JP2001126554A - 化合物超電導線、その製造方法及びその製造装置 - Google Patents

化合物超電導線、その製造方法及びその製造装置

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 化合物超電導裸線に良好な絶縁被覆を施した
化合物超電導線を得る。 【解決手段】 化合物超電導線の製造方法は、線引き後
所定の熱処理を行い、その線材をエナメル被覆した後、
所定のコイル形状に巻線し、必要があればエポキシ含浸
を施し完成するものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、超電導マグネット
などに用いられる絶縁被覆を施した超電導線に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】図5は、例えば特開平10−16266
4号公報に示された従来の化合物超電導線の製造方法を
示す図である。図において1は化合物超電導裸線であり
この化合物超電導裸線1は直線状のままでその表面に絶
縁テープ2a,2bが施され化合物超電導線10を得て
いる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来のように、化合物
超電導裸線1は絶縁テープ2a,2bにより絶縁されて
いるため絶縁テープ2a,2bの側端部が線長方向に存
在し、絶縁テープ側端面に隙間ができやすくこの隙間に
より絶縁耐電圧が低下するという課題があった。
【0004】また、上記絶縁テープ2a,2bの隙間を
無くするために側端面を重ね合わせる必要があり、この
重ね合わせにより化合物超電導線10の外径が大きくな
り断面形状もいびつになるという課題もあった。
【0005】また、一般的に絶縁テープ2a,2bは5
0μm以上と比較的厚いため化合物超電導裸線1の外径
が例えば0.5mmなどの細い線に適用すると線材の占
積率が55%程度となりコイルに巻線した場合の平均電
流密度を向上させることができないという課題もあっ
た。
【0006】本発明は、上記のような課題を解決するた
めになされたもので、化合物超電導裸線に良好な絶縁被
覆を施した化合物超電導線を得ることを目的としてい
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明に係る化合物超電
導線は、化合物超電導相が形成された化合物超電導裸線
にエナメルが被覆された化合物超電導線であって、上記
化合物超電導裸線は、断面の最小幅に対する最大幅の比
が2以下であるものである。
【0008】又、エナメルは、化合物超電導裸線に対し
て、該化合物超電導裸線の断面の最小幅に対し50倍以
上の曲げ半径で曲げを複数回施しかつ70MPa以下の
張力をかけた条件下において、被覆されたものである。
【0009】又、化合物超電導相はNb3Sn超電導相
である。
【0010】又、化合物超電導裸線は、化合物超電導細
線の集合体部とその周囲に形成された金属もしくは合金
からなる周辺部とからなり、化合物超電導細線の径は1
μm以上である。
【0011】又、化合物超電導裸線は、化合物超電導細
線の集合体部とその周囲に形成された金属もしくは合金
からなる周辺部とからなり、上記集合体部の外径は、上
記化合物超電導裸線の外径の3分の2以下である。
【0012】本発明に係る化合物超電導線の製造方法
は、熱処理により化合物超電導相が生成された化合物超
電導裸線に、上記化合物超電導裸線の断面の最小幅に対
し50倍以上の曲げ半径で曲げを複数回施しかつ70M
Pa以下の張力をかけた条件下において、エナメルを被
覆するものである。
【0013】本発明に係る化合物超電導線の製造装置
は、化合物超電導相が形成された化合物超電導裸線に、
該化合物超電導裸線の断面の最小幅に対し50倍以上の
曲げ半径で曲げを複数回施しかつ70MPa以下の張力
をかけた条件下において、エナメルを被覆可能なもので
ある。
【0014】
【発明の実施の形態】実施の形態1.以下、本発明の実
施の形態1による化合物超電導線について説明する。化
合物超電導線は例えばNb3Sn線やNb3Al線などが
市販されており、同じく一般的に市販されているNbT
i合金線に比べ臨界温度、臨界電流密度、上部臨界磁界
が高い特性を有する。
【0015】また、近年ではBi2Sr2Ca1Cu2y
やBi2Sr2Ca2Cu3y、Y1Ba2Cu3yなどの
銀被覆高温超電導線材が試作されている。しかし、化合
物超電導線はNbTi合金線に比べ化合物超電導体が硬
く脆いため、線材形状に成形後熱処理をし超電導相を生
成もしくは超電導粒間の結合を行わなければならない。
従って、化合物超電導線の製造方法においては、線引き
からコイル完成の間に800℃以上の高温での熱処理工
程が必ず存在する。
【0016】例えば特開平11−25785号公報に示
された従来の化合物超電導線の製造方法は、図1に示す
ように、線引きした後にガラス繊維などの耐高温性の絶
縁材で被覆を施し、所定のコイル形状に巻線した後、例
えばNb3Sn超電導線の場合850℃で熱処理した後
にエポキシ等で含浸して超電導線が動かないよう固定し
完成するものである。
【0017】一方、本実施の形態における化合物超電導
線の製造方法は、図1に示すように、線引き後所定の熱
処理を行い、その線材をエナメル被覆した後、所定のコ
イル形状に巻線し、必要があればエポキシ含浸を施し完
成するものである。
【0018】本実施の形態におけるエナメル被覆は、図
2に示すような装置により実施される。以下に、この装
置を用いたエナメル被覆の方法について説明する。ま
ず、巻出しドラム53から引き出された超電導線51
は、洗浄器55を通過し、エナメルの被覆器57を3か
ら5回通過し、エナメルを焼き付けられ、巻取りドラム
59に巻取られる。このエナメル被覆の工程で、超電導
線51は少なくとも5回はプリー61により繰り返し曲
げを経験する。
【0019】このように何度も曲げを行う場合、Nb3
Sn超電導線のような化合物超電導線は歪みに弱いこと
から、断面内の応力を均等にし、応力がある部位に集中
しないようにしなければならない。従って、超電導線材
の断面形状が丸であることが最も望ましく、角線であっ
ても縦横比がほぼ2以下にすることにより極端な応力集
中が避けられる。尚、これらの断面形状に限らず、断面
の最少幅に対する最大幅の比がほぼ2以下となる断面形
状で有れば良く、楕円、5個以上の角を有する多角形、
及びそれらを組み合わせた形状であってもかまわない。
【0020】特開平11−25785号公報に記載の従
来の化合物超電導線は、上述のように高温で耐える絶縁
材料としてガラス繊維で被覆されており、このガラス繊
維の被覆厚さは少なくとも0.1mmと厚く、図3のグ
ラフに示すように、例えば0.5mm直径の超電導丸線
に0.1mmの被覆を付けると、単線だけでも約55%
の占積率、コイルに巻線した場合で約40%の占積率と
なってしまう。このことは、コイル断面積が大きくなる
のみならず、発生できるコイル中心磁場が低くなること
を意味する。一方、本実施の形態におけるエナメル被覆
の化合物超電導線の被覆厚さは、0.03mm程度にす
ることが一般的であり、この場合、数kVの耐電圧を有
しコイル絶縁としては十分である。
【0021】図3に示すように、0.03mm絶縁厚さ
の線材の占積率はコイル化しても60%以上と従来のガ
ラス絶縁に比べ1.5倍以上であり、同じ巻数のコイル
であれば、コイル断面積は従来の化合物超電導線に比し
66%と小さくできる。また、従来例で示した化合物超
電導線のように絶縁テープの厚さが0.05mmの場
合、図3に示されるようにコイル化した占積率は55%
であり、実際にはテープの隙間が生じるため絶縁耐電圧
を取るためにはテープの一部を重ねるか隙間部に再度テ
ープを貼るため先のガラス絶縁と同様に0.1mmの絶
縁厚さとなり線材の占積率は40%程度に低下してしま
う。
【0022】実施の形態2.次に本発明の実施の形態2
による化合物超電導線について図に基づき説明する。図
4は化合物超電導線にエナメル被覆を施したものの断面
図であり、101の化合物超電導細線の集合体の周りに
は、当該集合体101を保護し超電導安定性を確保する
ための銅部材(周辺部)103が覆っている。化合物超
電導細線の集合体101と銅部材103の間には熱処理
時に超電導体の元素が拡散しないようにTaなどのバリ
ア材が施されていても良い。そして、この銅部材103
の周囲にエナメル被覆105が施されている。
【0023】このように構成された化合物超電導線にお
いて化合物超電導フィラメント集合体部101の直径d
1が銅部材103を加えた外直径d2の3分の2以下に
することにより、エナメル被覆時やコイル巻線時の曲げ
における化合物超電導フィラメント集合体に加わる最大
曲げ歪みは、銅部材103を形成せず集合体部101の
みで形成されている場合に比べて、3分の2以下に軽減
できた。
【0024】実施の形態1にて説明したようなエナメル
被覆の工程では、化合物超電導線に対し0.5%程度の
曲げ歪みが加わる箇所がある。Nb3Sn超電導線の場
合0.4%以上の曲げ歪みが加わると超電導特性が大き
く劣化するので、上記のように集合体部101の直径d
1が銅部材103を加えた外直径d2の3分の2以下と
なるようにしたことにより、エナメル被覆の工程におい
て集合体部101に加わる最大曲げ歪みは0.3%程度
になり、大きな超電導特性の低下は生じなかった。
【0025】実施の形態3.次に本発明の実施の形態3
による化合物超電導線について説明する。熱処理後の裸
線での直径0.65mmのNb3Sn線材を直径75m
mの巻枠に20Nの張力で数回巻き付けたものの超電導
特性の測定を行った結果、臨界電流は曲げおよび張力を
加えない場合の85%以上が得られた。直径60mm以
下で20N以上の張力を掛けたものの臨界電流は50%
以下と顕著な低下を示した。
【0026】そこで、本実施の形態では、本発明の実施
の形態1の手法において、さらに、線材直径の50倍以
上の曲げ半径と70MPa以下の張力を加え、エナメル
絶縁処理を行った。ここで繰り返し曲げの回数はおよそ
12回であった。
【0027】上記手法により得られた線材を用いて、直
径120mmの巻枠に張力をほとんど掛けずに巻き付け
臨界電流を測定したところ、上記測定結果とほぼ同じ特
性が得られた。これらの結果から、実施の形態1の手法
において、線材直径の50倍以上の曲げ半径と70MP
a以下の張力を加えエナメル被覆処理を行うことによ
り、特性を著しく低下させることなく被覆された化合物
超電導線を得ることができた。
【0028】尚、実施の形態3では、エナメル被覆加工
時の条件について述べたが、エナメル絶縁後の化合物超
電導線をコイルに巻線する場合においても、線材直径の
50倍以上の曲げ半径と70MPa以下の張力の条件
で、コイル巻線を実施することにより、超電導特性を低
下させることなくコイル化できることは言うまでもな
い。
【0029】実施の形態4.次に本発明の実施の形態4
による化合物超電導線について説明する。超電導線は通
電時の損失に伴う超電導安定性(常電導状態に転移する
ことなく、超電導状態を維持する特性)を向上するため
に、超電導体を例えば数μmという細い線にして銅など
の金属に埋め込んでいる。さらにこの線を捻ることで、
より安定性を向上させている。
【0030】これまで述べた実施の形態のように化合物
超電導体は脆いため超電導細線の直径が1μm以下のも
のではエナメル被覆を施す場合に細線が切れやすくなり
超電導特性が低下した。例えば、実施の形態1乃至3で
述べた化合物超電導線は超電導細線の直径が2μm程度
であった。以上の結果から、熱処理した化合物超電導線
をエナメル被覆する場合は、超電導細線の直径が1μm
以上であることが望ましい。
【0031】
【発明の効果】本発明に係る化合物超電導線は、化合物
超電導相が形成された化合物超電導裸線にエナメルが被
覆された化合物超電導線であって、上記化合物超電導裸
線は、断面の最小幅に対する最大幅の比が2以下である
ので、線材断面形状がいびつになることなく絶縁被覆に
隙間が無く、コイル化した場合に超電導線の占積率が大
きく低下しないという効果がある。
【0032】又、エナメルは、化合物超電導裸線に対し
て、該化合物超電導裸線の断面の最小幅に対し50倍以
上の曲げ半径で曲げを複数回施しかつ70MPa以下の
張力をかけた条件下において、被覆されたので、被覆処
理時に超電導特性が顕著に劣化することがないという効
果を有する。
【0033】又、化合物超電導相はNb3Sn超電導相
であるので、エナメル被覆処理を行う場合に引っ張り応
力が加わっても超電導細線が切れにくく超電導特性が顕
著に劣化することがないという効果がある。
【0034】又、化合物超電導裸線は、化合物超電導細
線の集合体部とその周囲に形成された金属もしくは合金
からなる周辺部とからなり、化合物超電導細線の径は1
μm以上であるので、エナメル被覆処理を行う場合に引
っ張り応力が加わっても超電導細線が切れにくく超電導
特性が顕著に劣化することがないという効果がある。
【0035】又、化合物超電導裸線は、化合物超電導細
線の集合体部とその周囲に形成された金属もしくは合金
からなる周辺部とからなり、上記集合体部の外径は、上
記化合物超電導裸線の外径の3分の2以下であるので、
エナメル被覆時の複数回の曲げによる超電導特性の低下
を防ぐことができるという効果がある。
【0036】本発明に係る化合物超電導線の製造方法
は、熱処理により化合物超電導相が生成された化合物超
電導裸線に、上記化合物超電導裸線の断面の最小幅に対
し50倍以上の曲げ半径で曲げを複数回施しかつ70M
Pa以下の張力をかけた条件下において、エナメルを被
覆するので、被覆処理時に超電導特性を顕著に劣化させ
ることがないという効果を有する。
【0037】本発明に係る化合物超電導線の製造装置
は、化合物超電導相が形成された化合物超電導裸線に、
該化合物超電導裸線の断面の最小幅に対し50倍以上の
曲げ半径で曲げを複数回施しかつ70MPa以下の張力
をかけた条件下において、エナメルを被覆可能なので、
被覆処理時に超電導特性を顕著に劣化させることがない
という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態1による化合物超電導線
の加工工程と、従来の工程を比較した図である。
【図2】 本発明の実施の形態1による化合物超電導線
のエナメル被覆処理装置を示す図である。
【図3】 絶縁厚さと超電導線の占積率の関係を示すグ
ラフである。
【図4】 本発明の実施の形態2による化合物超電導線
を示す断面図である。
【図5】 従来の化合物超電導線の被覆処理方法を示す
図である。
【符号の説明】
1,51 化合物超電導裸線、 2a,2b 絶縁テープ、 10 化合物超電導線、 53 巻出しドラム、 55 洗浄器、 57 エナメル被覆器、 59 巻取りドラム、 61 プリー、 101 化合物超電導細線集合体部、 103 銅部材(周辺部)、 105 エナメル。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 化合物超電導相が形成された化合物超電
    導裸線にエナメルが被覆された化合物超電導線であっ
    て、 上記化合物超電導裸線は、断面の最小幅に対する最大幅
    の比が2以下であることを特徴とする化合物超電導線。
  2. 【請求項2】 エナメルは、化合物超電導裸線に対し
    て、該化合物超電導裸線の断面の最小幅に対し50倍以
    上の曲げ半径で曲げを複数回施しかつ70MPa以下の
    張力をかけた条件下において、被覆されたものであるこ
    とを特徴とする請求項1に記載の化合物超電導線。
  3. 【請求項3】 化合物超電導相はNb3Sn超電導相で
    あることを特徴とする請求項1又は2に記載の化合物超
    電導線。
  4. 【請求項4】 化合物超電導裸線は、化合物超電導細線
    の集合体部とその周囲に形成された金属もしくは合金か
    らなる周辺部とからなり、 化合物超電導細線の径は1μm以上であることを特徴と
    する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の化合物超
    電導線。
  5. 【請求項5】 化合物超電導裸線は、化合物超電導細線
    の集合体部とその周囲に形成された金属もしくは合金か
    らなる周辺部とからなり、 上記集合体部の外径は、上記化合物超電導裸線の外径の
    3分の2以下であることを特徴とする請求項1ないし4
    のいずれか1項に記載の化合物超電導線。
  6. 【請求項6】 熱処理により化合物超電導相が生成され
    た化合物超電導裸線に、上記化合物超電導裸線の断面の
    最小幅に対し50倍以上の曲げ半径で曲げを複数回施し
    かつ70MPa以下の張力をかけた条件下において、エ
    ナメルを被覆することを特徴とする化合物超電導線の製
    造方法。
  7. 【請求項7】 化合物超電導相が形成された化合物超電
    導裸線に、該化合物超電導裸線の断面の最小幅に対し5
    0倍以上の曲げ半径で曲げを複数回施しかつ70MPa
    以下の張力をかけた条件下において、エナメルを被覆可
    能な化合物超電導線の製造装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2006253592A (ja) * 2005-03-14 2006-09-21 Sumitomo Heavy Ind Ltd 超電導コイル及びその製造方法
US12020830B2 (en) 2018-09-28 2024-06-25 Furukawa Electric Co., Ltd. Insulation-coated compound superconducting wire and rewinding method thereof

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