JP2001147001A - 減温器 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 管中を流れる過熱蒸気にスプレー水を噴霧す
ることにより、過熱蒸気の温度を低下する減温器におい
て、熱衝撃に起因する管の損傷を確実に防止すること。 【解決手段】 管１の内面に多層構造の第１乃至第３ス
リーブ８，９，１０を同心円状に設置し、スプレー水４
をスプレーノズル２の先端部からスプレー水噴霧流５と
して第１スリーブ８内の第１流路１１へ噴霧する。最内
周の第１スリーブ８には所定の螺旋方向を向いた多数の
穴８ａを設け、その外側の第２スリーブ９には第１スリ
ーブ８と逆向きの螺旋方向を向いた多数の穴９ａを設
け、最外周の第３スリーブ１０には穴を設けない。第１
流路１１内にスプレー水噴霧流５が噴霧されると、第１
スリーブ８の内壁近傍で水滴が集合して水膜を形成する
が、この水滴は第１スリーブ８の各穴８ａを通って第２
流路１２へ噴出し、第２流路１２内に発生する激しい旋
回流によって蒸発が促される。さらに、第２流路１２で
蒸発しなかった水滴は第２スリーブ９の各穴９ａを通っ
て外側の第３流路１３へ噴出し、第３流路１３内に発生
する激しい旋回流によって完全に蒸発される。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、ボイラの温度制御
に使用される減温器に係り、特に、過熱蒸気が流れる連
絡管を熱衝撃から保護するための保護構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】火力発電用ボイラ等においては、火炉で
燃料となる化石燃料を燃焼させ、その燃焼ガスの流れと
ボイラ伝熱管内を流れる水蒸気の流れとで熱交換を行
い、この熱交換により所定の圧力と温度の過熱蒸気を一
定流量発生させる。しかし、ボイラの燃焼条件の変化
（負荷変化、燃料性状の変化等）により、ボイラの発生
する過熱蒸気温度は大きく影響を受けるため、過熱蒸気
管の途中に減温器を設けて過熱蒸気温度を制御するとい
う手法が採用されている。かかる減温器は、ボイラの入
口付近より抽出してきたスプレー水（冷却水）を過熱蒸
気に噴霧し、そのスプレー水の流量を制御することによ
り、連絡管内を流れる過熱蒸気の温度を所定範囲の値に
制御するという制御方式である。

【０００３】図４は従来より知られている減温器の断面
図であり、同図に示すように、過熱蒸気管１内にスプレ
ー水を供給するためのスプレーノズル２が取り付けられ
ており、管１内を流れる過熱蒸気３に対してスプレー水
４がスプレーノズル２の先端部からスプレー水噴霧流５
として噴霧される。管１の内面には管１をスプレー水か
ら保護するためのスリーブ６が設置されており、このス
リーブ６はスプレー水噴霧流５が及ぶ範囲にわたって延
びている。このように構成された減温器によれば、スプ
レーノズル２から噴霧されるスプレー水噴霧流５はスリ
ーブ６に衝突し、スプレー水噴霧流５が高温に加熱され
ている管１の内壁に直接衝突することを防止できるた
め、管１をスプレー水噴霧流５による熱衝撃から保護す
ることができる。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述し
た従来の減温器にあっては、スリーブ６の内壁に付着し
たスプレー水噴霧流５の水滴が水膜を形成してその蒸発
を阻害するため、スリーブ６の後端において水膜から発
生する大粒の水滴７が管１の内壁に直接衝突し、スリー
ブ６の後端側で管１が熱衝撃を受けるという問題があっ
た。

【０００５】なお、他の従来例として、特開平７−２２
９６０５号公報に記載されているように、金網製にした
スリーブを１層または多層設置し、この金網製スリーブ
によって管への熱衝撃を緩和させるようにした減温器
や、特開平８−１０５６０６号公報に記載されているよ
うに、段付構造の複数のスリーブを段付き部で長手方向
に組み合わせ、スリーブの内壁に付着する水膜を各段付
き部で円周方向に均一化させて蒸発の促進を図るように
した減温器が提案されている。しかし、これら減温器
は、いずれもスリーブに付着した水滴（水膜）と過熱蒸
気との混合が不十分であるため、前述した従来例と同様
に、スリーブの後端から水滴が管の内壁に付着しやす
く、スリーブの後端側における管内壁への熱衝撃を緩和
するには不充分である。

【０００６】本発明は、上記した従来技術の実情に鑑み
てなされたもので、その目的は、スプレーノズルから噴
霧された水滴の蒸発を促し、熱衝撃に起因する管の損傷
を確実に防止できる減温器を提供することにある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明は、スプレーノズ
ルが設けられた過熱蒸気が流れる管の内面に、開口穴を
設けた複数のスリーブを同心円状に多層配置し、隣接す
るスリーブ間で穴の螺旋方向を逆向きにすることとす
る。このように構成すると、各スリーブ間に激しいジェ
ット流と旋回流が発生し、スリーブの内面に形成される
水膜が確実に消減するため、スリーブの後端から水滴が
飛散することはなく、熱衝撃に起因する管の損傷を確実
に防止することができる。

【０００８】

【発明の実施の形態】本発明の減温器では、管中を流れ
る過熱蒸気に冷却水を噴霧することにより、過熱蒸気の
温度を低下する減温器において、前記管の内部に所定の
流路を存して複数のスリーブを同心円状に配置し、これ
らスリーブに螺旋方向を向いた多数の穴を設けると共
に、隣接するスリーブの穴の螺旋方向を逆向きにした。

【０００９】このように構成した減温器によれば、各ス
リーブ間に激しいジェット流と旋回流が発生し、スリー
ブの内面に形成される水膜が確実に消減するため、スリ
ーブの後端から水滴が飛散することはなく、熱衝撃に起
因する管の損傷を確実に防止することができる。

【００１０】上記構成において、前記スリーブの各穴を
螺旋状の仮想線上に配列すると、各スリーブ間により激
しいジェット流と旋回流を発生させることができる。

【００１１】また、上記構成において、前記穴をラッパ
状に形状することが好ましく、このようなラッパ状の穴
は水滴の流速を高めるため、水膜をより確実に消減させ
ることができる。

【００１２】

【実施例】実施例について図面を参照して説明すると、
図１は本発明の実施例に係る減温器の断面図、図２は図
１のＡ−Ａ線に沿う断面図、図３は図１の減温器に備え
られるスリーブの説明図であり、図４に対応する部分に
は同一符号を付してある。

【００１３】本実施例が前述した図４の減温器と相違す
る点は、管１の内面に多層構造の第１乃至第３スリーブ
８，９，１０を同心円状に設置し、各スリーブ８，９，
１０間に逆向きの旋回流を発生させるように構成したこ
とにあり、それ以外の構成は基本的に同じである。最も
内側に位置する第１スリーブ８の内部には第１流路１１
が形成され、スプレー水４はスプレーノズル２の先端部
からスプレー水噴霧流５として第１流路１１へ噴霧され
る。第１スリーブ８にはストレート形状の多数の穴８ａ
が設けられており、図３に示すように、これら穴８ａは
例えば所定のリード角で右ネジ方向へ連続する螺旋状の
仮想線Ｐ１上に配列されており、かつ、各穴８ａの中心
線が仮想線Ｐ１に重なるように螺旋方向を向いて穿設さ
れている。中央に位置する第２スリーブ９とその内側の
第１スリーブ８との間には第２流路１２が形成され、こ
の第２スリーブ９には外側に向かって窄まるラッパ形状
の多数の穴９ａが設けられている。ただし、これら穴９
ａは第１スリーブ８の前記仮想線Ｐ１と逆向きの左ネジ
方向へ連続する螺旋状の仮想線Ｐ２上に配列されてお
り、かつ、各穴９ａの中心線が仮想線Ｐ２に重なるよう
に螺旋方向を向いて穿設されている。最も外側に位置す
る第３スリーブ１０は穴のない管体であり、第３スリー
ブ１０とその内側の第２スリーブ９との間には第３流路
１３が形成され、第３スリーブ１０とその外側の管１と
の間には第４流路１４が形成されている。

【００１４】このように構成された減温器において、管
１内を流れる過熱蒸気３(例えば圧力２６０ａｔｇ，温
度５７０℃,容量２８６０ｔ／ｈ)に対してスプレー水４
（例えば圧力３００ａｔｇ，温度３２０℃,容量約９０
ｔ／ｈ）を注入すると、注入されたスプレー水４はスプ
レーノズル２の先端部から第１流路１１内にスプレー水
噴霧流５として噴霧され、直径約１００μｍの水滴とな
って過熱蒸気３と混合する。その際、水滴の約５０％程
度が第１スリーブ８の内壁に衝突し、第１スリーブ８の
内壁近傍で水滴が集合して水膜を形成するが、この水滴
は第１スリーブ８の各穴８ａを通って第１流路１１から
第２流路１２へ噴出するため、第１スリーブ８の内壁で
水膜を大きく成長させることはない。そして、第２流路
１２内において、各穴８ａから噴出するジェット流によ
り激しい旋回流が発生するため、この旋回流によって第
２流路１２へ噴出した水滴の蒸発が促進される。この段
階で水滴の大部分は蒸発するが、蒸発しきれずに第２ス
リーブ９の内壁に付着した未蒸発の水滴は、第２スリー
ブ９の各穴９ａから噴出して第３スリーブ１の内壁に衝
突し、第３流路１３内に第２流路１２とは逆向きの激し
い旋回流を発生させる。これによって水滴は完全に蒸発
するため、最外周に位置する第３スリーブ１０の内壁に
水膜を形成することはなく、水滴が各スリーブ８，９，
１０の後端側から管１の内壁に衝突することを防止でき
る。

【００１５】上記実施例によれば、スプレーノズル２か
ら噴霧された水滴が各スリーブ８，９，１０内で完全に
蒸発されるため、水滴が各スリーブ８，９，１０の後端
側から管１の内壁に飛散することはなく、熱衝撃に起因
する管１の損傷を確実に防止することができる。また、
水滴が短時間で蒸発完了するため、従来例として挙げた
単層のスリーブに比べると、各スリーブ８，９，１０の
軸線方向の長さを約４０％程度短縮することができる。
さらに、スリーブを通過する毎に水滴の蒸発が進行する
ため、各スリーブ８，９，１０の内壁と外壁の温度差を
約６０℃程度に抑えることができ、各スリーブ８，９，
１０の寿命を延ばすことができる。

【００１６】なお、本発明で使用されるスリーブの数は
上記実施例の第１乃至第３スリーブ８，９，１０に限定
されず、必要に応じて適宜増加することも可能である。

【００１７】また、上記実施例では、径寸法が最も小さ
い第１スリーブ８の穴８ａの形状を加工性を考慮してス
トレート状としたが、第２スリーブ９の穴９ａと同様に
ラッパ形状の穴８ａにすれば、第１スリーブ８と第２ス
リーブ９間の第２流路１２内により激しいジェット流と
旋回流を発生させることができる。

【００１８】

【発明の効果】本発明は、以上説明したような形態で実
施され、以下に記載されるような効果を奏する。

【００１９】管の内面に穴のついた複数のスリーブを同
心円状に多層配置し、隣接するスリーブ間で穴の螺旋方
向を逆向きにすると、各スリーブ間に激しいジェット流
と旋回流が発生し、スリーブの内面に形成される水膜が
確実に消減するため、スリーブの後端から水滴が飛散す
ることはなく、熱衝撃に起因する管の損傷を確実に防止
することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例に係る減温器の断面図である。

【図２】図１のＡ−Ａ線に沿う断面図である。

【図３】図１の減温器に備えられるスリーブの説明図で
ある。

【図４】従来例に係る減温器の断面図である。

【符号の説明】

１ 管 ２ スプレーノズル ３ 過熱蒸気 ４ スプレー水 ５ スプレー水噴霧流 ８ 第１スリーブ ８ａ 穴 ９ 第２スリーブ ９ａ 穴 １０ 第３スリーブ １１ 第１流路 １２ 第２流路 １３ 第３流路 １４ 第４流路 Ｐ１ 仮想線 Ｐ２ 仮想線

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 管中を流れる過熱蒸気に冷却水を噴霧す
   ることにより、過熱蒸気の温度を低下する減温器におい
   て、前記管の内部に所定の流路を存して複数のスリーブ
   を同心円状に配置し、これらスリーブに螺旋方向を向い
   た多数の穴を設けると共に、隣接するスリーブの穴の螺
   旋方向を逆向きにしたことを特徴とする減温器。
2. 【請求項２】 請求項１の記載において、前記スリーブ
   の各穴が螺旋状の仮想線上に配列されていることを特徴
   とする減温器。
3. 【請求項３】 請求項１または２の記載において、前記
   穴がラッパ状に形状されていることを特徴とする減温
   器。