JP2001177304A - 有極型帯域通過フィルタ - Google Patents

有極型帯域通過フィルタ

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 小形にする。比帯域を小さくする。 【解決手段】 二重巻ヘリカル線路9Aの一方の線路1
を入口の同軸コネクタ10と出口の同軸コネクタ11に
接続する。他方の線路2の両端に直列共振器15,15
をそれぞれ接続する。両共振器15,15は、2つのヘ
リカル線路21,21と両線路の接続点とアース間に挿
入したキャパシタンスCで構成される。両共振器15,
15は1/4波長の開放スタブと等価な回路となり、そ
の開放スタブの特性インピーダンスは9500Ωと高い
値で、フィルタは800MHzで比帯域0.75%の狭
帯域特性を示した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は高周波領域で用いる
有極型帯域通過フィルタに関する。
【0002】
【従来の技術】図6に示すように、互いに結合した第1
の線路1と第2の線路2をアース板上に配置し、これら
2本の線路1,2のうち、一方の線路2の端末4,5に
フィルタとして阻止する帯域の中心周波数を反共振周波
数とする共振器6,6を接続するとともに、他方の線路
1の各端7,8をそれぞれ入力と出力としたMHz〜G
Hzの周波数領域で用いる有極型帯域通過フィルタが、
特開平10−200303号公報(特願平9−2789
号)で公知である。
【0003】符号9は第1の線路1と第2の線路2とか
らなる結合線路を示す。実際の入力信号は、線路1の一
端7に接続された入力端子10とアース部10′との間
に印加される。また、出力信号は線路1の他端8に接続
された出力端子11とアース部11′とに出力される。
【0004】共振器6,6は集中定数回路又は分布常数
回路又はそれらの組み合わせで構成され、線路2の端末
4,5とアース板3との間に挿入接続される。
【0005】図7は集中定数回路で構成された共振器6
の例で、コイルLとコンデンサCの並列回路の反共振周
波数をフィルタとして阻止する帯域の中心周波数に合わ
せている。
【0006】図6,図7の有極型帯域通過フィルタを第
1の従来技術という。
【0007】上記第1の従来技術の共振器6,6の代り
に直列共振器を用いると有極型帯域通過フィルタとなる
ことも周知である(以下これを第2の従来技術とい
う)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】近年のデジタル化に伴
い、GHz付近の高周波領域で狭帯域の通過特性を有す
る小形の有極型帯域通過フィルタの実現が望まれてい
る。
【0009】そこで本願発明者は、その実現に向けて鋭
意研究を重ねてきたが、共振器6,7の代わりに接続す
る直列共振器として、図8に示す1/4波長開放スタブ
12からなる直列共振器13とか、図9に示すコイルL
とコンデンサCの直列共振回路からなる直列共振器14
を用いたありきたりの構成では、要望されている程の狭
帯域を得られず、かつ小形化が困難であることが分かっ
た。
【0010】つまり、開放スタブ12のインピーダンス
Zfは、 Zf=−jWcotτω、τ=π/2ω0 ・・・(1) で示され、ω=ω0 で共振してZf=0となるが、その
前後の周波数でのインピーダンスの変化の様子は、1/
4波長開放スタブの特性インピーダンスWが大きい程急
激な変化をする。それは、共振周波数f0 におけるイン
ピーダンスZfの勾配を求めると、
【0011】
【数1】
【0012】となるから、Wが大きい程、図10の勾配
が急になる。
【0013】図10は直列共振器13又は14のインピ
ーダンスが周波数fに対して変わる様子を示すが、f0
で共振しているとき、実線aより破線bの共振特性の方
が周波数fに対して急速な変化をしているので、bの特
性の共振器又は共振回路を用いた方がより狭帯域なフィ
ルタとなることが分る。
【0014】また、図9の直列共振器14を構成する直
列共振回路のインピーダンスZrのf0 における勾配
は、
【0015】
【数2】
【0016】であるから、等価特性インピーダンスWe
は、 We=2L/τ0 ・・・(2) となる。高周波では、分布定数回路を用いるところか
ら、特性インピーダンスを活用できる。
【0017】前記第2の従来技術で、有極型帯域通過フ
ィルタの通過帯域幅を狭くするには、直列共振器13や
14の等価特性インピーダンスを高くすることが考えら
れる。等価特性インピーダンスを高くする回路の1つと
して図12の開放スタブまたは短絡スタブの回路を用
い、その高調波の共振点のところで使用する方法が考え
られる。
【0018】開放スタブであれば、線路長が1/4波長
となる最初の共振周波数の奇数倍のところで同様な共振
をするので、線路の特性インピーダンスをWfとすると
高調波の共振点における等価な特性インピーダンスは、 We=nWf (n=odd) ・・・(3) となる。
【0019】また、同じ図12の回路で終端を短絡した
短絡スタブでは、1/2波長で最初の直列共振となり、
その偶数倍で高調波の共振をするので等価特性インピー
ダンスは式(3)のnが偶数のときの値となる。
【0020】このように、線路長を長くして高調波の共
振のところで使用すれば、線路の特性インピーダンスの
整数倍の高い特性インピーダンスのものを実現すること
ができ、狭帯域の有極型帯域通過フィルタができそうに
思われる。
【0021】ところが、この方法で共振器を構成するに
はヘリカル線路のような特殊な構造の線路の高調波モー
ドを用いる必要があり、ヘリカル線路の高調波モードを
用いても特性インピーダンスに限界があって、かつ共振
器の抵抗分も増大してしまうので、比帯域が1%以下の
狭帯域なフィルタとするには不十分であるという問題点
があった。
【0022】そこで、本発明は、かかる問題点を解消で
きる有極型帯域通過フィルタを提供することを目的とす
る。
【0023】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、請求項1の発明は、互いに結合した第1の線路
(1)と第2の線路(2)をアース板(3)上に配置
し、これら2本の線路(1)(2)のうち一方の線路
(2)の両方の端末(4)(5)にフィルタとして通過
させる帯域の中心周波数を共振周波数とする直列共振器
(15)(15)を接続すると共に、他方の線路(1)
の各端(7)(8)をそれぞれ入力と出力とする帯域通
過フィルタにおいて、直列共振器(15)(15)を、
ジャイレータ定数が大きい(G1 )虚ジャイレータ(1
6)とジャイレータ常数が小さい(G2 )虚ジャイレー
タ(17)を順に3個以上の奇数個継続接続し、終端を
開放して構成したことを特徴とする有極型帯域通過フィ
ルタである。
【0024】請求項2記載の発明は、請求項1の有極型
帯域通過フィルタにおいて、直列共振器(15)(1
5)を、1/4波長の2つの線路(21)(21)を直
列に接続すると共に両線路の接続点(22)をキャパシ
タンス(C)でアース板(3)にシャントに接続して構
成したことを特徴とするものである。
【0025】請求項3記載の発明は、請求項2の有極型
帯域通過フィルタにおいて、2つの線路(21)(2
1)を直列に接続して両線路の接続点(22)にキャパ
シタンス(C)を設ける代わりに、両線路(21)(2
1)の前方側の線路(21)の後端(21a)と後方側
の線路(21)の前端(21b)をアース板(3)に接
続するとともに、前方側の線路(21)の後端部と後方
側の線路(21)の前端部とを近接させて両線路(2
1)(21)の結合部(23)としたことを特徴とする
ものである。
【0026】この発明では、キャパシタンスの代わりに
線路の結合で構成している。
【0027】請求項4記載の発明は、請求項2の有極型
帯域通過フィルタにおいて、第1の線路(1)と第2の
線路(2)を二重巻ヘリカル線路(9A)で構成すると
ともに、直列共振器(15)(15)を構成するそれぞ
れ1/4波長の2つの線路(21)(21)をヘリカル
線路で構成したことを特徴とするものである。
【0028】
【発明の実施の形態】次に本発明の好ましい実施の形態
を実施例に従って説明する。
【0029】〔実施例1〕図1は請求項1に対応するも
ので、互いに結合した第1の線路1と第2の線路2をア
ース板3上に配置し、これら2本の線路1,2のうち、
一方の線路2の両方の端末4,5にフィルタとして通過
させる帯域の中心周波数を共振周波数とする直列共振器
15,15を接続すると共に、直列共振器15,15を
それぞれジャイレータ常数が大きいG1 の虚ジャイレー
タ16とジャイレータ常数が小さいG2 の虚ジャイレー
タ17を順に3個継続接続し、終端を開放して構成して
いる。
【0030】符号9は第1の線路1と第2の線路2とか
らなる結合線路を示す。
【0031】実際の入力信号は、線路1の一端7に接続
された入力端子10とアース部10′との間に印加され
る。また、出力信号は線路1の他端8に接続された出力
端子11とアース部11′とに出力される。
【0032】1つの虚ジャイレータは、具体的にいろい
ろな回路で構成できるもので、図1(c)の開放スタブ
19も線路長が1/4波長となる周波数ではその四端子
行列が、
【0033】
【数3】
【0034】となるので、ジャイレータ常数GがG=W
rの虚ジャイレータとなるものである。
【0035】従って、図1(b)のように虚ジャイレー
タ3個で構成した直列共振器15の回路に等価な図1
(c)の開放スタブ19の特性インピーダンスWrは、 Wr=G1 2 /G2 ・・・(4) となる。そこで、このWrを大きくするためにはG1
大きくして、G2 を小さくすればよいことが分る。
【0036】G1 の大きい虚ジャイレータ16の回路と
していろいろあるが、小形で最も簡単な構造のものはヘ
リカル線路を用いた1/4波長の線路で図1(d)に示
す回路となる。
【0037】また、G2 の小さい虚ジャイレータ17の
回路としてもいろいろあるが、1つの例として図1
(e)のように特性インピーダンスWの短い2本の線路
20,20の間(接続点)にキャパシタンスCをシャン
トに接続したものがある。Cの容量を大きくする程G2
が小さくなるので、Cを可変とすることによって、任意
のジャイレータ常数G2 に設定することができる。
【0038】図1(e)の線路20,20の長さはそれ
ぞれ等しくF2 の周波数の1/4波長の長さであるとし
たとき、G2 は次の(5)式で与えられるものである。
【0039】 G2 =Wtan(πF0 /2F2 ) ・・・(5) 以上のことから、特性インピーダンスの格段に高い開放
スタブ19と等価な回路として同図(f)のような回路
が構成される。但し、図1(f)の回路ではG 1 を作る
同図(d)の線路と図1(e)の線路は同じ線路を用い
るようにして構造を簡単にしている。22は接続点であ
る。
【0040】なお、(5)式でF0 は、通過域中心周波
数、Fは、Gの虚ジャイレータの線路長をきめる
周波数である。
【0041】直列共振器15は、上記実施例では、大き
いG1 の虚ジャイレータ16,16と小さいG2 の虚ジ
ャイレータ17を図示のように3個継続接続して構成し
たが、一般に3個以上の奇数個でも構成できるものであ
る。
【0042】〔実施例2〕図1(f)の直列共振器15
を用いて構成される有極型帯域通過フィルタの回路は図
2のようになり、これが請求項2の発明に対応する。
【0043】図2において、直列共振器15,15の等
価的な特性インピーダンスWrの値は主として通過帯域
幅を決めているが、結合線路9の平衡特性インピーダン
スWbは通過域の平坦特性に関係し、不平衡特性インピ
ーダンスWuは減衰の立ち上がり特性に主として関係し
ている。
【0044】〔実施例3〕請求項3の発明に対応するも
ので、直列共振器15,15の回路構成が図2の実施例
2と一部異なっている。即ち、接続点22にシャント用
のキャパシタンスCを接続する代りに、図3に示すよう
に両線路21,21の前方側(図示左側)の線路21の
後端21aと後方側(図示右側)の線路21の前端21
bをアース板3に接続するとともに、前方側の線路21
の後端部と後方側の線路21の前端部とを近接させて両
線路21,21の結合部23を形成して直列共振器15
を構成したもので、キャパシタンスCの代わりに線路の
結合を用いて図1(f)と等価な直列共振回路を構成し
ている。
【0045】〔実施例4〕請求項4の発明に対応するも
ので、図4に示すように、第1の線路1と第2の線路2
からなる結合線路を二重巻ヘリカル線路9Aで構成する
とともに、直列共振器15,15を構成する1/4波長
の2つの線路21,21をヘリカル線路で構成してい
る。10は入力用の同軸コネクタ、11は出力用の同軸
コネクタ、3Aはアース板を兼ねた筺体で、その外形寸
法は高さHが77mm、幅Bが40mm、図面に直角方
向の厚みが20mmである。
【0046】二重巻ヘリカル線路9Aの巻線の直径が1
mm、ヘリカルの直径が6mm、巻数が4、ピッチが4
mmである。
【0047】ヘリカル線路21は巻線の直径が1.2m
m、ヘリカルの直径が6mm、巻数が5、ピッチが3m
mである。
【0048】コンデンサCは最大5pFの可変型、周波
数調整ネジ24,24は筺体3Aに螺着され、その材質
は金属又は誘導体で造られている。
【0049】図4の有極型帯域通過フィルタの周波数特
性を図5に示す。
【0050】実線は設計上の計算値、○印は測定値であ
る。なお、設計値としては、800MHzあたりで通過
帯域幅を6MHzとし、この場合の比帯域は0.75%
となる。このような狭帯域のフィルタを製作するために
は、負荷を50Ωとすると開放スタブの特性インピーダ
ンスを約9500Ωとする必要がある。
【0051】各線路素子をヘリカルを用いて製作し、測
定によって求めた各特性インピーダンスの値は、 Wu=175Ω Wb=70Ω W=250Ω Wr=9500Ω キャパシタンスCの値はWr=9500Ωとするために
調整しているので明確ではない。これらの値を用いて計
算したフィルタの特性が図5の実線である。
【0052】但し、平衡伝送と不平衡伝送の位相速度の
違いがあるため、それを考慮した特性である。平衡伝送
の等価的な線路長は731MHzの1/4波長で、不平
衡伝送のそれは1124MHzである。このような位相
の違いがあるために計算結果で減衰極が非対称に現れ
る。
【0053】測定値が理論計算値とよく一致している。
Wrとしては更に高いものが得られているので、より狭
帯域なフィルタを得られることが確実である。
【0054】
【発明の効果】本発明の有極型帯域阻止フィルタは上述
のように構成されているので、MHz〜GHzの周波数
領域で比帯域が1%以下の狭帯域のフィルタが実用化で
き、かつ小形にできる利点がある。
【0055】そのため、近年のデジタル放送等に伴う狭
帯域通過フィルタの要求に応えることができ、デジタル
信号技術の実用化、促進に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1で、(a)は全体の回路図、
(b)は虚ジャイレータ3個で構成した共振器の図、
(c)は直列共振器としての開放スタブの図、(d)は
1 の虚ジャイレータの回路図、(e)は小さいG2
虚ジャイレータの回路図、(f)は特性インピーダンス
の高い線路と等価な回路の図である。
【図2】本発明の実施例2の回路図である。
【図3】本発明の実施例3の要部回路図である。
【図4】本発明の実施例4の構造図である。
【図5】本発明の実施例4の特性線図である。
【図6】従来技術の回路図である。
【図7】従来技術の回路の一部を示す図である。
【図8】開放スタブの図である。
【図9】直列共振回路の図である。
【図10】共振器のインピーダンス特性線図である。
【符号の説明】
1,2,21 線路 3 アース板 3 筺体 4,5 端末 7,8 端 9 結合線路 9A 二重巻ヘリカル線路 15 直列共振器 16,17 虚ジャイレータ 21a 後端 21b 前端 22 接続点 23 結合部 C キャパシタンス G1 ,G2 ジャイレータ常数

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 互いに結合した第1の線路(1)と第2
    の線路(2)をアース板(3)上に配置し、これら2本
    の線路(1)(2)のうち一方の線路(2)の両方の端
    末(4)(5)にフィルタとして通過させる帯域の中心
    周波数を共振周波数とする直列共振器(15)(15)
    を接続すると共に、他方の線路(1)の各端(7)
    (8)をそれぞれ入力と出力とする帯域通過フィルタに
    おいて、 直列共振器(15)(15)を、ジャイレータ定数が大
    きい(G1 )虚ジャイレータ(16)とジャイレータ常
    数が小さい(G2 )虚ジャイレータ(17)を順に3個
    以上の奇数個継続接続し、終端を開放して構成したこと
    を特徴とする有極型帯域通過フィルタ。
  2. 【請求項2】 直列共振器(15)(15)を、1/4
    波長の2つの線路(21)(21)を直列に接続すると
    共に両線路の接続点(22)をキャパシタンス(C)で
    アース板(3)にシャントに接続して構成したことを特
    徴とする請求項1記載の有極型帯域通過フィルタ。
  3. 【請求項3】 2つの線路(21)(21)を直列に接
    続して両線路の接続点(22)にキャパシタンス(C)
    を設ける代わりに、両線路(21)(21)の前方側の
    線路(21)の後端(21a)と後方側の線路(21)
    の前端(21b)をアース板(3)に接続するととも
    に、前方側の線路(21)の後端部と後方側の線路(2
    1)の前端部とを近接させて両線路(21)(21)の
    結合部(23)としたことを特徴とする請求項2記載の
    有極型帯域通過フィルタ。
  4. 【請求項4】 第1の線路(1)と第2の線路(2)を
    二重巻ヘリカル線路(9A)で構成するとともに、直列
    共振器(15)(15)を構成するそれぞれ1/4波長
    の2つの線路(21)(21)をヘリカル線路で構成し
    たことを特徴とする請求項2記載の有極型帯域通過フィ
    ルタ。
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