JP2001153767A - 核酸損傷をモニタリングするための細胞標本作製方法 - Google Patents

核酸損傷をモニタリングするための細胞標本作製方法

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JP2001153767A
JP2001153767A JP33484899A JP33484899A JP2001153767A JP 2001153767 A JP2001153767 A JP 2001153767A JP 33484899 A JP33484899 A JP 33484899A JP 33484899 A JP33484899 A JP 33484899A JP 2001153767 A JP2001153767 A JP 2001153767A
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cell
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Noriko Kato
則子 加藤
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 小核が出現している細胞を明確に識別できる
標本作製方法を提供することであって、幼若赤血球と成
熟赤血球の容易且つ正確な識別を高感度に行うことが可
能な標本作製方法を提供すること。 【解決手段】 核酸損傷をモニタリングするための細胞
標本を作製する方法であって、前記標本をアクリジンオ
レンジ10μg/ml以上40μg/ml未満の染色液
により染色するステップを具備する方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、核酸損傷をモニタ
リングするための細胞標本の作製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】核酸損傷のモニタリングは、変異原性及
び癌原性を検出するために広汎に行われている。特に、
小核試験は、一般的に使用される癌原性のモニタリング
方法である。この試験は、化学物質や天然物等により惹
起された染色体異常に伴なって生じた細胞質の染色体断
片を小核として検出するものである。
【0003】現在、小核試験の標本作製に用いられる試
料は、主に骨髄細胞、末梢血、粘膜の剥離細胞等であ
る。最も基本的な小核試験では骨髄細胞が用いられる。
具体的には、塗沫した標本を、例えば、ギムザ染色やア
クリジンオレンジ染色等により染色し、標本中から目的
とする幼若赤血球を探し出して計数し、小核を有する細
胞の出現頻度を求める方法である。骨髄細胞を使用した
場合、その標本中には赤血球系細胞(幼若赤血球、成熟
赤血球、赤芽球等)、白血球(好塩基球、好酸球、好中
球)、リンパ球、巨核球等が混在する。そのような標本
について、幼若赤血球を探し、小核を有する該血球の出
現頻度を計数するという操作を目視観察により行うため
には、計数者は、細胞を判別し、且つ小核を判別するた
めの専門的知識を有した熟練者であることが要求され
る。また、そのような熟練者であっても、目視による計
数に必要な労力は膨大なものである。
【0004】一方で、小核試験を簡便に行うための自動
化も試みられている。その試みの1例が、イメージアナ
ライザ画像解析装置を用いた方法である(特開平9−8
9886、特開平6−138119)。しかし、このよ
うな画像解析には、自動解析の実用化を妨げる問題が存
在する。その問題は、従来の画像解析においては、信頼
できるアルゴリズムが、未だ確立されていないことに起
因する。即ち、該解析における最適な条件が不明である
ため、試験実施者は、試験によって得られた画像を目視
により、複数の条件下で解析する必要があるのである。
【0005】また、特開平9−89886は、標本に適
切な試料として、末梢血における幼若赤血球を挙げてい
る。末梢血における小核を有する細胞は、マウス以外の
一般の哺乳類の脾臓によって異常細胞として分解される
ため、検出感度が低いと言われている。また、仮に、他
の由来から得た試料を用いて、前記方法により標本を作
製して小核試験を行った場合には、小核の識別能が低下
し、それにより検出の信頼性が問題となる。
【0006】イメージアナライザ画像解析方法の他に
も、レーザスキャンサイトメータ(以下、LSCと略
す)による小核試験が提案されている(特開平10−2
06421)。LSCでは、アクリジンオレンジ染色液
により染色した標本を用いる。アクリジンオレンジ染色
は多染色性であり、目的とされる幼若赤血球細胞の細胞
質は赤色蛍光を発し、そこに存在する小核は黄緑色蛍光
を発する。また、成熟赤血球は如何なる蛍光もなく、且
つその他の有核細胞、例えば、赤芽球、白血球(好塩基
球、好中球、好酸球)、リンパ球、巨核球の核は、黄緑
色蛍光を発する。従って、熟練者に限ることなく、正確
に小核を有する幼若赤血球細胞を検出することが理論的
には可能である。また、小核以外のノイズを小核と間違
えずに検出する改良方法(特開平9−89886)も提
案されている。
【0007】しかし実際には、上述のような理論通りの
結果を得ることは容易ではない。生細胞であるが故に、
標本の固定や染色法によっては、標本に混在する小核を
始めとする有核細胞の核及び幼若赤血球の両者が、共に
赤く染色されてしまう染色ムラが度々生じる。そのよう
な標本では、小核の正確な認識に支障が生じる。このよ
うな場合、熟練者が識別を行わない限り正確な結果を得
ることはできない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、小核試
験を自動化するに当たり、従来行ってきた標本作製方法
に問題があることを新たに見出した。即ち、鋭意研究の
結果、顕微鏡下で目視観察を行う場合には問題とならな
かった染色ムラが、驚くべきことに自動化する場合には
重大な問題点となることを発見するに至った。従来にお
いては、上記染色ムラは、標本の染色にあっては一般的
に避けられない事象であり、試験従事者の経験の深浅に
負うところが大きかった。従って、かかる染色ムラを自
動化装置で測定すると、小核含有細胞の一部だけしか検
出できず、解析効率が悪くなる傾向がある。
【0009】従って、本発明は、小核が出現している細
胞を明確に識別できる標本作製方法を提供することであ
って、詳しくは、小核を特異的に染色できる標本作製方
法を提供することを目的とする。また、本発明は、目的
とする小核を、それ以外の非目的物と正確に識別し、検
出されるべき小核を過不足なく計数することで、常に客
観的且つ正確な試験結果を得ることができる標本の作製
方法を提供することを目的とする。本発明は、更に、血
液細胞分離の操作を導入した標本の作成方法を提供する
ことにより、ヒト以外にも容易に適用できる細胞標本作
製方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、下記の手
段により上記課題を解決し、目的を達成することを見出
した。即ち、 (1) 核酸損傷をモニタリングするための細胞標本を
作製する方法であって、色素の分子構造が変化しない安
定化条件で前記標本を染色することを特徴とする方法; (2) (1)に記載の細胞標本作製方法であって、安
定化条件が、色素の複合体化を形成しない低濃度である
ことを特徴とする方法; (3) (2)に記載の細胞標本作成方法であって、前
記色素がアクリジンオレンジであり、且つその濃度が1
0μg/ml以上40μg/ml未満であることを特徴
とする方法; (4) (1)から(3)の何れか1項に記載の細胞標
本作製方法であって、前記標本が哺乳類細胞に由来し、
且つ血液、赤血球、白血球、生殖系臓器、口腔粘膜、消
化器内粘膜、骨髄、肝臓、脾臓、リンパ節、胸腺、腎臓
又は皮膚の何れかに由来する哺乳類細胞により得た試料
を用いて製作した標本である方法;及び、 (5) (1)から(4)の何れか1項に記載の細胞標
本作製方法であって、前記標本が、細胞分離操作により
得た試料を用いて作製した標本である方法である。
【0011】
【発明の実施の態様】上述した通り、本発明者らは、顕
微鏡下で目視観察を行う場合には問題とならなかった染
色ムラが、驚くべきことに自動化する場合には重大な問
題点となることを発見するに至った。また同様に、一般
的に使用される従来の骨髄標本の製作方法により作製さ
れた標本は、幼若赤血球と成熟赤血球の識別が困難であ
り、正確な認識を行うためには、熟練した経験者による
目視が不可欠であったことも上述した。本発明の標本作
製方法は、上記の発見に基づいてなされた発明である。
本発明の方法により作製された標本は、染色ムラを最小
限に止めることを可能である。また、本発明の方法によ
り作製された標本は、幼若赤血球と成熟赤血球との認識
が、容易且つ高感度に行うことが可能である。
【0012】以下、本発明の方法について説明する。本
発明の標本作製方法は、被検試料である細胞を対象動物
から採取するステップと、得られた細胞を濃度勾配液を
用いた遠心分離により分離して目的とする細胞を単離す
るステップと、10μg/ml以上40μg/ml未満
のアクリジンオレンジ染色液により染色するステップと
を具備する。更に、上記方法により作製された標本は、
レーザスキャンサイトメータ(オリンパス社)により解
析することが好ましい。
【0013】以下に、本発明で用いる核酸損傷をモニタ
リングするための手段、試料及び染色法、並びに本発明
の標本作製方法を説明する。
【0014】I.核酸損傷のモニタリング手段 本発明の方法により製作される標本は、核酸損傷のモニ
タリングに適した標本である。従って、本発明で作製さ
れた標本を解析することにより、変異原性試験及び/又
は癌原性試験、特に、小核試験及びコメットアッセイ
を、容易且つ高精度に行うことが可能になる。小核試験
とコメットアッセイは、両試験法とも、生体に被検物質
を投与し、その後、必要とする組織又は細胞を採取して
試料として該試料の核酸損傷を検出する方法である。従
って、2つの測定方法は同じ範疇に属する試験である。
【0015】以下で、更に詳しく小核試験及びコメット
アッセイを説明する。
【0016】1.小核試験 小核試験は、小核を検出することにより染色体異常発生
を調べるインビボ試験法の1つである。
【0017】(1)小核 例として、赤血球における小核形成の概要を以下に説明
する。小核は、赤芽球が分裂増殖した最終段階において
変異原が作用した場合に生成される。詳しくは、分裂中
期で染色体異常が生じた場合、即ち、染色体異常によっ
て動原体を持たない断片が形成された場合、又は紡錘体
等の細胞分裂装置が傷害された場合等に、他の染色分体
が両極に移動しても移動ができないため、染色体が赤道
板付近に取り残され、この取り残された染色体の周囲に
核膜の形成が起こり、小核が形成される。
【0018】(2)小核試験 本発明の標本作製方法により作製された標本を用いて解
析した場合、以下の試料について小核試験を行うことが
可能である。
【0019】増殖が盛んな骨髄細胞を標本作製に使用し
た場合、骨髄細胞のうちでも、赤血球細胞は、主核が脱
核するため、最も容易に小核の観察を行うことができ
る。安全性試験を行う場合、短期投与の小核試験では、
投与後の新しい細胞が観察できる幼弱赤血球を観察細胞
とすることが可能である。また、骨髄細胞と、血液中の
細胞(白血球、赤血球)を同時に小核試験に供すること
により、骨髄と血液とで相関した結果を得ることが可能
である。
【0020】更に、生殖系臓器、口腔粘膜、消化器内粘
膜、皮膚等を試験できる。例えば、肝臓を使用するとき
は、実験動物において、肝臓の切除を行い、齧歯類では
5日程度で再生肝を得ることができるので、再生した部
分をコラゲナーゼにより消化した後に小核試験に使用す
ることが可能である。
【0021】また、免疫系の細胞を小核試験し、健康状
態のモニタリングを行うことも可能である。ここで、リ
ンパ球の直接的な観察を行うことが理想的であるが、末
梢血中のリンパ球の大半は細胞周期の静止期(G0)で
あるため、そのままでは、長期的なモニタリングには不
適切である。そこで、白血球の存在する脾臓、リンパ
節、胸腺等を実験動物から摘出して試験することが好ま
しい。
【0022】また、細胞増殖が活発でない白血球は、細
胞分離後、培養液に移し、PHA(フィトヘマトアグル
チニン)やエプスタインバールウイルスでブラスト化す
ることにより、人工的に増殖し、そこにサイトカラシン
Bやコルヒチンを添加することにより、細胞周期を分裂
期に停止し、小核の検出感度を高める手法も可能であ
る。
【0023】本発明で用いる小核試験の概要は以下の通
りである。即ち、対象動物から、目的とする組織又は細
胞を採取し、必要であれば遠心分離により目的とする細
胞を更に分離採取し、これをスライドグラス上で特定濃
度のアクリルオレンジにより染色して標本とする。この
標本をレーザスキャンサイトメータ(オリンパス光学工
業株式会社、レーザサイトスキャン)により解析する。
【0024】(3)小核試験の目的 インビボで実験動物に被検物質を投与した後に、目的と
する組織又は細胞を採取し、本発明の方法により標本を
作製して解析することにより、医薬品の安全性試験、又
は化学物質若しくは天然物に関する変異原性試験及び/
又は発癌性試験を行うことが可能である。
【0025】また、化学療法により治療されている患者
から、或いは工場労働者から、目的とする組織又は細胞
を採取し、本発明の方法により標本を作製して解析する
ことにより、臨床医学、或いは労働衛生学における変異
原性及び/又は発癌性のモニタリングを行うことが可能
である。
【0026】更に、環境問題を生物学的に研究するため
の方法として、魚類及び両生類等の水棲生物から目的と
する組織又は細胞を採取し、本発明の方法により標本を
作製して解析することにより、水質汚染をモニタリング
することも可能である。
【0027】2.コメットアッセイ コメットアッセイは、単細胞電気泳動法(SINGLE
CELL GELELECTOROPHORESI
S:SCG)とも呼ばれる方法である。
【0028】(1)原理 生体から採取した細胞若しくは組織、又は培養細胞から
核を分離し、1つ1つの核に分離した後で、アルカリ溶
液下で電気泳動し、傷害されている遺伝子を顕微鏡によ
り測定する方法である。
【0029】本発明において、核酸損傷をモニタリング
する手段が、コメットアッセイである場合、一本鎖DN
Aの切断を指標としているため、細胞増殖の如何に関わ
らず判定を行うことが可能である点で優れている。
【0030】一般的に、小核は、増殖が活発な細胞又は
臓器でのみ観察できるものである。何故ならば、染色体
異常にって生じた染色体の断片は、細胞静止期には、主
核と同一の核膜に取り込まれているために、顕微鏡下で
は検出できないからである。しかし、そのような細胞に
あっても、細胞分裂期(M期)を経過すると染色体の断
片が主核と分離し、別の核膜に囲まれる小核が、再度形
成される。コメットアッセイは、この時期の小核を測定
する方法であるため、骨髄細胞や血球細胞以外の臓器に
おける核酸傷害のモニタリングが可能である。
【0031】(2)目的 インビボで実験動物に被検物質を投与した後に、目的と
する組織又は細胞を採取して核を分離し、更に1つ1つ
の核に分離した後で、アルカリ溶液で電気泳動し、得ら
れたミクロゲルを本発明の方法により染色して標本を作
製する。これを解析することにより、医薬品の安全性試
験、又は化学物質若しくは天然物に関する核酸傷害性試
験を行うことが可能である。
【0032】また、化学療法により治療されている患者
から、或いは工場労働者から、目的とする組織又は細胞
を採取して核を分離し、更に1つ1つの核に分離した後
で、アルカリ溶液で電気泳動し、得られたミクロゲルを
本発明の方法により標本を作製する。これを解析するこ
とにより臨床医学的、或いは労働衛生学的に重要な変異
原性及び/又は発癌性のモニタリングを行うことが可能
である。
【0033】更に、環境問題を生物学的に研究するため
の方法として、魚類及び両生類等の水棲生物から目的と
する組織又は細胞を採取して核を分離し、更に1つ1つ
の核に分離した後で、アルカリ溶液で電気泳動し、得ら
れたミクロゲルを本発明の方法により標本を作製する。
これを解析することにより、水質汚染をモニタリングす
ることも可能である。
【0034】3.小核試験とコメットアッセイ 上述した通り、小核試験とコメットアッセイとの大きな
相違点は、小核試験では、細胞増殖が活発な試料(細胞
分裂が活発な試料)のみを測定対象とできるのに対し、
コメットアッセイでは、該増殖が活発でない試料であっ
ても測定が可能である点である。また、小核試験が染色
体異常及び紡錘体損傷による小核のみを対象としている
のに対し、コメットアッセイが何れの核酸に関する損傷
をも対象としている点も特徴である。従って、両試験を
併用することにより、全ての臓器に対して核酸損傷をモ
ニタリングすることが可能になる。このとき両試験共
に、本発明の方法により作製された標本を用いること
で、標本解析が容易且つ高精度に行うことが可能にな
る。
【0035】II.試料 1.モニタリング対象 本発明の標本作製方法により標本にすることが可能な、
モニタリング対象生物は、脊椎動物、好ましくは哺乳類
動物、より好ましくは、マウス及びラット等の齧歯目、
並びにヒトである。
【0036】2.由来 本発明の標本作製方法により標本にすることが可能な試
料の由来となる組織又は細胞は、対象となる動物から得
られる何れの組織又は細胞でもよく、血液、赤血球、白
血球、生殖系臓器、口腔粘膜、消化器内粘膜、骨髄、肝
臓、脾臓、リンパ節、胸腺、腎臓もしくは皮膚を用いる
ことが可能である。従来において、骨髄細胞を用いるこ
とが一般的であったのに対し、多種類の臓器又は組織か
ら得られた細胞を試料とすることで、生体全体の状態を
モニタリングすることが可能になる。
【0037】III.アクリジンオレンジ染色 本発明の標本製造方法により用いられる染色法は、アク
リジンオレンジ蛍光染色法である。この染色法は多染性
という点で長所がある。2色染色では、染色する色毎に
それぞれの染色標本が必要であるが、多染性染色液には
この必要がない。
【0038】本発明の標本作製方法で使用されるべきア
クリジンオレンジ染色液の濃度は、10μg/ml以上
40μg/ml未満である。より好ましい濃度は、15
μg/mlから35μg/mlであり、最も好ましい濃
度は、30±5μg/mlである。
【0039】本発明のアクリジンオレンジ染色により、
RNAは赤色蛍光、DNAは黄から黄緑色蛍光(以下、
単に黄緑色蛍光とする)を生ずる。従って、幼若赤血球
は、細胞質中に存在するRNAのために全体では赤色蛍
光を生じ、そこに含まれる小核は黄緑色蛍光を生ずる。
また、他の細胞の主核や嬢核も黄緑色蛍光を呈する。
【0040】従来のモニタリング技術では、小核以外の
ノイズを小核と間違えずに検出する方法として特開平9
−89886が提案されている。しかし、成熟赤血球と
幼若赤血球とが混在している標本においては、細胞判別
が難しく、染色ムラにより、RNA及びDNAの両者と
もに赤く染色してしまうことがあった。従って、熟練者
が識別しない限り、赤血球全体数に対する小核数による
出現頻度として計算を行うことしかできなかった。
【0041】発明者らは、そのような原因が、アクリジ
ンオレンジの物理化学的特性によるものであることを突
き止めた。即ち、従来の方法で用いられているアクリジ
ンオレンジの染色液は40μg/mlであるが、この濃
度では、水溶液中で濃度依存的に二量体を形成し易いこ
とを突き止めたのである。また、アクリジンオレンジの
二量体形成に伴い、吸収スペクトルは短波長側へ、蛍光
スペクトルは長波長側へ移動することも明らかにした。
従って、理論的には、RNAが赤色蛍光、DNAを含む
主核や小核が黄緑色蛍光を呈するはずの標本が、高濃度
の染色液により染色して蛍光顕微鏡で観察した場合、主
核や小核までが赤色蛍光を呈してしまう。目視観察の場
合では、経験的に小核とそうでない染色ムラが判別でき
るが、自動測光ではこれをRNAと測光してしまい、小
核検出感度の低下に繋がる。
【0042】一方では、小核が赤色蛍光を生ずる場合も
有ることが、本発明者らにより発見された。これは、係
る小核が、従来のモニタリング方法ではノイズとして除
去されている可能性があること示している。
【0043】IV.標本作製方法 1.実験動物への被検物質の投与 医薬品の安全性試験、又は化学物質若しくは天然物に関
する変異原性試験を目的として核酸傷害をモニタリング
する場合、実験動物を用いて行う。ここで、実験動物
は、一般的に使用されるマウス、ラット等の齧歯類を用
いてよいが、これに限られるものではない。実験動物へ
の投与経路及び容量、並びに投与回数は、被検物質及び
使用する実験動物等の条件に応じて決定されるであろ
う。
【0044】ここで、被検物質の投与を必要としないモ
ニタリング、例えば、臨床医学的、労働衛生学的又は環
境学的なモニタリングに関しては、本項目で記述される
「被検物質の投与」は行う必要がない。
【0045】2.試料の採取 モニタリング対象となる動物から、目的とする組織又は
細胞を採取する。採取方法は、目的とする組織又は細胞
に応じた一般的な方法を使用することが可能である。
【0046】例えば、実験動物から骨髄細胞を採取する
方法は以下のように行うことが可能である。実験動物を
屠殺した後に、大腿骨を摘出して骨端を切断する。血清
を用いて該大腿骨の骨髄腔を洗い流し、骨髄細胞を得
る。
【0047】前述の操作で使用する血清は、予め非働化
(56℃、30分)を行っておくことが好ましい。更
に、予め0.45μmのポアサイズのフィルタに通して
濾過しておくことも好ましい。該フィルタで濾過するこ
とにより、染色ムラの原因の1つである血清中の不純物
である微粒子成分を除去することが可能である。
【0048】もう1つの例として、臓器についてモニタ
リングを行う場合の手順を以下に説明する。実験動物を
屠殺した後に、目的とする臓器、例えば、肺の1部分を
摘出り、摘出した臓器をコラゲナーゼにより適宜消化す
る。
【0049】また、実験動物を用いて試験を行う場合に
は、被検物質の投与から試料採取までの時間を検討する
必要がある。これは、予備試験等を行う等して、諸条件
に応じて決定すればよい。
【0050】3.細胞の分離 血液又は骨髄液等の液体試料を用いる場合、上述のよう
に採取した後、そのままの状態で、又は必要に応じて希
釈した後に、スライドグラスに塗沫し、染色を行うこと
が可能である。しかし、試料の採取直後に、以下のよう
に遠心分離によりリンパ球を分離し、除去し、且つ赤血
球を分離し採取することにより、標本解析を単純化する
ことが可能である。従って、本発明の標本作製方法を用
いて、血液又は骨髄液を試料とする場合には、下記のよ
うな遠心による細胞の分離を行うことが好ましい。この
操作を行うことにより、標本の解析が容易になる。
【0051】ヒトを含む動物から得られた血液又は骨髄
液試料を、使用する動物種及び試料の種類に応じた比重
に調製した濃度勾配液を使用し、リンパ球の遠心分離を
行う。該濃度勾配液の成分は、フィコール、無水アミド
トリゾ酸、メグルミンである。これらを無菌的操作によ
り、蒸留水に溶解して調製する。各成分の濃度は、分離
の対象となる細胞により選択することが可能である。し
かし、細胞毒性を示さない濃度であることが必要であ
る。
【0052】従って、フィコールは3.5%V/Vから
4.0%V/Vが好ましく、無水アミドトリゾ酸は、2
0%V/Vから24%V/Vが好ましく、ミグルミン
は、4%V/Vから8%V/Vが好ましい。
【0053】例えば、マウスの骨髄から得た細胞からリ
ンパ球を分離するためには、3.7%V/Vのフィコー
ル40、22.76%V/Vの無水アミドトリゾ酸、
6.05%V/Vメグルミン、及び0.24%の水酸化
ナトリウムを蒸留水に含有する分離用濃度勾配液を用い
ることが好ましい。
【0054】前記分離用濃度勾配液を用いた場合の分離
操作は以下の通りである。試験管に、6から7mlの該
分離勾配液を添加し、その上に2mlの細胞懸濁液を重
層し2層の勾配液とする。これを遠心することにより、
上記2層の勾配液が3層の勾配液となる。3層の内の中
間層がリンパ球の層であるのでこの層を除去し、更に最
も下層が赤血球であるのでこの層を採取する。
【0055】また、血液を用いた場合にも、赤血球と白
血球の比重の違いを利用し、上述の方法と同様に濃度勾
配液に重層して分離することが好ましい。
【0056】例えば、血液細胞を抗凝血剤存在下で採血
し、緩衝液に2倍濃度で浮遊させ、これを濃度勾配液に
重層し、遠心分離する。この操作により、白血球画分と
赤血球画分が得られる。
【0057】一方、小核試験のための骨髄標本の作製に
おいて、赤血球と白血球を分離する方法が、従来方法と
して開示されている(特開平5−346380)。この
方法は、特殊なカラムを使用して赤血球と白血球を分離
する方法である。この方法に対して、上述した本発明の
標本作製方法で使用する遠心分離操作は、特殊なカラム
を使用する必要がなく、容易に且つ安価に必要とする血
球を分離することが可能である。また、多数の試料を同
時に簡単に処理することが可能である。
【0058】4.塗沫又は組織標本の調製 血球細胞の標本を塗末するには、非働化したウシ胎児血
清に細胞を懸濁して行う方法が、最もきれいな標本を作
るためには都合がいい。しかし、ウシ胎児血清は、脂肪
のような油滴を含有する場合があり、これも標本を不明
瞭にする原因となる。従って、使用直前に0.2−0.
4μmフィルターで濾過することが好ましい。
【0059】組織標本を調製する場合は、一般的なパラ
フィン包埋を行い、切片の切り出しをし、スライドグラ
スに置く。その後、パラフィンを除去し、特定濃度のア
クリルオレンジにより染色する。
【0060】5.染色、その他 スライドグラス上に固定した細胞又は組織に、10μg
/ml以上40μg/ml未満のアクリジンオレンジ染
色液を直接に滴下することにより染色を行う。染色後、
カバーガラスで封入する。
【0061】V.標本解析 1.装置 上記の通り作製した標本は、レーザースキャンサイトメ
ータ(オリンパス社)、イメージアナライザ(東洋紡績
Real star)等により解析することが好まし
く、レーザースキャンサイトメータを用いることがより
好ましい。しかし、これに限定されるものではない。
【0062】以下、使用可能な装置の例として、レーザ
スキャンサイトメータについて以下に述べる。
【0063】(1)原理 レーザスキャンサイトメータは、細胞標本をスキャンし
ながら、該標本からの蛍光を解析する装置である(特開
平10−206421)。詳しくは以下の通りである。
解析対象となる標本を二次元走査しながら、顕微鏡対物
レンズで集光した光ビームを該標本に照射する。この照
射により、励起された標本からの蛍光を検出器により検
出し、検出された光電信号により形成された走査画像デ
ータを画像処理し、標本における目的とする各細胞の細
胞内成分量を定量測定する装置である。
【0064】(2)測定方法 レーザスキャンサイトメータ(以下、LSCと称す:オ
リンパス社)の取扱説明書に従い、本発明の作製方法に
より作製した標本における、核酸傷害の指標である蛍光
強度を測定する。
【0065】LSCにおける測定に必要な各設定は、赤
色蛍光及び黄色蛍光分析をパラメータとし、各ピーク値
value値を用いることが好ましい。
【0066】本発明の標本に使用する蛍光顕微鏡(オリ
ンパス社、例えば、オリンパスBX−50)は、40倍
又は60倍の対物レンズと、同じく10倍の接眼レンズ
を装備することが好ましい。
【0067】本発明の標本に適切な励起光は、好ましく
は488nmである。
【0068】2.解析 (1)解析方法 LSCを用いて、標本から得られるアクリルオレンジの
赤蛍光成分の最大蛍光値(AO red fluorescence Pea
k)、赤蛍光成分で示される1単位部分の面積値(AO re
d fluorescence Area)、黄蛍光成分の最大蛍光値(AO
yellow fluorescence Peak)、黄蛍光成分で示される1
単位部分の面積値(AO yellow fluorescence Area)、
赤蛍光成分で示される1単位部分の最大蛍光量(AO red
fluorescence Value)、及び黄蛍光成分で示される1
単位部分の最大蛍光量(AO yellow fluorescence Valu
e)を検出し、夫々をの値を横軸又は縦軸としてグラフ
にして解析する(図1から6を参照されたい)。
【0069】例として、リンパ球と赤血球を用いた場合
を示す。図1を参照されたい。図1のグラフは、横軸に
AO red fluorescence Peak
を、縦軸にAO red fluorescence
Areaを示す。また、グラフ中の1つの点は、夫々が
1つの細胞を表す。図1に示す通り、リンパ球、全赤血
球、幼若赤血球、成熟赤血球、及び小核は、夫々同じよ
うな位置に集まっていることが分かる。図2から6は、
パラメータを変えた場合のグラフである。図に示される
ように、各血球成分は、生じる蛍光に関して、夫々特異
的な特徴を有している。
【0070】従って、細胞に応じた蛍光に関する特徴を
予め装置にインプットし、目的とする細胞に応じて装置
にプログラムすることにより、例えば、目的とする小
核、幼若赤血球等を検出し、計数することを自動化する
ことが可能である。
【0071】VI.自動化 本発明の標本作製方法及び解析方法を用い、オリンパス
のLSC(レーザスキャンサイトメータ)による小核標
本のレーザ測定や蛍光顕微鏡(例えばオリンパスBX−
50)と組み合わせたイメージアナライザを使用するこ
とにより、小核試験及びコメットアッセイをオートメー
ション化することが可能である。本発明の標本作製方法
により作製された標本は、自動化に不可欠である標本の
均一性を十分に満たすことが可能である。
【0072】
【実施例】1.マウスによる小核試験 8週齢のICRマウス(SPF)の雄に小核誘発物質で
あるマイトマイシンC(協和発酵社製)を2.0mg/
kgで腹腔内投与し、24時間後にマウスを屠殺した。
両大腿骨を摘出し、骨端を約1mmの厚さ切断した。注
射針(ゲージ26G)に入れたウシ胎児血清約0.6m
lを大腿骨の上部からゆっくり押し流し、骨髄細胞を遠
心管に受けた。使用したウシ胎児血清は市販品を入手
し、補体の不活性化すなわち非働化(56℃、30分)
を前もって行った。使用直前には、0.45μmのポア
サイズのフィルタで余分な粒子を取り除いた。室温、1
000rpmで5分間遠心後、上清を除いた。PBS
(リン酸緩衝液)2mlに浮遊した。
【0073】9.1gのフィコール400を蒸留水12
5mlオートクレーブして、可溶化、滅菌した。60%
ウログラフィン(アミドトリゾ酸ナトリウムメグルミン
注射液)41ml加えて、リンパ球分離用濃度勾配液
(フィコールウログラフィン:d=1.083)とし
た。ここで、リンパ球分離用濃度勾配液の組成は、16
6ml中にフィコール400を9.10g、無水アミド
トリゾ酸を38.69g、水酸化ナトリウムを0.41
41g、メグルミンを10.29g含有する溶液とす
る。その濃度勾配液を6−7ml試験管に入れ、2ml
細胞浮遊液をゆっくり重層した。室温で1500rp
m、20分間遠心した。中間層にリンパ球の層ができ
た。赤血球は、試験管底部に沈殿した。二種類の細胞、
即ち、赤血球およびリンパ球をそれぞれ別に採取して、
再度ウシ胎児血清50μlに浮遊させた。
【0074】脱脂洗浄したスライドガラス上に各細胞の
数μl滴下して、血球計算版用カバーグラスを用いてス
メア標本を作製した。スライドガラスを自然乾燥後、メ
タノール固定を5分間して、乾燥させた。アクリジンオ
レンジを1/15リン酸緩衝液(pH6.8)に0、1
5、20、35、40及び60μg/mlの濃度に溶解
した。メタノール固定したスライドガラスにアクリジン
オレンジ染色液を滴下し、カバーガラス(24×32m
m)をかけて封入した。
【0075】蛍光顕微鏡(オリンパス光学工業株式会
社、BX−50)により対物レンズ100倍、接眼レン
ズ100倍でB励起光(波長;450−480nm)を
観察した。また、同時にこの細胞を写真に撮影した(図
6から11)。各図は夫々、異なるアクリジンオレンジ
濃度を処理した場合の写真であり、図6、7、8、9、
10及び11は、夫々0、15、20、35、40及び
60μg/mlのアクリジンオレンジを使用して染色を
行なった場合の標本を示す。矢印は、小核を有する幼若
細胞を示す。
【0076】図6に示す通り、アクリジンオレンジが含
まれない場合には、白色の自家蛍光により薄く細胞が写
るのみであった。図7は、アクリジンオレンジ濃度15
μg/mlを使用した場合を示し、この場合、淡赤色の
細胞質と淡黄色の小核とを区別することが可能であっ
た。図8は、アクリジンオレンジ濃度20μg/mlを
使用した場合を示し、この場合、アクリジンオレンジ濃
度15μg/mlを使用したときに比較し、色調は赤味
および黄色味が夫々濃くなった。図9は、アクリジンオ
レンジ濃度35μg/mlを使用した場合を示し、この
場合、濃赤色の細胞質と濃黄色の小核とを区別すること
が可能であった。図10は、アクリジンオレンジ濃度4
0μg/mlを使用した場合を示し、この場合、濃赤色
の細胞質と淡赤色の小核とを区別することが可能であっ
た。但し、このとき、小核の染色結果は不安定であるた
め、同一条件であっても淡赤色の場合と濃黄色の場合と
があった。濃度40μg/ml未満では、色素は安定傾
向を示した。15μg/ml未満では低濃度になる程、
淡色傾向が進み、特に10μg/ml以下では、全体が
薄い黄色気味となって識別が困難になり、更に、上述し
たような種々のデータ変換を行なう際に明瞭な区分けが
困難になるケースが生じる可能性もあって好ましくな
い。従って、濃度10μg/ml以上40μg/ml未
満が有効範囲であり、より実用的には有効な濃度差が認
められる15μg/ml以上38μg/ml未満、特に
25から35μg/mlの範囲が好ましいとの結論に達
した。濃度調製およびその他の条件の影響を考慮する
と、20から30μg/mlの濃度範囲に設定すること
が、多数の対象物の染色を行う上では安定した染め分け
ができる点で好ましい。図11は、アクリジンオレンジ
濃度60μg/mlを使用した場合を示し、この場合、
細胞質と小核が共に濃赤色となり、区別することが困難
であった。
【0077】更に、この標本をLSC(オリンパス光学
工業株式会社、レーザサイトスキャン)により観察し
た。この結果を図1から6に示す。
【0078】図1は、スライドグラス上の測定範囲にお
ける全細胞に関するデータである。図1に示すように、
グラフ上のデータは、大きくリンパ球と赤血球の2つの
領域に分れた。更に、赤血球領域は、成熟赤血球画分、
幼若赤血球画分、および小核画分の3画分を有した。小
核画分については、画分内の四角形で囲まれた4つの小
さなブロック内に位置するデータが、実際に小核細胞で
あることを画像で確認した。
【0079】図2から6は、図1の小核領域の中の4つ
の小核部位に関して、横軸及び縦軸のパラメータを変更
して表示したグラフである。図2から図5に示すよう
に、パラメータを変更しても、図1の場合と同様に、小
核は同じ領域に止まっていることが確認された。
【0080】以上、図1から6に示す通り、赤血球のう
ち、幼若と成熟の区別を明瞭に測定することができ、且
つ小核を検出することができた。従って、測定する使用
に合わせ、より明確な結果を得ることができる縦軸及び
横軸としての2つパラメータを選択することにより、解
析を自動で行うことが可能になり、且つその自動解析を
より正確且つ高精度に行うことが可能である。
【0081】なお、上述した実施の形態によれば、本発
明の方法は、以下の特徴も含んでいる。
【0082】(1)核酸損傷をモニタリングするための
細胞標本を作製する方法であって、前記標本をアクリジ
ンオレンジ10μg/ml以上40μg/ml未満の染
色液により染色するステップを具備し、且つ核酸損傷を
モニタリング手段が、小核試験及びコメットアッセイの
何れかである方法。
【0083】(2)核酸損傷をモニタリングするための
細胞標本を作製する方法であって、前記標本をアクリジ
ンオレンジ10μg/ml以上40μg/ml未満の染
色液により染色するステップを具備し、且つ前記標本の
対象となる哺乳類がヒト、ラット又はマウスである方
法。
【0084】(3)本発明の細胞標本作成方法であっ
て、前記標本が、細胞分離操作により得た試料を用いて
製作した標本であり、且つ細胞分離操作が濃度比重液に
よる遠心分離方法を用いた操作である方法。
【0085】(4)本発明の細胞標本作成方法であっ
て、前記濃度比重液がフィコール、無水アミドトリゾ
酸、メグルミンを含有する方法。
【0086】(5)限定された所定の条件下でモニタリ
ング対象物を異なる色調に染め分けする工程と、前記対
象物を光の波長毎に解析し、好ましくは波長毎の光強度
と大きさ(面積または体積)を分類する工程と、異なる
光成分が混在するもの、好ましくは異なる光強度および
/または大きさが重複して存在するものを小核含有細胞
であると判定することを特徴とする核酸損傷をモニタリ
ングするための細胞標本の解析方法。
【0087】(6)限定された所定の条件下でモニタリ
ング対象物を異なる色調に染め分けする工程と、前記対
象物を光の波長毎に解析し、好ましくは波長毎の光強度
と大きさ(面積または体積)を分類する工程と、同一の
色調で大きさが異なる対象物が混在している場合にはノ
イズと判定し、異なる色調で大きさが異なる対象物が混
在している場合には小核含有細胞であると判定すること
を特徴とする核酸損傷をモニタリングするための細胞標
本の解析方法。
【0088】(7)前記染め分け工程が、第1の色調と
第2の色調に染め分けを実行し、前記分類する工程が、
第1の色調(例えば赤色成分)に関するモードで幼若赤
血球に相当する領域の測定点を選択し、選択した側定点
を第2の色調(例えば黄色成分)に関するモードに変換し
て、所定閾値範囲外の測定点を検出することにより、幼
若で小核を形成した赤血球の有無および/または個数を
決定することを特徴とする解析方法。
【0089】(8)前記モードが、最大吸光度の値と面
積とを分類のパラメータとして用いることを特徴とする
解析方法。
【0090】(9)コンピュータを、顕微鏡で得られた
種々のモニタリング対象物(例えば有核細胞)の画像に
対して色調に関する複数種類のパラメータに対応する各
々の閾値を設定する閾値設定手段、この閾値設定手段に
より閾値を設定された前記モニタリング対象物の各画像
について色調毎の分布解析を行なう色調解析手段、この
色調解析手段で解析された結果としての特定基準を満た
すモニタリング対象物を計数する計数手段、として機能
させるためのプログラムを記憶したコンピュータ読取り
可能な記憶媒体。
【0091】また、本発明は、上述した例に限定される
ことなく、種々の変更が可能である。例えば、上述した
例では、色素としてアクリジンオレンジのみを例とした
が、特定の条件下(例えば、高濃度、高温等)におい
て、分子構造の変化(例えば、二量体化等の複合体化)
を生じ得る如何なる色素にも適用できる。しかし、同一
又は別個のモニタリング対象物において異種の成分を染
め分ける必要がある少なくとも1種類の色素に対して、
本発明の方法を適用した場合には、識別精度を高く維持
できる点で好ましい。また、色素の安定性を高める条件
としては、濃度に限ることなく、温度、添加物、pH、
粘性等の種々の条件を単独又は適宜組み合わせて採用し
てもよい。
【0092】
【発明の効果】10μg/ml以上40μg/ml未満
のアクリジンオレンジ染色液を使用した本発明の標本作
製方法により標本を作製することにより、DNAとRN
Aとを正確に染色することが可能であり、それにより小
核が出現している細胞を明確に識別することが可能であ
った。また、本発明の標本作製方法により作製された標
本には、不純物が極力減らされているため、目的とする
小核を正確に識別し、検出されるべき小核を過不足なく
計数し、常に正確な試験結果を得ることができた。従っ
て、熟練者に限ることなく、正確に小核を有する幼若赤
血球細胞を検出することが可能である。
【0093】更に、本発明の方法により作製された標本
は、染色の均一性に優れている。従って、自動測定で高
感度な測定を可能である。即ち、本発明の標本作製方法
及び解析方法を用い、且つオリンパスのLSC(レーザ
スキャンサイトメータ)による小核標本のレーザ測定及
び蛍光顕微鏡(例えばオリンパスBX−50)を組み合
わせたイメージアナライザ(東洋紡績Real sta
r)を使用することにより、小核試験及びコメットアッ
セイをオートメーション化することが可能である。従っ
て、本発明は、自動測定に有効な効果をもたらすことが
可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 レーザスキャンサイトメータにより解析した
標本中の血球細胞及び小核の分布を示すグラフ。
【図2】 レーザスキャンサイトメータにより解析した
標本中の血球細胞及び小核の分布を示すグラフ。
【図3】 レーザスキャンサイトメータにより解析した
標本中の血球細胞及び小核の分布を示すグラフ。
【図4】 レーザスキャンサイトメータにより解析した
標本中の血球細胞及び小核の分布を示すグラフ。
【図5】 レーザスキャンサイトメータにより解析した
標本中の血球細胞及び小核の分布を示すグラフ。
【図6】 本発明の方法により製作した標本における幼
若赤血球を示す生物の形態の写真。
【図7】 本発明の方法により製作した標本における幼
若赤血球を示す生物の形態の写真。
【図8】 本発明の方法により製作した標本における幼
若赤血球を示す生物の形態の写真。
【図9】 本発明の方法により製作した標本における幼
若赤血球を示す生物の形態の写真。
【図10】 本発明の方法により製作した標本における
幼若赤血球を示す生物の形態の写真。
【図11】 本発明の方法により製作した標本における
幼若赤血球を示す生物の形態の写真。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // C12N 5/06 G01N 1/28 U 15/01 J C12Q 1/68 C12N 5/00 E 15/00 E Fターム(参考) 2G045 AA40 BA14 BB05 BB10 BB21 BB24 CA01 CB01 CB17 FA16 FA19 FA20 FB12 GC15 4B063 QA01 QA07 QA08 QA17 QA19 QQ02 QQ12 QQ42 QQ52 QQ58 QQ99 QR66 QR72 QR80 QR84 QS03 QS10 QS13 QS36 QS38 QS39 QX02 4B065 AA90X AA91X BA16 BA24 BD14 BD15 BD32 CA46

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 核酸損傷をモニタリングするための細胞
    標本を作製する方法であって、色素の分子構造が変化し
    ない安定化条件で前記標本を染色することを特徴とする
    方法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の細胞標本作製方法であ
    って、安定化条件が、色素の複合体化を形成しない低濃
    度であることを特徴とする方法。
  3. 【請求項3】 請求項2に記載の細胞標本作成方法であ
    って、前記色素がアクリジンオレンジであり、且つその
    濃度が10μg/ml以上40μg/ml未満であるこ
    とを特徴とする方法。
  4. 【請求項4】 請求項1から3の何れか1項に記載の細
    胞標本作製方法であって、前記標本が哺乳類細胞に由来
    し、且つ血液、赤血球、白血球、生殖系臓器、口腔粘
    膜、消化器内粘膜、骨髄、肝臓、脾臓、リンパ節、胸
    腺、腎臓又は皮膚の何れかに由来する哺乳類細胞により
    得た試料を用いて製作した標本である方法。
  5. 【請求項5】 請求項1から4の何れか1項に記載の細
    胞標本作製方法であって、前記標本が、細胞分離操作に
    より得た試料を用いて作製した標本である方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2014520253A (ja) * 2011-05-04 2014-08-21 アボット・ラボラトリーズ 好塩基球分析システムおよび方法

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