維束を一旦組み紐にした
後これを網状にした組織体などの形態に加工して用いら
れている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
の炭素繊維束の織状組織体や網状組織体などを水浄化や
藻場形成のために水中に生物膜担体として使用した場
合、織状組織体では縦糸や横糸である炭素繊維束が滑っ
て織り上がり時の位置から大きく移動した組織になり炭
素繊維束が多く集まった箇所と大きく隙間があいた箇所
ができるため、均一な浄化処理や藻場形成が困難であ
る。また、組み紐とした後に網状組織体とした場合、炭
素繊維束の周囲には微生物は固着するが、必ずしも該繊
維束を構成する各単繊維に固着しない。このため、水浄
化や藻場形成を効果的に行うためには炭素繊維束の組織
体を多く使わなければならないという問題があった。こ
れは該組織体をつくる際に炭素繊維束に撚りが入った
り、該繊維束中の単繊維が互いに絡まって拘束されるた
め、束の外周部分は絶えず流動する水と接触するが、該
繊維束内部の単繊維間には外部からの水の出入りが不十
分になり、単繊維周囲への微生物の固着が低下するため
である。
【0007】そこで本発明の目的は、前記従来の問題点
を解決し、炭素繊維束を構成している単繊維への微生物
固着性に優れた炭素繊維組織体を提供すること、炭素繊
維組織体を生物膜担体に用いて生物の生息する水中に浸
漬して生物を固着させて効率よく水を浄化する方法を提
供すること、該生物膜担体を生物の生息する水中に浸漬
して生物を固着させ、魚介類の棲かとして良好な藻場を
形成する方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決する手段】本発明者等は前記目的を達成す
るために鋭意検討した結果、 特定の炭素含有量である
炭素繊維束からなる適当な大きさの網み目を有する網状
組織体または、有機または無機繊維の網状組織体に炭素
繊維束を長さ方向に適当な間隔で該網状組織体に結束さ
せた炭素繊維複合網状組織体であり、網目間及び結束点
間にある該炭素繊維束の撚りが特定以下であるととも
に、該繊維束が適当な自由度を有するように結束したも
のや、該網状組織体を揺動できるように水中に取り付け
ることによって優れた水浄化性や藻場形成性を示すこと
を発見し、これらの組織体を用いることによって前記問
題点を解消できることを見い出し、本発明に至った。
【0009】すなわち、本発明は炭素含有量が85重量
%以上を有する炭素繊維束または/および炭素質繊維束
を含む網目の大きさが少なくとも10mm以上で且つ網
目間の該繊維束の撚り数が0.5個/m以下である生物
膜担体用または水中藻場形成用網状組織体からなる。
【0010】本発明は有機または無機繊維を用いた網状
組織体に炭素含有量が85重量%以上を有する炭素繊維
束または/および炭素質繊維束を結束させ、結束点間が
少なくとも10mm以上で且つ結束点間の該繊維束の撚
り数が0.5個/m以下である生物膜担体用または水中
藻場形成用複合網状組織体からなる。
【0011】本発明の前記複合網状組織体を構成する炭
素繊維束の結束点間にある長さが結束点を結ぶ直線に対
して10〜20%長いことを特徴とする。
【0012】本発明の水を浄化する方法は前記網状組織
体または/および前記複合網状組織体からなる生物膜担
体を生物の生息する水中に浸漬して生物を固着させ、水
を浄化することを特徴とする。
【0013】本発明の藻場を形成する方法は前記組織体
または前記複合網状組織体からなる生物膜担体を生物の
生息する水中に浸漬して生物を固着させ、藻場を形成す
ることを特徴とする。
【0014】本発明の水浄化または/および藻場を形成
する方法は前記網状組織体の縦または/および横の長さ
に対して10〜30%短く固定した生物膜担体モジュー
ルを生物の生息する水中に浸漬して生物を固着させて水
浄化または藻場を形成することを特徴とする。
【0015】本発明の生物膜担体を形成する炭素繊維は
アクリロニトリル繊維またはアクリロニトリル系繊維、
ピッチ、メゾフェースピッチ、フェノール樹脂繊維を原
料とする炭素繊維であり、好ましくは取り扱い性や繊維
加工性を考慮して水溶性のサイズ剤を付着した炭素繊維
束である。特に好ましくはポリアクリロニトリル系炭素
繊維束である。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施について詳述
する。
【0017】本発明で使用される炭素繊維は、アクリル
繊維、ピッチ、メゾフェースピッチ、を酸素などの酸化
性ガス雰囲気中、加熱炉などの公知の炉を用いて酸化し
得た酸化繊維およびフェノール樹脂繊維を800℃以上
の不活性ガス中で炭素化して得られる炭素含有量85重
量%以上を有する炭素質繊維および炭素含有量90重量
%以上を有するアクリロニトリル系(PAN系)、ピッ
チ系、メゾフェース系、フェノール系の炭素繊維の直径
が5〜10ミクロンメートル、引張強度が500MPa
以上、引張弾性率が50GPa以上を有する公知の繊維
であり、構成本数が1,000〜1,000,000本
のフィラメントの束である。
【0018】本発明で使用される炭素繊維束は網状組織
体に加工するために、好ましくは、微生物の固着性を阻
害しないサイズ剤が0.1〜2重量%付着される。好ま
しいサイズ組成物は、ポリエチレンオキシド・ポリプロ
ピレンオキシドランダムアルキルモノエーテルまたは/
およびポリオキシエチレンポリシロキサン、セルロース
誘導体、水溶性熱可塑性樹脂などの公知の水溶性のもの
である。
【0019】本発明で使用される無機繊維は、ガラス繊
維、アルミナ繊維など公知の繊維であり、構成本数が1
0〜10,000本のフィラメントである。
【0020】本発明で使用される有機繊維は、ポリエス
テル、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ
塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニールなどの公知の合成樹
脂からなる繊維であり、構成本数が1〜1,000本の
フィラメントである。
【0021】本発明で使用される網状組織体は構成する
縦糸および横糸が交差して互いに拘束しあい移動が困難
であり、且つ、隣り合う縦糸と横糸とで形成される空間
を有するものである。
【0022】本発明の炭素繊維束網状組織体は縦糸と横
糸ともに炭素繊維束、どちらか一方が炭素繊維束であ
り、他方が前記無機繊維や前記有機繊維のものである。
特に、網状組織体の隣り合う縦糸と横糸とで形成される
空間、すなわち網目の辺の長さが10mm以上で網目を
構成する該炭素繊維束の撚り数が0.5個/m以下であ
ることが好ましい。
【0023】該炭素繊維束網状組織体の網目の大きさが
10mm以下の場合、生物膜担体として水の中に浸漬し
たときの該網状組織体を貫通する水の出入りが困難にな
り、微生物固着性に劣るので好ましくない。
【0024】また、該炭素繊維束網状組織体の網目を構
成する該炭素繊維束の撚り数が0.5個/m以上の場
合、該炭素繊維束を構成する単繊維が水中で動きにくく
なり微生物固着性が劣る傾向となるので好ましくない。
特に、効果的に微生物を固着させて水浄化や藻場を形成
するためには縦糸が該炭素繊維束で横糸が有機または無
機繊維であることが好ましい。縦糸が炭素繊維束の場
合、炭素繊維束は比較的まっすぐに網込めれるので、該
炭素繊維束を構成する単繊維が水中で動きやすくなり微
生物が効果的に固着し水浄化や藻場形成に優れまた、該
網状組織体を水が容易に貫通できるため、優れた微生物
固着性を示す。さらに、該炭素繊維束の幅が出来るだけ
広くなるように網込むことにより該炭素繊維束を構成す
る単繊維に微生物がよく固着するのでさらに好ましい。
【0025】本発明の炭素繊維束複合網状組織体は前記
無機繊維または/および有機繊維を用いた数mm以上の
網目を有する網状組織体(これを以下基材網状組織体と
いう)に、該炭素繊維束を組み込ませたものである。該
炭素繊維束を基材網状組織体の網目に、隣り合う網目毎
または網目数個を飛ばすなどしてジグザグに通して縦糸
または横糸との摩擦力で目止めし結束させるか、該炭素
繊維束を縦糸と平行に配置して横糸で挟むか、絡めて目
止めし結束させたものであり、結束点間が少なくとも1
0mm以上で且つ結束点間の該繊維束の撚り数が0.5
個/m以下であることが好ましい。
【0026】前記基材網状組織体の網目は食物連鎖にお
ける成魚や大きな魚介類による稚魚や幼魚が食餌となら
ない隠れ場提供や、網状組織体を水が貫通して水の浄化
や藻場形成に補完的に貢献するので、これらを考慮して
選択できるが、通常は5mm以上が好ましい。
【0027】前記複合網状組織体における該炭素繊維束
の結束点間が10mm以下の場合、生物膜担体として水
中に浸漬したときの該炭素繊維束を構成する単繊維間に
水の出入りが困難になり、単繊維への微生物固着性が低
下するので好ましくない。
【0028】該炭素繊維束の撚り数が0.5個/m以上
の場合、該炭素繊維束を構成する単繊維が水中で動きに
くくなり微生物固着性が劣る傾向となるので好ましくな
い。
【0029】特に、結束点間にある炭素繊維束の長さ
が、結束点を結ぶ直線に対して10〜20%長くなるよ
うに、たるませた状態で一体化した炭素繊維束複合網状
組織体は水浄化性又は藻場形成に優れているので特に好
ましい。該炭素繊維束の長さが10%以下の場合は炭素
繊維束を構成する単繊維の間に水の出入が難しくなる傾
向となる。また、30%以上の場合は炭素繊維束を構成
する単繊維が互いに絡み合い水の出入りが困難になり却
って単繊維周りへの微生物固着性が低下したり、隣接す
る炭素繊維束同士が絡みあい微生物固着性低下や形成さ
れる藻場が小さくなる傾向になる。
【0030】本発明の水を浄化する方法は、前記の炭素
繊維束網状組織体または/および前記炭素繊維束複合網
状組織体を任意の形状に、好ましくは四角形にしてその
対向する両辺に合成樹脂製、金属製などの公知のパイプ
や棒など該網状組織体を水に沈めることの出来る重い物
や、片辺に水に浮く合成樹脂製発泡体を取り付けて生物
の生息する水中に該網状組織体の面を水面に対して垂
直、平行、斜めに水の流れに対応して水底、水中、水面
近くに沈めて生物膜担体として使用する水浄化方法であ
る。池水、湖等の水条件によって異なるが、該網状組織
体の炭素繊維束の単繊維が揺動するような角度、深さな
どを調整して浸漬するのが好ましい。
【0031】特に、対向する両辺にパイプや棒状などを
取り付ける場合、該網状組織体の縦または/および横辺
にタックを入れるなどして前記網状組織体の縦または/
および横の長さに対して10〜30%短く固定した生物
膜担体モジュールとし、これを生物の生息する水中に浸
漬することが好ましい。10%以下の場合は該炭素繊維
束を構成する単繊維間に微生物が固着しにくくなり、3
0%以上の場合は隣接させる該網状組織体との擦れ合い
をさける必要ができ隣接間隔を余り狭くできなくなるた
め水処理水槽などに設置したときの該炭素繊維束の量を
多くできなくなる。10〜30%の場合、該網状組織体
の該炭素繊維束が容易に揺動して構成する単繊維間への
水の出入りがより多くなり、微生物の固着による水浄化
性、藻場形成能を高めることが出来る。
【0032】また、片辺に重量の重いパイプ、棒類とし
片端に発泡体を取り付けたものは、一方が下に、他方が
浮上して、水の流れ、動きによって揺動し炭素繊維束を
構成する単繊維への微生物固着を増進し、優れた水浄化
性を達成できるので好ましい。
【0033】本発明の藻場を形成する方法は、該網状組
織体を生物の生息する水に沈めて微生物を固着さて藻場
を形成する方法である。沈めた該網状組織体の形態は特
に制約はないが、好ましくは、該組織体の上辺を浮体
に、下辺を重りに固定し魚類が遊回できる面間隔で、
池、沼、湖、ダム、海などの必要水域に設置する方法で
ある。
【0034】本発明の該網状組織体は生物膜担体として
用いることにより水を効率よく浄化でき水環境を改善で
き、また、藻場(魚礁も含む)形成に適用することによ
り魚介類にとって良好で自然のままの生物連鎖を形成で
きる効果がある。
【0035】
【実施例】以下に、実施例により本発明を具体的に説明
するが、本発明はその要旨を超えない限り下記実施例に
限定されるものではない。なお、特に指定しない限り%
は重量%を意味する。
【0036】実施例1 直径7.6cm、長さ28cmの紙製ボビンに巻いたP
AN系炭素繊維束(東邦レーヨン(株)製商品名HTA
−12K、炭素含有量95%、繊維直径7ミクロンm、
構成本数12000本、引張強度3780MPa、引張
弾性率238GPa、サイズ剤として分子量350のポ
リオキシエチレン45部とポリオキシプロピレン55部
ブロックポリマーを1.2%付着)と直径1cmのボビ
ンに巻いたポリ塩化ビニリデン繊維(直径20ミクロン
メートルのモノフィラメント、引張強度350MPa、
引張弾性率7GPa)をたて糸とし、横糸を縦糸と同じ
ボビン巻きポリ塩化ビニリデン繊維とし、縦糸の該炭素
繊維束はボビンから引き出す際に撚りが掛からないよう
にボビンの横から引き出し、その他の繊維はボビンの縦
から引き出して製網機を用いて炭素繊維束を打ち込んだ
網状組織体を作製した。
【0037】縦糸と横糸は2cmに1本の割合で等間隔
に打ち込み、また、縦糸の該炭素繊維束は4cmに1本
の割合として、横幅120cm、網目の大きさ20m
m、網目間にある該炭素繊維束の撚り数平均0.1個/
mの横幅120cmの該網状組織体を作製した。なお、
撚り数は次のようにして求めた。すなわち、該網状組織
体の縦方向5mを切り出して緊張状態で両端を固定した
後、該炭素繊維束と交差している横糸をはさみで切断し
取り除いた後、該炭素繊維束の端に直径0.2mmのピ
ンを差し込み、ついで差し込んだ状態を維持しながら他
端まで該束を分割して他端に撚りを集めた後、それを0
個になるように戻すときに撚りを数えて求めた。
【0038】得られた網状組織体を横幅120cm、縦
長さ1.5mに切り出し、ステンレス製パイプで作製し
た枠の全面に、該網状組織体の縦長さが上下に緊張状態
になるように固定した。すなわち、該枠は直径1.2c
mのステンレスパイプで出来たものであって、高さ2.
5mの2本の柱を、柱の下から25cmと175cmの
2カ所の位置に長さ960cmの2本のパイプを用いて
四角形ができるようにつないだもの(四角形の長辺間距
離150cm)である。
【0039】このようにして作った枠の四角形部分の全
面に該網状組織体を該炭素繊維が柱と平行になるように
固定したものを作製した。これを1モジュールとして、
幅2m、長さ10m、深さ2mの水槽に、横壁、長さ方
向の壁にくっつかず且つ、互いの面の間隔が10cmと
なるように15モジュール設置した。これに、BOD3
5mg/L、SS25mg/L、透視度計で測定される
透視度が38cmの池水を60L/分の水量で連続的に
水槽の長尺方向の上手からホースで流入させ、該網状組
織体に接触させた後下手からオーバーフローさせて排水
する方法で水処理した。30日間連続的に通水処理した
後、水槽の流入原水と排水とを分析した結果を表1に示
すように、該網状組織体で水を処理することにより大幅
にBOD、SSが減少し、また透視度も向上しており、
水が十分処理されていた。
【0040】実施例2 実施例1に記載のモジュールを該網状組織体の面の間隔
を5cmとした30モジュールを、湖の水深3mの水底
に、水面に対して柱が垂直になるように固定した。10
0日間後には30モジュールの該炭素繊維束の単繊維に
微生物がびっしり固着して良好な藻場が形成され、フ
ナ、ブラックバス、ワカサギなどの魚の稚魚、幼魚、成
魚が沢山、該網状組織体の周りに回遊しており、特に、
稚魚、幼魚は該網状組織体の網目やモジュール間を自由
に回遊していたが、成魚は通過できず、また、稚魚、幼
魚は成魚が近付くと該網状組織体の藻場内に逃げ込み、
成魚に食べられず成長する様子が認められた。また、該
網状組織体の藻場には微生物だけでなくその周りにプラ
ンクトンが群がっており、各魚の食餌となっているなど
良好な藻場を形成していた。
【0041】実施例3 枠が直径1.2cmのステンレスパイプで出来たもので
あって、高さ2.5mの2本の柱と、柱の下から25c
mと170cmの2カ所の位置に長さ960cmの2本
のパイプとを用いて四角形ができるようにつないだ枠
(四角形の長辺間距離140cm)に、横幅120c
m、縦長さ1.5mに切り出した網状組織体を、網状組
織体の縦糸である炭素繊維束を柱に平行で且つたるむよ
うに取り付けたものを1モジュールとする以外は実施例
1と同様にして水槽に浸漬し水を通し処理した。30日
間連続的処理した後、水槽の流入原水と排水とを分析し
た結果を表1に示すように、該網状組織体で水を処理す
ることにより実施例1に比べてBOD、SSの減少、透
視度の向上が顕著であり水処理が十分であることが認め
られた。また、該網状組織体の炭素繊維束に微生物が固
着していたが、その固着量は実施例1に比べて視覚的に
多く、これが水浄化によい影響を及ぼしたものと思われ
る。
【0042】実施例4、実施例5、比較例1,比較例2 直径1cmのボビンに巻いたポリ塩化ビニリデン繊維
(直径20ミクロンメートルのモノフィラメント、引張
強度350MPa、引張弾性率7GPa)をたて糸およ
び横糸として、ボビンの縦から引き出して製網機を用い
て、縦糸と横糸ともに前記フィラメントが2本合わせと
なっていて1cmに1本の割合で等間隔に打ち込んだ横
幅120cm、網目の大きさ10mmのポリ塩化ビニリ
デン製網状組織体を作製した。
【0043】この網状組織体の横幅方向の網目4個毎
で、網状組織体の縦方向に50cm毎の網目2個にジグ
ザグにくぐらせることを繰り返して、網目をくぐってい
ない炭素繊維束の長さが50cmのものと55cmのも
のの2種の複合網状組織体を作製した。ここで用いた炭
素繊維束は直径7.6cm、長さ28cmの紙製ボビン
に巻いたPAN系炭素繊維束(東邦レーヨン(株)製商
品名テルメックス12K、炭素含有量87%、繊維直径
7.3ミクロンm、構成本数12000本、引張強度2
580MPa、引張弾性率84GPa、サイズ剤として
ポリオキシエチレン45部とポリオキシプロピレン55
部ブロックポリマー分子量350を1.2%付着)であ
り、これをボビンの横から引き出して該網状組織体の網
目にくぐらせて作製した。前記網目をくぐっていない炭
素繊維束の長さが50cmのものおよび55cmの複合
網状組織体は、実施例1に記載の方法で求めた撚り数を
0.1個/mとした。
【0044】これとは別に、撚り数が1個/mとして作
製した実施例1と同じボビンに巻いた炭素繊維束を引き
出して網目をくぐっていない炭素繊維束の長さが50c
mで、撚り数が1個/mである複合網状組織体を作製し
た。該複合網状組織体で網目をくぐっていない炭素繊維
束の長さが50cmで撚り数が0.1個/mのもの(実
施例4)、網目をくぐっていない炭素繊維束の長さが5
5cmで撚り数が0.1個/mのもの(実施例5)、網
目をくぐっていない炭素繊維束の長さが50cmで撚り
数が1個/mであるもの(比較例1)、および該ポリ塩
化ビニリデン製網状組織体(比較例2)を実施例1と同
様にしてモジュールを作製し水槽に配置して水処理し
た。その結果を表1にしめすが、ポリ塩化ビニリデンだ
けの網状組織体に比べて該炭素繊維を配置した網状組織
体はBOD、SSを大幅に減らし、透視度を向上させた
が、炭素繊維束に撚り数が多いポリ塩化ビニリデンだけ
の網状組織体に比べて効果はあるが、撚り数の少ない本
発明の範囲のものに比べるとかなり効果が小さかった。
【0045】
【表1】
【0046】
【発明の効果】本発明の該網状組織体は生物膜担体とし
て水に浸漬した場合該炭素繊維束の単繊維間に容易に水
が出入りできるので、単繊維への微生物の固着が多くな
り水を効率よく浄化でき、また該網状組織体は有機又は
無機の繊維の網状組織体と一体化しているため炭素繊維
の欠点である脆さを補うことができ、水中で使用して常
に揺動しても損耗や切断が起きにくく長期に亘り生物膜
担体として使用できる。また、該網状組織体を生物の棲
む湖沼、池、海などの水中に生物膜担体として使用した
場合、網目の大きさや設置を適当に選択することにより
稚魚、幼魚、成魚などの棲み分けができるだけでなく該
炭素繊維束の単繊維に微生物やプランクトンが集まり固
着して魚介類の良好な食餌となるため自然のままの生物
連鎖系を形成でき、水環境を改善できる効果がある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 溝越 恵 東京都中央区日本橋三丁目3番9号 東邦 レーヨン株式会社内 (72)発明者 菅原 通明 東京都墨田区業平三丁目7番12号 三福商 事株式会社内 (72)発明者 有田 敏也 東京都墨田区業平三丁目7番12号 三福商 事株式会社内 Fターム(参考) 2B003 EE04

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】炭素含有量が85重量%以上を有する炭素
    繊維束または/および炭素質繊維束を含む網目の大きさ
    が少なくとも10mm以上で且つ網目間の該繊維束の撚
    り数が0.5個/m以下である生物膜担体用または水中
    藻場形成用網状組織体。
  2. 【請求項2】有機または無機繊維を用いた網状組織体に
    炭素含有量が85重量%以上を有する炭素繊維束または
    /および炭素質繊維束を結束させ、結束点間が少なくと
    も10mm以上で且つ結束点間の該繊維束の撚り数が
    0.5個/m以下である生物膜担体用または水中藻場形
    成用複合網状組織体。
  3. 【請求項3】結束点間にある炭素繊維束が結束点間の直
    線距離に対して10〜20%長い請求項2に記載の生物
    膜担体用または水中藻場形成用複合網状組織体。
  4. 【請求項4】請求項1、請求項2、請求項3に記載の組
    織体からなる生物膜担体を生物の生息する水中に浸漬し
    て生物を固着させ、水を浄化する方法。
  5. 【請求項5】 請求項1、請求項2、請求項3に記載の
    組織体からなる生物膜担体を生物の生息する水中に浸漬
    して生物を固着させ、藻場を形成する方法。
  6. 【請求項6】 生物膜担体を組織体の縦または/および
    横を該組織体の長さに対して10〜30%短く固定した
    生物膜担体部材を生物の生息する水中に浸漬して生物を
    固着させる請求項4、請求項5に記載の方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007105002A (ja) * 2005-10-17 2007-04-26 Sumiko Techno-Research Co Ltd 外来魚採捕装置
WO2010035800A1 (ja) * 2008-09-26 2010-04-01 独立行政法人国立高等専門学校機構 水浄化システム及び浄化対象水中の溶存酸素濃度の増加方法

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JPWO2010035800A1 (ja) * 2008-09-26 2012-02-23 独立行政法人国立高等専門学校機構 水浄化システム及び浄化対象水中の溶存酸素濃度の増加方法

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