JP2001140035A - 延性および伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

延性および伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板およびその製造方法

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JP2001140035A JP32703199A JP32703199A JP2001140035A JP 2001140035 A JP2001140035 A JP 2001140035A JP 32703199 A JP32703199 A JP 32703199A JP 32703199 A JP32703199 A JP 32703199A JP 2001140035 A JP2001140035 A JP 2001140035A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 自動車部品用素材として好適な、優れた延性
および伸びフランジ性を有する高強度冷延鋼板を提供す
る。 【解決手段】 質量百分率で、C:0.05〜0.2 %、Si:
0.5 〜3.0 %、Mn:0.6〜3.0 %、P:0.015 %未満、
S:0.005 %以下、Al:0.10%未満、N:0.005%以
下、Ti:Ti* で0.10%以下(ただし、Ti* =Total Ti−
[(48/32)S+(48/14) N] )を含み、かつCaおよび/ま
たはREM :0.0010〜0.0100%を含有し、残部はFeおよび
不可避的不純物の組成にすると共に、鋼組織を、体積率
で30%以上のフェライト、体積率で2%以上の残留オー
ステナイトおよび低温変態相からなる複合組織とし、さ
らに上記フェライトの平均結晶粒径を15μm 以下とし、
かつTias TiC/Ti* 比を0.05以上とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、主に自動車用鋼
板としての用途に供して好適な、延性および伸びフラン
ジ性に優れた高強度冷延鋼板およびその製造方法に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】近年、地球環境の保全という観点から、
自動車の燃費改善が求められている。また、衝突時にお
ける乗員の安全を確保するために、自動車車体の安全性
の向上も要求されている。このような事情により、自動
車車体の軽量化および自動車車体の強化が積極的に進め
られている。自動車車体の軽量化と強化を同時に達成す
るには、部品素材を高強度化することが有効であること
から、最近では、高強度鋼板が自動車部品に積極的に使
用されている。
【0003】ところで、鋼板を素材とする自動車部品
は、その多くがプレス加工によって成形されるため、自
動車部品用鋼板としては優れた成形性が要求される。こ
こに、優れた成形性を実現するには、第一義的には高い
延性を確保することが肝要である。また、自動車部品の
プレス成形においては、伸びフランジ変形も多用され
る。特に、自動車車体の強度を確保するための骨格部材
であるメンバーやリンフォース等を構成する部品では、
伸びフランジ変形を多用した部品成形が行われることが
多い。このため、自動車部品用鋼板に対しては、優れた
延性および伸びフランジ性を併せて有することが強く求
められている。
【0004】延性に優れる高強度鋼板としては、フェラ
イトとマルテンサイトの複合組織からなる二相組織鋼板
が代表的である。また、近年では、残留オーステナイト
に起因する変態誘起塑性(Transformation Induced Pla
sticity : TRIP)を利用した高延性鋼板も実用化の段階
に至っている。しかしながら、このような組織強化鋼板
は、硬質なマルテンサイトを主要強化因子としているこ
とから、局部伸びが低く、このため伸びフランジ性に劣
るという問題があった。
【0005】一方、延性および伸びフランジ性の双方に
優れる高強度鋼板の製造方法として、特許第2821481 号
公報に、残留オーステナイトを含む焼戻しマルテンサイ
トを主体とする高強度鋼板の製造方法が提案されてい
る。しかしながら、この方法によって得られる高強度鋼
板の延性も、未だ十分とはいい難く、自動車用鋼板とし
て広く使用される高強度鋼板として十分満足できるもの
ではなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、上記の現
状に鑑み開発されたもので、自動車部品用素材として好
適な、優れた延性および伸びフランジ性を有する高強度
冷延鋼板を、その有利な製造方法と共に提案することを
目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】さて、発明者らは、上記
の目的を達成すべく、鋼板の延性および伸びフランジ性
に及ぼす鋼板の組成およびミクロ組織の影響について、
鋭意研究を重ねた。その結果、焼鈍後に得られる高強度
冷延鋼板の組織を、フェライト、残留オーステナイトお
よび低温変態相からなる複合組織とし、かつ各相の体積
率を所定の比率に制御することにより、優れた延性を発
現させ得ることの知見を得た。また、上記複合組織の主
体となるフェライトの結晶粒径を微細化することによ
り、高延性に加えて優れた伸びフランジ性が併せて得ら
れることも見出した。この発明は、上記の知見に立脚す
るものである。
【0008】すなわち、この発明の要旨構成は次のとお
りである。1.質量百分率でC:0.05〜0.2 %、Si:0.
5 〜3.0 %、Mn:0.6 〜3.0 %、P:0.015 %未満、
S:0.005 %以下、Al:0.10%未満、N:0.005 %以
下、Ti:Ti* で0.10%以下ただし、Ti* =Total Ti−
[(48/32)S+(48/14) N]を含み、かつCaおよび/また
はREM :0.0010〜0.0100%を含有し、残部はFeおよび不
可避的不純物の組成になり、鋼組織が、フェライト、残
留オーステナイトおよび低温変態相からなる複合組織を
有し、かつ上記フェライトを体積率で30%以上、上記残
留オーステナイトを体積率で2%以上含み、さらに上記
フェライトの平均結晶粒径が15μm 以下、Ti as TiC/
Ti* 比が0.05以上であることを特徴とする、延性および
伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板。
【0009】2.上記1において、鋼素材がさらに、質
量百分率でNbおよび/またはV:0.001 〜0.10%を含有
する組成になることを特徴とする、延性および伸びフラ
ンジ性に優れた高強度冷延鋼板。
【0010】3.上記1または2において、鋼素材がさ
らに、質量百分率でCr:1.5 %以下、Mo:0.5 %以下お
よびB:0.01%以下のうちから選んだ1種または2種以
上を含有する組成になることを特徴とする、延性および
伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板。
【0011】4.質量百分率でC:0.05〜0.2 %、Si:
0.5 〜3.0 %、Mn:0.6 〜3.0 %、P:0.015 %未満、
S:0.005 %以下、Al:0.10%未満、N:0.005 %以
下、Ti:Ti* で0.10%以下ただし、Ti* =Total Ti−
[(48/32)S+(48/14) N]を含み、かつCaおよび/また
はREM :0.0010〜0.0100%を含有する組成になる鋼スラ
ブを、常法に従って熱間圧延、またさらには冷間圧延を
施し、ついでAc1変態点以上の温度に加熱したのち、10
℃/s以上の冷却速度で 300〜500 ℃の温度域まで冷却
し、この温度域に60秒以上保持したのち、さらに冷却す
ることを特徴とする、延性および伸びフランジ性に優れ
た高強度冷延鋼板の製造方法。
【0012】また、この発明において、延性および伸び
フランジ性に関して目標とする特性値は、全伸び:El≧
35%、穴拡げ率:λ≧90%である。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、この発明を具体的に説明す
る。まず、この発明において鋼板の成分組成を上記の範
囲に限定した理由について説明する。なお、この明細書
において、各成分の含有量の表示に用いる%は質量百分
率である。 C:0.05〜0.20% Cは、鋼の高強度化に不可欠なだけでなく、残留オース
テナイトや低温変態相の生成にも有効な元素である。し
かしながら、含有量が0.05%未満では所望の高強度化が
図れず、一方0.20%を超えると溶接性が劣化するので、
Cは0.05〜0.20%の範囲に限定した。
【0014】Si:0.5 〜3.0 % Siは、固溶強化により鋼を強化すると共に、オーステナ
イトを安定化し、残留オーステナイト相の生成を促進す
る作用を有する。このような作用は、Si含有量が 0.5%
以上で認められる。しかしながら、 3.0%を超えて含有
すると化成処理性が著しく劣化するので、Siは 0.5〜3.
0 %の範囲に限定した。
【0015】Mn:0.6 〜3.0 % Mnは、固溶強化により鋼を強化すると共に、鋼の焼入性
を向上させ、残留オーステナイトや低温変態相の生成を
促進する作用を有する。このような作用は、Mn含有量が
0.6%以上で認められるが、 3.0%を超えるとその効果
は飽和に達し、むしろコストの上昇を招くので、Mnは
0.6〜3.0 %の範囲に限定した。
【0016】P:0.015 %未満 Pは、固溶強化元素であり、通常は高強度鋼板を得るの
に有効な元素であるが、含有量が 0.015%以上になると
スポット溶接性を低下させるので、この発明では 0.015
%未満に限定した。なお、Pは低いほどよい。
【0017】S:0.005 %以下 Sは、鋼中でMnSを形成し、鋼板の伸びフランジ性を低
下させる不純物元素である。従って、Sの混入は極力低
減することが望ましいが、0.005 %以下であれば許容で
きる。より好ましくは 0.003%以下である。
【0018】Al:0.10%未満 Alは、製鋼段階で脱酸剤として添加させる元素であり、
NをAlNとして固定するのに有効である。しかしなが
ら、含有量が0.10%以上になると合金コストの上昇を招
くので、この発明ではAlは0.10%未満に限定した。
【0019】N:0.005 %以下 Nは、通常、歪み時効を誘発する元素であり、Elなどの
特性を低下させてしまうので極力低減させる必要があ
る。この発明では、TiやAlの添加によって、NをTiN,
AlNとして固定するので時効劣化を起こすおそれはない
が、 0.005%を超えるほど多量にNが含有されるとNを
固定するために多量のTi,Al添加が必要となるので、こ
の発明では許容上限を 0.005%とした。
【0020】Ti:Ti* で0.10%以下 ただし、Ti* =To
tal Ti−[(48/32)S+(48/14) N] Tiは、TiCを析出し、焼鈍時の加熱段階におけるフェラ
イト相の成長を効果的に抑制して、フェライト粒を微細
化し、穴拡げ性を著しく向上させるのに有用な元素であ
る。また、Tiは、スラブのカギ割れ欠陥を防止する効果
もある。これらの効果を発現させるためには、有効Ti量
(Ti* =Total Ti−[(48/32)S+(48/14) N] が0を超
える量のTi添加が必要である。しかしながら、有効Ti量
が0.10%を超えると析出強化によりY.S.が上昇し、加工
性の劣化を招くだけでなく、TRIP効果を発現させるため
の残留オーステナイトの減少を招くので好ましくない。
従って、この発明では、Tiの添加量は有効Ti量(Ti*
で0<Ti* ≦0.10%の範囲に限定した。ここに、TRIP効
果とは、プレス加工等の塑性加工により残留オーステナ
イトがマルテンサイトになりその部分は硬質となって変
形は止まるものの、より軟質な近隣部分の変形は進行す
る、ような現象が繰り返され、全体が変形するまで続く
現象のことをいう。
【0021】Caおよび/またはREM :0.0010〜0.0100% Ca, REM はいずれも、硫化物系介在物の形態を制御する
作用を有し、これにより鋼板の伸びフランジ性を改善す
る効果を有する。このような効果は、含有量が0.0010%
以上で現れ、0.01%に達すると飽和する。従って、Ca,
REM の含有量は単独添加または複合添加いずれの場合に
おいても0.0010〜0.0100%の範囲に限定した。なお、よ
り好ましい範囲は0.0010〜0.0050%である。
【0022】以上、必須成分について説明したが、本発
明ではその他必要に応じて以下の元素を適宜含有させる
ことができる。 Nbおよび/またはV:0.001 〜0.10% NbおよびVはいずれも、Tiと同様、NbC、VCを析出
し、焼鈍時の加熱段階でのフェライト相の成長を抑え
て、フェライト粒を微細化し、穴拡げ性を著しく向上さ
せるのに有効な元素である。そして、この効果を発現さ
せるためには少なくとも 0.001%の添加が必要である。
しかしながら、0.10%超の含有は析出強化によりY.S.が
上昇し、加工性の低下を招くだけでなく、TRIP効果を発
現させるための残留オーステナイトを減少させてしまう
ことから好ましくない。よって、この発明では、Nb, V
の含有量は、単独添加または複合添加いずれの場合にお
いても0.001 〜0.10%の範囲に限定した。
【0023】Cr:1.5 %以下, Mo:0.5 %以下, B:0.
01%以下 Cr, MoおよびBはいずれも、鋼の焼入性を向上させ、低
温変態相の生成を促進させる有用元素であるが、含有量
が上記の範囲を超えると添加効果が飽和に達し、含有量
に見合う効果が期待できず、経済的に不利となる。それ
故、Cr, MoおよびBはそれぞれ上記の範囲で含有させる
ものとした。なお、より好ましい添加範囲は、Cr, Mo,
Bのうちから選んだ1種または2種以上合計で0.0005〜
1.0 %である。
【0024】次に、この発明において、鋼組織を前記の
比率になるフェライト、残留オーステナイトおよび低温
変態相からなる複合組織とした理由について説明する。
なお、この発明における焼戻しマルテンサイトとは、ラ
ス状のマルテンサイトを加熱した際に生成する相を指
す。 フェライト:30%以上 フェライトは、軟質な相であり、高い変形能を有し、鋼
板の延性を向上させる作用がある。ここに、上記したフ
ェライトの比率が30%に満たないと、延性の顕著な改善
効果が期待できないので、この発明では、このようなフ
ェライトを体積率で30%以上含有させるものとした。
【0025】残留オーステナイト:2%以上 残留オーステナイトは、加工時にマルテンサイトに歪誘
起変態し、局所的に加えられた加工歪を広く分散させ、
鋼板の延性を向上する作用がある。ここに、かような残
留オーステナイトの比率が2%に満たないと、上記した
延性の顕著な向上が期待できないので、この発明では、
このような残留オーステナイトを体積率で2%以上含有
させるものとした。なお、好ましくは5%以上であり、
残留オーステナイトの量は多いほどよいが、実際的には
10%以下である。
【0026】低温変態相 この発明でいう低温変態相とは、焼き戻しされていない
マルテンサイトあるいはベイナイトを指す。マルテンサ
イト、ベイナイトとも硬質相であり、組織強化によって
鋼板強度を増加させる作用がある。また、変態生成時に
可動転位の発生を伴うため、鋼板の降伏比を低下させる
作用も有する。ここに、上記の作用を十分に得るために
は、低温変態相はマルテンサイトとするのが好適であ
る。なお、この発明において、低温変態相の量は特に限
定されるものではなく、鋼板の強度に応じて適宜配分す
ればよい。好ましくは体積率で5〜20%である。
【0027】また、この発明では、次に示すように、フ
ェライトの結晶粒径を微細化することおよびTiCを適正
量析出させることが重要である。 フェライトの結晶粒径:15μm 以下 フェライト結晶粒の微細化は鋼板の伸びフランジ性を向
上させる上で有用である。ここに、フェライトの平均結
晶粒径が15μm を超えると、伸びフランジ性の顕著な向
上効果が期待できないので、この発明では、複合組織中
のフェライトの平均結晶粒径は15μm 以下に限定した。
【0028】Ti as TiC/Ti* ≧0.05 TiCを適正量析出させることは、フェライト粒の微細化
を図る上で極めて有用である。ここに、Ti as TiC/Ti
* 比で示す値が0.05に満たない程度の析出量では、上記
の効果を十分に発揮することができないので、この発明
では、TiC析出量について、Ti as TiC/Ti* 比で0.05
以上の範囲とした。
【0029】なお、この発明鋼板における複合組織で
は、上記フェライトが主相であり、残部は残留オーステ
ナイトおよび低温変態相である。このような残留オース
テナイトおよび低温変態相は、主相であるフェライトの
粒間に分散して存在する。このため、残留オーステナイ
トおよび低温変態相の平均粒径は、主相であるフェライ
トの平均粒径より小さくなるため、この発明では特に限
定しない。
【0030】次に、この発明の製造条件について説明す
る。まず、上記した組成を有する鋼を溶製し、通常の方
法で鋳造してスラブとしたのち、常法に従って熱間圧
延、またさらには冷間圧延を施して鋼板とする。また、
必要に応じて酸洗あるいは焼鈍等の工程を加えることが
できる。ついで、上記の鋼板を、焼鈍工程好ましくは連
続焼鈍ラインにおいて、加熱処理後、急冷し、その冷却
途中で保持または徐冷することによって、適正量の残留
オーステナイトおよび低温変態相を生成させる。以下、
各工程の具体的な処理条件について説明する。
【0031】加熱温度:Ac1変態点以上 この加熱処理は、連続焼鈍によって行うことが好まし
く、その際、加熱温度はAc1変態点以上とする必要があ
る。というのは、(α+γ)2相域まで加熱しないこと
には残留オーステナイトが得られず、TRIP効果が発現し
なくなるからである。とはいえ、加熱温度が 850℃を超
えるとフェライト粒径が大きくなり、伸びフランジ性が
低下することから、加熱上限は 850℃程度とするのが好
ましい。
【0032】冷却速度:10℃/s以上 上記の加熱処理後、急冷処理を施すが、かかる急冷処理
における冷却速度は10℃/s以上とする必要がある。その
理由は、10℃/s未満の冷却速度では、γ相はパーライト
もしくはベイナイトに変態してしまい、残留オーステナ
イトが消失して、TRIP効果が得られなくなるからであ
る。より好ましくは20℃/s以上である。
【0033】急冷終了温度:300 〜500 ℃ 急冷終了温度を 300〜500 ℃にした理由は、 300℃を下
回る温度まで急冷するとγ相は全てマルテンサイトに変
態してしまい、一方 500℃超の温度ではγ相はほとんど
がパーライトもしくはベイナイトに変態してしまい、TR
IP効果が期待できなくなるからである。より好ましい温
度範囲は 370〜450 ℃である。
【0034】保持時間:60秒以上 急冷後の保持または徐冷に要する時間を60秒以上とした
のは、60秒未満の短時間で 300℃未満の温度域に達する
と、ほとんどの残留オーステナイトはマルテンサイトに
変態してしまい、プレス加工時にTRIP効果が発現しなく
なるからである。とはいえ、保持時間が 900秒超になる
と、ベイナイト変態の生成ノーズにかかり、残留オース
テナイトが減少するので好ましくない。より好ましくは
120〜600 秒程度である。
【0035】なお、上記した一連の処理後、形状矯正や
粗度調整の目的で調質圧延を施しても、また施さずと
も、この発明では機械的特性に大きな変化が生じること
はないので、この点については特に規制しない。
【0036】
【実施例】表1に示す種々の成分組成になる鋼を、転炉
にて溶製後、連続鋳造法にてスラブとした。得られた鋼
スラブを、板厚:3.0 mmまで熱間圧延し、ついで酸洗
後、冷間圧延により板厚:1.4 mmの冷延板とした。つい
で、これら冷延板に、連続焼鈍ラインにて、表2に示す
条件で、加熱処理を施したのち、急冷処理およびその途
中における保持・徐冷処理を施し、ついで圧下率:0.5
%の調質圧延を施して製品板とした。かくして得られた
製品板について、そのミクロ組織調査と機械的特性調査
を行った結果を、表3に示す。
【0037】なお、鋼板のミクロ組織は、圧延方向断面
を光学顕微鏡あるいは走査型電子顕微鏡にて観察するこ
とにより調査した。また、倍率が1000倍の断面組織写真
を用いて、画像解析により任意に設定した100mm 四方の
正方形領城内に存在する該当相の占有面積率を求め、該
当相の体積率とした。さらに、残留オーステナイト量
は、鋼板を板厚方向の中心面まで研磨し、板厚中心面で
の回折X線強度測定により求めた。入射X線にはMoK
(α)線を使用し、残留オーステナイト相の{11
1}、{200}、{220}、{311}各面の回折
X線強度比を求め、これらの平均値を残留オーステナイ
トの体積率とした。フェライト粒径は、JIS Z 0552に規
定の方法により結晶粒度を測定し、平均結晶粒径に換算
した。鋼板の機械的特性は、引張試験および穴拡げ試験
により測定した。引張特性は、鋼板から圧延直角方向に
採取したJIS Z 2204に規定の5号試験片を用いて、JIS
Z 2241に規定の方法により、耐力(Y.S.)、引張強さ
(T.S.)、破断伸び(El)を測定した。伸びフランジ性
は、JFS T 1001に規定の方法により、穴拡げ率(λ)を
測定した。また、スポット溶接性はJIS Z 3136に規定の
方法の引張剪断試験を行い、板厚が 1.4mmの場合の基準
引張剪断荷重である 11062N以上のものを「優」、それ
未満のものを「劣」として評価した。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】表3に示したとおり、この発明に従い得ら
れた適合例はいずれも、 590 MPa以上の引張強さ(T.
S.)を有しており、強度−伸びバランス(TS×El)が20
000MPa・%以上と延性に優れ、かつ強度−穴拡げ率バラ
ンス(TS×λ)が54000MPa・%以上と、伸びフランジ性
にも優れていた。これに対し、成分組成や鋼組織がこの
発明の範囲を外れる比較例はいずれも、強度−伸びバラ
ンスと強度−穴拡げ率バランスの双方とも高い値を示す
ものはなく、延性および伸びフランジ性の両者が同時に
優れるものはなかった。
【0042】
【発明の効果】かくして、この発明によれば、極めて優
れた延性および伸びフランジ性を有する高強度冷延鋼板
を、安価にしかも安定して得ることができ、産業上極め
て有用である。また、この発明によって製造された鋼板
を適用することにより、自動車の軽量化、低燃費化が可
能となり、ひいては地球環境の改善に大きく貢献する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 古君 修 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究所内 (72)発明者 山口 竜介 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内 Fターム(参考) 4K037 EA01 EA02 EA05 EA06 EA09 EA11 EA15 EA16 EA17 EA18 EA19 EA23 EA25 EA27 EA28 EA31 EA32 EA36 EB05 EB09 EB11 EC01 FH01 FJ05 FK03 FL01 FL02 FL05 JA06

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量百分率で C:0.05〜0.2 %、 Si:0.5 〜3.0 %、 Mn:0.6 〜3.0 %、 P:0.015 %未満、 S:0.005 %以下、 Al:0.10%未満、 N:0.005 %以下、 Ti:Ti* で0.10%以下 ただし、Ti* =Total Ti−[(48/32)S+(48/14) N] を含み、かつ Caおよび/またはREM :0.0010〜0.0100% を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成にな
    り、鋼組織が、フェライト、残留オーステナイトおよび
    低温変態相からなる複合組織を有し、かつ上記フェライ
    トを体積率で30%以上、上記残留オーステナイトを体積
    率で2%以上含み、さらに上記フェライトの平均結晶粒
    径が15μm 以下、Ti as TiC/Ti* 比が0.05以上である
    ことを特徴とする、延性および伸びフランジ性に優れた
    高強度冷延鋼板。
  2. 【請求項2】 請求項1において、鋼素材がさらに、質
    量百分率でNbおよび/またはV:0.001 〜0.10%を含有
    する組成になることを特徴とする、延性および伸びフラ
    ンジ性に優れた高強度冷延鋼板。
  3. 【請求項3】 請求項1または2において、鋼素材がさ
    らに、質量百分率で Cr:1.5 %以下、 Mo:0.5 %以下および B:0.01%以下 のうちから選んだ1種または2種以上を含有する組成に
    なることを特徴とする、延性および伸びフランジ性に優
    れた高強度冷延鋼板。
  4. 【請求項4】 質量百分率で C:0.05〜0.2 %、 Si:0.5 〜3.0 %、 Mn:0.6 〜3.0 %、 P:0.015 %未満、 S:0.005 %以下、 Al:0.10%未満、 N:0.005 %以下、 Ti:Ti* で0.10%以下 ただし、Ti* =Total Ti−[(48/32)S+(48/14) N] を含み、かつ Caおよび/またはREM :0.0010〜0.0100% を含有する組成になる鋼スラブを、常法に従って熱間圧
    延、またさらには冷間圧延を施し、ついでAc1変態点以
    上の温度に加熱したのち、10℃/s以上の冷却速度で 300
    〜500 ℃の温度域まで冷却し、この温度域に60秒以上保
    持したのち、さらに冷却することを特徴とする、延性お
    よび伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板の製造方
    法。
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