JP2001123322A - ポリプロピレン系延伸繊維、不織布及び該延伸繊維の製造方法 - Google Patents

ポリプロピレン系延伸繊維、不織布及び該延伸繊維の製造方法

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JP2001123322A
JP2001123322A JP29408599A JP29408599A JP2001123322A JP 2001123322 A JP2001123322 A JP 2001123322A JP 29408599 A JP29408599 A JP 29408599A JP 29408599 A JP29408599 A JP 29408599A JP 2001123322 A JP2001123322 A JP 2001123322A
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polypropylene
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Shinji Ota
信次 太田
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Ube Nitto Kasei Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 メタロセン触媒を用いて得られたプロピレン
系重合体を基材とし、かつ強度が高く、他の物性にも優
れるポリプロピレン系延伸繊維、不織布およびその製造
方法を提供する。 【解決手段】 メタロセン触媒を用いて得られたプロピ
レン系重合体を主成分とする繊維を延伸処理してなり、
かつ強度[cN/dTex]/延伸倍率[倍]比が1.
4以上であるポリプロピレン系延伸繊維、この延伸繊維
を含む不織布およびメタロセン触媒を用いて得られたプ
ロピレン系重合体を主成分とする繊維を、水蒸気により
直接加熱して延伸処理することにより、前記ポリプロピ
レン系延伸繊維を製造する方法である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリプロピレン系
延伸繊維、不織布及びその製造方法に関する。さらに詳
しくは、本発明は、メタロセン触媒によるプロピレン系
重合体を基材とする、比較的低い延伸倍率でも高い強度
を有するポリプロピレン系延伸繊維、この延伸繊維を含
む不織布及び該延伸繊維を水蒸気延伸処理により、効率
よく製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】高立体規則性の結晶性ポリプロピレン
(アイソタクチックポリプロピレン)は、周期律表(長
周期型)第4〜6族に属する遷移金属の化合物と、周期
律表第1、2および13族に属する金属の有機金属化合
物とからなる、いわゆるチーグラー・ナッタ触媒を用い
てプロピレンを重合させることにより得られることは、
よく知られている。
【0003】この高立体規則性の結晶性ポリプロピレン
は、剛性が高く、一般に高い熱変形温度、融点、結晶化
温度を有することから、優れた耐熱性を示し、かつ結晶
化速度が速く、透明性が高いなどの特性を有している。
そのため、容器、フィルム、繊維などの種々の用途に用
いられている。
【0004】一方、近年、新しいオレフィン系重合触媒
として、メタロセン触媒(Kaminskyらにより発見され
た触媒で、カミンスキー触媒ともいう。)が注目され、
この触媒を用いたポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ
スチレンなどが実用化され始めている。
【0005】このメタロセン触媒は、チタニウムやジル
コニウムなどの遷移金属錯体からなる主触媒成分と、ア
ルミノキサンや有機ホウ素化合物などからなる助触媒成
分とを組み合わせたものであって、この触媒の最大の特
徴は、溶液中における活性点(サイト)をもつ化合物の
分散の均一性にある。活性点の性質も同一で、かつ均一
の活性点をもつ特色から均一系触媒あるいはシングルサ
イト触媒とも呼ばれている。従来のオレフィン系重合触
媒が不均一系(マルチサイト)であるのに対し、大きな
相違点となる。
【0006】このようなメタロセン触媒を用いて得られ
たオレフィン系重合体は、従来のマルチサイト触媒を用
いて得られたものに比べて、分子量分布および立体規則
性分布が狭く、また共重合体にあっては、共重合組成分
布が狭いという特徴を有しており、その結果様々な物性
の向上や機能の向上がもたらされる。また、このメタロ
セン触媒は共重合性がよく、かつコモノマー成分を主鎖
に均一に導入することができ、所望の組成および分子量
をもつオレフィン系共重合体の設計が可能である。
【0007】ところで、結晶性ポリプロピレンの用途の
一つとして、ポリプロピレン系繊維が知られている。こ
のポリプロピレン系繊維は、結晶性ポリプロピレンを溶
融紡糸して得られた繊維を、熱延伸処理することによ
り、製造される。該ポリプロピレン系繊維は、フィラメ
ント、ステープルファイバー、チョップドストランド、
織布、不織布などの形態で、様々な用途、例えば織布タ
イプのフィルター(ろ材)、筒体ケースに繊維を直接ワ
インディングしたカートリッジタイプのフィルター(ろ
材)、編み加工したネット(建築用)、織り加工したシ
ート(建築用シート基材)、ロープ、ベルト、自動車タ
イヤ用補強繊維、コンクリート用補強繊維、さらには不
織布として、自動車用フロアカーペット、二次電池用の
セパレータ、フィルター(ろ材)などに用いられる。
【0008】このようなポリプロピレン系繊維やその不
織布などについて、前記メタロセン触媒を用いて得られ
たプロピレン系重合体を基材とするものが種々提案され
ている。例えばメタロセン触媒を用いて得られたプロピ
レン系重合体などのポリオレフィン類からなり、かつメ
ルトフローインデックス(MFI)5〜1000g/1
0分(2.16kg、230℃)、重量平均分子量7.
5万〜35万、Mw/Mn比1.8〜3.5、エーテル
抽出物2重量%未満などの特性を有する成形材料を用い
た繊維(特開平6−239934号公報)、メタロセン
触媒を用いて得られた反応器グレードであって、メルト
フローレート(MFR)が5〜3000g/10分程
度、Mw/Mnが1.6〜3程度のプロピレン系重合体
などのポリオレフィン類を含む繊維(特表平8−510
801号公報)、メタロセン触媒を用いて得られ、かつ
重量分子量分布曲線における分子量2000以下のもの
が1重量%未満で、分子量100万以上のものが1重量
%未満であり、重量平均分子量が5万〜20万であるプ
ロピレン系重合体などのポリオレフィン類を用いてなる
不織布(特開平9−296347号公報)、メタロセン
触媒を用いて得られ、かつMFR(2.16kg、23
0℃)が0.05〜50g/10分、示差走査型熱量計
(DSC)により測定した吸熱曲線の最大ピーク位置が
130〜170℃、メソペンタッドアイソタクティシテ
ィーが80〜100%、Mw/Mnが1.5〜3.5、
室温デカン可溶成分が1.5重量%以下であるポリプロ
ピレンを基材とする繊維(特開平10−195714号
公報)などが開示されている。
【0009】しかしながら、これらの従来技術における
プロピレン系重合体を用いた繊維や不織布においては、
その繊維の物性は強度が十分ではなく、また、従来の繊
維と同じく強度を上げるためには延伸倍率を高める必要
があった。すなわち、強度/延伸倍率が低く、繊維強度
を上げるためには延伸装置への負荷が大きく、生産性が
低かった。またこれらの公報においては、いずれも、強
度[cN/dTex]/延伸倍率[倍]のパラメータに
ついては、全く言及されていないし、また、原料のプロ
ピレン系重合体においても、立体規則性分布の広さにつ
いては、全く言及されていない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、メタロセン
触媒を用いて得られたプロピレン系重合体を基材とし、
かつ強度およびその他物性に優れるポリプロピレン系延
伸繊維およびそれを含む不織布を提供することを目的と
するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、メタロセ
ン触媒によるプロピレン系重合体を基材とする高強度お
よびその他物性に優れるポリプロピレン系延伸繊維を開
発すべく鋭意研究を重ねた結果、メタロセン触媒を用い
て得られたプロピレン系重合体を主成分とする繊維を、
水蒸気により直接加熱して延伸処理することにより、強
度が高く、かつ強度[cN/dTex]/延伸倍率
[倍]比がある値以上のポリプロピレン系延伸繊維が得
られることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成
するに至った。
【0012】すなわち、本発明は、メタロセン触媒を用
いて得られたプロピレン系重合体を主成分とする繊維を
延伸処理してなり、かつ強度[cN/dTex]/延伸
倍率[倍]比が1.6以上であることを特徴とするポリ
プロピレン系延伸繊維、およびこのポリプロピレン系延
伸繊維を含むことを特徴とする不織布を提供するもので
ある。前記ポリプロピレン系延伸繊維は、本発明に従え
ば、メタロセン触媒を用いて得られたプロピレン系重合
体を主成分とする繊維を、水蒸気により直接加熱して延
伸処理することにより、製造することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明のポリプロピレン系延伸繊
維は、メタロセン触媒を用いて得られたプロピレン系重
合体を主成分とする繊維(以下、ポリプロピレン系未延
伸繊維と称する。)を延伸処理したものである。上記ポ
リプロピレン系未延伸処理の主成分として用いられるプ
ロピレン系重合体とは、基本的にはプロピレン単独重合
体であるが、この際、結晶性を損なわない範囲で、エチ
レンおよび/または炭素数4以上のα−オレフィンなど
の非プロピレン成分を微量、例えば2重量%以下程度含
んでいてもよい。
【0014】本発明において用いられる前記プロピレン
系重合体は、メタロセン触媒の存在下に、プロピレンを
重合させることにより、得られたものであって、以下に
示す性状を有するものが好適である。まず、ASTM
D1238に準拠して測定した温度230℃、荷重2.
16kgの条件におけるメルトフローレート(MFR)
は、溶融紡糸性および繊維強度などの点から、1〜10
0g/10分の範囲が好ましく、特に5〜50g/10
分の範囲が好適である。
【0015】また、ゲルパーミエーションクロマトグラ
フィー法(GPC法)により測定した重量平均分子量
(Mw)と数平均分子量(Mn)との比Mw/Mn(分
子量分布の指標)は3.5以下が好ましく、特に3以下
が好ましい。上記重量平均分子量(Mw)は、通常2.
3万〜33万、好ましくは6.4万〜23万の範囲であ
る。
【0016】なお、重量平均分子量(Mw)および数平
均分子量(Mn)は下記の条件で測定した値である。 装置:ウォターズ社製 150C GPC カラム:SHODEX AT807S 1本 東ソ−TSK−GEL GMH−H6 2本の計3本 溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン 測定温度:140℃ 標準物質:ポリスチレン
【0017】次に、アイソタクチックペンタッド分率
(IPF)は85%以上が好ましく、特に90%以上が
好ましい。このIPFが85%未満では立体規則性が不
充分で結晶性が低く、強度などの物性に劣る。なお、ア
イソタクチックペンタッド分率(IPF)(一般にmm
mm分率ともいわれる)は、任意の連続する5つのプロ
ピレン単位で構成される炭素−炭素結合による主鎖に対
して、側鎖である5つのメチル基がいずれも同方向に位
置する立体構造の割合を示すものであって、同位体炭素
核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)にけるPmmmm
(プロピレン単位が5個連続してアイソタクチック結合
した部位における第3単位目のメチル基に由来する吸収
強度)およびPw(プロピレン単位の全メチル基に由来
する吸収強度)から、式 IPF(%)=(Pmmmm/Pw)×100 によって求めることができる。
【0018】13C−NMRの測定は、例えば次のように
して行うことができる。試料0.35gをヘキサクロロ
ブタジエン2.0mlに加熱溶解させ、この溶液をグラ
スフィルター(G2)でろ過したのち、重水素化ベンゼ
ン0.5mlを加え、内径10mmのNMRチューブに
装入する。そして日本電子(株)製GX−500型NM
R測定装置を用い、120℃で13C−NMR測定を行
う。積算回数は、10,000回以上とする。
【0019】さらに、昇温分別クロマトグラフィー(T
REF)法での測定により求められた溶出曲線から得ら
れる、式(I) dT=Tp−T1/5 …(I) [ただし、Tp>T1/5であって、dT(℃):立体規
則性分布の広さ、Tp(℃):単位温度差当たりの溶出
ポリマー重量(dW/dT)が最大となる温度、T1/5
(℃):TpにおけるdW/dTをWpとした場合、溶
出過程においてdW/dTがWpの1/5となる温度で
ある。]で示される立体規則性分布の広さdTは、5.
5℃以下であるのが好ましい。また、上記昇温分別クロ
マトグラフィー(TREF)法での測定により求められ
る温度0℃における溶出量は1.0重量%未満であるの
が好ましい。
【0020】このように、本発明で用いられるメタロセ
ン触媒を使用して得られたプロピレン系重合体は、従来
のチーグラー・ナッタ触媒を用いて得られた結晶性ポリ
プロピレンに比べて、分子量分布および立体規則性分布
が極めて狭く、溶剤溶出成分が少ないという特徴を有し
ている。
【0021】なお、上記昇温分別クロマトグラフィー
(TREF)の測定は、以下に示す方法により行った。
すなわち、温度140℃のo−ジクロロベンゼンに完全
に溶解させた試料溶液を、温度135℃に調節したTR
EFカラムに導入し、次いで速度5℃/hrにて徐々に
0℃まで降温し、試料を充填剤に吸着させた。0℃にて
30分間保持したのち、カラムにo−ジクロロベンゼン
を流通させ、0℃のまま10分間保持して充填剤に吸着
されない成分を溶出させ0℃における溶出成分量を求め
た。その後、o−ジクロロベンゼンを流通させながら速
度40℃/hrにて135℃まで昇温し、順次ポリマー
成分を溶出させた。この際の溶出ポリマーの濃度を測定
することによって溶出曲線を得た。
【0022】ここで、単位温度差当たりの溶出ポリマー
重量(dW/dT)が最大となる温度をTp(℃)、T
pにおけるdW/dTをWp、溶出過程においてdW/
dTがWpの1/5となる温度をT1/5とすると、立体
規則性の分布の広さdT(℃)は、dT=Tp−T1/5
で示すことができる。ただし、Tp>T1/5である。 測定条件 溶媒:o−ジクロロベンゼン 試料濃度:7.5g/リットル 注入量:500マイクロリットル 流速:2.0ミリリットル/分 カラム充填剤:クロモソルブP(30/60メッシュ) なお、上記の方法により、直鎖状高密度ポリエチレン
「SRM1475」(National Institute of Stand
ard & Technology社製)の測定を実施したところ、T
pは100.3℃、dTは3.3℃であった。
【0023】本発明で用いられるプロピレン系重合体を
製造する際に使用するメタロセン触媒は、メタロセン系
遷移金属化合物を主触媒とし、これにアルミノキサンお
よび/またはイオン化イオン性化合物などの助触媒およ
び必要に応じて有機アルミニウム化合物を組み合わせた
ものである。
【0024】ここで、メタロセン系遷移金属化合物とし
ては、例えば周期律表(長周期型)第4族から選ばれた
遷移金属の化合物、すなわちチタニウム、ジルコニウム
またはハフニウムに、シクロペンタジエニル基、置換シ
クロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル
基、テトラヒドロインデニル基、置換テトラヒドロイン
デニル基、フルオニル基または置換フルオニル基が1な
いし2個結合しているか、あるいはこれらのうちの二つ
の基が共有結合で架橋したものが結合しており、他に水
素原子、酸素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコ
キシ基、アリール基、アセチルアセトナート基、カルボ
ニル基、さらには窒素、酸素、硫黄、リン、ケイ素を含
む配位子を有するものが挙げられる。
【0025】このようなメタロセン系遷移金属化合物の
好ましい例としては、ビス(1−メチル−3−ブチルシ
クロペンタジエニル)ジルコニウムビス(トリフルオロ
メタンスルホナイト)、エチレン−ビス(インデニル)
ジメチルジルコニウム、エチレン−ビス(インデニル)
ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン−ビス
(インデニル)ジルコニウムジクロリド、メチルフェニ
ルシリレン−ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリ
ド、rac−エチレン−ビス(2−メチル−1−インデ
ニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリ
レン−ビス(2−メチル−1−インデニル)ジルコニウ
ムジクロリド、rac−ジメチルシリレン−ビス(4,
7−ジメチル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリ
ド、rac−ジメチルシリレン−ビス(2,4,7−ト
リメチル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2,4,6−トリメ
チル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、ra
c−ジメチルシリレン−ビス(4−フェニル−1−イン
デニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシ
リレン−ビス(2−メチル−4−フェニル−1−インデ
ニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチルシリ
レン−ビス(2−メチル−4−(α−ナフチル)−1−
インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−ジメチ
ルシリレン−ビス(2−メチル−4−(β−ナフチル)
−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、rac−
ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4−(1−アン
トリル)−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、
rac−ジメチルシリレン−ビス(2−メチル−4,5
−ベンズインデニル)ジルコニウムジクロリド、rac
−ジメチルシリレン−ビス(2−エチル−4,5−ベン
ズインデニル)ジルコニウムジクロリドなど、およびこ
れらの化合物において、ジルコニウムをチタニウムまた
はハフニウムに置き換えた化合物を挙げることができ
る。これらのメタロセン系遷移金属化合物は1種用いて
もよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】一方、助触媒のアルミノキサンの例として
は、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、n
−プロピルアルミノキサン、イソプロピルアルミノキサ
ン、n−ブチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキ
サン、sec−ブチルアルミノキサン、t−ブチルアル
ミノキサン、メチル−エチルアルミノキサン、メチル−
n−プロピルアルミノキサン、メチル−イソプロピルア
ルミノキサン、メチル−n−ブチルアルミノキサン、メ
チル−イソブチルアルミノキサン、エチル−n−プロピ
ルアルミノキサン、エチル−イソプロピルアルミノキサ
ン、エチル−n−ブチルアルミノキサン、エチル−イソ
ブチルアルミノキサンなどが挙げられる。これらの中
で、メチルアルミノキサンが特に好ましい。
【0027】また、助触媒のイオン化イオン性化合物と
しては、例えば、ルイス酸、イオン性化合物、ボラン化
合物およびカルボラン化合物などを挙げることができ
る。ここで、ルイス酸の例としては、トリフルオロボロ
ン、トリフェニルボロン、トリス(4−フルオロフェニ
ル)ボロン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボ
ロン、トリス(4−フルオロメチルフェニル)ボロン、
トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリス(p
−トリル)ボロン、トリス(o−トリル)ボロン、トリ
ス(3,5−ジメチルフェニル)ボロンなどを挙げるこ
とができ、イオン性化合物の例としては、トリエチルア
ンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリプロピルア
ンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリ(n−ブチ
ル)アンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、ジ(1−
プロピル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフ
ェニル)ホウ素、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラ
(フェニル)ホウ素、トリフェニルカルベニウムテトラ
キス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジ
メチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニ
ル)ボレート、フェロセニウムテトラキス(ペンタフル
オロフェニル)ボレートなどを挙げることもできる。
【0028】ボラン化合物の例としては、デカボラン、
ビス[トリ(n−ブチル)アンモニウム]ノナボレー
ト、ビス[トリ(n−ブチル)アンモニウム]デカボレ
ート、ビス[トリ(n−ブチル)アンモニウム]ビス
(ドデカハイドライドドデカボレート)ニッケル酸塩
(III)などの金属ボランアニオンの塩などが挙げら
れ、カルボラン化合物の例としては、4−カルバノナボ
ラン、1,3−ジカルバノナボラン、ビス[トリ(n−
ブチル)アンモニウム]ビス(ウンデカハイドライド−
7−カルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(IV)など
の金属カルボランアニオンの塩などが挙げられる。これ
らのイオン化イオン性化合物は1種用いてもよいし、2
種以上を組み合わせて用いてもよく、また、前記アルミ
ノキサンと併用することもできる。
【0029】本発明で用いるメタロセン触媒は、必須触
媒成分として、前記メタロセン系遷移金属化合物とアル
ミノキサンおよび/またはイオン化イオン性化合物とを
組み合わせたものであるが、所望により、さらに有機ア
ルミニウム化合物、例えばトリメチルアルミニウム、ト
リエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウ
ム、トリイソブチルアルミニウム、ジメチルアルミニウ
ムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、メチルア
ルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリ
ド、ジメチルアルミニウムフルオリド、ジイソブチルア
ルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムヒドリド、
エチルアルミニウムセスキクロリドなどが挙げられる。
これらの有機アルミニウム化合物は1種用いてもよい
し、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのメ
タロセン触媒の各触媒成分は、場合により、ポリスチレ
ンなどの有機担体や、シリカ、アルミナのような酸化物
などからなる無機担体に担持させて使用してもよい。
【0030】本発明で用いるプロピレン系重合体は、前
記メタロセン触媒の存在下に、プロピレンを単独重合さ
せるか、あるいはプロピレンと少量のエチレンおよび/
または炭素数4以上のα−オレフィンとを共重合させる
ことにより製造することができる。また、重合方法とし
ては特に制限はなく、塊状重合、溶液重合、気相重合、
懸濁重合などの中から任意の方法を用いることができ
る。また、バッチ式、連続式のいずれの方法を用いても
よい。このようにして、前述した性状を有するプロピレ
ン系重合体が得られる。
【0031】本発明においては、まず、前記のメタロセ
ン触媒を用いて得られたプロピレン系重合体を含む紡糸
用成形材料を溶融紡糸してポリプロピレン系未延伸繊維
を作製するが、この際、上記メタロセン触媒を用いて得
られたプロピレン系重合体を主成分とし、すなわち本発
明の目的が損なわれない範囲で、所望により、従来触媒
を用いて得られたプロピレン系重合体をブレンドして紡
糸用成形材料を調製することもできる。
【0032】上記紡糸用成形材料には、所望により、公
知の各種添加成分、例えば酸化防止剤、耐候安定剤、耐
熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッ
キング剤、滑剤、金属不活性化剤、着色剤、難燃剤、核
剤、可塑剤、充填剤などを適宜含有させることができ
る。
【0033】この紡糸用成形材料は、例えばメタロセン
触媒を用いて得られたプロピレン系重合体および所望に
より用いられる従来触媒を用いて得られたプロピレン系
重合体や各種添加成分を、ヘンシェルミキサー、Vブレ
ンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダーなど
で混合したのち、単軸押出機、多軸押出機、ニーダ、バ
ンバリーミキサーなどの混練機により混練することによ
って調製することができる。
【0034】溶融紡糸法については特に制限はなく、従
来ポリプロピレン系繊維の製造において慣用されている
溶融紡糸法を用いることができる。例えば、前記紡糸用
成形材料を用い、押出機と紡糸用ノズルを備えた紡糸装
置により、紡糸することによって、ポリプロピレン系未
延伸繊維が得られる。
【0035】この際、紡糸温度および紡糸速度として
は、特に制限はなく、使用するプロピレン系重合体の溶
融温度やその他物性などに応じて適宜選定されるが、一
般的には、紡糸温度は200〜300℃の範囲で選ば
れ、紡糸速度は200〜4000m/分の範囲で選ばれ
る。このようにして紡糸されたポリプロピレン系未延伸
繊維の太さは、通常5〜70デシテックス(dTex)
の範囲である。
【0036】同一の紡糸用ノズルを用いた場合、紡糸速
度が速くなるほど、繊維太さ(デニール)は小さくなる
ことが知られている。本発明で用いるメタロセン触媒に
よるプロピレン系重合体は、従来触媒による結晶性プロ
ピレン系重合体に比べて、紡糸性がよく、高速で細い
(デニールが小さい)繊維を紡糸することができる。
【0037】本発明のポリプロピレン系延伸繊維は、こ
のようにして得られたポリプロピレン系未延伸繊維を延
伸処理してなるものであって、強度[cN/dTex]
/延伸倍率[倍]比が1.4以上であるという特徴を有
している。すなわち、低い延伸倍率でも高い強度を有し
ている。これに対し、従来触媒を用いて得られた結晶性
ポリプロピレン系延伸繊維は、強度[cN/dTex]
/延伸倍率[倍]比が1.4未満である。したがって、
同一強度の延伸繊維を得る場合、本発明の延伸繊維で
は、従来の延伸繊維よりも、低い延伸倍率でよいので、
延伸装置にかかる負荷が小さく、工業的に有利である。
【0038】本発明のポリプロピレン系延伸繊維におい
ては、繊維強度は8.8cN/dTex以上、特に9.
7cN/dTex以上であるのが好ましい。また延伸性
は、同一のプロピレン系重合体の場合、繊度の小さい未
延伸繊維ほど劣り、延伸倍率限度(λmax)が低下する
ので、本発明のポリプロピレン系延伸繊維における延伸
倍率は、未延伸繊維の繊度に応じて、適宜選定される。
未延伸繊維の繊度は、前記したように、同一の紡糸用ノ
ズルで紡出量が同一の場合、紡糸速度が速くなるほど小
さくなるので、生産性および繊維強度などを考慮する
と、本発明の延伸繊維の延伸倍率は、2〜10の範囲が
好ましく、特に3〜7.5の範囲が好ましい。
【0039】本発明においては、繊維基材として用いら
れるメタロセン触媒によるプロピレン系重合体は、アイ
ソタクチックペンタッド分率(IPF)が比較的低いに
もかかわらず、従来触媒を用いて得られた高IPFを有
するプロピレン系重合体に匹敵する繊維強度をもつポリ
プロピレン系延伸繊維を得ることができる。具体的な例
を挙げて説明すると、メタロセン触媒を用いて得られた
IPF93.0%のプロピレン系重合体を基材とする3
3.3dTexの未延伸繊維を、後述の水蒸気延伸処理
法にて延伸倍率6.5で延伸処理した場合、延伸繊維の
強度は10.5cN/dTexであり、強度/延伸倍率
比は1.62である。
【0040】これに対し、従来触媒を用いて得られたI
PF97.5%のプロピレン系重合体を基材とする3
3.3dTexの未延伸繊維を、上記と同様に水蒸気延
伸処理法にて延伸倍率10.0で延伸処理した場合、延
伸繊維の強度は9.5cN/dTexであり、強度/延
伸倍率比は0.95である。
【0041】また、従来触媒を用いて得られ、かつIP
Fが上記メタロセン触媒によるものとほぼ同じである9
3.6%のプロピレン系重合体を基材とする33.3d
Texの未延伸繊維を、上記と同様に水蒸気延伸処理法
にて延伸倍率8.0で延伸処理した場合、延伸繊維の強
度は8.6cN/dTexであり、強度/延伸倍率比は
1.08である。
【0042】本発明のポリプロピレン系延伸繊維におい
ては、一般に、ヤング率は38cN/dTex以上であ
り、伸度は15〜35%の範囲である。従来のチーグラ
ーナッタ触媒によるアイソタクチックポリプロピレンを
使用した水蒸気延伸では、伸度が20%以下に低下する
のに対して、メタロセン触媒によるアイソタクチックポ
リプロピレンでは伸度が大きくなるため、タフネス、衝
撃強さ、結節・引掛強さを必要とするロープ、織布ある
いはネット等の用途には好ましい性質を有している。ま
た、繊度は、延伸繊維の使用目的によって適宜選定され
るが、通常1〜30デシテックス(dTex)、好まし
くは2〜20デシテックス(dTex)の範囲である。
【0043】このような物性を有する本発明のポリプロ
ピレン系延伸繊維は、以下に示す本発明の方法により、
効率よく製造することができる。本発明の方法において
は、メタロセン触媒を用いて得られたプロピレン系重合
体を基材とする前記ポリプロピレン系未延伸繊維を、水
蒸気により直接加熱して延伸処理(以下、水蒸気延伸処
理と称すことがある。)することにより、目的のポリプ
ロピレン系延伸繊維を製造する。
【0044】ここで、水蒸気延伸処理するには、例えば
下記の延伸装置を用い、該ポリプロピレン系未延伸繊維
を延伸処理する方法を採用することができる。すなわ
ち、延伸装置として、未延伸繊維を導入するための未延
伸繊維導入孔と延伸繊維を引き出すための延伸繊維引き
出し孔を有する気密性容器からなり、かつ絶対圧が好ま
しくは200kPa以上の加圧飽和水蒸気を充填した延
伸槽が用いられる。この延伸槽においては、未延伸繊維
導入孔および延伸繊維引き出し孔には、それぞれ延伸槽
内の加圧水蒸気が洩出するのを防止するために、加圧水
を利用した漏出防止機構が設けられている。
【0045】まず、ポリプロピレン系未延伸繊維を、未
延伸繊維導入孔に設けられた漏出紡糸機構における加圧
水中に導き、該未延伸繊維の表面に水分を付着させたの
ち、これを未延伸繊維導入孔から延伸槽内に導き、延伸
処理する。この際、ポリプロピレン系未延伸繊維が水中
を通過するのに要する時間は、概ね0.1秒以上とする
のが有利である。
【0046】延伸処理された繊維は、延伸繊維引き出し
孔から引き出されて、該引き出し孔に設けられた漏出紡
糸機構における加圧水中に導かれ、速やかに冷却され
る。この際、延伸繊維が水中を通過するのに要する時間
は、概ね0.2秒以上とするのが有利である。
【0047】上記延伸処理には、通常絶対圧200kP
a以上の加圧飽和水蒸気(温度約120℃以上)が用い
られる。この加圧飽和水蒸気の絶対圧が200kPa未
満では、延伸温度が約120℃未満と低いので、高倍率
延伸および高速延伸を行うことが困難となり、実用的で
ない。また、加圧飽和水蒸気の圧は、ポリプロピレン系
繊維が軟化しない範囲であれば、高い方が基本的には好
ましいが、あまり高すぎると延伸装置の設備費が高くつ
き、経済的に不利となる。延伸倍率、延伸速度および経
済性などを考慮すると、この加圧飽和水蒸気の好ましい
絶対圧は300kPa(温度133℃)〜500kPa
(温度152℃)の範囲であり、特に350kPa(温
度139℃)〜450kPa(温度148℃)の範囲が
好適である。延伸倍率は、前述したように、未延伸繊維
の繊度に応じて適宜選定されるが、2〜10の範囲が好
ましく、特に3〜7.5の範囲が好ましい。延伸速度
は、一般に50〜200m/分程度である。
【0048】なお、ポリプロピレン系未延伸繊維を、上
記のようにして水蒸気延伸処理する場合、通常所望本数
の未延伸糸を集めて繊維束としたものが延伸処理され
る。
【0049】このようにして、ポリプロピレン系未延伸
繊維を水蒸気延伸処理することにより、通常の加熱延伸
処理に比べて、繊維強度の高いポリプロピレン系延伸繊
維が得られる。
【0050】前記水蒸気延伸処理に用いられる延伸装置
の具体例としては、以下に示す構造のものを挙げること
ができる。すなわち、未延伸繊維を導入するための未延
伸繊維導入孔と延伸繊維を引き出すための延伸繊維引き
出し孔を有する気密性容器からなり、かつ延伸媒体とし
て加圧飽和水蒸気が充填されている延伸槽部と、当該延
伸槽部における上記未延伸繊維導入孔側に密接配置され
ている第1の加圧水槽部と、前記の延伸槽部における延
伸繊維引き出し孔側に密接配置されている第2の加圧水
槽部と、前記第1の加圧水槽部の外側から当該第1の加
圧水槽部内,前記の未延伸繊維導入孔,前記の延伸槽部
内,前記の延伸繊維引き出し孔および前記第2の加圧水
槽部内を経由して前記第2の加圧水槽の外へ未延伸繊維
乃至は延伸繊維を導くことができるように前記第1の加
圧水槽部および前記第2の加圧水槽部それぞれに形成さ
れている透孔と、前記第1の加圧水槽部内に未延伸繊維
を送り込むための未延伸繊維送出機構と、この送出機構
による未延伸繊維の送り込み速度よりも高速で前記第2
の加圧水槽部から延伸繊維を引き出すための延伸繊維引
き出し機構とを有している延伸装置が挙げられる。
【0051】上記の延伸槽部は、所望の絶対圧(好まし
くは、200kPa以上)を有する加圧飽和水蒸気を延
伸媒体として使用し得るだけの気密性および強度を有
し、かつ、所望の大きさ(長さ)を確保できるものであ
ればよい。
【0052】また、上記第1の加圧水槽部は、延伸槽部
に形成されている未延伸繊維導入孔から加圧飽和水蒸気
が延伸槽部の外に漏出するのを防止するためのものであ
ると同時に、未延伸繊維を加圧水中に導いて当該未延伸
繊維の表面に水分を付着させるためのものであり、当該
第1の加圧水槽部には延伸槽部内の加圧飽和水蒸気と同
等乃至は僅かに高い絶対圧を有する加圧水が貯留され
る。一方、上記第2の加圧水槽部は、前記の延伸繊維引
き出し孔から加圧飽和水蒸気が延伸槽部の外に漏出する
のを防止するためのものであると同時に、延伸繊維引き
出し孔から引き出された延伸繊維を加圧水中に導いて冷
却するためのものであり、当該第2の加圧水槽部内にも
延伸槽部内の加圧飽和水蒸気と同等乃至は僅かに高い絶
対圧を有する加圧水が貯留される。これら第1の加圧水
槽部および第2の加圧水槽部は、それぞれ延伸槽部の外
側に配置されている。
【0053】延伸槽部,第1の加圧水槽部および第2の
加圧水槽部は、それぞれ別個に形成されたものをこれら
が所定の関係となるように密接配置したものであっても
よいし、単一の容器または筒体を所定間隔で仕切ること
によって形成されたものであってもよい。また、延伸槽
部と第1の加圧水槽部とは、これらの間の隔壁を共有す
るものであってもよい。同様に、延伸槽部と第2の加圧
水槽部とは、これらの間の隔壁を共有するものであって
もよい。
【0054】未延伸繊維は、第1の加圧水槽部の外側か
ら当該第1の加圧水槽部内を経由して上記の未延伸繊維
導入孔から延伸槽部内に入る。したがって、第1の加圧
水槽部の容器壁の所望箇所には、未延伸繊維を第1の加
圧水槽部内に引き込むための透孔(以下「透孔A」とい
う。)および未延伸繊維を第1の加圧水槽部から引き出
すための透孔(以下「透孔B」という。)が設けられて
いる。
【0055】同様に、延伸槽部内に送り込まれた未延伸
繊維が延伸されたことによって生じた延伸繊維は、延伸
槽部に設けられている上記の延伸繊維引き出し孔から第
2の加圧水槽部内を経由して当該第2の加圧水槽部の外
へ引き出されなければならないので、第2の加圧水槽部
の容器壁の所望箇所には、前記の延伸繊維を延伸槽部内
から第2の加圧水槽部内に引き込むための透孔(以下
「透孔C」という。)および前記の延伸繊維を第2の加
圧水槽部内から引き出すための透孔(以下「透孔D」と
いう。)が設けられている。
【0056】上記の未延伸繊維導入孔,延伸繊維引き出
し孔,透孔A,B,C,D、特に透孔B,Cは、これら
の孔を未延伸繊維または延伸繊維が通過する際に当該未
延伸繊維または延伸繊維と容器壁との接触が起こらない
ように形成されていると共に配置されていることが好ま
しく、また、これらの孔から延伸槽部内の加圧飽和水蒸
気ができるだけ噴出しないように設計されていることが
好ましい。
【0057】上記の延伸装置を構成している未延伸繊維
送出機構は、未延伸繊維を第1の加圧水槽部内へ一定の
速度で送り込むためのものであり、この送出機構は第1
の加圧水槽部の外側に設けられている。また、延伸繊維
引き出し機構は、第2の加圧水槽部を経由してきた延伸
繊維を未延伸繊維送出機構による未延伸繊維の送り込み
速度より高速で第2の加圧水槽部から一定の速度の下に
引き出すためのものであり、これによって、主として延
伸槽部内で未延伸繊維が延伸される。当該延伸繊維引き
出し機構は第2の加圧水槽部の外側に設けられている。
【0058】未延伸繊維送出機構による未延伸繊維の送
り込み速度と延伸繊維引き出し繊維による延伸繊維の引
き出し速度とは、所望の生産速度の下に所定の延伸倍率
の延伸繊維が得られるように適宜選択される。未延伸繊
維送出機構および延伸繊維引き出し機構としては、従来
延伸処理に使用されている各種のローラを用いることが
できる。
【0059】本発明のポリプロピレン延伸繊維を製造す
るにあたって上述した延伸装置を用いれば、目的とする
延伸繊維を工業的に容易に得ることができる。なお、上
述した延伸装置を構成している第1の加圧水槽部に形成
されている前記の透孔Aから当該第1の加圧水槽部内の
加圧水が漏出することを抑制するうえからは、透孔Aを
水没させることによって当該透孔Aからの漏水を緩和さ
せる緩衝水槽部を第1の加圧水槽部の外側に設けること
が好ましい。同様に、第2の加圧水槽部に形成されてい
る前記の透孔Dから当該第2の加圧水槽部内の加圧水が
漏出することを抑制するうえからは、透孔Dを水没させ
ることによって当該透孔Dからの漏水を緩和させる緩衝
水槽部を第2の加圧水槽部の外側に設けることが好まし
い。
【0060】本発明のポリプロピレン系延伸繊維は、フ
ィラメント、ショートカットチョップおよびステープル
ファイバーのいずれの繊維形態を有するものであっても
よい。
【0061】本発明のポリプロピレン系延伸繊維は様々
な用途に用いることができる。具体的には、繊維形態を
フィラメントとした場合、例えば織布タイプのフィルタ
ー(ろ材),筒体ケースに繊維を直接ワインディングし
たカートリッジタイプのフィルター(ろ材),編み加工
したネット(建築用),織り加工したシート(建築用シ
ート基材),ロープ,ベルト等の材料繊維として利用す
ることができる。また、繊維形態をショートカットチョ
ップとした場合、例えば自動車タイヤ用補強繊維,コン
クリート用補強繊維、抄紙不織布用繊維等として利用す
ることができる。そして、繊維形態をステープルファイ
バーとした場合、例えば自動車用フロアーカーペット,
2次電池用のセパレータ,フィルター(ろ材)、フエル
トマット等として使用される不織布の材料繊維として利
用することができる。
【0062】本発明はまた、前述の本発明のポリプロピ
レン系延伸繊維を含む不織布をも提供するものである。
本発明のポリプロピレン系延伸繊維を不織布化する場
合、その方法としては、特に制限はなく、従来公知の方
法を用いることができる。まず、本発明のポリプロピレ
ン系延伸繊維を、通常用いられているローラーカード、
フラットカード等のカード機を用いて、また抄紙法、エ
アレイ法などの常法によりウェッブを作製する。ウェッ
ブからの不織布の製造は、目的とする不織布の用途等に
応じて熱融着法、ウォータージェット法、ニードルパン
チ法などの従来公知の方法を適宜選択して行えばよい。
【0063】このようにして得られた不織布は、用途に
よっては、例えば電池用セパレータなどとして用いる場
合には、親水性を有するものが望まれることがあり、公
知のビニル系モノマーのグラフト重合などの親水性付与
処理を適用することができる。
【0064】
【実施例】次に、本発明を実施例により、さらに詳細に
説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定
されるものではない。なお、未延伸繊維および延伸繊維
の物性は、下記の方法により測定した。
【0065】(1) 繊度(dTex) JIS L 1015の振動法により測定した。 (2) 繊維強度,ヤング率,伸度 JIS L 1015によりつかみ間隔20mm,引張速
度20mm/分の定速伸長形条件で単繊維について引張
破断試験を行って測定した。
【0066】(3) 熱収縮率 (i) マルチフィラメント及びチョップドストランド:J
IS L 1013の熱収縮率(B法)に基き温度140
℃のオーブン乾燥機を用いて測定した。なお、チョップ
ドストランドについては、定長カット前、即ちマルチフ
ィラメント状態で測定した値を熱収縮率とした。 (ii) ステープルファイバー:JIS L 1015の熱
収縮率(空間距離は20mm)により、温度140℃の
オーブン乾燥機を用いて測定した。
【0067】製造例1 (1)メタロセン系遷移金属化合物のrac−ジメチル
シリレン−ビス(2−エチル−4,5−ベンズインデニ
ル)ジルコニウムジクロリドの合成 特開平6−184179号公報、特開平7−19673
4号公報に記載の方法に基づき、下記のようにして合成
した。
【0068】(i) ジエチル−エチル(2−ナフチルメチ
ル)マロネート(I)の合成 7.36g(320mmol)のナトリウムを200ミ
リリットルの無水エタノール中に加熱下に溶解したの
ち、58.1ミリリットル(310mmol)のジエチ
ルエチルマロネートを室温で滴下した。300ミリリッ
トルのエタノールに64g(310mmol)の2−ブ
ロモナフタレンを溶解した溶液を0℃でゆっくり滴下
し、反応混合物を還流下に5時間加熱した。氷水にこれ
を注ぎ、酢酸エチルで抽出したのち、有機相を無水硫酸
ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去した。油状残渣にヘキ
サン50ミリリットルを加え0℃に冷却することにより
(I)が固体として71.2g得られた。(収率70
%)
【0069】(ii) 2−エチル−3−ナフチルプロピオ
ン酸(II)の合成 水100ミリリットルに33.8g(603mmol)
の水酸化カリウムを溶解した溶液を、エタノール150
ミリリットル中で49.3g(150mmol)の化合
物(I)に滴下し、反応混合物を4時間加熱還流した。
溶媒を留去した後、得られた固体に酢酸エチル、水を加
え塩酸でpH1に調整した。無水硫酸マグネシウムで乾
燥後、有機相の溶媒を留去したのち、残渣にヘキサンを
加え撹拌した。得られた褐色固体をフラスコにとり、1
75℃に気体の発生が終了するまで加熱を行ったのち、
室温まで冷却すると褐色固体30gが得られた。(収率
87%)
【0070】(iii) 2−エチル−6,7−ベンズインダ
ン−1−オン(III)の合成 化合物(II)30g(131mmol)にチオニルクロ
リド29ミリリットルを添加し、混合物を30分間加熱
還流した。その後、過剰のチオニルクロリドを減圧下に
留去したのち、残渣に塩化メチレン50ミリリットルを
加えた。この溶液を100ミリリットルの塩化メチレン
に三塩化アルミニウム35g(262mmol)を懸濁
させた溶液にゆっくり滴下し、滴下終了後さらに30分
間加熱還流した。これを氷の上に注ぎ塩化メチレンで抽
出したのち、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶
媒を留去した。黒褐色油状物をシリカゲルカラムクロマ
トグラフィー処理(展開溶媒ヘキサン/酢酸エチル 体
積比=8:2)することにより、化合物(III)11.
3gを得た。(収率41%)
【0071】(iv) 2−エチル−4,5−ベンズインデ
ン(IV)の合成 400ミリリットルのテトラヒドロフラン(THF)/
メタノール混合溶媒(体積比2:1)に11.3g(5
3.7mmol)のインダノン(III)を溶解させ、こ
こへ3.0g(80.5mmol)の水素化硼素ナトリ
ウムを少量づつ添加した。さらに反応混合物を室温で1
2時間撹拌したのち、この溶液を氷の上に注ぎさらに塩
酸を加えた。エーテルで抽出し、有機相を水で洗浄後、
無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去した後、橙
色油状物を300ミリリットルのトルエンに溶解し、こ
の溶液を0.77g(4.26mmol)のp−トルエ
ンスルホン酸と一緒に15分間80℃に加熱した。室温
に戻し水で数回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、
溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラ
フィー処理(展開溶媒ヘキサン/ジエチルエーテル 体
積比=20:1)することにより、化合物(IV)を無色
油状物として6.2g得た。(収率59%)
【0072】(v) ジメチルビス(2−エチル−4,5−
ベンズインデニル)シラン(V)の合成 6.2g(31.7mmol)のインデン(IV)をTH
F50ミリリットルに溶解し、ここへn−ブチルリチウ
ム20.7ミリリットル(31.7mmol、1.53
モル/リットル ヘキサン溶液)を滴下したのち、反応
混合物を1時間加熱還流した。この溶液を10ミリリッ
トルのTHFに1.93g(15mmol)のジメチル
ジクロロシランを加えた溶液に滴下し、6時間加熱還流
した。反応溶液を加水分解しエーテルで抽出したのち、
有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し溶媒を留去した。
残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー処理(展開
溶媒ヘキサン/酢酸エチル(3%))することにより、
化合物(V)2.8gを得た。(収率40%)
【0073】(vi) rac−ジメチルシリレン−ビス
(2−エチル−4,5−ベンズインデニル)ジルコニウ
ムジクロリド(VI)の合成 2.8g(6.3mmol)の化合物(V)にTHF2
0ミリリットルを加え、ここへn−ブチルリチウム1
0.3ミリリットル(15.8mmol、1.53モル
/リットル ヘキサン溶液)を滴下した。反応混合物を
室温で12時間撹拌したのち、溶媒を留去後、残渣をヘ
キサンで洗浄した。得られた粉末を減圧下乾燥したの
ち、ここを塩化メチレン25ミリリットルに懸濁させ、
ここへ25ミリリットルの塩化メチレンに懸濁させた四
塩化ジルコニウム1.5g(6.3mmol)を添加し
た。反応混合物を室温で12時間撹拌後、溶媒を留去し
残渣をトルエン20ミリリットルで抽出した。トルエン
抽出の残留物を塩化メチレンで抽出し、この抽出液を濃
縮して冷蔵することにより、1.3gのメタロセン系遷
移金属化合物(VI)を得た。(収率35%)
【0074】(2)担持触媒の調製 シリカ(富士シリシア化学社製、商品名:P−10)2
7.1gを500ミリリットルシュレンクにとり、減圧
下、200℃で4時間加熱処理して、焼成シリカ25.
9gを得た。この焼成シリカを、ドライアイス/メタノ
ール浴で−78℃に冷却したトルエン400ミリリット
ル中に投入して撹拌した。
【0075】次いで、撹拌状態で、この懸濁液中に、
1.5モル/リットル濃度のメチルアルミノキサン/ト
ルエン溶液145.5ミリリットルを1時間かけて滴下
ロートにより滴下した。この状態で4.0時間放置した
のち、−78℃から20℃まで6.0時間で昇温し、さ
らにこの状態で4.0時間放置した。その後、20℃か
ら80℃まで1.0時間で昇温し、80℃で4.0時間
放置することにより、シリカとメチルアルミノキサンの
反応を完了させた。
【0076】次に、この懸濁液を60℃でろ過して得ら
れた固形物を60℃、400ミリリットルのトルエンで
2回、60℃、400ミリリットルのn−ヘキサンで2
回洗浄処理したのち、固形物を60℃で4.0時間減圧
乾燥して、シリカ担持メチルアルミノキサン33.69
gを得た。メチルアルミノキサンの担持率は23.12
重量%であった。得られたシリカ担持メチルアルミノキ
サン全量に、n−ヘプタンを加え全容量を500ミリリ
ットルとし、メチルアルミノキサン濃度0.27モル/
リットルの懸濁液を得た。
【0077】(3)プロピレンの重合 撹拌装置付き10リットルステンレス鋼製耐圧オートク
レーブを、80℃に加熱して充分に減圧乾燥したのち、
乾燥窒素で大気圧に戻し、室温まで冷却した。次に、こ
のオートクレーブに、乾燥窒素気流下、乾燥脱酸素n−
ヘプタン6リットル、濃度2.0モル/リットルのトリ
イソブチルアルミニウムのn−ヘプタン溶液3ミリリッ
トルを投入した。15分間撹拌後、上記(2)で得られ
たシリカ担持メチルアルミノキサン10ミリモル(Al
として)と、上記(1)で得られたrac−ジメチルシ
リレン−ビス(2−エチル−4,5−ベンズインデニ
ル)ジルコニウムジクロリド10マイクロモルをトルエ
ン中、室温で5分間予備接触させたのち、投入した。
【0078】その後、400rpmで撹拌を開始し、プ
ロピレンをゲージ圧800kPaで連続的に供給し、温
度を50℃に昇温し、3時間重合を実施した。反応終了
後、未反応のプロピレンを脱圧により除去した。反応混
合物を多量のメタノールに投入してポリプロピレンを沈
殿させ、ろ過乾燥することにより、ポリプロピレンIP
P−1を得た。このポリプロピレンIPP−1の物性を
表1に示す。
【0079】(4)紡糸用成形材料の調製 上記(3)で得られたポリプロピレンIPP−1に、イ
ルガフォス168(酸化防止剤、チバ・スペシャリティ
・ケミカルズ社製、商品名)2000重量ppmおよび
ステアリン酸カルシウム250重量ppmを加え、単軸
押出機(塚田樹機製作所製、TLC35−20型)にて
押出し、造粒することにより、ペレット状の紡糸用成形
材料を調製した。
【0080】製造例2、3 製造例1(3)のプロピレンの重合において、水素を導
入して分子量の調節を行った以外は、製造例1と同様に
して、ポリプロピレンIPP−2(製造例2)およびI
PP−3(製造例3)を得た。これらのポリプロピレン
IPP−2およびIPP−3の物性を表1に示す。
【0081】次に、上記ポリプロピレンIPP−2およ
びIPP−3を用い、製造例1と同様にして、それぞれ
ペレット状の紡糸用成形材料を調製した。
【0082】
【表1】
【0083】(1) 従来品1:従来触媒により得られた
MFR22、分子量分布(Mw/Mn)4.7、IPF
93.6%のアイソタクティックポリプロピレン。 (2) 従来品2:従来触媒により得られたMFR22、
分子量分布(Mw/Mn)3.6、IPF97.5%の
高立体規則性アイソタクティックポリプロピレン。 (3) MFR:ASTM D1238に準拠して、温度
230℃、荷重2.16kgの条件で測定した。 (4) 分子量分布[Mw/Mn]、IPF、立体規則性
分布の広さ[dT]および0℃における溶出成分量の測
定は、明細書本文に記載した方法に従って行った。
【0084】実施例1 (1)ポリプロピレン系未延伸繊維の作製 製造例1で得られた紡糸用成形材料(ポリプロピレン:
IPP−1)を用い、ホール径が0.5mm、ホール数
が120である紡糸用ノズルを備えた溶融紡糸装置によ
って、紡糸温度260℃、紡糸速度300m/分の条件
で溶融紡糸を行い、繊度が33.3dTexのポリプロ
ピレン系未延伸繊維を作製した。
【0085】(2)ポリプロピレン系延伸繊維の製造 まず、中央部に透孔を有するシリコーンゴムパッキンを
筒体の両端および内部(それぞれ4箇所)に配置するこ
とによって延伸槽部,第1の加圧水槽部および第2の加
圧水槽部が形成されており、第1の加圧水槽の外側に未
延伸繊維送出機構としてのローラが、また第2の加圧水
槽の外側に延伸繊維引き出し機構としてのローラがそれ
ぞれ配設されている延伸装置を用意した。
【0086】この延伸装置を用い、延伸槽部に温度13
5℃の加圧飽和水蒸気を充填し、該延伸槽部の内圧より
もわずかに高い圧力の高圧水を第1の加圧水槽部および
第2の加圧水槽部にそれぞれ貯留させたのち、上記
(1)で得られたポリプロピレン系未延伸繊維を、延伸
倍率が6.0倍または6.5倍、延伸繊維引き出し機構
による延伸繊維の引き出し速度が100m/分になるよ
うにして、延伸処理し、ポリプロピレン系延伸繊維を製
造した。このようにして得られたポリプロピレン系延伸
繊維の物性を、紡糸条件および延伸条件と共に表2に示
す。
【0087】
【表2】
【0088】実施例2 実施例1において、紡糸用成形材料として、製造例2で
調製したもの(ポリプロピレン:IPP−2)を用い、
かつ表3に示す紡糸条件および延伸条件を用いた以外
は、実施例1と同様にしてポリプロピレン系延伸繊維を
製造した。その物性を表3に示す。
【0089】
【表3】
【0090】実施例3 実施例1において、紡糸用成形材料として、製造例3で
調製したもの(ポリプロピレン:IPP−3)を用い、
かつ表4に示す紡糸条件および延伸条件を用いた以外
は、実施例1と同様にしてポリプロピレン系延伸繊維を
製造した。その物性を表4に示す。
【0091】
【表4】
【0092】比較例1、2 実施例1において、紡糸用成形材料として、ポリプロピ
レンの従来品1(比較例1)および従来品2(比較例
2)を用い、かつ表5に示す紡糸条件および延伸条件を
用いた以外は、実施例1と同様にしてポリプロピレン系
延伸繊維をそれぞれ製造した。その物性を表5に示す。
【0093】
【表5】
【0094】表1〜表5から分かるように、実施例1〜
3のポリプロピレン系延伸繊維の基材として用いられる
メタロセン触媒によるポリプロピレンIPP−1〜IP
P−3は、アイソタクチックペンタッド分率(IPF)
が93.0%と比較的低いにもかかわらず、従来触媒に
よるIPFが97.5%の従来品2を用いたポリプロピ
レン系延伸繊維(比較例2)に匹敵する繊維強度をもつ
ポリプロピレン系延伸繊維を得ることができる。
【0095】また、実施例1〜3のポリプロピレン系延
伸繊維は、いずれも強度/延伸倍率比が1.4以上であ
るのに対し、比較例1、2のポリプロピレン系延伸繊維
は、いずれも強度/延伸倍率比が1.4未満である。す
なわち、本発明においては、低い延伸倍率でも高い強度
のポリプロピレン系延伸繊維が得られることが分かる。
さらに、実施例で用いたポリプロピレンは、比較例で用
いた従来触媒によるポリプロピレンに比べて紡糸性に優
れることが分かる。
【0096】
【発明の効果】本発明のポリプロピレン系延伸繊維は、
紡糸性の良好なメタロセン触媒によるプロピレン系重合
体を基材とするものであって、比較的低い延伸倍率でも
高い強度を有している。したがって、従来のポリプロピ
レン系延伸繊維よりも、低い延伸倍率でよいので、延伸
装置にかかる負荷が小さく、工業的に有利である。ま
た、本発明のポリプロピレン系延伸繊維は、未延伸繊維
を水蒸気により直接加熱して延伸処理する効果により、
強度が高く、伸度の大きい繊維を効率よく製造すること
ができる。

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 メタロセン触媒を用いて得られたプロピ
    レン系重合体を主成分とする繊維を延伸処理してなり、
    かつ強度[センチニュートン/デシテックス(cN/d
    Tex)]/延伸倍率[倍]比が1.4以上であること
    を特徴とするポリプロピレン系延伸繊維。
  2. 【請求項2】 強度が8.8cN/dTex以上である
    請求項1に記載のポリプロピレン系延伸繊維。
  3. 【請求項3】 ヤング率が38cN/dTex以上で、
    かつ伸度が15〜35%である請求項1または2に記載
    のポリプロピレン系延伸繊維。
  4. 【請求項4】 メタロセン触媒を用いて得られたプロピ
    レン系重合体が、ASTM D1238に準拠して測定
    した温度230℃、荷重2.16kgの条件におけるメ
    ルトフローレートが1〜100g/10分であり、かつ
    ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定
    した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)と
    の比Mw/Mnが3.5以下のものである請求項1、2
    または3に記載のポリプロピレン系延伸繊維。
  5. 【請求項5】 メタロセン触媒を用いて得られたプロピ
    レン系重合体が、アイソタクチックペンタッド分率(I
    PF)85%以上のものである請求項4に記載のポリプ
    ロピレン系延伸繊維。
  6. 【請求項6】 メタロセン触媒を用いて得られたプロピ
    レン系重合体において、昇温分別クロマトグラフィー法
    での測定により求められた溶出曲線から得られる、式
    (I) dT=Tp−T1/5 …(I) [ただし、Tp>T1/5であって、dT(℃):立体規
    則性分布の広さ、Tp(℃):単位温度差当たりの溶出
    ポリマー重量(dW/dT)が最大となる温度、T1/5
    (℃):TpにおけるdW/dTをWpとした場合、溶
    出過程においてdW/dTがWpの1/5となる温度で
    ある。]で示される立体規則性分布の広さdTが、5.
    5℃以下である請求項4または5に記載のポリプロピレ
    ン系延伸繊維。
  7. 【請求項7】 メタロセン触媒を用いて得られたプロピ
    レン系重合体が、昇温分別クロマトグラフィー法での測
    定により求められる温度0℃における溶出量が1.0重
    量%未満のものである請求項4ないし6のいずれか1項
    に記載のポリプロピレン系延伸繊維。
  8. 【請求項8】 請求項1ないし7のいずれか1項に記載
    のポリプロピレン系延伸繊維を含むことを特徴とする不
    織布。
  9. 【請求項9】 メタロセン触媒を用いて得られたプロピ
    レン系重合体を主成分とする繊維を、水蒸気により直接
    加熱して延伸処理することを特徴とする請求項1ないし
    7のいずれか1項に記載のポリプロピレン系延伸繊維の
    製造方法。
  10. 【請求項10】 絶対圧が200kPa以上の加圧飽和
    水蒸気により直接加熱して延伸処理する請求項9に記載
    のポリプロピレン系延伸繊維の製造方法。
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