JP2001113577A - 熱可塑性樹脂成形品の射出成形方法 - Google Patents

熱可塑性樹脂成形品の射出成形方法

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JP2001113577A
JP2001113577A JP30118799A JP30118799A JP2001113577A JP 2001113577 A JP2001113577 A JP 2001113577A JP 30118799 A JP30118799 A JP 30118799A JP 30118799 A JP30118799 A JP 30118799A JP 2001113577 A JP2001113577 A JP 2001113577A
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temperature
resin
mold
cooling
cavity
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JP30118799A
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English (en)
Inventor
Giichi Ito
義一 伊藤
Atsushi Wada
敦 和田
Kazutaka Shirahase
和孝 白波瀬
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sekisui Chemical Co Ltd
Original Assignee
Sekisui Chemical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】後収縮を低減し、結晶化度を制御することがで
きることは勿論のこと、熱収縮と結晶収縮によるヒケ防
止および離型時までの寸法変化を小さくすることがで
き、実用に耐えうる成形品を成形することができる熱可
塑性樹脂成形品の射出成形方法を提供する。 【解決手段】熱可塑性結晶性樹脂を溶融状態にキャビテ
ィ周壁面が結晶化開始温度以上に保持されたキャビティ
内に射出充填し、暫くそのまま保持したのち、矯正型に
よって型締めを行い樹脂を圧縮しつつ、まず、結晶化開
始温度まで急冷し、結晶化開始温度付近で暫く温度保持
しつつ型締めを行い、結晶化を促進したのち、常温まで
冷却するとともに、成形品形状まで圧縮するようにし
た。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は熱可塑性樹脂成形品
の射出成形方法に関し、特に熱可塑性結晶性樹脂(以
下、「結晶性樹脂」とのみ記す)の結晶化度の向上と分
布の均一化を図り、成形品の寸法精度の向上を図り、更
には成形品の離型後に長期にわたり発生する成形品の寸
法収縮(以下「後収縮」という)の低減化を図るもので
ある。
【0002】
【従来の技術】射出成形方法においては、金型のキャビ
ティ内に充填された溶融樹脂がキャビティ内で冷却固化
される過程で樹脂に収縮が生じる。このような収縮の要
因としては、樹脂の温度変化による熱収縮や充填、保圧
時の樹脂流動による残留応力による収縮がある。又、樹
脂が結晶性樹脂の場合には、熱収縮や残留応力による収
縮だけでなく、結晶化に伴う収縮や離型後に長期にわた
り発生する後収縮等もある。
【0003】ところで、これらの収縮要因のうち、成形
品内に存在する残留応力は成形品に歪みを与え、形状安
定性、光学特性に悪影響を及ぼす。又、残留応力は成形
後、徐々に緩和され、それに伴い収縮が生じるので金型
からの離型直後の成形品形状を維持できない問題が生
じ、成形品の寸法精度に悪影響を及ぼす。
【0004】具体的には、配ガス、配水用のポリエチレ
ン管継手等のオレフィン系樹脂製管継手においては、図
13に示すように、成形2週間後の後収縮が0.5%以
上存在し、このため管継手を保管している間に管継手の
寸法が変わり、パイプとの嵌合接合が不可能になること
がしばしば存在する。このように後収縮量が大きい場合
には、成形品寸法が変化し、特に他品との嵌合組み立て
に支障が生じる。
【0005】なお、一般的に使われる「結晶化度」と
は、結晶部の割合が全体のどの程度存在するかを示して
いる。即ち、結晶性樹脂は、溶融状態から冷却固化され
ることにより一部の分子が規則的な3次元構造を形成し
結晶構造となり、全ての分子が結晶構造となることがな
い。このことにより、結晶性樹脂の構造としては、結晶
部と非結晶部(以下、「非晶部」と記す)とに大きく分
けられる。
【0006】結晶性樹脂の結晶化度は、機械的強度,耐
熱性,光透過性,密度等の物性に影響する。例えば、密
度に関しては、結晶部の密度と非晶部の密度の違いか
ら、成形品の結晶化度によりその密度が変わることにな
る。これは同一質量の成形品に対して結晶化度の変化に
よりその寸法が変わることを意味する。
【0007】具体的には、ポリエチレンの場合には、結
晶化度65%と70%における密度はそれぞれ0.94
2g/cm3 、0.950g/cm3 であるが、単純
に、それぞれ同質量、同断面形状の成形品の長さないし
は高さ等の単純な一軸方向の長短を比較した場合には、
結晶化度65%の成形品に対して、結晶化度70%の成
形品は約0.8%短くなる。従って、成形品の寸法精度
向上のためには、狙い通りの結晶化度で成形する必要が
ある。
【0008】又、成形品における結晶化度の分布も考慮
する必要がある。特に、厚みの厚い成形品の場合には、
樹脂の熱伝導率が低いため、成形品の中心部の冷却が表
面部の冷却に比較して遅い。このため、厚さ方向におい
て結晶化度の差異が発生し、成形品内に残留応力が発生
する一因となり、結果として、成形品の寸法精度、形状
安定性に悪影響を与えることとなる。
【0009】ところで、結晶性樹脂の結晶化度は、例え
ば、特開昭60−163604号公報等に記載されてい
るように、溶融状態の樹脂を冷却する際の冷却速度によ
り変化することが知られている。即ち、特開昭60−1
63604号公報に記載の方法では、金型の加熱処理を
行うことにより、少なくとも成形品の一部を部分加熱し
徐冷することにより結晶化度を上げて外観及び強度を向
上させている。
【0010】又、射出成形方法における冷却に関して
は、特開平3−219936号公報等に記載されている
ように、水や油等の冷媒を金型に設けられた冷却管内に
流し、金型のキャビティ周壁面温度を部分的に制御する
ことにより、樹脂の温度分布を最適にする方法が知られ
ている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
特開昭60−163604号公報記載の方法において
は、徐冷により結晶化度が上がることを単純に利用した
だけであり、効率的な方法ではない。
【0012】又、特開平3−219936号公報記載の
方法においては、成形品の取り出し時の温度バランスの
改善や、冷却時間の短縮等にはある程度の効果が期待で
きるものの、金型内樹脂の冷却速度の制御、或いは、時
間軸に対する冷却速度変化を与えることはできない。
【0013】そこで、本発明の発明者等は、上記のよう
な問題を解決するために、射出成形用の金型のキャビテ
ィへの溶融樹脂充填時に金型のキャビティ周壁面の温度
を樹脂の溶融温度付近の温度もしくはそれ以上の温度に
加熱し、樹脂充填する樹脂充填工程と、樹脂充填工程完
了後暫くの間、金型のキャビティ周壁面の温度を樹脂の
溶融温度付近の温度もしくはそれ以上の温度に保持する
温度保持工程と、温度保持工程を経てキャビティ内の成
形品温度が常温になるまで冷却する冷却工程とを備え、
冷却工程を、所定の温度勾配の冷却速度で冷却される第
1段階と、この第1段階の最終温度で温度保持する第2
段階と、第2段階終了後、所定の温度勾配の冷却速度で
冷却する第3段階とから構成し、樹脂充填時の樹脂流動
による剪断応力及び分子もしくは結晶配向を金型内で緩
和し、かつ離型後の成形品の熱収縮を殆ど無くし、成形
後の成形品の収縮を低減させるようにした射出成形方法
(特願平11−266027号参照)を既に提案してい
る。
【0014】即ち、この先に提案した射出成形方法は、
高温の金型に樹脂を充填するとともに、充填後の金型を
温度を高温状態に保つことによって、まず、応力の緩和
を図り、冷却温度を制御することによって結晶化を制御
するようにしたので、後収縮と結晶化度に関して非常に
大きな効果を発揮すると言う優れたものである。
【0015】しかしながら、この方法の場合、後収縮や
結晶収縮に関しては十分な効果を備えているものの、熱
収縮に関して考慮されていなかった。従って、金型寸法
に対しての離型時の収縮量が大きくなると言う問題を残
していた。一方、この問題を解決するために、上記方法
の樹脂充填工程の後に従来から行われている保圧工程を
設け、熱収縮を抑える方法も考えられる。
【0016】しかし、保圧工程では、保圧力を大きくし
たり、保圧時間を長くすることによって、収縮する分を
補充することができるが、成形機のノズル部から溶融樹
脂を注入するので、既に固化しているゾーンまで補償流
動が届かない場合や、ゲート部と流動末端部で温度分布
や剪断応力が却って発生する。これによりゲート近傍で
残留応力がさらに助長され、後収縮が大きくなったり、
温度分布によって冷却速度に差が生じて結晶化度がばら
ついたりして、成形品表面にヒケが発生したりする恐れ
がある。
【0017】従って、本発明は、叙上のような従来の熱
可塑性樹脂成形品の射出成形方法における問題点に鑑み
なされたものであって、その目的とするところは、後収
縮を低減し、結晶化度を制御することができることは勿
論のこと、熱収縮と結晶収縮によるヒケ防止および離型
時までの寸法変化を小さくすることができ、実用に耐え
うる成形品を成形することができる熱可塑性樹脂成形品
の射出成形方法を提供するにある。
【0018】
【課題を解決する手段】本発明は上記目的を達成するべ
くなされたものであって、請求項1記載の本発明に係る
熱可塑性樹脂成形品の射出成形方法(以下、「請求項1
の成形方法」と記す)は、射出成形用の金型のキャビテ
ィへの溶融樹脂充填時に金型のキャビティ周壁面の温度
を樹脂の溶融温度付近の温度もしくはそれ以上の温度に
加熱し、樹脂充填する樹脂充填工程と、樹脂充填工程完
了後暫くの間、金型のキャビティ周壁面の温度を樹脂の
溶融温度付近の温度もしくはそれ以上の温度に保持する
温度保持工程と、温度保持工程を経てキャビティ内の成
形品温度が常温になるまで冷却する冷却工程とを備え、
樹脂充填時の樹脂流動による剪断応力及び分子もしくは
結晶配向を金型内で緩和し、かつ離型後の成形品の熱収
縮を殆ど無くし、成形後の成形品の収縮を低減させるよ
うにした射出成形方法であって、前記キャビティ中で充
填された樹脂を所定方向に圧縮可能な矯正型を有し、得
ようとする成形品の容積より大きい容積にした金型のキ
ャビティ内に溶融樹脂を充填し、温度保持工程から冷却
工程終了までの間で、樹脂の熱収縮および結晶収縮に伴
う体積変化を制御し、後収縮と熱収縮、結晶収縮を同時
に抑えながら徐々に最終成形品になるように矯正型によ
ってキャビティ内の樹脂を所定方向に圧縮するようにし
た。
【0019】請求項2記載の本発明に係る熱可塑性樹脂
成形品の射出成形方法(以下、「請求項2の成形方法」
と記す)は、請求項1の成形方法において、熱可塑性樹
脂として結晶性樹脂を用い、樹脂充填工程での金型のキ
ャビティ周壁面の温度および温度保持工程で金型のキャ
ビティ周壁面の温度を、樹脂の結晶化温度以上にした。
【0020】請求項3記載の本発明に係る熱可塑性樹脂
成形品の射出成形方法(以下、「請求項3の成形方法」
と記す)は、請求項1または請求項2の成形方法におい
て、冷却工程を、速い冷却速度の第1段階と、この第1
段階の冷却速度より遅い冷却速度の第2段階と、第2段
階の冷却速度より速い冷却速度の第3段階とから構成し
た。
【0021】請求項4記載の本発明に係る熱可塑性樹脂
成形品の射出成形方法(以下、「請求項4の成形方法」
と記す)は、請求項1または請求項2の成形方法におい
て、熱可塑性樹脂として結晶性樹脂を用いるとともに、
冷却工程を、所定の温度勾配の冷却速度で結晶化開始温
度まで冷却する第1段階と、この第1段階終了後、結晶
化開始温度に温度保持する第2段階と、第2段階終了
後、所定の温度勾配の冷却速度で冷却する第3段階とか
ら構成した。
【0022】本発明において、結晶性樹脂としては、特
に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレン、ポ
リプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等が使用で
きる。
【0023】射出成形においては、金型のキャビティ内
への樹脂充填及び保圧過程の樹脂流動により分子配向も
しくは結晶配向が生じ、これが寸法精度、形状安定性、
光学特性等における不良に繋がる。結晶性樹脂である高
密度ポリエチレンの場合における配向緩和による収縮の
メカニズムは次のようになる。
【0024】即ち、射出成形品は、図1に示すように、
中央部からキャビティ周壁面に向かって球晶層−微結晶
層−スキン層からなる断面構成を備えているが、このう
ち微結晶層と言われる層は、図2に図1のA部を拡大し
て示すように、球晶のもとになる結晶ラメラ(ラメラ構
造またはラメラ晶とも言う)部と非晶部とが樹脂の流動
方向に交互に並んでいる。従って、この微結晶層の非晶
部に発生する配向が時間をかけて緩和される際に収縮を
起こすと考えられる。
【0025】特に、高密度ポリエチレンの場合は、離型
時の成形品温度を常温になるまで冷却した場合、上記メ
カニズムによる収縮が後収縮の主要因となる。これは、
常温付近の温度域では、結晶部が成長したり、構造を変
えたり、再結晶することが起こり難く、収縮の対象がほ
ぼ非晶部配向緩和となるためである。
【0026】従って、後収縮を低減させるためには、
(1)配向を生じさせないこと、(2)生じた配向は成
形中に緩和させてから離型すること、(3)配向が生じ
るスキン層、微結晶層の量(成形品断面構造における各
層の厚さ)を少なくすること、が重要となる。
【0027】このうち、本発明においては、上記(2)
(3)に関して、少なくともいずれか一方を達成するた
めの手段に関するものである。その技術的ポイントを次
に説明する。
【0028】即ち、上記(2)については、実際に後収
縮の問題が生じているように配向緩和は樹脂としてポリ
エチレンを使用した場合には、常温においても進行す
る。但し、緩和速度は樹脂温度が高いほど大きいので、
緩和促進のためには樹脂温度の高温保持が有効である。
【0029】又、上記(3)については、スキン層、微
結晶層は樹脂がキャビティに充填される際に樹脂と金型
のキャビティ周壁面との接触により急冷されて固化した
部分に生じる。又、これらの層の厚さは、金型温度、特
にキャビティ周壁面の温度が樹脂の固化温度以下であれ
ば、冷却速度が大きいほど、即ちキャビティ周壁面の温
度と充填樹脂温度の差が大きいほど発達すると考えられ
る。従って、樹脂温度とキャビティ周壁面の温度との差
が小さいほど効果がある。
【0030】緩和温度及び保温保持時間については、成
形樹脂における応力緩和特性を予め測定しておき、その
結果から、緩和温度、保温保持時間を算出することが望
ましい。応力緩和と所要時間との関係は図3に示すよう
に、両対数表示において直線的な傾向を示す。従って、
実時間においては、緩和スタート時に大きな緩和効果が
期待でき、それ以降は、緩和時間に対する緩和の効果は
低くなる。応力緩和特性を知ることにより、緩和効果
(後収縮の程度)と生産性を考慮し、緩和温度と時間を
決定し、この間の樹脂温度を結晶化温度以上に保持する
ことにより、効率のよい緩和プロセスを確立することが
できる。
【0031】樹脂の結晶化度は樹脂が固化する環境によ
って変化する。特に溶融状態から固化する際の冷却速度
に依存することが知られている。徐冷の場合、時間をか
けてゆっくり冷却することによって結晶がより多く生成
し、大きく成長するため結晶化度は増加する。逆に、急
冷の場合には過冷却現象が顕著になり、結晶化開始温度
が低温側にシフトするため結晶生成、成長の時間がなく
結晶化度は低下する。
【0032】より詳細には、結晶性樹脂には結晶が生
成、成長する温度域(結晶化温度域)があることが知ら
れている。従って、結晶化度を制御する場合、この結晶
化温度域をどのような冷却速度で冷却するかでほぼ決定
されることになる。従って、急冷の場合においても、徐
冷を適切な温度域で行うことにより、結晶化が促進さ
れ、結晶化度を上げることが可能となり、冷却全行程に
おいて、適切な温度域で行うことにより、本来過冷却に
より結晶化度を上げる場合、冷却工程全体において一定
速度で徐冷する必要はなく、結晶化温度域においての
み、徐冷を行うことにより成形サイクルを無駄に長期化
することなく、効率的に結晶化度の向上が図れる。
【0033】結晶化温度域、結晶化開始温度は上述のよ
うに樹脂が固化する環境(特に冷却速度)によって変化
するが、後述のようにPvT(圧力−比容積−温度)測
定装置により求められるPvT特性や示差走査式熱量計
(以下「DSC」と略記する)による熱量分析等を行う
ことにより知ることができる。
【0034】溶融樹脂はキャビティ内での固化に際し、
キャビティ周壁面と接触している樹脂が最も冷却され
る。このため樹脂温度は成形品の厚み方向に温度分布が
生じる。これは、同時に冷却速度が厚み方向で異なるこ
とを示している。即ち、成形品表面の冷却速度が最も速
く、心部が最も遅いことになる。従って、この冷却速度
の違いが、そのまま結晶化度の違いに繋がる。
【0035】そこで、請求項3の成形方法のように、樹
脂の冷却工程を3段階から構成し、第1段階では冷却速
度を速く、第2段階では冷却速度を遅く、第3段階では
冷却速度を速くすることが好ましいが、その具体的態様
としては、図4の(a)〜(d)で示す態様が考えられ
る。即ち、図4の(a)(c)(d)に示すように、温
度の時間に対する勾配を曲線的に変化させる態様や、図
4の(b)に示すように、温度の時間に対する勾配を直
線的に変化させる態様や、これらを適宜組み合わせて曲
線的変化及び直線的変化を組み合わせた態様が採用でき
る。
【0036】又、図4の(e)(f)に示す請求項4の
成形方法のような特殊な態様、即ち、冷却工程の第2段
階において、一旦、温度を一定とし、暫くその温度を維
持しすることが好ましく、しかも、第2段階の開始温度
を結晶化開始温度付近とすると一層効果的である。
【0037】射出成形における冷却工程において、どの
ような冷却速度パターンで冷却するかは、使用する結晶
性樹脂や狙う結晶化度によって異なる。使用する結晶性
樹脂については、予め冷却速度と結晶化度の関係を把握
する必要がある。冷却速度と結晶化度の関係を把握する
には、種々の冷却速度により固化した樹脂サンプルの結
晶化度をDSC等で測定し、冷却速度と結晶化度の関係
を把握する。又、冷却速度を変更できるDSCやPvT
測定装置を使用すれば、冷却速度によって変化する結晶
化開始温度や結晶化温度域を把握することもできる。特
に広範囲な冷却速度設定が可能なDSCの場合は、実際
に成形する冷却パターンで樹脂サンプルを冷却し、その
温度履歴を与えたサンプルで、結晶化度を測定すること
により、各種冷却パターンにおける結晶化度を把握する
ことができる。
【0038】ここで、結晶化開始温度、もしくは結晶化
温度域は、従来の冷却工程におけるDSCもしくはPv
T測定により得られる結果から判断する。即ち、DSC
使用の場合には、図5に示すように、温度−熱量曲線か
ら、その曲線がベースラインから大きくずれている温度
域が結晶化温度域であり、その中の最大値が結晶化開始
温度となる。又、PvT測定の場合には、図6に示すよ
うに、温度−比容積曲線において、比容積の変化率が最
も大きい温度域が結晶化温度域であり、その中の最大値
が結晶化開始温度となる。
【0039】キャビティ周壁面を樹脂の結晶化温度付近
の温度もしくはそれ以上の温度に加熱保持する手段とし
ては、特に限定されるものではなく、例えば、図7、図
8に示すように、金型1内に電熱ヒータ11を設け、電
熱ヒータ11に通電することにより高温を保持するよう
にしてもよく、或いは、高周波振動や近赤外線を使用し
た昇温手段等が採用できる。
【0040】或いは、又、図8に示す金型1のようにヒ
ータ11を設ける代わりに、図9に示すように、金型1
aに加熱媒体流通管14、15を設け、金型温調器4に
より電磁弁42を備えた管路41により金型1aの加熱
媒体流通管14、15に加熱オイルを供給するようにし
てもよい。
【0041】本発明方法において、冷却速度を変化させ
る手段としては、特に限定されないが、例えば、次の4
方法等が採用できる。 (1)冷媒の流量を変化さる方法。 (2)温度の異なる冷媒を切り換える。 (3)冷媒の通過位置を切り換える。 (4)冷媒による冷却とヒーターによる加熱を組み合わ
せて使用する方法。
【0042】上記(1)の冷媒の流量を変化さる方法と
しては、金型内の冷却管を流れる冷媒の流量を変化させ
ることにより冷却速度を変化させることができる。即
ち、冷媒の流量が多いほど熱輸送効率が上がり、冷却速
度が大きくなる。流量は冷媒の圧送装置を使用すること
により、例えば、0〜20リットル/分の広範囲で流量
を制御する。冷却工程中、手動もしくは制御装置からの
信号に従い、冷却管に設けた流量調節弁の開き量を制御
することにより予め設定したタイミングで、冷却速度を
変化させることができる。
【0043】上記(2)の温度の異なる冷媒を切り換え
る方法においては、図7に示すように、金型温度調節装
置(温調機)2、3を複数台使用し、温度の異なる冷媒
を複数使用する。冷却速度が金型と冷媒の温度差により
変化することを利用し、冷却速度を変化させる。この場
合、温度差が大きいほど冷却速度は速くなる。冷却工程
中、手動もしくは制御装置からの信号に従い、金型温度
調節装置2、3からの管路21、31に設けた電磁弁2
2、32を適宜切り換えて、金型1の冷媒流通管12、
13に供給し、これら冷媒を切り換えることにより、予
め設定したタイミングで冷却速度を変化させることがで
きる。
【0044】場合によっては、冷媒の種類、即ち、チラ
ー、水、油等を変えることにより、更に広範囲(例えば
5〜180℃)の温度設定が可能となる。この方法にお
いては、ギャビティ周壁面の温度を一定温度に保持する
(冷却速度=0)状態、更には、必要であれば冷媒の温
度範囲内で再加熱することも可能である。即ち、図9に
示すように、異なる種類の冷媒のための金型温度調節装
置2、3及び金型温度調節装置4を使用し、金型温度調
節装置2、3、4からの管路21、31、41に設けた
電磁弁22、32、42を適宜切り換えて、金型1の冷
媒流通管12、13、14、15に供給し、これら異な
る種類の冷媒を切り換えることにより金型の温度設定が
可能となる。
【0045】上記(3)の冷媒の通過位置を切り換える
方法においては、キャビティに対する距離が異なるよう
に金型内に配置された冷却管に冷媒を選択的に流すこと
により、キャビティと冷媒との距離が伝熱効率に影響す
ることを利用して冷却速度を変えることができる。この
場合、キャビティと冷却管との距離が短いほど冷却速度
は速くなる。冷却工程中、手動もしくは制御装置からの
信号に従い、冷媒を流す流路を切り換えることにより、
予め設定したタイミングで、冷却速度を変化させること
ができる。
【0046】上記(4)の冷媒による冷却とヒーターに
よる加熱を組み合わせて使用する方法においては、図7
に示すように、金型1に冷媒を通す冷却管12、13と
加熱ヒーター11を設け、冷媒による冷却速度を加熱ヒ
ーター11によって調整することにより、冷却速度を変
化させることができる。
【0047】或いは、図9に示すように、金型温度調節
装置2、3及び金型温度調節装置4を使用し、金型温度
調節装置2、3により冷媒を金型1の冷媒流通管12、
13に供給し、他方の金型温度調節装置4により加熱媒
体を金型1の加熱媒体流通管11に供給するようにして
もよい。
【0048】冷却工程中、手動もしくは制御装置からの
信号に従い、加熱ヒーターをオン/オフさせることによ
り、予め設定したタイミングで、冷却速度を変化させる
ことができる。この方法においては、キャビティ周壁面
の温度を一定に保持する(冷却速度=0)状態、更に、
必要であれば冷媒の温度範囲内で再加熱することもでき
る。
【0049】上記の4方法をそれぞれ単独に使用しても
よく、これらを適宜組み合わせた方法によってもよく、
組み合わせた方法によれば、更に制御範囲、或いは制御
パターンを拡大することができる。尚、加熱ヒーターに
ついては、特に限定されないが、例えば、シーズヒータ
ーや赤外線等の加熱手段等が使用できる。
【0050】又、冷却速度の制御手段としては、キャビ
ティ周壁面、又はキャビティ周壁面に接触している樹脂
の温度、もしくは成形サイクル中の経過時間において判
断し、制御するようにしてもよい。
【0051】最も単純な制御手段としては、予め必要な
冷却速度について、上記の4つの冷却速度可変方法の設
定値を調べておき、成形サイクル中の経過時間(例え
ば、樹脂充填開始、冷却開始からの経過時間)におい
て、設定値を手動もしくはタイマー制御で切り換えてい
く方法によってもよい。この方法においては、事前に設
定値を導出しておけば、実際の成形においては、必ずし
もキャビティ周壁面温度もしくは樹脂温度を測定する必
要はない。但し、雰囲気温度や成形条件の変動等の外乱
により実際の冷却パターンと狙いのパターンが多少ずれ
る可能性があることに注意すべきである。
【0052】冷却速度をより正確に制御するには、金型
にはキャビティ周壁面、もしくはキャビティ周壁面に接
触している樹脂の温度を随時測定するセンサーを設置し
て冷却速度を制御する必要がある。センサーからの測定
データは制御部に送られ、測定間隔に対する温度勾配よ
り時々刻々の冷却速度を計算し、予め設定した冷却速度
となるように、冷却速度を制御する。
【0053】第2段階において、一定温度を保持する場
合には、冷却パターンとして設定された時間、設定温度
を保持するように制御するとよい。
【0054】又、本発明において、冷却工程時に冷却に
伴い樹脂の熱収縮および結晶収縮に伴う体積変化を制御
し、後収縮と熱収縮、結晶収縮を同時に抑えるように徐
々に矯正型で最終成形品になるようにキャビティ内の樹
脂を圧縮するようにしているが、この圧縮行程を加える
ことにより、肉厚方向に均一に圧縮することができ、さ
らなる剪断応力や温度分布が発生しないで、収縮分を補
う効果が得られる。矯正型は、特に限定されないが、突
出し機構を突きだし機構を利用して駆動させる方式や外
部の油圧ユニットを用いて駆動させる方式がある。
【0055】又、この圧縮時の肉厚の制御方式を図10
に示す。本発明の場合、充填完了後、応力緩和を行い温
度分布や圧力分布も平滑化されるので、圧縮工程で瞬時
に高圧に圧縮することは、圧力向上や発熱現象が起こり
好ましくない。
【0056】理想的には樹脂が収縮する工程にあわせ
て、金型が賦型していくことである。よって、本発明に
おける肉厚制御(金型開閉の厚み制御)は、図10のよ
うに、初期に樹脂の収縮分を考慮した寸法の厚みに充填
し、その後、結晶収縮が生じないで熱収縮のみがが生じ
る冷却工程の第1段階では、熱収縮分の厚みだけ移動さ
せ、結晶収縮が起こる第2段階では、より大きな収縮が
起こるので、厚みの移動量も大きくし、逆に第3段階で
は、熱収縮分のみの変形になるので移動も小さくする。
又、第3段階では成形品が固化するゾーンでもあるの
で、逆に第2段階で過圧縮状態(高圧下)で移動させ
て、PvT曲線の圧力シフトを利用する方法でもよい。
【0057】又、これらの厚みの移動量の切換時期に関
しては、成形品の温度をセンサーなどで逐次計測してお
き、ある温度にくれば移動量を変化させる方式や時間で
あらかじめ設定しておく方式、さらには内部に取り付け
た圧力センサーにより、圧力値が一定となるように移動
量を調整する方式などがとれる。
【0058】
【発明の実施の形態】以下に、本発明を、その実施の形
態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。図11
および図カは、本発明にかかる熱可塑性樹脂成形品の射
出成形方法の1つの実施の形態をあらわしている。
【0059】図11および図カを用いてこの成形方法を
説明すると、以下のようになる。 図11(a)に示すように、可動型51が矯正型に
なった金型5のキャビティ52の周壁面52aを結晶性
熱可塑性樹脂の結晶化温度以上に保持した状態にすると
ともに、収縮分を考慮して得ようとする成形品の厚みよ
り厚いキャビティ容積となるような型開き量に可動型5
1のセットする。
【0060】 図11(a)に示すように、キャビテ
ィ52内に溶融樹脂を充填する。 図カに示すように、充填完了後、充填時の流動によ
る剪断応力及び分子もしくは結晶配向が十分緩和するま
での間、少なくともキャビティ52の周壁面52aを結
晶性熱可塑性樹脂の結晶化温度以上に保持する(温度保
持工程)。
【0061】 図11(b)および図カに示すよう
に、可動型51を固定型53方向に徐々に移動させ、キ
ャビティ52内の樹脂に圧縮を加えつつ、キャビティ5
2の周壁面52aの温度を速い速度で結晶化開始温度ま
で冷却する(冷却工程の第1段階)。なお、可動型51
は、キャビティ52内の樹脂の収縮に合わせた移動速度
で移動させるようになっている。 図カに示すように、冷却工程の第1段階終了後、可
動型51をさらに固定型53方向に徐々に移動させなが
ら、結晶化開始温度に温度保持する(冷却工程の第2段
階)。なお、可動型51は、キャビティ52内の樹脂の
収縮に合わせた移動速度で移動させるようになってい
る。
【0062】 図カに示すように、冷却工程の第2段
階終了後、キャビティ容積が成形品容積になるまで可動
型51をさらに固定型53方向に徐々に移動させなが
ら、キャビティ52の周壁面52aの温度を樹脂の固化
温度まで冷却する。なお、可動型51は、キャビティ5
2内の樹脂の収縮に合わせた移動速度で移動させるよう
になっている。 図11(c)に示すように、金型5を開き、成形品
6を取り出す。
【0063】この成形方法は、以上のように、キャビテ
ィ52内に溶融樹脂を充填完了後、充填時の流動による
剪断応力及び分子もしくは結晶配向が十分緩和するまで
の間、少なくともキャビティ52の周壁面52aを結晶
性熱可塑性樹脂の結晶化温度以上に保持するようにした
ので、スキン層、微結晶層の成長を抑えるとともに、樹
脂の剪断流動によるヒズミを緩和し、冷却工程で生じる
樹脂の結晶化の時までに配向、残留応力(ひずみ)を発
生させる要因を取り除くことができる。そして、冷却工
程で、第1段階で速い冷却速度で結晶化開始温度付近ま
で冷却し、第2段階で結晶化開始温度付近で温度維持し
てように冷却速度を3 段階(速い−遅い−速い)に切り
替えることを特徴とする冷却工程を経て、成形品温度が
常温になるまで冷却することにより、結晶化度を上げる
ことができる。従って、応力緩和による収縮、および後
収縮を防止することができる。
【0064】しかも、金型5に組み込んだ可動型を用い
て樹脂を圧縮する工程を加えるようにしたので、肉厚方
向に均一に圧縮することができ、さらなる剪断応力や温
度分布が発生しないで、収縮分を補う効果が得られる。
即ち、結晶化度を上げ、均一な結晶化度分布を持った成
形品を成形し、離型後の熱収縮を無くし、成形後の成形
品の収縮を低減させ、成形サイクルの長期化を防止する
ことができる。
【0065】又、この時に保圧工程をなくすことにより
発生するヒケや熱収縮に関しては、圧縮工程を設けるこ
とにより後収縮や結晶収縮ムラの原因になる剪断応力や
温度分布・圧力分布を発生することなく、樹脂の収縮挙
動にあわせて矯正型を移動して成形品肉厚を変化させる
ので、金型寸法に対する離型時の成形品寸法も向上し、
その後の後収縮も防止できる。又、充填時の肉厚を大き
くすることにもなるので、剪断応力の発生量も小さく後
収縮の防止にも効果を発揮することになる。
【0066】さらに、金型5を成形品となるキャビティ
厚みより開いた状態で溶融樹脂を充填できるので、充填
時の剪断応力が低減できる。
【0067】
【実施例】以下、本発明の実施の形態を実施例により具
体的に説明する。
【0068】(実施例1)図12に示すように、引張り
試験用の1号形試験片(JIS−K7113準拠)に対
応しL方向の寸法が175.0mmのキャビティ52を
有し、図11に示すような可動型51が矯正型として働
くとともに、圧縮方向に型締め可能な金型5を用い、厚
みがキャビティ深さで3mmの結晶性樹脂としての高密
度ポリエチレン(結晶化開始温度:117℃、結晶化温
度:108℃(いずれも冷却速度200℃/分)、完全
結晶化熱量:286.7J/g)製の成形品6を以下の
ようにして成形した。
【0069】なお、金型には冷却管及び加熱用シーズヒ
ーターを設け、冷媒としては、30℃の冷却水を使用
し、冷却水は温調機を兼ねた外部タンクに溜められ、そ
こから、圧送ポンプ、流量調節弁を通り金型内の冷却管
を通り、再び冷却水タンクに戻るようにした。樹脂の冷
却速度の変更方法としては、冷媒の流量の調整及び加熱
用シーズヒーターによる冷却速度制御手段を採用した。
【0070】金型温度制御については、キャビティ周壁
面近傍の温度を温度センサーにより測定し、フィードバ
ック制御によりキャビティ周壁面の温度を制御するよう
にした。図11(a)に示すように、まず、深さ方向の
厚さ3.2mmにし、キャビティ周壁面の温度を220
℃に保った金型のキャビティに、220℃の溶融樹脂を
充填したのち、5分間、その220℃で温度保持した。
【0071】つぎに、冷却工程の第1段階で200℃/
分の冷却速度で125℃まで速い速度で冷却するととも
に、キャビティの深さ方向の厚さで3.13mmとなる
まで可動型51を固定型53方向に移動させて樹脂を圧
縮した。そして、冷却工程の第2段階で2℃/分で12
5℃から115℃まで遅い速度で冷却するとともに、キ
ャビティの深さ方向の厚さで3.03mmとなるまで可
動型51を固定型53方向に移動させて樹脂をさらに圧
縮した。
【0072】冷却工程の第2段階で200℃/分の冷却
速度で115℃から常温(30℃)まで速い速度で冷却
するとともに、キャビティの深さ方向の厚さで3.0m
mとなるまで可動型51を固定型53方向に移動させて
樹脂をさらに圧縮したのち、金型を開き、成形品6を取
り出した。
【0073】(比較例1)冷却工程で可動型による型締
めを行わなかった以外は、実施例1と同様にして成形品
を得た。
【0074】(比較例2)220℃の溶融樹脂をキャビ
ティに充填し、冷却速度を200℃/分として一挙に常
温まで冷却するとともに、冷却工程で可動型による型締
めを行わなかった以外は実施例1と同様にして成形品を
成形した。
【0075】〔評価〕実施例1及び比較例1,2により
得た成形品を成形後、温度23℃の部屋で保管し、成形
後1時間において、図12に示すキャビティ形状の成形
品6の矢印aで示す流動長方向の寸法Lの測定を行っ
た。この成形後1時間の寸法を基準とし、今後、成形2
週間後(336時間)まで定期的に寸法を測定し、次の
数式で定義される収縮率を求め、成形後1時間の寸法、
2週間後の寸法、2週間後の収縮率を表1に示した。 収縮率=(成形1時間後寸法−測定寸法〕/成形1時間
後寸法
【0076】尚、図12において、5はゲート位置を示
している。また、後日、後収縮の測定が終わった成形品
の表面、表面から約0.5mm内側、約1.0mm内側
の結晶化度をDSCにより測定した。その結果を表1に
合わせて示した。
【0077】
【表1】
【0078】表1に示すように、実施例1においては、
比較例1,2に比較して熱収縮がなくヒケ等の問題がな
いことがわかる。しかも、比較例2に比較して、後収縮
が低減し、結晶化度が増大し、成形品の厚み方向の結晶
化度分布の均一化を図ることができることがよくわか
る。即ち、本発明ではヒケが発生しないだけでなく、初
期の金型離型までの型内収縮や離型後常温になるまでの
熱収縮の影響が少なくなり、トータルとして金型寸法の
近い精密成形品を得られることがわかる。従って、金型
設計が容易になることがわかる。
【0079】以上、本発明の実施の形態を実施例により
説明したが、本発明の具体的な実施の形態は図示の実施
の形態に限定されるものではなく本発明の主旨を逸脱し
ない範囲の設計変更は本発明に含まれる。
【0080】
【発明の効果】本発明にかかる熱可塑性樹脂成形品の射
出成形方法は、上記のように構成されているので、後収
縮を低減し、結晶化度を制御することができることは勿
論のこと、熱収縮と結晶収縮によるヒケ防止および離型
時までの寸法変化を小さくすることができ、実用に耐え
うる成形品を成形することができる。
【0081】又、部分毎の収縮量が均一化されるととも
に、離型時までの寸法変化が少ないことから、金型のキ
ャビティ寸法を略成形品と同じにすることができるた
め、金型設計が容易となる。しかも、高温の金型に溶融
樹脂を充填し、且つ溶融している状態で圧縮がかかるの
で、転写性のいい成形品が得られる。
【0082】型内収縮の防止が可能となるので、熱応力
の発生を抑えることができる。また、型を開いた状態で
溶融樹脂を充填するので、薄肉の成形品でも充填が容易
になる。
【0083】又、請求項3の成形方法のようにすれば、
成形品肉厚方向の結晶化度の分布がより均一化される。
そして、請求項4の成形方法においては、一層結晶化度
を上げ、均一な結晶化度分布を持った成形品を成形する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】射出成形品の断面構造を示す断面図。
【図2】図1のA部を拡大して示す断面図。
【図3】樹脂の応力緩和と時間との関係を示すグラフ。
【図4】発明方法における金型温度調節の態様を示す説
明図。
【図5】樹脂の熱量と温度との関係を示すグラフ。
【図6】樹脂の比容積と温度との関係を示すグラフ。
【図7】本発明方法における金型の温度調整の一態様を
示す説明図。
【図8】本発明方法における金型の一例を示す説明図。
【図9】本発明方法における金型の温度調整の他の一態
様を示す説明図。
【図10】本発明方法における金型温度制御パターンと
型締めとの関係の一例を示すグラフ。
【図11】本発明にかかる射出成形方法の1つの実施の
形態をあらわす説明図。
【図12】実施例および比較例に用いた金型のキャビテ
ィの平面図。
【図13】従来方法による管継手の内径寸法変化を示す
グラフ。
【符号の説明】
1、1a、5 金型 11 ヒータ 12、13、14、15 冷媒流通管 16、52 キャビティ 17 断熱材 2、3、4 温調器 21、31、41 管路 22、32、42 電磁弁 51 可動型(矯正型) 52a 周壁面 53 固定型 6 成形品
フロントページの続き Fターム(参考) 4F202 AM32 AR06 AR14 CA11 CB01 CK18 CL01 CN01 CN05 CN13 CN18 CN21 CN27 4F206 AM32 AR065 AR14 JA03 JL02 JM02 JM04 JM05 JN33 JN37 JN43 JQ81 JQ83

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】射出成形用の金型のキャビティへの溶融樹
    脂充填時に金型のキャビティ周壁面の温度を樹脂の溶融
    温度付近の温度もしくはそれ以上の温度に加熱し、樹脂
    充填する樹脂充填工程と、樹脂充填工程完了後暫くの
    間、金型のキャビティ周壁面の温度を樹脂の溶融温度付
    近の温度もしくはそれ以上の温度に保持する温度保持工
    程と、温度保持工程を経てキャビティ内の成形品温度が
    常温になるまで冷却する冷却工程とを備え、樹脂充填時
    の樹脂流動による剪断応力及び分子もしくは結晶配向を
    金型内で緩和し、かつ離型後の成形品の熱収縮を殆ど無
    くし、成形後の成形品の収縮を低減させるようにした射
    出成形方法であって、前記キャビティ中で充填された樹
    脂を所定方向に圧縮可能な矯正型を有し、得ようとする
    成形品の容積より大きい容積にした金型のキャビティ内
    に溶融樹脂を充填し、温度保持工程から冷却工程終了ま
    での間で、樹脂の熱収縮および結晶収縮に伴う体積変化
    を制御し、後収縮と熱収縮、結晶収縮を同時に抑えなが
    ら徐々に最終成形品になるように矯正型によってキャビ
    ティ内の樹脂を所定方向に圧縮することを特徴とする熱
    可塑性樹脂成形品の射出成形方法。
  2. 【請求項2】熱可塑性樹脂が結晶性を有し、樹脂充填工
    程での金型のキャビティ周壁面の温度および温度保持工
    程で金型のキャビティ周壁面の温度を、樹脂の結晶化温
    度以上にする請求項1に記載の熱可塑性樹脂成形品の射
    出成形方法。
  3. 【請求項3】冷却工程が、速い冷却速度の第1段階と、
    この第1段階の冷却速度より遅い冷却速度の第2段階
    と、第2段階の冷却速度より速い冷却速度の第3段階と
    を備えている請求項1または請求項2に記載の熱可塑性
    樹脂成形品の射出成形方法。
  4. 【請求項4】熱可塑性樹脂が結晶性を有し、冷却工程
    が、所定の温度勾配の冷却速度で結晶化開始温度まで冷
    却する第1段階と、この第1段階終了後、結晶化開始温
    度に温度保持する第2段階と、第2段階終了後、所定の
    温度勾配の冷却速度で冷却する第3段階とを備えている
    請求項1または請求項2に記載の熱可塑性樹脂成形品の
    射出成形方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US8043537B2 (en) 2007-06-26 2011-10-25 Mitsubishi Heavy Industries Plastics Technology Co., Ltd. Injection molding system, computer program, method of injection molding, and injection molding machine
JP2013252650A (ja) * 2012-06-07 2013-12-19 Mitsubishi Electric Corp 成形体の製造方法及び製造装置

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