JP2004016914A - 有機塩素化合物の処理方法及び装置並びにシステム - Google Patents
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Abstract
【目的】汚染土壌内の有機塩素化合物を確実かつ短期間に分解除去する。
【構成】本発明に係る有機塩素化合物の処理装置1は、有機塩素化合物を含む汚染水5が貯留される貯留槽2と、該貯留槽内に対向配置された一対の電極としての陽極3a及び陰極3bと、これらの陽極3a及び陰極3bに電気接続された電源4とから概ね構成してあるが、陽極3aに対向する陰極3bの側には、透水性及び吸着性を有する多孔質導電体6bを該陰極3bに隣接配置してある。電極3b及びそれに隣接配置された多孔質導電体6bと電極3aは、貯留槽2内が3つの空間9a,9b,9cに仕切られるように配置してあり、最下流側の空間9cには水中ポンプ11を設置するとともに該水中ポンプの吐出側に循環用配管12を接続し、該循環用配管の先端を最上流側の空間9aの上方あるいは該空間内に位置決めしてある。
【選択図】 図1
【構成】本発明に係る有機塩素化合物の処理装置1は、有機塩素化合物を含む汚染水5が貯留される貯留槽2と、該貯留槽内に対向配置された一対の電極としての陽極3a及び陰極3bと、これらの陽極3a及び陰極3bに電気接続された電源4とから概ね構成してあるが、陽極3aに対向する陰極3bの側には、透水性及び吸着性を有する多孔質導電体6bを該陰極3bに隣接配置してある。電極3b及びそれに隣接配置された多孔質導電体6bと電極3aは、貯留槽2内が3つの空間9a,9b,9cに仕切られるように配置してあり、最下流側の空間9cには水中ポンプ11を設置するとともに該水中ポンプの吐出側に循環用配管12を接続し、該循環用配管の先端を最上流側の空間9aの上方あるいは該空間内に位置決めしてある。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、トリクロロエチレンなどの有機塩素化合物を無害化するための処理方法及び装置並びにシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
工場跡地内の土壌には、発ガン性物質であるトリクロロエチレン、テトラクロロエチレンなどの有機塩素化合物が含まれていることがあり、このような土壌をそのまま放置すると地下水等を介して有機塩素化合物が環境に拡散するおそれがある。そのため、このような汚染土壌に対しては所定の浄化処理を行なねばならない。
【0003】
一方、最近では、微生物の活性を利用して環境中の汚染物質を分解無害化する技術、すなわちバイオレメディエーションの研究が進んできており、上述したような汚染土壌への適用も研究されるようになってきた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような微生物を利用した汚染物質の処理方法は、少なくとも実験室レベルでは十分な成果が確認されており、現実的な対応についても今後大いに期待されるところである。
【0005】
しかしながら、土質状況によっては、分解菌の活性を十分上げることができず、該汚染土内の汚染物質を分解するのに長時間を要したり、場合によっては微生物分解自体が実質的に不可能になるという問題が懸念される。
【0006】
また、汚染土に生石灰を混合することで、汚染土内に含まれている水分と生石灰との化学反応に伴う水和熱を発生させ、かかる水和熱を利用して汚染物質である有機塩素化合物を気化処理する方法も検討開発されている(特開平7−275837号公報参照)が、かかる方法では、汚染土が生石灰により強アルカリ性となり、埋め戻した後でアルカリ成分が地下水等に拡散したり生態系に悪影響を及ぼすといった事態が懸念される。
【0007】
さらには、汚染土壌から土壌内空気を吸引したり土壌内地下水を揚水する方法、汚染土壌を高温に加熱する方法、鉄粉の還元作用を利用した方法などがあるが、空気吸引若しくは地下水揚水は、長時間を要するとともにその間に設備の維持にコストがかかる、高温加熱方法は土壌の生態系に悪影響を残す、鉄粉による還元方法は適用できる状況に制約が大きいなどの問題をそれぞれ生じていた。
【0008】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、処理済みの土壌に悪影響を残すことなく確実かつ短期間に有機塩素化合物を除去処理可能な有機塩素化合物の処理方法及び装置並びにシステムを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に係る有機塩素化合物の処理方法は請求項1に記載したように、有機塩素化合物を含む汚染水に一対の電極を対向配置し、該電極間に通電することによって前記有機塩素化合物を電気分解する有機塩素化合物の処理方法において、前記一対の電極のうち、少なくとも一方の電極に透水性及び吸着性を有する多孔質導電体を隣接配置し、該多孔質導電体に前記汚染水を繰り返し通水して前記有機塩素化合物を吸着させた後、前記電極間に通電を行うものである。
【0010】
また、本発明に係る有機塩素化合物の処理方法は請求項2に記載したように、有機塩素化合物を含む汚染水に一対の電極を対向配置し、該電極間に通電することによって前記有機塩素化合物を電気分解する有機塩素化合物の処理方法において、前記一対の電極のうち、少なくとも一方の電極を透水性及び吸着性を有する多孔質導電体で構成し、該多孔質導電体に前記汚染水を繰り返し通水して前記有機塩素化合物を吸着させた後、前記電極間に通電を行うものである。
【0011】
また、本発明に係る有機塩素化合物の処理方法は、前記多孔質導電体を所定の収容体に導電性粒子を充填して構成したものである。
【0012】
また、本発明に係る有機塩素化合物の処理装置は請求項4に記載したように、有機塩素化合物を含む汚染水が貯留される貯留槽と、該貯留槽内に対向配置された一対の電極と、該電極に電気接続された電源とからなる有機塩素化合物の処理装置において、前記一対の電極のうち、少なくとも一方の電極に透水性及び吸着性を有する多孔質導電体を隣接配置し、前記汚染水を前記多孔質導電体に繰り返し通水させる汚染水循環手段を備えたものである。
【0013】
また、本発明に係る有機塩素化合物の処理装置は請求項5に記載したように、有機塩素化合物を含む汚染水が貯留される貯留槽と、該貯留槽内に対向配置された一対の電極と、該電極に電気接続された電源とからなる有機塩素化合物の処理装置において、前記一対の電極のうち、少なくとも一方の電極を透水性及び吸着性を有する多孔質導電体で構成し、前記汚染水を前記多孔質導電体に繰り返し通水させる汚染水循環手段を備えたものである。
【0014】
また、本発明に係る有機塩素化合物の処理装置は、前記多孔質導電体を所定の収容体に導電性粒子を充填して構成したものである。
【0015】
また、本発明に係る有機塩素化合物の処理システムは請求項7に記載したように、有機塩素化合物を含む汚染土壌内に埋設された集水手段と、該集水手段に集水された汚染水を揚水する揚水ポンプと、揚水された汚染水が貯留される貯留槽と、該貯留槽内に対向配置された一対の電極と、該電極に電気接続された電源とからなる有機塩素化合物の処理システムにおいて、前記一対の電極のうち、少なくとも一方の電極に透水性及び吸着性を有する多孔質導電体を隣接配置し、前記汚染水を前記多孔質導電体に繰り返し通水させる汚染水循環手段を備えたものである。
【0016】
また、本発明に係る有機塩素化合物の処理システムは請求項8に記載したように、有機塩素化合物を含む汚染土壌内に埋設された集水手段と、該集水手段に集水された汚染水を揚水する揚水ポンプと、揚水された汚染水が貯留される貯留槽と、該貯留槽内に対向配置された一対の電極と、該電極に電気接続された電源とからなる有機塩素化合物の処理システムにおいて、前記一対の電極のうち、少なくとも一方の電極を透水性及び吸着性を有する多孔質導電体で構成し、前記汚染水を前記多孔質導電体に繰り返し通水させる汚染水循環手段を備えたものである。
【0017】
また、本発明に係る有機塩素化合物の処理システムは、前記多孔質導電体を所定の収容体に導電性粒子を充填して構成したものである。
【0018】
本発明に係る有機塩素化合物の処理方法及び処理装置並びに処理システムにおいては、まず、透水性及び吸着性を有する多孔質導電体に汚染水を繰り返し通水する。
【0019】
このようにすると、汚染水との接触箇所が三次元的に拡がっているという多孔質導電体の構造上、汚染水に含まれる有機塩素化合物は、多孔質導電体に効率よく吸着される。
【0020】
このような多孔質導電体への汚染水の通水は、汚染水循環手段を用いて必要な回数だけ繰り返し行う。
【0021】
なお、多孔質導電体は、電極に隣接配置され又はそれ自体が電極として構成してあるが、前者の場合、電極が透水性を有する必要はない。通水方向を適宜選択すれば、電極に通水阻害されないよう、多孔質導電体に汚染水を通水させることは可能だからである。
【0022】
多孔質導電体に有機塩素化合物を所望の程度まで吸着させたならば、次に、一対の電極間に通電する。
【0023】
このようにすると、多孔質導電体が電極に隣接配置され又は電極として構成してあるため、多孔質導電体に吸着していたトリクロロエチレン、テトラクロロエチレンといった有害な有機塩素化合物は、酸化還元反応によって無害物質に分解される。例えば、陰極側での還元反応であれば、塩素イオン等の塩化物と、エチレン、エタンなどの炭化水素に電気分解される。そして、これらの塩化物や炭化水素はいずれも無害物質であるため、結局、有害な有機塩素化合物が無害化されることとなる。
【0024】
一方、かかる通電により、多孔質導電体に吸着していた有機塩素化合物が分解除去されるため、多孔質導電体はリフレッシュされ、その吸着特性はすみやかに回復する。そのため、多孔質導電体を交換する必要がなくなる。
【0025】
多孔質導電体を電極に隣接するにあたっては、一対の電極のうち、少なくとも一方の電極に隣接配置すればよく、陰極及び陽極の両方に隣接配置してもよいし、いずれか一方でもよい。また、配置形態は任意であり、電極を取り囲むように配置してもよいし、他方の電極に対向する側だけに配置するようにしてもよい。なお、ここでいう隣接配置とは、通電可能なように相互に接触させて配置するという意味であることは言うまでもない。
【0026】
多孔質導電体で電極を構成するにあたっても、一対の電極のうち、少なくとも一方の電極を多孔質導電体で構成すればよく、陰極及び陽極の両方を多孔質導電体で構成してもよいし、いずれか一方だけを多孔質導電体で構成してもよい。
【0027】
多孔質導電体は、透水性と吸着性を有する限り、どのように構成するかは任意であり、多孔質構造をどのように構成するか、多孔質材料として何を選択するか、あるいは全体の透水係数や厚みをどの程度に設定するかは、対象となる有機塩素化合物の濃度や汚染水の通水速度等を考慮して適宜定めればよい。
【0028】
かかる多孔質導電体は、例えば紛状、粒状、フレーク状、破砕状といったさまざまな形状の導電体を集合させて構成することが可能であり、特に、所定の収容体に導電性粒子を充填して構成すれば、電極面で発生したガスをスムーズに遊離排出することができる。
【0029】
この場合、構成単位である導電性粒子の粒径やそれらの間隙をどのようにするかは、やはり上述したと同様の観点で適宜定めればよい。
【0030】
多孔質材料としては、吸着性の観点で活性炭を採用するのが望ましい。
【0031】
本発明に係る処理装置及び処理システムにおける汚染水循環手段は、貯留槽内に設置された水中ポンプと該水中ポンプの吐出側に接続された循環用配管とで構成することができる。この場合、水中ポンプへの吸引力と循環用配管の先端からの吐出力とによって、汚染水の循環経路が形成されるので、該循環経路に沿って上述した多孔質導電体を配置すればよい。
【0032】
また、本発明に係る処理システムの集水手段としては、例えば、トレンチ状の掘削溝や、円筒状の有底多孔管を採用することが考えられる。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る有機塩素化合物の処理方法及び装置並びにシステムの実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、従来技術と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0034】
(第1実施形態)
【0035】
図1は、本実施形態に係る有機塩素化合物の処理装置を示した概念図である。同図でわかるように、本実施形態に係る有機塩素化合物の処理装置1は、有機塩素化合物を含む汚染水5が貯留される貯留槽2と、該貯留槽内に対向配置された一対の電極としての陽極3a及び陰極3bと、これらの陽極3a及び陰極3bに電気接続された電源4とから概ね構成してあるが、陽極3aに対向する陰極3bの側には、透水性及び吸着性を有する多孔質導電体6bを該陰極3bに隣接配置してある。
【0036】
ここで、陽極3a、陰極3bについても例えば導電体に多数の透水孔を穿孔したり導電体を網目状に形成することで透水性を有するように構成してある。
【0037】
陰極3b及びそれに隣接配置された多孔質導電体6bと陽極3aは、貯留槽2内が3つの空間9a,9b,9cに仕切られるように配置してあり、最下流側の空間9cには水中ポンプ11を設置するとともに該水中ポンプの吐出側に循環用配管12を接続し、該循環用配管の先端を最上流側の空間9aの上方あるいは該空間内に位置決めしてある。
【0038】
かかる水中ポンプ11及び循環用配管12は、水中ポンプ11への吸引力と循環用配管12の先端からの吐出力とによって、汚染水5の循環経路(同図破線と実線で示した矢印)が形成されることとなり、貯留槽2内の汚染水を多孔質導電体6bに繰り返し通水させるための汚染水循環手段を構成する。
【0039】
したがって、多孔質導電体6bは、該循環経路に沿って配置すればよい。
【0040】
一方、貯留槽2には最上流側の空間9aに連通するように供給管7を接続してあり、該供給管を介して汚染水を貯留槽2に流入させることができるとともに、最下流側の空間9bに連通するように排水管8を接続してあり、該排水管を介して被処理水を排水することができるようになっている。
【0041】
ここで、排水管8にはバルブ10を介在させてあり、該バルブを閉じることによって貯留槽2内の汚染水5を上述した汚染水循環手段によって循環させることができるようになっている。
【0042】
陽極3a及び陰極3bは、陽極3aと多孔質導電体6bとが例えば数cm〜数十cm離間するように配置し、電源4は、例えば10〜30ボルト程度の直流電圧を印加できるように構成しておくのがよい。
【0043】
多孔質導電体6bは、透水性を有する収容体内に導電性粒子である活性炭を充填するとともに該活性炭が陰極3bに接触するように該電極に隣接配置してなり、かかる多孔質導電体6bは、陰極3bとの接触及び活性炭相互の相互接触により、全体が陰極3bと同様の電解機能を有するとともに、活性炭が粒子状であるため、該活性炭同士の間隙を介して水が通過できるようになっている。
【0044】
活性炭は、例えば直径が5〜10mm程度のものを用いることができる。
【0045】
収容体は、例えば、活性炭の粒径よりも小さな大きさをメッシュサイズとする網目状プラスチック収容体で構成することができる。
【0046】
本実施形態に係る有機塩素化合物の処理装置1を用いて本実施形態に係る有機塩素化合物の処理方法を実施するには、まず、バルブ10を閉じた状態にて有機塩素化合物が含まれた汚染水5を供給管7を介して貯留槽2内に流入させる。汚染水5は、例えば汚染土壌から揚水されたものや、工場内の洗浄に使った後の洗浄水などが対象となる。
【0047】
次に、水中ポンプ11を駆動することによって汚染水5を循環させながら、該汚染水を透水性及び吸着性を有する多孔質導電体6bに繰り返し通水する。
【0048】
このようにすると、汚染水5との接触箇所が三次元的に拡がっているという多孔質導電体6bの構造上、汚染水5に含まれる有機塩素化合物は、多孔質導電体6bに効率よく吸着される。
【0049】
このような多孔質導電体6bへの汚染水5の通水は、汚染水循環手段である水中ポンプ11及び循環用配管12を用いて必要な回数だけ繰り返し行う。
【0050】
多孔質導電体6bに有機塩素化合物を所望の程度まで吸着させたならば、次に、一対の電極3a,3b間に例えば10〜30ボルト程度の直流電圧を印加して直流電流を通電する。
【0051】
このようにすると、多孔質導電体6bが陰極3bに隣接配置され電気的に一体となっているため、多孔質導電体6bに吸着していたトリクロロエチレン、テトラクロロエチレンといった有害な有機塩素化合物は、多孔質導電体6b表面の還元反応によって塩素イオン等の塩化物と、エチレン、エタンなどの炭化水素に電気分解される。そして、これらの塩化物や炭化水素はいずれも無害物質であるため、結局、有害な有機塩素化合物が無害化されることとなる。
【0052】
一方、かかる通電により、多孔質導電体6bに吸着していた有機塩素化合物が分解除去されるため、多孔質導電体6bはリフレッシュされ、その吸着特性はすみやかに回復する。そのため、多孔質導電体6bを交換する必要がなくなる。
【0053】
このように、汚染水5は、上述した循環工程や通電工程を経て有機塩素化合物の濃度が低下した被処理水へと変化するが、該循環工程や通電工程においては、汚染水5内の有機塩素化合物の初期濃度や多孔質導電体6bの吸着特性あるいはそれに応じた通電率の低下の程度等を考慮しながら、循環回数、通電時間、電圧等を適宜設定する。
【0054】
なお、通電工程においては、通電量が増加すると、電気分解による有機塩素化合物の処理速度が速くなる反面、ジュール熱が発生してエネルギー効率が低下するとともに、発生熱による水温上昇によって有機塩素化合物が電気分解されずに気化し、気化ガスを処理するための設備が別途必要となる。
【0055】
そのため、上述した通電作業を行うにあたっては、有機塩素化合物の気化が抑制される範囲で電気分解による処理速度ができるだけ向上するよう、電圧や電流の大きさ、通電時間等を適宜調整するのが望ましい。
【0056】
多孔質導電体6bに吸着していた有機塩素化合物が分解除去されたならば、バルブ10を開き、貯留槽2内の被処理水を排水管8から排水する。
【0057】
以下、同様の処理をバッチ処理として繰り返す。
【0058】
以上説明したように、本実施形態に係る有機塩素化合物の処理方法及び処理装置1によれば、水中ポンプ11を駆動することによって汚染水5を循環させながら、該汚染水を透水性及び吸着性を有する多孔質導電体6bに繰り返し通水することで、汚染水5に含まれる有機塩素化合物を多孔質導電体6bに吸着させ、しかる後、一対の電極3a,3b間に直流電流を通電するようにしたので、汚染水5との接触箇所が三次元的に拡がっているという多孔質導電体6bの構造上、汚染水5に含まれる有機塩素化合物を多孔質導電体6bに効率よく吸着させるとともに、かかる状態で通電を開始することにより、多孔質導電体6bに吸着していたトリクロロエチレン、テトラクロロエチレンといった有害な有機塩素化合物を塩素イオン等の塩化物と、エチレン、エタンなどの炭化水素に電気分解して無害化することが可能となる。なお、塩化物や炭化水素といった反応生成物は、いずれも無害であるので、特に回収する必要はないが、必要であれば、貯留槽2に蓋をした上、該貯留槽内のガスを吸引回収するようにしてもよい。
【0059】
一方、かかる通電により、多孔質導電体6bに吸着していた有機塩素化合物が分解除去されるため、多孔質導電体6bはリフレッシュされ、その吸着特性はすみやかに回復する。
【0060】
そのため、多孔質導電体6bを交換する必要がなくなり、ランニングコストを抑えた装置構成が可能となる。
【0061】
本実施形態では、多孔質導電体3bを陰極3bだけに隣接配置したが、場合によっては陽極3aにも、多孔質導電体3bと同様に多孔質導電体を隣接配置してかまわない。かかる場合には、陽極3aに隣接配置した多孔質導電体にも有機塩素化合物を吸着させることができるとともに、該多孔質導電体に吸着した有機塩素化合物を酸化反応によって分解除去することが可能となる。
【0062】
また、本実施形態では、水中ポンプ11を最下流側の空間9cに配置したが、汚染水循環の目的は、多孔質導電体6bへの繰り返し通水にあるため、該水中ポンプを中央の空間9bに配置してもかまわない。
【0063】
また、本実施形態では、陽極3aを下流側に陰極3bを上流側に配置したが、逆の配置となってもよいことは言うまでもない。
【0064】
また、本実施形態では、陰極3bに多孔質導電体6bを隣接配置するように構成したが、これに代えて陰極3bを省略し、電源4と多孔質導電体6bを直接接続するようにしてもよい。かかる構成においては、多孔質導電体6b自体が陰極となる。
【0065】
(第2実施形態)
【0066】
次に、第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0067】
図2は、第2実施形態に係る有機塩素化合物の処理システムを示した全体図である。同図に示すように、本実施形態に係る有機塩素化合物の処理システム31は、有機塩素化合物を含む汚染土壌34内に埋設された集水手段としての掘削溝33と、該掘削溝に集水された汚染水5を揚水する揚水ポンプ32と、揚水された汚染水5が貯留される貯留槽2と、該貯留槽内に対向配置された一対の電極としての陽極3a及び陰極3bと、これらの陽極3a及び陰極3bに電気接続された電源4とから概ね構成してあるが、第1実施形態と同様、陽極3aに対向する陰極3bの側には、透水性及び吸着性を有する多孔質導電体6bを該陰極3bに隣接配置してある。
【0068】
ここで、陽極3a、陰極3bについても例えば導電体に多数の透水孔を穿孔したり導電体を網目状に形成することで透水性を有するように構成してある。
【0069】
陰極3b及びそれに隣接配置された多孔質導電体6bと陽極3aは、貯留槽2内が3つの空間9a,9b,9cに仕切られるように配置してあり、最下流側の空間9cには水中ポンプ11を設置するとともに該水中ポンプの吐出側に循環用配管12を接続し、該循環用配管の先端を最上流側の空間9aの上方あるいは該空間内に位置決めしてある。
【0070】
かかる水中ポンプ11及び循環用配管12は、水中ポンプ11への吸引力と循環用配管12の先端からの吐出力とによって、第1実施形態と同様の汚染水5の循環経路が形成されることとなり、貯留槽2内の汚染水を多孔質導電体6bに繰り返し通水させるための汚染水循環手段を構成する。
【0071】
したがって、多孔質導電体6bは、該循環経路に沿って配置すればよい。
【0072】
一方、貯留槽2には、揚水ポンプ32に接続された供給管7を最上流側の空間9aに連通するように接続してあり、該供給管を介して汚染水5を貯留槽2に流入させることができるとともに、最下流側の空間9bに連通するように排水管8aを接続してあり、該排水管を介して被処理水を排水することができるようになっている。
【0073】
ここで、排水管8aにはバルブ10を介在させてあり、該バルブを閉じることによって貯留槽2内の汚染水5を上述した汚染水循環手段によって循環させることができるようになっている。
【0074】
陽極3a、陰極3b及び多孔質導電体6bについては、第1実施形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0075】
本実施形態に係る有機塩素化合物の処理システム31を用いて本実施形態に係る有機塩素化合物の処理方法を実施するには、まず、汚染土壌34内の地下水を掘削溝33内に集水し、しかる後、揚水ポンプ32を駆動することで掘削溝33内に集水された汚染水5を供給管7を介して貯留槽2内の空間9aに流入させる。このとき、バルブ10は閉じておく。
【0076】
揚水ポンプ32は、掘削溝33内への集水がスムーズに行われるよう、地下水位を考慮しながらその揚水速度を適宜調整する。なお、地下水位が低い場合には、必要に応じて地表から適宜散水すればよい。
【0077】
次に、水中ポンプ11を駆動することによって汚染水5を循環させながら、該汚染水を透水性及び吸着性を有する多孔質導電体6bに繰り返し通水する。
【0078】
このようにすると、汚染水5との接触箇所が三次元的に拡がっているという多孔質導電体6bの構造上、汚染水5に含まれる有機塩素化合物は、多孔質導電体6bに効率よく吸着される。
【0079】
このような多孔質導電体6bへの汚染水5の通水は、汚染水循環手段である水中ポンプ11及び循環用配管12を用いて必要な回数だけ繰り返し行う。
【0080】
多孔質導電体6bに有機塩素化合物を所望の程度まで吸着させたならば、次に、一対の電極3a,3b間に例えば10〜30ボルト程度の直流電圧を印加して直流電流を通電する。
【0081】
このようにすると、多孔質導電体6bが陰極3bに隣接配置され電気的に一体となっているため、多孔質導電体6bに吸着していたトリクロロエチレン、テトラクロロエチレンといった有害な有機塩素化合物は、多孔質導電体6b表面の還元反応によって塩素イオン等の塩化物と、エチレン、エタンなどの炭化水素に電気分解される。そして、これらの塩化物や炭化水素はいずれも無害物質であるため、結局、有害な有機塩素化合物が無害化されることとなる。
【0082】
一方、かかる通電により、多孔質導電体6bに吸着していた有機塩素化合物が分解除去されるため、多孔質導電体6bはリフレッシュされ、その吸着特性はすみやかに回復する。そのため、多孔質導電体6bを交換する必要がなくなる。
【0083】
このように、汚染水5は、上述した循環工程や通電工程を経て有機塩素化合物の濃度が低下した被処理水へと変化するが、該循環工程や通電工程においては、汚染水5内の有機塩素化合物の初期濃度や多孔質導電体6bの吸着特性あるいはそれに応じた通電率の低下の程度等を考慮しながら、循環回数、通電時間、電圧等を適宜設定する。
【0084】
なお、通電工程においては、通電量が増加すると、電気分解による有機塩素化合物の処理速度が速くなる反面、ジュール熱が発生してエネルギー効率が低下するとともに、発生熱による水温上昇によって有機塩素化合物が電気分解されずに気化し、気化ガスを処理するための設備が別途必要となるが、本実施形態では、汚染水5が汚染土壌34から揚水された地下水であるため、電気伝導度は0.1〜0.3mS/cm程度であって電流値は小さく、したがって消費電力もわずかである。
【0085】
多孔質導電体6bに吸着していた有機塩素化合物が分解除去されたならば、バルブ10を開き、貯留槽2内の被処理水を排水管8から排水する。
【0086】
以下、同様の処理をバッチ処理として繰り返す。
【0087】
以上説明したように、本実施形態に係る有機塩素化合物の処理方法及び処理システム31によれば、第1実施形態と同様、水中ポンプ11を駆動することによって汚染水5を循環させながら、該汚染水を透水性及び吸着性を有する多孔質導電体6bに繰り返し通水することで、汚染水5に含まれる有機塩素化合物を多孔質導電体6bに吸着させ、しかる後、一対の電極3a,3b間に直流電流を通電するようにしたので、汚染水5との接触箇所が三次元的に拡がっているという多孔質導電体6bの構造上、汚染水5に含まれる有機塩素化合物を多孔質導電体6bに効率よく吸着させるとともに、かかる状態で通電を開始することにより、多孔質導電体6bに吸着していたトリクロロエチレン、テトラクロロエチレンといった有害な有機塩素化合物を塩素イオン等の塩化物と、エチレン、エタンなどの炭化水素に電気分解して無害化することが可能となる。なお、塩化物や炭化水素といった反応生成物は、いずれも無害であるので、特に回収する必要はないが、必要であれば、貯留槽2に蓋をした上、該貯留槽内のガスを吸引回収するようにしてもよい。
【0088】
一方、かかる通電により、多孔質導電体6bに吸着していた有機塩素化合物が分解除去されるため、多孔質導電体6bはリフレッシュされ、その吸着特性はすみやかに回復する。
【0089】
そのため、多孔質導電体6bを交換する必要がなくなり、ランニングコストを抑えた装置構成が可能となる。
【0090】
本実施形態では、多孔質導電体3bを陰極3bだけに隣接配置したが、場合によっては陽極3aにも、多孔質導電体3bと同様に多孔質導電体を隣接配置してかまわない。かかる場合には、陽極3aに隣接配置した多孔質導電体にも有機塩素化合物を吸着させることができるとともに、該多孔質導電体に吸着した有機塩素化合物を酸化反応によって分解除去することが可能となる。
【0091】
また、本実施形態では、水中ポンプ11を最下流側の空間9cに配置したが、汚染水循環の目的は、多孔質導電体6bへの繰り返し通水にあるため、該水中ポンプを中央の空間9bに配置してもかまわない。
【0092】
また、本実施形態では、陽極3aを下流側に陰極3bを上流側に配置したが、逆の配置となってもよいことは言うまでもない。
【0093】
また、本実施形態では、陰極3bに多孔質導電体6bを隣接配置するように構成したが、これに代えて陰極3bを省略し、電源4と多孔質導電体6bを直接接続するようにしてもよい。かかる構成においては、多孔質導電体6b自体が陰極となる。
【0094】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明に係る有機塩素化合物の処理方法及び装置並びにシステムによれば、汚染水循環手段によって汚染水を循環させながら、該汚染水を透水性及び吸着性を有する多孔質導電体に繰り返し通水することで、汚染水に含まれる有機塩素化合物を多孔質導電体に吸着させ、しかる後、一対の電極間に直流電流を通電するようにしたので、汚染水との接触箇所が三次元的に拡がっているという多孔質導電体の構造上、汚染水に含まれる有機塩素化合物を多孔質導電体6効率よく吸着させるとともに、かかる状態で通電を開始することにより、多孔質導電体に吸着していた有機塩素化合物を電気分解して無害化することが可能となる。
【0095】
一方、かかる通電により、多孔質導電体に吸着していた有機塩素化合物が分解除去されるため、多孔質導電体はリフレッシュされ、その吸着特性はすみやかに回復する。そのため、多孔質導電体を交換する必要がなくなり、ランニングコストを抑えた装置構成が可能となる。
【0096】
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に係る有機塩素化合物の処理装置を示した全体図。
【図2】第2実施形態に係る有機塩素化合物の処理システムを示した全体図。
【符号の説明】
1 有機塩素化合物の処理装置
2 貯留槽
3a,3b 電極
4 電源
5 汚染水
6b 多孔質導電体
31 有機塩素化合物の処理システム
32 揚水ポンプ
33 掘削溝(集水手段)
【発明の属する技術分野】
本発明は、トリクロロエチレンなどの有機塩素化合物を無害化するための処理方法及び装置並びにシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
工場跡地内の土壌には、発ガン性物質であるトリクロロエチレン、テトラクロロエチレンなどの有機塩素化合物が含まれていることがあり、このような土壌をそのまま放置すると地下水等を介して有機塩素化合物が環境に拡散するおそれがある。そのため、このような汚染土壌に対しては所定の浄化処理を行なねばならない。
【0003】
一方、最近では、微生物の活性を利用して環境中の汚染物質を分解無害化する技術、すなわちバイオレメディエーションの研究が進んできており、上述したような汚染土壌への適用も研究されるようになってきた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような微生物を利用した汚染物質の処理方法は、少なくとも実験室レベルでは十分な成果が確認されており、現実的な対応についても今後大いに期待されるところである。
【0005】
しかしながら、土質状況によっては、分解菌の活性を十分上げることができず、該汚染土内の汚染物質を分解するのに長時間を要したり、場合によっては微生物分解自体が実質的に不可能になるという問題が懸念される。
【0006】
また、汚染土に生石灰を混合することで、汚染土内に含まれている水分と生石灰との化学反応に伴う水和熱を発生させ、かかる水和熱を利用して汚染物質である有機塩素化合物を気化処理する方法も検討開発されている(特開平7−275837号公報参照)が、かかる方法では、汚染土が生石灰により強アルカリ性となり、埋め戻した後でアルカリ成分が地下水等に拡散したり生態系に悪影響を及ぼすといった事態が懸念される。
【0007】
さらには、汚染土壌から土壌内空気を吸引したり土壌内地下水を揚水する方法、汚染土壌を高温に加熱する方法、鉄粉の還元作用を利用した方法などがあるが、空気吸引若しくは地下水揚水は、長時間を要するとともにその間に設備の維持にコストがかかる、高温加熱方法は土壌の生態系に悪影響を残す、鉄粉による還元方法は適用できる状況に制約が大きいなどの問題をそれぞれ生じていた。
【0008】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、処理済みの土壌に悪影響を残すことなく確実かつ短期間に有機塩素化合物を除去処理可能な有機塩素化合物の処理方法及び装置並びにシステムを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に係る有機塩素化合物の処理方法は請求項1に記載したように、有機塩素化合物を含む汚染水に一対の電極を対向配置し、該電極間に通電することによって前記有機塩素化合物を電気分解する有機塩素化合物の処理方法において、前記一対の電極のうち、少なくとも一方の電極に透水性及び吸着性を有する多孔質導電体を隣接配置し、該多孔質導電体に前記汚染水を繰り返し通水して前記有機塩素化合物を吸着させた後、前記電極間に通電を行うものである。
【0010】
また、本発明に係る有機塩素化合物の処理方法は請求項2に記載したように、有機塩素化合物を含む汚染水に一対の電極を対向配置し、該電極間に通電することによって前記有機塩素化合物を電気分解する有機塩素化合物の処理方法において、前記一対の電極のうち、少なくとも一方の電極を透水性及び吸着性を有する多孔質導電体で構成し、該多孔質導電体に前記汚染水を繰り返し通水して前記有機塩素化合物を吸着させた後、前記電極間に通電を行うものである。
【0011】
また、本発明に係る有機塩素化合物の処理方法は、前記多孔質導電体を所定の収容体に導電性粒子を充填して構成したものである。
【0012】
また、本発明に係る有機塩素化合物の処理装置は請求項4に記載したように、有機塩素化合物を含む汚染水が貯留される貯留槽と、該貯留槽内に対向配置された一対の電極と、該電極に電気接続された電源とからなる有機塩素化合物の処理装置において、前記一対の電極のうち、少なくとも一方の電極に透水性及び吸着性を有する多孔質導電体を隣接配置し、前記汚染水を前記多孔質導電体に繰り返し通水させる汚染水循環手段を備えたものである。
【0013】
また、本発明に係る有機塩素化合物の処理装置は請求項5に記載したように、有機塩素化合物を含む汚染水が貯留される貯留槽と、該貯留槽内に対向配置された一対の電極と、該電極に電気接続された電源とからなる有機塩素化合物の処理装置において、前記一対の電極のうち、少なくとも一方の電極を透水性及び吸着性を有する多孔質導電体で構成し、前記汚染水を前記多孔質導電体に繰り返し通水させる汚染水循環手段を備えたものである。
【0014】
また、本発明に係る有機塩素化合物の処理装置は、前記多孔質導電体を所定の収容体に導電性粒子を充填して構成したものである。
【0015】
また、本発明に係る有機塩素化合物の処理システムは請求項7に記載したように、有機塩素化合物を含む汚染土壌内に埋設された集水手段と、該集水手段に集水された汚染水を揚水する揚水ポンプと、揚水された汚染水が貯留される貯留槽と、該貯留槽内に対向配置された一対の電極と、該電極に電気接続された電源とからなる有機塩素化合物の処理システムにおいて、前記一対の電極のうち、少なくとも一方の電極に透水性及び吸着性を有する多孔質導電体を隣接配置し、前記汚染水を前記多孔質導電体に繰り返し通水させる汚染水循環手段を備えたものである。
【0016】
また、本発明に係る有機塩素化合物の処理システムは請求項8に記載したように、有機塩素化合物を含む汚染土壌内に埋設された集水手段と、該集水手段に集水された汚染水を揚水する揚水ポンプと、揚水された汚染水が貯留される貯留槽と、該貯留槽内に対向配置された一対の電極と、該電極に電気接続された電源とからなる有機塩素化合物の処理システムにおいて、前記一対の電極のうち、少なくとも一方の電極を透水性及び吸着性を有する多孔質導電体で構成し、前記汚染水を前記多孔質導電体に繰り返し通水させる汚染水循環手段を備えたものである。
【0017】
また、本発明に係る有機塩素化合物の処理システムは、前記多孔質導電体を所定の収容体に導電性粒子を充填して構成したものである。
【0018】
本発明に係る有機塩素化合物の処理方法及び処理装置並びに処理システムにおいては、まず、透水性及び吸着性を有する多孔質導電体に汚染水を繰り返し通水する。
【0019】
このようにすると、汚染水との接触箇所が三次元的に拡がっているという多孔質導電体の構造上、汚染水に含まれる有機塩素化合物は、多孔質導電体に効率よく吸着される。
【0020】
このような多孔質導電体への汚染水の通水は、汚染水循環手段を用いて必要な回数だけ繰り返し行う。
【0021】
なお、多孔質導電体は、電極に隣接配置され又はそれ自体が電極として構成してあるが、前者の場合、電極が透水性を有する必要はない。通水方向を適宜選択すれば、電極に通水阻害されないよう、多孔質導電体に汚染水を通水させることは可能だからである。
【0022】
多孔質導電体に有機塩素化合物を所望の程度まで吸着させたならば、次に、一対の電極間に通電する。
【0023】
このようにすると、多孔質導電体が電極に隣接配置され又は電極として構成してあるため、多孔質導電体に吸着していたトリクロロエチレン、テトラクロロエチレンといった有害な有機塩素化合物は、酸化還元反応によって無害物質に分解される。例えば、陰極側での還元反応であれば、塩素イオン等の塩化物と、エチレン、エタンなどの炭化水素に電気分解される。そして、これらの塩化物や炭化水素はいずれも無害物質であるため、結局、有害な有機塩素化合物が無害化されることとなる。
【0024】
一方、かかる通電により、多孔質導電体に吸着していた有機塩素化合物が分解除去されるため、多孔質導電体はリフレッシュされ、その吸着特性はすみやかに回復する。そのため、多孔質導電体を交換する必要がなくなる。
【0025】
多孔質導電体を電極に隣接するにあたっては、一対の電極のうち、少なくとも一方の電極に隣接配置すればよく、陰極及び陽極の両方に隣接配置してもよいし、いずれか一方でもよい。また、配置形態は任意であり、電極を取り囲むように配置してもよいし、他方の電極に対向する側だけに配置するようにしてもよい。なお、ここでいう隣接配置とは、通電可能なように相互に接触させて配置するという意味であることは言うまでもない。
【0026】
多孔質導電体で電極を構成するにあたっても、一対の電極のうち、少なくとも一方の電極を多孔質導電体で構成すればよく、陰極及び陽極の両方を多孔質導電体で構成してもよいし、いずれか一方だけを多孔質導電体で構成してもよい。
【0027】
多孔質導電体は、透水性と吸着性を有する限り、どのように構成するかは任意であり、多孔質構造をどのように構成するか、多孔質材料として何を選択するか、あるいは全体の透水係数や厚みをどの程度に設定するかは、対象となる有機塩素化合物の濃度や汚染水の通水速度等を考慮して適宜定めればよい。
【0028】
かかる多孔質導電体は、例えば紛状、粒状、フレーク状、破砕状といったさまざまな形状の導電体を集合させて構成することが可能であり、特に、所定の収容体に導電性粒子を充填して構成すれば、電極面で発生したガスをスムーズに遊離排出することができる。
【0029】
この場合、構成単位である導電性粒子の粒径やそれらの間隙をどのようにするかは、やはり上述したと同様の観点で適宜定めればよい。
【0030】
多孔質材料としては、吸着性の観点で活性炭を採用するのが望ましい。
【0031】
本発明に係る処理装置及び処理システムにおける汚染水循環手段は、貯留槽内に設置された水中ポンプと該水中ポンプの吐出側に接続された循環用配管とで構成することができる。この場合、水中ポンプへの吸引力と循環用配管の先端からの吐出力とによって、汚染水の循環経路が形成されるので、該循環経路に沿って上述した多孔質導電体を配置すればよい。
【0032】
また、本発明に係る処理システムの集水手段としては、例えば、トレンチ状の掘削溝や、円筒状の有底多孔管を採用することが考えられる。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る有機塩素化合物の処理方法及び装置並びにシステムの実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、従来技術と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0034】
(第1実施形態)
【0035】
図1は、本実施形態に係る有機塩素化合物の処理装置を示した概念図である。同図でわかるように、本実施形態に係る有機塩素化合物の処理装置1は、有機塩素化合物を含む汚染水5が貯留される貯留槽2と、該貯留槽内に対向配置された一対の電極としての陽極3a及び陰極3bと、これらの陽極3a及び陰極3bに電気接続された電源4とから概ね構成してあるが、陽極3aに対向する陰極3bの側には、透水性及び吸着性を有する多孔質導電体6bを該陰極3bに隣接配置してある。
【0036】
ここで、陽極3a、陰極3bについても例えば導電体に多数の透水孔を穿孔したり導電体を網目状に形成することで透水性を有するように構成してある。
【0037】
陰極3b及びそれに隣接配置された多孔質導電体6bと陽極3aは、貯留槽2内が3つの空間9a,9b,9cに仕切られるように配置してあり、最下流側の空間9cには水中ポンプ11を設置するとともに該水中ポンプの吐出側に循環用配管12を接続し、該循環用配管の先端を最上流側の空間9aの上方あるいは該空間内に位置決めしてある。
【0038】
かかる水中ポンプ11及び循環用配管12は、水中ポンプ11への吸引力と循環用配管12の先端からの吐出力とによって、汚染水5の循環経路(同図破線と実線で示した矢印)が形成されることとなり、貯留槽2内の汚染水を多孔質導電体6bに繰り返し通水させるための汚染水循環手段を構成する。
【0039】
したがって、多孔質導電体6bは、該循環経路に沿って配置すればよい。
【0040】
一方、貯留槽2には最上流側の空間9aに連通するように供給管7を接続してあり、該供給管を介して汚染水を貯留槽2に流入させることができるとともに、最下流側の空間9bに連通するように排水管8を接続してあり、該排水管を介して被処理水を排水することができるようになっている。
【0041】
ここで、排水管8にはバルブ10を介在させてあり、該バルブを閉じることによって貯留槽2内の汚染水5を上述した汚染水循環手段によって循環させることができるようになっている。
【0042】
陽極3a及び陰極3bは、陽極3aと多孔質導電体6bとが例えば数cm〜数十cm離間するように配置し、電源4は、例えば10〜30ボルト程度の直流電圧を印加できるように構成しておくのがよい。
【0043】
多孔質導電体6bは、透水性を有する収容体内に導電性粒子である活性炭を充填するとともに該活性炭が陰極3bに接触するように該電極に隣接配置してなり、かかる多孔質導電体6bは、陰極3bとの接触及び活性炭相互の相互接触により、全体が陰極3bと同様の電解機能を有するとともに、活性炭が粒子状であるため、該活性炭同士の間隙を介して水が通過できるようになっている。
【0044】
活性炭は、例えば直径が5〜10mm程度のものを用いることができる。
【0045】
収容体は、例えば、活性炭の粒径よりも小さな大きさをメッシュサイズとする網目状プラスチック収容体で構成することができる。
【0046】
本実施形態に係る有機塩素化合物の処理装置1を用いて本実施形態に係る有機塩素化合物の処理方法を実施するには、まず、バルブ10を閉じた状態にて有機塩素化合物が含まれた汚染水5を供給管7を介して貯留槽2内に流入させる。汚染水5は、例えば汚染土壌から揚水されたものや、工場内の洗浄に使った後の洗浄水などが対象となる。
【0047】
次に、水中ポンプ11を駆動することによって汚染水5を循環させながら、該汚染水を透水性及び吸着性を有する多孔質導電体6bに繰り返し通水する。
【0048】
このようにすると、汚染水5との接触箇所が三次元的に拡がっているという多孔質導電体6bの構造上、汚染水5に含まれる有機塩素化合物は、多孔質導電体6bに効率よく吸着される。
【0049】
このような多孔質導電体6bへの汚染水5の通水は、汚染水循環手段である水中ポンプ11及び循環用配管12を用いて必要な回数だけ繰り返し行う。
【0050】
多孔質導電体6bに有機塩素化合物を所望の程度まで吸着させたならば、次に、一対の電極3a,3b間に例えば10〜30ボルト程度の直流電圧を印加して直流電流を通電する。
【0051】
このようにすると、多孔質導電体6bが陰極3bに隣接配置され電気的に一体となっているため、多孔質導電体6bに吸着していたトリクロロエチレン、テトラクロロエチレンといった有害な有機塩素化合物は、多孔質導電体6b表面の還元反応によって塩素イオン等の塩化物と、エチレン、エタンなどの炭化水素に電気分解される。そして、これらの塩化物や炭化水素はいずれも無害物質であるため、結局、有害な有機塩素化合物が無害化されることとなる。
【0052】
一方、かかる通電により、多孔質導電体6bに吸着していた有機塩素化合物が分解除去されるため、多孔質導電体6bはリフレッシュされ、その吸着特性はすみやかに回復する。そのため、多孔質導電体6bを交換する必要がなくなる。
【0053】
このように、汚染水5は、上述した循環工程や通電工程を経て有機塩素化合物の濃度が低下した被処理水へと変化するが、該循環工程や通電工程においては、汚染水5内の有機塩素化合物の初期濃度や多孔質導電体6bの吸着特性あるいはそれに応じた通電率の低下の程度等を考慮しながら、循環回数、通電時間、電圧等を適宜設定する。
【0054】
なお、通電工程においては、通電量が増加すると、電気分解による有機塩素化合物の処理速度が速くなる反面、ジュール熱が発生してエネルギー効率が低下するとともに、発生熱による水温上昇によって有機塩素化合物が電気分解されずに気化し、気化ガスを処理するための設備が別途必要となる。
【0055】
そのため、上述した通電作業を行うにあたっては、有機塩素化合物の気化が抑制される範囲で電気分解による処理速度ができるだけ向上するよう、電圧や電流の大きさ、通電時間等を適宜調整するのが望ましい。
【0056】
多孔質導電体6bに吸着していた有機塩素化合物が分解除去されたならば、バルブ10を開き、貯留槽2内の被処理水を排水管8から排水する。
【0057】
以下、同様の処理をバッチ処理として繰り返す。
【0058】
以上説明したように、本実施形態に係る有機塩素化合物の処理方法及び処理装置1によれば、水中ポンプ11を駆動することによって汚染水5を循環させながら、該汚染水を透水性及び吸着性を有する多孔質導電体6bに繰り返し通水することで、汚染水5に含まれる有機塩素化合物を多孔質導電体6bに吸着させ、しかる後、一対の電極3a,3b間に直流電流を通電するようにしたので、汚染水5との接触箇所が三次元的に拡がっているという多孔質導電体6bの構造上、汚染水5に含まれる有機塩素化合物を多孔質導電体6bに効率よく吸着させるとともに、かかる状態で通電を開始することにより、多孔質導電体6bに吸着していたトリクロロエチレン、テトラクロロエチレンといった有害な有機塩素化合物を塩素イオン等の塩化物と、エチレン、エタンなどの炭化水素に電気分解して無害化することが可能となる。なお、塩化物や炭化水素といった反応生成物は、いずれも無害であるので、特に回収する必要はないが、必要であれば、貯留槽2に蓋をした上、該貯留槽内のガスを吸引回収するようにしてもよい。
【0059】
一方、かかる通電により、多孔質導電体6bに吸着していた有機塩素化合物が分解除去されるため、多孔質導電体6bはリフレッシュされ、その吸着特性はすみやかに回復する。
【0060】
そのため、多孔質導電体6bを交換する必要がなくなり、ランニングコストを抑えた装置構成が可能となる。
【0061】
本実施形態では、多孔質導電体3bを陰極3bだけに隣接配置したが、場合によっては陽極3aにも、多孔質導電体3bと同様に多孔質導電体を隣接配置してかまわない。かかる場合には、陽極3aに隣接配置した多孔質導電体にも有機塩素化合物を吸着させることができるとともに、該多孔質導電体に吸着した有機塩素化合物を酸化反応によって分解除去することが可能となる。
【0062】
また、本実施形態では、水中ポンプ11を最下流側の空間9cに配置したが、汚染水循環の目的は、多孔質導電体6bへの繰り返し通水にあるため、該水中ポンプを中央の空間9bに配置してもかまわない。
【0063】
また、本実施形態では、陽極3aを下流側に陰極3bを上流側に配置したが、逆の配置となってもよいことは言うまでもない。
【0064】
また、本実施形態では、陰極3bに多孔質導電体6bを隣接配置するように構成したが、これに代えて陰極3bを省略し、電源4と多孔質導電体6bを直接接続するようにしてもよい。かかる構成においては、多孔質導電体6b自体が陰極となる。
【0065】
(第2実施形態)
【0066】
次に、第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0067】
図2は、第2実施形態に係る有機塩素化合物の処理システムを示した全体図である。同図に示すように、本実施形態に係る有機塩素化合物の処理システム31は、有機塩素化合物を含む汚染土壌34内に埋設された集水手段としての掘削溝33と、該掘削溝に集水された汚染水5を揚水する揚水ポンプ32と、揚水された汚染水5が貯留される貯留槽2と、該貯留槽内に対向配置された一対の電極としての陽極3a及び陰極3bと、これらの陽極3a及び陰極3bに電気接続された電源4とから概ね構成してあるが、第1実施形態と同様、陽極3aに対向する陰極3bの側には、透水性及び吸着性を有する多孔質導電体6bを該陰極3bに隣接配置してある。
【0068】
ここで、陽極3a、陰極3bについても例えば導電体に多数の透水孔を穿孔したり導電体を網目状に形成することで透水性を有するように構成してある。
【0069】
陰極3b及びそれに隣接配置された多孔質導電体6bと陽極3aは、貯留槽2内が3つの空間9a,9b,9cに仕切られるように配置してあり、最下流側の空間9cには水中ポンプ11を設置するとともに該水中ポンプの吐出側に循環用配管12を接続し、該循環用配管の先端を最上流側の空間9aの上方あるいは該空間内に位置決めしてある。
【0070】
かかる水中ポンプ11及び循環用配管12は、水中ポンプ11への吸引力と循環用配管12の先端からの吐出力とによって、第1実施形態と同様の汚染水5の循環経路が形成されることとなり、貯留槽2内の汚染水を多孔質導電体6bに繰り返し通水させるための汚染水循環手段を構成する。
【0071】
したがって、多孔質導電体6bは、該循環経路に沿って配置すればよい。
【0072】
一方、貯留槽2には、揚水ポンプ32に接続された供給管7を最上流側の空間9aに連通するように接続してあり、該供給管を介して汚染水5を貯留槽2に流入させることができるとともに、最下流側の空間9bに連通するように排水管8aを接続してあり、該排水管を介して被処理水を排水することができるようになっている。
【0073】
ここで、排水管8aにはバルブ10を介在させてあり、該バルブを閉じることによって貯留槽2内の汚染水5を上述した汚染水循環手段によって循環させることができるようになっている。
【0074】
陽極3a、陰極3b及び多孔質導電体6bについては、第1実施形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0075】
本実施形態に係る有機塩素化合物の処理システム31を用いて本実施形態に係る有機塩素化合物の処理方法を実施するには、まず、汚染土壌34内の地下水を掘削溝33内に集水し、しかる後、揚水ポンプ32を駆動することで掘削溝33内に集水された汚染水5を供給管7を介して貯留槽2内の空間9aに流入させる。このとき、バルブ10は閉じておく。
【0076】
揚水ポンプ32は、掘削溝33内への集水がスムーズに行われるよう、地下水位を考慮しながらその揚水速度を適宜調整する。なお、地下水位が低い場合には、必要に応じて地表から適宜散水すればよい。
【0077】
次に、水中ポンプ11を駆動することによって汚染水5を循環させながら、該汚染水を透水性及び吸着性を有する多孔質導電体6bに繰り返し通水する。
【0078】
このようにすると、汚染水5との接触箇所が三次元的に拡がっているという多孔質導電体6bの構造上、汚染水5に含まれる有機塩素化合物は、多孔質導電体6bに効率よく吸着される。
【0079】
このような多孔質導電体6bへの汚染水5の通水は、汚染水循環手段である水中ポンプ11及び循環用配管12を用いて必要な回数だけ繰り返し行う。
【0080】
多孔質導電体6bに有機塩素化合物を所望の程度まで吸着させたならば、次に、一対の電極3a,3b間に例えば10〜30ボルト程度の直流電圧を印加して直流電流を通電する。
【0081】
このようにすると、多孔質導電体6bが陰極3bに隣接配置され電気的に一体となっているため、多孔質導電体6bに吸着していたトリクロロエチレン、テトラクロロエチレンといった有害な有機塩素化合物は、多孔質導電体6b表面の還元反応によって塩素イオン等の塩化物と、エチレン、エタンなどの炭化水素に電気分解される。そして、これらの塩化物や炭化水素はいずれも無害物質であるため、結局、有害な有機塩素化合物が無害化されることとなる。
【0082】
一方、かかる通電により、多孔質導電体6bに吸着していた有機塩素化合物が分解除去されるため、多孔質導電体6bはリフレッシュされ、その吸着特性はすみやかに回復する。そのため、多孔質導電体6bを交換する必要がなくなる。
【0083】
このように、汚染水5は、上述した循環工程や通電工程を経て有機塩素化合物の濃度が低下した被処理水へと変化するが、該循環工程や通電工程においては、汚染水5内の有機塩素化合物の初期濃度や多孔質導電体6bの吸着特性あるいはそれに応じた通電率の低下の程度等を考慮しながら、循環回数、通電時間、電圧等を適宜設定する。
【0084】
なお、通電工程においては、通電量が増加すると、電気分解による有機塩素化合物の処理速度が速くなる反面、ジュール熱が発生してエネルギー効率が低下するとともに、発生熱による水温上昇によって有機塩素化合物が電気分解されずに気化し、気化ガスを処理するための設備が別途必要となるが、本実施形態では、汚染水5が汚染土壌34から揚水された地下水であるため、電気伝導度は0.1〜0.3mS/cm程度であって電流値は小さく、したがって消費電力もわずかである。
【0085】
多孔質導電体6bに吸着していた有機塩素化合物が分解除去されたならば、バルブ10を開き、貯留槽2内の被処理水を排水管8から排水する。
【0086】
以下、同様の処理をバッチ処理として繰り返す。
【0087】
以上説明したように、本実施形態に係る有機塩素化合物の処理方法及び処理システム31によれば、第1実施形態と同様、水中ポンプ11を駆動することによって汚染水5を循環させながら、該汚染水を透水性及び吸着性を有する多孔質導電体6bに繰り返し通水することで、汚染水5に含まれる有機塩素化合物を多孔質導電体6bに吸着させ、しかる後、一対の電極3a,3b間に直流電流を通電するようにしたので、汚染水5との接触箇所が三次元的に拡がっているという多孔質導電体6bの構造上、汚染水5に含まれる有機塩素化合物を多孔質導電体6bに効率よく吸着させるとともに、かかる状態で通電を開始することにより、多孔質導電体6bに吸着していたトリクロロエチレン、テトラクロロエチレンといった有害な有機塩素化合物を塩素イオン等の塩化物と、エチレン、エタンなどの炭化水素に電気分解して無害化することが可能となる。なお、塩化物や炭化水素といった反応生成物は、いずれも無害であるので、特に回収する必要はないが、必要であれば、貯留槽2に蓋をした上、該貯留槽内のガスを吸引回収するようにしてもよい。
【0088】
一方、かかる通電により、多孔質導電体6bに吸着していた有機塩素化合物が分解除去されるため、多孔質導電体6bはリフレッシュされ、その吸着特性はすみやかに回復する。
【0089】
そのため、多孔質導電体6bを交換する必要がなくなり、ランニングコストを抑えた装置構成が可能となる。
【0090】
本実施形態では、多孔質導電体3bを陰極3bだけに隣接配置したが、場合によっては陽極3aにも、多孔質導電体3bと同様に多孔質導電体を隣接配置してかまわない。かかる場合には、陽極3aに隣接配置した多孔質導電体にも有機塩素化合物を吸着させることができるとともに、該多孔質導電体に吸着した有機塩素化合物を酸化反応によって分解除去することが可能となる。
【0091】
また、本実施形態では、水中ポンプ11を最下流側の空間9cに配置したが、汚染水循環の目的は、多孔質導電体6bへの繰り返し通水にあるため、該水中ポンプを中央の空間9bに配置してもかまわない。
【0092】
また、本実施形態では、陽極3aを下流側に陰極3bを上流側に配置したが、逆の配置となってもよいことは言うまでもない。
【0093】
また、本実施形態では、陰極3bに多孔質導電体6bを隣接配置するように構成したが、これに代えて陰極3bを省略し、電源4と多孔質導電体6bを直接接続するようにしてもよい。かかる構成においては、多孔質導電体6b自体が陰極となる。
【0094】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明に係る有機塩素化合物の処理方法及び装置並びにシステムによれば、汚染水循環手段によって汚染水を循環させながら、該汚染水を透水性及び吸着性を有する多孔質導電体に繰り返し通水することで、汚染水に含まれる有機塩素化合物を多孔質導電体に吸着させ、しかる後、一対の電極間に直流電流を通電するようにしたので、汚染水との接触箇所が三次元的に拡がっているという多孔質導電体の構造上、汚染水に含まれる有機塩素化合物を多孔質導電体6効率よく吸着させるとともに、かかる状態で通電を開始することにより、多孔質導電体に吸着していた有機塩素化合物を電気分解して無害化することが可能となる。
【0095】
一方、かかる通電により、多孔質導電体に吸着していた有機塩素化合物が分解除去されるため、多孔質導電体はリフレッシュされ、その吸着特性はすみやかに回復する。そのため、多孔質導電体を交換する必要がなくなり、ランニングコストを抑えた装置構成が可能となる。
【0096】
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に係る有機塩素化合物の処理装置を示した全体図。
【図2】第2実施形態に係る有機塩素化合物の処理システムを示した全体図。
【符号の説明】
1 有機塩素化合物の処理装置
2 貯留槽
3a,3b 電極
4 電源
5 汚染水
6b 多孔質導電体
31 有機塩素化合物の処理システム
32 揚水ポンプ
33 掘削溝(集水手段)
Claims (9)
- 有機塩素化合物を含む汚染水に一対の電極を対向配置し、該電極間に通電することによって前記有機塩素化合物を電気分解する有機塩素化合物の処理方法において、
前記一対の電極のうち、少なくとも一方の電極に透水性及び吸着性を有する多孔質導電体を隣接配置し、該多孔質導電体に前記汚染水を繰り返し通水して前記有機塩素化合物を吸着させた後、前記電極間に通電を行うことを特徴とする有機塩素化合物の処理方法。 - 有機塩素化合物を含む汚染水に一対の電極を対向配置し、該電極間に通電することによって前記有機塩素化合物を電気分解する有機塩素化合物の処理方法において、
前記一対の電極のうち、少なくとも一方の電極を透水性及び吸着性を有する多孔質導電体で構成し、該多孔質導電体に前記汚染水を繰り返し通水して前記有機塩素化合物を吸着させた後、前記電極間に通電を行うことを特徴とする有機塩素化合物の処理方法。 - 前記多孔質導電体を所定の収容体に導電性粒子を充填して構成した請求項1又は請求項2記載の有機塩素化合物の処理方法。
- 有機塩素化合物を含む汚染水が貯留される貯留槽と、該貯留槽内に対向配置された一対の電極と、該電極に電気接続された電源とからなる有機塩素化合物の処理装置において、
前記一対の電極のうち、少なくとも一方の電極に透水性及び吸着性を有する多孔質導電体を隣接配置し、前記汚染水を前記多孔質導電体に繰り返し通水させる汚染水循環手段を備えたことを特徴とする有機塩素化合物の処理装置。 - 有機塩素化合物を含む汚染水が貯留される貯留槽と、該貯留槽内に対向配置された一対の電極と、該電極に電気接続された電源とからなる有機塩素化合物の処理装置において、
前記一対の電極のうち、少なくとも一方の電極を透水性及び吸着性を有する多孔質導電体で構成し、前記汚染水を前記多孔質導電体に繰り返し通水させる汚染水循環手段を備えたことを特徴とする有機塩素化合物の処理装置。 - 前記多孔質導電体を所定の収容体に導電性粒子を充填して構成した請求項4又は請求項5記載の有機塩素化合物の処理装置。
- 有機塩素化合物を含む汚染土壌内に埋設された集水手段と、該集水手段に集水された汚染水を揚水する揚水ポンプと、揚水された汚染水が貯留される貯留槽と、該貯留槽内に対向配置された一対の電極と、該電極に電気接続された電源とからなる有機塩素化合物の処理システムにおいて、
前記一対の電極のうち、少なくとも一方の電極に透水性及び吸着性を有する多孔質導電体を隣接配置し、前記汚染水を前記多孔質導電体に繰り返し通水させる汚染水循環手段を備えたことを特徴とする有機塩素化合物の処理システム。 - 有機塩素化合物を含む汚染土壌内に埋設された集水手段と、該集水手段に集水された汚染水を揚水する揚水ポンプと、揚水された汚染水が貯留される貯留槽と、該貯留槽内に対向配置された一対の電極と、該電極に電気接続された電源とからなる有機塩素化合物の処理システムにおいて、
前記一対の電極のうち、少なくとも一方の電極を透水性及び吸着性を有する多孔質導電体で構成し、前記汚染水を前記多孔質導電体に繰り返し通水させる汚染水循環手段を備えたことを特徴とする有機塩素化合物の処理システム。 - 前記多孔質導電体を所定の収容体に導電性粒子を充填して構成した請求項7又は請求項8記載の有機塩素化合物の処理システム。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002174879A JP2004016914A (ja) | 2002-06-14 | 2002-06-14 | 有機塩素化合物の処理方法及び装置並びにシステム |
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JP2002174879A JP2004016914A (ja) | 2002-06-14 | 2002-06-14 | 有機塩素化合物の処理方法及び装置並びにシステム |
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JP2002174879A Withdrawn JP2004016914A (ja) | 2002-06-14 | 2002-06-14 | 有機塩素化合物の処理方法及び装置並びにシステム |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008272594A (ja) * | 2007-03-09 | 2008-11-13 | Okayama Univ | 活性炭吸着有機ハロゲン化物の電解還元脱ハロゲン化法 |
-
2002
- 2002-06-14 JP JP2002174879A patent/JP2004016914A/ja not_active Withdrawn
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2008272594A (ja) * | 2007-03-09 | 2008-11-13 | Okayama Univ | 活性炭吸着有機ハロゲン化物の電解還元脱ハロゲン化法 |
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