JP2001145883A - 有機塩素化合物の処理方法及び装置並びにシステム - Google Patents

有機塩素化合物の処理方法及び装置並びにシステム

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JP2001145883A
JP2001145883A JP33245199A JP33245199A JP2001145883A JP 2001145883 A JP2001145883 A JP 2001145883A JP 33245199 A JP33245199 A JP 33245199A JP 33245199 A JP33245199 A JP 33245199A JP 2001145883 A JP2001145883 A JP 2001145883A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】処理済みの土壌に悪影響を残すことなく確実か
つ短期間にしかもどんな汚染土壌に対しても有機塩素化
合物を除去処理する。 【構成】本発明に係る有機塩素化合物の処理装置1は、
有機塩素化合物を含む汚染媒体としての汚染水5が貯留
される貯留槽2と、該貯留槽内に設けられた一対の電極
3a、3bと、これらの陽極3a及び陰極3bに電気接
続された極性反転可能な電源4とから構成してある。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、トリクロロエチレ
ンなどの有機塩素化合物を無害化するための処理方法及
び装置並びにシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】工場跡地内の土壌には、発ガン性物質で
あるトリクロロエチレン、テトラクロロエチレンなどの
有機塩素化合物が含まれていることがあり、このような
土壌をそのまま放置すると地下水等を介して有機塩素化
合物が環境に拡散するおそれがある。そのため、このよ
うな汚染土壌に対しては所定の浄化処理を行なわねばな
らない。
【0003】一方、最近では、微生物の活性を利用して
環境中の汚染物質を分解無害化する技術、すなわちバイ
オレメディエーションの研究が進んできており、上述し
たような汚染土壌への適用も研究されるようになってき
た。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このような微生物を利
用した汚染物質の処理方法は、少なくとも実験室レベル
では十分な成果が確認されており、現実的な対応につい
ても今後大いに期待されるところである。
【0005】しかしながら、土質状況によっては、分解
菌の活性を十分上げることができず、該汚染土内の汚染
物質を分解するのに長時間を要したり、場合によっては
微生物分解自体が実質的に不可能になるという問題が懸
念される。
【0006】また、汚染土に生石灰を混合することで、
汚染土内に含まれている水分と生石灰との化学反応に伴
う水和熱を発生させ、かかる水和熱を利用して汚染物質
である有機塩素化合物を気化処理する方法も検討開発さ
れている(特開平7−275837号公報参照)が、か
かる方法では、汚染土が生石灰により強アルカリ性とな
り、埋め戻した後でアルカリ成分が地下水等に拡散した
り生態系に悪影響を及ぼすといった事態が懸念される。
【0007】さらには、汚染土壌から土壌内空気を吸引
したり土壌内地下水を揚水する方法、汚染土壌を高温に
加熱する方法、鉄粉の還元作用を利用した方法などがあ
るが、空気吸引若しくは地下水揚水は、長時間を要する
とともにその間に設備の維持にコストがかかる、高温加
熱方法は土壌の生態系に悪影響を残す、鉄粉による還元
方法は適用できる状況に制約が大きいなどの問題をそれ
ぞれ生じていた。
【0008】本発明は、上述した事情を考慮してなされ
たもので、処理済みの土壌に悪影響を残すことなく確実
かつ短期間にしかもどんな汚染土壌に対しても有機塩素
化合物を除去処理可能な有機塩素化合物の処理方法及び
装置並びにシステムを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明に係る有機塩素化合物の処理方法は請求項1
に記載したように、有機塩素化合物を含む汚染水等の汚
染媒体に一対の電極を配置し、該電極の極性を所定時間
ごとに反転させつつ通電することによって前記有機塩素
化合物を電気分解するものである。
【0010】また、本発明に係る有機塩素化合物の処理
装置は請求項2に記載したように、有機塩素化合物を含
む汚染水等の汚染媒体が貯留される貯留槽と、該貯留槽
内に設けられた一対の電極と、該電極に電気接続された
極性反転可能な電源とからなるものである。
【0011】また、本発明に係る有機塩素化合物の処理
装置は、前記貯留槽の側板、底板等の貯留本体に集水孔
を形成するとともに、該貯留槽を有機塩素化合物を含む
汚染土壌又は汚染廃棄物内に埋設可能に構成したもので
ある。
【0012】また、本発明に係る有機塩素化合物の処理
システムは請求項4に記載したように、有機塩素化合物
を含む汚染土壌内に埋設された集水手段と、該集水手段
に集水された汚染水を揚水する揚水ポンプと、揚水され
た汚染水が貯留される貯留槽と、該貯留槽内に設けられ
た一対の電極と、該一対の電極に電気接続された極性反
転可能な電源とからなるものである。
【0013】また、本発明に係る有機塩素化合物の処理
システムは、前記汚染土壌内に給水を行う給水手段を備
えたものである。
【0014】また、本発明に係る有機塩素化合物の処理
システムは、前記汚染土壌内に前記集水手段又は前記電
極の近傍にて所定の止水壁を設けたものである。
【0015】また、本発明に係る有機塩素化合物の処理
システムは請求項7に記載したように、有機塩素化合物
を含む汚染土壌内に形成された集水貯留手段と、該集水
貯留手段内に設けられた一対の電極と、該一対の電極に
電気接続された極性反転可能な電源とからなるものであ
る。
【0016】また、本発明に係る有機塩素化合物の処理
システムは請求項8に記載したように、有機塩素化合物
を含む汚染土壌内に埋設された一対の電極と、該一対の
電極に電気接続された極性反転可能な電源とからなるも
のである。
【0017】本発明に係る有機塩素化合物の処理方法に
おいては、有機塩素化合物を含む汚染土壌、汚染水、汚
染廃棄物等の汚染媒体に一対の電極を配置する。また、
本発明に係る有機塩素化合物の処理装置においては、一
対の電極が貯留槽内に配設された状態となるように上述
の汚染媒体を貯留槽内に貯留する。また、本発明に係る
有機塩素化合物の処理システムにおいては、有機塩素化
合物を含む汚染土壌内の地下水を集水手段で集水し、こ
れを揚水ポンプで揚水して一対の電極が設けられた貯留
槽内に貯留するか、集水貯留手段内に一対の電極を配置
するか、又は一対の電極を汚染土壌内に直接埋設する。
【0018】次に、上述した電極間に通電する。このよ
うにすると、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレ
ンといった有害な有機塩素化合物は、主として陰極表面
の還元反応によって塩素イオン等の塩化物と、エチレ
ン、エタンなどの炭化水素に電気分解される。そして、
これらの塩化物や炭化水素はいずれも無害物質であるた
め、結局、有害な有機塩素化合物が無害化されることと
なる。
【0019】また、上述した各発明においては、通電の
際、電極の極性反転を所定時間ごとに行う。すなわち、
陽極を陰極に、陰極を陽極に反転する。このようにする
と、電極表面上の付着物や電解生成物といった通電阻害
物質が除去され、その結果、新鮮な電極面が露出して通
電量が回復し、かくして、通電量の低下ひいては有機塩
素化合物の電解分解効率の低下が未然に防止される。一
例としては、陽極で発生付着した酸素ガスと陰極で発生
付着した水素ガスが反応して水に変化するため、通電阻
害物質である気泡が消失し、通電量が回復する。
【0020】極性反転の時期的タイミングとしては、例
えば一定時間ごとに切り換える、通電量を監視しながら
該通電量が一定値を下回ったときに手動で又は自動的に
切り換えるといった方法が考えられる。
【0021】本発明に係る有機塩素化合物の処理装置に
関し、その構成要素である貯留槽を地上に設置し、該貯
留槽内に汚染水を流入するようにしてもよいが、かかる
貯留槽の側板、底板等の貯留本体に集水孔を形成すると
ともに、該貯留槽を有機塩素化合物を含む汚染土壌又は
汚染廃棄物内に埋設可能に構成した場合においては、汚
染土壌内の地下水や汚染廃棄物からの滲出水が汚染水と
して集水孔を通って貯留槽内に集水貯留され、該貯留槽
内で極性反転を伴う電気分解処理が行われる。そのた
め、汚染規模と貯留槽との容量との関係によっては、汚
染土壌内の汚染水や汚染廃棄物から滲出してきた汚染水
を揚水ポンプで揚水する作業を不要とし、又はその回数
を減らすことが期待できる。
【0022】本発明に係る有機塩素化合物の処理システ
ムに関し、汚染土壌内に給水を行う給水手段を備えるよ
うにしたならば、地下水の水位が低い場合にも適用する
ことが可能となる。また、前記汚染土壌内に前記集水手
段又は前記電極の近傍にて所定の止水壁を設けたなら
ば、地下水に流れがある場合にも該地下水を効率よく集
水手段や電極に集めることができるとともに、該地下水
の周囲への拡散を未然に防止することも可能となる。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る有機塩素化合
物の処理方法及び装置並びにシステムの実施の形態につ
いて、添付図面を参照して説明する。なお、従来技術と
実質的に同一の部品等については同一の符号を付してそ
の説明を省略する。
【0024】(第1実施形態)
【0025】図1は、本実施形態に係る有機塩素化合物
の処理装置を示した概念図である。同図でわかるよう
に、本実施形態に係る有機塩素化合物の処理装置1は、
有機塩素化合物を含む汚染媒体としての汚染水5が貯留
される貯留槽2と、該貯留槽内に設けられた一対の電極
3a、3bと、該電極3a、3bに電気接続された極性
反転可能な電源4とから構成してある。
【0026】電源4は、電極3a、3bの極性、すなわ
ち陽極と陰極を反転させる、換言すれば切り換えること
ができるようになっていれば、その構造や回路構成は問
わない。
【0027】電極3a、3bは、例えば数cm〜数十c
m離間して配置し、電源4は、例えば10〜30ボルト
程度の直流電圧を印加できるように構成しておくのがよ
い。
【0028】ここで、貯留槽2は、冷却槽6の内部に配
置してあり、冷却装置7から循環供給される冷却水によ
って汚染水5が冷却されるようになっている。
【0029】本実施形態に係る有機塩素化合物の処理装
置1を用いて本実施形態に係る有機塩素化合物の処理方
法を実施するには、まず、電極3a、3bが配設された
貯留槽2内に有機塩素化合物が含まれた汚染水5を貯留
槽2内に貯留する。
【0030】汚染水5を貯留するには、例えば汚染土壌
から揚水されたものをポンプ圧送し、これを貯留槽2に
投入するようにすればよい。
【0031】次に、電極3a、3bの極性を一定時間ご
とに反転させつつ、10〜30ボルト程度の直流電圧を
両電極間に印加して直流電流を通電する。極性の反転操
作については、例えば、電極3a、3b間の通電量を計
測する電流計及び電源4に内蔵された極性切り換え手段
を制御する制御装置を別途備えておき、電流計で通電量
を監視しながら該通電量が一定値を下回ったときに制御
装置で電源4の極性切り換え手段を制御することによ
り、電極3a、3bの極性を自動的に切り換えるように
しておくのがよい。
【0032】このように電極3a、3b間に通電を行う
と、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンといっ
た有害な有機塩素化合物は、主として陰極表面の還元反
応によって塩素イオン等の塩化物と、エチレン、エタン
などの炭化水素に電気分解される。そして、これらの塩
化物や炭化水素はいずれも無害物質であるため、結局、
有害な有機塩素化合物が無害化されることとなる。な
お、塩化物や炭化水素といった反応生成物は、いずれも
無害であるので、特に回収する必要はないが、必要であ
れば、貯留槽2に蓋をした上、該貯留槽内のガスを吸引
回収するようにしてもよい。
【0033】ここで、通電量が増加すると、電気分解に
よる有機塩素化合物の処理速度が速くなる反面、ジュー
ル熱が発生してエネルギー効率が低下するとともに、発
生熱による水温上昇によって有機塩素化合物が電気分解
されずに気化し、気化ガスを処理するための設備が別途
必要となる。
【0034】そのため、上述した通電作業を行うにあた
っては、有機塩素化合物の気化が抑制される範囲で電気
分解による処理速度ができるだけ向上するよう、電圧や
電流の大きさ、通電時間若しくは冷却槽6及び冷却装置
7による冷却の度合いを適宜調整するのが望ましい。
【0035】ちなみに、汚染水5が汚染土壌から揚水さ
れた地下水であるような場合には、通常の地下水であれ
ば、0.1〜0.3mS/cm程度の電気伝導度である
ので、電流値は小さく、したがって消費電力もわずかで
ある。
【0036】また、上述した通電の際、電極3a、3b
の極性反転を所定時間ごとに行う。すなわち、陽極を陰
極に、陰極を陽極に反転する。このようにすると、電極
3a、3b表面上の付着物や電解生成物といった通電阻
害物質が除去され、その結果、新鮮な電極面が露出して
通電量が回復する。
【0037】次に、本実施形態に係る有機塩素化合物の
処理装置1及び方法における通電に関する作用効果を実
験で確認したので、その概略を以下に説明する。
【0038】まず、有機塩素化合物であるトリクロロエ
チレン(以下TCEという)が100mg/L含まれた汚染水を容
器に入れ、該容器内に電極を設置して直流電流を流し
(電流値0.05A、電圧値30V)、そのときに発生
する塩素ガスの量とTCEの残存量とを計測した。なお、T
CEの揮発による損失をできるだけ減らすため、上述した
ように容器を冷却水の中に入れて冷却した。
【0039】計測にあたっては、通電時間が異なるケー
スを4回行い、それぞれ通電終了後に試料液を採取して
液中のTCE濃度、塩化物イオン(Cl-)濃度及び塩素(Cl
2)濃度を測定した。
【0040】実験の結果をグラフにして図2に示す。同
図でわかるように、通電を行った場合には、通電時間と
ともにTCE濃度(TCE残存率として表示)が減少するとと
もに、塩化物イオン濃度(TCE塩素化率として表示)が
増大することがわかる。これは、主に陰極表面での還元
反応によってTCEの構成成分の一つである塩素がTCEから
脱離する、すなわち脱塩素反応が生じ、TCEが減少した
ものと考えられる。なお、塩素濃度は、いずれもほとん
どゼロであった。
【0041】以上の実験結果から、汚染水中のTCEを通
電時間に比例して確実に分解・無害化できるとともにそ
れに要する電力もわずかであることがわかった。なお、
通電を行わずに放置した場合、TCE濃度はほとんど不変
で、塩化物イオンも検出されなかった。また、トリクロ
ロエチレン、ジクロロエチレン、テトラクロロエチレン
といった他の有機塩素化合物についても同様の処理効果
を示すことを確認済みである。
【0042】次に、極性反転による作用効果を実験で確
認したので、その概略を以下に説明する。
【0043】まず、TCEが100mg/L 含まれた汚染水を容
器に入れ、該容器内に電極を設置してそれらの極性を反
転させつつ直流電流を流し(電流値0.1A)、そのと
きのTCEの除去速度を計測した。
【0044】実験の結果をグラフにして図3に示す。同
図でわかるように、極性を反転させつつ通電を行った場
合(電極切り替えあり)には、極性を反転させない場合
(電極切り替えなし)に比べ、高いTCE除去速度が維持
されることがわかる。
【0045】以上説明したように、本実施形態に係る有
機塩素化合物の処理方法及び処理装置1によれば、貯留
槽2内に貯留された有機塩素化合物を含む汚染水5を電
極3a、3bで電気分解するようにしたので、有機塩素
化合物は、塩化物と炭化水素とに電気分解され、かくし
て有機塩素化合物を無害化することが可能となる。しか
も、わずかな電力でかつ通電時間に比例した形で有機塩
素化合物を無害化処理することができるので、ランニン
グコストが小さくかつ制御しやすい処理装置を容易に構
築することが可能となる。
【0046】また、本実施形態に係る有機塩素化合物の
処理方法及び処理装置1によれば、通電を行いつつ、電
極3a、3bの極性を反転させるようにしたので、電極
表面上の付着物や電解生成物といった通電阻害物質が除
去され、その結果、新鮮な電極面が露出して通電量が回
復する。
【0047】そのため、通電量の低下ひいては有機塩素
化合物の電解分解効率の低下を未然に防止することが可
能となり、高濃度汚染や短時間処理に適したものとな
る。
【0048】また、本実施形態に係る有機塩素化合物の
処理方法及び装置1によれば、極性を反転しない場合に
おける陽極腐食を抑制することが可能となり、その結果
として、耐腐食性の金や白金を使用せずとも鉄などで代
用することができる。
【0049】また、本実施形態に係る有機塩素化合物の
処理方法及び装置1によれば、貯留槽2を冷却槽6で冷
却するようにしたので、冷却槽6による冷却の度合いを
適宜設定することによって、有機塩素化合物を実質的に
気化させることなく大きな通電量を確保することが可能
となり、かくして有機塩素化合物を迅速に無害化処理す
ることが可能となる。
【0050】本実施形態では、電極3a、3bを貯留槽
2内に配設するようにしたが、貯留槽2自体を導電体で
形成し、これを電極3a又は電極3bとしてもよい。
【0051】また、本実施形態では、有機塩素化合物の
気化を抑制すべく、貯留槽2を冷却槽6で冷却するよう
にしたが、電圧値、電流値、通電時間、通電サイクルと
いった通電条件を適宜設定することによって有機塩素化
合物の気化を抑制することができるのであれば、かかる
冷却槽6及び冷却装置7を省略してもよい。
【0052】また、本実施形態では、汚染水5を汚染媒
体とし、該汚染水を電極3a、3bが配設された貯留槽
2内に貯留するようにしたが、汚染媒体が汚染土壌や汚
染廃棄物である場合には、これらの汚染媒体を先に貯留
槽2内に投入し、しかる後に電極3a、3bを汚染媒体
に埋め込むようにして配置すればよい。
【0053】また、本実施形態では、貯留槽2を地上に
設置することを前提とし、該貯留槽内に汚染媒体である
汚染水を流入するようにしたが、かかる貯留槽2を用い
た構成に代えて、図4に示す構成としてもよい。
【0054】同図に示した有機塩素化合物の処理装置1
1は、有機塩素化合物を含む汚染水5が貯留される電極
兼用の貯留槽12と、該貯留槽内に配設された電極13
と、該電極及び貯留槽12に電気接続された極性反転可
能な電源4とから構成してあり、電極13及び貯留槽1
2は、本発明で言うところの一対の電極として機能し、
電源4によって一定時間ごとに極性反転される。
【0055】ここで、貯留槽12は、貯留本体である側
板17及び底板16に集水孔14を多数形成するととも
に、汚染土壌15内に埋設できるように構成してある。
【0056】かかる構成においては、汚染土壌15内の
地下水が汚染水として集水孔14を通って貯留槽12内
に集水貯留され、該貯留槽内で極性反転されつつ電極1
3及び貯留槽12による通電が行われる。
【0057】なお、貯留槽12内には同図に示すように
揚水ポンプ18を設置しておき、該貯留槽内に貯留され
た処理済みの水を適宜揚水することにより、貯留槽12
周囲の地下水を該貯留槽内に継続的又は断続的に集水
し、極性反転を伴う電気分解反応が連続的かつ効率的に
行われるようにするのが望ましい。
【0058】また、本変形例では、貯留槽12を汚染土
壌15内に埋設するようにしたが、該汚染土壌に代えて
汚染廃棄物に埋設するようにしてもよいことは言うまで
もない。
【0059】また、本実施形態に係る有機塩素化合物の
処理方法は、図1で説明したように、貯留槽2内に電極
3a、3bが配設された処理装置1に適用したが、本発
明に係る有機塩素化合物の処理方法は、必ずしもこのよ
うな処理装置1に適用することに限定されるものではな
く、要するに、有機塩素化合物を含む汚染土壌、汚染
水、汚染廃棄物等の汚染媒体に電極3a、3bを配置
し、かかる状態で上述したと同様に極性反転を伴った通
電を行えばよい。
【0060】(第2実施形態)
【0061】次に、第2実施形態について説明する。な
お、上述の実施形態と実質的に同一の部品等については
同一の符号を付してその説明を省略する。
【0062】図5は、本実施形態に係る有機塩素化合物
の処理システムを示した概念図である。同図でわかるよ
うに、本実施形態に係る有機塩素化合物の処理システム
21は、有機塩素化合物を含む汚染土壌15内に埋設さ
れた集水手段としての集水管22と、該集水管に集水さ
れた地下水を汚染水25として揚水する揚水ポンプ23
と、揚水された汚染水が貯留される貯留槽2と、該貯留
槽内に設けられた一対の電極3a、3bと、これらの電
極3a、3bに電気接続された極性反転可能な電源4と
からなり、集水管22には、汚染土壌15内の地下水を
集水するための集水孔24を多数形成してある。
【0063】本実施形態に係る有機塩素化合物の処理シ
ステム21を用いて有機塩素化合物を処理するには、ま
ず、有機塩素化合物を含む汚染土壌15内の地下水を汚
染水25として集水管22で集水し、これを揚水ポンプ
23で揚水して貯留槽2内に貯留する。
【0064】次に、電極3a、3bの極性を一定時間ご
とに反転させつつ、10〜30ボルト程度の直流電圧を
両電極間に印加して直流電流を通電する。極性を反転さ
せるタイミングとしては、例えば通電量を監視しながら
該通電量が一定値を下回ったときに切り換えるのがよ
い。
【0065】このように電極3a、3b間に通電を行う
と、第1実施形態と同様、汚染水25に含まれているト
リクロロエチレン、テトラクロロエチレンといった有害
な有機塩素化合物は、主として陰極表面の還元反応によ
って塩素イオン等の塩化物と、エチレン、エタンなどの
炭化水素に電気分解される。そして、これらの塩化物や
炭化水素はいずれも無害物質であるため、結局、有害な
有機塩素化合物が無害化されることとなる。
【0066】また、上述した通電の際、電極3a、3b
の極性反転を所定時間ごとに行う。すなわち、陽極を陰
極に、陰極を陽極に反転する。このようにすると、電極
3a、3b表面上の付着物や電解生成物といった通電阻
害物質が除去され、その結果、新鮮な電極面が露出して
通電量が回復する。
【0067】ここで、貯留槽2内には排水ポンプ26を
設置しておき、該貯留槽内の処理済みの水を適宜排水す
ることにより、極性反転を伴う電気分解反応が連続的か
つ効率的に行われるようにするのが望ましい。
【0068】なお、その他の作用効果については第1実
施形態と実質的に同一であるので、ここではその説明を
省略する。
【0069】以上説明したように、本実施形態に係る有
機塩素化合物の処理システム21によれば、貯留槽2内
に貯留された有機塩素化合物を含む汚染水25を電極3
a、3bで電気分解するようにしたので、有機塩素化合
物は、塩化物と炭化水素とに電気分解され、かくして有
機塩素化合物を無害化することが可能となる。しかも、
わずかな電力でかつ通電時間に比例した形で有機塩素化
合物を無害化処理することができるので、ランニングコ
ストが小さくかつ制御しやすい処理システムを容易に構
築することが可能となる。
【0070】また、本実施形態に係る有機塩素化合物の
処理方法及び処理装置21によれば、通電を行いつつ、
電極3a、3bの極性を反転させるようにしたので、電
極表面上の付着物や電解生成物といった通電阻害物質が
除去され、その結果、新鮮な電極面が露出して通電量が
回復する。
【0071】そのため、通電量の低下ひいては有機塩素
化合物の電解分解効率の低下を未然に防止することが可
能となり、高濃度汚染や短時間処理に適したものとな
る。
【0072】また、本実施形態に係る有機塩素化合物の
処理方法及び装置1によれば、極性を反転しない場合に
おける陽極腐食を抑制することが可能となり、その結果
として、耐腐食性の金や白金を使用せずとも鉄などで代
用することができる。
【0073】本実施形態では特に言及しなかったが、図
6に示すように、汚染土壌15内に給水を行う給水手段
としての給水ポンプ31及び給水管32を備え、該給水
ポンプで圧送されてきた水を給水管32を介して汚染土
壌15内に給水するようにしたならば、地下水の水位が
低い場合にも、本システムを適用することが可能とな
る。なお、汚染水5を処理した後の処理水を給水に利用
することによって、汚染土壌15に供給される水を循環
使用することが可能である。
【0074】また、本実施形態では特に言及しなかった
が、図7に示すように、集水手段である集水管22近傍
に止水壁41を例えば連続地中壁工法で構築するように
してもよい。かかる構成においては、止水壁41によっ
て地下水の流れが汚染土壌15内で堰き止められるの
で、地下水に流れがある場合にも該地下水を効率よく集
水管22に集めることができるとともに、該地下水の周
囲への拡散を未然に防止することも可能となる。
【0075】また、本実施形態では、集水手段を集水管
22としたが、集水手段をどのように構成するかは任意
であり、集水管22に代えて、図8に示すようなトレン
チ状掘削溝54を集水手段としてもよい。
【0076】かかる構成においても、上述したと同様の
作用効果を奏するほか、トレンチ状掘削溝54を長くす
ることによって大規模な集水貯留を行うとともに、それ
に応じて電極3a、3b、電源4の規模を適宜設定する
ことにより、有機塩素化合物の処理を大規模に行うこと
が可能となる。
【0077】(第3実施形態)
【0078】次に、第3実施形態について説明する。な
お、上述の実施形態と実質的に同一の部品等については
同一の符号を付してその説明を省略する。
【0079】図9は、本実施形態に係る有機塩素化合物
の処理システムを示した概念図である。同図でわかるよ
うに、本実施形態に係る有機塩素化合物の処理システム
61は、有機塩素化合物を含む汚染土壌15内に形成さ
れた集水貯留手段としてのトレンチ状掘削溝66と、該
トレンチ状掘削溝に設けられた一対の電極3a、3b
と、これらの電極3a、3bに電気接続された極性反転
可能な電源4とからなる。
【0080】ここで、トレンチ状掘削溝66内には同図
に示すように揚水ポンプ18を設置しておき、該トレン
チ状掘削溝内に貯留された処理済みの水を適宜揚水する
ことにより、トレンチ状掘削溝66周囲の地下水を該溝
内に継続的又は断続的に集水し、極性反転を伴う電気分
解反応が連続的かつ効率的に行われるようにするのが望
ましい。
【0081】本実施形態に係る有機塩素化合物の処理シ
ステム61を用いて有機塩素化合物を処理するには、ま
ず、有機塩素化合物を含む汚染土壌15内の地下水を汚
染水25としてトレンチ状掘削溝66内に集水貯留す
る。
【0082】次に、電極3a、3bの極性を一定時間ご
とに反転させつつ、10〜30ボルト程度の直流電圧を
両電極間に印加して直流電流を通電する。極性を反転さ
せるタイミングとしては、例えば通電量を監視しながら
該通電量が一定値を下回ったときに切り換えるのがよ
い。
【0083】このように電極3a、3b間に通電を行う
と、第1、第2実施形態と同様、汚染水25に含まれて
いるトリクロロエチレン、テトラクロロエチレンといっ
た有害な有機塩素化合物は、主として陰極表面の還元反
応によって塩素イオン等の塩化物と、エチレン、エタン
などの炭化水素に電気分解される。そして、これらの塩
化物や炭化水素はいずれも無害物質であるため、結局、
有害な有機塩素化合物が無害化されることとなる。
【0084】また、上述した通電の際、電極3a、3b
の極性反転を所定時間ごとに行う。すなわち、陽極を陰
極に、陰極を陽極に反転する。このようにすると、電極
3a、3b表面上の付着物や電解生成物といった通電阻
害物質が除去され、その結果、新鮮な電極面が露出して
通電量が回復する。
【0085】なお、その他の作用効果については第1、
第2実施形態と実質的に同一であるので、ここではその
説明を省略する。
【0086】以上説明したように、本実施形態に係る有
機塩素化合物の処理システム61によれば、第1、第2
実施形態で述べたと同様の作用効果を奏するほか、トレ
ンチ状掘削溝66を長くすることによって大規模な集水
貯留を行うとともに、それに応じて電極3a、3b、電
源4の規模を適宜設定することにより、有機塩素化合物
の処理を大規模に行うことが可能となる。
【0087】(第4実施形態)
【0088】次に、第4実施形態について説明する。な
お、上述の実施形態と実質的に同一の部品等については
同一の符号を付してその説明を省略する。
【0089】図7は、本実施形態に係る有機塩素化合物
の処理システムを示した概念図である。同図でわかるよ
うに、本実施形態に係る有機塩素化合物の処理システム
71は、有機塩素化合物を含む汚染土壌15内に埋設さ
れた一対の電極3a、3bと、これらの電極3a、3b
に電気接続された極性反転可能な電源4とから構成して
ある。
【0090】本実施形態に係る有機塩素化合物の処理シ
ステム71を用いて有機塩素化合物を処理するには、上
述した各実施形態と同様、電極3a、3bの極性を一定
時間ごとに反転させつつ、10〜30ボルト程度の直流
電圧を両電極間に印加して直流電流を通電する。
【0091】このように電極3a、3b間に通電を行う
と、第1、第2実施形態と同様、トリクロロエチレン、
テトラクロロエチレンといった有害な有機塩素化合物
は、主として陰極表面の還元反応によって塩素イオン等
の塩化物と、エチレン、エタンなどの炭化水素に電気分
解される。そして、これらの塩化物や炭化水素はいずれ
も無害物質であるため、結局、有害な有機塩素化合物が
無害化されることとなる。
【0092】また、上述した通電の際、電極3a、3b
の極性反転を所定時間ごとに行う。すなわち、陽極を陰
極に、陰極を陽極に反転する。このようにすると、電極
3a、3b表面上の付着物や電解生成物といった通電阻
害物質が除去され、その結果、新鮮な電極面が露出して
通電量が回復する。
【0093】なお、上述の実施形態とは、電気分解反応
が貯留槽2等ではなく、電極3a、3b周囲の汚染土壌
15内で進行することを除いて実質的に同一であり、そ
の他の作用効果についてはここでは説明を省略するが、
本実施形態は、コロイド粒子が少ない砂礫質地盤に特に
適しており、該砂礫質地盤に含まれる有機塩素化合物を
原位置で効率よく無害化することができるという顕著な
作用効果や、生石灰を使用するような従来方法とは異な
り、汚染土壌に対して何ら悪影響を及ぼさないという顕
著な作用効果を奏する。
【0094】なお、本実施形態においても、第2実施形
態で述べたような給水手段としての給水ポンプ31及び
給水管32を備えることにより、汚染土壌15に給水を
行って地下水の水位を上げるようにしてもよい。
【0095】同様に、電極3a、3bの近傍に止水壁4
1を例えば連続地中壁工法で構築することにより、該止
水壁で地下水の流れを汚染土壌15内に堰き止めるよう
にしてもよい。かかる構成によれば、地下水に流れがあ
る場合にも該地下水を効率よく陽極3a及び陰極3b周
辺に集めることができるとともに、該地下水の周囲への
拡散を未然に防止することも可能となる。
【0096】
【発明の効果】以上述べたように、本発明に係る有機塩
素化合物の処理方法及び装置並びにシステムによれば、
周辺への汚染拡散を防ぎつつ処理済みの土壌に悪影響を
残すことなく確実かつ短期間にしかもどんな汚染土壌に
対しても有機塩素化合物を除去処理することが可能とな
る。
【0097】
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に係る有機塩素化合物の処理装置
を示した概念図。
【図2】第1実施形態に係る有機塩素化合物の処理装置
の通電による作用効果を示したグラフ。
【図3】第1実施形態に係る有機塩素化合物の処理装置
の極性反転による作用効果を示したグラフ。
【図4】変形例に係る有機塩素化合物の処理装置を示し
た概念図。
【図5】第2実施形態に係る有機塩素化合物の処理シス
テムを示した概念図。
【図6】変形例に係る有機塩素化合物の処理システムを
示した概念図。
【図7】別の変形例に係る有機塩素化合物の処理システ
ムを示した概念図。
【図8】別の変形例に係る有機塩素化合物の処理システ
ムを示した概念図。
【図9】第3実施形態に係る有機塩素化合物の処理シス
テムを示した概念図。
【図10】第4実施形態に係る有機塩素化合物の処理シ
ステムを示した概念図。
【符号の説明】
1、11 有機塩素化合物の処理装
置 2 貯留槽 3a、3b 電極 4 電源 5、25 汚染水 12 貯留槽、電極 13 電極 14 集水孔 15 汚染土壌 16 底板(貯留本体) 17 側板(貯留本体) 21、61、71 有機塩素化合物の処理シ
ステム 22 集水管(集水手段) 23 揚水ポンプ 31 給水ポンプ(給水手段) 32 給水管(給水手段) 41 止水壁 54 トレンチ状掘削溝(集水
手段) 66 トレンチ状掘削溝(集水
貯留手段)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 三浦 俊彦 東京都清瀬市下清戸4丁目640 株式会社 大林組技術研究所内 Fターム(参考) 2E191 BA12 BB01 BD11 4D004 AA41 AB06 CA40 CA44 CC03 4D061 DA01 DB19 DC09 EA02 EA04 EB05 EB19 EB39 FA20 GC16

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 有機塩素化合物を含む汚染水等の汚染媒
    体に一対の電極を配置し、該電極の極性を所定時間ごと
    に反転させつつ通電することによって前記有機塩素化合
    物を電気分解することを特徴とする有機塩素化合物の処
    理方法。
  2. 【請求項2】 有機塩素化合物を含む汚染水等の汚染媒
    体が貯留される貯留槽と、該貯留槽内に設けられた一対
    の電極と、該電極に電気接続された極性反転可能な電源
    とからなることを特徴とする有機塩素化合物の処理装
    置。
  3. 【請求項3】 前記貯留槽の側板、底板等の貯留本体に
    集水孔を形成するとともに、該貯留槽を有機塩素化合物
    を含む汚染土壌又は汚染廃棄物内に埋設可能に構成した
    請求項2記載の有機塩素化合物の処理装置。
  4. 【請求項4】 有機塩素化合物を含む汚染土壌内に埋設
    された集水手段と、該集水手段に集水された汚染水を揚
    水する揚水ポンプと、揚水された汚染水が貯留される貯
    留槽と、該貯留槽内に設けられた一対の電極と、該一対
    の電極に電気接続された極性反転可能な電源とからなる
    ことを特徴とする有機塩素化合物の処理システム。
  5. 【請求項5】 前記汚染土壌内に給水を行う給水手段を
    備えた請求項4記載の有機塩素化合物の処理システム。
  6. 【請求項6】 前記汚染土壌内に前記集水手段又は前記
    電極の近傍にて所定の止水壁を設けた請求項4記載の有
    機塩素化合物の処理システム。
  7. 【請求項7】 有機塩素化合物を含む汚染土壌内に形成
    された集水貯留手段と、該集水貯留手段内に設けられた
    一対の電極と、該一対の電極に電気接続された極性反転
    可能な電源とからなることを特徴とする有機塩素化合物
    の処理システム。
  8. 【請求項8】 有機塩素化合物を含む汚染土壌内に埋設
    された一対の電極と、該一対の電極に電気接続された極
    性反転可能な電源とからなることを特徴とする有機塩素
    化合物の処理システム。
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JP2004016911A (ja) * 2002-06-14 2004-01-22 Ohbayashi Corp 有機塩素化合物の処理方法及び装置並びにシステム
CN110695080A (zh) * 2019-11-20 2020-01-17 中国科学院南京土壤研究所 一种螯合剂强化高级氧化协同电动修复去除土壤中有机氯化合物的方法

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CN110695080B (zh) * 2019-11-20 2021-05-04 中国科学院南京土壤研究所 一种螯合剂强化高级氧化协同电动修复去除土壤中有机氯化合物的方法

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